さいたま地方裁判所 平成12年(ワ)2360号 判決 2004年1月16日
原告
X
被告・訴訟告知者
Y
被告知者
三井住友海上火災保険株式会社
主文
一 被告は、原告に対し、九九一五万九六一〇円及びこれに対する平成九年一一月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その三を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、一億四九一三万一八七六円及びこれに対する平成九年一一月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 事案の要旨
本件は、原告が、A運転の普通乗用自動車(以下「Y車」という。)が原告運転の原動機付自転車(以下「原告車」という。)に衝突したことにより、原告車が転倒し、原告が傷害を負ったと主張して、Y車を運行の用に供していた被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、上記傷害によって被った損害金(訴状では一億四五七七万八七四六円であったが、平成一四年七月一八日付け「請求の拡張の申し立て」により一億四九一三万一八七六円に拡張された。)及びその遅延損害金の支払を求めた事案である。
これに対し、被告は、Y車が原告車に衝突したことを否認し、原告の主張を争った。
二 争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実(証拠により認定した事実については、その末尾の括弧内に証拠を掲げる。)
(1) 本件事故の発生(甲一、乙一)
平成九年一一月二日午前三時三〇分ころ、埼玉県岩槻市<以下省略>先県道蒲生岩槻線(以下「本件道路」という。)において、白岡町方面からさいたま市本面に向けて進行中のA運転の自家用普通乗用自動車(マツダセンティア・<番号省略>、Y車)が、対向車線を走行し、対向して進行してきたB運転の自家用普通乗用自動車(日産セドリック・<番号省略>、以下「B車」という。)に正面衝突した(以下「本件正面衝突事故」という。)。同時刻ころ、同衝突地点のY車進行方向手前左側の電柱に原告運転の第一種原動機付自転車(ホンダカブ・<番号省略>、原告車)が衝突し転倒した(以下「本件転倒事故」という。)。
(2) 原告の受傷及び治療経過(甲三~八)
原告(昭和○年○月○日生、本件転倒事故当時五四歳)は、本件転倒事故により、右膝脱臼、右膝窩動脈閉塞、頭蓋底骨折、右前頭葉脳挫傷、外傷性脳内出血、急性硬膜外血腫、右外傷性視神経損傷、左肩腱板損傷等の傷害を負い、次のとおり入通院した。
<1> 平成九年一一月二日(入院)
丸山記念総合病院
<2> 平成九年一一月二日~平成一〇年二月二六日(入院)
埼玉医科大学附属病院
平成九年一一月二日~同年一二月一一日 脳神経外科
平成九年一一月二日 開頭手術
平成九年一二月一一日~平成一〇年二月一九日
形成外科
平成一〇年一月五日 植皮術
平成一〇年二月一九日~同月二六日 整形外科
平成一〇年二月一九日 右大腿切断術
<3> 平成一〇年二月二六日~同年九月一八日(入院)
丸山記念総合病院
平成一〇年五月一九日 義足装着
<4> 平成一〇年九月一八日~同年一二月二一日(入院)
埼玉県総合リハビリテーションセンター
<5> 平成一〇年一二月二二日~平成一三年三月二二日(通院)
埼玉県総合リハビリテーションセンター
(3) 後遺障害(甲九、一〇、一五)
原告は、平成一三年三月二二日、上記(2)の傷害につき、同日をもって症状固定と診断され、記銘力障害、右眼失明、右大腿部切断の後遺症が残った。春日部労働基準監督署は、同年一〇月二六日、原告の後遺障害の等級につき、脳挫傷による中枢神経系の障害が第七級の三に、右眼失明が第八級の一に、右大腿骨中央部より切断が第四級の五に該当し、これらを併合すると第二級に該当する旨決定した。
(4) 損害の填補
ア 労災保険給付(乙九)
(ア) 療養補償給付
病院支払分
診療費(平成九年一一月二日~平成一三年二月一〇日) 一五二一万〇七二六円
診断書料(文書料) 一万四〇〇〇円
原告支払分
装具代 二六万六八三七円
診断書料(文書料) 四〇〇〇円
(イ) 休業補償給付(平成九年一一月二日~平成一一年一月三一日)
保険給付額 一一七万〇四三八円
特別支給金 三九万〇一四六円
(ウ) 障害補償給付
障害特別支給金 三二〇万円
障害補償年金
平成一三年三月~平成一五年五月 二九二万〇二四四円
年金給付日額 六三六二円
平成一五年六月、七月 二一万四四一〇円
(エ) 介護補償給付
平成一三年三月~平成一三年一〇月 二三万五〇四〇円
月額二万九三八〇円(随時介護)
イ 自賠責保険及び任意保険の保険金(乙六)
