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さいたま地方裁判所 平成16年(ワ)434号 判決 2005年11月22日

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

(1)  被告Y1は、原告に対し、44万6578円及びこれに対する平成15年10月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(2)  被告Y2は、原告に対し、45万0434円及びこれに対する平成15年10月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(3)  被告Y3は、原告に対し、46万0142円及びこれに対する平成15年10月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(4)  被告Y4は、原告に対し、43万4879円及びこれに対する平成15年10月30日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(5)  被告Y5は、原告に対し、45万1583円及びこれに対する平成15年10月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(6)  被告Y6は、原告に対し、43万6663円及びこれに対する平成15年10月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(7)  被告Y7は、原告に対し、50万1923円及びこれに対する平成15年10月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(8)  被告Y8は、原告に対し、45万6571円及びこれに対する平成15年10月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(9)  被告Y9は、原告に対し、47万0030円及びこれに対する平成15年10月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(10)  被告Y10は、原告に対し、43万4409円及びこれに対する平成15年10月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(11)  被告Y11は、原告に対し、46万9843円及びこれに対する平成15年10月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(12)  訴訟費用は被告らの負担とする。

(13)  仮執行宣言

2  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第2当事者の主張

1  請求原因

(1)  原告は、LPガス販売事業者であり、従前、被告Y1、被告Y2、被告Y3、被告Y4、被告Y5、被告Y6、被告Y7、被告Y8、被告Y9、被告Y10及び被告Y11に対し、LPガスを供給していた。

また、訴外株式会社ファーストハウジング(以下「ファーストハウジング」という。)は、不動産業者であり、被告らが現在居住している各建物を建築し、これらを被告らに対して販売した。

(2)  被告Y1に対する請求原因

① 原告は、平成15年5月29日より以前に、原告の費用負担で、被告Y1所有の建物に、LPガスメーターから需用者の屋内のガス機器に至るまでの配管等の設備(以下「LPガス消費設備」という。)及びLPガス給湯器(以下「給湯器」という。)を設置した。被告Y1所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が11万6320円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年5月29日、被告Y1及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y1との合意を「本件合意1」といい、原告と被告らとの同様の各合意を総称して、「本件各合意」ともいう。)。本件合意1には、被告Y1が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y1所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y1が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y1に貸与する。

イ 被告Y1が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y1は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y1が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y1は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y1は、平成15年10月6日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y1は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数5か月で解約したのであるから、本件合意1に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、11万8742円、給湯器の補償費として32万7836円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

11万6320円×(180-5)÷180≒11万3088円(1円未満切り捨て、以下同じ)

11万3088円+5654円(消費税相当額)=11万8742円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-5)÷120=31万2225円

31万2225円+1万5611円(消費税相当額)=32万7836円

⑤ 原告は、被告Y1に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月9日に被告Y1に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y1に対し、本件合意1に含まれる原告と被告Y1との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの11万8742円とイの32万7836円の合計44万6578円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月24日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(3)  原告の被告Y2に対する請求原因

① 原告は、平成15年5月4日より以前に、原告の費用負担で、被告Y2所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y2所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が12万0097円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年5月4日、被告Y2及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y2との合意を「本件合意2」という。)。本件合意2には、被告Y2が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y2所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y2が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y2に貸与する。

イ 被告Y2が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y2は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y2が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y2は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y2は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y2は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数5か月で解約したのであるから、本件合意2に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、12万2598円、給湯器の補償費として32万7836円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

12万0097円×(180-5)÷180≒11万6760円

11万6760円+5838円(消費税相当額)=12万2598円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-5)÷120=31万2225円

31万2225円+1万5611円(消費税相当額)=32万7836円

⑤ 原告は、被告Y2に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月9日に被告Y2に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y2に対し、本件合意2に含まれる原告と被告Y2との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの12万2598円とイの32万7836円の合計45万0434円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月24日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(4)  原告の被告Y3に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月21日より以前に、原告の費用負担で、被告Y3所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y3所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が13万3160円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月21日、被告Y3及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y3との合意を「本件合意3」という。)。本件合意3には、被告Y3が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y3所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y3が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y3に貸与する。

イ 被告Y3が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y3は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y3が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y3は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y3は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y3は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数6か月で解約したのであるから、本件合意3に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、13万5157円、給湯器の補償費として32万4985円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

13万3160円×(180-6)÷180≒12万8721円

12万8721円+6436円(消費税相当額)=13万5157円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-6)÷120=30万9510円

30万9510円+1万5475円(消費税相当額)=32万4985円

⑤ 原告は、被告Y3に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月13日に被告Y3に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y3に対し、本件合意3に含まれる原告と被告Y3との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの13万5157円とイの32万4985円の合計46万0142円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月28日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(5)  原告の被告Y4に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月12日より以前に、原告の費用負担で、被告Y4所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y4所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が10万8270円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月12日、被告Y4及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y4との合意を「本件合意4」という。)。本件合意4には、被告Y4が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y4所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y4が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y4に貸与する。

イ 被告Y4が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y4は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y4が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y4は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y4は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y4は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数6か月で解約したのであるから、本件合意4に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、10万9894円、給湯器の補償費として32万4985円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

10万8270円×(180-6)÷180=10万4661円

10万4661円+5233円(消費税相当額)=10万9894円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-6)÷120=30万9510円

