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さいたま地方裁判所 平成14年(ワ)2209号 判決 2004年3月11日

原告

X1

ほか二名

被告

株式会社損害保険ジャパン

主文

一  被告は、原告X1に対し、金一億一〇六五万四八三三円及びこれに対する平成一三年二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2、同X3に対し、各金二九七万円及びこれに対する平成一三年二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを三分し、その二を被告の、その余を原告らの負担とする。

五  この判決は、第一、第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(1)  被告は、原告X1に対し、金一億六六九〇万三七九七円及びこれに対する平成一三年二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2)  被告は、原告X2、同X3に対し、それぞれ金三三〇万円及びこれに対する平成一三年二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は被告の負担とする。

(4)  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(1)  原告らの請求をいずれも棄却する。

(2)  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

(1)  交通事故の発生

分離前相被告Aは、平成一三年二月二二日午前五時ころ、同B所有の普通乗用自動車(<番号省略>。以下「本件自動車」という。)を運転し、国道一七号線を戸A市方面から上尾市方面に時速七〇ないし八〇キロメートルで直進進行中、同日午前五時ころ、さいたま市北区宮原町四丁目一〇五番地先路上で、赤色信号で停車していたC運転の普通貨物自動車(<番号省略>)に追突する交通事故を起こし(以下「本件事故」という。)、本件自動車の助手席に同乗していた原告X1に頸髄損傷、第五頸椎骨折の傷害を負わせた。

(2)  原告X1の治療経過及び後遺障害

ア 治療経過

(ア) 平成一三年二月二二日

大宮赤十字病院の集中治療室に入院

(イ) 同年二月二二日から同年七月一六日

埼玉県済生会川口総合病院に入院

なお、原告X1は、同病院に入院中、第四ないし第六頸椎前方固定手術を受けた。

(ウ) 同年七月一六日から同年一一月一四日

埼玉県総合リハビリテーションセンターに入院

(エ) 同年一一月一五日から現在まで

上記リハビリテーションセンターでリハビリ訓練を受けている。

イ 原告X1は、前記のとおり、本件事故により頸髄損傷、第五頸椎骨折の重傷を負った。

同原告は、平成一三年八月一六日、四肢麻痺、排尿排便障害の後遺障害の症状が固定し、後遺障害等級一級の認定を受けた。

ウ 原告X1の後遺障害は、第六頸髄レベルの完全麻痺で、起立、歩行不能、両手指から体幹及び両下肢の自動運動不可能な状態であり、自力では車イスの乗り降り、風呂・トイレ、衣服の着脱等、日常生活のほとんどができない。

同原告ができるのは、自助具をつけて、食事をすること(ただし、食べやすい大きさにしたもののみ)及び歯を磨くこと(ただし、自力では洗面台まで行けない。)程度である。

(3)  被告の損害賠償義務

ア Aは、本件自動車を運転して、国道一七号線を制限時速五〇キロメートルを超える時速七〇ないし八〇キロメートルで、同国道を戸田市方面から上尾市方面に向かい直進進行中、事故発生場所で赤色信号に従い停車中の、上記C運転の普通貨物自動車に追突させたもので、過失により本件事故を起こしたものであるから、民法七〇九条に基づき、本件事故によって生じた損害を賠償する義務がある。

イ Aの父であるDは、本件事故当時、自家用小型自動車(<番号省略>)を所有し、同車両について被告(ただし、当時の商号・安田火災海上保険株式会社)との間で、Dを被保険者として、自家用自動車総合保険契約を締結していた(以下「本件保険契約」という。)。同保険契約においては、対人事故においては、被害者は、被告に対して、損害賠償を直接請求できる旨規定されている。

ウ 本件保険契約には、被保険者の同居の親族が、被保険者、その配偶者、又はこれらの同居の親族が所有する以外の自動車を運転する場合でも、その自動車が自家用小型乗用自動車等で、かつ、上記の被保険者らが常時使用する自動車でない場合は、その自動車を被保険自動車とみなして、被保険自動車の保険契約に従い、普通保険約款賠償責任条項を適用する旨の条項(以下「他車運転特約」という。)が置かれている。

エ 本件事故時に、Aが運転中であった本件自動車は、本件保険契約の被保険自動車ではないが、前記他車運転特約の適用により、同特約に定める被保険者等が「所有する以外の自動車」に該当する。

オ したがって、被告は、本件保険契約に基づき、原告らに対し、本件事故による損害を賠償する責任を負う。

(4)  損害

ア 治療費 金一二九万七二六〇円

原告X1は、前記のとおり、本件事故当日の平成一三年二月二二日から症状固定日である同年八月一六日まで治療費として合計金二〇三万八四二〇円を要した。このうち高額医療費戻り分、身障者医療費支給額として金七四万一一六〇円の交付を受けたので、これを控除した。

