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さいたま地方裁判所 平成20年(む)B212号 決定 2008年3月17日

主文

本件請求を棄却する。

理由

1  本件請求の趣旨及び理由

(1)  弁護人は,検察官A作成の被告人の取調メモ及び取調ノートについて,刑訴法316条の15第1項7号,8号に基づき,その開示を請求したが,検察官は,上記各号不該当を理由に,開示をしなかった。

(2)  しかし,上記取調メモ及び取調ノートは,いずれも上記各号に該当するから,検察官は,開示をすべき証拠を開示していない。

(3)  よって,上記各証拠の開示を命じることを求める。

2  検討

(1)  一件記録によれば,前記1(1)のとおり,弁護人の類型証拠開示請求につき,検察官において,当該証拠が前記各号の類型証拠に該当しないとして開示をしなかったことが認められる。

(2)  そこで,検察官が作成した被告人の取調メモ及び取調ノートが,刑訴法316条の15第1項7号又は8号の類型証拠に該当するか否かについて検討すると,まず,上記7号の被告人の「供述録取書等」とは,刑訴法316条の14第2号で「供述書,供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したものをいう」と定義されており,上記取調メモ及び取調ノートがそれに該当しないことは明らかである。

(3)  次に,上記8号の「取調べ状況の記録に関する準則に基づき,検察官が職務上作成することを義務付けられている書面であって,身体の拘束を受けている者の取調べに関し,その年月日,時間,場所その他の取調べの状況を記録したもの」については,「取調べ状況の記録等に関する訓令」(平成15年11月5日法務大臣訓令)に定められた「取調べ状況等報告書」がそれに当たると解されるところ,検察官が作成した被告人の取調メモ及び取調ノートは,「取調べ状況等報告書」とは別異のもので,その作成を義務付ける準則も他に存しないから,結局,上記8号には該当しないというべきである。

(4)  そうすると,検察官が,上記各号不該当を理由に,上記取調メモ及び取調ノートを開示しなかったのは,正当ということができる。

3  結論

よって,弁護人の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。

(裁判官 飯田喜信)

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