30万9510円+1万5475円(消費税相当額)=32万4985円

⑤ 原告は、被告Y4に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月15日に被告Y4に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y4に対し、本件合意4に含まれる原告と被告Y4との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの10万9894円とイの32万4985円の合計43万4879円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月30日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(6)  原告の被告Y5に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月5日より以前に、原告の費用負担で、被告Y5所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y5所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が12万4728円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月5日、被告Y5及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y5との合意を「本件合意5」という。)。本件合意5には、被告Y5が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y5所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y5が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y5に貸与する。

イ 被告Y5が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y5は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y5が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y5は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y5は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y5は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数6か月で解約したのであるから、本件合意5に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、12万6598円、給湯器の補償費として32万4985円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

12万4728円×(180-6)÷180≒12万0570円

12万0570円+6028円(消費税相当額)=12万6598円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-6)÷120=30万9510円

30万9510円+1万5475円(消費税相当額)=32万4985円

⑤ 原告は、被告Y5に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月11日に被告Y5に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y3に対し、本件合意5に含まれる原告と被告Y3との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの12万6598円とイの32万4985円の合計45万1583円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月26日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(7)  原告の被告Y6に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月28日より以前に、原告の費用負担で、被告Y6所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y6所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が10万6607円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月28日、被告Y6及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y6との合意を「本件合意6」という。)。本件合意6には、被告Y6が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y6所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y6が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y6に貸与する。

イ 被告Y6が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y6は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y6が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y6は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y6は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y6は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数5か月で解約したのであるから、本件合意6に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、10万8827円、給湯器の補償費として32万7836円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

10万6607円×(180-5)÷180≒10万3645円

10万3645円+5182円(消費税相当額)=10万8827円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-5)÷120=31万2225円

31万2225円+1万5611円(消費税相当額)=32万7836円

⑤ 原告は、被告Y6に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月9日に被告Y6に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y6に対し、本件合意6に含まれる原告と被告Y6との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの10万8827円とイの32万7836円の合計43万6663円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月24日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(8)  原告の被告Y7に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月28日より以前に、原告の費用負担で、被告Y7所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y7所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が17万0536円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月28日、被告Y7及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y7との合意を「本件合意7」という。)。本件合意7には、被告Y7が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y7所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y7が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y7に貸与する。

イ 被告Y7が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y7は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y7が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y7は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y7は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y7は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数5か月で解約したのであるから、本件合意7に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、17万4087円、給湯器の補償費として32万7836円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

17万0536円×(180-5)÷180≒16万5798円

16万5798円+8289円(消費税相当額)=17万4087円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-5)÷120=31万2225円

31万2225円+1万5611円(消費税相当額)=32万7836円

⑤ 原告は、被告Y7に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月10日に被告Y7に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y7に対し、本件合意7に含まれる原告と被告Y7との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの17万4087円とイの32万7836円の合計50万1923円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月25日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(9)  原告の被告Y8に対する請求原因

① 原告は、平成15年5月31日より以前に、原告の費用負担で、被告Y8所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y8所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が12万2615円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年5月31日、被告Y8及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y8との合意を「本件合意8」という。)。本件合意8には、被告Y8が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y8所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y8が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y8に貸与する。

イ 被告Y8が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y8は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y8が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y8は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y8は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y8は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数4か月で解約したのであるから、本件合意8に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、12万5884円、給湯器の補償費として33万0687円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

12万2615円×(180-4)÷180≒11万9890円

11万9890円+5994円(消費税相当額)=12万5884円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-4)÷120=31万4940円

31万4940円+1万5747円(消費税相当額)=33万0687円

⑤ 原告は、被告Y8に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月10日に被告Y8に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y8に対し、本件合意8に含まれる原告と被告Y8との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの12万5884円とイの33万0687円の合計45万6571円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月25日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(10)  原告の被告Y9に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月29日より以前に、原告の費用負担で、被告Y9所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y9所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が13万9293円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月29日、被告Y9及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y9との合意を「本件合意9」という。)。本件合意9には、被告Y9が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y9所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y9が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y9に貸与する。

イ 被告Y9が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y9は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y9が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y9は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y9は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y9は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数5か月で解約したのであるから、本件合意9に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、14万2194円、給湯器の補償費として32万7836円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

13万9293円×(180-5)÷180≒13万5423円

13万5423円+6771円(消費税相当額)=14万2194円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-5)÷120=31万2225円

31万2225円+1万5611円(消費税相当額)=32万7836円

⑤ 原告は、被告Y9に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月11日に被告Y9に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y9に対し、本件合意9に含まれる原告と被告Y9との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの14万2194円とイの32万7836円の合計47万0030円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月26日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(11)  原告の被告Y10に対する請求原因

① 原告は、平成15年4月20日より以前に、原告の費用負担で、被告Y10所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y10所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が10万7808円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年4月20日、被告Y10及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y10との合意を「本件合意10」という。)。本件合意10には、被告Y10が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y10所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y10が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y10に貸与する。

イ 被告Y10が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y10は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y10が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y10は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y10は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y10は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数6か月で解約したのであるから、本件合意10に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、10万9424円、給湯器の補償費として32万4985円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

10万7808円×(180-6)÷180≒10万4214円

10万4214円+5210円(消費税相当額)=10万9424円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-6)÷120=30万9510円

30万9510円+1万5475円(消費税相当額)=32万4985円

⑤ 原告は、被告Y10に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月9日に被告Y10に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y10に対し、本件合意10に含まれる原告と被告Y10との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの10万9424円とイの32万4985円の合計43万4409円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月24日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(12)  原告の被告Y11に対する請求原因