イ 入院雑費 金一八万八五〇〇円

アの入院期間中の入院雑費は、一日当たり金一三〇〇円を下らないので、これに入院期間中の一四五日を乗じると合計金一八万八五〇〇円となる。

ウ 付添看護費 金六八万四〇〇〇円

原告X1は、瀕死の重傷の上、頸髄損傷により、四肢麻痺を生じたことから、平成一三年二月二二日から同年七月一六日までの入院中、一一四日間原告X2及び同X3が付添看護を行った。入院中の付添看護費は、一日当たり金六〇〇〇円が相当であり、合計金六八万四〇〇〇円となる。

エ 休業損害 金一一〇万九二四四円

原告X1は、平成一三年三月末に短期大学を卒業しており、武蔵野銀行に就職が決まっていて、同年四月一日より就労する予定であったが、本件事故による受傷のため、就職不能となった。

短大卒の二〇歳の年齢別平均賃金二九三万三九〇〇円に基づき、同一三年四月一日から症状固定日である同年八月一六日までの一三八日分の休業損害を算出すると、金一一〇万九二四四円となる。

オ 入院慰謝料 金一九五万円

原告X1は、本件事故により、一四五日間入院したので、入院慰謝料として金一九五万円が相当である。

カ 逸失利益 金六七五七万〇三〇八円

原告X1は、前記のとおり、後遺障害等級一級の認定を受け、終生にわたりその労働力の一〇〇パーセントを喪失した。

原告X1は短大卒であり、短大卒女子全年齢平均賃金は、年額金三七七万九一〇〇円であるところ、原告X1の労働能力喪失期間は症状固定時の二一歳から六七歳までの四六年間であるから、そのライプニッツ係数を乗じて逸失利益を求めると、金六七五七万〇三〇八円となる。

キ 後遺障害慰謝料 金二六〇〇万円

上記後遺障害に対する慰謝料として金二六〇〇万円が相当である。

ク 将来の介護費 金四一八七万〇八二九円

原告X1は、上記後遺障害のため生涯介護を要し、同人の平均寿命は六四年であり、原告両親及び近親者の介護料は、一日金六〇〇〇円が相当であるから、ライプニッツ計算式により現在額を求めると、金四一八七万〇八二九円となる。

ケ 家屋改造費 金四三四万〇七四〇円

原告X1は、自力で歩行することや、ベッドに寝たり起きたりすること、風呂・トイレができず、移動は車イスを使用してしかできない。

このため、自宅内の段差の解消、バス・トイレ室の改築、スロープ、昇降機の設置、室内のリフトの設置等の家屋改築を要し、この改築費は金五八八万円であった。そのうち福祉から介護費器具代として金九三万九二六〇円、改造費として金三〇万円の支給を受けたので、これを控除した。

コ 将来の介護器具の購入費用 計金四九三万三七一六円

(ア) 段差昇降機等 金二三五万二三九六円

a 原告X2は、原告X1のために、介護器具として段差昇降機(金四六万三五〇〇円)、ベッドリフト(金一六万二〇〇〇円)、浴室リフト(金四八万六〇〇〇円)、シャワーキャリー(金九万四二四〇円)(以上合計金一二〇万五七四〇円)を平成一四年一月に購入した。ただし、上記金額は、家屋改造費に含まれている。

b これらの耐用年数は八年であり、八年毎に七回買い換える必要があるので、年五分の割合による中間利息をライプニッツ方式により算出して、七回の買換え費用を計算すると、その合計は、金二三五万二三九六円となる。

(イ) 車イス 金二四四万二五二〇円

a 原告X2は、原告X1のために、同一四年六月に車イス(金四五万四〇〇〇円)を購入した。

b 車イスの耐用年数は、厚生労働省告示の交付基準によれば四年であるので、一四回買い換える必要があり、上記と同様にこの買換え費用を計算すると、金一九八万八五二〇円となり、上記金四五万四〇〇〇円と合計すると金二四四万二五二〇円となる。

(ウ) 特殊寝台 金一三万八八〇〇円

原告X1は、前記後遺障害があるため、障害者用の特殊寝台一台(金三一万七六〇〇円)で同一四年三月に購入したが、福祉から金一七万八八〇〇円の給付を受けたので、これを控除した。

