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さいたま地方裁判所 平成17年(行ウ)41号 判決 2007年8月29日

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  原告A株式会社

被告が,原告A株式会社に対し,平成14年12月27日付けで行った別紙1物件目録記載1の土地についての仮換地指定処分を取り消す。

2  原告有限会社B

被告が,原告有限会社Bに対し,平成14年12月27日付けで行った別紙1物件目録記載2の土地についての仮換地指定処分を取り消す。

第2事案の概要等

1  事案の概要

本件は,被告が,別紙1物件目録記載1,2の土地(2筆の土地を併せて「本件従前地」といい,別紙1物件目録記載1の土地を「本件従前地1」,同目録記載2の土地を「本件従前地2」という。)を所有していた原告らに対し,仮換地指定処分をしたところ,同各処分には照応の原則違反,公平原則違反等の違法があるとして,原告らが被告に対し同各処分の取消しを求めた事案である。

2  争いのない事実等(証拠により容易に認定できる事実は,かっこ内に証拠を示す。)

(1)  当事者

原告A株式会社(原告A)は,一般土木工事,建設機械器具の製造,販売及び賃貸等を目的とする株式会社であり,原告有限会社B(原告B)は,土木建設工事等を目的とする有限会社である。両社は,いわゆる関連会社である。

被告は,土地区画整理法に基づき埼玉県知事の認可を受けて設立された土地区画整理組合である。

(2)  本件仮換地指定処分に至るまでの経緯

ア 原告Aは,昭和62年4月30日,土木資材置場等に用いるため,当時の所有者であったC(C)から,本件従前地を期間を昭和63年1月31日までとして賃借し,昭和63年1月27日には,本件従前地を購入した(甲9の1)。なお,当時,本件従前地は市街化調整区域に指定されていた。Cは,上記売買に先立ち,本件従前地は地目が農地であったことから,これを雑種地とすることとして農地法5条の許可を受けていた(甲8の2,乙37,38)。

イ 平成元年ころ,本件従前地を含む区域が区画整理の計画区域に編入された(甲13)。

ウ 原告Bは,平成3年9月2日に設立されたところ,原告Aは,平成4年,本件従前地を本件従前地1及び2の土地に分筆して,このうち本件従前地2を,原告有限会社Bに売り渡した。以後,原告A及び原告Bは,共に,本件従前地を両社の資材置場として利用している。

また,原告Aは,このころ,本件従前地について,水道の配管工事,照明灯設置工事,ガスの配管工事,プレハブ管理小屋の設置工事及びプレハブ管理小屋の電気,空調,電話設備工事等を行った(甲10の1ないし11の3)。

エ 埼玉県は,平成10年12月25日,本件従前地を含む区域を市街化調整区域から市街化区域に変更するとともに,下記の土地区画整理事業(本件土地区画整理事業)を行うことを認可した。

① 事業名   草加都市計画事業三郷インターA地区土地区画整理事業

② 施行者   被告

③ 施行面積  約86.3ヘクタール

④ 権利者数  約540人

⑤ 総事業費  約221.6億円(補助基本事業費約33億円)

⑥ 平均減歩率 35.70%

⑦ 事業期間  平成10年度から平成21年度

⑧ 計画人口  5900人

オ 被告は,平成11年2月26日,埼玉県知事から,設立の認可を受けた(乙1)。

カ 平成14年6月28日,被告第11回総代会において,換地規程(本件換地規程,乙2)及び土地評価基準(本件評価基準,乙3)が議決され,同日施行された。

なお,本件評価基準19条(指数の修正)には以下の定めがある。

「画地又は画地の部分が次の各号のいずれかに該当するときは,その画地又は画地の部分の指数について,次の各号に定める修正を行うものとする。

(7) 従前の現況地目が宅地のもの又は登記簿地目が宅地のもの(整理前のみ採用) 宅地修正係数(1.05~1.25)を乗ずる。

(9) 近傍の宅地と指数のうえで不均衡のあるもの

計算された画地の平方メートル当たり指数が近傍画地の平方メートル当たり指数と比較して不均衡と認められた場合は,不均衡を是正するため,相応の修正係数を乗ずることができるものとする。」

被告は,同年8月29日から9月22日にかけて,土地区画整理事業施行区域の地権者に対し,仮換地案を供覧した。

同年12月18日,第13回総代会において,仮換地指定の同意が得られた。

(3)  本件仮換地指定処分

被告は,平成14年12月27日付けで,原告Aに対し,本件従前地1の土地を従前地とし,6街区2画地の土地を仮換地として,仮換地指定処分をし,原告Bに対し,本件従前地2の土地を従前地とし,6街区3画地の土地を仮換地として,仮換地指定処分をした(甲1,2。これらの仮換地指定処分を併せて「本件仮換地指定処分」といい,上記6街区2画地の土地と6街区3画地の土地を併せて「本件仮換地」という。)。

本件従前地と本件仮換地の位置関係は,別紙2のとおりであり,本件従前地と本件仮換地を比較すると別紙3のとおりである。

(4)  本件訴えに至る経緯

原告らは,それぞれ,平成15年2月24日付けで,埼玉県知事に対し,本件仮換地指定処分を不服として審査請求をしたが,埼玉県知事は,平成17年6月20日付けで,原告らそれぞれに対し,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。

原告らは,それぞれ,同年12月10日,本件訴えを提起した。

3  争点

(1)  土地評価基準の違法性(争点1)

(2)  本件従前地が宅地として評価されるべきか否か(争点2)

(3)  本件仮換地指定処分が照応の原則に違反するかどうか(争点3)

4  争点に関する当事者の主張

(1)  争点1(土地評価基準の違法性)について

(原告らの主張)

