さいたま地方裁判所 平成14年(ワ)1124号 判決 2004年3月26日
原告 X1
原告 X2
原告ら訴訟代理人弁護士 林浩盛
被告 あさひリテール証券株式会社
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 本杉明義
主文
1 原告らの被告に対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1申立て
1 原告ら
(1) 被告は、原告X1(以下「原告X1」という。)に対し、金1056万3850円及びこれに対する平成12年6月9日から支払済みまで年5分の金員を支払え。
(2) 被告は、原告X2(以下「原告X2」という。)に対し、金257万2371円及びこれに対する平成12年6月9日から支払済みまで年5分の金員を支払え。
(3) 訴訟費用は被告の負担とする。
(4) 仮執行宣言
2 被告
主文と同旨。
第2事案の概要
本件は、原告らにおいて、被告の従業員らが、原告らを日経平均株価オプション取引に勧誘して取引委託契約を締結させるに際して、同取引の危険性等についての説明義務違反があった、また、同取引に関して約定の指導ないし助言義務の違反があったとして、同取引によって被った損害を、被告の不法行為(民法715条)ないし債務不履行に基づいて、その損害賠償を求める事案である。
(当事者間に争いのない、又は、証拠により明らかな事実)
1 被告は、山文証券株式会社と千代田証券株式会社とが平成13年4月1日に合併して成立した、有価証券の売買、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引又は外国市場証券先物取引等を目的とする、資本金47億2723万4225円の証券会社である(以下、山文証券株式会社及びその合併後の被告を区別しないで、「被告会社」という。)。(弁論の全趣旨)
2(1) 原告X1(大正13年○月○日生)は、昭和14年3月に尋常高等小学校高等科を卒業し、兵役を経た後、昭和21年6月から日本国有鉄道に勤めたが昭和48年3月に退職した。そして、同3月には株式会社a電機製作所を設立して、以降、その代表取締役として同会社の経営に当たっているものである。なお、同社は、昭和50年8月からは、不動産業も営んでいる。(甲28)
(2) 原告X2(昭和8年○月○日生)は、原告X1と昭和28年1月に婚姻した同人の妻である。本件における原告X2名義の被告会社との取引は、原告X2の承諾の下に、総て夫である原告X1の意見をもって実質上は同原告によってなされたものである。したがって、本件における原告X2の立場は、原告X1と同一である。(弁論の全趣旨)
3 原告X1においては、平成12年1月21日、原告X2においては、同年2月14日、それぞれ署名・押印をした「先物・オプション取引口座設定約諾書」(以下「本件約諾書」という。)を被告会社に差し入れて、被告会社との間に、「株価指数オプション取引」である「日経平均株価オプション取引」(以下「本件オプション取引」という。)の取引委託契約(以下「本件取引委託契約」という。)を各締結し、被告会社の浦和支店に本件オプション取引のための口座(以下「本件取引口座」という。)を各開設した。(乙7、同8)
4 原告X1においては、平成12年1月21日から、原告X2においては、同年2月14日から、各同年5月22日までの間(以下「本件取引期間」という。)、被告会社の浦和支店に委託して、本件オプション取引を、本件取引口座を使用して、原告X1においては別紙「X1名義取引口座証券取引一覧表(オプション取引)」記載のとおり、原告X2においては別紙「X2名義取引口座証券取引一覧表(オプション取引)」に記載のとおり、それぞれした。(乙12の1、2)
5(1) 原告らは、株式会社セゾン証券の浦和支店と取引があったが、同支店が閉鎖されることとなったため、平成11年6月4日から、その所有する株券等の有価証券についての、保護預かり取引(以下「本件保護預かり取引」という。)を被告会社の浦和支店(以下、単に「浦和支店」という。)と開始したことから、同支店の営業担当者等と知り合うに至った。
