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さいたま地方裁判所 平成20年(ワ)886号 判決 2013年4月25日

原告

X1株式会社(以下「原告会社」という。)

同代表者代表取締役

X2

原告

X2(以下「原告X2」という。)

上記両名訴訟代理人弁護士

上西浩一

日高章

同復代理人弁護士

波田幸秀

被告

有限会社Y1(以下「被告Y1社」という。)

同代表者取締役

被告

株式会社Y2(以下「被告Y2社」という。)

同代表者代表取締役

Y3

被告

有限会社Y4(以下「被告Y4社」という。)

同代表者取締役

Y10

被告

Y5(以下「被告Y5」という。)

被告

Y6(以下「被告Y6」という。)

被告

Y7(以下「被告Y7」という。)

被告

株式会社Y8(以下「被告Y8社」という。)

同代表者代表取締役

Y10

被告

Y9(以下「被告Y9」という。)

被告

Y10(以下「被告Y10」という。)

被告

Y11(以下「被告Y11」という。)

被告

Y3(平成20年6月3日変更前の名はC。以下「被告Y3」という。)

被告

Y12(以下「被告Y12」という。)

被告

株式会社Y13(以下「被告Y13社」という。)

同代表者代表取締役

上記13名訴訟代理人弁護士

平田達

小松美男

守谷俊宏

田宮彩子

高野良子

主文

1  被告Y1社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y1社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号10)の額を0円と査定する。

2  被告Y2社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y2社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号14)の額を1億4537万8068円と査定する。

3  被告Y4社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y4社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号15)の額を0円と査定する。

4  被告Y5を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y5の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号16)の額を0円と査定する。

5  被告Y6を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y6の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号17)の額を0円と査定する。

6  被告Y7を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y7の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号18)の額を0円と査定する。

7  被告Y8社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y8社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号19)の額を0円と査定する。

8  被告Y9を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y9の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号21)の額を0円と査定する。

9  被告Y10を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y10の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号22)の額を0円と査定する。

10  被告Y11を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y11の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号23)の額を0円と査定する。

11  被告Y3を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y3の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号24)の額を0円と査定する。

12  被告Y12を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y12の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号25)の額を0円と査定する。

13  被告Y13社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y13社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号27)の額を0円と査定する。

14  訴訟費用は、原告らに生じた費用の3分の2と被告Y2社を除く被告らに生じた費用は同被告らの負担とし、原告らに生じた費用の3分の1と被告Y2社に生じた費用はこれを2分し、その1を原告らの負担とし、その余を被告Y2社の負担とする。

事実及び理由

第1請求の趣旨

1  主文第1項、第3ないし第13項同旨

2  被告Y2社を申立人、原告らを相手方とする当庁平成19年(再)第8号債権査定申立事件について同裁判所が平成20年3月11日にした決定を、次のとおり変更する。

被告Y2社の届け出た再生債権(再生債権者表受付番号14)の額を0円と査定する。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

第2事案の概要

1  本件は、原告らが、被告らの訴外株式会社a(以下「再生会社」という。)に対する債権は、民事再生手続における議決権の頭数を水増しし、同手続を有利に進めるという不当な目的で仮装された実体のないものである、又は公序良俗違反に当たるとして、被告らの再生会社に対する再生債権をいずれも0円と査定することを求めた事案である。

2  前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)

(1)  昭和62年7月、訴外E(以下「訴外E」という。)、同F(以下「訴外F」という。)及び原告X2の3名が中心となり、訴外Eを代表取締役とし、訴外F及び原告X2をいずれも取締役として再生会社が設立された。再生会社は公衆浴場及びサウナの経営等を業とする株式会社であり、資本金額は2000万円で、その発行済み株式総数400株に対する保有株式数は、訴外E及びその関係者で構成されるグループ(以下「Eグループ」という。)が180株(45パーセント)、訴外F及びその関係者で構成されるグループ(以下「Fグループ」という。)が140株(35パーセント)、原告X2及びその関係者で構成されるグループ(以下「X2グループ」という。)が80株(20パーセント)であった。

