大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

さいたま地方裁判所 平成11年(ワ)2300号 判決 2002年2月07日

主文

1  被告は,原告らに対し,金539万6300円及びこれに対する平成13年11月9日から完済に至るまで年5分の割合による金員を支払え。

2  原告らのその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを10分し,その9を原告らの負担とし,その1を被告の負担とする。

4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1  被告は,原告らに対し,別紙物件目録4ないし6記載の各建物を収去し,別紙物件目録3記載の土地を明け渡せ。

2  被告は,原告らに対し,別紙物件目録1及び2記載の土地を引き渡せ。

3  主文1項同旨(遅延損害金起算日は平成13年10月11日付け準備書面送達日の翌日)。

4  訴訟費用の被告負担。

5  仮執行宣言

第2事案の概要

1  原告らと被告間の別紙物件目録1ないし3記載の土地(以下「本件土地」という。)に関する賃貸借契約について,本件土地の公租公課を被告が負担する約定が存在するところ,原告らは,被告がこれに違反したため,契約を解除したと主張して,本件土地上の被告所有の同目録4ないし6記載の建物の収去及び本件土地の明渡し,並びに被告の負担すべき公租公課の支払いを請求している。他方被告は,本件土地の所有者は原告Aだけであり,その余の原告らは所有権を有していない。また,被告には債務不履行はない。あるとしても信頼関係が破壊されたとはいえない特段の事情が存在する等と主張して契約解除の効力を争っている。

2  証拠上明らかな事実(争いのない事実を含む。)

(1)  被告を申立人,被告の弟である訴外亡D(平成7年11月14日死亡。)及び訴外Eを相手方とするF簡易裁判所昭和56年(イ)第5号事件について,昭和56年5月20日,要旨以下のとおりの和解(以下「本件和解」という。)が成立した(甲4)。

① 被告は,Dが本件土地の真正な登記名義人であることを確認する。

② Dと被告は,本件土地について,期間を昭和56年5月21日より30年間,賃料については,被告が本件土地の対価として第三者に支払った約1000万円をもってこれに充当することとし,特約としてDは前記契約期間中に賃料不払を理由に賃貸借契約を解除できないこと等を内容とする賃貸借契約が締結されたことを確認する(以下「本件賃貸借契約」という。)。

③ 被告及びEは,前記契約期間中,本件土地に対する一切の公租公課を負担する(以下「本件負担合意」という。)。

④ 被告及びEは,前記③に違反して,その支払いを2年以上怠ったときは,別紙物件目録記載4の建物を含む本件土地上の建物(和解成立後増改築及び新築されたものを含む)を収去し,本件土地を明け渡さなければならない。

⑤ Dは,被告及びEが料亭の営業(名称,業種が変更されても類似した営業を含む)を継続する場合には,本件賃貸借契約を更新することを合意する。

(2)  Dには,相続人として,妻原告B,子原告C及び原告A(以下順次「原告B,原告C,原告A」という。)がいる。

(3)  Dは,浦和(現さいたま)地方法務局所属公証人G作成の昭和61年第1916号遺言公正証書をもって,昭和61年12月25日,原告Aに本件土地を「相続させる」旨遺言した(乙1。以下「本件遺言」という。)ところ,相続人である原告らは,平成8年8月8日,本件土地を含むDの遺産について協議し,本件土地については,原告Bが100分の74,原告C及び原告Aがいずれも100分の13の各共有持分を取得する旨合意(甲6。以下「本件遺産分割」という。)した。

(4)  本件土地に関するD死亡後の公租公課(以下「本件納税」という。)は,次のとおりである

平成7年度3期及び4期分  56万円

平成8年度分          101万7900円

平成9年度分          106万1800円

平成10年度分         110万4500円

平成11年度分         113万2200円

平成12年度分         41万5300円

平成13年度分         10万4600円

以上合計539万6300円

Dの死亡するまで,本件土地を含むD名義の不動産の公租公課の支払いは,Dに納税通知書が送付される都度,被告が納税していたが,D死亡後,被告は本件納税を実行しておらず,原告らにおいて支払いをした(なお,被告は原告らに対して,本件納税分を支払う用意があるとし,支払義務自体は争っていない。)。

(5)  原告らは被告に対し,平成11年11月11日付け(同月12日被告到達)の書面をもって,被告が本件負担合意に違反して,平成7年11月以降の公租公課の支払いをしていないことを理由に本件賃貸借契約を解除する旨意思表示をした(以下「本件解除」という。甲5の1,2)。