サ 車両代 金一九五万九二〇〇円

a 原告X2は、原告X1を車イスのまま自動車に乗せることができるようにするため、昇降機付きの自動車(金二一〇万円)を平成一三年一二月一八日に購入した。昇降機を付けない同種車の価格は、金一三〇万円なので、その差額は金八〇万円である。

b 原告X1は、自動車の耐用年数を考えると、一〇年毎に買い換える必要があり、原告X1の余命期間六四年に少なくとも五回の新車購入が必要である。

c そこで、上記車両差額金八〇万円及び買換え期毎に対応する年五分の割合による中間利息をライプニッツ方式により算出した車両代の合計は、金一一五万九二〇〇円である。

d したがって、車両代の合計は金一九五万九二〇〇円となる。

シ 原告X2、同X3に対する慰謝料 計金六〇〇万円

原告X1の両親である原告X2、同X3は、原告X1を育て、同人はようやく短大を卒業し、武蔵野銀行への就職も決まり、その将来を楽しみにしていたものである。

しかし、原告X1は、前記のとおり、本件事故で、二〇歳の若さでありながら、自力では歩行もできず、日常生活も送れない状態となってしまい、原告X2らは、残念やるかたない心境である。更に、原告X2らは、ゆっくりした老後を楽しむどころか、一生原告X1の介護をしなければならない状態となった。

この原告両親の固有の慰謝料は、各金三〇〇万円が相当である。

ス 弁護士費用 金一五六〇万円

原告らは本件訴訟を原告訴訟代理人に委任し、原告X1の分の弁護士費用が金一五〇〇万円、原告X2らの分の弁護士費用が金六〇万円となる。

セ 既払金

原告X1は、自動車賠償責任保険から、金三一二〇万円の支払を受けた。

(5)  よって、原告らは、被告に対し、本件保険契約の他車運転特約に基づき、本件事故による損害賠償請求として、原告X1は金一億六六九〇万三七九七円、原告X2、同X3は各金三三〇万円並びにこれらに対する本件事故日である平成一三年二月二二日から支払済みまでの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)は概ね認める。

(2)  同(2)は、イのうち原告X1が後遺障害等級一級の認定を受けたことは認め、その余は知らない。

(3)  同(3)のうち、イ、ウは認め、エ、オは争う。

(4)  請求原因(4)のうちセの事実は認め、その余は知らないないし争う。

三  抗弁

(1)  常時使用する自動車への該当

ア 本件保険契約の他車運転特約において、被保険自動車とみなす他の自動車から、被保険者、その配偶者または被保険者の同居の親族が常時使用する自動車を除くものとされている。

イ しかるに、本件自動車は、もとEの所有であったものであるところ、平成一二年一二月一日ころ、Bが譲り受け、その後同一三年一月二八日ころ、Aに預けたものである。そしてAは預かった後、一度も上記Bに返還することなく、継続して保管、使用していた。しかも、使用についてもAは本件自動車の鍵を預かり、上記Bから自由な使用を認められており、燃料についてもAが入れており、上記Bは、保管場所が見つからない場合、本件自動車をAに譲渡してもよいと述べていた。

ウ このように長期間継続して本件自動車を保管、使用し、その自由な使用を認められていた上、本件事故当日も、他人を同乗させ、自宅まで送り迎えしており、本件自動車に対する事実上の支配はAにあったというべきであるので、本件自動車は、Aにとって、上記特約所定の「常時使用する自動車」に該当するというべきである。

エ したがって、本件自動車による事故につき、本件保険契約の他者運転特約は適用されない。

(2)  過失相殺(予備的主張)

ア Aは、本件事故日の前日である平成一三年二月二一日午後一一時三〇分ころから、大宮駅西口所在の居酒屋で、原告X1を含む友人とともに飲酒し、翌二二日午前四時ころ店を出た後に本件自動車を運転し、その際も、制限速度を大幅に上回る速度で運転して本件事故を起こしたものである。

イ 原告X1も、上記のとおり、Aが相当量の飲酒していることを知った上で、A運転の本件自動車に同乗したのであるから、原告X1においても本件自動車への同乗について帰責性があり、過失相殺の適用ないし類推適用がなされるべきである。

四  抗弁に対する認否

(1)  抗弁(1)について

ア イのうち、Bが本件自動車をEから譲り受けたこと及びA宅に置いていたことは認め、BがAに同自動車を譲渡してもよいと述べたことは否認する。保険調査会社作成の報告書(乙第二号証、以下「本件報告書」という。)には、BがAに対し、本件自動車を譲渡する意思であったかのように述べた箇所があるが、これも、勤務中に調査を受け、誘導的な質問のためにこうした答えとなったもので、Bの真意とは異なる。

イ ウのうちAが本件自動車の事実上の支配をしていたことは争う。Aは、父所有の乗用車と小型トラックを使用しており、本件自動車を日常的に使用する必要はなく、また、アルバイト先への出勤やドライブの際は本件自動車を使用していなかった。Aが本件自動車を使用したのは、本件事故の際も含めて二ないし三回に過ぎない。

(2)  同(2)は争う。

ア 居酒屋では、原告X1とAとは席が離れていたため、原告X1はAが飲酒していたことは知っていたものの、どのくらい飲んだのかは分からず、店を出るときもAは普通の様子だったので、原告X1はAが運転に危険があるほど飲酒していたか否か判断ができなかった。

