大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

さいたま地方裁判所 平成13年(行ウ)26号 判決 2003年3月05日

原告

A株式会社

同代表者代表取締役

被告

秩父税務署長 町田政行

同指定代理人

小野寺雅之

畑山茂樹

萩原一夫

内田健文

北田聖一

若山政行

東野登代次

村手康之

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の申立て

1  原告

(1)  被告が原告に対し平成10年3月30日付けでした、平成6年4月1日から平成7年3月31日までの課税期間(秩法書第169号、以下「平成7年3月課税期間」といい、他の課税期間についても同様にいう。)の消費税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分、平成8年3月課税期間(秩法書第170号)の消費税更正処分並びに平成9年3月課税期間ないし平成11年3月課税期間(秩法書第171号、秩法書第157号、秩法書第156号)の各消費税更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分は、いずれも無効であることを確認する。

(2)  被告が原告に対し平成11年12月24日付けでした、平成10年3月課税期間(秩法書第157号)及び平成11年3月課税期間(秩法書第156号)の消費税及び地方消費税各更正処分並びに各過少申告加算税賦課決定処分は、いずれも取り消す。

(3)  訴訟費用は、被告の負担とする。

2  被告

主文同旨

第2事案の概要

1  事案の要旨

(1)  本件は、いわゆる建売住宅の販売業者である原告が、被告がした平成7年3月課税期間ないし平成9年3月課税期間の消費税更正処分及び平成8年3月課税期間を除く各期の過少申告加算税賦課決定処分(以下、これらの処分を併せて「本件前3課税期間処分」という。なお、前者を単に「更正処分」、後者を単に「決定処分」という。)の無効確認を求めるとともに、平成10年3月課税期間及び平成11年3月課税期間の消費税及び地方消費税各更正処分並びに各決定処分(以下、両者の処分を併せて「本件後2課税期間処分」といい、本件前3課税期間処分と併せて「本件処分」という。)の取消し及び無効確認を求めた事案である。

(2)  原告は、本件前3課税期間処分につき、下記ア、イの理由により違法な処分であるから無効というべきこと、平成10年3月課税期間処分(更正処分及び決定処分を併せた意で用い、以下同様とする。)につき、下記ア、イ、ウ、エ(ア)の理由により違法な処分であるから無効確認ないし取消しがされるべきこと、平成11年3月課税期間処分につき、下記ア、エ(イ)の理由により違法な処分であるから無効確認ないし取消しがされるべきことを主張する。

ア 理由の附記

更正処分につき、青色申告納税者には必要条件とされている理由の附記を欠いている。

イ 事業区分の判定

更正処分につき、簡易課税制度の事業区分判定において、原告が営むいわゆる建売住宅の販売業は、消費税法施行令57条所定の「小売業」であって、第二種事業に該当するにもかかわらず、原告の事業が第三種事業に該当するとした誤りがある。

ウ 売上げに係る対価の返還

平成10年3月課税期間更正処分につき、課税売上高に加算した販売用建物には、値引き(損切り)販売をしたものがあるから、消費税法38条(売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除)を適用すべきである。

エ 過少申告加算税の賦課決定処分と還付金留保

(ア) 平成10年3月課税期間決定処分につき、被告において留保凍結した還付金が存していたから、その部分についてまで過少申告加算税を課すべきではない。

(イ) 平成11年3月課税期間決定処分についても、被告において留保凍結した還付金が存しており、また、課税売上高が0円になったため、消費税等の金額の還付請求も発生しないこととなったのであるから、納付すべき消費税等の金額及び過少申告加算税も発生しない。

(3)  これに対し、被告は、上記アないしエを争い、本件処分の適法性を主張する。

これらの法律上の論点が本件の争点である。

2  基本的事実関係(当事者間に争いがない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)

(1)  当事者等

原告は、不動産の売買・賃貸・管理及びその代理・媒介等を目的として設立された株式会社である。

そして、原告は、いわゆる建売住宅の販売業者であるところ、原告自らが建築主として建築基準法における建築確認を受け、B、乙及びCなどの建設業者との間で、原告自らが施主となって請負契約を締結し、建設業者に施工させた建物を一般消費者に販売するという事業を営んでいるのであって、他の業者が施主となって建築した建物や他の業者が購入した建物の仕入販売は行っていない。

(2)  本件前3課税期間処分の経緯等

ア 原告は、消費税法37条1項に規定する政令で定める事業につき、消費税法施行令57条5項にいう第二種事業であり、みなし仕入率は80%であるとして、別表1記載のとおり、確定申告を行った。

イ 被告は、原告に対し、原告の営む事業は、第二種事業には当たらず、第三種事業に当たると判断し、みなし仕入率は70%であるとして、別表1の「更正・決定」(又は「更正」)欄記載のとおり、本件前3課税期間処分を行った。

(3)  本件後2課税期間処分の経緯等

ア 原告は、本件前3課税期間と同様に、消費税法施行令57条5項にいう第二種事業であり、みなし仕入率は80%であるとして、以下のとおり、確定申告を行った(別表2参照)。