再生会社は、昭和63年12月に開業した埼玉県川口市<以下省略>所在の温浴施設「○○」の経営を主な業務としていた。

(2)  再生会社の事業は「○○」の開業後10数年にわたっておおむね順調であったが、その後、周辺に同業者やスーパー銭湯等が出店し、低迷するようになった。

再生会社は、資本金額2000万円に対し、開業資金等で23億円の長期固定負債を有していたため、株主からの借入れやその個人保証の差入れによる金融機関からの融資等により事業を継続していたが、平成12年頃からEグループが短期間に貸付金の回収をするに至り、資金繰りが急速に悪化し、さらに、Eグループ、Fグループ及びX2グループは、自己債権回収のため、再生会社の経営をめぐり相互に対立するようになった。

(3)  平成14年9月頃、原告X2は再生会社の役員を退任し、一旦再生会社の経営から離脱した(甲52)。

平成16年12月、原告会社は、再生会社に対し、破産手続開始の申立てをした(当庁平成16年(フ)第3812号。以下「第1次破産申立て」という。乙39の1)。平成17年2月7日、原告会社の再生会社に対する債権に基づき、再生会社の動産差押執行がされた(乙39の3)。第1次破産申立ては、同年10月に取り下げられた。

平成18年3月、FグループとX2グループが共同して再生会社の代表取締役であった訴外Eを退任させ、新たに訴外Fが代表取締役に就任し、被告Y9及び訴外G(G1と同一人。以下「訴外G」という。)及び原告X2らが取締役に就任した。しかし、同年秋頃から、再生手続開始の申立てを検討するFグループと法的整理をすべきではないとするX2グループとで方針が対立するようになった。

同年8月25日、12月4日、債権者である被告Y1社が再生会社の動産及び現金(同年8月25日は273万円、同年12月4日は903万2000円)を差し押さえた(乙45、46)。さらに、平成19年3月4日、債権者である訴外Eが再生会社の現金(87万円)を差し押えた(乙47)。

同年4月17日、再生会社は、再生手続開始の申立てをしたが(当庁平成19年(再)第2号。以下「第1次再生申立て」という。甲7)、原告X2は再生申立てに反対した(甲25)。同年5月16日、再生会社から同申立てについて取下許可申請がなされ(甲30)、同月22日、取下許可決定がなされた(甲32)。

同月19日の臨時株主総会において、訴外F、被告Y9、訴外Gらが役員を解任され、訴外E及び訴外Hらが役員に就任し、同月末頃又は同年6月初旬頃開催された臨時株主総会において、訴外F及び訴外Gが取締役に追加された。

同月13日、取締役会において、訴外Fが代表取締役に選任され、代表取締役は訴外F及び訴外Eの2名となり、訴外G、訴外H(以下「訴外H」という。)、原告X2らが取締役となった。

同月29日、Fグループである被告Y2社が再生会社の破産手続開始の申立てをした(当庁平成19年(フ)第1061号。以下「第2次破産申立」という。乙33の1、2)。

同年7月19日、臨時株主総会において、原告X2は取締役から解任された。

同月27日、株主割当増資により再生会社の発行済み株式総数は600株となり、また株式売買により、Eグループの保有する株式合計120株が訴外Gに譲渡され、各グループの持株比率は、Eグループ20パーセント、Fグループ66.7パーセント、X2グループ13.3パーセントとなった。

同年8月10日、原告会社は、再生会社に対し、破産手続開始の申立てをした。

(4)  平成19年9月12日、再生会社は再生手続開始の申立てをした(当庁平成19年(再)第8号。以下「本件再生事件」という。)。

同年10月10日、当庁は、再生手続開始の決定をし、再生債権にかかる一般調査期間を同年12月12日から同月19日までと指定した。

原告らは、届出再生債権者のうち、被告Y1社、訴外F、被告Y2社、同Y4社、同Y5、同Y6、同Y7、訴外G、被告Y9、同Y10、同Y11、同Y3、同Y12及び同Y13社の15名(以下「本件債権者15名」という。)の届出債権全額につき異議を述べた。

(5)  本件債権者15名の届出再生債権の内容は、次のとおりである。

ア 再生債権者表受付番号10被告Y1社

訴外Eの再生会社に対する債権を、平成18年4月17日に1億0243万8000円、平成19年6月18日に2472万3324円、合計1億2716万1324円の債権を譲り受け、うち7716万1324円を同年7月27日被告Y2社に対し譲渡した残額5000万円