土地区画整理法89条1項は,「換地計画において換地を定める場合においては,換地及び従前の宅地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するように定めなければならない。」と定めている。したがって,被告は,従前地の評価に当たっては,位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等を考慮しなければならない。これを受けて,被告の本件評価基準(乙3)4条も,「土地利用区分は,土地利用現況及び土地利用計画により行うものとする。」と定めている。

ところで,本件評価基準19条(7)は,上記のとおり宅地について「従前の現況地目が宅地のもの又は登記簿地目が宅地のもの(整理前のみ採用)」と規定しているが,土地区画整理法にいう「宅地」とは,「公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する土地以外の土地」をいうのであるから(2条6項),本件評価基準19条(7)は,その上位規定である土地区画整理法に矛盾していると言わざるを得ない。しかも,本件評価基準19条(7)にいう「現況地目が宅地のもの」の意味が不明確であり,基準としての意味をなさない。

したがって,本件評価基準は土地区画整理法に反するものないし明確性を欠くものであって,このような土地評価基準に基づいてなされた本件仮換地指定処分は違法である。

(被告の主張)

本件土地区画整理事業は,都市計画法21条2項により準用される同法18条1項が適用されるため,市街化調整区域から市街化区域に編入された対象土地に対しては,一律に造成および地盤改良が行われ,事業後は,全ての対象土地は,宅地と同等の利用価値を持つに至るのである。そのため,土地区画整理法2条6項は,整理前の地目が,宅地,雑種地,田,畑などのいずれであるかにかかわらず,公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する土地以外の土地を宅地と規定したものである。他方,本件評価基準は,土地区画整理法89条の照応の原則を具体化するために定められた基準であり,同基準19条(7)は,整理前の土地利用状況により,従前の現況地目が宅地のもの又は登記簿地目が宅地のものと,それ以外のものとを区別するための基準にすぎない。そうであれば,土地区画整理法と本件評価基準19条(7)は,その趣旨に照らし,矛盾するところはない。また,土地評価基準19条(7)にある「現況地目が宅地」とは,建物の敷地として利用されている土地を示すのであって,基準として不明確なものではない。

(2)  争点2(本件従前地が宅地として評価されるべきか否か)について

(原告らの主張)

本件従前地には,上水道,汚水・雨水排出設備等が設けられ,電気も引き込まれているなど,生活をするために必要な施設が整っているし,砕石が20センチメートル敷かれた上に厚さ15センチメートルのコンクリート舗装を施されており,重機の出入りする資材置場として利用されているのであって,土地評価基準19条(7)にいう「宅地」と評価されなければならないか,少なくとも,農地と同等に評価されることは不均衡であるから,「近傍の宅地と指数のうえで不均衡のあるもの」として,土地評価基準19条(9)により修正が加えられなければならない。

しかしながら,被告は,本件従前地を宅地と評価せず,また,土地評価基準19条(9)による修正も加えず本件仮換地指定処分に及んだものであるから,本件仮換地指定処分は違法である。

(被告の主張)

被告は,仮換地指定を実施するに際し,従前の利用状況すなわち建物の存否を確認し,建物の存在が確認された土地については,「現況地目が宅地」であると評価した。本件従前地は,本件仮換地指定処分前,建物の敷地として利用されていた土地ではないし,固定資産課税台帳上にも課税対象となる建物の存在は認められない。したがって,被告は,本件従前地を宅地と評価することなく本件仮換地指定処分を行ったものであって,本件仮換地指定処分は適法である。

なお,本件従前地の評価にあたり,土地評価基準19条(9)による修正を加えるべき理由はない。

(3)  争点3(本件仮換地指定処分が照応の原則に違反するかどうか)について

(原告の主張)

ア 縦の照応原則違反

(ア) 原告らにおける資材置場の必要性

原告らは,土木業を営む法人であるが,既設構築物の維持管理業務を主たる業務とし,下水道メンテナンス協同組合員として緊急故障時等処理作業,緊急管理維持補修工事を担当している。主な受注先は東京都下水道局であるが,東京都区内においてはすでに下水や道路は100%完備されており,原告らの仕事の比重は維持補修作業に移行している。したがって,この施設の維持に想定される補修案件に対応できるよう,資機材を常備しておくことが原告らにとって営業活動継続の条件である。資材の保管にあたっては管理小屋等の設備が必要であるし,資材置場内には積み卸しのための道路も確保しなくてはならない。そのため,資材置場には,一定規模以上の広さが必要となる。しかし,本件仮換地は,資材置場としての利用に耐える面積がなく,原告らの営業継続は困難である。以下詳しく述べる。

(イ) 資材置場に置かれる資材等の特徴

原告らは下水道及び舗装工事を主たる業務としていることから,資材置場にはコンクリートや塩ビ管等の材料が常備される。工事で発生する残土や,埋め戻しに使う砂や砕石も,暫定的にではあるが,置くことがある。そのほか資材置場で保管するものとしては,道路の蓋掛けに使う覆工板や山止めに使う鋼矢板などの鋼製材料,機械類や車両(原告らが所有する車両のみでも40両を超えている)がある。

上記の資材は,砂,土砂についてはその性質上重層的な保管はできないし,マンホールの蓋は,1枚50kgほどあって重層的に保管することには限度がある。ドラムに至っては300kg位あることから,重ねて保管することは当然不可能である。そして,土が崩れてこないようにせき止めるために使用する矢板は,鉄製,コンクリート製のものであり,これらも積み重ねることはできない。

そのため,これらの資材を保管するには,相当なスペースが必要となる。

(ウ) 資材置場の必要設備

まず,土砂等の飛散を防止し,かつ近隣の子供たちの遊び場となり,事故が起こることを防止するため,敷地周囲には塀が必要である。

敷地全面の床は,重量物を置くことや車体重量を含めて20t超の車両が通行することを考え,一般道路の中級程度の強度が必要となる。そのほか給水所や便所,シャワー室等の設備も必要であり,電気,水道,下水,電話等の整備は不可欠である。資材にかかわる設備としては,残土置場,廃材置場,砂・砕石の置場が必要となる。濡れてはいけない物,セメントや電気機器を置く小屋も必要である。