イ 原告の平成10年3月課税期間申告及び平成11年3月課税期間申告に対し、被告は、本件前3課税期間と同様に、原告の営む事業は、第二種事業には当たらず、第三種事業に当たると判断し、みなし仕入率は70%であるとしたほか、下記(ア)(イ)のとおり更正して、別表3及び同4記載のとおり、本件後2課税期間処分を行った。

(ア) 平成10年3月課税期間

被告は、原告の平成10年3月課税期間申告書に記載された課税売上高には、同期間における課税資産の譲渡等の対価の額と認められる手数料収入の金額及び同期間に引渡しが完了した販売用建物(買主・丙、以下「丙」という。)の販売金額841万5536円(税抜)がいずれも計上されていなかったことから、当該各金額を原告の平成10年3月課税期間における課税売上高に加算した上で(これにより、同期間における課税標準額は2867万6000円となる。)、別表3「更正処分等」欄記載のとおり、平成10年3月課税期間処分を行った(別表4は、原告による中間納付税があることを踏まえて、別表3における更正処分の計算内容を敷衍したものである。)。

(イ) 平成11年3月課税期間

被告は、原告の平成11年3月課税期間申告書に記載された課税売上高には、上記(ア)に記載した平成10年3月課税期間に引渡しが完了していると認められる販売用建物の売上金額(税抜)が計上されていたことから、当該金額を原告の平成11年3月課税期間における課税売上高から減算したところ、当該課税期間における課税売上高が0円となったため、別表3「更正処分等」欄記載のとおり、平成11年3月課税期間処分を行った。

ウ 充当

その後、被告は、平成12年1月26日付けで、国税通則法57条1項に基づき、平成10年3月課税期間の消費税等の確定申告に係る還付金額24万9900円を、同期間更正処分に係る納付すべき税額33万4400円の一部に充当し、また、平成11年3月課税期間の消費税等の確定申告に係る還付金額30万1788円を、a 当該課税期間更正処分に係る納付すべき税額30万1700円全部に充当し、b 残額88円につき、平成7年3月課税期間の未納消費税の一部に委託納付した。

(4)  原告の不服申立て等

ア 本件前3課税期間処分について(別表1)

(ア) 原告は、本件前3課税期間処分につき、別表1記載のとおり、異議申立て及び審査請求をしたが、これに対する決定及び裁決は、別表1記載のとおり、いずれもこれを棄却した(なお、原告は、別表1記載のとおり、再審査請求をも行ったが、これに対する裁決は、不適法なものとして却下された。)。

(イ) さらに、原告は、本件前3課税期間処分の取消しを求める訴えを提起したが(当裁判所平成12年(行ウ)第12号事件)、同判決は、原告の訴えは、行訴法14条4項、1項所定の出訴期間を徒過した不適法なものであるとして、これを却下した。

イ 本件後2課税期間処分について(別表2)

(ア) 原告は、本件後2課税期間処分につき、別表2記載のとおり、異議申立てをした。

これに対し、被告は、本件後2課税期間の消費税の差引税額及び地方消費税の納付譲渡割額は、別表5のとおりとなり、平成10年3月課税期間の消費税の差引税額は原処分(平成10年3月課税期間更正処分)の金額を上回り(別表5<3><5><7>と別表3<3><6><9>及び別表4<2><3><5>対照)、平成10年3月課税期間の地方消費税の納付譲渡割額、平成11年3月課税期間の消費税の差引税額及び地方消費税の納付譲渡割額は原処分(本件後2課税期間処分)の金額と同額になる旨を論じて、本件後2課税期間処分はいずれも適法なものであるとして、異議申立てを却下する決定をした。

(イ) さらに、原告は、本件後2課税期間処分につき、別表2記載のとおり、審査請求をしたが、裁決は、本件後2課税期間処分はいずれも適法なものであるとして、これを棄却した。

(5)  本訴提起等

原告は、平成13年6月20日、本件前3課税期間処分につき無効の確認を、本件後2課税期間処分につき取消し及び無効の確認を求めて、本訴を提起した。

3  争点に関する当事者の主張

(1)  原告

ア 理由の附記(争点1)

被告が原告に対して送達した本件処分に係る各通知書には、青色申告者の更正には必要条件とされている理由の附記(法人税法130条)がなされていない。

そもそも、本件処分に係る各通知書に理由の附記がないことは、憲法で保障された国民の権利を無視し、憲法で課せられた国家(行政)及び公務員の義務(責任)を放棄したものである。

よって、法人税法130条及び判例(最高裁判所第二小法廷昭和38年5月31日判決・民集17巻4号617頁)の趣旨に反し、更に憲法の趣旨に反するから、本件前3課税期間処分は、いずれも無効というべきであり、また、本件後2課税期間処分は、いずれも無効確認ないし取消しがされるべきである。

イ 事業区分の判定(争点2)

原告は、建物の建築については建売住宅販売契約の前に建築確認を取り建設業者に建築の依頼(施主として請負契約)をしているものであるが、自ら労働者を雇用せず、分譲すべき土地の造成及び建物の建設をしていないのであるから、広義の商品販売業というべきであり、販売業といえば常識的には卸売業か小売業というべきである。そして、原告は一般消費者を相手に事業を行っているものであるから、原告の事業は、消費税法施行令57条5項2号所定の第二種事業である小売業に該当するというべきである。

