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さいたま地方裁判所 平成18年(ワ)383号 判決 2008年5月30日

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告らは,原告に対し,各自600万円及びこれに対する平成18年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

1  略称について

以下,被告Aを「被告A」,被告Bを「被告B」,被告Cを「被告C」,上記被告3名を総称して「被告子供ら」,被告Afを「被告Af」,被告被告Amを「被告Am」,上記2名を総称して「被告A両親」,被告被告Bfを「被告Bf」,被告被告Bmを「被告Bm」,上記2名を総称して「被告B両親」,被告被告Cfを「被告Cf」,被告被告Cmを「被告Cm」,上記2名を総称して「被告C両親」,上記被告6名を総称して「被告両親ら」,上記被告9名を総称して「被告9名」という。

2  本件は,原告が小学校5年生から中学1年生までの間,被告子供らを中心とする同級生からいじめを受けたことについて,被告子供らに対して民法709条に基づき,被告両親らに対して監督義務不履行があるとして民法709条に基づき,被告さいたま市に対して安全配慮義務違反があるとして国家賠償法1条1項に基づき,それぞれが共同不法行為責任を負うとし,連帯して600万円の損害賠償(慰謝料)及びこれに対する平成18年3月19日(本訴状送達日の翌日以降の日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

3  前提事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。)

(1)  当事者等

ア 原告は,平成15年度(平成15年4月から平成16年3月を指す。以下平成16年度等も同趣旨。)のさいたま市立D小学校(以下「本件小学校」という。)5年1組,平成16年度6年1組出身であり,平成18年2月28日当時,さいたま市立E中学校(以下「E中学校」という。)の1年生であった。

イ F(以下「F」という。)は,原告の親権者母である。

ウ 被告子供らは,いずれも平成15年度の本件小学校5年1組,平成16年度の本件小学校6年1組の出身者であり,平成18年2月28日当時,E中学校の1年生であった。

エ 被告A両親は,被告Aの親権者である。

オ 被告B両親は,被告Bの親権者である。

カ 被告C両親は,被告Cの親権者である。

キ 被告さいたま市は,本件小学校の管理者である。

(2)  平成15年4月,本件小学校の5年生となるときのクラス替えで,原告は,被告子供らと同じ5年1組となった。6年生への進級時,クラス替え,担任替えはなく,原告及び被告子供らの担任は,G(以下「G」という。)であり,また,平成16年度の本件小学校の校長はH(以下「H」という。)であった。

(3)  平成15年度・平成16年度の本件小学校の時間割は,別紙1(省略)のとおりである。平成15年度の5年1組,平成16年度の6年1組の出来事を中心とする本件小学校の行事は,別紙2(省略)の「経過表(第1版)」の「行事」欄のとおりであり,原告の出欠状況は,同表の「本件」欄のとおりである。(証人H,証人G,弁論の全趣旨)

4  争点

(1)  被告子供らが原告に対し損害賠償責任を負うか。(争点①)

(原告)

ア 原告は,本件小学校5年生の1学期ころから,被告Aから叩く,被告Cから靴を踏まれるなどの嫌がらせを受けるようになった。原告は,被告子供らから,消しゴムを切られる,鉛筆で背中を刺される,金をせびられる,暴言を言われる,通りすがりや朝礼時に叩かれる,原告の所持品を勝手に持ち出されるなどされている。また,特に重大ないじめとして,担任のGが作った,給食時に5分間話をしてはならず,話をしたら廊下で給食を食べなければならないという決まり事(以下,給食時の決まり事を総称して「本件規則」という。)を悪用して,被告子供らが,原告に対し,毎日のように原告が本件規則に触れるように仕向けて来たことがある。

イ 被告子供らは,いじめの事実が発覚して注意されても,いじめをやめなかった。

ウ 詳しくは,別紙3の時系列表「原告の主張」欄記載のとおりである。被告子供らは,原告に対し,共同不法行為責任を負う。

(被告9名)

いじめの事実は概ね否認する。平成15年10月ころ,原告が被告子供らにお金を2000円程度渡したことに関して,複数回保護者を交えて学校で話し合いがあった(以下平成15年10月ころに行われた話し合いを総称して,「本件話し合い」という。)。本件話し合いの後は,被告子供らは原告を故意にいじめるようなことは行っていない。詳しくは,別紙3の時系列表「被告らの反論」欄の「被告A」,「被告C」及び「被告B」記載のとおりである。

(被告さいたま市)

ア いじめの事実は概ね不知。詳しくは,別紙3の時系列表「被告らの反論」の「学校(被告さいたま市)」欄記載のとおりである。

イ 原告はいじめというが,思春期の子供たちのじゃれ合いの限度を超えず,不法行為となるものではない。

(2)  被告両親らが監督義務不履行により原告に対し損害賠償責任を負うか。(争点②)

(原告)

被告両親らは,それぞれの子供である被告子供らが原告をいじめていることを知りながら,被告子供らを適切に監督しなかったため,被告子供らはいじめを継続した。被告両親らの監督義務不履行により,原告はいじめられたといえる。

(被告両親ら)

争う。

(3)  被告さいたま市が安全配慮義務違反により原告に対し損害賠償責任を負うか。(争点③)

(原告)

ア 学校は,いじめ問題が発生しないように努力する義務があり,いじめが発生したことを発見した場合には,被害者である生徒の安全を保護すべき義務を負う。いじめの被害者は,通常,いじめた側から仕返しされることへの恐れ,いじめられていることへの羞恥心,理解されずかえって自分が責められることへの恐怖などから,いじめの有無を問われても曖昧な対応をする。したがって,学校は,被害者がいじめについて深刻な被害ではないかのような対応をしたとしても,それを漫然と受け取らずに,十分な聴取を早急に行い,いじめが継続するならば直ちに学校全体で取り組む方針を立て,被害者,加害者の保護者らとも緊密に連絡を取って協議しながら積極的な対応をする義務がある。

イ Gは,原告の小学校5年生1学期時に原告が被告Aから背中を刺されたことを知りながら,有効な対処をしなかった。このため,いじめの顕在化が大幅に遅れる結果となった。また,Gが本件規則を作ったため,被告子供らが本件規則を利用したいじめを行ったが,Gは有効な対処をしなかった。

ウ Gは,Fと電話で話したときに,Fが本件規則をおかしいと批判すると,「むかつく」と発言した。また,GはFとの個人面談の際に,他の同級生と原告のことを比較した。

エ 原告や被告子供らの学年の本件小学校の卒業アルバム(以下「本件アルバム」という。)において,原告に無断で原告の写真が使われ,原告の文集を記載すべき場所が白紙にされているなど,原告への配慮を欠く状態であった。

(被告さいたま市)

争う。

(4)  各被告らに責任が認められる場合の,原告の損害額

(原告)

原告は,被告子供らからのいじめにより,不登校に追い込まれ,また,授業に出席できないため成績が著しく低下した。さらに,原告やその妹及び弟は,本件の影響を恐れて引越を余儀なくされている。これらの精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は600万円を下らない。

(被告ら)