① 原告は、平成15年7月19日より以前に、原告の費用負担で、被告Y11所有の建物に、LPガス消費設備及び給湯器を設置した。被告Y11所有の建物に設置されたときの費用は、LPガス消費設備が13万2017円であり、給湯器が32万5800円である。

② 原告は、平成15年7月19日、被告Y11及びファーストハウジングとの間で、LPガスの供給を開始するに際し、以下の合意をした(以下、原告と被告Y11との合意を「本件合意11」という。)。本件合意11には、被告Y11が、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告Y11所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告Y11が使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意が含まれている。

ア 原告が、LPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告Y11に貸与する。

イ 被告Y11が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y11は、原告に対し、下記の計算式により算出されるLPガス消費設備の補償費を支払う。

A(LPガス消費設備設置時の費用)×(180-利用月数)÷180

ウ 被告Y11が、自己の都合により、原告との間のLPガス供給契約を解約する場合、被告Y11は、原告に対し、下記の計算式により算出される給湯器の補償費を支払う。

A(給湯器設置時の費用)×(120-利用月数)÷120

③ 被告Y11は、平成15年9月22日、原告に対し、LPガス供給契約を解約する旨の意思表示をした。

④ 被告Y11は、自己都合により、LPガス供給契約を利用月数3か月で解約したのであるから、本件合意11に基づいて、原告に対し、下記計算式のとおり、LPガス消費設備の補償費として、13万6306円、給湯器の補償費として33万3537円を支払わなければならない。

ア LPガス消費設備分

13万2017円×(180-3)÷180≒12万9816円

12万9816円+6490円(消費税相当額)=13万6306円

イ 給湯器分

32万5800円×(120-3)÷120=31万7655円

31万7655円+1万5882円(消費税相当額)=33万3537円

⑤ 原告は、被告Y11に対し、平成15年10月8日付内容証明郵便をもって、同書面到達後2週間以内に、上記の金員を支払うよう請求し、上記内容証明郵便は、同月11日に被告Y10に到達した。

⑥ よって、原告は、被告Y10に対し、本件合意11に含まれる原告と被告Y11との間の利害を調整する合意に基づく補償費請求権として、上記④アの13万6306円とイの33万3537円の合計46万9843円及びこれに対する支払期限の翌日である平成15年10月26日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)の事実は認める。

(2)  同(2)①の事実は否認する。被告Y1所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(2)②の事実は否認する。被告Y1は、甲2号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y1)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(2)③の事実は認める。

同(2)④の事実は争う。

同(2)⑤の事実は認める。

(3)  同(3)①の事実は否認する。被告Y2所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(3)②の事実は否認する。被告Y2は、甲5号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記貸与契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y2)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(3)③の事実は認める。

同(3)④の事実は争う。

同(3)⑤の事実は認める。

(4)  同(4)①の事実は否認する。被告Y3所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(4)②の事実は否認する。被告Y3は、甲8号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y3)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(4)③の事実は認める。

同(4)④の事実は争う。

同(4)⑤の事実は認める。

(5)  同(5)①の事実は否認する。被告Y4所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(5)②の事実は否認する。被告Y4は、甲10号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y4)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(5)③の事実は認める。

同(5)④の事実は争う。

同(5)⑤の事実は認める。

(6)  同(6)①の事実は否認する。被告Y5所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(6)②の事実は否認する。被告Y5は、甲12号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y5)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(6)③の事実は認める。

同(6)④の事実は争う。

同(6)⑤の事実は認める。

(7)  同(7)①の事実は否認する。被告Y6所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(7)②の事実は否認する。被告Y6は、甲14号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y6)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(7)③の事実は認める。

同(7)④の事実は争う。

同(7)⑤の事実は認める。

(8)  同(8)①の事実は否認する。被告Y7所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(8)②の事実は否認する。被告Y7は、甲16号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y7)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(8)③の事実は認める。

同(8)④の事実は争う。

同(8)⑤の事実は認める。

(9)  同(9)①の事実は否認する。被告Y8所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(9)②の事実は否認する。被告Y8は、甲18号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y8)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(9)③の事実は認める。

同(9)④の事実は争う。

同(9)⑤の事実は認める。

(10)  同(10)①の事実は否認する。被告Y9所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(10)②の事実は否認する。被告Y9は、甲20号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y9)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(10)③の事実は認める。

同(10)④の事実は争う。

同(10)⑤の事実は認める。

(11)  同(11)①の事実は否認する。被告Y10所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(11)②の事実は否認する。被告Y10は、甲22号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y10)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(11)③の事実は認める。

同(11)④の事実は争う。

同(11)⑤の事実は認める。

(12)  同(12)①の事実は否認する。被告Y11所有の建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、ファーストハウジングが設置したものである。

同(12)②の事実は否認する。被告Y11は、甲24号証のLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書に署名・捺印しているが、上記契約書には、その第8条に「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告Y11)に対する重要事項説明書の交付に際し、当該LPガス消費設備及び給湯器は、丙(原告)が甲に貸与するものである事を説明しなければならない。」、第9条に「乙は、甲に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されているとおり、LPガス消費設備及び給湯器に関する補償は、原告とファーストハウジングとの間で行われるべきである。

同(12)③の事実は認める。

同(12)④の事実は争う。

同(12)⑤の事実は認める。

3  抗弁

(LPガス消費設備について)

(1) 被告ら所有の各建物に設置されたLPガス消費設備は、その現況からすれば、各被告所有建物に附合(強い附合)し、各被告が、ファーストハウジングから各建物の引渡を受けた当時から、その構成部分となっているのであり、原告は、その所有権を留保し得ない(民法242条)。