イ 再生債権者表受付番号13訴外F

再生会社に対する平成19年3月27日付け貸付金100万円

ウ 再生債権者表受付番号14被告Y2社

(ア) 平成19年3月12日付けで訴外Fの再生会社に対する債権5890万6853円及び被告Y9の再生会社に対する債権1136万4995円、合計7027万1848円を譲り受け、同日再生会社との間で債務弁済契約を締結したもの及びこれに対する利息285万7080円。

(イ) 同月29日付け貸付金6168万6836円

(ウ) 同日付けで再生会社の債権者に対し代位弁済(債権者は訴外b社)した1億4270万円の求償債権及びこれに対する遅延損害金267万8068円

(エ) 同年7月27日付けで被告Y1社の再生会社に対する債権1億2716万1324円のうち譲り受けた債権7716万1324円

(オ) 上記合計は3億5748万9923円である。

エ 再生債権者表受付番号15被告Y4社

平成18年12月19日付け貸付金680万円

オ 再生債権者表受付番号16被告Y5

同日付け貸付金680万円

カ 再生債権者表受付番号17被告Y6

同月21日付け貸付金680万円

キ 再生債権者表受付番号18被告Y7

同日付け貸付金680万円

ク 再生債権者表受付番号19被告Y8社

同月19日付け貸付金800万円

ケ 再生債権者表受付番号20訴外G

平成19年3月27日付け貸付金100万円

コ 再生債権者表受付番号21被告Y9

同日付け貸付金100万円

サ 再生債権者表受付番号22被告Y10

平成18年12月21日付け貸付金680万円

シ 再生債権者表受付番号23被告Y11

同日付け貸付金680万円

ス 再生債権者表受付番号24被告Y3

平成19年3月27日付け貸付金100万円

セ 再生債権者表受付番号25被告Y12

同日付け貸付金100万円

ソ 再生債権者表受付番号27被告Y13社

平成18年12月19日付け貸付金680万円

(6)  平成20年1月18日、本件債権者15名は、再生裁判所に対し債権額の査定を申し立てた。

原告らは、上記異議をのべた各再生債権につき、0円と査定すべきであると主張したが、再生裁判所は、平成20年3月11日、別紙査定額一覧記載のとおり、再生債権者表受付番号13訴外F((5)イ)及び同番号20訴外G((5)ケ)の各届出債権を0円と査定し、再生債権者表受付番号14被告Y2社については(5)ウ(ア)から(エ)までの債権額の合計3億5735万5156円と査定し、その余の12名については届出額のとおり査定した(甲2の1ないし15)。

同年9月12日、再生裁判所は、再生会社の再生計画案を認可した。

3  争点―被告らの届出再生債権の存否及びその額

(1)  被告Y4社、同Y5、同Y13社、同Y8社、同Y6、同Y7、同Y10及び同Y11(以下「被告Y4社ら8名」という。)の債権の存否

(2)  被告Y9、同Y3及び同Y12の債権の存否

(3)  被告Y1社の債権の存否

(4)  被告Y1社からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否

(5)  訴外F及び被告Y9からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否

(6)  訴外b社に対する代位弁済等に係る被告Y2社の債権の存否

4  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1)(被告Y4社ら8名の債権の存否)について

ア 被告らの主張

(ア) 被告Y2社は、再生会社が債務の弁済に窮していたため、平成18年1月20日、再生会社のc銀行に対する300万円の債務を代位弁済した(乙43)。訴外Eが再生会社の小切手を持ち出したため、I弁護士に返還交渉を依頼する費用として原告会社と被告Y2社が63万円ずつ立て替えて支払った(乙44の1、2)。さらに、被告Y2社は、再生会社の必要資金を補うため、同年10月2日に900万円(乙48の1、2)、11月2日に1200万円(乙49)、12月4日に600万円(乙50)をそれぞれ貸し付けた。以上のとおり、被告Y2社は再生会社に対し、同月18日時点で合計3063万円の債権があった。

(イ) 被告Y2社は、自社が経営するパチンコ店の一つが平成18年10月に営業停止120日間の処分を受けたことから、その資金繰りに問題が生じたため、自ら融資を受け別の店舗を売却するほか、再生会社への貸付金を引き上げざるを得なくなった。被告Y2社と再生会社の双方を経営していたFグループは、被告Y2社と再生会社をグループ企業的にみて、全体での資金繰りを考えることにし、再生会社の資金繰りも欠乏していたため、再生会社が不足する資金5500万円を他の被告らから資金提供を受けようとした。