3  争点と当事者の主張

(1)  第1の争点は,原告A以外の原告らが本件土地の所有者であるか否か,すなわち,同原告らの所有権は,本件遺産分割に基づくものであるところ,その内容は本件遺言に反するものであることから,本件遺産分割が有効か否か問題となる。

(被告)

特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合には,特段の事情のない限り,当該遺産を当該相続人に単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものであり,なんらの行為を要せず当該遺産の所有権は当該相続人に移転(承継)される(最判平成3年4月19日第2小法廷)から,かかる遺言に他の相続人も拘束され,相続人間でこれに反する遺産分割を行う余地はない。したがって、本件遺言に反した本件遺産分割は無効であり,原告A以外の原告らは本件土地の所有権を取得しない。

(原告ら)

本件遺言が遺産分割方法の指定であるとしても,指定を受けた相続人が,自らの意思で,その遺産に関する権利を放棄することは可能であり,被告引用の判例も,その趣旨まで否定するものではない。遺贈の放棄(民法986条)に準じて,当該相続人は,遺言の利益を放棄できると解すべきである。したがって、本件では,原告Aは,本件遺言の内容を理解したうえで,その利益を放棄し,かつその余の原告らと本件土地の取得関係につき協議をしたものであるから,本件遺産分割は有効である。

(2)  第2の争点は,被告に本件負担合意に反する債務不履行の事実が存在するか否かである。

(原告ら)

① 原告らは,平成8年4月にF市から「滞納市税の納付について」との督促状を受領して始めて,平成7年度3期分以降の滞納の事実を知り,直ちに滞納分を支払った。その後,原告らは被告に対し,公租公課の支払いを原告らが負担するのは不合理であると考え,その負担を度々請求したが,被告は,本件土地の取得経緯を縷々説明するなどして,これを拒否した。原告らが,本件和解の存在を知ったのは,本件訴訟提起の直前である。

② 後記被告主張②は争う。被告は,Dの生前,長期間にわたって公租公課を負担履行してきたのであるから(当事者間に争いがない。),その納付時期や納付額のみならず,相続人である原告らが納税通知書を所持していることを容易に知り得たはずである。しかし,原告らは被告から納税通知書を徴求されたことはない。被告は頑なに公租公課の支払いを拒絶していたのであり,納税通知書の被告への交付は不要である。

(被告)

① 原告らが本件納税につき,支払いを求めたことは否認する。被告は,Dの死後本件訴訟に至るまで,原告らからその支払いを求められたことは一切ない。本件解除が有効であるためには,相当の期間を定めた催告が必要である。被告は予め履行を拒絶していないが,仮にそうだとしても催告が必要である。特に本件賃貸借契約は,全期間の賃料は既に支払済みとされている等の事情があり,本件負担合意は,被告にとって,賃料に比してはるかに軽微な付随的義務にすぎないから,通常の賃料不払いと対比して,原告らにはより厳格な催告手続が加重されるというべきである。

② Dは,生前納税通知書を被告に交付して,被告が納税していた経緯があり,D死亡後も同じ態様で被告に納税を求める必要があるが,原告らの納税通知書の持参という債権者の協力がない以上,被告が本件納税をしなかったからといって履行遅滞には陥らない。もとより被告から原告らに対して,納税通知書の提示を催告する義務は発生しない。

③ 被告は,原告らに対して,本件解除通告を受けて,本件納税を行う用意がある旨平成11年11月26日付け書面(同月29日原告ら代理人到達)をもって返答するとともに,本件納税につき,金額や送金方法を照会した(乙2の1,2)が,これは弁済の提供に該当する。

(3)  第3の争点は,仮に被告に債務不履行があるとして,信頼関係が破壊されているか否かである。

(被告)

① 原告らは,D死亡後,被告に無断で本件土地の売却を画策していた。すなわち,被告は,平成8年秋ころ,不動産会社から本件土地が売りに出されていることを知った。また平成9年2月には,原告らは別の不動産会社に,被告所有部分を含む本件土地一帯の利用方法につき意見を求めている(乙5)。そして,平成11年9月,被告は,原告Cの夫のC’から,本件土地を6000万円で売却したい旨の申し入れを受けた。これに対して,被告は,訴外H(株式会社Hの代表者。)に相談の上,本件土地の一部を売却する提案をした(乙6)ところ,原告らから突然本件解除の通告を受け,Hも同趣旨の通告(甲13の1)を受けたものである。