原告Aは,本件従前地を取得後の平成4年5月頃から土地の整備を開始し,平成5年頃までに上記の設備を整えた。本件仮換地指定処分がなされた当時,本件従前地上に存在した施設及びその配置は別紙4のとおりである。

(エ) 資材置場として利用する場合の車路等の配置

上記のとおり原告両社の資材置場に置く資機材は,すべて重量物でかつ不定形のものがほとんどである。そのため,倉庫を作り,パッケージし,整然と管理できるものでない。そこで,本件従前地のように,中央に大型車両の車路をとり,左右に資材を置く方法か,もしくは,周回路状に車路をとり,車路の左右に資材を置く方法をとらざるを得ない。車路の幅員は,大型車両,重機が通行し,積み卸しをすることから最低8メートルは必要である。このように車路を設けるためには,地形は長方形でなくてはならない。

(オ) 資材置場としての必要面積

以上のような資材の保管の必要性や必要設備を考慮すれば,資材を1カ所で集中管理するならば,面積は最小2000平方メートルは必要となる。原状では足立区に所在する資材置場(D資材置場,1522平方メートル)と分散配置をしているので,最小でも全体で3000平方メートル,すなわち仮換地後の地積としては1500平方メートル程度は必要である。原告らは,現在はD資材置場を主として利用しているが,この土地は,東京都下水道局D処理場の敷地の未利用部分を下水道メンテナンス協同組合が使用許可を受け,その一部の使用許可を原告らが得ているものにすぎず,いつまで利用が認められるのかは明らかでない。また,近時,下水道及び舗装工事が多くなりつつある。したがって,今後本件仮換地の資材置場としての必要性は高くなる。

(カ) 資材置場としての利用継続の困難性

本件仮換地の面積は,777平方メートルである。しかし,上記のとおり幅員8メートルの車路を確保すると,道路を東西に設置した場合には約200平方メートル,南北に設置した場合では約260平方メートルが車路となり,実際に資材置場として使えるのは本件仮換地の約3分の2の面積にすぎず,資材を置く面積としては狭すぎる。

しかも,上記の数字はあくまで計算上のものであり,実際,本件仮換地に車路を設けることは困難である。なぜなら本件仮換地は,縦約25メートル横33メートルの正方形に近い形状であって,隅切りのため北東部は扇形であり,地形が悪いうえ,同隅切り部分は交差点にあたり,交差点内に恒久的な進入口を設けることは不可能である。他方,本件仮換地は地積が狭小であることから周回路を取ることができない。そうすると,中央に車路を設け,左右に資材を置く方法を取らざるを得ないが,上記地形のため,実際には進入路を仮換地の中央部分に設置することができないから,中央に車路を設け,左右に資材を置く方法を採ることも不可能である。

結局,面積及び車路設置の関係から,本件仮換地の残地部分では資材置場としては効用は果たせないのである。

したがって,本件仮換地指定は,「縦の照応」に反するものである。

イ 横の照応原則(公平原則)違反

本件従前地1の土地780.80平方メートル(登記地積780.00)は仮換地先として430平方メートルの土地(6街区2画地)が指定され,本件従前地2の土地628.99(登記地積628.00)は仮換地先として347平方メートルの土地(6街区3画地)が指定された。本件仮換地指定処分において,減歩率は,本件従前地1について44.9%,本件従前地2について44.7%であるところ,他にこのような高率で減歩された土地はない。特に街区内の他の雑種地の減歩率については,6%や19.9%程度である。

したがって,本件仮換地指定は,「横の照応」にも反するものである。

(被告の主張)

ア 土地評価の方法などについて

本件仮換地指定処分は,その基本となる本件換地規程に基づき,換地設計の基準の定めるところに従ってなされた。換地設計における画地の計算は,比例評価式換地計算法により,画地の評価は,原則として路線価式評価方法によるものとされた。すなわち,本件評価基準により,事業地域内の道路に即してそれぞれ路線価を定め,この路線価に基づいてそれぞれの土地の平方メートルあたり指数,従前の宅地及び換地の総指数あるいは評定指数を算出し,従前の宅地の評定指数と換地のそれとを照応させる方法で行われた。

本件換地規程及び本件評価基準は,土地区画整理法14条2項及び同法15条により定められた定款の75条及び同80条に基づき,平成14年6月28日の第11回総代会において議決され,同月28日から施行されたものである。上記の評価方法により計算したところ,原告らの従前地の接する道路の路線価は別紙5のとおり,仮換地の接する道路の路線価は別紙6及び7のとおりとなった。そして,別紙8に示すとおり,本件従前地1の評定指数は63万1667となったのに対し,仮換地の評定指数は63万2556となったこと,本件従前地2は,評定指数が50万5708となったのに対し,仮換地は,評定指数は50万6409となった。これらの評価に当たり,被告が恣意的に土地評価をしたり,仮換地を指定をしたものではない。

イ 縦の照応原則違反について

(ア) 原告らが本件土地を購入した際の三郷インターチェンジ周辺地区整備構想の進捗状況について

本件従前地は,もともと三郷インターチェンジ周辺地区整備構想において,D地区として,整備構想の対象土地とされていた。昭和54年から昭和61年にかけて,地権者に対し,3回のアンケート調査を行っており,原告A自身はともかく,その前の所有者は本件従前地が整備構想の対象となっていることを了解していた。また,昭和60年に常磐自動車道路と首都高速足立三郷線が市中央部の三郷インターチェンジで結ばれ,これと交わる東京外郭環状道路の側道部(国道298号)が一部開通していた状況であるから,本件従前地の周辺土地の整備が行われることは,容易に予想ができる状況であった。

