さいたま地方裁判所 平成15年(行ウ)23号 判決 2004年1月28日
原告 甲
被告 朝霞税務署長
海老沢弘
同指定代理人 山本美雪
櫻井保晴
石川利夫
内田健文
山畑正
若山政行
神田福男
小髙愛子
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告が決定した平成13年10月19日付けでした原告の平成10年分の所得税更正処分のうち、分離長期譲渡所得金額430万6281円、納付すべき税額75万8000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
原告が平成10年分の所得税の確定申告をしたところ、被告は原告の申告は過少に申告したものとして333万5000円を新たに納付すべきとする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び46万1500円の過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。本件は、原告において、特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例である租税特別措置法(平成11年法律第9号による改正前のもの、以下「措置法」という。)37条が適用されること等主張して、本件更正処分及び本件賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
これに対し、被告は、原告が譲渡した別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)が事業用資産に当たらないため措置法37条の特例の適用はないこと、また、原告がA株式会社(以下「A」という。)に支払ったとする80万円は所得税法33条3項に定める取得費及び譲渡に要した費用いずれにも該当しないことから、原告の所得税の課税価格及び納付すべき所得税額並びにその算定の根拠は、別表2の「平成10年分の所得税の納付すべき税額の計算」、別表3の「分離長期譲渡所得の金額の計算」、別表4の「譲渡費用の金額の計算」のとおりであり、本件更正処分及び本件賦課決定処分は適法であると主張している。
本件更正処分につき主に争いがあるのは、譲渡収入金額と譲渡費用の金額であり、本件更正処分のその他の金額につき実質的に争いはない。そこで、本件は、事業用資産の買換えの際の特例を定める措置法37条の適用を受けるのか、また、Aに対して支払ったとする80万円が譲渡所得の課税の際の控除を定める所得税法33条3項の取得費又は譲渡に要した費用に当たるのかどうかが争点となる。
2 争いのない事実等
(1) 原告の相続
原告は、死亡した原告の母乙から、本件土地の持分300分の8を相続し、平成8年5月22日付けで、相続を原因とする移転登記をした。原告は、原告の父丙(以下「亡丙」という。)の死亡による遺産分割協議により、平成9年7月31日、本件土地の持分300分の92を取得し、平成10年3月18日付けで、遺産分割を原因とする移転登記をした。
本件土地のその余の共同相続人は、丁及び戊(以下「訴外共有者」という。)であった。
(2) A
Aは、不動産の仲介及び売買並びに開発を業とする法人であり、昭和55年3月18日から平成6年3月14日までの期間は原告の夫Jが、平成6年3月15日から平成10年3月29日までの期間は原告が、平成10年3月30日以降は、Jが代表取締役を務めている。
(3) 賃貸借契約書の存在
原告を貸主、Aを借主、Jを取引主任者とする平成10年3月1日付けの駐車場(自動車保管場所)契約書と題する書面が存在する。その記載内容は以下のとおりであり、原告、A、Jの三者による記名押印がなされている(以下「本件賃貸借契約」ということがある。)。
所在地 本件土地の一部分
名称 仮称:B駐車場内第一号
賃料 1か月 金2万円
賃貸借の期間 平成10年3月1日より平成12年2月末日まで
支払時期 毎月末日限り
支払方法 原告に持参し支払う
(4) 本件土地の譲渡
原告及び訴外共有者は、平成10年5月2日、C株式会社(以下「C」という。)との間で、原告らが同会社に対し本件土地に関する売買の媒介を依頼する旨の一般媒介契約を締結した。
原告及び訴外共有者は、同年10月28日、D及びEとの間で、本件土地を総額7440万円で譲渡する旨の売買契約を締結した。
(5) 登記・手数料
原告及び訴外共有者は、平成10年10月28日、本件土地の所有権移転登記をした。