したがって、原告が営むいわゆる建売住宅の販売業は、第二種事業に該当するにもかかわらず、被告は、原告の営む事業が同項に規定する第三種事業に該当するとして、更正処分を行ったものであるから、本件前3課税期間処分は、いずれも無効というべきであり、また、平成10年3月課税期間処分は、無効確認ないし取消しがされるべきである。

ウ 売上げに係る対価の返還(争点3)

被告が平成10年3月課税期間に既に引渡しが完了しているとして、被告が同期間更正処分により同期間課税売上高に加算した販売用建物(買主・丙)の税抜販売金額841万5536円は、原告において値引き(損切り)販売をしたものである。簡易課税制度においては、控除対象仕入税額がみなし仕入率により算出されることから、そのような値引き(損切り)販売により原価割れした額に係る支払消費税等に対する損失の補てん方法がない。このため、重複課税となるから、消費税法基本通達13-1-6においては簡易課税制度適用者にも売掛金等としてその損失分に対する税額控除を認めている。そこで、調査の結果、貸倒れ、値引き、損切りによる販売が真実であると認められた場合には、消費税法38条により、同期間の値引販売に係る値引部分の消費税を還付すべきである。

エ 過少申告加算税の賦課決定処分と還付金留保(争点4)

(ア) 平成10年3月課税期間について

被告において申告による還付金が留保凍結していたのであるから、被告が留保凍結した時点に遡って還付加算金を付し、その上で過少申告加算税を賦課すべきであって、凍結期間に対応する還付加算金を付けずに過少申告加算税のみを賦課するのは片務契約というべきである。

また、仮に第三種事業として更正による売上金を加えて計算しても、還付請求は留保凍結されていたから、その部分についてまで過少申告加算税を賦課すべきではなく、基礎となる消費税等の金額は8万4500円となり、平成10年3月課税期間決定処分の金額は8000円というべきである。

(イ) 平成11年3月課税期間について

平成11年3月課税期間申告書による還付金についても、被告において留保凍結されており、更に、課税売上高が0円と更正され、消費税等の金額の還付請求も発生しないこととなったのであるから、納付すべき消費税等の金額及び過少申告加算税も発生しないというべきである。

(2)  被告

本訴のうち、本件処分に係る無効確認請求については、当該処分が無効であることの確認を求める原告において、無効事由たる重大かつ明白な違法を具体的事実に基づいて主張立証しなければならないところ、下記のとおり、何ら無効事由はないというべきである。

また、本件後2課税期間処分に係る取消請求については、被告が、本訴において主張する本件後2課税期間に係る消費税の納付すべき税額及び納付すべき譲渡割額の計算根拠は、別表6(平成10年3月課税期間更正処分の根拠)及び別表7(平成11年3月課税期間更正処分の根拠)のとおりであり、また、本件後2課税期間各決定処分の根拠及び適法性については、別表8(本件後2課税期間各過少申告加算税賦課決定の根拠及び適法性)のとおりであるところ、これらについても下記のとおり、何ら違法事由はないというべきである。

ア 理由の附記(争点1)

(ア) 国税通則法24条から26条までの規定による更正又は決定の理由は、更正又は決定通知書の一般的記載事項とはされておらず(国税通則法28条2項、3項)、また、消費税法にも、更正通知書に理由を附記すべき旨を定めた規定は存しないから、本件処分に係る各通知書に処分理由の附記がないからといって、無効確認ないし取消しがされるべき違法の瑕疵はないものというべきである。

なお、原告は、本件処分に係る各通知書に理由の附記がないことは憲法の趣旨に反する旨を主張するが、制定法に特段の定めがないときには、侵害処分であっても理由の附記を要しないとするのが確立された判例であり、理由の記載を更正処分の手続上の要件とするかどうかは立法府の決定に委ねられているもの(国税通則法74条の2参照)と解すべきであるから、憲法違反の問題を生じるものではないというべきである。

(イ) したがって、本件前3課税期間処分には、いずれも無効というべき瑕疵はなく、本件後2課税期間処分にもまた、いずれも無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

イ 事業区分の判定(争点2)

(ア) 消費税法37条1項に規定する政令で定める事業については、消費税法施行令57条1項が、みなし仕入率につき、第二種事業は100分の80、第三種事業は100分の70と規定しているところ、同条5項2号において、第二種事業とは、小売業、同項3号において、第三種事業とは、農業、林業、漁業鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業の各事業(第一種事業及び第二種事業に該当するもの並びに加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。以下「製造業等」という。)をいうものと規定している。

そして、製造業等の範囲については、消費税法上他に事業分類を定めた規定がないので、おおむね、産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとして取り扱われている(消費税法基本通達13-2-4)。

(イ) ところで、第二種事業である小売業については、消費税法施行令57条6項において、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で卸売業以外のものをいう旨規定され、一方、第三種事業である製造業については、同条5項3号へにおいて、製造した棚卸資産を小売する事業を含む旨規定されている。

