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さいたま地方裁判所 平成16年(行ウ)45号 判決 2005年7月20日

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

岩槻市長が原告に対して平成16年5月1日付けで別紙物件目録記載の土地の平成16年度固定資産税として2万0307円,同年度都市計画税として2901円を賦課した処分をいずれも取り消す。

第2事案の概要

1  事案の要旨

本件は,別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)につき共有持分を有し岩槻市長から本件土地の平成16年度固定資産税・都市計画税に係る各賦課処分(以下「本件各賦課処分」という。)を受けた原告が,本件各賦課処分は,地方税法349条の3の2,702条の3に定める住宅用地に対する課税標準の特例の解釈を誤った違法な処分であると主張して,その取消しを求めた事案である。

なお,本件訴訟継続中,岩槻市が廃止され,その区域がさいたま市に編入されたため,岩槻市長の地位をさいたま市長が受継した。

2  関係法令等の定め

(1)  地方税法の用語及び課税標準

固定資産税について,「固定資産」は,土地,家屋及び償却資産を総称するものであり,「土地」は,田,畑,宅地,塩田,鉱泉地,池沼,山林,牧場,原野その他の土地をいい,「家屋」は,住家,店舗,工場(発電所及び変電所を含む。),倉庫その他の建物をいう(地方税法341条)。

基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税・都市計画税の課税標準は,当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたものとし,基準年度の土地又は家屋に対して課する第2年度の固定資産税・都市計画税の課税標準は,原則として当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税・都市計画税の課税標準の基礎となつた価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとし,一定の場合には,当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等に登録されたものとする(地方税法349条,702条)。

(2)  住宅用地に対する課税標準の特例

ア 固定資産税

住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例として,住宅用地(専ら人の居住の用に供する家屋(専用住宅)又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるもの(併用住宅)の敷地の用に供されている土地で政令で定めるものをいう。)に対して課する固定資産税の課税標準は,地方税法349条の規定にかかわらず,当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とし,住宅用地のうち,小規模住宅用地(住宅用地でその面積が200平方メートル以下であるものについては当該住宅用地,住宅用地でその面積が200平方メートルを超えるものについては当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数で除して得た面積が200平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地,当該除して得た面積が200平方メートルを超えるものにあつては200平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地をいう。)に対して課する固定資産税の課税標準は,地方税法349条及び前項の規定にかかわらず,当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の6分の1の額とする(地方税法349条の3の2第1項,第2項)。

イ 都市計画税

住宅用地に対する都市計画税の課税標準の特例として,住宅用地の場合は,地方税法702条第1項の規定にかかわらず,当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の3分の2の額とし,小規模住宅用地の場合は,地方税法702条第1項及び前項の規定にかかわらず,当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とする(地方税法702条の3第1項,第2項,同法349条の3の2第1項,第2項)。

ウ 住宅用地に対する課税標準の特例が適用される家屋

地方税法349条の3の2第1項に規定する家屋で政令で定めるものは,その一部を人の居住の用に供する家屋のうち人の居住の用に供する部分(別荘の用に供する部分を除く。)の床面積の当該家屋の床面積に対する割合が4分の1以上である家屋とする(地方税法施行令52条の11第1項)。

(3)  区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税

共有物,共同使用物,共同事業,共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は,納税者が連帯して納付する義務を負う(地方税法10条の2)が,区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税・都市計画税については,当該家屋の専有部分に係る建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)2条2項の区分所有者(以下「区分所有者」という。)は,10条の2第1項の規定にかかわらず,当該家屋に係る固定資産税額・都市計画税額を当該区分所有者全員の共有に属する共有部分に係る区分所有法14条1項から3項までの規定による割合によってあん分した額を,当該各区分所有者の当該家屋に係る固定資産税・都市計画税として納付する義務を負い,また,区分所有に係る家屋の敷地の用に供されている土地(以下「共用土地」という。)で一定の要件を満たすものに対して課する固定資産税・都市計画税については,当該共用土地に係る納税義務者で当該共用土地に係る区分所有に係る家屋の各区分所有者であるものは,10条の2第1項の規定にかかわらず,当該共用土地に係る固定資産税額・都市計画税額を当該共用土地に係る各共用土地納税義務者の当該共用土地に係る持分の割合によってあん分した額を,当該各共用土地納税義務者の当該共用土地に係る固定資産税・都市計画税として納付する義務を負う(地方税法352条,352条の2,702条2項)。