Y車について被告との間で締結されている自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)及び任意自動車保険(以下「任意保険」という。)の保険者である三井住友海上火災保険株式会社(以下「三井住友海上」という。)から、原告に対し、次のとおり保険金が支払われた。
休業損害 二三一万二一〇九円
治療費(診断書・明細書料)
埼玉医科大学附属病院 一万〇五〇〇円
丸山記念総合病院 五二五〇円
埼玉県総合リハビリテーションセンター 一万九三七〇円
(5) 運行供用者
Aの母である被告は、Y車の所有者であり、Y車を運行の用に供していた(乙一)。
(6) 訴訟告知
本件訴訟が平成一二年一一月一日に提起された後、被告は、平成一三年一〇月一〇日付け「訴訟告知書」により、民事訴訟法五三条に基づき、三井住友海上に対し、訴訟の告知をした。
三 原告の主張
(1) 本件転倒事故の態様
本件転倒事故は、道路左端を走行中の原告車の右後部に後方から進行してきたY車の左前部が衝突したことにより発生したものである。
その理由は次のとおりである。
ア 本件事故直後の事情聴取において、Aは、警察官に「バイクとぶつかった。」と供述していた。
イ 原告車は、後部荷台右下の方向指示器が折損し、後部荷台のフックが前方内側に折れ曲がっている。これらの損傷は、後方からの力によるものである。
なお、被告は、荷台フックの曲損の方向及びY車の前部フェンダーの形状から、荷台フックの損傷はY車が原告車に衝突したことにより生じたものではないと主張する。しかし、原告車とY車は、ともに走行中であり、両車両の車体は上下左右に揺れており、また、Aが原告車との接触の危険を察知してブレーキングしたことによるノーズダウン現象が生じていた可能性があり、これらを考慮すれば、Y車の左前部フェンダーの部分が、原告車の荷台下に潜り込むことがあり得る。また、Y車は、原告車の速度を相当程度上回っていたと考えられ、その速度差が荷台フックを前方内側に押し曲げるエネルギーになったと考えられる。被告の主張は、走行中のバイクや自動車の動きを考慮せず、静的状態での図面の位置関係だけで検討したものに過ぎない。
ウ 原告車の時速が約四〇km、Y車の時速が約七〇~九〇km程度であれば、そこから計算上得られる仮定接触地点が一致する。すなわち、原告車が突然左前方に向かい縁石を突破して転倒したこと、Y車が突然対向車線に飛び出し、縁石に同車両のタイヤを接触させたことが同一地点から始まったことが分かる。同一地点から同時に、原告車は左に、Y車は右に向かったのであるから、両車両が接触したと考えられる。
エ Y車についての自賠責保険と任意保険は、いずれも三井住友海上であるが、自賠責保険の治療費分と任意保険の内払いは、本件転倒事故の後一年間は支払が継続された。
(2) 被告の責任
本件転倒事故は、Y車の運行によって生じたものであるから、自己のためにY車を運行の用に供していた被告は、自賠法三条に基づき、本件転倒事故により原告に生じた損害を賠償する責任がある。
(3) 損害
原告は、本件転倒事故により、次のとおり損害を被った。
ア 休業損害 一九六六万五五九七円
(ア) 平成一〇年三月二一日から平成一三年三月二二日(症状固定日)まで一〇九八日間の休業損害 二一二二万六一八一円
基礎年収 七〇五万六〇六二円
原告は、本件転倒事故時まで、昼間は花菱縫製株式会社(以下「花菱縫製」という。)に、朝は読売新聞の新聞配達員として稼働していた。花菱縫製からの収入は、平成八年の一年間に五七三万六〇六二円、読売新聞販売店からの収入は、平成九年八月から同年一〇月までの三か月間に三三万円、一年間に換算すると一三二万円であった。
573万6062円+132万円=705万6062円
なお、被告は、原告が、本件転倒事故時まで、花菱縫製と読売新間販売店で稼働していたとしても、症状固定時(五八歳)まで、そのような過酷な労働を継続しうるとは考えられないので、上記休業損害算定の基礎年収は相当ではないと主張する。しかしながら、将来の収入は、単に症状固定時に五八歳であることのみを理由に減額されるべきものではない。
705万6062円÷365日×1098日=2122万6181円
(イ) 労災からの休業補償給付 一五六万〇五八四円
(なお、原告は、平成一五年七月一八日付け準備書面で、特別支給金は損害から控除されないとして一一七万〇四三八円に訂正した。)
(ア)-(イ) 一九六六万五五九七円
(正しくは、二〇〇五万五七四三円)
2122万6181円-156万0584円=1966万5597円
イ 入院慰謝料 四〇〇万円
原告は、平成九年一一月二日から平成一〇年一二月二一日までの四一五日間入院し、その後も平成一四年七月現在までリハビリのために丸山記念総合病院に週二回程度通院している。
ウ 入院雑費 六二万二五〇〇円
一日当たり 一五〇〇円