仮に、上記のようなLPガス消費設備が、建物から独立した所有権の客体になり得るとしても、原告が、その所有権を留保していることを第三者に主張するためには、その所有権を公示する対抗要件を具備していなければならないところ、本件において、原告は、各被告との間で、LPガス消費設備の所有権について公示する対抗要件を具備していなかったのであり、第三者に対し、所有権を主張できない。

(2) 被告ら所有の各建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、いずれもファーストハウジングと被告らとの間の住宅売買契約の目的物に含まれており、各被告は、いずれも、LPガス消費設備の代金を含んだ売買代金をファーストハウジングに支払済みであり、ファーストハウジングから、LPガス消費設備を住宅と一体の目的物として有償取得した。

(3) 仮に、被告ら所有の各建物に設置されたLPガス消費設備が、各被告所有建物に附合していないことによって原告の所有に属するものであり、また、給湯器も原告の所有するものであったとしても、各被告は、LPガス消費設備が、住宅に含まれるものとして、善意無過失で有償取得したのであるから、その所有権を善意取得した(民法192条)。

(4) 抗弁(1)ないし(3)のとおり、被告ら所有の各建物に設置されたLPガス消費設備及び給湯器は、当該各被告が所有するものであるので、本件各合意は、自己の所有物を他人から買い取るという原始的不能あるいは不合理な内容の合意であるので、原始的不能あるいは錯誤(民法95条)により無効であり、また、原告の従業員が、被告らにLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書への署名・捺印を求める際、LPガス消費設備及び給湯器が原告の所有物である旨説明していたとすれば、客観的な事実に反する説明をして被告らを欺罔することになるので、被告らは、詐欺により本件各合意を取り消す。

(5) 原告と被告らとの間の本件各給湯器の売買は、被告らの自宅で契約が締結されたものであるから特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)2条1項1号の訪問販売に当たり、また、給湯器は、特定商取引法2条1項1号の指定商品にあたるところ、原告が被告らに対して交付したLPガス消費設備及び給湯器に関する貸与契約書(甲2、5、8、10、12、14、16、18、20、22及び24号証。以下、これらの契約書を総称して「本件各貸与契約書」という。)には、同法5条において定められた代金の支払方法及びクーリング・オフに関する事項などの記載がなされていないので、本件各貸与契約書は、同法5条所定の書面に該当せず、したがって、被告らとの関係では、同法9条1項1号に定められたクーリング・オフの期間が経過していない。そこで、被告らは、本件訴訟の第5回弁論準備手続期日において陳述された平成17年1月21日付準備書面において、原告に対し、各給湯器の売買契約を解除する旨の意思表示をした。

4  抗弁に対する認否

(1)  抗弁(1)の事実は否認ないし争う。

附合を含む民法上の添付の規定は、所有者の異なる2個以上の物が結合、混合して分離、復旧することが不可能ないし著しく困難であるか、毀損することなく分離、復旧することが不可能な場合において、社会経済上の見地から、分離、復旧請求を認めない点において強行法規性を持つが、所有権の帰属や償金の定めの点については任意法規性を有するものと解される。そして、原告が、各建物にLPガス消費設備を設置した当時は、ファーストハウジングが、各建物の所有権を有していたものと考えられるところ、原告は、ファーストハウジングから、許諾を得てLPガス消費設備を設置したのであるから、原告は、民法242条但書の「権原」に基づいてLPガス消費設備を設置したということができるので、原告は、LPガス消費設備の所有権を有しているというべきである。

(2)  同(2)の事実は否認ないし争う。

ファーストハウジングは、原告との間で、原告がLPガス消費設備及び給湯器を所有し、これを被告らに貸与して、被告らにLPガスを供給すること及び被告らに対して一定期間LPガスを供給することで、自ら負担したLPガス消費設備及び給湯器の設置費用を回収することを前提として、原告が、LPガス消費設備及び給湯器を設置することを許諾しているのであるから、ファーストハウジングが、被告らとの間の住宅売買契約の目的物にLPガス消費設備及び給湯器を含めるはずはない。また、被告らが、LPガス消費設備及び給湯器の所有が原告に帰属していることを前提とした本件各貸与契約書に、何ら異議を唱えることなく署名・捺印していることは、その数ヶ月前の住宅売買契約が成立した当時、住宅売買契約の目的物にLPガス消費設備及び給湯器が含まれていない旨を認識していたことの現れにほかならない。

(3)  同(3)の事実は否認ないし争う。

LPガス消費設備及び給湯器が住宅売買契約の目的物に含まれていない以上、被告らが、ファーストハウジングとの間の住宅売買契約によって、LPガス消費設備及び給湯器の所有権を即時取得する余地はない。

(4)  同(4)の事実は否認ないし争う。

LPガス消費設備及び給湯器の所有権は、原告に帰属しているので、本件各合意に錯誤は生じない。また、被告らが支払った売買代金にLPガス消費設備の費用は含まれていなかったので、原告は、被告らに対して何ら虚偽の説明をしておらず、詐欺は成立しない。

(5)  同(5)の事実は否認ないし争う。

本件各合意は、被告らが、自己都合により原告との間のLPガス供給契約を解約した場合における、原告が先行投資として被告ら所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告らが使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定したものであって、この合意によって被告らが支払うべき補償費は、給湯器の売買代金ではないから、特定商取引法9条1項1号が、本件各貸与契約書に基づく契約に適用されることはない。