Aは、同日付けで、本件土地売却に対する媒介手数料として、原告から80万円を受領した旨の領収証を作成した(以下、上記金員を「本件手数料」という。)。
(6) 課税処分の経緯
ア 確定申告
原告は、平成11年3月15日、原告の平成10年分の所得税について、別表5の「確定申告」欄記載のとおり、申告した。
イ 本件更正処分及び本件賦課決定処分
被告は、平成13年10月19日付けで、原告に対し、別表1の「本件課税処分の経緯」のうち「更正処分」欄記載のとおりの本件更正処分及び本件賦課決定処分をした。
ウ 異議申立て
(ア) 原告は、平成13年12月19日、本件更正処分及び本件賦課決定処分に対し、別表1の「異議申立て」欄記載のとおり、異議申立てをした。
(イ) これに対し、被告は、平成14年3月18日付けで、原告の異議申立てをいずれも棄却する決定をした。
エ 審査請求
(ア) 原告は、前記異議申立て棄却決定を不服として、平成14年4月16日、国税不服審判所長に対し、別表1の「審査請求」欄記載のとおり、審査請求をした。
(イ) これに対し、国税不服審判所長は、平成15年2月21日付けで、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をした。
(7) 本訴提起
原告は、平成15年5月22日、本件更正処分及び本件賦課決定処分の取消しを求めて、本訴を提起した。
3 争点
(1) 本件土地は、措置法37条1項の「事業の用に供しているもの」に当たるか(争点1)。
(2) A株式会社に対して支払った媒介手数料が所得税法38条1項の「資産の取得に要した金額」に当たるか(争点2)。
4 争点に対する当事者の主張
(1) 争点1について
(被告の主張)
措置法37条1項(特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例)は、個人が有する資産で、一定地域内(又は一定の地域外)にある土地のうち、事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。)の用に供しているものを譲渡した場合において、その譲渡の日の属する年の12月31日までに一定の資産を取得し、かつ、当該取得の日から1年以内に当該取得をした資産を当該個人の事業の用に供したとき、又は供する見込みであるときは、当該譲渡による収入金額が当該買換資産の取得価額を超える場合には当該譲渡にかかる資産のうち当該取得価額の100分の80に相当する金額を超える金額に相当する部分の譲渡があったものとして、譲渡所得の計算を行う旨規定している。
同条項に規定する事業用資産とは、営利を目的として自らの危険と計算において継続的に行う事業のために使用する資産をいい、原則として、資産が譲渡された当時、現実かつ継続的に事業の用に供されているものをいうものと解されている(東京地裁平成6年1月28日判決)。また、同条項に規定する「事業に準ずるもの」とは、事業と称するに至らない不動産又は船舶の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいい(推置法施行令25条2項)、この不動産等の貸付けが継続的に行われるものであるか否かは、貸付時において、その貸付けが相当期間継続して行われることが予定されていたか否かにより判断すべきものと解されている(那覇地裁平成2年8月28日判決)。
これを本件についてみると、本件土地は、本件賃貸借契約により賃貸されていたとされる期間において、現実に土地が整備され、駐車場としての施設の設備などが行われた事実はないし、事実上も駐車場として使用されたことはない。当然、賃貸借契約の存在を裏付けるような賃料の授受などの事実が原告とAの間で存在していたこともなく、このことは、賃貸人である原告が、本件賃貸借契約の締結時点から本件土地を譲渡するまでの間、本件賃貸借契約によって定められた賃料収入を原告の不動産所得として一切申告しておらず、賃借人であるAもまた、本件賃貸借契約書に記載された賃借期間を含む事業年度の法人税の確定申告書に支払地代を一切計上していない事実によっても裏付けられているところであって、結局、本件土地が、客観的に事業の用に供されているものと認められる外形的状況は全くなかったのであるから、本件土地について、同条項の適用がないことは明白である。
(原告の主張)