争う。

第3争点に対する判断

1  認定事実

前提事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(1)  当事者等について

ア 原告の父は,Fと平成10年に離婚し,平成16年に死亡した。原告には,母親が違う姉が3人おり,それぞれ昭和54年,55年,58年生まれである。原告には,父母を同じくする3つ下の弟一人と,5つ下の妹が一人いる。

(証人F,原告本人)

イ 原告は,嫌だということをはっきりと言えない性格であった。原告は,特にI,J及びK(以下「K」という。)と仲がよかった。(丙2,原告本人)

ウ 被告子供らは,いずれもサッカー少年団に所属していた。被告Aは,被告Cから,6年1組では一番けんかが強いと見られていた。被告A及び被告Cは,Gから,やんちゃで元気者,いたずら好きで少ししつこいと感じるくらい女子児童へちょっかいを出すことがあると見られていた。被告Bは,Gから,自分に係わることは一生懸命やっていたと見られていた。(甲14の1及び2,丙2,被告C)

(2)  本件小学校の学級の構成等について(甲2,19ないし21,証人G,原告本人,弁論の全趣旨)

ア 平成15年度,5年生は学級数が4,男子数65名,女子数63名であり,学年主任はGであった。平成16年度,6年生は,学級数が4,男子数が65名,女子数が64名であり,学年主任はGであった。

イ 平成15年度の5年1組及び平成16年度の6年1組は児童及び担任が同じ構成となっていて,男子数が16名,女子数が16名,担任がGであった。

ウ 教室の座席の配置は,男女が1名ずつ隣り合う形で2名が机を並べ,2名ごとの列が4列できるという状態であった。給食時は,4名ずつで班となった。

エ 本件小学校は3学期制であり,4月から7月中旬の夏休みまでが1学期,9月から12月下旬の冬休みまでが2学期,翌年1月から3月までが3学期となっている。

オ 教室の座席の変更は,学期ごとに行われた。小学5年の2学期は,原告の隣に被告C,被告Cの前に被告Aという配置であり,3名は同じ班であった。

(3)  原告の通学状況等について(甲4,証人F,証人G,原告本人)

ア 原告は,小学4年生であった平成14年度,200日の授業日数中22日欠席し,178日出席した。(甲19)

イ 原告は,小学5年生であった平成15年度,202日の授業日数中22日欠席し,175日出席し,2日忌引きし,3日インフルエンザ名目での出席停止であった。(甲20)

ウ 原告は,小学6年生であった平成16年度,196日の授業日数中162日欠席し,29日出席し,5日忌引きした。(甲21)

エ 原告の平成15年度・平成16年度のより具体的な出欠状況は,別紙3の「経過表(第1版)」の「本件」欄のとおりである。

オ 原告は,平成15年の夏休み,1週間から10日ほど,Fの祖父の住む福島に預けられた。

カ 原告は,平成16年2月2日から同月13日まで,さいたま市児童相談所に預けられ,本件小学校を欠席した。その後も,平成17年4月まで,毎月2,3度は児童相談所へカウンセリングを受けに行った。

キ 原告は,平成16年4月26日から同年5月6日まで欠席した。

ク 原告は,平成16年5月17日以降,終業式直前の7月16日及び同月20日,修学旅行のあった同年11月1日及び2日,始業式直後の平成17年1月11日及び12日,卒業前の同年3月14日,22日,24日を除き,欠席ないし忌引きした。

ケ 平成16年8月21日,原告はNクリニックに通院を開始した。その後,平成17年8月17日まで月2,3回の頻度で通院していた。(甲1,4,5)

コ 原告は,平成17年度は,被告子供らと同じE中学校へ進学し,演劇部に入部するなどし,登校を続けていた。

サ 原告は,平成17年7月以来,E中学校を欠席していたが,徐々に中学校内のさわやか相談室へ通うようになっている。

シ 原告は,平成18年5月23日,NクリニックのL医師から,不安障害と診断された。(甲1)

(4)  本件規則について(甲12,17の1,証人G,原告本人,被告A,被告C,被告B)

ア 平成15年4月,Gは,給食は静かに食べるべきという考えから,給食の始めの5分は静かにするという決まり(以下「本件規則①」という。)を作った。

イ 平成15年11月ころ,学級会で児童達が自主的に,給食の準備の時間や食べ始めの5分間はタイマーをかけて,出歩かず,話をしない,それに1日に2回違反すると,廊下で給食を食べるという決まり(以下「本件規則②」という。)を作った。学級会には,Gも立ち会っていた。また,Gは,給食準備中や食事中,同じ教室内におり,本件規則②に基づいて児童が廊下で食事をするのも見ていた。

ウ 平成16年5月下旬,原告が不登校になったことに関連し,Hから指示され,Gは本件規則②を廃止し,(詳細な内容は不明だが)日直に違反を指摘されると連絡帳に反省文を書くという内容に変更した(以下「本件規則③」という。)。その後,本件規則③も廃止された。

エ 本件規則②ができてから廃止されるまでの間に,男子の方が多いが,女子も含め複数名の児童が本件規則②に違反して廊下で給食を食べた。

オ 本件規則は,紙や黒板に書かれるなどで明文化されていたわけではなく,規則違反の基準も明確に定まっていたわけではなかった。

(5)  日直について(証人G,原告本人,弁論の全趣旨)

ア 日直は,1日交代で前から順に毎日机の隣り合った2名が行った。その2名は通常は男子1名,女子1名であった。

イ 日直の役割としては,朝の会,帰りの会の司会,授業の開始及び終了時の挨拶の号令,給食時の配膳の順番決め及び配膳の指示,給食時の必要な注意,授業後の黒板の清掃その他の教室の整理整頓,翌日の日直の氏名記載などがあった。

ウ 平成16年5月7日の日直は,男子は被告C,女子はM(以下「M」という。)であった。

エ 平成16年5月17日の日直は,男子は被告Aであった。

(6)  平成15年4月から本件話し合いまでの経緯について(甲18,乙A1,乙B1,乙C1,丙2,証人F,証人G,原告本人,被告A,被告B,被告C)

ア 5年1組は,男女の仲が険悪というわけではなかったが,対立的な状態であり,互いに言い争うような状態であった。

イ 被告Cは,平成15年の1学期,原告の筆箱や鉛筆をとって,被告Aと投げ合ったことが,10回以上ある。鉛筆を投げ合っていた際,原告から返すようにいわれると,被告Aが鉛筆を自分のズボンの中に入れ,これでよければ返すといって返したことがある。原告は,返還された鉛筆を捨てた(以下「鉛筆ズボン事件」ということがある。)。また,被告Cと被告Aが原告の筆箱を投げ合っている際,チャックが開いていて筆箱の中身が床に散乱したことがあった。原告が拾うようにいうと,被告Cは中身を拾ったが,被告Aは原告の背中に中身の鉛筆を刺した(直接刺したか,投げて当てたかは不明である。)。エンピツで刺された件について,その日のうちに原告がFに言ったところ,翌日,FはGに報告した(以下「鉛筆刺突事件」ということがある。)。