(ウ) 被告Y2社は、上記(ア)のとおり、平成18年12月18日当時、再生会社に対し3063万円の債権を有していたことから、同日当該貸金の返済として再生会社から2720万円を回収した後、被告Y13社、同Y5、同Y8社、同Y4社から現金を預かり、680万0840円ずつの4口に分けて同月19日上記4名から再生会社への貸付として送金した。また、同日、被告Y2社は、再生会社から2720万円を出金し、同月21日に貸付金680万0840円ずつ4口に分けて被告Y6、同Y11、同Y10及び同Y7からの貸付けとして再生会社に送金した(乙1ないし8)。

被告Y8社は、同月27日、120万円を再生会社に貸し付けた(乙20)。

イ 原告らの主張

被告Y2社は、再生債権者の頭数を確保して再生会社の再生手続を有利に進める不当な目的のため、再生会社の自社に対する債務の弁済として再生会社から回収した資金を、被告Y4社ら8名の名義を仮装して再生会社へ送金しており、再生会社を起点・終点として再生会社の資金が還流、循環している。被告Y4社ら8名は実際には出捐しておらず、再生会社への貸付けの実体も返還合意もないものであり、被告Y4社ら8名から再生会社に対する貸付けは、通謀虚偽表示であり、無効である。

また、再生会社及び被告Y4社ら8名の上記行為は、民事再生法255条1項2号又は4号の詐欺再生罪に該当する。さらに、被告らが、被告Y2社が120日間の風俗営業停止処分を受けていたことや、再生会社から多額の借金をしていた事実を本件再生事件において秘匿していたことは、信義誠実義務等に照らして容認できず、公序良俗違反に当たることから、被告Y4社ら8名の貸付けは無効である。

(2)  争点(2)(被告Y9、同Y3及び同Y12の債権の存否)ついて

ア 被告らの主張

第1次再生申立ての直前である平成19年3月、再生会社の資金繰りが逼迫しており、同月末の訴外d株式会社に対する548万0160円の支払ができない状態であったことから、訴外F、同G、被告Y9、同Y3、同Y12が100万円ずつ再生会社に貸し付け(乙9ないし11)、家長である訴外Fが上記貸付金をまとめて被告Y2社に入金し、被告Y2社が再生会社への送金手続を代行したもので、貸付けの実体があり、再生手続の頭数確保目的の迂回融資ではない。なお、出捐の事実を明確にするため、銀行送金を利用し、また、送金手続も各人が行うのは煩雑であるから、被告Y2社がまとめて行った。

イ 原告らの主張

被告Y2社は、再生債権者の頭数を確保して再生会社の再生手続を有利に進める不当な目的のため、再生会社の資金である500万円を同社の代表者である訴外Fから受領し、同人の指示により100万円ずつ被告Y9、同Y3、同Y12、訴外F、同Gの5名に分けて再生会社に送金し、再生会社への貸付けを仮装した。上記5名は実際には出捐しておらず、再生会社への貸付けの実体も返還合意もなく、同貸付けは、通謀虚偽表示であり、無効である。

また、上記5名の行為は、民事再生法255条1項2号又は4号の詐欺再生罪に該当し、公序良俗違反に当たることから、同人らの貸付けは無効である。

(3)  争点(3)(被告Y1社の債権の存否)について

ア 被告らの主張

平成15年3月13日に成立した原告らと再生会社との間の訴訟上の和解により、再生会社は資金難に陥り、c銀行に対する月額1000万円の返済が滞るようになり、埼玉県信用保証協会が再生会社のc銀行に対する合計約1億1120万円の債務を代位弁済した(乙40の1、2)。また、再生会社に対する債権をe生命から譲り受けた訴外b社に対する月額285万円の返済が停止した(乙41)。

再生会社の代表取締役であった訴外Eは、平成17年6月13日、c銀行に対する再生会社の債務9710万円及び訴外b社に対する再生会社の債務1710万円を代位弁済し(乙12)、再生会社に対し求償権を取得した(乙15)。また、訴外Eは、昭和62年7月16日から平成12年7月30日までの利息残金として、平成18年2月24日の時点で5647万2922円の債権を有していたところ、これについて債務弁済契約を締結した(乙16)。