原告の平成10年分の所得税の確定申告書に駐車場収入を不動産所得として申告していないのは原告の申告漏れであり、Aは、駐車場支出として計上している。支払地代は、借地法上の支払であり、また、消費税法では駐車場収入、支出という言葉が使用されている。Aが駐車場支払として計上している以上、原告が賃料収入を原告の不動産所得として一切申告しておらず、Aも支払地代を一切計上していないとする旨の被告の主張は当たらない。
したがって、措置法37条の適用がないとする被告の主張は何らの根拠もなく、失当である。
(2) 争点2について
(被告の主張)
所得税法は、譲渡所得の金額の計算に当たり資産の譲渡による収入金額から控除すべき費用として、当該資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用を挙げており(所得税法33条3項)、上記資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額と設備費及び改良費の額の合計額とする旨定めている(同法38条1項)。
譲渡所得に対する課税は、資産の取得の時における客観的価額と譲渡の時における客観的価額との増差分を値上がり益として課税の対象としているものということができ、譲渡所得の金額の計算において、資産の譲渡による収入金額から「資産の取得に要した金額」を控除するのは、上記の客観的価額の増差分を算出する意味を持つ。
したがって、資産の取得に関連して何らかの費用を要した場合であっても、それが一般的に上記取得の時における当該資産の客観的価額を構成する費用とは認められないものであるときは、これを「資産の取得の要した金額」として譲渡による収入金額から控除することはできないものというべきである。
また、所得税法は、譲渡所得の起因となる資産が、相続により移転した場合(限定承認に係るものを除く。)は、その段階において譲渡所得課税は行わず、相続人が上記資産を譲渡したときに、その者が当該資産を被相続人から取得したときから引き続き所有していたものとしていたものとみなし、被相続人の取得の時の客観的価額と相続人の譲渡の時の客観的価額との増差分を課税の対象とすることとしているのであるから(所得税法59条、60条)、譲渡による収入金額から控除すべき「資産の取得に要した金額」とは、被相続人の取得時において当該資産の客観的価額を構成する費用と認められるものでなければならない。
ところで、相続人が数人いる場合には、相続財産は各相続人の共有とされ(民法898条)、個々の資産の具体的な帰属は遺産分割によって定められるのが通常であるところ、遺産分割は、共有にかかる相続財産の分配にすぎず、これにより相続財産に含まれている個々の資産の財産価値そのものに変動を及ぼすものではないから、かかる遺産分割に要した費用は、一般的に当該資産の客観的価額を構成するものとは認められず、また、被相続人の取得の時に遡及してその当時における上記客観的価額を構成するとか、あるいは、被相続人の取得のために付随費用とみることもできないと解されている(東京地裁平成12年4月21日判決)。
とすれば、本件手数料は、亡丙の遺産分割について相続人間で争いになった時点で、Aが遺留分減殺請求のアドバイスをしたことに対する報酬として支払ったものであり、遺産分割に要した費用に当たるから、前述の譲渡取得課税の趣旨に照らせば、所得税法33条3項に定める取得費に該当しないことは明らかである。
また、所得税法33条3項に定める「譲渡に要した費用」とは、当該資産の譲渡を実現するために直接かつ通常必要な費用に限定されると解されている(新潟地裁平成8年1月30日判決等)。
本件についてみると、Aが遺留分減殺請求のアドバイスをしたことに対する報酬として支払ったものであるから、本件土地の譲渡を実現するために直接かつ通常必要な費用とはいえない。したがって、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用として控除することはできない。
(原告の主張)
企業会計上の固定資産の取得原価については、固定資産を購入によって取得した場合には、購入代金に買入手数料、運送費、荷役費、据付費等の付随費用を加えて取得原価とする。そして、資産の取得費とは、当該資産の取得の時までに、その取得のために、直接必要とした費用と解するのが相当であり、そう解するのが、所得税法38条1項の文理解釈にかなうものと思料される。
本件手数料はAが遺留分減殺請求のアドバイスをしたことに対する報酬として支払ったものであるから取得費に該当することは明らかである。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