1500円×415日=62万2500円
エ 後遺症による逸失利益 五六九七万八一三八円
(ア) 逸失利益 五八六一万〇四七三円
労働能力喪失率 一〇〇%
原告には、本件転倒事故により、記銘力障害、右眼視力喪失、右大腿部切断、てんかん発作の可能性に対する抗けいれん剤の内服を要するとの後遺症が残った。これらを総合すると、原告の後遺障害等級は併合二級であり、労働能力喪失率は一〇〇%である。
基礎年収 七〇五万六〇六二円
就労可能年数 一一年(症状固定時の年齢五八歳)
ライプニッツ係数 八・三〇六四
705万6062円×8.3064=5861万0473円
(イ) 労災からの障害年金給付 一六三万二三三五円
(ア)-(イ) 五六九七万八一三八円
5861万0473円-163万2335円=5697万8138円
オ 後遺症慰謝料 二五〇〇万円
カ 介護費用 三〇八六万五六四一円
原告は、家庭内における移動・用便・入浴等は一人でできるが、買い物・炊事・掃除・洗濯等の生活に欠かせない所用を一人ですることができず、介護を要する。
一日当たり 六〇〇〇円
平均余命 二五年
ライプニッツ係数 一四・〇九三九
(6000円×365日)×14.0939=3086万5641円
キ 弁護士費用 一二〇〇万円
ア~キ 合計一億四九一三万一八七六円
(正しくは、一億四九五二万二〇二二円)
(4) 結語
よって、原告は、被告に対し、自賠法三条に基づき、本件転倒事故により被った損害金である上記(3)の合計一億四九一三万一八七六円及びこれに対する本件転倒事故の日である平成九年一一月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
四 被告の主張
(1) 本件転倒事故の態様について
本件転倒事故は、Y車が原告車に衝突したことにより発生したものではない。Y車は原告車に衝突していない。
その理由は次のとおりである。
ア 事故後の原告車の転倒写真によると、原告車は右側を下にして転倒している。このことからすれば、原告の主張(1)イの各損傷は、転倒等に起因して発生したものと考えられる。
イ 荷台フックの曲損箇所よりも内側にある部品、例えばマフラーには、車両の衝突により生じたと考えられる損傷は存在しない。
ウ 荷台フックは折れ曲がっているが、これが取り付けられている荷台外枠には、何らの損傷もない。
Y車の衝突により荷台外枠に損傷を与えずに荷台フックのみに損傷を与えるためには、Y車の前部左側が原告車の下に潜り込む必要がある。この点につき、原告がその主張の根拠とする鑑定書には潜り込みの可能性があるとされているが、鑑定書は、原告車とY車の縮尺を一:一ではなく一:〇・八五で表示して比較対照し、原告車の後部荷台前側下端の地上高を、実況見分調書によれば六五cmであるのに、六八cmとし、Y車のボンネットフードの先端の地上高を「七〇cmを幾分上回る程度」としており、用いている数値が正確ではない。鑑定書は、Y車のノーズダウン現象等の不確定な要素を考慮に入れ、曖昧な様々な推測を前提として、Y車の前部左側が原告車の下に潜り込む可能性があると言うにとどまり、その結論は一つの可能性を示すにすぎず、本件転倒事故の実態としての蓋然性を示すものではない。
エ Y車の左前部フェンダー部分が、原告車の後部荷台の下に潜り込んだとしても、荷台フックは同フェンダー側面の一〇~二〇度の傾斜角度により、一〇~二〇度程度変形するにとどまり、かつ、変形の方向は、荷台の外枠に沿って曲がるのではなく、後部から見て左斜め前方に曲がることになるはずである。荷台フックの曲損状況は、これと一致しない。
オ 原告車の荷台フックより外側に出ているステップには、Y車との接触痕がない。また、原告の身体が最も外側に出るはずであるが、原告の着衣に接触痕はなかった。
カ 鑑定書は、原告車の右後部の方向指示器の折損は、Y車の衝突によるものであるとし、その折損の説明に際して右後部ショックアブソーバーの上側カバーの灰色様の痕跡の存在を指摘する。しかし、方向指示器の固定部が基部から完全に折損しているにもかかわらず、材質的には衝撃に弱いはずのプラスチック製のレンズが破損しなかった理由が理解できず、また、上記ショックアブソーバー痕跡の存在については、刑事記録では触れられておらず、その存在自体が不明である。
キ 鑑定書によれば、原告車は、Y車に衝突された後約五〇m走行し、原告は、衝突された後ハンドルを左に切って道路左側の歩道に進入し、その進入後少なくとも一九m走行していることになる。このような走行状況は、通常はあり得ないことである。