イ また、原告X1が酔いつぶれたことから、Aが原告X1を同乗させ送っていくことになったもので、原告X1が積極的に同乗を求めたものではないことは勿論、同乗することを明確に認識していなかった。原告X1は、Aらと飲酒後、居酒屋を出たことは覚えているが、なぜAの車に乗ったのかは覚えていない。

ウ 本件事故は、Aが飲酒したから起きたものではなく、同人の速度の出し過ぎ等のAの危険運転によるものである。

エ したがって、過失相殺(好意同乗による減額)はなされるべきではない。

理由

第一  請求原因(1)の事実につき、被告は「概ね認める」と認否し、具体的積極的に争わない。

第二  本件事故の経緯について

甲第一、第三及び第四号証、乙第三号証、証人Aの証言並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

一  A(昭和○年○月○日生)は、平成一一年ころ、普通乗用自動車の運転免許を取得したものの、平成一一年一〇月、人身事故を起こし、また、平成一二年二月と同年四月、二度にわたり道路交通法違反事件を起こし(それぞれ放置駐車、制限速度時速五〇キロメートル以上超過)、同年五月、運転免許停止処分(停止期間三〇日)、同年七月、同停止処分(同九〇日)の各処分を受けた上、同年一二月、運転免許取消処分を受けた。その後、Aは、平成一三年二月二日、再度運転免許を取得した。

二  Aのアルバイト仲間であるF(昭和○年○月○日生。)がアルバイト先を辞めることになり、平成一三年二月二一日、その送別会を兼ねた懇親会を原告X1を含むアルバイト仲間が、行うことになった。

参加者のうち、A、F、G(昭和○年○月○日生。)及びH(昭和○年○月○日生。)の四人がまず、同日午後一一時ころ、大宮駅西口所在の居酒屋「笑笑(わらわら)」に集まって飲酒を含む飲食を始め、原告X1も同日午後一一時一〇分ころから加わって、酒類を含めて飲食を始め、さらに三名の者が加わって、A及び原告X1らは総勢八名で、翌二二日午前四時三〇分ころまで飲酒していた。

このとき原告X1は、生ビール、サワー(焼酎を炭酸水で割ったもの)及びカクテルなどを飲み、Aは焼酎を清涼飲料水で割ったものを複数杯飲んだ。Aは、酒に強く、一回の飲酒で、焼酎をボトル二ないし三本飲むこともあった。

ただし、このときAは、懇親会が終わった上記午前四時三〇分より一時間ないし二時間ほど前に眠ってしまった。

三  上記懇親会は、二二日午前四時三〇分ころ散会になったものの、原告X1は酔いが回り、一人で帰れるか覚束ない状態であった。そこで、Hらは、同原告を送っていくことにしたが、Aが本件自動車で来ていたので、Aに原告X1を乗せて送っていくように求め、Aもこれを了解し、さらに帰宅方向が同じ、H、G及びFも同乗することになった。すなわち、Aが本件自動車を運転し、原告X1は助手席に、他の三名は後部座席に乗り込んだ。なお、原告X1は、酔いが進んでいたものの、意識がなくなっていたわけではなく、自分がA運転の自動車に同乗したことは意識していたものの、なぜ、自分が同車に乗り込むことになったかは理解していなかった。また、原告X1がA運転の自動車に同乗するのは初めてだった。

四  Aは、こうして、原告X1らを同乗させ上尾市方面に向かったものの、制限速度時速六〇キロメートルの道路を時速約八〇キロメートルほどで走行し、かつ、頻繁に車線を変更するなど、本件自動車を激しく左右に振れるようにして走行させ、当初シートベルトをしていなかった原告X1の体が運転席との間のテェンジレバーのところに倒れ込むほどであった。

このため、原告X1らは恐怖を感じ、原告X1以外の同乗者は、口々に「(スピードを)出し過ぎだよ」「怖い」「危ない」「乱暴だ」等とたしなめたが、Aはその後も同様の状態で運転を続けた。なお、原告X1は酒の酔いもあって、そのまま寝てしまった。

五  そしてAは、同日午前五時ころ、請求原因(1)記載の場所で、赤信号で停車中のC運転の普通貨物自動車に本件自動車を衝突させた(本件事故)。A及び原告X1は、本件事故の衝撃で、フロントガラスを破り前に倒れており、かつ、原告X1は、本件事故によって、頸髄損傷、第五頸椎骨折の傷害を受け、Aを含めた他の者も傷害を受けた。

第三  Aが本件自動車を使用した経緯

抗弁事実のうち、本件自動車は、BがEより譲り受け、Aに預けていたことは争いがなく、同争いのない事実に、甲第一五、第一六号証、乙第二、第三号証、証人B、同A及び同Iの各証言並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