3  基本的事実関係(当事者間に争いがない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)

(1)  当事者

原告は,平成16年度の固定資産税・都市計画税の賦課期日である平成16年1月1日現在,本件土地の100万分の2919の共有持分(ただし,居住用の床面積に対応する共有持分は100万分の1493である。)を有していた者であり,本件土地に係る平成16年度の固定資産税・都市計画税の納税義務者である。

(2)  本件土地

本件土地は,区分所有権の目的となる店舗,駐車場及び住宅からなるいわゆる複合ビル(以下「本件建物」という。)の敷地であり,原告は,本件建物の住居部分の区分所有権を有している。

なお,本件建物の全床面積に対する居住用部分の床面積の割合は約13%である。

(3)  本件各賦課処分

岩槻市長は,平成16年5月1日付けで,原告に対し,以下の内容の本件土地(ただし,非課税部分を除く。)に係る平成16年度固定資産税・都市計画税を賦課する旨の処分をした(本件各賦課処分)。

固定資産税

課税標準額

8億4734万2078円

固定資産税額

2万0307円

都市計画税

課税標準額

8億4734万2078円

都市計画税額

2901円

(4)  原告の不服申立て等

原告は,本件各賦課処分を不服として,平成16年7月2日,岩槻市長に対し,異議を申し立てたが,岩槻市長は,同月29日付けで,上記異議申立てを棄却した。

そこで,原告は,平成16年10月28日,本件訴えを提起した。

4  争点

原告は,本件土地に係る平成16年度の固定資産税・都市計画税について住宅用地に対する課税標準の特例(以下「本件特例」ということがある。)の適用の有無について争うものであり,それ以外の被告の税額算出過程については争っていない。

そこで,争点は,本件土地について地方税法349条の3の2,702条の3に定める本件特例が適用されるかどうかであるが,具体的には,本件特例の適用対象となるための土地上の「家屋」(地方税法349条の3の2,702条の3,同法施行令52条の11第1項)の意義について,本件建物全体を1個の家屋とみるか,区分所有権の目的である各専有部分を1個の家屋とみるかである。

5  争点に関する当事者の主張

(1)  原告の主張

区分所有法の適用のある本件建物のような複数の区分所有者が専有部分を所有することを前提とした複合ビルと1名又は数名が所有又は共有する建物とは,そもそも実態が全く異なる。建物の一部が商業用物件で一部が居住用物件といった区分所有形態をとる複合ビルにおいて,居住用の専有部分を取得した者は,商業用の区画とは無関係である。商業用の専有部分を取得した者は,居住用の区画とは無関係である。

これに対して,1名又は数名が建物を所有又は共有する場合において,その建物の一部が商業用,一部が居住用である場合においては,所有者又は共有者は,商業用部分・居住用部分の双方を有していることになる。このように,区分所有建物については,各専有部分ごとに所有・使用関係が別個であるのに,建物全体の住宅部分の面積割合によって本件特例が適用されなくなるのは,建物の所有・利用関係を全く無視した不当な結果となる。

だからこそ,地方税法352条1項においては,区分所有法の適用のある家屋の専有部分の所有者は,その家屋に係る固定資産税額を区分所有法14条の規定による割合によりあん分した額を当該家屋に係る各所有者の固定資産税として納付すべき旨を定め,同様に,同法352条の2においては,区分所有者の共有となっている区分所有家屋の敷地に係る固定資産税について,各区分所有者がその持分に応じる税額のみを負担すればよい旨を定めている。これらの規定は,区分所有建物の専有部分については,これをそれぞれ独立した課税対象としているのである。