ク 原告及びAに本件転倒事故に関する記憶がなかったため、本件転倒事故の態様の解明は、警察の捜査の結果を待たざるを得なかった。他方で、原告が重篤な傷害を受けており、これを放置できない状況にあったため、本件転倒事故の態様の解明を待たずに、暫定的に保険金の内払いがなされた。その後、刑事記録が入手可能となった結果、原告の傷害とY車の走行とが無関係であることが判明したので、平成一一年三月一五日で支払が停止された。なお、その後、平成一三年三月二日にも支払が存するが、これは、本件訴訟との関係で、原告の治療状況を把握するため、関係医療機関から診断書等を入手した際に支払われたものである。
ケ 本件転倒事故後、原告の呼気から一lにつき〇・一mg未満のアルコール濃度が検出されたこと、原告は、過酷な労働からくる過労状態にあったと考えられることなどからすれば、本件転倒事故は、原告の自損事故であるという可能性が高い。
(2) 損害について
ア 休業損害について
原告が本件転倒事故時まで、花菱縫製及び読売新聞販売店で稼働していたとしても、症状固定時(五八歳)まで、そのような過酷な労働を継続しうるとは考えられない。休業損害を、症状固定日までの全期間にわたり、花菱縫製及び読売新聞販売店からの収入を基礎にして算定するのは相当ではない。
イ 後遺症による逸失利益について
(ア) 上記アと同様に、花菱縫製及び読売新聞販売店からの収入を基礎にして算定するのは相当ではない。
また、当然、花菱縫製には定年制度が存在するのであるから、六〇歳以上の逸失利益の算定においては、賃金センサスの六〇~六四歳又は六五歳以上などを基準として算定すべきである。
(イ) 原告の本件後遺症につき、労働能力喪失率を一〇〇%で算定するのは相当ではない。
ウ 介護費用について
介護費用を認定すべき根拠はない。
エ 入通院慰謝料、後遺症慰謝料及び弁護士費用について
これらにつき原告が主張する金額は、高額に過ぎ、相当ではない。
オ 損益相殺
原告は、労災から休業補償給付として一一七万〇四三八円、障害補償給付として三一三万四六五四円、介護補償給付として二三万五〇四〇円を、また、Y車の保険会社である三井住友海上火災保険株式会社から二三一万二一〇九円を受領したので、これらを損害額から控除すべきである。
第三当裁判所の判断
一 本件転倒事故の態様
(1) 証拠(甲一、二(枝番)、乙一~三、鑑定書、証人C)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件道路の状況(乙一)
本件道路は、埼玉県岩槻市をほぼ南北に走る県道(蒲生岩槻線)であり、路側線から路側線までの幅員が六・一mの見通しのよい道路で、時速四〇kmの速度制限及びはみ出し禁止の交通規制がされている。また、本件道路には、車道の東西両端に歩道が設けられており、車道と歩道との境目には縁石が設置されている。
イ 本件事故の発生(甲一、乙一、鑑定書)
平成九年一一月二日午前三時三〇分ころ、岩槻市大字真福寺一四〇〇番地先の本件道路上において、Y車とB車が正面衝突するという本件正面衝突事故が発生した。本件正面衝突事故は、本件道路をさいたま市方面に向けて進行していたY車が、衝突現場から約六〇m白岡町寄りの地点において突然、センターラインを超えて反対車線に進入し、同車右側のタイヤを道路西側端の縁石に五・八mにわたり接触させた上、そのまま同車線を進行し、同車線を白岡町方面に向けて対向走行してきたB車に衝突したというものである。
また、本件正面衝突事故発生時刻ころ、本件道路をさいたま市方面に進行していた原告車が、Y車とB車の衝突地点から約四〇m白岡町寄りの道路東側の電柱に衝突し、転倒するという本件転倒事故が発生した。原告車が衝突した電柱から白岡町方面に向けて約四・〇mにわたり歩道脇の植え込みがなぎ倒されていた。現場付近歩道に長さ約〇・五mのタイヤ痕が認められたが、現場付近車道にスリップ痕は認められなかった。
Y車とB車の衝突地点、原告車が電柱に衝突した地点、Y車が縁石に接触した地点、原告車の転倒地点、原告の転倒地点、縁石のタイヤ擦過痕、歩道上のタイヤ痕等は別紙図面一、二記載のとおりである。
ウ 車両の状況(乙一~三、鑑定書)
(ア) 破損状況
Y車及びB車は、本件正面衝突により大破した。
原告車には、次の損傷が認められた(乙一の六三~七〇枚目、二)。
a 荷台右後部及び右中央のフックが、前方内側に向かって折れ曲がっている。
b 右側ウインカーが、車体との接合部分で破損し、リード線でぶら下がっている。
c マフラー排出口の右側面に、前後最大二cm、上下最大三cmの凹損がある。同凹損には縁石の粉塵が付着している。
d ナンバープレートの右側が、若干、前方に向かって曲がっている。
(イ) 地上高
a 原告車(乙一の六三~七〇枚目、二、鑑定書)
<1> 荷台右横フック下端(フックの長さ二・八cm)
六五cm
<2> 荷台最後部下端 七〇cm
<3> 右側ウインカー下端 五五cm
右側ウインカー上端 六二cm
<4> マフラー 二五cm
<5> ナンバープレート上端 五五cm
ナンバープレート下端 四五cm
b Y車(鑑定書)