(2) 浦和支店における、原告らの本件オプション取引の担当者は、支店長のB(以下「訴外B」という。)と営業係の訴外C(以下「訴外C」という。)であった。
6 原告らは、平成12年5月22日、本件オプション取引を総て手仕舞ったが、同取引によって、原告X1は1056万3850円、原告X2は257万2371円の各損失(以下「本件損失」という。)を被った。
7(1) 一般にオプション取引とは、ある資産等(原資産)を、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で、ある特定の期日(権利行使日あるいは満期日)あるいは期間内に「買う(コール・オプション)」もしくは「売る(プット・オプション)」取引である。
(2) オプション取引のうちの「株価指数オプション取引」である「日経平均株価オプション取引」の概要は、株価指数については日経平均株価を使用して行うもので、同株価の権利行使期日に、権利行使価格で売買する権利に関する取引である。そこで、買う(売る)権利を買うことを「コール(プット)の買い」、買う(売る)権利を売ることを「コール(プット)の売り」のように言う。
(3) 日経平均株価が上昇すると予想される場合には、コールの買いか、プットの売りを行い、日経平均株価が下落すると予想される場合には、プットの買いか、コールの売りを行うことによって、権利行使価格との差額の利益を得ることができる。
(4) したがって、理論上、オプションの買いは利益無限定・損失限定となり、オプションの売りは利益限定・損失無限定となる。
(5) また、「コール」と「プット」の双方を権利行使価格に幅を持たせて売建てし、その幅の範囲内で日経平均株価が推移すれば、確実に利益が獲得できる方法を「ストラングルの売り」という。
第3争点
(原告らの主張)
1(1)① 原告X1(当時75才)は、平成11年6月4日ころから、原告ら方を訪れた被告会社の営業係の訴外Cから、本件オプション取引の勧誘を受けたが、その取引の仕組み等の理解ができなかったことと、かつて、株式の信用取引で相当額の損害を被ったことがあって、損失の危険がある取引はしないと決めていたので、その勧誘を断っていた。
② それに対して、訴外Cは、本件オプション取引につき、全く損失の危険がなく、相当な利益をもたらすものであるような説明をした。また、訴外Bも、原告らが本件保護預かりにしている株券を、本件オプション取引の担保証券として有効利用してはどうかと勧誘した。
③ そして、訴外C及び訴外Bは、原告X1の損失発生の危険性の指摘に対しては、「仮に、本件オプション取引において損失が出るようなときには、被告会社において、きちんと対策を立てて、原告X1には損失が出ないように対処します。」と約束(以下「本件損失回避対処約束」という。)して、本件オプション取引につき損失補償(以下「本件損失補償」という。)をした。また、上記のような損失補償を伴う本件オプション取引は、被告会社においても浦和支店だけでしているものであるとした。
(2)① そこで、原告X1は、上記説明を信じて、訴外Bに対し、「浦和支店だけで行われている損失補償を伴う本件オプション取引をする。」旨告げて、原告らは、本件取引口座を開設し、本件保護預かりにしている株券を担保証券として差し入れて、本件オプション取引を開始した。
なお、原告X1は、原告X2に関する同取引手続に付いては、その同意を受けて総て代行したものである。
② 原告らは、本件取引口座を開設して本件オプション取引を開始する際には、被告会社から、「株価指数オプション取引説明書」等の説明書面(以下「本件説明書等」という。)の交付を受けなかったし、本件説明書等にある本件オプション取引の危険性等の説明を受けなかった。
原告らが、被告会社から、本件説明書等の交付を受けたのは、原告らが多額の損失を被った後の平成12年5月12日である。
(3)① 原告X1は、平成12年5月8日、訴外Cから、「今日の前場ダウが70円ばかり安い、プットについて損が出ている、今週の金曜日が期日なのでその前に乗り換えた方が良い。」との電話を受けたので、それを承諾した。また翌9日、訴外Cが損失が出ないように対策をするとしたので、それを承諾した。