一  Bは、平成一二年から一三年三月当時、旧大宮市内に居住し、東京都新宿区所在の不動産の仲介会社に勤めていた。なお、Bは、平成一三年四月に東京都板橋区に転居することを予定しており、実際に同年四月、転居した。Bと戊Aは本件事故以前に別のアルバイト先で知り合い、その後も時折飲食をともにするなどの付き合いを続けていたが、特に男女の交際をしているわけではなかった。

Bは、平成一二年一二月ころに自己使用目的で元同僚のE(茨城県日立市在住)から本件自動車を無償で譲り受けた。しかし、当時、Bの大宮の住居には駐車場所がないことから、Bは、本件自動車を路上等に駐車させていた。また、Eより名義の変更も未了としていた。Bの仕事も繁忙期で、Bは、休日も出勤するほか、終電で帰宅したり、都内のカプセルホテルに泊まるような毎日であったので、駐車場を探す時間がなかった。また、Bの両親は北海道に居住し、近くに本件自動車を無償で預かってくれる親類もなかった。そこでBは、複数の友人に預かってくれるよう申し入れたが、いずれも断られたので、平成一三年一月ころ、元アルバイト仲間のAに本件自動車の保管を依頼し、Aも了承した。

二  Aは、旧大宮市(現さいたま市大宮区)三橋の自宅に、父D、母J、妹及び祖父母の計六人家族で暮らしていた。Dは、自営で大工業を営み、普通常用自動車(以下「D車」という。)と業務用の小型トラックを所有し、自宅敷地内に停めていた。

これらの自動車の鍵は、D宅の玄関に置かれ、AもDに断って、これらの自動車を運転していた。

なお、Aは、本件事故当時、大宮駅東口の居酒屋「甘太郎」にアルバイトとして勤務していたが、同店には自転車で通勤していた。

三  Bは、平成一三年一月下旬ころ、Aに対し、まず電話で、本件自動車を預かってくれるよう依頼し、同人が了承すると、Bは、翌日、友人(Eではない。)と二人で、本件自動車ともう一台の自動車でD宅を訪れた。

Bは、本件自動車をD宅の敷地に停め、鍵は同車内に置いて、Aに引き渡した。その際、Bは、Aに対し、「いつでも乗っていいよ」「運転するときは注意しろ」などと告げた。

四  Bが本件自動車を預けていった際、Dは不在だったが、帰宅後、同自動車の存在に気づき、Aから、友人から預かった旨説明を受けた。そして本件自動車は、前記小型トラックなどが駐車されている場所から公道への出口との間に置かれたので、D車の出し入れのじゃまになり、頻繁に移動する必要もあったことから、本件自動車の鍵は、D車らの鍵と一緒に玄関に置かれた。

前記のとおり、Aは、普段はD車を使用し、また、アルバイト先へは自転車で通勤して、実際に本件自動車を使用したのは、本件事故の際を含め、二回ほどであり、給油したのも一回ほどであった。

なお、Aが本件自動車を預かった後、母親のJは、Aに対し、本件自動車をBに返すように求め、AはJの前でBに電話したことがあったが、当時Bは、駐車場所を確保できていなかったので断った。同人は、仕事が繁忙期を過ぎ余裕ができれば、駐車場を探し、本件自動車を引き取ろうと考えていた。

五  Aは、平成一三年二月二一日、前記の懇親会に参加することになり、飲酒することが予測できたが、帰りは遅くなると考え、かつ、自宅から大宮駅までは車で一五分ほどしかかからないことから、自動車を運転して赴くことにした。そして、Aは、当初D車を使用しようと考えたが、そのときDが不在で、同人の了解を得ることができなかったので、本件自動車を使用することとし、大宮駅近くの路上に駐車して懇親会に参加し、翌日、前記のとおり本件事故を引き起こした。

六  保険調査会社である有限会社エスケイリサーチの調査員であるIは、平成一四年四月九日、あらかじめ約束を取り付けた上で、Bの勤務先を尋ね、Bに対し、本件自動車をAに預けた経緯などについて尋ねた。

このとき、Bは、仕事中であり、仕事をしながらIの調査に応じ、Iも、従業員が顧客と接するカウンターのところに立ち、Bへの質問をした。そして、Bは、Aに本件自動車を預けたり、また、本件事故が起きてから、一年以上が経過して記憶も薄れており、また、仕事をしながらの対応であり、かつ、自己の供述内容が、本件契約の他者運転特約の適用の成否に関わるという認識もなかったことから、必ずしも正確に受け答えをしたわけではなかった。