上記合計1億7067万2922円の債権が訴外Eから被告Y1社に譲渡され、再生会社と被告Y1社との間で、平成19年7月27日、残金1億2716万1324円の債務があることが確認された(乙42の1)。

そのうち7716万1324円の債権が被告Y1社から被告Y2社に譲渡されたから、被告Y1社は再生会社に対し、残額5000万円の債権を有する。

イ 原告らの主張

訴外Eは、平成17年当時、f会館の屋号でパチンコ店を営んでいたが、同会館が破綻状態にあったことからこれを法人化することで滞納税金の支払を免れ経営を継続しようとして、同年2月14日、被告Y1社を設立した。同年9月1日、訴外Eは、息子の嫁であるAに被告Y1社の社員権100パーセントを譲渡しているが、同社はその後も実質的には訴外Eの個人会社であった。

訴外Eと被告Y1社間の債権譲渡は、自らの事業が破綻状態にあった訴外Eが、債権者からの追及を免れるため自己が実質的個人会社として支配する被告Y1社名義を利用して財産隠匿を図った仮装譲渡であり、債権譲渡代金800万円も支払われておらず、通謀虚偽表示であり、無効である。

なお、再生会社がなした債務承認は、訴外Eが代表取締役であり、その親族が再生会社の役員であった、いわゆるお手盛りの取締役会決議によるものである。

(4)  争点(4)(被告Y1社からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)について

ア 被告らの主張

(3)アの被告Y1社の債権のうちの7716万1324円を平成19年7月27日に被告Y2社が譲り受けた(乙42の2、3)。

被告Y2社は、再生会社が倒産の危機にあり、法的手続しか処理方法がないと考えたものの、少数株主であることから第1次再生申立てが頓挫し、訴外Fも解任され、破産手続開始の申立てしか方法がなかったところ、真に再生会社の破産手続開始を求める意思で破産手続開始の申立てを行った。その後たまたま被告Y1社と債権譲渡についての交渉が成立したため、債権を譲り受け、本件再生事件の申立てに移行したが、破産申立時からこのような経過を意図していたものではないから、被告Y1社の被告Y2社に対する債権譲渡は公序良俗違反には当たらない。

イ 原告らの主張

(ア) (3)イのとおり、訴外Eと被告Y1社間の債権譲渡は無効であり、被告Y1社には債権は帰属しないため、被告Y2社がこれを承継取得することはない。

そして、被告Y2社の代表者は訴外Fの子である被告Y3であり、被告Y9とともに訴外Fと同居し、同人の指示に従って行動していたものであり、訴外Fは、再生会社が被告Y1社への債権譲渡を承認した平成19年7月27日当時再生会社の代表者であったから、その子である被告Y3も、訴外Eと被告Y1社間で実体のない債権譲渡が繰り返されていたことを熟知していたといえ、被告Y2社は、訴外Eと被告Y1社間の債権譲渡が仮装(通謀虚偽表示)であることについて悪意である。

(イ) 訴外Fは、Fグループ主導による民事再生遂行を目指す意図で、訴外E及び同人が実質的個人会社として支配する被告Y1社が保有する再生会社への債権及び株式を取得するため、自己の長男である被告Y3が代表者を務める被告Y2社が債権者であったことを奇貨として、真実破産手続開始を求める意図がないのに破産手続開始の申立てをさせ、破産手続開始の威嚇の下で、訴外Eらとその関係者の債権・株式を取得し(甲35、36)、被告Y1社から債権を取得したもので、債権譲渡契約は公序良俗違反により無効である。

(5)  争点(5)(訴外F及び被告Y9からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)について

ア 被告らの主張

被告Y2社は、訴外F及び被告Y9が平成15年6月30日当時、再生会社に対して有していた5890万6853円と1136万4995円の貸金債権の譲渡を受け(乙55の1、2、56の1、2)、その元本7027万1848円及びこれに対する弁済期である平成19年3月12日から再生手続開始の前日である同年10月9日まで212日間の利息285万7080円(乙57)の債権を有する。