② 訴外Bは、平成12年5月11日、本件オプション取引に750万円を超える損失が出ていることを告げ、「ここまで株価が下がるとは思わなかった。騰がると思ってつい先に延ばしてしまった。200万円ばかり担保を入れて下さい。」と言ってきたので、原告らは、訴外Bらに騙されていたことに気付いた。
③ 訴外Cは、同月12日、原告らに対し、説明しても分からない人が多いのでこれまで交付しなかったとして、本件説明書の他「まえがき」、「オプションとは」、「オプション委託証拠金要領<省略>」と各題する各書面である本件説明書等を、初めて交付した。
(4) 原告らは、本件オプション取引期間における本件オプション取引によって、本件損失額相当の損害(以下「本件損害」という。)を被った。
被告会社は、原告らに対し、本件取引委託契約における信義則上、その締結に際しては、本件説明書等を交付して本件オプション取引の内容、その損失の危険性についての説明義務が存するのにそれを懈怠した。また、本件損失回避対処約束に違反して、原告らに本件損害を被らせた。
また、訴外Bの前記行為は、原告らに対する詐欺であって、不法行為を構成する。
2(1) 原告X1は、国鉄に勤務していた昭和36年ころ、東京の池袋所在の角丸証券で現物の株式売買を初め、昭和42年4月ころからは信用取引をするようになったが、同年10月ころ、信用取引の売りで約60万円の損失を被ったことから、その後の株式取引はいずれも現物取引のみで、慎重な取引をしていたものである。
(2) 訴外B及び訴外Cは、原告らに対して損失補償の約束をし、原告らを本件オプション取引に違法に引き込んだものである。
(被告会社の主張)
1(1) 訴外Cは、原告X1に対して、同人方において数回、その取引を開始する半年程前から、本件オプション取引の内容とその取引による損失発生の危険性について詳細な説明をしていたが、平成11年12月8日には、「モニター」と言われている現実のオプション価格表を使って現実の取引と同様の説明をして、その損益の場合を具体的に説明(ストラングル売りについても説明してその理解を得ている。)した。原告X1においても、訴外Cに、本件オプション取引についての、いわゆるリスク等につき、種々の質問をして、「オプションの売りの損失が無限定なのは、信用取引の空売りのようなものだな。」と述べる等、十分な理解をしていた。
訴外C及び訴外Bにおいて、同説明の際に証券取引法で禁止されている損失補償約束をしたことはない。
(2) 訴外Cは、平成12年1月20日、原告X1が本件オプション取引をするとしたので、翌21日、本件説明書等を交付して、前記のとおり本件約諾書及び取引確認書に署名押印を得て本件取引口座を開設して本件オプション取引を開始したものである。
そして、平成12年5月12日に原告X1から、「詳しい資料を持ってこい。」等と要求されたので、再度であることを断った上、最も適切な資料である本件説明書等を交付したものである。
(3) 原告らは、前記保護預かりにしていた株券(原告X1は15銘柄、原告X2は11銘柄の各株式の株券)を本件オプション取引の担保として預託したものである。
なお、原告らが、上記保護預かりにしていた株券の価格は、2000万円を超えるもので、その買い入れ価額からすると当時数千万円の評価損が出ていた。
(4) 原告らは、前記保護預かりにしている株券の株式が、評価損を発生させている状態であったことから、その損害を表面化させないためにはいわゆる塩漬けにせざるを得ない状態であった。
訴外Cは、それを知って、また、原告X1からの適当な投資方法の諮問に応えて、当時は、株式相場全体が低迷していて、個別の銘柄の取引では損失の挽回が困難な相場環境であったため、日本経済の指標である日経平均株価を対象とする本件オプション取引を勧めた。
2(1) 原告X1は、不動産等を所有する資産家で、会社を長年経営してきたものであって、経済的知識や理解力、判断力に富んでいたものである。
(2) 原告X1は、以前から複数の証券会社において、信用取引を含む証券取引を数十年間に亘ってしていた者であって、証券取引についても知識・経験を豊富に有する投資家である。
