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さいたま地方裁判所 平成15年(行ウ)40号 判決 2004年7月28日

原告

被告

朝霞市長 塩味達次郎

同訴訟代理人弁護士

髙篠包

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第4 当裁判所の判断

1  本件訴えの適法性について

甲1及び弁論の全趣旨によれば、原告は本訴において、平成15年度の固定資産税及び都市計画税の賦課決定における本件土地の課税標準額と納付税額の計算過程(特に画地評価に当たり東側街路を側方加算していること)を争っており、固定資産課税台帳に登録された本件土地の価格を争っているのではないと認められる。そこで、本件訴えを不適法ということはできない。

2  本案について

(1)  本件決定の計算過程について

証拠(甲3、20)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地に係る被告の平成15年度固定資産税及び都市計画税は、次のような計算過程を経て算出されていると認められる。

ア  本件土地の固定資産課税台帳に登録された平成15年度の評価額は3428万2698円である。

イ  本件土地の平成14年度課税標準額は固定資産税452万3482円(小規模住宅用地部分367万0206円、一般住宅用地部分85万3276円)、都市計画税1221万6688円(小規模住宅用地部分1051万0133円、一般住宅用地部分は据置減額の基礎となる170万6555円)であった。

ウ  平成15年度固定資産税の課税標準額

固定資産税の課税標準額は、地方税法附則18条1項の規定により、当該土地の前年度分の固定資産税の課税標準額に当該土地の当該年度の負担水準(当該年度の評価額に対する前年度の課税標準額の割合)の区分に応じた負担調整率を乗じて算出する。そこで、本件土地の平成15年度負担水準(0.4以上のもの)に応じた負担調整率(1.025)を乗じて、平成15年度の固定資産税の課税標準額(小規模住宅用地部分376万1961円、一般住宅用地部分87万4607円、合計463万6568円)が算出される。

エ  平成15年度都市計画税の課税標準額

本件土地の小規模住宅用地部分200m2は、地方税法702条の3(住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例)第2項の規定により、本件土地の平成15年度の評価額の3分の1の額をもとに1021万0933円と算出される。

次に一般住宅用地部分23.83m2については、平成15年度地方税法改正法附則19条1項1号の規定により、前年度(平成14年度)課税標準額に当該土地の負担水準の区分に応じた負担調整率を乗じて算出することとなる。そして、一般住宅用地部分23.83m2についての平成15年度の前年度(平成14年度)課税標準額は平成14年度据置減額の基礎となる価格である170万6555円とみなされ、これに負担水準(0.4以上のもの)に応じた負担調整率(1.025)を乗ずると174万9218円と算出される。

以上の合計は1196万0151円となる。

オ  以上を基に、原告に対する平成15年度の固定資産税及び都市計画税の税額を計算すると、固定資産税は6万4911円、都市計画税は2万3920円となることが認められ、本件決定に違算があるということはできない。

(2)  原告の主張について(その1)

ア  原告は、「本件土地の形状は昭和34年3月に原告が売買により取得してから全く変わっていないし、道路付けも変わっていない。すなわち、昭和34年に原告が売買により本件土地を取得したとき既に東側に幅1.8m、奥行き22mの道路がついていた。そこで、被告がそれまで東側道路について何ら加算要素としてこなかったのに何故平成3年から側方加算するようになったのか合理的理由はない。また、そもそもこの東側道路は幅1.8mと狭く、災害時に車も入れない欠陥道路であり、国税の路線価図では路線価が付されていない。そこで、固定資産税及び都市計画税の土地評価に当たっても側方路線として加算する合理的根拠はない。」旨主張する。

しかしながら、正面と側方に路線がある画地(いわゆる「角地」)は、正面路線のみ道路に接する土地と比べて、一般に側方路線の影響により価額が高くなる傾向があることは公知の事実である。そこで、固定資産評価基準(昭和38年12月25日自治省告示第158号)においても、別表第3「画地計算法」として「各筆の宅地の評点数は、各筆の宅地の立地条件に基づき、路線価を基礎とし、次に掲げる画地計算法を適用して求めた評点数によって付設するものとする。」として「3 奥行価格補正割合法」のほか「4 側方路線影響加算法」を掲げ、「側方路線影響加算率表」(附表2)によって求めた側方路線影響加算率によって補正した評点数をもって加算するものとしている。そこで、課税当局において、従前角地でありながら側方道路について加算する措置をとっていなかった経緯があったとしても、当該年度の土地価格の評価に当たり側方道路が価額に影響を及ぼしていると判断した場合に、当該年度から側方道路の影響を加算して評価することとしても、そのこと自体は固定資産税や都市計画税の算定の違法事由となるものではない。

そして、甲15及び弁論の全趣旨によれば、原告所有の本件土地は、南側道路と東側道路に接した角地であるところ、平成2年度までは正面路線価によってのみ評価されていたが、朝霞市では基準年度である平成3年度に本件土地の評価をするに当たり、本件土地の東側の街路が本件土地の価格に影響があると判断したため、固定資産評価基準の別表第3「画地計算法」の「4 側方路線影響加算法」に基づいて、本件土地の正面路線価に加え、東側の街路を側方路線としてその影響を加算して評価する方法を採用したことが認められる。そうすると、被告において本件土地について平成3年度から従前の評価方法を改め、東側道路につき側方加算したことをもって違法ということはできない。