ウ 平成15年の1学期から本件話し合いまで,被告Aや被告Cは,しばしば原告を叩いたり,足を踏んだり,「ボコす」,「デブ」,「死ね」等と言ったりした。これに対して,原告も言い返したり,叩き返したりすることがあった。

エ 平成15年9月,原告の体操服が入った袋(又はランドセル又はその両方。以下同じ。)を男子が男子トイレの中に持っていき,袋を取りに来た原告をトイレの個室の中に閉じこめることがあった(以下「トイレ閉じ込め事件」ということがある。)。

オ 平成15年9月10日ころ,原告は右足首を捻挫し,翌10日,O病院へ行った。その際,へこんでいる爪も診察された。このころ,原告は運動会の練習を見学したことがあり,原告はGにその理由として巻き爪の治療と言った。(甲25)

カ 平成15年9月,クラスの朝会の際,隣にいた被告Cや被告Aが,音楽に合わせて原告を叩くことがあった。Gは,それを発見すると,被告Cや被告Aを注意した(以下「朝会事件」ということがある。)。

キ 平成15年10月6日,5年生がクロネコヤマトへ社会科見学へ行った際,被告Cが,シート上で昼食をとるため脱いであった原告やKの靴を隠した(その後被告Cが自発的に原告らの靴を返したか否かは不明である。)(以下「社会科見学事件」ということがある。)。

ク 小学校5年の2学期,給食中に被告Cが前に座っている原告の足を蹴ることがあった(以下「給食足蹴事件」ということがある。)。

ケ 被告Aや被告Cは,原告に対して行ったのと同様の行為を,Kなど他のクラスの女子に対しても行った。

コ 原告は,平成15年7月ころから,家庭内での様子が変化し,妹,弟及びFに暴力的になった。

(7)  平成15年9月から10月の金銭がらみの事件(以下「本件金銭事件」という。)及び本件話し合い等について(甲18,24,乙A1,A2,B1,B2,乙C1,C2,丙2,証人F,証人G,原告本人,被告A,被告Am,被告B,被告Bm,被告C,被告Cm)

ア 原告は,別居している父や姉と会った際,小遣いをもらうことがあった。原告が被告Aや被告Cを含む同じ班の人と小遣いの金額について話したとき,その中で一番多くの小遣いをもらっているのは月額2000円から3000円もらっている原告であった。

イ 本件小学校では,学校にはお金を持ってきてはいけないことになっていた。

ウ 平成15年9月ころ,原告がMとともに原告宅の近くにある駄菓子屋「R」で買い物をしたとき,被告Cが原告に対し100円欲しい旨言ったことがある。原告が拒むと,Mが100円を与え,原告はお菓子を買い与えることになり,30円のラーメン菓子と10円のガムを買い与えた。(この機会かどうかは不明だが,原告は,被告Cではない男子に対し,100円を与えたことがある。また,上記原告から100円をもらった男子の件と同一か否かは不明だが,被告Aが「R」で原告にお金がほしい旨言うと,P(以下「P」という。)から分けてもらうように言われて,お金を分けてもらったことがある。)

エ 平成15年9月から10月ころの放課後,原告のランドセルが隠されることがあり,Q(以下「Q」という。)が原告からランドセルの取り戻しを頼まれることがあった。Qは,被告Aと協力し,ランドセルを探し,Qが取り戻した。本件小学校の裏門のところでQ及び被告Aからお礼を求められたため,原告は,一度家に帰宅後,原に1000円,被告Aに900円を与えた。

オ 平成15年9月から10月ころ,原告は,Mと駄菓子屋「R」へ行ったあと,本件小学校の校庭へ行ったところ,被告B,被告A,被告Aの弟らがサッカーをしていた。Mがオーバーヘッドシュートをして欲しいと頼むと,見返りを求められたので,Mはガムを与えることにした。被告B,被告A及び被告Aの弟がシュートを実行したので,原告は被告Bに100円,被告Aに100円,被告Aの弟に100円を与えた。

カ 平成15年9月から10月ころ,5年1組の男子の間で,原告がお金を持っているという話が有名になった。被告Cは,原告からお金をもらえたら良いなどと被告Aと雑談したり,直接原告に向かって10回程度お金が欲しい旨言った。被告Cは,原告にお金を要求した際,原告の好きな人や原告の体重を言いふらすなどと述べたことがある。

キ 原告は,平成15年10月17日ころ,手持ちの現金がなくなったため,Gにクラスの男子からお金を要求されていること,お金を2000円以上渡していることなどを相談した(この1週間ほど前にも原告はGに対し本件金銭事件について何らかの相談を試みたようであるが,明確に相談したとまでは認められない。)。Gは,同日午後4時ころから,被告子供ら,Q,P,原告,M,Kから事情聴取を行い,S校長(以下「S校長」という。),T教頭(以下「T教頭」という。),U(以下「U」という。)生徒指導主任などに相談し,同月19日に話し合いを開くことにした。Gなどから,家に帰って保護者に話すよう言われたため,原告はFに対して本件金銭事件や被告Aや被告Cからいじめられていることを初めて話した。

ク 平成15年10月19日日曜日,F,原告の姉,被告子供ら,Q,P,Mらとその保護者,G,T教頭らが学校に集まり,お金の件について事実確認やお金の返金,再発防止などが話し合われた(以下「本件話し合い①」という。)。その後,Fの希望により被告A及び被告Cとその保護者,F及び原告の姉,G,T教頭が残り,被告A及び被告Cが原告をいじめているという件についてさらに事実関係の確認等が行われた(以下「本件話し合い②」という。)。その際,いじめの事実として取り上げられたのは,すれちがいざまに叩く件,ボコす,デブなどの悪口の件,朝礼で叩いた件,鉛筆で背中を刺した件,鉛筆をズボンの中に入れた件などであった。原告本人がいないため,後日原告本人を交えて事実確認を行うことになった。

ケ 平成15年10月21日ころ,放課後である午後4時30分ころから午後9時ころまでの間,原告,F,被告A及び被告Cとその保護者,G,T教頭,Uらが学校に集まり,引き続き話し合いがなされた(以下「本件話し合い③」という。)。原告の口から事実が語られ,被告Aや被告Cが事実を認否し,意見の分かれたところについてさらに詳しく事実確認がされるという形であった。被告A及び被告Cやその保護者は,否定する部分もあったが,認める部分については自分の非を認め,原告に謝罪した。最後にT教頭が原告に対し,被告A及び被告Cがどのような存在か聞くと,友達と答えた。この際に,原告やFから,クラス替えや席,班を別にしてほしいという要望は出されていない。Fや被告両親ら(被告B両親を除く。)は,問題は解決したと感じた。

コ 平成15年10月25日の土曜参観の後,Fの希望により,本件話し合い①に参加した者に本件話し合い③の結果を報告することになった(以下「本件話し合い④」という。)。T教頭司会のもとで,Fからの事実の説明や,今後仲良くやっていくということの確認が行われた。