したがって、いわゆる建売住宅の販売業は、それが他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業に該当するか、それとも自ら製造した資産を小売する事業に当たるか、換言すれば、他の者から購入した建物をその性質及び形状を変更しないで一般消費者に販売する事業形態をとっているか、あるいは自ら建築施工した建物を小売する事業形態をとっているかにより、第二種事業又は第三種事業に分類されるというべきである。

そうであるとすれば、他の者が自ら施主として建築施工した建物を、その者から購入した上、これをその性質及び形状を変更しないで一般消費者に販売する事業形態をとる建売販売業の場合は、小売業として第二種事業に分類されることとなるが、販売業者自らが建物を建築施工した上、これを一般消費者に販売する場合はもとより、販売業者自らが施主となり、他の建築業者との間に締結した請負契約に基づいて同建築業者に建物を建築施工させた上、これを一般消費者に販売する場合についてもまた、製造業として第三種事業に分類されるというべきである。

そして、このことは、消費税法基本通達13-2-4(「消費税法基本通達の一部改正等について(平成10年3月31日付課消2-9)」による改正後のもの)の注書きに、「建売住宅を販売する建売業のうち、自ら建築した住宅を販売するものは、簡易課税制度における第三種事業の建設業に該当する」旨定められているとおりである。

(ウ) これを本件に当てはめると、「原告は、建物の建築については建売住宅販売契約の前に建築確認を取り建設業者に建築の依頼(施主として請負契約)をしている」と自認しているとおり、原告自らが建築主として建築基準法における建築確認を受け、B、乙及びCなどの建設業者との間で口頭などによる請負契約を締結し(乙第7号証及び第8号証)、B等が建築施工した建物を一般消費者に販売しているのであり、他の業者が施主となって建築した建物や他の業者から購入した建物の仕入販売を行っているものではなく自らが施主となっているものであるから、原告の営む事業は、消費税法上、第二種事業の小売業ではなく、第三種事業の建設業に該当するものである。

よって、原告の営む事業に適用されるべきみなし仕入率は、70%というべきであり、これを用いた本件処分は、適法なものというべきである。

(エ) したがって、本件前3課税期間処分には、いずれも無効というべき瑕疵はなく、平成10年3月課税期間処分にもまた、無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

ウ 売上げに係る対価の返還(争点3)

(ア) 原告は、平成10年3月課税期間の課税売上高のうち、販売用建物(丙建物)の税抜販売金額841万5536円(別表6の(1)イ(イ)参照)につき、値引き(損切り)販売をしたものであるから、消費税法38条により消費税額の還付を行うべき旨を主張するが、同条が規定する「売上げに係る対価の返還等」とは、既に行った課税資産の譲渡等について、その後返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、既に受理した対価の額の全部若しくは一部を返還し、又は売掛金その他の債権を減額した場合をいうのであるから、対価の返還等を伴わない単なる値引販売がこれに該当しないことは明らかであり、原告の主張は失当である。

(イ) 以上のほか、平成10年3月課税期間更正処分の根拠は別表6のとおりであり、何ら違法な点はなく、同処分につき、無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

エ 過少申告加算税の賦課決定処分と還付金留保(争点4)

(ア) 平成10年3月課税期間について

国税通則法65条1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し「その修正申告又は更正に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額」に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定しており、同項2号及び同法28条2項3号イないしハの規定の内容からみて、この「更正に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額」には、同法28条の2項3号イの更正により増加する部分の納付すべき税額のほか、同号ロの更正により減少する部分の還付金の額に相当する税額が含まれることは明らかというべきあり、この場合において還付金の額に相当する税額について実際に還付を受けたか否かを問うものではない。

そうすると、更正により更正前の還付金の額に相当する税額が無くなり、納付すべき税額が生じた場合において、過少申告加算税の計算の基礎となる税額は、その更正により生じた納付すべき税額と減少した還付金の額に相当する税額を合計した税額となるところ、被告は、平成10年3月課税期間更正処分により生じた納付すべき税額(消費税額6万7700円及び地方消費税額1万6900円の合計額8万4600円)と減少した還付金の額に相当する税額(消費税額19万9900円及び地方消費税額5万円の合計額24万9900円)との合計額33万円(ただし、国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)を過少申告加算税の計算の基礎として、平成10年3月課税期間決定処分を行ったものであり、何ら違法とされる所以はないというべきである。

なお、仮に、原告が本件10年3月課税期間更正処分により新たに納付すべき消費税等の合計額を納付した場合には、被告は原告の還付金の保留を解除し、当該法定納期限である平成10年6月1日から年7.3パーセントの割合を乗じて計算した還付加算金を加算し還付することとなる(国税通則法58条1項1号)が、一方で原告は、上記の新たに納付すべき税額のほかに、平成10年6月1日から、年7.3パーセント(ただし、納期限から2月を経過する日の翌日からは14.6パーセント)の割合を乗じて計算した延滞税を納付すべきこととなるのであるから(同法60条1項2号及び同条2項)、被告が行った還付留保金額の充当処分は、原告に対して何ら不利益を現出させていないことを付言する。