そして,一戸建ての住宅を所有する者と区分所有法の適用のある家屋の住宅専有部分の所有者とは,住居を有している点においては,社会的に全く同等である。それなのに,本件のように,建物全体の住宅部分の面積割合によって本件特例が適用されなくなるのは,税負担の公平の原則に反する。

とすれば,地方税法349条の3の2及び地方税法702条の3における「家屋」とは建物全体と解することは実態に反し税負担の公平性を害する著しく違法・不当な結果となるものであって,区分所有建物については,「家屋」とは各専有部分を指すと解釈すべきである。

したがって,本件土地について本件特例の適用をしなかった本件賦課決定処分は,地方税法349条の3の2,同法702条の3,同法施行令52条の11の解釈を誤ったものであり,違法である。

(2)  被告の主張

ア 地方税法352条1項は,区分所有法の適用のある家屋の専有部分の所有者は,当該家屋に係る固定資産税額を区分所有法14条の規定による割合(原則的には全専有部分中,各所有者が所有する専有部分の床面積の割合)によりあん分した額を当該家屋に係る各所有者の固定資産税として納付すべき旨定めている。

この規定の趣旨は,区分所有建物の専有部分所有者の固定資産税の算定方法を定めるとともに,区分所有建物の共有部分に係る固定資産税については地方税法10条の2の適用を除外し,各所有者が自己の有する専有部分に応じる税額のみの負担義務を負う旨定めたものであるが,上記条文上,区分所有建物についてはあくまで建物全体が1個の家屋として規定されており,各区分所有者の所有する専有部分はそれ自体が「家屋」なのではなく家屋の部分として規定されている。

とすれば,上記規定からも,税法上,家屋とは1個の建物全体を指すものと解釈すべきことは明らかである。

イ そして,本件特例の適用対象となるのは「一部を人の居住の用に供する家屋の敷地」である旨定め(地方税法349条の3の2,702条の3),特例適用の要件の一である「人の居住の用に供する部分の床面積」のみを政令(地方税法施行令52条の11)に委ねているのであり,人の居住の用に供する部分の床面積の割合を家屋ごとに判定すべきことは法定事項である。

したがって,本件特例適用の有無を判断するに当たっては,法律の解釈として1個の建物であるマンション全体について総床面積に対する住居部分床面積の割合いかんを判定せざるを得ない。

ウ 地方税法352条の2は,区分所有者の共有となっている区分所有家屋の敷地に係る固定資産税について,地方税法10条の2の規定の適用を除外し,各区分所有者がその持分に応じる税額のみを負担すればよい旨定めているものにすぎず,本件特例に関する解釈に何ら影響を及ぼすものではない。

エ したがって,本件土地には本件特例は適用されない。

第3当裁判所の判断

1  判断

(1)  本件特例は,住宅用地に対する課税標準の特例を定めているものであるが,本件特例が適用されるには,本件土地が専用住宅(専ら人の居住の用に供する家屋)又は併用住宅(一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるもの)の敷地の用に供される土地である必要があるが,上記併用住宅とは,一部を人の居住の用に供する家屋のうち人の居住の用に供する部分の床面積の当該家屋の床面積に対する割合が4分の1以上であるもののとされている(地方税法349条の3の2,702条の3,同法施行令52条の11第1項)。したがって,本件土地について本件特例の適用の有無を判断するためには,本件土地が専用住宅又は併用住宅の敷地の用に供されるものかどうかが問題となるが,その前提として上記各規定にいう「家屋」の意義について検討する必要がある。