サ 本件話し合いの後,被告Aの両親は被告Aに,被告Cの両親は被告Cに,それぞれ,お金のやりとりに気をつけること,人の嫌がることをしてはならないこと,原告との付き合い方に気をつけることなどを注意した。また,被告Bの両親は,被告Bに,金銭のやりとりを気をつけること,原告との付き合い方に気をつけることなどを注意した。

シ 本件話し合い④の翌日ころ,Fはある保護者から原告が階段から落とされた旨を聞いたことがあるが,学校や被告Cの保護者に知らせるなどしていない。

(8)  本件話し合いから平成16年5月17日に原告が不登校になるまでの経緯(以下平成16年5月17日から本件小学校卒業までの原告の本件小学校の不登校を「継続的不登校①」という。)について(甲14の1及び2,17の1,18,24,乙A1,A2,乙B1,乙C1,丙2,証人F,証人G,原告本人,被告A,被告Am,被告B,被告C)

ア Gは,原告がいじめられていないか,注意するようになった。また,被告A及び被告Cと原告とが一緒の席や班にならないよう配慮した。児童からGに原告がいじめられているなどといった報告はなかった。

イ 原告は,平成15年11月ころから,学校から帰宅した後多量に食べ続けるようになり,冬休み頃には,アイスクリームを口に入れたまま寝たこともあった。

ウ 原告は,平成16年2月2日,さいたま市児童相談所に預けられ,本件小学校を欠席した。その理由は,家での態度がおかしく,弟,妹,Fへ暴力を振るうということであった。FがGに対し原告を児童相談所に預けたことを話したところ,話し合いの結果表向きの原告欠席の理由はインフルエンザということにした。原告は,同月13日に,児童相談所を出所した。

エ 被告A及び被告Cは,原告に対する態度を気をつけるようになったが,ときどき「デブ」,「ずる休み」などの悪口を言った。また,被告Cが原告の聞こえるところで,原告に頼めば物を買ってくれる旨言ったことがあった。

オ 被告Bは,給食の際,一番食べ終わるのが遅くなった人が食器を片づけるという決まりを作り,一番遅くなった原告のところへ食器を重ねたことがあった(以下「給食食器事件」ということがある。)。また,原告に対し,休んだ分掃除をするように言ったことがある。さらに,被告Bは,被告Aや被告Cよりも多い頻度で,原告の体格について悪口を言った。

カ 平成16年3月ころ,図工の授業中,被告AはV(以下「V」という。)に対して原告がVの絵の具入れをあさっているらしいと話したところ,Vは所持していた絵の具のついた筆で原告の服や手に絵の具をつけた。授業を担当していないため後で事件を知ったGは,原告の服を洗った。その後,Gは,Fから絵の具が落ちない,原告の服は思い出の品であるなどと言われたが,自分の担当していた授業でもなかったため,V及び被告Aの電話番号を教え,当事者間の解決に委ねた。Vと被告Aの保護者は,各自商品券3000円を持参した。また,被告Aは本件話し合いのときに続き,原告に対し2度目の謝罪文を書いた(以下「絵の具事件」ということがある。)。

キ 平成16年5月7日の給食の準備中,原告はそれまで欠席が続いていたので,Kと勉強を教えてもらうという話しをしていたところ,日直の被告Cが,原告が本件規則②に違反しているので廊下に出ろという注意を行った。その後,原告はマスクを取りに廊下に出たところ,別のクラスの女子が声をかけてきたので,話をしていたら,被告Aがそれを発見して被告Cに報告した。被告Cは,原告に対し本件規則②に再び違反したと注意し,廊下に出るよう言った。他の男子も,違反したから出るよう言った。原告がなかなか机を動かそうとしなかったため,被告Aが代わりに原告の机を運ぶから,本件規則②に違反することを見逃してくれるよう被告Cに言ったが,被告Cはその必要はないと言ったため,被告Aはやめた。被告Cは,被告Aも立ったため本件規則②に違反したと考え,被告Aにも廊下に出るよう言ったが,何度言っても原告や被告Aが廊下に出ないため,Gに相談したところ,言い方を変えるよう言われ,出てくださいと言った。それでも原告は廊下に出ないため,被告Cは原告の机を廊下に運んだが,そのときに既にKの机も廊下にあり,その近くにいては廊下で原告とKが話をすると考えたため,6年1組の教室の隣にある図書室の前まで原告の机を運んだ。その様子を見ていたKがGに報告したところ,Gは被告Cに机を戻すよう言い,被告Cは原告の机を教室の近くまで動かした。原告は,初めて廊下に出されたことや,自分に非がないにも関わらず廊下に出させられたこと,被告Aは本件規則②に違反したにもかかわらず廊下に出させられていないことなどで悔しくなり,泣いた。その際,被告Bが教室と廊下の間の窓を開けると,Kが窓を閉めるというやりとりがあり,原告が泣いていることが教室からわかった。(以下「本件給食事件」という。)

ク 平成16年5月11日,GがFと個人面談をして,本件給食事件のことを報告したところ,Fは初めてそのことを知った。その際,Gは,Kは泣かずに廊下で食べたが,原告はナイーブなせいか泣いた旨発言した。その後,個人面談での話題は,Fが福島に転居する可能性があるので卒業に関する委員は引き受けられないといったことに移った。

(9)  平成16年5月17日以降の経緯(甲14の1及び2,17の1及び2,18,24,乙A1,乙B1,乙C1,丙1,2,証人F,証人H,証人G,原告本人,被告A,被告B,被告C)

ア 平成16年5月17日,原告はその日の日直が被告Aであるという理由で,学校を欠席した。欠席を連絡してきたFの話によると,被告子供らが原因と原告が言っているということなので,Gは被告子供らから事情聴取をした。そうすると,被告子供らは心当たりがあることは認めたが,やったのは自分たちだけではないと言った。Gは,被告子供らがクラス全員に事情を話してよいと言ったこともあったので,6年1組全員に対して原告が不登校になっていることについて話し合わせ,原告に手紙(以下「本件文書」という。)を書かせることにした。本件文書には次のような記載がある。(甲6ないし8,9の1ないし4)

(ア) 被告Cは,「僕が日直のときにひどいことをいってごめんなさい。学校にきてください。今後もうにどとしないので学校にきてください。」と記載している。

(イ) 被告Aは,「いつもいつもいじわるをしてしまいごめんなさい。こんどからはいじわるをしんせつに変えるので学校にきてくださいおねがいします。」と記載している。

(ウ) 被告Bは,「前からずっと悪口を言ったりして,すいませんでした。今日は,みんなと話しあって(原告)さんが,どうしたらくるか話し合った結果手紙をかくことになったのであやまりたいと思います。」と記載している。

(エ) W(以下「W」という。)は,「いままでいじめてまことにすまないとおもいます。だから学校へきて,楽しんでほしいです。学校へくればきゅうしょくもあるし,たのしい友だちにもあえるよ。」と記載している。

(オ) Xは,「まず謝る事を書きます。僕は,友達が,「(原告)が~,と言って,それを笑ったりして,しまったりしてごめんなさい。それに,いじめられているのを,知っていながら知らん顔してすいませんでした。(原告)さんが元気に学校に来る日を待っています。」と記載している。