② 後記原告ら①ないし④の主張は否認ないし争う。

被告は,昭和35年10月に料亭Iを開業し,Dは帳場見習いをしていたが,被告はDを料亭の跡継ぎにしようと考えていた。本件土地はD(ひいては原告ら)にとって利益をもたらさないものであるが,それは被告の期待に反してDが後継者にならなかった結果であり,やむを得ないことである。本件土地を含めDの所有する不動産の公租公課を被告が負担してきたことは,当然原告らも承知のはずである。

平成7年度2期分には,1000円の滞納金があり(甲17,18),これは2期分の本税の納期限を徒過したことを示しているが,被告がかかる延滞金を支払わないということはありえない。被告は平成7年度の納税通知書を受領していないのであるから,被告以外の何者かによって滞納されたものである。また被告は,平成11年秋ころ,旧建物を壊して新たに料亭を新築したものであり,被告は料亭の営業を現在も継続している。上記建物は,本件土地上に及んではいない。

(原告ら)

① 本件土地につき,Dには何ら収益がなく,これを承継した原告らにも収益がなく,公租公課のみの負担を強いられるのは不合理である。

② 原告らは,相続に関して本件土地を借地ではなく,自用地として申告したことから,余分な相続税(借地として申告すれば税額は半分以下であった。)を支払った(甲7)。原告らは,本件和解の存在を知らされておらず,被告が本件土地を使用していることは知っていたが,その権利関係や公租公課等支払状況について知らされていなかった。

③ 被告は,Dから平成7年度の納税通知書を受領して,同年度1期及び2期分を支払ったと推察される。被告は,納税通知書がないから納付を怠ったのではなく,Dの死亡を契機に,原告らとの折り合いが良くないことや原告らが本件和解の存在を知らないことを奇貨として,故意に不払いに及んだものである。

④ 被告は,すでに予約等の場合に開店しているのみで恒常的に店舗を開店して営業を行ってはいない。被告は,平成11年秋ころ,本件土地の隣接被告所有地に共同住宅を建築したが,その際に本件土地の一部をその住宅敷地の一部としたほか,駐車場敷地に変更した。被告は,これら工事につき原告らの申し入れを無視して工事を続行した。かかる行為は,料亭として本件土地を使用するという本件和解の趣旨に違反する行為である。

第3当裁判所の判断

1  争点1(本件遺産分割の効力)について

(1)  特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については、上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)。しかしながら,このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ,被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。

(2)  本件においては,本件土地を含むDの遺産につき,原告ら全ての相続人間において,本件遺言と異なる分割協議がなされたものであるところ,Dが遺言に反する遺産分割を禁じている等の特段の事情を認めうる証拠はなく,原告らの中に本件遺産分割に異議を述べる者はいない上,被告は本件遺産分割については,第3者の地位にあり,その効力が直ちに被告の法的地位を決定するものでもないことを考慮すると,本件遺産分割の効力を否定することはできず,本件土地は原告らの共有に属すると認められる。被告の主張は採用できない。

2  争点2(被告の債務不履行)について

(1)  前記事実に,証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,本件和解のとおり,長年にわたり,本件土地の公租公課を負担し,毎年納税通知書をDから受領し,被告が納税してきたこと,Dが死亡した平成7年度の納税については,その1期と2期分は納税された(正確には,2期分は1000円の延滞金が発生しているが)ものの,3期分以降は滞納されたこと,D死亡後の平成8年4月22日,原告らは,F市から「滞納市税の納付について」との督促状(甲17)を受領して始めて,Dの税金に関して滞納の事実を知り,同月24日,本件土地に関する平成7年度分の固定資産税の滞納分を支払った(甲18)こと,原告らは,本件土地上に被告所有の建物があることを知っていたものの,本件和解の存在を知らず,その権利関係につき曖昧な認識のままで,本件遺産分割後の平成8年8月12日,本件土地を借地でない自用地として相続税の支払いをした(甲7)こと,原告らは,本件土地から何ら収益を得られないのみならず,被告からの地代収入もなく,さらには被告から本件土地の真実の所有者は被告である等と述べる態度を示されたことから,本件土地の処分等その有効利用を図ろうとしたこと,その後原告Cの夫のC’が交渉の窓口となり,平成11年9月ころ,被告に対し,本件土地を6000万円で売却したい旨の申し入れをしたところ,被告は,Yに相談の上,被告の借地権と本件土地の一部を交換する旨の提案をした(乙6,8)こと,これに対して原告らは何ら応答することなく,被告に対して本件解除(甲5の1)を通告したこと,以上の事実が認められる。これに反する原告らの主張は採用できす,この認定を覆すに足りる証拠はない。

