さいたま地方裁判所 平成14年(わ)948号 判決 2002年9月13日
主文
被告人を懲役4年6月以上7年以下に処する。
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,少年であるが,
第1 通行人から金品を強取しようと企て,A,B及びCと共謀の上,平成14年2月15日午後11時45分ころ,埼玉県a市内の路上において,D(当時22歳)に対し,「金を出せよ。」などと語気鋭く申し向け,こもごも,その頭部,脚部及び上腕部等を手拳や金属バットで多数回殴打するなどの暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して同人から金品を強取しようとしたが,同人がその場から逃走したため,金品強取の目的を遂げず,その際,同人に全治約2週間を要する頭部及び四肢打撲症の傷害を負わせ,
第2 通行人から金品を強取しようと企て,B,C及びEと共謀の上,同年3月3日午前零時10分ころ,同県b市内の駐車場付近において,F(当時28歳)に対し,ナイフ様のものを突き付けて「金を出せよ。」などと語気鋭く申し向け,こもごも,その頭部及び顔面等を手拳や石で多数回殴打したり,足で蹴るなどの暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,同人所有の現金約1万5000円及び腕時計等6点(時価合計約6万3000円相当)を強取し,その際,同人に全治約3週間を要する頭部顔面外傷等の傷害を負わせ,
第3 通行人から金品を喝取しようと企て,A,B,G及びHと共謀の上,同月14日午前零時17分ころ,同県a市内の路上において,I(当時19歳)に対し,「金出せ。」などと語気鋭く申し向けて金品の交付を要求し,もしこの要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,その旨同人を畏怖させ,同人から金品を喝取しようとしたが,警察官に発見されたため,その目的を遂げなかった
ものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示第1及び第2の各所為はいずれも刑法60条,240条前段に,判示第3の所為は同法60条,250条,249条1項にそれぞれ該当するが,判示第1及び第2の各罪について各所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,少年法52条1項により,被告人を懲役4年6月以上7年以下に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入することとする。
(量刑の事情)
本件は,被告人が,友人らと共謀の上行った通行人に対する強盗致傷(判示第1,判示第2の各犯行)及び恐喝未遂(判示第3の犯行)の事案である。
被告人は,遊興費欲しさに,さしたる罪悪感も感じることなく,所属していた暴走族の友人らと共に本件各犯行に及んだもので,その身勝手で自己中心的な動機に酌量の余地は全くない。判示第1及び第2の各犯行についてみると,被告人らは,金属バットやナイフ等の凶器をあらかじめ用意し,身元が判明しやすい地元や警察の警戒が厳しい地域を避けて地元から離れた現場付近まで車で赴き,狙いを付けた被害者を待ち伏せして数名で取り囲み,身体の枢要部である頭部や顔面等を多数回殴る蹴るなどしたほか,石で頭部を強く殴打したり,逃走しようとする被害者を力を込めて金属バットで殴打するなどの一方的で執ような暴行を加えているのであって,いずれの犯行態様も粗暴かつ危険である。判示第3の犯行も,凶器を準備した上,深夜に数名で被害者を待ち伏せして呼び止め,「金出せ。」などと言って脅迫しているのであり,その犯情は悪質である。判示第1及び第2の各犯行の被害者らは,深夜被告人らに突然襲われるという恐怖を味わい,それぞれ全治約2週間,全治約3週間の傷害を負わされ,額に傷跡が残ったというのであって,その肉体的,精神的苦痛は大きい上,判示第2の犯行による財産的被害は合計約7万8000円に及んでいる。被告人は,判示第1の犯行では率先して金属バットで被害者を殴打しており,判示第2の犯行でも,凶器を示して被害者を脅迫し,被害者に対する暴行に終始関与した上で腕時計等を強取し,判示第3の犯行においても,被害者を呼び止めて金員の交付を要求しており,本件各犯行において極めて積極的,主体的に行動しているのであって,本件が常習的犯行の一環であることなどをも併せ考えると,被告人の責任は重いといわざるを得ない。
そうすると,被告人が犯行時18歳だったこと,判示第3の犯行は警察官に発見されたために未遂に終わっていること,被告人が本件各犯行を素直に認めて反省していること,被告人の父親が,判示第1の被害者に対して20万円,判示第2の被害者に対して30万円,判示第3の被害者に対して5万円をそれぞれ支払い,示談が成立しているほか,判示第1の犯行の被害者からは被告人を厳罰に処することまでは望まないとの上申書が提出されていること,被告人の父親が出廷し,家族で被告人を監督する意向を示していることなど,被告人のために斟酌すべき事情を十分に考慮してみても,本件を家庭裁判所に移送するのは相当ではなく,酌量減軽をした上で,被告人を主文程度の刑に処することはやむを得ないものと認められる。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 若原正樹 裁判官 大渕真喜子 裁判官 小笠原義泰)