(カ) Yは,「時どき回りの人が(原告)さんに悪口,いやみなどをいっているところを見るけど,いつもがまんしている(原告)さんを見るととてもかわいそうに思います。これからはそれをとめます。早く学校へ来てね。」と記載している。

(キ) Zは,「(前段略)私はあやまらなければならないことがあります。(原告)さんは,よく男の子達にからかわれてることがあったよね。助けてあげられなくてごめんね。(後段略)」と記載している。

イ 平成16年5月18日,原告は父親の病気を理由として欠席した。同日ころ,本件文書が,原告へ届けられた。本件文書では,被告子供ら以外の者も謝っていたが,原告は,被告子供ら以外の児童にはやられていないと言った。

ウ 原告の友人の女子は,登校時に自発的に原告の家に寄り,登校を誘っていた。

エ 平成16年6月12日,原告は,埼玉弁護士会へ,本件規則及び本件小学校のさいたま市緑区福祉課への照会に関して,人権侵犯救済の申立(平成16年(人)第6号人権侵犯救済事件)を行った(以下「本件人権事件」という。)。(甲3)

オ 平成16年6月15日,原告は被告子供らを相手としてさいたま簡易裁判所へ調停を申し立てた(以下「本件調停」という。)。申立書の紛争の要点には,いじめの事実として,5年生1学期からの暴力・暴言,5年生2学期のお金の要求,廊下で給食を食べさせられたことなどが記載されており,平成16年6月に入って原告がFにいじめにあっていたのを隠していたと話したことも記載されている。申立の趣旨は,相当額を支払うということであり,同年8月27日ころの第1回調停期日における具体的な原告の要望は,被告子供らに1000万円を支払って欲しいということであり,調停不成立となった。(乙A4)

カ 平成16年7月,原告は,友達に誘われて原告の家の近くで行われていた祭りに出かけた。その際,被告Cを含む学校の知り合いに会い,学校に出てこないのに外出はできるのかなどと言われ,泣いて家に帰った。被告Cは,月曜日に学校に来るよう言った。

キ 平成16年7月16日,Gに誘われて,原告は久しぶりに登校した。掃除の際には,原告は掃除場所である職員室で被告Bと背比べをした。

ク 平成16年8月21日,原告はNクリニックに通院を開始した。

ケ 原告は,平成16年11月1日及び2日,F付添のもと,修学旅行に参加し,その際は,女友達とは仲良くしていた。

コ 平成17年1月7日,埼玉弁護士会から本件小学校及びGへ,本件人権事件に関し,学校給食が教育の一環であることを改めて確認するとともに,今後,学校給食を含めた学校生活の全ての場において子供の人権が最大限保障されるよう適切な教育・指導を行うよう要望する旨の要望書が送られた。(甲3)

サ 本件小学校では,原告の不登校の原因は,いじめではなく原告の家庭の事情にあると考えている。

シ 原告は,継続的不登校①となってからも,友達と遊び,カラオケや映画に出かけることがあった。

ス 原告は,本件小学校を卒業後,Fの再婚の都合も兼ねて,離れた中学校へ進学する予定であった。しかし,Fの再婚が進まなかったことや,未知の学校へ行くよりも友達のいる学校への進学を原告が希望したため,E中学校へ進学した。Fは,E中学校の校長に,被告子供らと教室を一緒にしないよう求めた。原告と被告子供らの教室は別となった。

セ 平成17年5月ころ,廊下ですれ違いざま,被告Bの肩が原告にぶつかることがあった。そのとき,原告は1年2組,被告は1年3組であり,隣のクラスであった(以下「廊下接触事件」という。)。

ソ 原告は,平成17年7月以来,E中学校を欠席している(以下「継続的不登校②」という。)。

(10)  その他の本件小学校の対応等について(甲12,14の1及び2,17の1,18,24,乙A1,乙B1,乙C1,丙1,2,証人F,証人H,証人G,原告本人,被告A,被告B,被告C)

ア 本件小学校では,月1回の頻度で定期的にH,養護教諭,各学年の代表となる教師などで構成される生徒指導委員会が開かれており,いじめやその他児童の問題行動等が話し合われていた。そこで対応方針が決まると,職員会議で全職員へ周知されていた。

イ 平成16年3月ころ,Fは,S校長に呼ばれ,話をしたことがあるが,当たり障りのない内容であった。その際には,Gも立ち会っていた。

ウ 平成16年度に校長となったHは,校長の引き継ぎ時に,いじめ案件の引き継ぎを受けたが,その中に原告の案件は含まれておらず,平成16年5月20日にGから報告を受けて初めて知った。このとき,原告に関しては,本件金銭事件が,いじめではなく金銭トラブルとして記録されていた。

エ 平成16年5月17日に原告が欠席したとき,原告からその原因が被告子供らにあると言われたため,Gは,被告子供らに対し,原告が欠席していることを保護者に伝えるように言った。

オ 原告が継続的不登校①となって以降,Fが,被告子供らの保護者,特にその父親を呼ぶように求めても,Hは一貫して拒んでいる。

カ 原告が継続的不登校①になって以降,毎日のように担任や仲のよい女子児童が原告宅を訪問したり,電話したり,手紙を出したりなどした。

キ 平成16年5月30日ころ,Fから本件規則について文句を言われ,Gは指導法に口を出されるとむかつくと言った。そのころ,Gは本件規則②を廃止し,そのことを原告に伝えた。(甲17の1)

ク Hは,授業中や給食中に学校内を見て回り,児童の様子を観察した。

ケ Hは,Fが直接被告子供らの保護者と話をすることは,やめてもらいたいと言った。

コ Hは,Fから原告が不登校となっていて目が離せないから仕事もできないと言われたが,学校に送られてきている書類上Fの収入はなかったと思ったり,Fが不在の状況で原告が一人で家にいる場合は別途対応が必要になると思ったりしたため,平成16年5月31日ころ,Fに無断で,区役所に生活保護を受けているFの収入状況を問い合わせた。(甲12)

サ GやHは,被告子供らを含む原告の不登校に関わっていると思われる児童から,平成16年5月から6月にかけて個別に事情聴取を行ったり,平成16年9月16日や同月30日ころ原告,F及びFの婚約者と一緒に事実確認や本件給食事件に関しての図書室見学を行ったりした。平成16年9月の事実確認及び図書室見学については,事後に被告子供らの保護者から本件小学校へ抗議があった。

シ Hは,平成17年2月22日ころ,Fに対し,卒業アルバム(本件アルバム)に原告の写真を掲載してよいか否かの意向を問い,よくないのであれば掲載しない旨の文書を送り,翌23日,やはり原告の写真は掲載したいという文書を送った。完成した本件アルバムでは,6年1組の写真欄に,修学旅行時に撮影された原告の写真を加工した写真が掲載されている。原告やFは,この写真掲載を承諾していない。また,文集部分には,原告の欄も用意されているが,空白となっている。(甲2,10,15)

(11)  Nクリニック作成の原告に関する診療録の記載(甲4,5。判別不能な部分を省略しているところがある。以下「診療録」という。)