<1> バンパー下部の埋め込み式補助灯中心
三四・五cm
<2> バンパー下端 四一cm
<3> 前照灯レンズ中心 六三cm
<4> ボンネットフード先端 七〇cmを幾分上回る程度
(ウ) 原告車の荷台各部の後端及び車体中心からの長さ
別紙図面三記載のとおり
エ Aの事故前、事故後の状況(乙一)
(ア) A(昭和○年○月○日生、事故当時二九歳)は、本件事故前日(平成九年一一月一日)午後七時ころ、友人に呼ばれて、母である被告所有のY車を運転し、岩槻駅前近くにある居酒屋「天国」に行った。Aは、酒量抑制剤であるシアナミドを毎朝飲んでいたため、同居酒屋で少し大きめのガラスコップ一杯のウーロンハイを飲んだところ、気分が悪くなり、その後しばらくの間、Y車の中で寝ていた。その後、Aは、同居酒屋から帰宅するため、Y車を運転して本件道路をさいたま市方面に向けて走行中、本件正面衝突事故を起こした。
(イ) Aは、本件正面衝突事故により、左尺骨骨折、頭部打撲、胸部打撲の全治二か月の傷害を負い、丸山記念総合病院に搬送された。本件正面衝突事故の直後に丸山記念総合病院で行われたAに対する事情聴取の際、同人に対し飲酒検知を実施したところ、呼気一lにつき〇・一mg以下のアルコール濃度が検出されるにとどまり、酒気帯びとは認められなかった。また、Aは、本件正面衝突事故当時、日常的に精神安定剤や睡眠剤を服用していたが、同事故に際して、それらの薬剤の影響はなかった。
(ウ) Aは、上記(イ)の丸山記念総合病院での事情聴取の際には、「バイクとぶつかった。」と答えた(乙一の二四~二八枚目)が、後日改めて行われた事情聴取の際には、本件事故の記憶を失っており、「事故のことは覚えていない。」と答えた。
オ Bらの事故前、事故後の状況(乙一)
(ア) 本件正面衝突事故当時、B車には、運転者Bのほか、同人の妻D及び子E、同F、同Gの合計五人が乗っていた。本件正面衝突事故により、Bは、左多発性肋骨骨折、顔面・右膝挫創等の加療約三か月間の傷害を、Dは、頸椎捻挫、右手関節・腰部打撲等の加療約五週間の傷害を、Eは、胸骨骨折の加療約一か月間の傷害を、Fは、頸椎捻挫、胸背部・両下腿打撲の加療約五週間の傷害を、Gは、頭部切創、左下腿・右肋骨打撲等の加療約三週間の傷害を負った。
(イ) Bは、本件正面衝突事故についての記憶を有しているが、事故発生前には原告車を見ていなかった。同人は、本件正面衝突事故についての事情聴取において、二台の対向車のうちの後の車が、突然B車の走行車線に飛び出し、道路左側の縁石にぶつかり、もの凄いスピードでB車に向かってきて、B車に衝突したと供述した。
カ 原告の事故前、事故後の状況(甲一、乙一、証人H)
(ア) 原告(昭和○年○月○日生、事故当時五四歳)は、本件事故前日(平成九年一一月一日)午後六時ころまで、花菱縫製で稼働し、その後、居酒屋「あじさい」で、ビール大ジョッキ三杯くらい、ナンコツ、焼き鳥等を飲食し、同日午後七時過ぎころ、帰宅した。原告は、帰宅後、すぐに就寝し、翌日午前二時三〇分ころ、起床し、同日午前三時少し前ころ、家を出て、勤務先である読売新聞販売店所有の原動機付自転車(原告車)を運転し、同販売店に向かった。原告の自宅から、同販売店まではバイクで一五分程度である。その後、原告は、同販売店で新聞を後部荷台に載せ、配達地域に向かうため、本件道路をさいたま市方面に向けて走行中、本件転倒事故に遭遇した。
原告は、新聞配達の際、原告車の後部荷台に前後二つに分けて約一八〇部の新聞を積んでいた。本件転倒事故現場には、新聞が散乱し、原告車の後部荷台には、新聞を積載、固定するための黒いゴムチューブがかけられていた。
(イ) 本件転倒事故の直後に丸山記念総合病院で行われた原告に対する事情聴取の際、同人に対し飲酒検知を実施したところ、呼気一lにつき〇・一mg未満のアルコール濃度が検出されるにとどまり、酒気帯びとは認められなかった。原告は、本件転倒事故前、軽い糖尿病を患い、さいたま市内にある日本赤十字病院に通院し、検査を受けていた。
(ウ) 原告には本件転倒事故に関する記憶がない。
(2) 上記(1)の事実及び鑑定書によれば、次のことがいえる。
ア 原告車の損傷とY車との形状対比
(ア) 原告車の荷台最後部下端の地上高は七〇cm、Y車のボンネットフード先端の地上高は七〇cm強であるから、両者の高さは相前後する。
(イ) 原告車の荷台右横フック下端の地上高は六五cmである。原告車の荷台右横後部及び右中央のフックは前方内側に向かって折れ曲がっているが、荷台後部のフック(地上高約六七cm、車体中心からの距離九・五cm)には損傷が生じていない。
(ウ) 基部から折損した原告車の右側ウインカー上端の地上高は六二cmであり、Y車の前照灯レンズ中心の地上高は六三cmであるから、両者の高さはほぼ同じである。