(3) 原告X1は、被告会社における本件オプション取引を終了させた後は、預託していた株券を訴外高木証券に移し替えて、同証券会社で株式取引を現在引き続き行っている投資意欲の高いものである。
3(1) 原告X1は、本件オプション取引開始後1か月間、着実に利益を獲得したことから、原告X2の名義でも同取引を追加し、さらに利益を獲得していた。
(2) ところが、平成12年4月に大幅な日経平均株価対象銘柄の入替えがあったこと等から、同月12日を境に同平均株価が暴落(1か月で3000円以上下落)したことから、原告らに「プット売り」で多額の損害が発生したものである。
4(1) 被告会社は、原告らに対し、証券取引を行った顧客に対して、証券取引法上遅滞なく交付が義務付けられている、所定の様式の取引報告書(以下「本件取引報告書」という。)及び債権債務の残高についての毎月の照合通知書(月次報告書)を交付した。
(2) したがって、原告らにおいても、自己の行った本件オプション取引の取引内容を把握し、また、取引状況の推移及び残高状況等を確認していたが、前記損害の発生まで、本件オプション取引につき、何ら異議や苦情を申し立てることはなかったのであるから、本件は、原告らの違法な損失補填の要求に他ならない。
第4当裁判所の判断
1(1) 原告らは、「被告会社の従業員である浦和支店の営業担当者等である訴外C及び訴外Bらにおいては、原告らが被告会社との間に本件オプション取引に関する本件取引委託契約を締結するに際して、同取引がその性質上有している危険性等について、本件説明書等を交付しての信義則上の説明義務を懈怠した。」旨主張するところ、原告X1(大正13年○月○日生)は、国鉄を退職した後の昭和48年3月ころから、自ら設立した株式会社a電機製作所(昭和50年8月ころからは不動産業も営んでいる。)の代表取締役として現在に至るまでその経営に当たっているものであること、原告X2は、原告X1の妻であって、本件オプション取引については、夫である原告X1に総てをまかすことを承諾していたもので、本件におけるその立場は、原告X1と同一であることは前記のとおりである。
(2) しかるところ、<証拠省略>及び弁論の全趣旨によれば、原告X1は、不動産等を所有する資産家で、前記のとおり会社を長年自ら経営してきたことから示されるように、経済的知識や理解力、判断力があり、複数の証券会社において多数の銘柄の株式の売買(ただし、現物取引が中心である。)を長年多数回に亘って行ってきたもので、かなり以前であるが株式の信用取引をした経験もあること、被告会社の浦和支店の営業係の訴外Cと同支店長の訴外Bは、原告らが浦和支店と株券等の本件保護預かり取引を平成11年6月4日ころから始めたことから、原告らが多数の銘柄の時価2000万円を超える株式を保有していることと、同株式については、近時の株式相場の値下がりからその取得価額からすると多額の評価損が出ているため、単純に処分することも相当とは思われなかったので、いわゆる塩漬けの状態にされていることを知ったこと、そして、訴外Cは、原告X1からは短期の適当な投資方法はないかなどと言われたこともあったし、当時の株式相場は全体が低迷していて個別の銘柄の取引では損失の挽回が困難な相場環境であったことから、また、原告X1は株式投資の経験も豊かであったので、日経平均株価による本件オプション取引を勧めることとしたこと、そこで、訴外Cは、平成11年6月ころから、原告X1方を数回訪れて、本件オプション取引の仕組みや、その取引の投資方法としての有利な点や、その反面の危険性等につき雑誌の切り抜き等を交付する等して説明し、さらに、平成11年12月8日には、株式投資関係者間で一般的に「モニター」と称されている現実のオプション価格表を使用して現実の取引のシュミレーションを行ってその損益を計算してみせる等の説明を行ったこと、また、その際には「ストラングル売り」という特殊な取引方法についての説明もしたこと、その際、原告X1は、本件オプション取引についてリスク等についての質問をしたり、さらには「オプションの売りの損失が無限定なのは、信用取引の空売りのようなものだな。」