したがって,原告Aも,従前の地権者などから,本件従前地が三郷インターチェンジ周辺の土地利用計画に関わりのある土地であることについては知らされていたはずであり,十分認識していたものである。そして,本件従前地は,平成元年5月,D地区から整備構想の対象とされているA地区へと変更され,平成元年5月22日頃には,原告Aに対して,地区変更に関する連絡が入っている。したがって,原告Aは,平成4年5月頃から,本件従前地の整備を開始したというが,その時点では,上記の地区変更の連絡が入っていたのであるから,本件従前地において,土地区画整理事業が行われることを前提として整備を開始したことになる。

(イ) 原告らの現在の営業状況について

原告らは現在,主にD資材置場を利用して営業を続けているところ,同土地は東京都下水道局D処理場の敷地の未利用部分の使用許可を受けているものであり,いつまで利用できるかわからないと主張するが,同土地の使用ができなくなるといった具体的な事情が生じているわけではなく,その主張はあくまでも抽象的な一般論にすぎない。

(ウ) 資材置場としての利用の困難性について

原告らが本件従前地において保管する資材の中には,塩ビ類やパレットのような重量物とはいえないものも含まれるし,いくつかのコンクリート製品については,積み重ねて保管している様子もあり,倉庫を作り,整然と保管することにより,有効に土地を利用することも可能である。また,管理施設,事務所,便所,休憩所などは,本件仮換地を立体的に利用することで,そのような設備を上の階に持っていくことも可能である。原告らは,資材置場として,大型車両(10t車)が出入りすることができることが必要で,全面取り付け道路幅が8メートル以上であることが条件となると主張するが,原告らの保有する車両の大半が2t車ないし4t車であること,D資材置場における道路幅は,周辺道路の半分程度の幅しかないことからすると,これらが必要な条件であるかは疑問である。

(エ) 代替地の提案について

被告は,これまでに2回,原告らの要望に応えるべく,代替地の提案を行っている。一度目は,埼玉県三郷市Ea丁目b-c,同b-d,同b-eの合計1256平方メートルの土地を代替地として申し入れをし,また,二度目は,埼玉県三郷市Ff丁目g所在の1422平方メートルの土地を代替地として提案した。

一度目の提案にかかる土地は,本件仮換地に近く,形状も長方形であり,資材置場として十分に活用できる土地である。原告Aが,本件従前地を取得する前は,足立区Qで360坪を借りて営業を行っていたことからすれば面積の面でも十分な広さのある土地というべきである(なお,この場合,整備に関する移転費用は土地区画整理法78条の規定に従って補償される)。また,2回目の提案にかかる土地は,本件仮換地に近く,形状が三角形であるとはいえ,本件従前地と同等の面積であり,資材置場として十分活用できる土地である。しかしながら,原告らは,いずれの提案も,面積不足,形状の問題などを理由に拒否しており,原告らが本件仮換地が資材置場として適さないと考えているかは疑問である。

(オ) 小括

本件仮換地の地積,形状などからすれば,資材置場として利用ができなくなるということはなく,代替地の提案に対する原告らの対応から考えても,営業を継続するために,本件仮換地周辺に資材置場として利用可能な土地の取得の必要性に迫られている様子は窺われない。原告らは,現在,D資材置場を利用して営業を続けており,本件仮換地指定による原告らの不利益は,現時点においては何ら認められない。

以上によれば,原告らの営業の継続が困難となるような事情は認められず,本件仮換地指定処分が,縦の照応を欠くとはいえない。

イ 横の照応原則違反

G線,H線,I線,J線,K線などの大通りに面した土地の減歩率は,原告らの土地と同様に高い減歩率となっている。

この中で低い減歩率となっている土地もあるが,これは従前地が宅地評価であって,土地の評価もよいことや,小宅地であるため減歩がなく,あるいは減歩緩和措置のため,それぞれ低い減歩率となっているのである。

また,原告らの土地が面しているG線沿いの他の換地についてみると,原告らの土地に比べ,減歩率は低くなっているが,角地であっても片側の道路幅員が狭いことや従前地の土地評価が原告らの従前地評価に比べ高いこと,接する道路幅員が狭いことなどが理由となって,原告らに比べ低い減歩率となっているにすぎない。

原告らは,従前地目が雑種地である土地は,減歩率が特に低いと主張するが,原告らが指摘する仮換地先が6%の減歩率の土地については,現況宅地の扱いであり,従前地の土地の評価(1平方メートルあたりの指数は985)が原告らの従前地評価に比べ高く,建物を現存させるため低減歩となっており,減歩不足分については清算金によることになる。したがって,減歩率が6%となっているからといって,その者が特別有利な取扱いを受けているわけではない。また,仮換地先が19.9%の減歩率の土地については,同様に,現況宅地の取扱いであり,従前地の土地評価(1平方メートルあたりの指数は988)が原告らの従前地評価に比べ高いため,低い減歩率となっている。

以上のとおり,原告らの土地について不当に減歩率が高く設定されているわけではなく,横の照応の原則に反する違法性も認められない。

第3当裁判所の判断

1  争点1(土地評価基準の違法性)について

土地区画整理法2条6項は,「宅地」の意義につき,「公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する土地以外の土地をいう。」と定める。土地区画整理法の目的は土地区画整理事業に関し,その施行者,施行方法,費用の負担等必要な事項を規定することにより,健全な市街地の造成を図り,もって公共の福祉の増進に資することにあるところ(土地区画整理法1条),区画整理事業の対象となる土地は,自己が所有権もしくは借地権を有するか,所有権者もしくは借地権者の同意を得た宅地及び一定の区域の宅地以外の土地であり(同法3条),区画整理事業の「施行者は,施行地区内の宅地について換地処分を行うため,換地計画を定めなければならない。」と規定されていること(同法86条)からすれば,上記「宅地」の定義規定は区画整理の対象とできる土地を画するために定められたものということができる。