証拠(甲8、乙号各証)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(1) 原告の父である亡丙が死亡したときに、原告は原告の夫のJのアドバイスをうけて遺留分減殺請求をし、遺産分割協議が行われた。
(2) 亡丙の相続のあった平成8年10月ころから遺産分割協議の確定した平成10年3月までの間、本件土地は草が生えており、空地となっていた。
本件土地の共有者の一人である戊は、被告の聴取に対し、上記期間本件土地を誰にも貸したことはないし、本件土地の持分相当部分を利用したことはなかった旨供述している(乙4)。
本件土地の売買に伴い、本件土地の木や草を除去することになり、平成10年9月から10月ころに有限会社Fに計71万9250円で依頼し、同社が木の伐根等を行った。
(3) 原告の平成10年分の確定申告書には、原告の総合課税の取得金額の欄には給与取得として97万4523円として計算されているが、その他の不動産所得等の収入金額の記載はない。
(4) Aの平成10年1月1日から同年12月31日までの事業年度分の法人税の確定申告書には、地代家賃には何も記載されていない。
(5) 原告は、Cに対して媒介手数料78万5530円を支払い、これを本件土地の譲渡費用として算入し、確定申告した。
2 争点1について
措置法37条は、個人が一定種類の事業用資産を譲渡し、かつ一定の期間内に一定種類の事業用資産を取得した場合等に譲渡所得の課税の繰延べを認めている。同条は、土地政策ないし国土政策上、積極的な働きを持つと考えられる土地等の譲渡、取得に対して課税の繰延べを認めることによりその円滑化に資するために規定されたものと解される。そして、同条1項はその要件として個人の有する資産のうち「事業の用に供しているもの」と規定しているところ、同条項にいう「事業の用に供しているもの」とは、営利を目的とし、自らの危険と計算において継続的に行う事業のために使用する資産をいい、原則として、譲渡の当時、現実かつ継続的に事業の用に供していたことを要する(たまたま、現実にはその資産を事業のために使用していなくても、事業の用に供する意図をもってこれを所有し、かつ、その意図が近い将来において実現されることが客観的に明白であった場合を含む。)と解される。そして、事業の用に供しているか否かは、その文言及びその趣旨から考えて、当該譲渡された資産の現況で判断すべきである。
これを、本件についてみるに、本件土地は、譲渡された平成10年5月2日当時、事業のために使用されていたとうかがわせる事情はない。この点、原告は、本件土地を駐車場としてAに賃貸していたと主張するが、確かに賃貸借契約書が存在するものの、本件土地は平成8年10月ころから平成10年3月ころまでの間は草が生えているような状態の空地であったものであり、本件土地の立木伐採・整地をしたのは平成10年9月又は10月ころなのであるから、少なくともそのころまで土地上は木や草が生えた状態のままにされていたと認められる。したがって、平成8年10月ころから平成10年9月又は10月ころまでに何らかの事業に使用していたとは認められない。
また、原告個人の平成10年度所得税の確定申告書には事業による収入は零としており給料収入以外の収入が計上されておらず、Aの平成10年度の確定申告書にも本件土地にかかる賃料を支払っていることをうかがわせる記載はなく、原告Aの間に賃料が支払われていると認めることはできない。なお、原告は、Aは賃料を駐車場支払として計上している旨主張するが、乙9の記載をもって賃料支払の事実を認めることはできない。
したがって、原告が本件土地を譲渡した当時、本件土地が現実かつ継続的に事業の用に供していたとはいえず、また、事業の用に供する意図をもっているとうかがわせる事情はないし、事業の用に供する意図がうかがえる客観的事情も存在しない。
そこで、本件土地は、措置法37条にいう「事業の用に供しているもの」に当たらず、本条項の適用はないというべきである。
3 争点2について
(1) 譲渡所得の金額について、所得税法33条3項は、総収入金額からの資産の取得費及び譲渡に要した費用を控除するものとし、38条1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額としていおり、同法38条1項に規定する「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価額を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額を含むものと解される(最高裁平成4年7月14日判決・民集46巻5号492貢)。そして、そのような資産を取得するための付随費用に当たるかどうかは、その名目いかんを問わず、資産の取得のために実質的、客観的に欠かせない費用であるか否かによって判断すべきである。