(イ) 平成11年3月課税期間について

被告は、平成10年3月課税期間決定処分におけると同様、平成11年3月課税期間更正処分により減少した還付金の額に相当する税額(消費税額24万1400円及び地方消費税額6万0300円の合計額)30万円(ただし、国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)を過少申告加算税の基礎として、平成11年3月課税期間決定処分を行ったものであり、何ら違法とされる所以はないというべきである。

(ウ) したがって、本件後2課税期間決定処分は、いずれも適法なものであって、原告の主張は失当というべきである。

第3当裁判所の判断

1  理由の附記(争点1)について

(1)  甲1号証ないし5号証によれば、本件処分に係る通知書には、いずれも、更正処分ないし決定処分の内容たる税額計算等が記載されているに止まり、原告の確定申告における税額計算を更正した具体的な理由は付されていない事実が認められる。

(2)  ところで、国税通則法上、一般的に更正処分につき理由の附記を要求する規定はなく、また、消費税法も、消費税の更正処分につき理由の附記を要求する規定はない。更に、国税通則法は、明文をもって、国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政手続法第3章(不利益処分)の規定の適用を排除しているところである(同法74条の2第1項)。

一方、法人税法130条2項は、「税務署長は、内国法人の提出した青色申告書又は連結確定申告書等に係る法人税の課税標準又は欠損金額若しくは連結欠損金額の更正をする場合には、その更正に係る国税通則法第28条第2項(更正通知書の記載事項)に規定する更正通知書にその更正の理由を付記しなければならない。」と規定しており、確かに理由の附記を要求している。

しかしながら、多量の事案を短時間で処理しなければならない更正処分について、すべての処分に理由の附記を要求することは課税の能率、徴税事務の円滑化等の見地から不適切であるといわざるを得ず、そうであるからこそ、国税における通則法たる国税通則法は、一般的に更正処分につき理由の附記を要求する規定を置かないばかりでなく、同法74条の2によって、行政手続法第3章(不利益処分)の規定の適用を特に排除したものと解されるところであり、法人税法130条等他の法令に規定なき限り、原則として、更正処分に係る理由の附記は不要であることを明らかにする趣旨といわざるを得ない。そして、原告の主張する法人税法130条の規定は、帳簿備付け、記帳、確定申告における明細書添付等の義務を負う青色申告者を優遇し、青色申告の普及を促進する点をも考慮した結果、法人税の課税標準等に係る更正処分の際の理由附記を青色申告に限定して要求したものと解されるから、消費税の更正処分にこれを類推適用することは相当ではない(なお、消費税において、青色申告なる制度は存しないことはいうまでもない。)。

したがって、消費税の更正処分につき、理由の附記を要求する規定が消費税法上存しない以上、理由の附記は不要というべきである。

原告は、本件処分に係る各通知書に理由の附記がないことは、憲法で保障された国民の権利を無視するものである旨を主張するが、採用できない。なお、国税に関する法律に基づき行われる処分については、納税者は、第三者的機関である国税不服審判所に対し審査請求するに先だって、必ず処分理由を知りうることが保障されており(同法84条5項、89条2項、90条4項、111条2項参照)、更に、原告は基本的事実関係のとおりの不服申立手続における各決定、裁決によっても、本件処分の理由を十分に開示されたことが認められる。

(3)  そうすると、本件処分に係る各通知書に理由の附記がないことをもって、本件前3課税期間処分に係る無効の瑕疵となるものではなく、かつ、本件後2課税期間処分に係る無効確認ないし取消しの瑕疵となるものではないというべきである。

2  事業区分の判定(争点2)について

(1)  原告は、いわゆる建売住宅の販売業者であるところ、平成7年3月課税期間ないし平成11年3月課税期間においても、原告自らが建築主として建築基準法における建築確認を受け、建設業者との間で、原告自らが施主となって請負契約を締結し、建設業者に施工させた建物を一般消費者に販売するという事業を営んでいたことは、原告の自認するとおりである。

(2)  ところで、消費税法施行令57条1項は「法第37条第1項に規定する政令で定める事業は、次の各号に掲げる事業とし、同項に規定する政令で定める率は、当該事業の区分に応じ当該各号に定める率とする。」と規定し、みなし仕入率につき、同項2号は「第二種事業 100分の80」、同項3号は「第三種事業 100分の70」と各規定している。

そして、同条5項2号は「第二種事業 小売業をいう。」と規定し、同条6項は「卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいうものとし、小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で卸売業以外のものをいうものとする。」旨規定している。

さらに、同条5項3号は「農業、林業、漁業鉱業、建設業、製造業(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業の各事業(卸売業及び小売業に該当するもの並びに加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。)」旨を規定している。

このように、第二種事業たる小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で卸売業以外のものをいうとされ、一方、製造業については、「製造した」棚卸資産を小売する事業を含めて第三種事業とされていることからすると、建売住宅の販売業についてみれば、他の者から購入した建物をその性質及び形状を変更しないで一般消費者に販売する事業形態をとっているような場合は第二種事業に当たるが、自ら建築施工した建物を販売する事業形態をとっているような場合には基本的に第三種事業に分類されると解するのが相当である。