一方,本件評価基準は土地評価の実施の方法について必要な事項を定め,土地評価の適正と均衡を図ることを目的とするものであり,同基準19条は,画地の個別的特性に応じた評価の修正につき定めた規定である。したがって,画地の個別的な特性として,いわゆる「宅地」であるか否かはその評価において考慮されるべき事項というべきであって,その意味において本件評価基準19条(7)が「宅地」という概念を使用しているといえる。

そうであれば,本件評価基準において使用されている「宅地」の意義は,土地区画整理法にいう「宅地」と一致しないものといえるが,これはそれぞれの規定の目的によってその趣旨は明らかになっており,その概念に混同を生じさせるものでもないから,その不一致をもって直ちに本件評価基準が違法と評価することはできない。

次に,本件評価基準19条(7)は「従前の現況地目が宅地のもの又は登記簿地目が宅地のもの」について評価を修正する旨規定しているが,これは,個別土地の性質に応じた適正な評価をする必要があること,同規定において「現況地目」,「登記簿地目」との文言が使用されていることからすれば,ここでいう「宅地」とは,不動産登記法上の「宅地」と同趣旨,すなわち「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」(不動産登記事務取扱手続準則68条3号)を指しているといえる。そうであれば,本件評価基準19条(7)の定める「宅地」が基準として不明確ということもできない。

以上によれば,本件評価基準は適法である。

2  争点2(本件従前地が宅地として評価されるべきか否か)について

上記のとおり,土地評価基準19条(7)により,土地評価に修正が加えられるべき土地は,登記簿上の地目が宅地とされているものか,又は現在建物の敷地となっているもの及び建物の維持もしくは効用を果たすために必要とされているものに限られる。

これを本件についてみると,証拠(乙37,乙38)によれば,本件従前地の登記簿上の地目はいずれも「雑種地」とされていることが認められる。また,証拠(甲20の1,22,23,原告A代表者)によれば,本件従前地のほとんどの部分は,原告Aが使用し始めた平成4年当時から資材置場として使用され,今後も同様の使用を予定していることからすると,本件従前地をもって本件評価基準19条(7)にいう「宅地」と評価することは到底できない。なお,上記争いのない事実等記載の事実及び証拠(甲19,20の1,21,22,原告A代表者)によれば,原告Aが,平成4,5年ころ本件従前地について,水道の配管工事,照明灯設備工事,ガスの配管工事,プレハブ管理後やの設置工事及びプレハブ管理小屋の電気,空調,電話設備工事等を行い,現在,本件従前地には,別紙4記載のとおり,鋼製ゲートや鋼板による塀が設置され,管理小屋や資材小屋が設けられているほか,各種資材が置かれていること,上水道,汚水・雨水排出設備等が設けられ,電気も引き込まれていること,砕石が20センチメートル敷かれた上に厚さ15センチメートルのコンクリート舗装を施されていることが認められるが,他方,本件従前地のほとんどの部分は,資材置場として使用されており,管理小屋についてもプレハブ式にすぎず,また資材小屋も含めその敷地部分も本件従前地の面積に比較するとほんのわずかであること(甲11の1ないし3,甲20の1),敷地にコンクリートが敷設されていたとしても,これは重量物の運搬や保管のためであって(甲19),建物建築のための基礎とは異なること,また上下水道等の設置についても,本件従前地の使用目的が資材置場であることからすると,これらの施設が生活のためであるというよりも資材の保管や管理等を主たる目的としているものと評価できること,これらの事情をも併せ考慮すると,本件従前地の上記のような設備があったことをもって本件評価基準にいう「宅地」と評価することはできない。

次に,原告は,本件従前地については,上記のとおり上水道等の設備のあることから宅地に準じた評価をすべきであり,本件評価基準19条(9)の規定を適用すべきである旨主張するので,この点について検討する。本件評価基準19条(9)は,画地の平方メートル当たり指数が近傍画地の平方メートル当たり指数と比較して不均衡と認められた場合に,不均衡を是正するため,土地区画整理組合の裁量による修正を認めたものであるところ,修正を加えないことが同規定に反し違法と評価されるのは,街路条件等が類似した近傍の宅地との評価が著しく異なり,修正評価をしないことが不合理である場合であると解される。

これを本件についてみると,証拠(乙24)によれば,原告らの土地の所在する埼玉県三郷市Lh丁目の画地の一平方メートル当たり指数(指数の数値が合理的なものと判断できることは後記3のとおりである。)は,751から1110に及ぶことが認められる。このうち本件従前地が接する北側幅員6.0メートルの道路に接する土地の一平方メートル当たり指数についてみると,それぞれ地目が田である同Lh丁目iの土地は821,同Lh丁目jの土地は821,地目が雑種地である同Lh丁目k-l,m-nの土地は821,現況宅地と認定された同Lh丁目o-p,o-qの土地は985であることが認められる(乙16,乙23,乙24)。本件従前地1の一平方メートル当たり指数は809,本件従前地2のそれは804であり,上記各土地の指数に比較して若干低いものの,個々の土地につき間口・奥行等の違いがあることを考慮すれば,本件従前地の指数が近傍画地と比べて著しく異なり,これを修正評価しないことが不合理であるとまでは認められない。

したがって,本件従前地を宅地として評価しないこと及び宅地に準じて修正評価しないことが土地評価基準に反して違法であるということはできないから,この点に関する原告らの主張は理由がなく,本件仮換地指定処分は適法である。