ア 診療録(甲5)には,主訴として,「不登校のことで相談」,病歴として「小5~断続的不登校」,「小6 5月以降不登校」,「いじめが根底にある」,現症として「本人(原告のこと)はうつ状態に」「いじめの子に会うといじめられたことが浮かんでくる」,「母と学校(校長,担任)がうまくいっていない」などと記載されている。

イ 診療録(甲4)の,2度目の診察日である平成16年8月25日欄に,「両親の離婚?」,「お父さんはお酒をのんで・・・」,「あばれる人で・・・」,「TELをこわしたり・・・」,「父は私(原告のこと)が小6の時 お酒のんで お腹がふくれて Hpに入院して」,「小5の頃から お父さんは自分が死ぬ話をする」,「お母さんはFmさんという人とつき合っていて4月に結婚して福島にいくという。」,「小6の教科書をすてられて」などと記載されている。

ウ 診療録(甲4)の,平成16年9月1日欄に,「小5 お金をとられた。」,「Rで男子に買ってと言われて つい1回買ってしまった。」,「次の日 男子が  家にお金をとりにきた。」,「お菓子を上げることになって」,「男子がふりつけの遊びをしていて,私をたたく」,「私の好きなエンピツを横の男の子がパンツの中に入れて」,「(Pat(原告のこと)はこの時どうしているの?)やめてと言ってたたいても」,「あとでトイレにいって泣いたり」,「(周りからみると,応えているようにみえなくって)うん」,「(外では我慢?)うん」,「(家では大さわぎ?)そう」,「幼稚園では髪をひっぱったり・・・<説明不足の母?>」と記載されている。

エ 診療録(甲4)の,平成16年9月3日欄に,「(学校に行く気はないの?)お母さんは助けてくれない 友達の所にいくのか・・・と」,「行きたいのかいきたくないのか・・・特別扱いはいやだし・・・男子はあやまってくれないし・・・」と記載されている。

オ 診療録(甲4)の,平成16年9月15日欄に,「卒業アルバムの写真のとり直しについて→いやみをいう子もいるので・・・」と記載されている。

カ 診療録(甲4)の,平成16年10月13日欄に,「昨日 校長先生と担任が来て・・・<母がけんかごし>」,「やったことをクラスの子が認めてくれれば学校行く」と記載されている。

キ 診療録(甲4)の,平成16年11月10日欄に,「いじめた男の子→B,A,Cの顔を見るとハーハーして,涙も出てきた。」,「女子とは普通に話せた。」と記載されている。

ク 診療録(甲4)には,平成16年11月17日欄に,「教室がいや」,「教室というと 私のクラスを思い出す。」,「クラスの子がいやだったから・・・教室から出された給食のこととか・・・」と記載されている。

ケ 診療録(甲4)の,平成16年12月1日欄に,「本当は6-1が大好き」,「(男の子3人あやまってくれれば気がすむ?)はい」と記載されている。

コ 診療録(甲4)の,平成17年3月16日欄に,「小3の時 この問題になっている男の子(B君)が私のリコーダーをパンツに入れた。」,「(理由?)分んない」と記載されている。

サ 診療録(甲4)の,平成17年3月30日欄に,「クラスに入って席にすわってアルバムをみたら写真がのっていた」,「約束をまもらなくって・・・又泣いた」と記載されている。

シ 診療録(甲4)の,平成17年5月11日欄に,「小6の時に問題になった男の子がわざとぶつかってくる にらむ 時々だけれど・・・」,「みかけるとイライラするけど・・・無視」,「(学校にいきたくない?)それはない」と記載されている。

ス 診療録(甲4)の,平成17年6月8日欄に,「小6の時の男の子,3人サッカー部」,「今サッカー部の前でしりもちついて 皆に笑われた。」,「(明日いくのに気になる?)大丈夫」と記載されている。

セ 診療録(甲4)の,平成17年7月13日欄に,「風邪をひいて3日間休んだ。」,「原因は分からないけれど・・・学校いきたくないと思ったり」と記載されている。

ソ 診療録(甲4)の,平成17年7月20日欄に,「あれから学校にいっていない」,「B君の事-5~6月の話」,「すれちがう時にB君にかたをぶつけられた」,「この事があって給食がたべられなくなったのかな・・・と」,「この時のB君の顔が小学校時代のこわさを思い出して・・・」,「C君は私の同級生に私が不登校になったのは俺のせいといっていて・・・」と記載されている。

タ 診療録(甲5)の,平成17年7月20日欄に,「5月ころB君が給食当番の時,肩をぶつけてきた。それ以後,給食がたべられなくなった。」と記載されている。

2  本件各証拠のうち上記事実認定に反する部分は採用しない。本件は,原告から長期間多数回にわたるいじめの主張があること,客観的証拠に乏しいこと,供述証拠は体験時から相当期間経過後になされてたものが多いこと,各供述証拠間でも食い違っている点が多いことなどの諸事情があるところ,関係各証拠を総合的に照らし合わせ,直接経験したことに基づく供述や伝聞とはいうものの全く利害関係のない第三者というべき医師が作成した診療録(甲4,5)の記載等を中心にして信用性の優越する部分を採用した結果,上記のとおりの事実認定を行ったものである。

3  検討

前提事実及び認定事実を踏まえ,以下検討する。

(1)  争点①(被告子供らが原告に対し損害賠償責任を負うか。)について

ア 特定の者に対し,一定の者が継続的に物的・身体的・精神的に被害者が嫌だと感じる行為,いわゆるいじめをしている場合,不法行為が成立することがあると解されるが,そのためには,被害者が苦痛を受けるという損害だけでなく,加害者に故意・過失が必要であるし,違法性も必要となる。ところで,子供の成長過程や,学校教育では,身体的・精神的な衝突はほぼ必然的に生じるものであるし,健全な発育のためには身体的・精神的な衝突はむしろ必要とさえ考えられる。また,子供は精神的に成熟していない以上,責任能力の有無にかかわらず,相手がどの程度のことをされると耐えられないほどの苦痛を感じるのか分からないこともある。したがって,外形的にいわゆるいじめというような行為があったとしても,加害者との関係では,直ちに不法行為が成立するほどの違法性があることにはならず,軽微ならざる加害行為を行った場合や,被害者が明確に拒否をしているにもかかわらず執拗に加害行為を継続している場合,保護者や教師から厳格な注意を受けたにもかかわらず依然として注意に背き加害行為を行った場合など,加害行為が相当程度強いときに,不法行為が成立する実質的な違法性があることになるというのが相当である。

