さいたま地方裁判所 平成13年(わ)1831号 判決 2002年2月14日
主文
被告人を懲役3年及び罰金30万円に処する。
未決勾留日数中60日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
押収してある覚せい剤4袋(平成14年押第4号の1ないし4)及び乾燥大麻1袋(同押号の5)を没収する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,みだりに,
第1 平成13年10月4日,a市内の被告人方2階6畳子供部屋において,乾燥大麻約0.45グラム(平成14年押第4号の5はその鑑定残量)を所持するとともに,営利の目的で,覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶状粉末約1.61グラム(同押号の1,2はその鑑定残量)を所持し,
第2 営利の目的で,同日,前記被告人方車庫に駐車中の普通乗用自動車内において,覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶状粉末約14.552グラム(前同押号の3,4はその鑑定残量)を所持した。
(証拠)
省略
(法令の適用)
罰条
第1の行為
大麻所持の点
大麻取締法24条の2第1項
覚せい剤所持の点
覚せい剤取締法41条の2第2項,1項
第2の行為
覚せい剤取締法41条の2第2項,1項
科刑上一罪(第1の罪)
刑法54条1項前段,10条(重い覚せい剤取締法違反罪の刑で処断)
刑種選択
いずれも情状により懲役刑及び罰金刑を選択
併合罪の処理
懲役刑について刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の懲役刑に同法14条の制限内で法定の加重をする。),罰金刑について刑法48条2項
未決算入
刑法21条(懲役刑に算入)
労役場留置
刑法18条(金5000円を1日に換算する。)
没収
覚せい剤取締法41条の8第1項本文(平成14年押第4号の1,2は第1の罪に係る物件,同押号の3,4は第2の罪に係る物件),大麻取締法24条の5第1項本文(同押号の5は第1の罪に係る物件)
訴訟費用
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 本件は,被告人が,営利目的で覚せい剤を所持するとともに,大麻を所持した事案である。
2 営利目的所持に係る覚せい剤の量は,合計約16グラム余りと多量であり,それ自体誠に悪質な犯行であることはいうまでもない。被告人は,これらの覚せい剤を密売人から購入し,その一部をビニール小袋に小分けした上,ファスナー付きビニール袋に入った残りの覚せい剤を,空のビニール小袋や小型計量器とともに自己の常用する自動車において所持しており,こうした入手経過や所持量,所持態様に照らすと,被告人には積極的な営利の目的があったものと認められ,また被告人は,密売人と思われる知人と親しく付き合い,その指示を受けたりしながら行動していたことが窺われるのであって,犯情は悪質である。しかも,被告人は,上記覚せい剤のほか大麻も所持している上,本件犯行に至る経緯や覚せい剤の入手状況につきあいまいな供述に終始している点も看過できず,覚せい剤が人心を荒廃させ,犯罪を誘発するなどその害悪が広く認識され深刻な社会問題となっている今日,本件が厳しい非難を免れないことなどを併せ考えると,被告人の刑責は重いといわざるを得ない。
3 そうすると他方において,被告人には前科がないこと,被告人が本件各犯行自体を認め,被告人なりに反省の態度を示していること,大麻の所持量は多量とはいえないこと,母親が今後の被告人の監督を誓っていること,被告人には養うべき妻子がいることなど,被告人のために斟酌しうる事情を十分考慮しても,被告人に対しては主文の刑を科するのが相当である。
(求刑 懲役4年及び罰金30万円,覚せい剤及び大麻の没収)
(裁判長裁判官 吉村正 裁判官 大渕真喜子 裁判官 小笠原義泰)