そして、Iは、Bに対し、本件自動車をAからBに返還する時期は、未定だったか尋ねると、Bは未定である旨答えた。さらに、Iは、Bに対し、もし、Bにおいて駐車場を確保できなかった場合は、Aに譲渡する意思もあったのではないかと質問したところ、Bも、そうした意思も全く否定できないと考えて、これを肯定する答えをした。

そして、Bは、Iから求められて、「確認書」と題する書面の「六・当該車両の返却予定日時」という項目に、自筆で、「未定 自分が使わなかった場合、Aさんに譲渡する予定でした。」と記載し、I作成の本件報告書にも、Iの「返却予定は未定でしたか。」との質問に対するBの答えとして、「未定でした。もし、駐車場が見つからず、保管場所が確保できなかった場合、Aさんに譲渡するつもりでした。」という記載がある。しかし、前記Iの、駐車場が見つからなかった場合どうするつもりだったのかという質問は記載しなかった。

IによるBへの調査は、Bが上記確認書への記入をした時間も含め、約二〇分ないし約三〇分を要した。

第四  被告の損害賠償義務について

一  請求原因事実について

(1)  第二記載のとおり、請求原因(1)の事実が認められる。本件事故は、Aによる前方不注視等が原因で起きたものと推認され、同人は、民法七〇九条に基づき本件事故による損害を賠償する義務を負う。

なお、原告らは、本件において、Aに対して、本件事故につき、被告に対するのと同額同内容の損害賠償を求めたが、同人は請求原因事実を認める旨認否したので、被告と分離されて、全額認容の判決を受け、同判決は確定している(当裁判所に顕著な事実)。

(2)  同(2)の事実は、甲第三ないし第九号証及び弁論の全趣旨により認めることができる。

(3)  同(3)のイ、ウの事実は当事者間に争いがない。

二  そこで次に、抗弁事実(常時使用する自動車への該当性)について検討する。なお、乙第一号証の「自家用自動車総合保険普通保険約款および特約条項」中の「(5)他車運転担保特約」の第二条のただし書は「主として使用する自動車」を除くと定めている。

(1)  第三で認定したとおり、Bは、Eより本件自動車を譲り受けた後、駐車場が確保できるまでの期間、一時的にAに預けたもので、譲渡する意図は認められない。

(2)  前記のとおり、本件報告書には、Bの自筆の確認書を含め、同人がAに譲渡する意図があったかのような記載がある。

しかし、これは前記のとおり、Bにおいて、本件事故等から一年以上が経過し、かつ、他車運転特約の成否に関する問題であるとの認識に欠け、仕事をしながらの状態で、Iによる質問(しかも、その質問自体は記載されていない。)に誘導される形でなされたものと評価でき、Bの正確な認識が述べられたものとは評価できない。

また、同報告書中のAへの調査結果では、同人が譲り受ける意思があったり、あるいは、Bとの間で譲渡約束をしたような記述は全く見られない。

(3)  さらに、本件事故当時、Bが駐車場の確保を断念したような事実は認められず、かつ、Eから譲渡を受けた時期から二か月程度しか経過せず、自ら使用した形跡もあまりないことからすると、BがAに本件自動車を譲渡する意思があったとは認められない。

(4)  もっとも、Bは、前記の通り、Aに対し、本件自動車を使用してもよい旨述べ、鍵も預けている。

しかし、Aは専らD車を使用し、預かっている一か月の間、本件自動車を使用したのは、本件事故当時を含めて二回ほどであり、遠乗りもせず、アルバイト先へ行くのにも利用していなかった。すなわち、Aが本件自動車を同人が認める以上に頻繁に使用していたと認めるに足りる客観的証拠の提出はなく、かつ、Aが本件自動車を平成一三年一月下旬に預かってから同年二月二二日本件事故を起こすまでの間に二回ほどしか使用しなかったとすることを、不合理と評価するに足りる事実もない。

そして、本件事故の際、Aが本件自動車を使用したのは、たまたまDが不在で、D車を使用する同意が得られなかったことからであり、その使用は偶然かつ臨時のものであったといえる。

(5)  これらの事情を総合すると、本件自動車は、Aが常時使用する自動車ないし主として使用する自動車には該当せず、本件事故につき、同特約の適用があるというべきである。

したがって、抗弁の主張は採用できない。

第五  請求原因(4)(損害)について

一  治療費 一二九万七二六〇円

甲第二、第四ないし第六号証により、原告X1が治療費合計二〇三万八四二〇円を支出した事実が認められ、同原告が自認する支給金七四万一一六〇円を差し引くと一二九万七二六〇円となる。

二  入院雑費 一八万八五〇〇円

第四の一(2)で認定したとおり、原告X1が、少なくとも計一四五日間入院している事実が認められるので、その入院雑費として、一日あたり金一三〇〇円を相当と考えるので、合計金一八万八五〇〇円となる。