(エ) 原告車のマフラーの地上高は二五cmであり、Y車のバンパー下部の埋め込み式補助灯中心の地上高は三四・五cmであるから、原告車のマフラー筒口上部とY車のフロントスカート下端の高さは概ね同程度と考えられる。
(オ) 原告車のナンバープレートの地上高は四五~五五cmであり、Y車のバンパー下端の地上高は四一cmであるから、原告車のナンバープレートの高さに該当するY車の部位はバンパーである。
イ 原告車が先行、Y車が追い上げでの事故形態の検討
(ア) 原告車後面全体を見ると、ナンバープレート右側の前方への若干の折れ曲がりを除き、尾灯、泥除け、荷台等に特異な損傷は存在しないから、真後ろからの追突形態は否定される。ナンバープレートの折れ曲がりは原告車とY車の衝突によって生じたものとは認められない。
(イ) 原告車の荷台右横フックの曲損は、前方への外力作用に伴う損傷である。
原告車には原告が乗車し、荷台に新聞が積載されていたから、原告車の折れ曲がった荷台フックの下端の地上高は、六五cmよりも五cm程度低い約六〇cmであったと考えられ、Y車が原告車に衝突してこの位置のフックだけを折り曲げ、荷台に損傷を与えないためには、Y車の先端の高さが六二cm前後となり、原告車の荷台下側にY車の先端が潜り込む必要がある。
Y車は、急にセンターラインを越えて対向車線に飛び出し、対向車線の縁石ブロックに右車輪を擦りつけ、そのまま進行してB車に正面衝突していることからすると、Y車の運転者Aは、何らかの危険回避を行おうとしてハンドルを過大に切りすぎ、Y車を対向車線に進入させたものと認められる。走行中の車両を急旋回させると車体外側に沈み込みが起きる。急制動措置を講じながらの急旋回であれば車体前部の沈み込みはさらに深くなる。原告車を追い上げていたY車が原告車と異常接近し、原告車との衝突を避けるため、右に急旋回したとすれば、Y車の前部左側が約八cm沈み込んでその高さが六二cm前後となることは十分可能である。
(ウ) 原告車のウインカーのレンズ及びその支持部は樹脂成形部品で構成され、泥除けカバーに固定されている支持部の台座は上下二箇所で螺子止めされている。台座からレンズ先端までの距離は一一・五cm、レンズの直径は七cm、支持部の腕の長さは八cmである。右側ウインカーの支持部の後方側は台座の根元から離間し、前方側は台座部を幾分残して折損し、折損部の破面は不揃いな凹凸面を形成しているが、レンズ本体及びレンズカバーに損傷はない。
レンズ本体及びレンズカバーに損傷がないことからすると、右側ウインカーの折損が転倒した際の路面や縁石ブロックとの衝突によって生じたことは否定される。
支持部の材質や長さからすると、前後方向の外力がレンズ先端に加えられれば、その力が軽度であっても折損は容易に起こる。Y車の先端が原告車の荷台の下側に潜り込み、原告車右側ウインカーのレンズ先端に接触することは十分可能である。
(エ) 原告車のマフラー筒口の凹損は、Y車との衝突によって生じたものとは認められない。転倒時に縁石ブロックに衝突した際に生じたものと考えられる。
(オ) 上記(イ)及び(ウ)の衝突形態によれば、原告車の損傷は限定された狭い範囲で、衝撃力も極端に大きくなく、接触時間もごく短かいものである。
原告車は、この衝突により、不意の衝撃を受けて操縦安定性を失い、辛うじて転倒は免れたものの、進路を維持することができず、歩道上のタイヤ痕方向に逸走し、安定性を取り戻すことができないまま、植え込みをなぎ倒し、電柱に衝突したものと考えられる。
Y車の変形破損状況からすると、B車との衝突時のY車の速度は時速八〇~九〇kmであったと推定される。B車が対向車線に進入した際の速度を時速八〇~九〇kmとすると、縁石に衝突するまでの移動距離は三八~四三mとなる。原告車のものと認められる歩道上のタイヤ痕の位置は、Y車が縁石に衝突したことによって生じた縁石のタイヤ擦過痕より約一三m白岡町寄りにあるから、原告車とY車の接触地点は、歩道上のタイヤ痕より白岡町方向へ二五~三〇mの地点ということになる。電柱から原告車及び原告の転倒地点までの距離が三m内外と短く、原告車に擦過損傷が生じていないことを勘案して、原告車の各地点における速度を算出すると、歩道上にタイヤ痕を印象した地点では時速約三一km、上記仮定接触地点では時速約四〇kmとなる。
(3) 上記(1)の道路及び車両の状況、同(2)の検討結果並びにAが事故直後に「バイクとぶつかった。」と供述していたことを総合すると、本件転倒事故は、後方から原告車に接近したY車が、原告車の荷台枠には直接触れずに、原告車の荷台右端から内側へ五cm前後の極めて狭い範囲に、その前部左側を衝突させたことにより生じたものと認めるのが相当である。