5  再抗弁

(1)  被告らはLPガス消費設備及び給湯器の所有が原告に帰属していることを前提とした本件各貸与契約書に、何ら異議を唱えることなく署名・捺印しており、LPガス消費設備の所有関係や費用負担について、原告ないしファーストハウジングに対し、容易に異議を述べることができたにもかかわらずそうしていないので、被告らに、自己の所有物を他人から買い取るという点についての錯誤があったとしても、錯誤について重大な過失がある。

(2)  本件各合意において定められた補償費が、給湯器の売買代金であるとしても、被告らは、ファーストハウジングを介して、原告に対し、LPガス消費設備及び給湯器を利用してLPガスの供給を受ける旨申し込み、原告らは、この申込みを受けて、被告らの自宅を訪問したのであるから、本件給湯器の売買は、特定商取引法26条2項1号の「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」に当たるので、同法9条1項1号の適用は排除される。

6  再抗弁に対する認否

(1)  再抗弁(1)の事実は否認ないし争う。

(2)  同(2)の事実は否認ないし争う。

理由

1  請求原因(1)(原告の地位及び被告らとの関係)の事実は当事者間に争いがない。

2  請求原因(2)ないし(12)の各②(本件各合意の成立)について

(1)  甲2号証、5号証、8号証、10号証、12号証、14号証、16号証、18号証、20号証、22号証及び24号証、26ないし29号証、乙4ないし15号証の各1及び2、16ないし26号証、27ないし38号証、60ないし70号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

①  被告らは、下記のとおり、ファーストハウジングとの間で、土地を購入する売買契約とその土地上に建物を建築する請負契約を締結して、各決済日までに、売買代金及び請負代金を支払った。

売買契約及び請負契約締結日 決済日

ア 被告Y1 平成14年11月10日 平成15年5月28日

イ 被告Y2 平成14年11月10日 平成15年4月28日

ウ 被告Y3 平成14年11月10日 平成15年3月28日

エ 被告Y4 平成14年11月9日 平成15年3月25日

オ 被告Y5 平成14年11月10日 平成15年3月27日

カ 被告Y6 平成14年11月27日 平成15年4月28日

キ 被告Y7 平成14年11月23日 平成15年4月28日

ク 被告Y8 平成14年11月16日 平成15年5月23日

ケ 被告Y9 平成14年11月10日 平成15年4月21日

コ 被告Y10 平成14年11月9日 平成15年3月28日

サ 被告Y11 平成15年1月24日 同年6月27日

②  被告らは、前項の売買契約及び請負契約締結の際、ファーストハウジングの営業担当者及び下記のファーストハウジングの各宅地建物取引主任者から、下記の各重要事項説明書に基づいて、売買契約の目的物の説明を受けるとともに、下記の各共通仕様書に基づいて建築する建物の工事内容の説明を受けたが、下記の各重要事項説明書の「4.飲料水・電気及びガスの供給並びに排水施設の整備状況」の事項には、ガスについて、直ちに利用可能な施設として「プロパン」に丸印が付けられ、施設の整備の特別負担の有・無の事項には「無」に丸印が付けられており、また、下記の各共通仕様書には、「給排水ガス設備」として、「給湯器」欄に「ガス給湯器:24号(1台)RFS-2009SA自動お湯張り・追い炊き式・全自動タイプ」、ガス欄に「当社指定(LPG、都市G)」と記載されている。そして、被告らは、いずれも、ファーストハウジングの営業担当者または宅地建物取引主任者から、LPガス消費設備及び給湯器の所有権が原告に留保されており、これらについて、売買代金及び請負代金以外に金銭的負担を要することになるとの説明を受けていなかった。

宅地建物取引主任者 重要事項説明書 共通仕様書

ア 被告Y1 E(以下「E」という。) 乙4号証の2 乙15号証の1

イ 被告Y2 E 乙5号証の2 乙15号証の1

ウ 被告Y3 F(以下「F」という。) 乙6号証の2 乙15号証の1

エ 被告Y4 G(以下「G」という。) 乙7号証の2 乙15号証の1

オ 被告Y5 F 乙8号証の2 乙15号証の1

カ 被告Y6 G 乙9号証の2 乙15号証の1

キ 被告Y7 G 乙10号証の2 乙15号証の1

ク 被告Y8 F 乙11号証の2 乙15号証の1

ケ 被告Y9 F 乙12号証の2 乙15号証の1

コ 被告Y10 F 乙13号証の2 乙15号証の1

サ 被告Y11 G 乙14号証の2 乙15号証の2

③  原告は、ファーストハウジングから被告らに土地建物が引き渡される前までに、各建物に、LPガス容器、強化ガスホース、圧力調整器、供給管及びLPガスメーターなどのLPガス供給設備とLPガスメーターから屋内のガス機器に至るまでの配管等のLPガス消費設備を設置するとともに、浴室の外壁の外側に給湯器を設置した。

④  被告ら本人又はその妻は、それぞれ下記の日に、ガスの開栓に立ち会うためにファーストハウジングから引渡しを受けた建物を訪れ、下記の原告の各担当者によって行われたガスの開栓に立ち会い、各担当者から、給湯器などの取扱いの説明を受けたが、その際、各担当者から、本件各貸与契約書への署名・捺印を求められたため、これに応じて、下記のとおり、同日または後日に、署名・捺印した本件各貸与契約書を各担当者に交付した。

原告担当者 立会日 本件各貸与契約書交付日

ア 被告Y1 A(以下「A」という。) 平成15年5月29日 同日(甲2号証)