3  争点3(照応の原則違反)について

(1)  換地設計基準などについて

被告においては,土地区画整理法14条1項及び同法15条に基づき,定款が定められ,同定款75条及び同80条に基づき,平成14年6月28日の第11回総代会において,本件換地規程及び本件評価基準が議決された。本件換地規程によれば,換地設計は,被告設立認可の公告のあった日(平成11年2月26日)現在における施行地区内の宅地を対象とし(本件換地規程第4条),換地設計における画地の計算は,比例評価式換地計算法によるものとし(同規程6条),画地の評価は,原則として路線価式評価方法によるものとしている(土地評価基準第3条)。従前の宅地及び換地は,画地ごとに平方メートル当たり指数及び総指数を算出するものとされ,1筆の評価指数は,1筆内の各画地の総指数の合計をもって算定する(同9条)。画地の平方メートル当たり指数及び総指数は,画地を普通地,角地等に分類して算定する(同10条)。また,画地又は画地の部分が,水路を隔てて道路に接する画地である場合などに応じて,指数の修正が定められている(同19条)。

(2)  土地評価の仕組みについて

ア 土地の評価は,土地評価基準により,事業地域内の道路に即してそれぞれ路線価を定め,この路線価に基づいてそれぞれの土地の平方メートル当たり指数,従前の宅地及び換地の総指数あるいは評定指数を算出し,従前の宅地の評定指数と換地のそれとを照応させる方法で行われた。

イ 街路の評価について

路線価は,路線に標準画地が接していると想定した場合における標準画地の平方メートル当たり価格をいう(この路線価を標準として,土地の形状,奥行きの大小その他の条件により各画地の評価を算出する。)。路線価の算定は,本件評価基準7条に基づいて,下記の式によって算出した。

路線価=街路係数+接近係数+宅地係数

ウ 街路係数

街路係数は,街路の系統,連続性,幅員,構造,勾配,曲線及び街路修景等による利用価値を表す係数で,下記の式によって算出する。

街路係数=t・F(w)+ΣX

ここにtは,街路の系統,連続性等,街路の性質を表す係数で,本件では,tの値として幹線には1.5,区画幹線には1.1,区画街路には1.0,歩行者専用道路には0.8等の値がつけられた。

F(w)は,tの値を幅員Wに応じて修正する係数で,F(w)=W÷(W+1)として計算される。

Xは,街路の整備水準,歩車道の区別の有無などを表す係数で,ΣXは,それぞれの値を加算して算出する。本件では,X値として,舗装及び歩道にそれぞれ0.05の値が付けられた。

エ 接近係数

接近係数は,宅地が交通,文化,厚生及び慰楽等の諸施設との相対的距離関係による受益又は受損価値を表す係数で,下記の式によって算出する。

接近係数=Σm・F(s)nF(s)=Σm{(S-s)÷(S-R)}n

ここにmは対象施設の影響力の強さを表す係数で,Sは施設影響距離限度を,sは対象施設よりその路線の占める位置までの距離を,nは影響力の逓減率を,Rは定位距離(50メートル)を表す。

本件では,整理後に影響距離限度内にある対象施設はM駅,N駅,O中学校,近隣公園,街区公園であるところ,本件仮換地指定に関する対象施設は,M駅と街区公園のみである。整理前においては影響距離限度内にある対象施設はM駅のみであった。

オ 宅地係数

宅地係数は,宅地自身のもつ利用状況,文化性,保安性,自然環境等による価値を表す係数で,下記の式によって算出する。

宅地係数=u・F(P・Q)+ΣY

ここにu・F(P・Q)は,土地利用や公共施設の整備水準などにより面的に形成される宅地の利用価値・効用を表す。uは,地域的条件,土地利用の用途,ロット割による建築密度商業ポテンシャル及び市街地形成熟度との関係で定まる宅地の一般利用性の基本的等級で,F(P・Q)は,u値を公共施設の整備状況による宅地の利用有効性,防火性,安全性により修正する係数で,下記の式により表す。

F(P・Q)=1+(P/P0)×(Q/Q0)

ここにP0は基準公共用地率(%)を,Pは対象地域の公共用地率(%)を,Q0は基準道路長密度(m/ha),Qは対象地域の道路長密度(m/ha)を表す。

また,ΣYは,供給処理の整備状況等,宅地利用に直接的に影響する物理的条件によって付加された価値・効用を表す係数である。本件では,Y値として,上下水道整備につき0.3,ガス整備につき0.1の値が定められている。

カ 路線価指数

整理前路線価は,整理前路線価が最大値である路線番号1及び2の路線価2.976を路線価指数1,000として換算して表示したもので,それぞれの路線ごとに計算された路線価に1000÷2.976(=336.021)を乗じて求めた値を路線価指数として表したものである。

また,整理後路線価は,整理後のそれぞれの路線ごとに計算された路線価に1000÷2.976(=336.021)を乗じて求めた値を路線価指数として表した。

キ 本件従前地が接する街路の路線価(乙8,乙12)

(ア) 整理前

原告両名が接する街路は路線番号124で,別紙5「路線価」のとおり,街路係数は0.907,接近係数は0.000,宅地係数は1.748であるので,路線価は2.655となり,路線価指数は892(実際には,1の位の数値を0か5に端数処理しているので,890として計算している)である。

(イ) 整理後

整理後に原告両名の換地と接することになる街路は路線番号2で,別紙6「路線価」のとおり,街路係数は,1.543,接近係数は0.050,宅地係数は2.782であるので,路線価は4.375となり,路線価指数は1470となる。

また,原告Aの換地と接することになる街路である路線番号72の街路係数は,別紙7「路線価」のとおり1.078,接近係数は0.028,宅地係数は2.782であるので,路線価は3.888となり,路線価指数は1306(上記と同様に端数処理し,実際は1305として計算している。)である。