(3)  本件についてこれをみるに、原告は、自らが建築主として建築基準法における建築確認を受け、建設業者との間で、原告自らが施主となって請負契約を締結し、建設業者に施工させた建物を一般消費者に販売する事業形態をとっていたものと認められる(原告自らが施主となって請負契約を締結して建物を建築した以上、現実の施工が他の業者であっても、社会通念上、なお原告自らが建築施工したものと認められる。)。

そうすると、原告の営む事業は第三種事業に分類されるのが相当であるから、みなし仕入率70%を用いたことにつき、本件前3課税期間処分に、いずれも無効というべき瑕疵はなく、平成10年3月課税期間処分にもまた、無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

3  売上げに係る対価の返還(争点3)について

(1)  甲12号証、乙21号証及び弁論の全趣旨によれば、丙建物の売買代金50万円につき、平成10年2月4日において既に値引きとして確定している事実、平成10年3月課税期間処分は、その課税標準額につき上記売上値引き後の金額によって計算したものである事実が認められるところ、原告は、かかる値引き(損切り)販売を理由に、消費税法38条(売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除)を適用すべき旨を主張する。

(2)  ところで、消費税法38条は、「事業者が、国内において行った課税資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該課税資産の譲渡等の対価の額と当該対価の額に100分の5を乗じて算出した金額との合計額の全部若しくは一部の返還又は当該課税資産の譲渡等の税込価額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額(以下「売上げに係る対価の返還等」という。)をした場合には、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間において行った売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(当該返還をした税込価額又は当該減額をした債権の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。)の合計額を控除する。」旨を規定しているが、本件の平成10年3月課税期間処分は、その課税標準額につき売上値引き後の金額によって計算したものであって、原告の主張する上記50万円の値引きは「売上げに係る対価の返還等」とは到底いえない。

(3)  そうすると、平成10年3月課税期間処分において、消費税法38条の適用がされなかったことに違法な点はなく、同処分につき、無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

4  以上の説示に照らせば、本件前3課税期間処分は、更正処分及び決定処分のいずれにおいても、いずれも無効ということができないものである。

そして、本件後2課税期間更正処分についても、適法なものと認められる。

5  過少申告加算税の賦課決定処分と還付金留保(争点4)について

(1)  過少申告加算税算定の基礎たる「納付すべき税額」(国税通則法65条1項)について

ア 原告は、本件において過少申告加算税が賦課されるべきでないとして、前記のとおり主張するところ、国税通則法65条1項は、「期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。」旨を規定しているところである。

したがって、過少申告加算税が賦課されるべきか否かは、本件において同項所定の「納付すべき税額」が認められるか否かによるものといえる。

イ 国税通則法65条1項の規定に照らせば、同項所定の「納付すべき税額」とは、同法35条2項柱書の規定により納付しなければならない税額を意味するものといえる。

そこで、同法35条2項をみるに、その柱書において「次の各号に掲げる金額に相当する国税の納税者は、その国税を当該各号に掲げる日までに国に納付しなければならない。」旨を規定し、同項1号は「期限後申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額又は修正申告書に記載した第19条第4項第3号(修正申告により納付すべき税額)に掲げる金額(その修正申告書の提出により納付すべき税額が新たにあることとなった場合には、当該納付すべき税額) その期限後申告書又は修正申告書を提出した日」と規定し、また、同項2号は「更正通知書に記載された第28条第2項第3号イからハまで(更正により納付すべき税額)に掲げる金額(その更正により納付すべき税額が新たにあることとなった場合には、当該納付すべき税額)又は決定通知書に記載された納付すべき税額その更正通知書又は決定通知書が発せられた日の翌日から起算して一月を経過する日」と規定していることが認められる。

そして、更正の場合について、同法28条2項3号イは「その更正前の納付すべき税額がその更正により増加するときは、その増加する部分の税額」、同号ロは「その更正前の還付金の額に相当する税額がその更正により減少するときは、その減少する部分の税額」、同号ハは「純損失の繰戻し等による還付金額に係る第58条第1項(還付加算金)に規定する還付加算金があるときは、その還付加算金のうちロに掲げる税額に対応する部分の金額」と各規定されている。

したがって、更正がされた場合、過少申告加算税算定の基礎たる「納付すべき税額」には、更正により増加された納付すべき税額(同法28条2項3号イ)のみならず、更正により減少された還付金の額に相当する税額をも含む(同号ロ)というべきこととなる。

(2)  還付金請求が更正された場合の租税法律関係について

ア 納税者の確定申告により国が納税者に対し還付金を還付すべき義務が発生することは、消費税法52条、53条が「・・・不足額の記載があるときは、税務署長は、これらの申告書を提出した者に対し、当該不足額に相当する消費税を還付する。」旨各規定していることからして明らかであり、他方、その後に修正申告又は更正があった場合には、納税者はそれにより減少した部分の還付金を国に納付すべき義務が発生するものである(国税通則法35条2項)。

そして、このように確定申告の提出によって発生する納税者の還付金請求権(国の納税者に対する還付金を還付すべき義務)と、更正により減少した部分の還付金を国に納付すべき納税者の義務とは、併存するものであり、(ア)国が確定申告による還付金を還付する一方、納税者が修正申告により減少した部分の還付金を納税した場合であっても、(イ)本件のように、消費税法施行令64条、67条に基づき還付一時留保し、双方の義務を暫く併存させた上で、国税通則法57条1項に基づく充当がされた場合であっても、更正により減少された還付金の額に相当する税額が国税通則法65条1項所定の「納付すべき税額」であることに変わりはないものというべきである。

