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さいたま地方裁判所 平成18年(ワ)892号 判決 2007年12月21日

主文

1  被告は,原告に対し,231万8360円及びこれに対する平成16年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを17分し,その15を原告の,その余を被告の負担とする。

4  この判決は,第1項につき,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1  被告は,原告に対し,1974万5416円及びこれに対する平成16年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

第2事案の概要

1  本件は,原告が,勤務先の同僚であった被告から,いわゆるセクシャルハラスメント(以下「セクハラ」という。)の被害に遭ったために精神的苦痛を被り,上記被害のショックのために勤務先を退職せざるを得ない状況に追い込まれたなどと主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料,治療費,逸失利益等の合計2487万0270円のうち1974万5416円及びこれに対する不法行為後の平成16年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2  争いのない事実等(証拠により認定した事実については,その末尾の括弧内に証拠を掲げる。)

(1)  当事者

ア 原告(昭和51年1月7日生まれ)は,看護師の資格を有し,平成16年1月当時,A株式会社(以下「A社」という。)本社に勤務していた者である。

原告は,平成15年12月,Bと婚姻した。

イ 被告(昭和35年6月15日生まれ)は,平成16年1月当時,A社の社員であり,A社のエンドクリノロジー営業部神奈川甲信エリアに勤務し,医師等に対し,医薬情報を提供する職務(以下「MR」という。)に就いていた者である。

被告は,婚姻しており,妻との間に娘が2人いる。

ウ 原告と被告は,平成15年10月ころから,継続的に2人で医師等の営業先に出向き,A社の製品である医薬品の営業を行っていた。

(2)  本件行為の発生

原告と被告は,平成16年1月22日,自動車に乗って得意先の病院を訪問した。

営業の仕事が終わった後,被告は,自動車の助手席に原告を乗せて運転中,信号待ちのために停車した際,シートベルトをした状態の原告に対し,横から身体を近づけ,キスをしようとしたが,原告が頬に手を当てて助手席の窓側に顔を向けたため,原告の手の甲に口を付けるにとどまった(以下,この被告の一連の行為を「本件行為」という。なお,本件行為の概要については当事者間に争いがないが,被告の行為態様については,後記のとおり当事者間に争いがある。)。

(3)  本件行為後の事情

ア 原告は,平成16年1月29日,A社のセクハラ相談窓口である人事統括部労政部の担当職員に対し,本件行為に関し,セクハラの被害に遭った旨を申し立てた(甲9)。

イ 被告は,A社社内における調査等の際,A社の担当職員に対し,本件行為に及んだことを認め,A社社内の懲罰委員会が同年3月17日付けで決定した,山形への転勤,部署変更,1年間の昇給禁止等の処分に従い,同年4月1日に山形へ転勤した。

ウ 被告は,原告に対し,A社を通じて,平成16年3月付けの謝罪文(甲1)を交付した。

エ 原告は,平成17年11月12日付けでA社を退職した。

3  争点及び当事者の主張

(1)  事実経過(争点1)

ア 原告の主張

(ア) 被告は,本件行為の前にも,原告に対し,「かわいいなX(原告の旧姓)は。」と言って頭を撫でたり,「温泉やスキーに2人で行こう。」などと言うことがあったので,原告は,被告を警戒していた。

(イ) 原告は,平成16年1月22日,被告と2人で得意先の病院を訪問した際,同病院の玄関先で,突然,被告から「寒いな。」と言われて肩を抱かれた。原告は,突然の出来事に驚いたが,その時は冗談だと思い,我慢した。

(ウ) 上記の訪問後,被告は,原告を自動車の助手席に乗せて運転中,原告に対し,原告の夫の収入を尋ねたり,夫との夫婦生活に興味を示して「すぐに子供ができるだろう。」と言ったりしたので,原告は,被告に嫌悪感を覚えた。原告は,被告との会話を打ち切るため,「おじいさんとおばあさんのような生活ですよ。」と外を向いて答えた。

すると,被告は,信号待ちのために停車中,「じゃ,僕とキスしよう。」と言って,シートベルトをした状態で身動きのできない原告に対し,いきなり顔を近づけてのしかかり,キスをしようとした。原告は,大声を上げ,必死で口をかばったが,被告は,さらに原告に近づき,原告の手の甲に口を付け,原告の頬に顔を付けた。

原告は,被告に対する恐怖感と嫌悪感で一杯になり,被告に対し,「これってセクハラですよね。」と言って抗議したが,被告は,「Xとキスができた。」などと笑いながら平然と言い,謝罪しなかった。

イ 被告の主張

(ア) 原告の主張(ア)は,原告が被告を警戒していたとの点を除き,認める。

(イ) 原告の主張(イ)は,認める。ただし,これは,原告が「寒~い。」と言ったので,被告が,駐車場の車まで走ろうと促す趣旨で原告の右肩に軽く右手を回しただけであり,肩を強く抱きしめたわけではない。