ク 本件従前地と本件仮換地の評価計算

証拠(乙4,乙6)によれば,上記の路線価をもとにし,従前の土地及び換地の形状,奥行きの大小などの条件により整理前後の各画地の評価を算出したところ,別紙8「画地の指数」に示すとおり,本件従前地1は,評定指数が63万1667となったのに対し,仮換地は,評定指数63万2556となったこと,本件従前地2は,評定指数が50万5708となったのに対し,仮換地は,評定指数は50万6409となったことがそれぞれ認められる。

以上の従前地と仮換地の評価計算において,これを不合理であると認めるに足りる事情は存在せず,同評価計算を前提とした本件仮換地指定処分は適法である。

(3)  照応の原則について

土地区画整理事業に伴う換地計画における換地指定の基準については,「換地計画において換地を定める場合においては,換地及び従前の宅地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するように定めなければならない。」(土地区画整理法89条1項)とする,いわゆる照応の原則が定められており,仮換地を指定する場合にも同項所定の基準を考慮して定めなければならない(土地区画整理法98条2項)。そして,この原則は,従前地と仮換地との対物的な照応(いわゆる縦の照応)のほか,権利者相互の対人的な照応(公平の原則,いわゆる横の照応の原則)をも意味すると解される。

土地区画整理事業は,施行者が一定の限られた施行地区内の宅地につき,多数の権利者の利益状況を勘案しつつそれぞれの土地を配置していくものであり,また,仮換地の方法は多数あり得るから,具体的な仮換地指定処分を行うに当たっては,土地区画整理法89条1項所定の基準の枠内において,施行者の合目的的な見地からする裁量的判断に委ねざるをえない面があることは否定し難いところである。そうすると,仮換地指定処分は,指定された仮換地が,土地区画整理事業開始時における従前の宅地の状況と比較して,前記した法89条1項所定の照応の各要素を総合的に勘案してもなお,社会通念上不照応であるといわざるを得ない場合においては,裁量的判断を誤った違法のものと判断すべきである。

(4)  いわゆる縦の照応について

ア 本件仮換地の位置,形状等について

本件従前地と本件仮換地との位置関係及び両土地の比較は,別紙2及び3のとおりであることは,第2,2,(3)記載のとおりである。そこで各土地について検討する。

(ア) 6街区の2の土地について

上記土地の減歩率は44.93%と平均値である35.7%より高い(乙16)。しかし上記土地は本件従前地1とほぼ同位置にあるうえ,形状や接道状況をみると,別紙3のとおり,本件従前地1は,北側で幅員6.0メートルの道路に間口14.1メートルで接し,奥行が56.1ないし約60.9メートルの細長い台形の土地であったものが,上記土地では,北側で幅員16.0メートルの区画道路に間口16.8メートル,東側で幅員25.0メートルの都市計画道路に間口約14.3メートルで接し,北東側に約7.2メートルの隅切りがあるほぼ台形状の角地となり,上記土地は本件従前地1に比較して地形,接道条件に関しては優れているといえる。

(イ) 6街区の3の土地について

上記土地の減歩率は44.83%であり,平均値である35.7%より高い。しかし,上記土地は本件従前地2とほぼ同位置にあるうえ,形状や接道状況をみると,別紙3のとおり,本件従前地2は,北西側で幅員約6.0メートルの市道に間口約10.5メートルで接する奥行約60.9メートルないし約64.3メートルの細長い台形の土地であったものが,上記土地は東側で幅員25メートルの都市計画道路に間口14.3メートルで接する奥行約24.7メートルの長方形の土地となり,上記土地は本件従前地2に比較して地形,接道条件に関しては優れているといえる。

(ウ) 上記(2)ク記載のとおり,本件従前地1と仮換地である6街区2の土地は,路線価方式に基づく画地評価指数は,本件従前地1のそれが63万1667点であるのに対し,仮換地である6街区の2の土地のそれは63万2556点であって均衡していること,また,本件従前地2のそれは50万5708点であるのに対して,仮換地である6街区の3の土地のそれは50万6409点で均衡していること,本件従前地の減歩率が平均減歩率より高いものの,本件仮換地指定処分にかかる仮換地は,本件従前地と重なる位置にあるうえ,本件従前地の地形及び接道条件1はかなり良好であることからすると,その評価において,照応の原則に反しているということはできない。

イ 本件仮換地の利用状況について

(ア) 原告らは,土木工事,主に道路,水道,下水道等の維持管理を業とする会社であり(甲19,原告A代表者),本件従前地において,上記第3,2認定のとおり,プレハブ管理小屋,便所,資材小屋を建築するとともに,本件従前地上に,枡,マンホールの蓋,塩ビ管などの下水道工事に必要な資機材,工事で発生する残土,埋め戻しに使う砂や砕石,道路の蓋掛けに使う覆工板や山留め材,機械類及び車両を保管していたこと,原告らは,仮換地がなされた場合にも同様の使用を考えていること(甲19,原告代表者)が認められる。ところで,本件仮換地指定処分による仮換地の土地は,本件従前地の面積の約半分になるところ,仮換地にかかる土地について重層的な保管等の工夫やD資材置場を利用することによって,原告らの営業は十分可能というべきであるから,その利用状況に照らしても,照応の原則に反しているとまではいえない。

この点,原告らは,本件処分のとおり換地されるとすると,資材置場が約2分の1に減歩されてしまい,原告Aの営業が継続できないと主張する。確かに,本件仮換地指定の結果,本件従前地の約半分が使用できないことが認められ,そうであれば,従前まで使用してきた管理小屋や資材小屋,屋根付き資材置場の一部は原位置から移動せざるを得なくなり,平積みした資材の保管可能な量もかなり減少するものと推認される。

しかし,管理小屋は移転可能ないわゆるプレハブ小屋であり,管理小屋や資材小屋については重層的な建物とし,敷地面積を少なくすることも考えられ,資材についても棚等を利用して立体的に保管することにより,保管容量の減少は相当抑えられるものと解される。