と述べる等、十分な理解を示していたこと、訴外Cは、平成12年1月20日、原告X1から本件オプション取引をしたいとの連絡を受けたこと、そこで、翌21日には原告ら方を訪れて、原告X1に対して本件説明書等を交付し、本件オプション取引のための本件取引口座を開設するために、本件約諾書及び取引確認書に署名押印をもらったこと、そして、原告X1につき、前記保護預かりにしていた株券(15銘柄)を本件オプション取引の委託保証金の代用証券として差し入れる手続をしたこと、そうした手続を経て、原告X1は、本件オプション取引を開始し、当初は慎重な投資姿勢を採ったところ多額ではなかったが着実な利益を挙げられたこと、そこで、原告X1は、平成12年2月14日から、原告X2の承諾を得て同原告の前記預託株券(株式11銘柄の株券)を同じく委託保証金の代用証券として、原告X2名義での本件オプション取引を始めることとして、上記同様の手続を経由してその取引を開始したこと、ところが、平成12年4月に日経平均株価対象銘柄の大幅な入替えがあったこと等から、同月12日を境に同平均株価が予想外の大幅な低落を続けたため、原告らの「プット売り」につき多額の損失が発生したこと、そのため、原告らは、訴外Cらの助言を入れて、損失を直ちに現実化させないための手段等を講じて株価の上昇を待っていたが平均株価は回復しないで約1か月間で3000円以上も下落した結果、同年5月11日には計算上750万円を超える損失が出て200万円の追加担保が必要となったこと、原告X1は、平成12年5月12日、この状態に至ったのは、訴外Cや訴外Bの助言等が悪かったのが原因であるとして腹を立てて、「オプション取引に関する詳しい資料を持ってこい。」等としたので、訴外Cは、再度、本件説明書等を持参したこと、しかし、原告X1は、前記損失を確実に回復する適当な取引手段も見い出せなかったことから、前記のとおり、原告らは、平成12年5月22日、本件オプション取引を総て手仕舞ったこと、その結果本件オプション取引期間を通算して、原告X1においては1056万3850円、原告X2においては257万2371円の本件損失が確定したこと、被告会社は、原告らに対し、証券取引法上所定の本件取引報告書及び債権債務の残高についての毎月の照合通知書(月次報告書)を遅滞なく交付していたことが認められる。
2 なお、原告らは、「訴外C及び訴外Bは、本件オプション取引を開始するに際して、原告らに対して、本件損失回避対処約束をして、本件損失補償をした。」旨主張するところ、原告X1の本人尋問の供述等の中にはそれに副う部分もあるが、同供述部分等は証人C、同Bの各証言等に照らすと措信できないし、他にそれを証するに足りる証拠はない。
却って、前1の(2)に掲記の各証拠によれば、訴外C及び訴外Bにおいては、原告らに対し、原告らの主張する実質上の損失補償約束をしたことはないし、原告ら主張の本件損失回避対処約束なるものを約したことはないこと、さらには、上記訴外人らにおいて、原告らに対する本件オプション取引の勧誘ないし本件取引委託契約の締結、その後の取引等の際に、原告らに対し、違法、不当な行為がなされたことはないことが認められるところである。
したがって、上記判示の事実関係によれば、本件オプション取引についての説明義務違反による取引委託契約の債務不履行ないし不法行為、並びに原告ら主張の本件損失回避対処約束の債務不履行、さらには、本件オプション取引の勧誘等の際の訴外Bの詐欺等の違法行為等の主張はいずれも採用できないことは明らかである。
なお、上記判示にかかる原告X1の経歴及び社会的地位等からすると、原告X1の経済的地位ないし資力は十分であって、また、株式取引に関する知識と経験を有するものであることは明らかであるので、高齢ではあるが、本件オプション取引についてのいわゆる適合性に欠けるところはないと判断されるものである。
3 以上によれば、その余の点につき判断するまでもなく、原告らの被告に対する本件各請求はいずれも理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 廣田民生)
<以下省略>