イ 被告Y2 B(以下「B」という。) 平成15年5月4日 同日(甲5号証)

ウ 被告Y3 C(以下「C」という。) 平成15年4月12日 同月21日(甲8号証)

エ 被告Y4 C 平成15年4月12日 同日(甲10号証)

オ 被告Y5 C 平成15年3月30日 同年4月5日(甲12

カ 被告Y6 A 平成15年4月28日 同日(甲14号証)

キ 被告Y7 D(以下「D」という。) 平成15年4月28日 同年5月3日ころ(甲16号証)

ク 被告Y8 B 平成15年5月30日 同月31日ころ(甲18号証)

ケ 被告Y9 C 平成15年4月29日 同日(甲20号証)

コ 被告Y10 D 平成15年4月17日 同月20日(甲22号証)

サ 被告Y11 D 平成15年6月28日 同年7月19日(甲24号証)

⑤  本件各貸与契約書は、原告、被告ら及びファーストハウジングの三者契約の形式をとっており、各条文には、原告が被告らにLPガス消費設備及び給湯器を貸与するということは記載されているもののLPガス消費設備及び給湯器の所有権が原告に帰属している旨の記載はない。また、本件貸与契約書の第10条には、契約解除の際に、未徴収のLPガス料金とともに、「当該LPガス消費設備及び給湯器の使用貸与に関する補償費として、第11条の計算式による補償費の支払を確認次第、直ちに供給設備を撤去します。」と記載され、同11条には、被告らの都合により、都市ガスまたは原告以外の業者に転換する場合には、原告は、「次式による保障費(補償費)を申し向けます。」と記載されているが、他方で、第9条には、「乙(ファーストハウジング)は、甲(被告ら)に対して重要事項説明を十分に行わないために、後日丙(原告)が当該事項に損害を蒙る場合は、乙は丙に対し損害を補償しなければならない。」と記載されている。

⑥  被告Y1所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、外壁を貫通して建物の中に入り込み、分岐して、一方は床下を通って台所のガスレンジの下の収納ボックスから室内に入ってガスレンジのガス栓に接続され、また、一方は、床下を通って、浴室の外壁を貫通して、給湯器のガス栓に接続されている。上記の配管と外壁とは、コーキング材で固定されており、また、床下の配管は、建物の基礎木部の土台にプラスチックの留め金で固定されており、固定されている位置が、床を支える根太、束及び床などに囲まれた狭い場所にあるため、配管を撤去するためには、床板の撤去や張り直しをする必要がある。さらに、台所のガスレンジに接続されている配管は、内壁の中を立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入り込んでいるが、直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑦  被告Y2所有建物に設置された圧力調整器から出た配管は、外壁を貫通して建物の中に入り込み、いったん建物の外に出てLPガスメーターに入り、さらにLPガスメーターから出た配管は分岐して、一方は外壁を貫通して再び建物の中に入り込んで、床下を通って台所のシステムキッチンの下から、ガスレンジ裏にある内壁と収納ボックスの間の空間に入り込み、ガスレンジに向かって立ち上がり、ガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、地中に埋設され、給湯器の横で立ち上がり、給湯器のガス栓に接続している。上記の圧力調整器から出て建物内に入り込んだ配管は、建物の基礎木部(土台)に空けられた穴を通って建物内に入り込んでいるため、この配管を撤去すると上記の基礎木部部分が損壊するおそれがある。