なお,原告らは,本件従前地上で保管している資材は重量があり,不定形なものであるから,重層的な保管は不可能であると主張するが,本件従前地において棚を利用したり,重ねて保管している資材も一部みられ(甲22),本件従前地と共に資材置場として利用されているD資材置場では,積み重ねて保管しているコンクリート資材があることから(甲23),少なくともその一部については重層的な保管を行い,敷地利用の効率化を図ることが可能であるというべきである。また,原告らは,資材置場としては集中保管の場合,最低2000平方メートル,分散保管の場合最低3000平方メートルの土地が必要であり,D資材置場が約1500平方メートルであることからすれば,本件仮換地指定処分によって換地されるべき土地についても1500平方メートル程度は必要であり,本件仮換地指定処分による土地では到底足りないと主張するところ,原告A代表者の供述によれば,原告Aは,本件従前地の取得前は360坪(約1190平方メートル)の土地を資材置場として利用していたこと,平成4年ころから平成15年までは本件従前地のみを利用してきたこと,本件従前地の資材置場はD資材置場に置ききれない資材等や直近に必要としない資材などを保管していることが認められ,そうであれば本件従前地はむしろD資材置場の補完的な資材置場と認められ,このことに仮換地の代替地として被告から1度目はEa丁目b-cないしeの合計1256平方メートルの長方形の土地,2度目はFf丁目gの1422平方メートルの土地の申し入れがあったにもかかわらず,原告らはいずれの申し入れも断っていること(乙36)を併せ考慮すると,資材置場と利用するためには,原告ら主張にかかる面積が必要であるとの原告らの主張は容易に採用しがたい。

さらに,原告らは,本件仮換地指定処分にかかる土地では幅員8メートルの車路を土地中央にとることが不可能であり,資材置場としての使用継続が困難であるとも主張するが,北東の約7メートル隅切り部分に車路をとることは困難であるとしても,これを避けて本件仮換地の北ないし東に中央を通る車路をとることが不可能であるともいえない。また,原告らは重量物の積み卸しに使用するユニック車の可動距離が車路から8メートルであることをもって,本件仮換地の中央に車路がとれなければ無駄なスペースができ,ますます資材置場として利用可能な敷地が減ることを懸念しているようであるが,仮に本件仮換地の中央に車路がとれず,車路の片側の敷地にユニック車の届かない部分ができたとしても,そのスペースは運搬可能な軽量物の保管場所に活用することが考えられ,車路の位置によって直ちに資材置場としての容量が減少し,使用に耐えなくなるとも解されない。

そうすると,本件仮換地指定処分の結果,原告らのこれまでの営業の継続は可能というべく,原告らの主張は採用できない。

(5)  いわゆる「横の照応」について

ア 土地区画整理法89条1項が縦の照応とともに横の照応を定めるものであることは前述のとおりである。

イ これを本件についてみるに,証拠(乙16)によれば三郷インターA地区における減歩率は0%から52%台まで広範囲に及ぶ。そして,こうした減歩率の差が生ずるのは,結局従前の土地と換地との評価差によるものであり,評価は前記のとおり路線価方式に基づき,画地ごとに土地評価基準に従ってなされるから,結局換地後の画地がいかなる路線価の道路に接するかが最も減歩率に影響を及ぼすと言いうる。そして,原告らの場合,原告ら両名の仮換地は東側25メートル道路に接するところ,この道路は路線価に最も影響のある街路係数が1.543であり,高い。また,6街区2の画地は,二方道路に接する角地となっていることから画地としての評価指数が高い。これらの結果,本件従前地と本件仮換地を対比すると,インターA地区内宅地の平均減歩率35.7%よりもかなり高い減歩率44.93%となったことが認められる。実際に,本件従前地が接するG線(幅員25メートル),H線(幅員29メートル),I線(幅員29メートル)及びP線(幅員27メートル)など幅員が広く街路係数の高い路線沿いの土地の減歩率についてみると減歩率40%台の土地が多数を占めていることが認められる(乙26)。

そうすると,原告の従前地の減歩率がインターA地区の平均より高いことから直ちに横の照応に反するということはできない。

ウ なお,従前地が雑種地である減歩率6%の土地(埼玉県三郷市Lh丁目rのsの土地)については,照応の原則から一般に従前地の評価が高いほど減歩率は低くなり,また換地先の土地の評価が低い場合にも減歩率は低くなるところ,従前地の土地の1平方メートル当たり指数が985と本件従前地より高い(本件従前地1のそれは809,本件従前地2のそれは804)一方,仮換地先の画地の1平方メートル当たり指数が1237と本件従前地より低いこと(本件従前地1のそれは1470,本件従前地2の2のそれは1457),上記のとおり,宅地と評価される土地については修正評価がなされ,他の地目の土地よりも高く評価されるところ,上記土地は現況が宅地と認定されたこと(乙23),上記土地については土地上の建物維持の必要があり,清算金を徴収することから減歩率を低くおさえる措置がとられたこと(乙24)がそれぞれ認められるから,当該土地の減歩率が低いことをもって,本件従前地が不利益に扱われているということはできない。

また,同じく従前地が雑種地である減歩率19.9%の土地(Lh丁目tのu,vのw)についても,現況が宅地と認定されたこと,従前地の土地の1平方メートル当たり指数が本件従前地のそれよりも高い(いずれも988)一方,仮換地の1平方メートル当たり指数が本件従前地のそれよりも低い(いずれも1235)ことが認められ,これらのことから,本件従前地よりも低い減歩率になっているものと考えられ,本件従前地が不利益に扱われているということはできない。

したがって,本件従前地の評価が不利に取り扱われているとは認められず,照応の原則に反していると評価することはできない。

2  結論

以上のとおり,本件仮換地指定処分は適法ということができる。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 遠山廣直 裁判官 富永良朗 裁判官 久米玲子)

(別紙図面添付省略)

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