なお、被告は、原告車荷台右横フックの曲損はY車との衝突によるものではなく、原告車が転倒したときに生じた損傷であると主張するが、フックの曲損方向が前方内側であることからすると、この曲損が転倒によって(転倒により縁石と接触した際に)生じたものと認めることはできず、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
二 被告の責任
上記一の事故態様によれば、本件転倒事故はY車の運行によって生じたものと認められるから、自己のためにY車を運行の用に供していた被告は、自賠法三条に基づき、本件転倒事故により原告に生じた損害を賠償する責任がある。
三 損害
(1) 休業損害 二一二二万六一八一円
基礎年収 七〇五万六〇六二円
証拠(甲一一、一二)によれば、原告は、本件転倒事故時まで、昼間は花菱縫製に、朝は読売新聞の新聞配達員として稼働しており、花菱縫製からの収入は、平成八年の一年間に五七三万六〇六二円、読売新聞販売店からの収入は、平成九年八月から同年一〇月までの三か月間に三三万円、一年間に換算すると一三二万円であったことが認められる。したがって、平成一〇年三月二一日から平成一三年三月二二日(症状固定日、五八歳)までの一〇九八日間の休業損害の算出に当たっては、五七三万六〇六二円と一三二万円の合計七〇五万六〇六二円を基礎年収とするのが相当である。なお、被告は、原告が、朝は読売新聞販売店で新聞配達をし、日中は花菱縫製で稼働するという過酷な稼働状態を五八歳まで継続できるとは考えられないと主張するが、原告が上記稼働状態を五八歳まで継続できなかったであろうことを窺わせる事情は認められない。
705万6062円÷365日×1098日=2122万6181円
(2) 入通院慰謝料 四〇〇万円
原告は、脳挫傷、頭蓋骨骨折、右膝損傷、右膝窩動脈閉塞等の傷害により、平成九年一一月二日から平成一〇年一二月二一日までの四一五日間にわたり、埼玉医科大学附属病院、丸山記念総合病院等に入院し、退院後も症状固定時まで週二回通院していた。入通院慰謝料は四〇〇万円とするのが相当である。
(3) 入院雑費 六二万二五〇〇円
一日当たり 一五〇〇円
1500円×415日=62万2500円
(4) 後遺症による逸失利益 二九九九万七四五三円
ア 労働能力喪失率 一〇〇%
原告には、脳挫傷による中枢神経系の障害、記銘力障害、右眼失明、右大腿切断の後遺症が認められ、春日部労働基準監督署はこの原告の後遺障害を併合二級に該当すると決定した。また、証拠(甲一四、証人C)によれば、原告は、右大腿切断により、移動の際は、車椅子もしくは左右両方の松葉杖を使用しており、立ち上がる際、階段の昇降の際、バスや乗用車への乗降の際、トイレの際等には他人の介助が必要であり、記銘力障害のため、岩槻駅から自宅までの道順、勤務先であった花菱縫製から自宅までの道順、埼玉県総合リハビリテーションセンターから自宅までの道順を言えず、また、医師から投薬の時間や量についての指示を受けても正確に聞き取れない、弁護士や栄養士から受けた伝言依頼を正確に伝えられない等という状態にあることが認められる。以上によれば、労働能力喪失率は一〇〇%と認めるのが相当である。
イ 基礎年収
証拠(乙一)及び弁論の全趣旨によれば、花菱縫製においても六〇歳定年制が採用されているものと認められるところ、定年後再雇用の可能性の有無、再雇用される場合の給与額等は不明である。他方、原告のこれまでの就労実績からすると、原告が六〇歳以降再就職して稼働し続ける蓋然性は高いといえる。よって、次のとおり、六〇歳までは上記七〇五万六〇六二円、六〇歳以降は賃金センサス(賃金センサス平成一三年第一巻第一表・産業計・企業規模計・男性労働者学歴計)の平均年収額を基礎年収額として、後遺症による逸失利益の額を算定するのが相当である。
五八歳~六〇歳 七〇五万六〇六二円
六〇歳~六四歳 四六七万〇五〇〇円
六四歳~六七歳 四〇九万四五〇〇円
ウ ライプニッツ係数(基準時・事故発生時)
五八歳~六〇歳 五・〇七五六-三・五四五九=一・五二九七
六〇歳~六四歳 七・七二一七-五・〇七五六=二・六四六一
六四歳~六七歳 九・三九三五-七・七二一七=一・六七一八
エ 逸失利益の額
705万6062円×1.5297+467万0500円×2.6461+409万4500円×1.6718=2999万7453円(1円未満切り捨て)
(5) 後遺症による慰謝料 二三〇〇万円
原告の後遺障害の程度によれば、後遺症による慰謝料は二三〇〇万円とするのが相当である。
(6) 介護費用 一八二七万二九二二円
ア 一日当たり 四〇〇〇円
原告は、右大腿を切断したことにより、立ち上がる際、階段の昇降の際、バスや乗用車への乗降の際、トイレの際等には他人の介助が必要であり、記銘力障害のため、岩槻駅から自宅までの道順、勤務先であった花菱縫製から自宅までの道順、埼玉県総合リハビリテーションセンターから自宅までの道順を言えず、また、医師から投薬の時間や量についての指示を受けても正確に聞き取れない、弁護士や栄養士から受けた伝言依頼を正確に伝えられない等という状況にあり、日常生活に介護が必要であるものと認められ、その要介護の程度によれば、介護費用として一日当たり四〇〇〇円を認めるのが相当である。