(2)  地方税法における「家屋」とは,住家,店舗,工場,倉庫その他の建物をいうとされており(地方税法341条),固定資産税及び都市計画税の課税物件たる家屋の意義についてみると,一般に,不動産登記法の規定により建物登記簿に登記されるべき建物と同義であり,屋根及び周壁又はこれに類するものを有し,土地に定着した建造物であって,その目的とする用途に供しうる状態にあるものをいうと解される(最高裁昭和59年12月7日判決・民集38巻12号1287頁,東京地裁平成16年1月16日判決等参照)。

そして,租税法規の用語については,租税法規の趣旨,目的に照らして解釈されるものであるが,同一租税法規の中で同一の文言が用いられる場合には,特段の事情がない限り同一の意義に解すべきであり,みだりに拡張ないし縮小解釈をとることは租税明確主義の観点からも許されないものと考えられる。

そうすると,地方税法及び同法関係法令に用いられる「家屋」については,上記のような意義に解すべきであり,別意に解すべきことが地方税法及び同法関係法令上明文又はその趣旨から明らかな場合を除いて,他の解釈を用いることはできないというべきである。

(3)  ア ところで,本件土地上の本件建物は,区分所有法の適用対象となる建物であるが,区分所有法は,1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居,店舗,事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものを専有部分として,区分所有権の目的とすることを認めているものである。

しかし,区分所有法の規定は,各専有部分の1つ1つを「建物」や「家屋」等として称しているわけではなく(同法1条,2条参照),あくまで1棟の建物の一部分を区分所有権の対象となる旨規定しているにすぎない。その他の区分所有法の各種規定を通覧しても,各専有部分の一つ一つを1個の家屋又は建物として認めた又はみなしたといえる規定は存在しない。

イ また,地方税法も,区分所有の目的となる家屋及びその敷地に関して課税の特例を定めており,同法352条,702条2項は,区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税・都市計画税について,当該家屋の専有部分に係る区分所有者は,一定のあん分額によって固定資産税・都市計画税を納付すべきものとし,同法352条の2,702条2項は,区分所有に係る家屋の敷地の用に供されている土地(共用土地)で一定の要件を満たすものに対して課する固定資産税・都市計画税について,当該共用土地に係る納税義務者で当該共用土地に係る区分所有に係る家屋の各区分所有者であるものは,一定のあん分額によって固定資産税・都市計画税として納付する義務を負うと規定しているが,上記各規定の趣旨は,1棟の家屋又はその敷地の用に供される土地の全体の価格を一括して評価した当該固定資産税額・都市計画税額を一定の基準によってあん分した額を納付すべきものとし,地方税法10条の2第1項に定められている共有物等の連帯納税義務の規定を排除する旨を定めたところにあると解される。

とすれば,上記各規定は,区分所有権の目的たる各専有部分自体が地方税法上の「家屋」に該当し得ることを前提としているものでないことは文言上明らかであるし,また,区分所有権の目的たる各専有部分を独立の課税対象として定めたものとみることもできない。

ウ そうすると,本件特例が適用されるための住宅用地該当性について規定する地方税法349条の3の2や地方税法施行令52条の11第1項等にいう「家屋」とは,前記1(2)で述べた課税物件たる家屋の意義と同様に,屋根及び周壁又はこれに類するものを有し,土地に定着した建造物であって,その目的とする用途に供しうる状態にあるものと解すべきであり,そのことは区分所有法の適用対象となる建物の場合であっても別意に解すべき事情はない。

(4)  そこで,本件をみると,本件建物は,店舗,駐車場の非居住用部分と居住用部分からなるいわゆる複合ビルであるが,そのようなビル1棟が地方税法349条の3の2,702条の3及び同法施行令52条の11第1項の「家屋」に当たると解すべきであり,区分所有の目的となる専有部分自体を上記「家屋」とみることはできない。