したがって、更正により減少された還付金の額に相当する税額について過少申告加算税が賦課されるのは、実際に還付を受けた場合に限られるものではないというべきである(過少申告加算税が賦課されるのは実際に還付を受けた場合に限られる旨の規定もまた存しないところである。)。

ウ 実質的にいっても、過少申告加算税は、申告納税方式による国税確定手続において、適正な申告をしない者に対し一定の制裁を加え、適正な申告をした者と差を設けることで、申告秩序の維持を図ろうとする趣旨の制度であることに鑑みれば、不適正な過少税額申告の場合(納付申告)に限らず、不適正な過大還付金申告の場合(還付申告)にあっても、過少申告加算税を賦課するのでなければ、申告秩序の維持は望むことができないというべきである。このような申告秩序の維持の観点からすれば、(ア)国の納税者に対する還付金を還付すべき義務と、更正により減少した部分の還付金を国に納付すべき納税者の義務の双方が現実に履行された場合に限らず、(イ)消費税法施行令64条、67条に基づく還付一時留保がされた後、国税通則法57条1項に基づく充当がされた場合にあっても、適正な申告がされなかったことに何ら径庭はないのであるから、更正により減少された還付金の額に相当する税額につき過少申告加算税を賦課することは、何ら不合理なところはないというべきである。

これに反する原告の主張は、いずれも採用することができない。

(3)  以上の説示に照らし本件をみるに、平成10年3月課税期間については、同期間更正処分がされたことにより(同処分が適法なものであることは前記のとおりである。)、(現にされた)更正により生じた納付すべき税額は8万4500円(消費税額6万7600円及び地方消費税額1万6900円)であり、減少した還付金の額に相当する税額は24万9900円(消費税額19万9900円及び地方消費税額5万円)であるから、両者の合計額である33万円(ただし、国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)が過少申告加算税算定の基礎たる「納付すべき税額」(同法65条1項)というべきである。また、平成11年3月課税期間については、同期間更正処分がされたことにより(同上)、減少した還付金の額に相当する税額は30万円(消費税額24万1400円及び地方消費税額6万0300円、ただし、同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)であるから、同金額が過少申告加算税算定の基礎たる「納付すべき税額」(同法65条1項)というべきである。

(4)  そうすると、本件後2課税期間決定処分は、いずれも無効確認ないし取消しがされるべき瑕疵はないというべきである。

6  結論

以上の次第で、原告の請求は、理由がないから、いずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊田建夫 裁判官 都築民枝 裁判官 渡邉健司)

別表1

本件処分の経緯(平成7年3月課税期間ないし平成9年3月課税期間)

<省略>

別表2

本件処分の経緯(平成10年3月課税期間及び平成11年3月課税期間)

<省略>

別表3

[審査請求人 A株式会社]

申告及び更正処分等の状況

<省略>

別表4

[審査請求人 A株式会社]

平成10年3月課税期間の更正処分の納付すべき税額の計算

<省略>

別表5

異議申立人 A株式会社

(5)枚のうち(5)枚目

本件各課税期間の消費税額等

<省略>

(別表6) 平成10年3月課税期間更正処分の根拠

<省略>

(1) 課税標準額…2867万6000円

上記金額は、次表エの平成10年3月課税期間の課税売上高(ただし、国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

<省略>

ア 平成10年3月課税期間申告書に記載された課税売上高…1956万6046円

上記金額は、平成10年3月課税期間申告書に記載された課税売上高の金額である。

イ 平成11年3月課税期間申告書に記載された課税売上高…841万5536円

上記金額は、平成11年3月課税期間申告書に記載された課税売上高の金額であり(乙第9号証)、平成10年3月課税期間中に引渡しが完了していると認められる販売用建物の販売価額である。

なお、平成10年3月課税期間に係る消費税の課税標準を算出するに当たり、同期間において課税資産の譲渡等が行われたと認められた販売用建物の登記事項及び課税売上高等は、次のとおりである。

(ア) 建物(以下「丁建物」という。)

所在 秩父市大畑町

家屋番号

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

原因及び

その日付 平成10年3月5日新築

登記の日付 平成10年3月19日

所有権

(甲区1) 所有権保存

平成10年3月23日受付 第3916号

所有者 秩父市大畑町

丁(以下「丁」という。)

建物金額 1522万1851円

(課税売上高) (消費税及び地方消費税抜きの金額)

(イ) 建物(以下「丙建物」といい、丁建物と併せて「本件各建物」という。)

所在 秩父市大字大野原字

家屋番号

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

原因及び

その日付 平成9年3月26日新築

登記の日付 平成9年6月9日

所有権

(甲区1) 所有権保存

平成9年12月26日受付 第17468号

所有者 秩父市中村町

A株式会社

(甲区2) 所有権移転

平成9年12月26日受付 第17469号

原因 平成9年12月26日売買

所有者 秩父市

丙(以下、丁と併せて「本件各買主」という。)