(ウ) 本件行為の概要については認めるが,被告の行為態様は以下のとおりであった。

すなわち,被告は,原告に対し,横から体を近づけたが,のしかかってはいない。被告は運転中でシートベルトをしており,そこまでの行動は取れない。被告が原告にキスをしようとした際,原告が声を出したことは認めるが,被告がひるむほどの大声ではなかった。また,原告は,助手席の窓側に顔を向け,両手で右頬を隠していたため,被告は,原告の手の甲に口を付けたが,頬に顔を付けてはいない。

(2)  損害額及び因果関係(争点2)

ア 原告の主張

原告は,本件行為により,次の損害を被った。

(ア) 慰謝料  500万円

原告は,本件行為当時,婚姻後1か月という幸せな時期であったにもかかわらず,被告の心ない行為により,著しい精神的苦痛を受け,医師から,心的外傷体験による心因反応との診断を受けた(甲2)。また,原告は,被害のショックによりA社を休職せざるを得なくなり,回復の見込みが立たないため,平成17年11月12日付けでA社を退職するに至った。

原告は,現在も,過食,不眠,頭痛,慢性的な手足の痛み等の身体症状のほか,男性に対する恐怖感に苛まれている。また,毎日抗うつ剤を服用しているため,妊娠することを控えざるを得ない。

被告は,本件行為後,原告に対し,A社を通じて謝罪文(甲1)を届けたのみであり,本件提訴に先立って原告代理人が連絡した際も,「原告が被告に対して好意的な言動をしていた」などと事実と異なる回答をするなど,謝罪の意が全く感じられない不誠実なものであった。

こうした事情を考慮すれば,原告の受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる額は500万円を下らない。

(イ) 治療費  183万4620円

原告は,本件行為により心身に不調を来し,その治療のため,心療内科等に通院することを強いられた。平成18年末までの治療費損害額合計は183万4620円である。

(ウ) 逸失利益  1653万5650円

原告は,被告の本件行為により休業及び退職を強いられた。その逸失利益は,少なくとも1653万5650円を下らない。

(エ) 弁護士費用  150万円

原告は,本訴提起を原告代理人に委任し,弁護士費用の負担を余儀なくされた。弁護士費用150万円が被告の不法行為との間に相当因果関係のある損害というべきである。

(オ) 以上(ア)から(エ)までの合計2487万0270円のうち,1974万5416円及びこれに対する不法行為後の平成16年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

イ 被告の主張

原告の主張は,否認し,争う。

(ア) 被告は,本件行為直後から,セクハラ行為を行ったことを認め,平成16年3月にはA社を通じて原告に謝罪文を送り,原告代理人からの通知に対しても,自ら文書で回答して反省の態度を示すとともに,賠償の意思があることを述べている。

(イ) また,被告の行為は,軽微かつ一時的なものであることからすれば,仮に,原告に原告主張の症状が表れ,治療費が生じたとしても,本件行為との間に相当因果関係がない。

(ウ) さらに,本件行為当時,原告は埼玉,被告は長野にそれぞれ勤務・居住しており,営業に同行する時だけ,原告が長野に出張していただけであり,本件行為後,原告がA社における勤務を継続することには支障がなかったのであるから,原告が退職したことと本件行為とは無関係である。

(エ) 以上の事情によれば,被告が原告に対して支払うべき慰謝料の額は,50万円が相当である。

(オ) また,被告は,原告に対して慰謝料として50万円の支払う旨打診しており,訴訟外で解決可能であったにもかかわらず,原告は,金額が少ないとして本件訴えを提起し,過大な請求をしているものであるから,弁護士費用を損害として認めることはできない。

第3当裁判所の判断

1  争点1(事実経過)について

(1)  前記第2・2の争いのない事実等に加え,証拠(甲9,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。

ア 本件行為に至る経緯

(ア) 本件行為当日まで

原告と被告は,平成15年10月ころから,一緒に営業を回るようになった。その回数は3回程度であったが,被告は,原告が婚約していることを知りながら,原告に対し,「スキーに行こう。」,「温泉に行こう。」などと言って被告との男女関係を意識させる発言をしたり,冗談半分にキスを求めたり,原告の新婚生活のことや,原告や夫の収入などのプライベートな事柄を興味本位に質問したりし,時には,原告の意思に反して,原告の頭を撫でることもあった。

被告は,インテグリティ(社員行動指針)に反してもしっぽを捕まれないようにうまくやるなどという発言をしたこともあった。

原告は,被告の言動に不快感や嫌悪感を募らせ,被告を警戒していたものの,MRと看護師という立場の違いもあって,強い抗議行動に出ることも躊躇していたことから,被告が娘のように自分を扱っているものと思うようにして,我慢していた。

