大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

さいたま地方裁判所 平成14年(行ウ)44号 判決 2003年2月26日

原告

X1

X2

被告

春日部市長 三枝安茂

同訴訟代理人弁護士

坂巻幸次

石井久雄

吉村総一

主文

1  原告X1の本件訴え及び原告X2の平成10年度ないし平成12年度の各固定資産賦課決定処分に係る本件訴えをいずれも却下する。

2  原告X2のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第3 当裁判所の判断

1  原告X1の本件訴えについて

(1)  固定資産税の賦課決定等の課税処分の無効確認を求める訴えの法律上の利益は、特段の事情のない限り、課税処分の直接の相手方である納税者自身がこれを有するに止まり、納税者以外の第三者は、たとえ、課税処分により何らかの不利益を被ることがあったとしても、それは単なる事実上の不利益であって、上記訴えによる権利保護に値する利益を侵害されたものとはいえないと解するのが相当である。

(2)  これを本件についてみるに、原告X1は、原告X2に対する本件各賦課処分の無効確認を求めるものであって、原告X1自身に対する課税処分の無効を求めるものではないところ、原告X1が、納税者原告X2に対する本件各賦課処分により、原告X1と原告X2は夫婦であることから、財産上の不利益を被ることがあったとしても、それは単なる事実上の不利益にすぎず、原告X1は、本件各賦課処分の無効確認を求める法律上の利益を有しないというべきであり、その他特別の事情の存在も認められない。

(3)  よって、原告X1の本件訴えは不適法な訴えというべきである。

2  原告X2の本件訴えについて

(1)  本件10年度ないし本件12年度各賦課処分の無効確認請求について

本件10年度ないし本件12年度各賦課処分については、上記さいたま地裁平成12年(行ウ)第29号固定資産評価及び税額決定取消請求事件の判決において、これら処分について無効事由となるべき重大かつ明白な違法があるということはできないとの判断が示され、上記判決は確定しているから、原告X2の本件10年度ないし本件12年度各賦課処分に係る本件訴えは、上記各判決の既判力に抵触するもので不適法であると解される。

(2)  本件13年度及び本件14年度賦課処分の無効事由の存否について

ア  本件13年度及び本件14年度賦課処分につき、違法があるかを検討するに、原告が主張する住宅用地の認定は、地方税法349条の3の2において、住宅用地の固定資産税の課税標準の特例措置が講ぜられていることから問題となるところ、同条1項所定の「人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地」(住宅用地)とは、特定の者が継続して居住の用に供する家屋の敷地のことをいうものである。そして、賦課期日において現に居住していない家屋敷地については、当該家屋が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋が居住以外の用に供されるものでないと認められる場合は「住宅用地」に該当するが、それ以外の場合は「住宅用地」に該当しないと解される(〔証拠略〕)。

ところで、本件建物は、上記のとおり、平成9年11月頃までには前記建築工事によって、屋根が葺かれ、囲壁が完成するに至ったが、その後、建築工事が中断されており、内装等は完成していないことから、少なくとも、平成10年1月1日から平成14年1月1日(平成14年度の賦課期日)当時まで、本件建物は未完成であったと認めることができる(原告も、原告と請負業者との間の建築工事請負契約履行を被告が妨害したために、建築物が未完成であると主張しており、現況は、本件土地上にある建物が未完成であることを認めていると解される。)。そうすると、平成13年度及び平成14年度の賦課期日において、本件建物は、構造上住宅として完成しておらず、現に特定の者が継続して居住の用に供する状況にはなかったというべきであるから、本件土地を建築中の家屋敷地で非住宅用地として扱った本件14年度賦課処分は、適法であって、何ら重大かつ明白な違法があるということはできないというべきである(なお、平成13年度の課税処分については、さいたま地裁平成14年(ワ)第630号固定資産税返還請求事件の判決理由中で、処分を無効たらしめるような重大明白な瑕疵があるといえないと判断されている。)。

イ  これに対し、原告は、第2の3(1)のとおりの主張をするが、原告の主張する違法事由はいずれも重大かつ明白な瑕疵とはいえないものであるから、原告の上記主張を採用することはできない。

3  結論

よって、原告X1の本件訴え及び原告X2の本件10年度ないし本件12年度各賦課処分に係る本件訴えは、いずれも不適法であるから、却下することとし、原告X2のその余の請求は、理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊田建夫 裁判官 松田浩養 菱山泰男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例