建物金額 841万5536円

(課税売上高) (消費税及び地方消費税抜きの金額)

上記(イ)の丙建物の引渡し及び代金決済は、平成10年3月課税期間中に行われており、原告が平成10年3月課税期間終了時において未収である旨主張する50万円についても、平成10年2月4日において既に値引きとして確定している(乙第21号証)。

したがって、丙建物の売買に係る売上金額は、平成10年3月課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額となるものである。

ウ 手数料収入(税抜き)…69万5393円

上記金額は、原告が平成10年5月25日付けで被告に提出した原告の平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度の法人税の確定申告書に添付した同事業年度の損益計算書(以下「平成10年3月期損益計算書」という。乙第10号証)に記載されている手数料収入(税込)73万163円に105分の100を乗じて算出した金額である。

(2) 課税標準額に対する消費税額…114万7040円

上記金額は、消費税法29条の規定により、前記(1)の課税標準額2867万6000円に税率100分の4を乗じて算出した金額である。

(3) 控除対象仕入税額…80万2928円

上記金額は、平成10年3月課税期間の控除対象仕入税額であり、前記(2)の課税標準額に対する消費税額114万7040円に100分の70を乗じて算出した金額である。

(4) 限界控除税額…0円

限界控除税額は、消費税法の改正(平成6年法律第109号)により、平成9年4月1日以後開始する課税期間から廃止されているので適用はない。

(5) 差引消費税額…34万4100円

上記金額は、前記(2)の課税標準額に対する消費税額114万97040円から前記(3)の控除対象仕入税額80万2928円を控除した金額(ただし、国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

(6) 中間納付税額…27万6400円

上記金額は、消費税法42条8項1号の規定による中間納付税額であり、平成10年3月課税期間申告書に記載された金額と同額である。

(7) 納付すべき消費税額…6万7700円

上記金額は、前記(5)の差引消費税額34万4100円から前記(6)の中間納付税額27万6400円を控除した金額である。

(8) 地方消費税の課税標準額…34万4100円

上記金額は、前記(5)の差引消費税額34万4100円である(地方税法72条の77第2号及び同法72条の82)。

(9) 譲渡割額…8万6000円

上記金額は、地方税法72条の83の規定により、前記(8)の地方消費税の課税標準額34万4100円に税率100分の25を乗じて算定した金額(ただし、地方税法20条の4の2第3項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

(10) 中間納付譲渡割額…6万9100円

上記金額は、地方税法72条の87第4項の規定による中間納付譲渡割額であり、平成10年3月課税期間申告書に記載された金額と同額である。

(11) 納付すべき譲渡割額…1万6900円

上記金額は、前記(9)の譲渡割額8万6000円から前記(10)の中間納付譲渡割額6万9100円を控除した金額である。

(別表7) 平成11年3月課税期間更正処分の根拠

<省略>

(1) 課税標準額…0円

原告が平成11年3月課税期間に引渡しをしたとして同課税期間の消費税の課税売上高として確定申告した販売用建物の販売価額(841万5536円)は、別表6中の(1)イで述べたとおり、平成10年3月課税期間の課税売上高となるものであるから、平成11年3月課税期間の課税標準額は0円となる

(2) 課税標準額に対する消費税額…0円

課税標準額に対する消費税額は、課税標準額がないため0円となる。

(3) 控除対象仕入税額…0円

控除対象仕入税額は、課税標準額に対する消費税額がないため0円となる

(4) 返還等対価に係る税額…0円

原告は、消費税の課税標準を売上値引き後の金額により計算しているから0円となる。

(5) 納付すべき消費税額等…0円

納付すべき消費税額、地方消費税の課税標準額及び納付すべき譲渡割額はいずれも0円となる。

(別表8) 本件後2課税期間各過少申告加算税賦課決定の根拠及び適法性

1 本件後2課税期間過少申告加算税賦課決定処分の根拠について

(1) 平成10年3月課税期間賦課決定処分の金額…3万3000円

上記金額は、平成10年3月課税期間更正処分によって、原告が新たに納付すべきこととなった税額33万円(国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に、国税通則法65条1項並びに地方税法附則9条の4第2項及び同附則9条の9の規定に基づき、100分の10の割合を乗じて計算した金額である。

(2) 平成11年3月課税期間賦課決定処分の金額…3万円

上記金額は、平成11年3月課税期間更正処分によって、原告が新たに納付すべきこととなった税額30万円に、国税通則法65条1項並びに地方税法附則9条の4第2項及び同附則9条の9の規定に基づき、100分の10の割合を乗じて計算した金額である。

2 本件後2課税期間各過少申告加算税賦課決定処分の適法性について

原告は、本件後2課税期間の消費税額及び譲渡割額を過少に申告していたものであり、過少に申告していたことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由も存しない。

そして、本件後2課税期間各更正処分は適法なものであり、また、本件後2課税期間各過少申告加算税賦課決定処分の通知書に理由が附記されていないことも何ら違法ではない。

したがって、本件後2課税期間各過少申告加算税賦課決定処分は、いずれも適法である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例