(イ) 本件行為当日(平成16年1月22日)

原告は,平成15年12月に結婚し,平成16年1月中旬に仕事に復帰し,結婚を機に,希望にあふれた気持ちで心機一転頑張ろうとしていたころであった。原告は,平成16年1月22日,本件行為前,被告から,自動車に乗るため駐車場に行く途中で,突然肩に手を回され体を触れられるということがあった。原告は,被告から体を触られるのを避けるため,被告の背に手を回し,「ハイハイ」と言って背中を軽くたたき,被告を牽制した。

イ 本件行為

営業先の病院からの帰路,原告と被告は,1台の車に同乗し,被告が運転席(右)に座って運転し,原告は助手席(左)に乗っていた。

被告は,原告が新婚であったことから,原告の新婚生活について「すぐにでも子供ができる。」などと話をしたところ,原告は,「おばあさんみたいな生活です。」と言って顔を窓側に背け,被告の話に取り合わない姿勢を見せた。その後,信号待ちで停車中,被告は,「じゃ,僕とキスしよう。」と言って,シートベルトをしたまま,上半身を原告の側に倒すようにして原告にキスをしようとした。原告は両手で顔面を隠して,被告の顔面が触れないように防ぎ,「きゃー」と大声で叫んだが,被告は,そのまま顔を近づけて,原告の手の甲に顔を接触させた。原告は,「これってセクハラですよね。」と抗議したが,被告は,「Xとキスできた。」と言って謝罪せずに笑みを浮かべていた。

(2)  上記認定の事実によれば,被告は原告に対して,本件行為に至るまで,被告との男女関係を意識させる発言や,新婚生活や妊娠に関する発言を数回にわたって行っていることが認められる。このような発言が女性である原告に嫌悪感や羞恥心を覚えさせるものであることは多言を要しない上,本件では,原告は,そのような発言をまともに取り合わず受け流していたというのであるから,このような原告の反応を見れば,被告は,原告がこれらの話題を嫌悪していたことを当然認識するべきものであった。

本件行為は,上記のような経緯の下で,被告が原告に対してキスを求め,原告が大声を上げて顔を両手で塞いで明確に拒絶する態度を見せているのに,敢えて被告の口を原告の手に接触させているものである。被告は,原告が自分に好意を持っていると勘違いし,原告に対する愛しい感情が高ぶって気持ちが抑えられなかったなどと供述しているが,本件行為が一方的で無神経な行為であることは疑いようがないのであり,原告の人格権を侵害する不法行為に当たるというべきである。したがって,被告は,原告に対して,本件行為によって原告に生じた損害を賠償する責任があるというべきである。

2  争点2(損害及び因果関係)について

(1)  原告は,本件行為による損害として,慰謝料,治療費,逸失利益等を請求するが,慰謝料請求は,本件行為により原告に心因反応の症状が生じ,退職を余儀なくされたことなどを前提とする請求であるため,以下,慰謝料について検討する前に,治療費及び逸失利益について検討する。

(2)  治療費について

ア 原告に生じた症状

原告は,本件行為によって抑うつ状態,心因反応を患ったと主張し,それを裏付ける診断書(甲2,甲3,甲16,甲17)を提出している。

証拠(甲2,甲10~甲12,甲16~甲20,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告には,本件行為をきっかけにして,思考・運動制止,興奮,憂うつ気分,希死念慮,不眠,易疲労性,不安,胃炎,下肢の傷みと歩行困難等の心身症,湿疹や皮膚の過敏等の症状が出ていることが認められる。しかしながら,本件行為自体はごく短時間のことであり,行為態様もそれほど激しいものではないから,本件行為によって上記のような重篤な症状が出ることは,通常生ずべき結果とはいえない。

イ そこで,被告が,本件行為によって,原告に上記症状が発生することを予見し又は予見することができたか否かを検討することとする。

(ア) 本件行為に至る事情について

上記1(1)アで認定した事実によれば,原告は,本件行為に至るまで,既に内心では被告に対する不愉快な思いや被告と一緒にいることのストレス等の様々な思いを抱えていたものと推認される。また,原告は,本件行為当日も十分に不快な思いが積み重なっていたものと推察される。被告は,これら本件行為に至る事情について,当然に認識し得たものというべきである。