⑧  Y3宅に設置されたLPガスメーターから出た配管は、分岐して、それぞれ外壁を貫通して基礎木部(土台)床板の隙間から、建物内に入り込み、一方は、床下を通って、洋室の床下で2階の台所に向かって立ち上がり、内壁の中を通って2階の床下へ配管され、2階の床下からガスレンジ裏にある内壁の中に入り込み、ほぼ直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、また、一方は、洋間の床下を通って、建物の反対側にある基礎木部(土台)の上から建物の外に出て、給湯器のガス栓に接続している。上記の2階のガスレンジへ向かう配管は、内壁の中を通っているため、これを撤去するには、1階と2階の間の内壁を損壊しなければならず、また、直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑨  被告Y4所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、地中に埋設され、浴室の外側に設置された給湯器の横で立ち上がり、地中から立ち上がった後分岐し、一方は給湯器のガス栓に接続し、もう一方は、外壁を貫通して建物内に入り込み、台所の床下で内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続されている。上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑩  被告Y5所有の建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、分岐し、それぞれ外壁を貫通して基礎木部(土台)床板の隙間から、建物内に入り込み、一方は、床下を通って台所のシステムキッチンの下から、内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、浴室の床下を通って建物の外に出て、給湯器のガス栓に接続されている。上記の配管は、建物内に入り込んでくる部分において、建物の基礎木部の土台にプラスチックの留め金で固定されており、固定されている位置が、床を支える根太、束及び床などに囲まれた狭い場所にあるため、配管を撤去するためには、床板の撤去や張り直しをする必要がある。上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑪  被告Y6所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、分岐して、それぞれ外壁を貫通して建物内に入り込み、一方は、浴室の床下を通って、台所の床下で内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、浴室の外壁を貫通して建物の外に出て、給湯器のガス栓に接続されている。上記の配管と外壁とは、コーキング材で固定されており、また、上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑫  被告Y7所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、台所の外側まで地中に埋設され、台所の外側で地中から立ち上がり、分岐してそれぞれ、外壁を貫通して建物内に入り込み、一方は、台所の床下で内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、浴室の床下を通り、外壁を貫通して外に出て、給湯器のガス栓に接続されている。上記の配管が外壁を貫通して建物内に入り込む部分は、配管が、建物外壁のモルタルで塗り固められているため、配管を撤去しようとすると、建物外壁のモルタルが剥がれ落ちてしまう。また、上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑬  被告Y8所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、洗面所の外側まで地中に埋設され、洗面所の外側で地中から立ち上がり、分岐してそれぞれ、外壁を貫通して建物内に入り込み、一方は、洗面所の床下から、リビング及び台所の床下を通って、台所の床下で内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、浴室の床下を通り、外壁を貫通して外に出て、給湯器のガス栓に接続されている。被告Y8所有の建物の床下のコンクリート基礎は連続しており、リビング及び台所の床下から洗面所及び浴室の床下に入り込めないため、洗面所及び浴室の床下に設置された配管を撤去するには、洗面所の床板を剥がすか、基礎のコンクリートを損壊して、洗面所及び浴室の床下に入り込む必要がある。また、上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑭  被告Y9所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、分岐して、それぞれ外壁を貫通して建物内に入り込み、一方は、浴室の床下を通って、台所の床下で、さらに2方向に分岐し、その一方は、内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、再び浴室の床下を通り、浴室の外壁を貫通して建物の外に出て、給湯器のガス栓に接続され、さらに、最初の分岐したもう一方の配管は、リビングの床下を通って、内壁の間を立ち上がって、内壁の中で、ガスコンセントのガス栓に接続されている。浴室の床下は、給排水管や浴室基礎の支持材が配置され、人が入り込むスペースがないため、上記の配管を撤去するには、浴室のユニットバスを撤去し、浴室の基礎を損壊する必要がある。また、上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑮  被告Y10所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、いったん地中に埋設され、分岐して、その一方は、浴室の外側で地中から立ち上がり、外壁を貫通して建物内に入り込み、浴室の床下を通って、台所の床下で内壁の中をガスレンジに向かって立ち上がり、直角に曲げられた後、内壁に空けられた穴を通ってガスレンジ下にある収納ボックスの中に入ってガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、給湯器まで地中に埋設され、給湯器の手前で地中から立ち上がり、給湯器のガス栓に接続されている。上記の直角に曲げられた配管を、狭い内壁の空間内では元の真っ直ぐな形状に戻すことは困難であるため、これを撤去するには、システムキッチンを撤去して内壁を壊す必要がある。

⑯  被告Y11所有建物に設置されたLPガスメーターから出た配管は、いったん地中に埋設され、LPガス容器の横で地中から立ち上がり、分岐してそれぞれ、外壁を貫通して建物内に入り込み、一方は、床下を通って台所のシステムキッチンの下から、ガスレンジ裏にある内壁と収納ボックスの間の空間に入り込み、ガスレンジに向かって立ち上がり、ガスレンジのガス栓に接続され、もう一方は、浴室の床下を通って、浴室の外壁を貫通して建物の外に出て、給湯器のガス栓に接続している。浴室の床下は、給排水管や浴室基礎の支持材が配置され、人が入り込むスペースがないため、上記の配管を撤去するには、浴室のユニットバスを撤去し、浴室の基礎を損壊する必要がある。

⑰  各被告所有の建物には、原告が設置工事を行った給湯器以外には、浴槽やシャワーに給湯する設備はない。

(2)  上記事実に対し、A、B、D及びC作成の甲26ないし29号証の各陳述書中には、A、B、D及びCは、被告ら又はその妻に対し、本件各貸与契約書への署名・捺印を依頼した際、被告らの建物に設置したLPガスの配管や給湯器は、原告の費用負担で設置しており、被告らから工事費をもらっていないので、配管設備や給湯器は貸与という形にし、被告らにLPガスを供給して、配管設備については15年間、給湯器については10年間原告において投資した費用を償却するが、被告らが15年あるいは10年以内に、原告とのLPガス供給契約を解除した場合には、お客様がガス会社をよその業者さんに替えるという場合には、本件各貸与契約書に記載された計算式に従って出た金額を精算してもらう旨の説明をしたとの各記載部分がある。

しかしながら、被告らは、いずれも、ファーストハウジングとの間で土地付建物の売買契約をしてから当該土地付建物の引渡を受けるまでの間、ファーストハウジングの担当者から、LPガス消費設備及び給湯器の設置費用が、売買契約代金の中に含まれていないとの説明を聞いていなかったのであり、また、原告が負担したとするLPガス消費設備の費用が10万6607円から17万0536円、給湯器の費用が32万5800円と、かなり高額になっているのであるから、もし、被告ら又はその妻が、A、B、D及びCから、上記のような説明を受けたとするなら、ファーストハウジングとの間の売買契約の代金とLPガス消費設備及び給湯器の設置費用との関係について疑問を持ち、そのことを質問するのが当然であるのに、甲26ないし29号証の各陳述書には、被告ら又はその妻からそのような質問がなされたことが記載されておらず、被告ら又はその妻が、特段の異議を述べることなく署名・捺印に応じたとの趣旨の記載がなされているのみであるから、甲26ないし29号証の各陳述書中の前記の各記載部分は、不自然であって、A、B、D及びCから、本件各貸与契約書の記載内容について具体的な説明を受けていないとの、被告ら作成の乙28ないし38号証の各陳述書に照らし信用できないというべきである。