なお、原告は、本件土地を相続によって取得したのであるが、所得税法61条1項により、相続、贈与によって資産が移転した場合には取得した者が引き続きその資産を所有していたものとみなされ、取得者は、贈与者及び被相続人等の取得費をそのまま引き継ぐことになる。そして、所得税法は相続(限定承認を除く)による資産の所有権移転の場合における譲渡所得課税を繰り延べ、その後、当該資産が相続人の支配を離れて他に移転する機会をとらえて、被相続人の取得の時以来清算されることなく蓄積されてきた資産の増加益を課税の対象としているのであるから、右増加益の算出上、譲渡による収入金額から控除すべき「資産の取得に要した金額」は、被相続人の取得の時において当該資産の客観的価額を構成すべき取得代金の額及び当該資産を取得するための付随費用でなければならないというべきである。
そこで、本件手数料について検討すると、原告が相続により本件土地を取得したのは平成8年であるところ、本件手数料が支払われたのは、平成10年10月28日のことであり、そもそも相続してから2年もたった後の支払であること、また、本件手数料は、Aのアドバイスの謝礼としての意味をもっていることから、本件手数料が被相続人である原告の母乙及び原告の父亡丙らが本件土地を取得するために欠かせない費用とはいえないことは明らかである。また、同法38条1項の設備費及び改良費に該当しないことも明らかである。
(2) なお、原告は本件訴訟の当初、本件手数料は、所得税法33条3項にいう「譲渡に要した費用」に該当すると主張していたので、念のためその適否について判断する。
所得税法33条3項に規定する「譲渡に要した費用」は、前述の「取得に要した費用」と同様の趣旨から規定されたものであり、とすれば、当該資産の譲渡を実現するために直接かつ通常必要な費用に限定されると解すべきである。
そこで、本件手数料について検討すると、本件売買は原告とCが一般媒介契約を締結しており、譲渡費用としてCに78万5530円が計上されていることから、Cが本件売買の仲介を行っているといえる。譲渡当時原告の夫であるJが代表取締役となっているAにあえて80万円を不動産売買の仲介手数料として支払う必要性があるとする事情はうかがえないし、前述のように本件手数料がAのアドバイスの対価として意味を有していることからも本件手数料が本件土地の売買を実現するために直接かつ通常必要とは認められない。
よって、本件手数料は、所得税法33条3項に規定する「譲渡に要した費用」に該当しない。
(3) したがって、本件手数料は、譲渡所得において控除される金額とはいえず、譲渡費用の金額は原告の申告した216万5580円から80万円を除いた136万5580円となる。
4 以上のとおりであるから、本件譲渡について措置法37条の適用はなく、本件手数料は所得税法33条3項の「取得費」及び同条項の「譲渡に要した費用」のいずれにも該当しない。そこで、本件更正処分は適法なものというべきであり、本件賦課決定処分に係る税額算出についても違算はないと認められるから、本件賦課決定処分は適法なものというべきである。
5 以上の次第で、原告の請求は、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 豊田建夫 裁判官 都築民枝 裁判官 松村一成)
(別紙)
物件目録
所在 大田区池上
地番
地目 宅地
地積 140.53平方メートル
別表 1
本件課税処分の経緯
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別表 2
平成10年分の所得税の納付すべき税額の計算
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別表 3
分離長期譲渡所得の金額の計算
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別表 4
譲渡費用の金額の計算
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別表 5
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