イ 期間 五六歳から八〇歳まで
平均寿命 八〇歳
退院日(平成一〇年一二月二一日) 五六歳
ウ ライプニッツ係数(基準時・事故発生時)
一二・五一五七
14.3751(26年)-1.8594(2年)=12.5157
エ 介護費用の額
4000円×365日=146万円
146万円×12.5157=1827万2922円
(7) 損害の填補
ア 介護補償給付
労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)による介護補償給付は、障害補償年金又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であって省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間、当該労働者に対し、その請求に基づいて行うものである(同法一二条の八第四項)から、介護費用の賠償と同給付は「同一の事由」の関係にある。
イ 休業補償給付、障害補償給付
労災保険法による休業補償給付及び障害補償給付は、いわゆる消極損害が生じた場合に行われる給付であり(労働基準法七六条一項、七七条、労災保険法一四条、一五条)、休業損害及び後遺症による逸失利益の賠償とこれらの給付とは「同一の事由」の関係にある。
また、労災保険法による障害補償給付の支給を受けるべき者につき、支給を受けることが確定した同給付の額の限度で、その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額からこれを控除すべきものと解するのが相当である(最高裁平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁、最高裁平成一一年一〇月二二日第二小法廷判決・民集五三巻七号一二一一頁参照)ところ、証拠(甲一七(枝番)、乙五、九)及び弁論の全趣旨によれば、原告に対しては、障害程度の変更、物価スライド等による支払金額の変動がなければ、偶数月に二か月分として二一万四四一〇円の障害補償給付が支払われることが認められ、他方、平成一五年八月分の支払金額に変動があったと認めるに足りる証拠はないから、平成一五年八月分の一〇万七二〇五円(二一万四四一〇円÷二=一〇万七二〇五円)についても控除を認めるのが相当である。
ウ 三井住友海上からの保険金
三井住友海上からの保険金のうち、原告に対して支払われた二三一万二一〇九円は、損害額全体から控除されるべきものである。
エ 損害填補額控除後の金額 九〇一五万九六一〇円
よって、上記(6)の介護費用一八二七万二九二二円から前記第二の二(4)ア(エ)の介護補償給付二三万五〇四〇円を控除し、上記(1)の休業損害二一二二万六一八一円及び上記(4)の後遺症による逸失利益二九九九万七四五三円の合計五一二二万三六三四円から前記第二の二(4)ア(イ)の休業補償給付のうち保険給付額及び同(ウ)の障害補償給付のうち障害補償年金額の合計四三〇万五〇九二円並びに上記イの一〇万七二〇五円を控除し、これらの控除後の損害額合計から三井住友海上からの保険金二三一万二一〇九円を控除すると損害額残金は九〇一五万九六一〇円となる。
9711万9056円((1)~(6)の合計)
-23万5040円
-430万5092円-10万7205円
-231万2109円
=9015万9610円
(8) 弁護士費用 九〇〇万円
原告が本件訴訟の提起及び訴訟の追行を原告代理人らに委任したことは本件訴訟記録上明らかであり、本件事案の内容、性質、審理経過、認容額等諸般の事情に照らすと、損害として認めうる弁護士費用は九〇〇万円とするのが相当である。
(9) 弁護士費用を加えた損害額残金 九九一五万九六一〇円
9015万9610円+900万円=9915万9610円
四 結論
以上によれば、原告の本件請求は、九九一五万九六一〇円及びこれに対する本件転倒事故の日である平成九年一一月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山﨑まさよ 松田浩養 馬場潤)
別紙図面1-交通事故現場見取図1
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別紙図面2-交通事故現場見取図2
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別紙図面3 (図1)
<省略>
(図2)
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