(3)  また、C作成の甲31号証の陳述書中及び原告訴訟代理人舘岡一夫作成の甲32号証の電話聴取書中には、被告らの建物と同じ埼玉県越谷市<以下省略>において、被告らと同様の時期に、ファーストハウジングから、土地付建物を購入し、原告との間でLPガスの供給契約を締結している顧客らのうち何人かが、ファーストハウジングの担当者から、LPガス消費設備及び給湯器が原告からの貸与となることを聞かされていたと供述しているとの記載部分がある。

しかしながら、上記の各顧客の供述内容が事実であるとしても、被告らとファーストハウジングとの間の売買契約の重要事項説明書には、いずれも、LPガス消費設備について、売買代金以外に金銭的負担をすることを示す記載はされておらず、また、被告らが、ファーストハウジングから示された建物の共通仕様書には、給排水ガス設備として給湯器を設置する旨の記載がなされていることを考慮すれば、ファーストハウジングの担当者が、被告ら以外の土地付建物の購入者に、LPガス消費設備及び給湯器の貸与の話をしていることによって、直ちに、被告らについても同様の話をしていると断定することはできないというべきである。したがって、甲31号証の陳述書及び甲32号証の電話聴取書の前記記載部分によって、前記(1)の認定事実が左右されることにはならない。

(4)  前記(1)の認定事実を前提に判断すると、各被告所有の建物に設置されているLPガス消費設備は、その一部が地中に埋設され、また、建物の壁や床下に敷設され、建物の基礎や外壁等に固定されているので、これらを建物から分離するためには、建物の一部を損壊する必要があるところ、これらの分離及び分離の際に生ずる建物の損傷を完全に復旧することに要する費用に比べて、分離後のLPガス消費設備自体の取引価格がはるかに低いことは明らかであるから、上記のLPガス消費設備は、分離が社会経済上不相当な場合に当たるものとして、民法242条本文により附合したものというべきである。そして、上記のように各被告所有の建物の構成部分となっているLPガス消費設備については、同条但書の適用もないというべきである。

また、各被告所有の建物には、原告が設置工事を行った給湯器以外には、浴槽やシャワーに給湯する設備はないのであるから、本件の給湯器は、風呂を沸かしてこれに入るという、住宅の基本的機能に必要不可欠な要素となっているというべきである。

そして、土地付建物の取引の経験の乏しい一般消費者は、LPガス消費設備及び給湯器の設置費用をLPガス供給業者が負担し、その先行投資をLPガス供給契約の継続によって回収するといういわゆる無償配管の商慣習があることは知らないのが通常であると考えられるので、このように建物に附合する関係にあるLPガス消費設備や住宅の基本的機能に必要不可欠な要素となっている給湯器については、これを売買契約の対象から除外するという明示の特約がない限り、建物と一体の契約として取引の対象とする認識を有しているというべきであるところ、被告らとファーストハウジングとの間の売買契約の重要事項説明書には、いずれも、LPガス消費設備について、売買代金以外に金銭的負担をすることを示す記載はなく、また、被告らが、ファーストハウジングから示された建物の共通仕様書には、給排水ガス設備として給湯器を設置する旨の記載がなされているのであり、その重要事項等の説明に当たって、ファーストハウジングの担当者から、LPガス消費設備及び給湯器の所有権が原告に留保されており、LPガス消費設備及び給湯器について、売買代金以外に金銭的負担を要することになる旨の説明がなされたことを認めるに足る証拠はない。

したがって、被告らは、ファーストハウジングとの間の土地付建物の売買契約において、LPガス消費設備及び給湯器も売買契約の目的物に含まれていると認識していたというべきであるところ、被告らが、本件各貸与契約書に署名・捺印をしたり、本件各貸与契約書を原告の担当者から交付された日は、いずれもLPガスの開栓の日であって、原告の担当者による本件各貸与契約書への署名・捺印の依頼が、LPガスの開栓やガス機器の使用方法の説明と共になされているため、被告らにおいて、本件各貸与契約書が、原告からLPガスの供給を受ける契約自体の契約書であると誤解をした可能性があることに加え、本件貸与契約書が、原告、被告ら及びファーストハウジングの三者契約の形式を取っており、各条文には、LPガス消費設備及び給湯器の所有権が原告に帰属している旨の記載はなく、また、第10条及び第11条において、補償費の支払義務者が明示されておらず、かえって、第9条には、ファーストハウジングが、被告らに対する重要事項説明を怠った場合に、原告に対して損害を補償する義務を負うことが定められているなど、土地付建物の取引の経験の乏しい一般消費者にとっては、理解しにくい記載内容となっていることなどを考慮すれば、たとえ、本件各貸与契約書に署名・捺印をしているとしても、被告らは、この契約書の合意の中に、原告が主張するような「原告が先行投資として被告ら所有の建物に設置したLPガス消費設備及び給湯器を被告らが使用して他の業者からLPガスの供給を受けるという利害(不当利得関係)の調整を図ることを予定した合意」が含まれていることを理解することはできなかったと判断するのが相当である。

以上のとおり、被告らには、原告との間で、LPガス消費設備及び給湯器に関して、原告と被告らとの間に生じた不当利得関係を調整する合意をする意思もなかったのであるから、原告と被告らとの間の利害を調整する合意はいずれも成立していないというべきである。

3  結論

(1)  以上のとおり、原告の被告らに対する原告と被告らとの間の利害を調整する合意に基づく本件請求は、原告と被告らとの間の利害を調整する合意が成立していることを前提とする請求であるがこれらの合意はいずれも成立していないのであるから、その余について判断するまでもなく理由がない。

(2)  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中山幾次郎)

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