(2)  このような事実関係によれば,本件和解によって本件賃貸借契約が成立したとされ,かつDの生前において,被告が長年にわたり本件土地の公租公課を負担してきた経緯があるから(その被告にとっての理由が,本件和解を前提としたか,被告に所有権があるという認識によるか否かはともかくとして),Dが死亡したからといってこれを契機に,以後直ちに被告が納税の負担を免れるものではなく,したがって被告が納税を怠ることは,それ自体本件負担合意に反した行為と認められる。しかも本件では,原告らは,被告とDの従前の生活関係等につき十分な理解がなく,本件解除通告の直前になって始めて,本件和解の存在を知ったことが窺われるから,原告らとの関係においても,これが当てはまるというべきである。したがって、原告らからの納税通知書の呈示の有無や要否にかかわらず,被告が2年以上の期間にわたり,自らの支出で本件納税の手続をしなかったことが明らかである以上,本件負担合意に反する債務不履行があると解するのが相当である。これに反する前記被告の主張はいずれも採用できない。

3  争点3(信頼関係破壊の有無)について

(1)  まず,本件賃貸借契約では,その全賃料につき支払い済みであること,土地購入代金の殆どである約1000万円を被告が負担したとされていること,被告の経営する料亭の存続を前提とする賃貸借契約関係であること,そして,Dを本件土地の所有者と認めるというのではなく,あえて「真正登記名義人」なる文言を用いていることなど,本件和解の内容に照らすと,当時被告とDの関係は互いの思惑もあって複雑であり,本件和解は,被告とDとの個人的な関係をも考慮し,これを巧みに調整しようとした苦心の結果であることが十分に窺われる。土地の公租公課は,本来土地所有者に課される性質のものであり,所有者とされたDが負担するのが当然のはずであるが,これをあえて被告の負担したことは,文言上被告の債務という形式をとってはいるものの,Dに不利益が及ぶことのないようにとの被告の配慮に基づくものと理解できる。したがって、かかる本件賃貸借契約の特殊性を考慮するときは,その不履行をもって,直ちに被告の背信的行為と評価することはできず,本件解除の有効性を判断するためには,他に信頼関係を破壊するに足りる事情の存在が必要であると解するのが相当である。

(2)  そこで検討するに,原告らは被告に対し,平成8年4月ころから,度々本件納税の履行を求めた旨主張する。しかし,原告らが,本件和解,ひいては本件負担合意の存在を知ったのは,本件解除通告の直前である(原告らも自認している。)から,その履行を求めたというのは不可解であり,その主張は採用できない。かえって,前記認定によれば,原告らは,納税義務があるとの自覚をもって,平成7年度の滞納分を含めて以後納税を継続してきたが,利用もできないのに公租公課のみを負担せざるをえない不合理を感じて,本件土地の処分等を模索していたところ,たまたま本件和解中の,本件負担合意の存在を知ったことから,これを奇貨として被告に本件土地からの立ち退きを求めようとしたものと推認される。原告らは,被告が本件和解の存在を原告らに告知せず,そのために原告らは相続税を多く負担する結果となり,また被告は本件土地の所有者であるとの認識をもって原告らに応対したと主張する。確かに,被告にそのような態度があったことは認められるが,前記のとおり本件和解は,被告とDの当時の個人的関係を強く反映していることや,原告らが相続税申告にあたり,本件和解を知っていたとしても,税務当局がこれを借地と評価して課税したか否かは,にわかに判明しないから,被告の態度をもって不当であると断ずることはできない。また原告らは,被告は営業をほぼ廃止しており,平成11年秋ころには,本件土地の一部に侵入して新たに建物を建てたなどと主張するが,これを否定するYの陳述書中の供述(乙8)に照らして採用できない。他に信頼関係を破壊する事情を認めうる証拠はない。

(3)  以上によれば,被告には本件負担合意に反する債務不履行があるとはいうものの,いまだ信頼関係を破壊するに足りないというべきであるから,本件解除は無効である。

4  結論

原告らの本訴請求は,539万6300円及びこれに対する平成13年11月9日から完済に至るまで年5分の割合による金員の支払を求める(被告は支払義務があることを争わない。)限度で理由があり,その余の請求は理由がない。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判官 永井崇志)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例