(イ) 本件行為について

本件行為は,被告が原告に対してキスを求めたものであるが,キスは,軽い冗談でする場合もありうるものの,精神的な繋がりを前提にした重要な行為として捉える者も少なくない。そして,後者の場合には,意に反してキスを迫られることに対しその人が極めて強い嫌悪感を抱くことは容易に想像することができる。このようなセクハラ行為が女性に対して屈辱感や羞恥心を与え,自尊心を傷つけるものであることは明らかである。さらに,被告が,過去にインテグリティに反してもしっぽを捕まれないようにする旨の発言をしていたことがあったことからすれば,原告は,被告からのセクハラ被害が救済されず泣き寝入りせざるを得ないかもしれないという無力感や閉塞感を抱いていたものと推察される。そうすると,既に認定した本件行為に至る経緯の下で,本件行為が行われることは,原告にとって既に蓄積されたストレスや不快感,怒りなどの感情が整理しきれずに精神のバランスを崩す契機となるには十分なものであったというべきである。

このような本件行為に至る経緯,当該行為に対する一般的な感受性を前提とすれば,本件行為が原告に与えた精神的影響は大きく,一時的に原告の精神状態に看過できない影響を及ぼすかもしれないことは一般に予見可能であったものと認めるべきである。

(ウ) 他方,本件では,原告が,本件行為に至るまで,その内心を明確に被告に対して示したということはなく,外見上は,不快に思う気持ちは表していたものの,それが,どの程度根深いものであるかを認識することが被告にとって容易であったとは認め難い。被告と原告は,数回会って営業活動をしたにすぎず,被告が,原告がセクハラ被害に対して特に傷つきやすい女性であることを認識していたという特別な事情も認められない。原告と被告のそれまでの経緯を踏まえても,本件行為が原告に対して,長きにわたり深く苦しめるような著しい精神的衝撃を与えることになることを被告が予見することは困難であったというべきである。

ウ 上記のとおり,被告は,本件行為に至る経緯については当然認識し得たものであるから,本件行為によって,原告に対し,長期にわたり影響が根深く残る著しい精神的衝撃を与えることは予見困難であったというべきであるが,一時的に看過できない精神的衝撃を与えることは予見可能であったというべきであるから,被告は,原告に対して,そのような精神的衝撃が原告の心身に対して通常及ぼす影響に係る損害について賠償責任を負うというべきである。

エ このような観点から,本件においては,原告に生じた症状ないし影響のうち,本件行為に至る事情,本件行為の態様,及び当該行為に対する一般的な感受性を前提として,本件行為が女性に与える精神的影響の限度において本件行為との間に相当因果関係があるものに限って損害を認めるべきである。そして,近年,心療内科の普及等により心理的な問題について医学的アドバイスを受ける機会が増えていること,いったん心身のバランスを失うと回復まで一定の期間を要する場合が多いことなどの事情からすると,本件行為から1年間の心療内科の診療に係る治療費11万8360円(薬代を含む。)については,本件行為との間に相当因果関係のある損害として認めるべきである。

(内訳)

期間  平成16年2月10日から平成17年1月17日まで

a メンタルクリニック  6万1320円(甲22の2)

b 薬局         5万7040円(甲22の12)

合計  11万8360円

(3)  逸失利益について

ア 上記の観点からすると,本件行為によって,原告が退職に至ることが通常起こるべきこととみるのは困難である。また,原告に対するA社の対応策が,原告をさらに精神的に追い詰めることになったり,セクハラ被害を公表したことによって,原告がA社社内で孤立して居場所がなくなり,在職関係が維持できないような事態に陥るなどのことを被告が予見することは困難というべきである点も考慮すれば,A社の社員である被告が,本件行為によって原告がA社を退職せざるを得ない状況になることについて予見可能であったということはできない。

イ したがって,原告が最終的にA社を退職する事態に至ってしまったことは遺憾といわざるを得ないが,被告の本件行為との間に相当因果関係を認めることはできない。

(4)  慰謝料について

本件行為が原告に著しい精神的衝撃を与え,それがもとで原告は心と体の健全なバランスを失い今なお様々な症状に苦しんでいること,幸せなはずの新婚生活が一変し,勤務していた会社も退職するに至ったことなど原告の精神上の苦痛は甚大であったといわざるを得ない。そうすると,そのような重大な結果を予見することは被告にとっても困難であること,被告が外形的な事実関係についてはおおむね争う姿勢を見せておらず,行為を反省して謝罪していることなどの事情を考慮すると,本件行為によって生じた原告の精神的苦痛を慰謝するために支払うべき慰謝料は,200万円とするのが相当である。

(5)  弁護士費用について

本件事案の内容,訴訟の経過,認容額等に照らすと,本件行為との間の相当因果関係を有する弁護士費用相当の損害額は20万円と認めるのが相当である。

第4結論

以上によれば,被告は,原告に対し,本件行為について,治療費11万8360円,慰謝料200万円,弁護士費用20万円の合計231万8360円及びこれに対する不法行為後の平成16年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきことになる。

よって,原告の本訴請求は,主文第1項掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 近藤壽邦 裁判官 河本晶子 裁判官 多々良周作)

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