三  付添看護費 六八万四〇〇〇円

原告X1の入院期間中一一四日間、両親である原告X2らが付き添ったことは弁論の全趣旨により認められ、被告も積極的に争わない。そして、原告X1の四肢麻痺等の症状から上記付添の必要性を肯定できる。

その付添看護費として、一日あたり六〇〇〇円を相当と考えるので、合計六八万四〇〇〇円となる。

四  休業損害 一一〇万五二四七円

弁論の全趣旨によれば、原告X1が、平成一三年三月、短大卒業し、就職予定であった事実が認められ、被告も積極的に争わない。

そこで、賃金センサス平成一三年の高専、短大卒の二〇歳ないし二四歳の女性労働者の平均賃金二九二万三三〇〇円を基礎収入として、平成一三年四月一日から症状固定日である同年八月一六日までの一三八日分の休業損害は、次の計算式から、一一〇万五二四七円となる(小数点以下切捨て、以下同じ)。

292万3300円×138日÷365日

五  入院慰謝料 一九五万円

前記のとおり、原告X1は、本件事故により少なくとも一四五日間入院しており、入院慰謝料として、同原告請求の一九五万円は相当な範囲にあるというべきである。

六  逸失利益 六七七九万三八〇八円

原告X1が、本件事故により、後遺障害等級一級の障害を受けたことは当事者間に争いがない。

したがって、原告X1は、本件事故による後遺障害により、症状固定時である二一歳から稼働可能年齢である六七歳までの四六年間にわたり、その労働能力の一〇〇パーセントを喪失したものである。そこで、賃金センサス平成一三年の高専、短大卒女子全年齢平均賃金の額である年額金三七九万一六〇〇円として、これに四六年のライプニッツ係数一七・八八〇〇として乗じると、原告X1の逸失利益は六七七九万三八〇八円と算出される。

七  後遺障害慰謝料 二〇〇〇万円

前記のとおり原告X1は本件事故により後遺障害等級一級の後遺障害を負っており、後記の原告X2らの慰謝料額も考慮すると、原告X1の後遺障害慰謝料としては二〇〇〇万円が相当である。

八  将来の介護費 四一八七万〇八二九円

原告X1は上記後遺障害のため、原告X1主張のとおり生涯介護を要する状態であり、平成一三年当時の満二一歳女性の平均余命は六四年であり、原告両親及び近親者の介護料は、一日あたり金六〇〇〇円が相当であるから、六四年間のライプニッツ係数一九・一一九一を乗じることとし、将来の介護費は、次の計算式から四一八七万〇八二九円と算出できる。

6000円×365日×19.1191

九  家屋改造費 四六四万〇七四〇円

前記のとおり、原告X1は、本件事故の後遺障害により、自力で歩行や入浴、用便ができず、移動も車イスを使用してしかできず、このため、原告X1の自宅においては、自宅内の段差の解消、バス・トイレ室の改築、スロープ、昇降機の設置、室内のリフトの設置等の家屋改築を要することが認められる。そして、甲第一〇号証、第一一号証の一、二によれば、上記家屋改造費として金五八八万円を要したことが認められ、これより、原告の自認する一二三万九二六〇円の給付金を差し引くと、四六四万〇七四〇円となる。

一〇  将来の介護器具の購入費用 計四九四万七六九九円

(1)  介護用品 二三六万一〇一四円

ア 原告X1は前記認定の後遺障害により、終生介護が必要な状態であることから、原告X1主張の介護器具が必要であるというべきである。

甲第一一号証及び弁論の全趣旨によれば、平成一四年、段差解消機(四六万三五〇〇円)、ベッドリフト(一六万二〇〇〇円)、浴室リフト(四八万六〇〇〇円)及びシャワーキャリー(九万四二四〇円)が購入された事実を認めることができる(代金合計一二〇万五七四〇円)。ただし、上記代金額は、九の家屋改造費に含まれている。

イ また、弁論の全趣旨によれば、これらの器具の耐用年数は八年と認められ、そうすると、原告X1の平均余命六四年間の間に、今後八年毎に七回買い換える必要がある。

そうすると、次の計算式のとおり、上記一二〇万五七四〇円に、八年から五六年まで各八年ごとのライプニッツ係数(現価表)の合計の数値を乗じると二三六万一〇一四円と算出される。

120万5740円×(0.67683936+0.45811152+0.31006791+0.20986617+0.14204568+0.09614211+0.06507276)