2  原告の主張について

(1)  原告は,概ね「①区分所有建物については,各専有部分ごとに所有・使用関係が別個であるのに,建物全体の住宅部分の面積割合によって本件特例が適用されなくなるのは,建物の所有・利用関係を全く無視した不当な結果となること,②一戸建ての住宅を所有する者と区分所有法の適用のある家屋の住宅専有部分の所有者とは,住居を有している点においては,社会的に全く同等であるのに,建物全体の住宅部分の面積割合によって本件特例が適用されなくなるのは,税負担の公平の原則に反することから,地方税法349条の3の2及び702条の3における「家屋」とは各専有部分を指すものと解釈すべきである。」と主張する。

(2)  上記①については,たしかに,本件特例は,住宅政策上の見地から住宅用地について税負担を軽減することを趣旨とするところ,本件建物のような店舗や駐車場等非居住用部分をも多く含む複合ビルにおける居住用部分の区分所有権者についても,非居住用部分が少ないいわゆる普通のマンションの区分所有者や一戸建ての住宅を有する者と同様に,本件特例の適用を認めるように解釈することが本件特例の趣旨に沿うものとも考え得る。

しかしながら,地方税法の文言上,区分所有権の対象となる建物の各専有部分自体を1個の家屋と解することができないことはこれまで述べたとおりであり,併用住宅について定めた地方税法施行令52条の11第1項の規定上も,1棟の建物全体のうち居住の用に供する部分の床面積の1棟の建物全体の床面積に対する割合をもって併用住宅該当性を判断するものとしていることは明らかである[なお,地方税法施行令52条の11第1項は,「当該家屋の床面積」と規定しているところ,原告のいうような区分所有の目的となる専有部分の床面積を指すときには,地方税法関係法令上「専有部分の床面積」と明確に規定しており(地方税法施行規則15条の4第3項参照),そのことからも地方税法上「家屋」と区分所有の目的となる「専有部分」について明確に区別していることは明らかである。]。

とすれば,建物の所有・利用関係から考えて,各専有部分ごとに本件特例該当性を検討すべきとする原告の主張は,立法政策として傾聴に値するものの,本件特例に係る法令の文言から離れた拡張解釈であって,採用できないというほかない。

(3)  また,上記②については,憲法14条1項が規定する平等の保障は,課税権の行使にも及ぶものであるが,租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である(最高裁昭和60年3月27日判決・民集39巻2号247号等参照)。

そして,地方税法349条の3の2,702条の3及び同法施行令52条の11は,一定の要件を満たす土地(住宅用地)について課税標準の特例(本件特例)を定めるところ,本件特例は,住宅政策上の見地から住宅用地について税負担を軽減することを趣旨とするものであり,固定資産税が課税客体である固定資産課税台帳に記載された土地ごとに課税される(地方税法349条1項参照)ことから,当該土地ごとの利用状況すなわち当該土地上の建物の利用状況を把握してその住宅用地該当性を把握するものとすることは不合理ではなく,また,併用住宅該当性の基準について,建物の用に供している一体の土地上の1棟の家屋の全床面積に対する居住部分の床面積の割合が4分の1以上という一定の基準を設けたこと自体も,上記目的との関係で不合理なものとはいえない。そして,このように地方税法関係法令の規定自体不合理なものといえないことに加え,本件土地上の本件建物に店舗や駐車場等非居住用部分が一定以上多く含まれているという本件建物の利用状況に鑑みれば,本件土地の共有持分を有する原告と一戸建て住宅を所有する者等との間で取扱いを異にし,原告が本件特例の適用を受けないとしても,必ずしも不合理ということはできない。

そうすると,本件各賦課処分が租税公平主義に反するものということもできない。

(4)  したがって,原告の上記主張はいずれも採用できない。

3  結論

以上のとおりであり,本件特例の適用対象となるための用地上の「家屋」(地方税法349条の3の2,702条の3,同法施行令52条の11第1項)については,本件建物全体を1個の家屋と判断すべきであり,そのことを前提として算定した被告の本件各賦課処分に係る税額算定過程に違算はないと認められるから,本件各賦課処分は適法というべきである。

したがって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 豊田建夫 裁判官 富永良朗 裁判官 松村一成)

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