イ まず,被告子供らや原告の関係を全般的に論じると,5年1組では男子と女子が対立的な状態であり,被告子供らは原告だけでなく他の女子に対しても悪口や叩くなどの行為を行っていたこと,原告も被告子供らに対し言い返したり叩き返したりしていたこと(甲4の平成16年9月1日欄,被告子供らの各供述),原告は人前では泣かないようにしていたこと(原告本人)などの事実を考慮すると,本件話し合い前の加害行為は,その程度が強いとはいいがたい。さらに,本件話し合いの際に,お金の返金や,謝罪が行われ,Fや被告両親らも解決したと感じていたのであるから,一層加害行為の違法性は弱まるというべきである。一方,本件話し合いにより,被告Aや被告Cに対して,原告は被告Aや被告Cの行為により苦痛を受けていたことが伝えられ,教師や両親からの注意があったのであるから,被告A及び被告Cは,その後注意に背いて原告に対し加害行為を加えるようなことがあれば,不法行為が成立する実質的な違法性を帯びやすいというべきである。また,被告Bについては,金銭のやりとりに関して,その後同様の加害行為を行った場合,不法行為が成立する実質的な違法性を帯びやすいというべきである。さらに,継続的不登校①になってからは,被告子供らは本件文書を作成したり,GやHから事実確認を受けたりしているのであるから,より一層軽微な加害行為であっても不法行為が成立する程度の違法性を帯びやすいというべきである。

以上を踏まえて,まずは被告子供らの個別の責任を検討し,その後共同不法行為について検討する。

ウ 被告Aについて

(ア) 被告Aは,本件話し合いの前に,鉛筆ズボン事件,鉛筆刺突事件,悪口を言ったり叩いたりする件,朝会事件,本件金銭事件などがあるが,いずれもそれ自体加害行為の程度が強いとはいえないし,原告からの明確な拒否や,保護者や教師からの厳格な注意があったとは認められない。本件話し合いの存在や,その際に被告Aは謝罪し,原告から友達であるといって許しを得ていることも考慮すると,本件話し合い前に被告Aが原告に対して行った行為は,いずれも不法行為が成立するほどの実質的な違法性があるとはいえない。

(イ) 本件話し合い後に起きた,絵の具事件については,被告AがVの行動を予見していたとは認められず,予見し得たとも認められないから,被告Aが故意・過失によって原告に対し加害行為を行ったとはいえない。さらに,その後,被告Aの保護者から商品券3000円の交付及び謝罪文の交付による謝罪が行われていることも考慮すると,不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(ウ) 本件給食事件については,原告が形式的ではあっても本件規則②に違反したことは事実であるし,原告が違反したことについて被告Aの作為があったとは認められない。そして,その後被告Aが原告の机を廊下に運ぼうとしたことや,被告Aが被告Cに見逃してくれと言ったことは,原告に対する直接の加害行為とはいえない。したがって,このことも不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(エ) 被告Aは原告に対し本件話し合い後も悪口を言っていたと認められるが,頻度は多かったとは認められないこと,悪口の言い方や文脈が不明であること,G供述や被告Am供述に照らし,原告を害する意図で殊更に悪口を言ったとは認めがたいこと,原告が明確に拒否したとは認められないことなどの事情を考慮すると,このことも不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(オ) また,被告Aの原告に対する上記個々の行為や,その他本件で証拠上認められる被告Aの行為をまとめて考慮しても,不法行為が成立するほどの実質的な違法性があるとはいえない。

(カ) よって,被告Aは,原告に対し,不法行為責任を負わない。

エ 被告Cについて

(ア) 被告Cは,本件話し合いの前に,原告の持ち物を取って被告Aと投げ合った件,悪口を言ったり叩いたりした件,朝会事件,社会科見学事件,給食足蹴事件,本件金銭事件などがあるが,いずれもそれ自体加害行為の程度が強いとはいえないし,原告からの明確な拒否や,保護者や教師からの厳格な注意があったとも認められない。本件話し合いの存在や,その際に被告Cは謝罪し,原告から友達であるといって許しを得ていることも考慮すると,本件話し合い前に被告Cが原告に対して行った行為は,いずれも不法行為が成立するほどの実質的な違法性があるとはいえない。(なお,階段から突き落とした件が仮にあったとしても,本件話し合いの際に原告が指摘していないこと,Fが知ってからも本件訴訟まで指摘していないこと,本件話し合いがあったことなどを考慮すると,このことも不法行為が成立するほどの違法性があるとまではいえない。)

(イ) 本件給食事件については,原告が本件規則②に違反したことについて被告Cの作為があったとは認められないし,原告が形式的にではあっても本件規則②に違反したことは事実であるから,本件規則②の内容と異なり一度原告が話をした時点で廊下に出るよう言ったり,被告Cの言い方が不適切であったり,机を図書室の前まで運んだりしたとしても,このことも不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない(なお,仮に被告Cが原告の机を図書室の中まで運んだとしても,原告とともに本件規則②に違反したKも廊下に出されていて,原告の机を離した場所に置く必要性がないとはいえないこと,原告がなかなか机を出そうとしなかったことなどを考慮すると,このことも,不法行為が成立するほどの違法性があるとまではいえないというのが相当である。)。

(ウ) 被告Cは原告に対し本件話し合い後も悪口を言っていたと認められるが,頻度は多かったとは認められないこと,悪口の言い方や文脈が不明であること,G供述や被告Cm供述に照らし,原告を害する意図で殊更に悪口を言ったとは認めがたいこと,原告が明確に拒否したとは認められないことなどの事情を考慮すると,このことも不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(エ) また,被告Cの原告に対する上記個々の行為や,その他本件で証拠上認められる被告Cの行為をまとめて考慮しても,不法行為が成立するほどの実質的な違法性があるとはいえない。

(オ) よって,被告Cは,原告に対し,不法行為責任を負わない。

オ 被告Bについて

(ア) 被告Bは,本件話し合いの前には,悪口を言った件や,本件金銭事件があるが,いずれもそれ自体加害行為の程度が強いとはいえないし,原告からの明確な拒否や,保護者や教師からの厳格な注意があったとも認められない。本件話し合いの存在や,その際原告は被告Aや被告Cを友達と言い,ひとまず解決がされていることを考慮すると,本件話し合い前に被告Bが原告に対して行った行為は,いずれも不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(イ) 被告Bは,本件話し合い後,給食食器事件や原告の体型等の悪口を言った件など,加害行為をしたが,被告Bの行為自体さほど強い加害行為とはいえないこと,本件話し合いで被告Bはいじめについては個別的な注意を受けていないこと,本件話し合い後原告の明確な拒否や教師や親からの厳格な注意があったとも認められないことなどから,このことも,不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(ウ) 本件給食事件については,被告BはKとの間で窓を開け閉めしているが,泣いている原告をクラスの仲間にさらす意図で行ったとは認めるに足りないから,このことをとらえて原告に対する加害行為を行ったとはいえない。

原告は形式的でも本件規則②に違反していることや,それに被告Bの作為があったとは認められないことも考慮すると,不法行為が成立するほどの違法性も認められない。

(エ) 廊下接触事件については,肩がぶつかるという接触態様であること,このころ他に被告Bが原告に対し加害行為をしたとは認められないこと,原告が継続的不登校②になったのは廊下接触事件から2か月ほど後であることなどの事情や,これを否定する被告B供述を考慮すると,この行為自体を被告Bが故意に行ったとは認められない。

(オ) また,被告Bの原告に対する上記個々の行為や,その他本件で証拠上認められる被告Bの行為をまとめて考慮しても,不法行為が成立するほどの実質的な違法性があるとはいえない。