ウ したがって、介護用品の費用として、家屋改造費とは別に二三六万一〇一四円を要する。

(2)  車イス代 二四四万七八八五円

ア 甲第一二号証によれば、原告X1が平成一四年六月に車イスを四五万四〇〇〇円で購入したことが認められる。

イ また、弁論の全趣旨によれば、その耐用年数は四年と認められるので原告X1の平均余命六四年間の間に、一五回買い換える必要がある。

そこで、前同様、四年から六〇年までの各四年毎のライプニッツ係数(現価表)を乗じると、次の計算式のとおり、一九九万三八八五円と算出できる。

45万4000円×(0.82270247+0.67683936+0.55683742+0.45811152+0.37688948+0.31006791+0.25509364+0.20986617+0.17265741+0.14204568+0.11686133+0.09614211+0.07909635+0.06507276+0.05353552)

ウ ア、イの合計額である二四四万七八八五円が車イス代の合計額となる。

(3)  特殊寝台 一三万八八〇〇円

甲第一三号証によれば、原告X1は、平成一四年三月に障害者用の特殊寝台一台を金三一万七六〇〇円で購入したことが認められる。これより、原告の自認する給付金一七万八八〇〇円を差し引くと、一三万八八〇〇円となる。

(4)  したがって、将来の介護器具の購入費用は合計四九四万七六九九円となる。

一一  車両代 計一九六万一一四三円

(1)  甲第一四号証によれば、原告X2は原告X1を車イスのまま自動車に乗せるため、昇降機付きの自動車を平成一三年一二月一八日に金二〇九万九〇五五円で購入したことが認められ、昇降機を付けない同車種の価格との差額が金八〇万円であることは原告が自認するところである。

(2)  そして、原告X1は、自動車の耐用年数を考えると、一〇年毎に買い換える必要があるといえ、原告X1の余命期間六四年の間に五回の新車購入が必要となる。

そこで、前同様、一〇年から五〇年までの各一〇年毎のライプニッツ係数(現価表)を乗じると、次の計算式のとおり、一一六万一一四三円と算出できる。

80万円×(0.61391325+0.37688948+0.23137745+0.14204568+0.08720373)

(3)  したがって、車両代の合計額は、ア、イの合計額である一九六万一一四三円となる。

一二  原告X2及び同X3の慰謝料 各三〇〇万円

本件事故の態様、原告X1の後遺障害の内容・程度、原告X2らが同X1の両親として今後その介護の負担を負わざるをえないこと等の事情を総合すると、原告X2らの固有の慰謝料としては、各金三〇〇万円を相当とする。

一三  結語

(1)  原告X1の損害額(上記一ないし一一) 一億四六四三万九二二六円

(2)  原告X2らの損害額(同一二) 各三〇〇万円

第六  過失相殺等

一  前記第二で認定したとおり、原告X1は、深夜から翌日明け方にかけて、ともに長時間飲酒をしたAが運転する本件自動車に同乗しており、かつ、自分がAの運転する自動車に乗り込むこと自体は認識している。

そうすると、原告X1は、飲酒者が運転する自動車に乗り込むという危険な行為を起こした上で本件事故に遭遇しているのであるから、一定程度の過失相殺がなされるべきである。

二  ただし、前記のとおり、原告X1は、乗車当時、酔いが進んだ状態にあり、これを見かねてHら他の者が勧めて、本件自動車に乗り込むことになったものであり、自ら積極的に同乗を求めたものではない。また、同原告は、前記のとおり、なぜ自分が本件自動車に同乗することになったか把握していないなど、乗車当時、判断能力等が相当減退していた事実が窺える。さらに、Aは懇親会の終了近くの一時間ないし二時間は寝てしまっており、原告X1や他の同乗者において、Aの酔いがある程度醒めていると判断したとしても、無理からぬ点もないではない。かつ、Aは、本件自動車の運転を始めると、飲酒した上、制限速度を時速二〇キロメートルほど上回る速度で進行し、左右に頻繁に走行させ、Hら同乗者が何度もたしなめても、改めなかったという事実もある。

三  これらの事情を総合すると、本件事故につき原告X1の過失割合は一〇パーセントを相当とする。

四  そこで、第五の一三記載の各金額の一〇パーセントを控除すると、次の金額となる。

(1)  原告X1 一億三一七九万五三〇三円

(2)  原告X2ら 各二七〇万円

五  既払金の控除

自賠責保険からの既払金として争いのない三一二〇万円を、四(1)の金額より差し引くと、一億〇〇五九万五三〇三円となる。

六  弁護士費用の加算

原告X1については五記載の金額、原告X2らについては四(2)の金額にそれぞれ、弁護士費用として一割を加算すると、次の金額となり、これが被告が賠償すべき損害額の元本額となる。

(1)  原告X1 一億一〇六五万四八三三円

(2)  原告X2ら 各二九七万円

第七  結論

以上の次第で、原告らの請求は、主文第一、第二項の限りで理由があるので、この限度で認容することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法六一条、六四条本文及び六五条一項本文を、仮執行の宣言については同法二五九条一項を、各適用の上、主文のとおり判決する。

(裁判官 松田浩養)

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