なお、甲16によれば、国税局路線価図では本件土地の東側街路については路線価が記載されていないことが認められる。しかし、相続税等と固定資産税等では課税主体、税の性質、内容も異なり、基準となる土地の評価が両者同一でなければならないというものでないから、上記のことは、本件土地の固定資産税及び都市計画税の土地評価に当たり東側街路の影響を側方加算することの妨げとなるものでない。東側街路は本件土地の価格に影響を与えているとみられる以上、路線価を付設できない街路ということはできない(なお、固定資産評価基準では、路線価の付設の対象として、標準宅地が選定される「主要な街路」とそれ以外の「その他の街路」が定められているが、「路線価が付設できない街路」については何ら定めていないことが認められる。)。

(3)  原告の主張について(その2)

ア  次に、原告は、「被告は、本件土地について平成2年度の都市計画税の課税標準額は989万1271円と主張する(甲6)が、被告が原告に通知した平成2年度の本件土地の都市計画税の納税通知書の課税標準額は940万0860円となっており(甲10)、明らかに食い違っている。上記のことは、被告が平成3年から側方路線加算をしたと主張しながら、実際には平成2年度から側方路線加算をしていたことを示すものであり、被告の主張は、裁判所に『うそ』の書類を示すことにより辻褄合わせをしているに過ぎない。」旨主張する。

しかしながら、乙3の1・2及び弁論の全趣旨によれば、前記のとおり、被告は、平成3年度から本件土地の評価に当たり東側街路を側方加算することとしたが、このように当該年度に土地の評価方法が変わった場合には、負担調整措置の導入のはじめ(都市計画税については昭和40年)から正面路線価と側方路線価に基づく評価がされたとして算定された昭和40年以降の各年度の評価単価を用いて、税負坦の調整措置を適用して、順次次年度の課税標準額を算出していく必要があり、このような方法により計算すると、前年度(平成2年度)の都市計画税に係る比準課税標準額は989万1271円と計算されることになることが認められる(なお、「比準課税標準額」とは、当該年度において土地の用途変更や新たな方法で固定資産税等を課することとなる土地についての前年度課税標準額を表す概念である。そして、昭和40年から平成14年までの都市計画税に係る負担調整措置は別紙第4のとおりであると認められる。)。

そして、被告は、このように得られた前年度(平成2年度)比準課税標準額を用い、これに負担調整率1.075を乗じた1063万3116円を平成3年度都市計画税の課税標準額としたことが認められる(このように算定され、縦覧に供された平成3年度の本件土地の評価額と固定資産税及び都市計画税の課税標準額については、原告から朝霞市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出はなされず、既に確定していることが認められる。)。

以上から、甲10の平成2年度都市計画税の本件土地の課税標準額989万1271円という数字は、平成3年度から本件土地の評価について東側街路を側方加算して評価するため、前年度(平成2年度)の課税標準額(比準課税標準額)を算出するための計算過程上の数字であり、原告の平成2年度の納税通知書に記載された課税標準額(940万0860円)は正面路線価のみによる評価であり、両者の間に食い違いがあったとしても何ら問題とすべきものではなく、被告の本件決定の適法性に影響を及ぼすものではないというべきである。

イ  なお、本件土地については、本件土地の上に存在する家屋は1棟であったにもかかわらず、被告は、平成12年度まで、住居の個数を2個であると誤認して本件土地223.83m2全体につき小規模住宅用地と認定して固定資産税及び都市計画税を賦課していたところ、被告は、平成12年秋に本件土地上に存在する家屋は1棟のみで住宅の個数は1であることを確認し、平成12年10月26日付けで、本件土地については、住宅用地認定に誤りがあったため、小規模住宅用地223.83m2から少規模住宅用地200m2・一般住宅用地23.83m2へと認定し直し、過去5年に逆上り本件土地建物につき固定資産課税台帳の価格等の修正をし、さらに、同日付けで別紙第3のとおり平成8年度ないし平成12年度固定資産税及び都市計画税につき更正・決定をした(「平成12年更正決定」)をしたことは前記のとおりである。

そして、平成12年更正決定に当たっては、当該年度に当該土地についての用途変更があった場合に準じて、小規模住宅地特例が導入されたはじめから(固定資産税については昭和49年から、都市計画税については平成6年から)小規模住宅用地200m2と一般住宅用地23.83m2であったとして算定された各年度の評価単価を用いて、税負坦の調整措置を適用して、順次次年度の課税標準額を算出していく必要があったことが認められる。

そうすると、甲5・6や甲11・12に記載された昭和38年から平成12年までの固定資産税及び都市計画税の評価及び課税標準の数値は、まず、平成3年度から東側街路の側方加算をしたために、その頃昭和38年から平成2年までの本件土地の評価及び課税標準を計算し直し、次に平成12年更正決定に際し、再度固定資産税については昭和49年以降の、都市計画税については平成6年以降の各課税標準を計算し直した数値が記載されたものであると推認される。

3  結論

以上によれば、原告の本訴請求は理由がない。そこで、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊田建夫 裁判官 都築民枝 松村一成)

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