(カ) よって,被告Bは,原告に対し,不法行為責任を負わない。

カ 共同不法行為について

(ア) 本件話し合い前については,鉛筆ズボン事件や鉛筆刺突事件,本件金銭事件のうちオーバーヘッドシュートの件等,被告A及び被告C又は被告A及び被告Bが共同して原告に加害行為を行ったといえる部分があるが,それらはいずれも上記のとおり不法行為が成立するほどの違法性があるとはいえない。

(イ) 本件話し合い後に被告子供らが共同して行った行為としては,本件給食事件があるが,被告子供らの共謀を認めるに足りる証拠はないし,被告子供らの個々の行為も不法行為が成立するとはいえないから,共同不法行為も成立しない。

(ウ) その他,本件話し合い後に被告子供らは各自悪口や,絵の具事件,給食食器事件などを行っているが,いずれも被告子供らの共謀を認めるに足りる証拠はないし,個々の行為も不法行為が成立するとはいえないから,共同不法行為は成立しない。

キ 以上により,被告子供らはいずれも原告に対し不法行為責任を負わない。

(2)  争点②(被告両親らが監督義務不履行により原告に対し損害賠償責任を負うか。)について

争点①のとおり,被告子供らにはいずれも不法行為が成立しないから,被告両親らにも監督義務違反は成立しないというべきである。

(3)  争点③(被告さいたま市が安全配慮義務違反により原告に対し損害賠償責任を負うか。)について

ア 学校は,保護者の委託を受けて子供を教育する責務を負い,保護者から受託した子供につき,教育するだけではなく,学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における子供の安全を確保すべきという安全配慮義務を負っていると解される。いわゆるいじめがあった場合,加害者となった者に不法行為責任が認められるか否かとは別に,学校が適切ないじめの防止策や,いじめが起きた後の適切な対処を行わなかった場合には,安全配慮義務違反の不法行為により,被害者に対し損害賠償義務が生じることがある。

イ そこで本件について本件小学校の対応に過失があるか検討する。

(ア) 本件金銭事件以外の本件話し合い以前の行為について見ると,鉛筆刺突事件や朝会事件の存在をGが認識していたと認められるが,朝会事件についてはGは注意をしていること,原告からいじめられているという訴えがあったわけではないこと,それぞれの行為自体違法性が高いとはいえないこと,本件話し合いをしたことなどから,本件小学校の対応に過失があるとはいえない。

(イ) 本件金銭事件については,Gは速やかに関係児童から事情聴取を行い,校長や教頭,生徒指導主任などに相談し,本件話し合いを開き,ひとまずの解決をしているから,本件小学校の対応に過失があるとはいえない。

(ウ) 本件話し合い後,原告の継続的不登校①までは,本件話し合い後に原告やFから席替えやクラス替え等の要望がなかったこと,Gは原告と被告A及び被告Cが同じ班にならないように配慮していること,Gは原告や被告子供らの様子を以前よりも注意して見ていたこと,個人面談の際に本件給食事件のことを知らせていることなどの事実からすれば,本件小学校は必要な措置を講じているといえる。また,原告やF,その他の児童や保護者,児童相談所等から本件小学校に対して原告がいじめられているという報告がされたとは認められないこと,Fも原告がいじめられていたとは思っていなかったことなどの事情があるし,その他本件小学校が原告がいじめられている事実やその兆候を看過したと認めるに足りる証拠はない。さらに,絵の具事件についての,基本的に当事者に任せるという対応も,結果的に解決できていることも考慮すると,不適切とはいえない。S校長は,Hに対し,原告の件をいじめ事件として引き継がなかったことについても,本件金銭事件は本件話し合いで解決済みであり,絵の具事件も解決していたことを考慮すると,不適切とはいえない。したがって,本件小学校に過失があるとはいえない。

(エ) 継続的不登校①となってからは,原告が欠席した当日にGはFから名指しされた被告子供らの事情聴取を行い,6年1組の児童に本件文書を書かせ,その他関係が疑われる児童から事情聴取を行うとともに,毎日のように原告宅へ訪問や電話をするなどし,本件規則②を廃止し,原因究明・不登校原因の除去・原告の登校促しを行っている。さらに,Fからの要望に応じて,Fやその婚約者の立ち会いの下,被告子供らから事情聴取を行っていること,Fや原告からクラス替え等の要望があったとは認められないこと,原告自身は継続的不登校①となってからもGや女子の友達,被告B等と仲良くしていて学校に来たくないようには見えなかったこと,原告の父の病気,Fの再婚,福島への引越等原告の家庭にも不登校の原因が疑われたこと,被告子供らの行為の違法性が高いとはいえないことなども考慮すると,本件小学校は可能な範囲で原告の不登校を解決しようとしてきたといえ,本件小学校の対応には過失があるとはいえない。

なお,継続的不登校①が始まった初日にGがクラス全員に不登校のことを話した点については,これにより大事になって原告が登校しづらくなる要因となることも否定できないが,本件文書により原告の登校意欲を高める可能性もあったのであるから,不適切とまではいえない。また,Hは,Fからの要望のうち,被告子供らの保護者,特に父親からの事情聴取については,頑なに拒んでいるが,事実が十分分からないうちに相手の保護者に話をするとかえって大事になってよくないという考え方も不合理ではなく,これをもって過失があるとはいえない。事実確認に要した時間も,関係者が多数であり,言い分も食い違っていたから,不相当に遅延しているということもできない。

(オ) 本件規則については,給食時には食べることに集中するというのも一つの教育方法といえること,本件規則②は子供達が自主的に定めたものであること,給食の際はGも教室内にいたため行き過ぎは抑えられたこと,原告以外に泣いた児童がいたとは認められないこと,Wが本件文書において原告に登校を勧める理由として給食を挙げており,給食が苦痛という雰囲気ではなく,原告が給食時にいじめられているようには見えなかったと窺われること,最終的に本件規則②は廃止していることなどから,その制定や運用に過失があるとはいえない。

(カ) Gが,Fから本件規則に対し抗議されたところ,むかつくと言ったことやFとの個人面談の際に原告がナイーブなせいか泣いた旨発言したことなどは,Gが原告に対して適切な対応を十分していなかったことを窺わせるが,このことが直ちに本件小学校に過失があることにはならない。

(キ) 本件小学校は本件アルバムに原告やFの承諾なく合成した写真を掲載し,文集部分は白紙としたが,GやHは何度も原告やFと卒業アルバムについて話をしてきたこと,HやGが原告の将来のことを考えると原告自身の写真の載った卒業アルバムがあった方がよいと判断したことにも合理性があること,原告が文集を掲載しようとした場合のために空きを確保しておく必要があったと考えられることなどからすると,このことも過失があるとはいえない。

(ク) その他,本件小学校の対応で過失があるというべき事実は認められない。また,上記事実を全体として見ても,本件小学校に過失があるとはいえない。

ウ よって,本件小学校の対応には過失がないから,被告さいたま市は原告に対し不法行為責任を負わない。

第4結論

以上のとおり,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 片野悟好 裁判官 岩坪朗彦 裁判官 佐久間隆)

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