イ 原告らの主張

(ア) 訴外F及び被告Y9は再生会社に対し貸付債権を有しておらず、被告Y2社がこれを承継取得することはない。残高確認書(乙55の1)は、内容虚偽の文書である。再生会社は、被告Y2社の訴外F及び被告Y9からの譲受分について平成19年3月12日に承認しているが(乙57)、当時の再生会社代表者は訴外Fであるから、被告Y2社の債権の裏付けにはならない。

(イ) 被告Y2社の代表者Y3と訴外Fとの人的関係からすると、被告Y2社は、再生会社に対する債権が無価値であることを認識していたもので、債権譲渡を利用して訴外Fの債権を被告Y2社の債権とすることで裁判所の厳格な調査を回避する意図があったもので、訴外F及び被告Y9から被告Y2社に対する債権譲渡は公序良俗に反し、無効である。

(6)  争点(6)(訴外b社に対する代位弁済等に係る被告Y2社の債権の存否)について

ア 被告らの主張

訴外b社の再生会社に対する債権について、被告Y2社が物上保証していたところ、訴外b社から返済を強く迫られたため、平成19年3月29日、被告Y2社が元本1億4270万円を代位弁済し、再生会社に対する同額の求償権を取得した。この求償権について、被告Y2社は、再生会社との間で、弁済期を同年5月24日、遅延損害金を5パーセントとする債務弁済契約を締結した。

よって、被告Y2社は、再生会社に対し、求償金債権1億4270万円及びこれに対する弁済期の翌日である同月25日から再生手続開始の日の前日である同年10月9日までの年5パーセントの割合による遅延損害金267万8068円(乙13)の合計1億4537万8068円の債権を有する。

また、訴外b社に対する利息・損害金について、被告Y2社が再生会社に6168万6836円を貸し付け、再生会社から訴外b社に支払うこととした(乙14)。

被告Y2社は、再生会社に対し、以上合計2億0888万6836円の債権を有する。

イ 原告らの主張

被告Y2社が再生会社の訴外b社に対する債務の元金部分を代位弁済し、その損害金部分について弁済原資を再生会社に貸し付けたとする金銭の流れを示す証拠はなく、被告Y2社の出捐により、再生会社の訴外b社に対する債務の弁済がなされた事実を認めるに足りる証拠はないから、被告Y2社の債権は仮装されたものであり、0円と査定すべきである。

第3当裁判所の判断

1  認定事実

前提事実、証拠(甲4、5、7、9ないし13、19、21ないし23、35ないし37、40、45、47、48、52、乙1ないし35、39ないし61(いずれも枝番を含む)、証人G、同H、被告Y5、同Y10、原告X2)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1)  人的関係等

ア X2グループ

原告X2は訴外Eと大学の同級生であり、昭和56年8月に原告会社を設立した。原告会社は、電子制御装置、コンピューターの開発設計販売を業とするものである(原告X2・4頁)。

イ Eグループ

訴外Eは、設立当時から平成17年9月29日まで再生会社の代表取締役であった。訴外Eは、以前からさいたま市内において「f会館」の屋号でパチンコ店を経営していたが、同年当時、税金の滞納額が2126万円ほどに及んでいた。訴外Eは、同事業を法人化することによって、経営を継続しようと考え、同年2月14日300万円を出資して被告Y1社を設立し、取締役に就任した。同年9月1日、訴外Eは、被告Y1社の出資持分を300万円で息子である訴外Hの妻のAに譲渡したとして、同人が被告Y1社の代表取締役に就任した。

訴外Eについては、平成19年10月15日、債権者である原告X2の申立てにより当庁において破産手続開始決定がなされ(甲37)、平成23年2月22日に破産手続廃止決定、同年3月15日に免責不許可決定がなされ(不正の手段により破産管財人の職務を妨害したこと、裁量免責も相当ではないことを理由とする。)、同決定は確定した(甲47、48)。

ウ Fグループ

訴外Fは、平成18年3月27日から平成19年5月19日まで及び同年6月13日以降、再生会社の代表取締役であった者である。

被告Y9は訴外Fの妻であり、訴外Eの従姉妹である(甲52)。

訴外G、被告Y12及び被告Y3は訴外F及び被告Y9の子である。

被告Y2社は、被告Y3を代表取締役、被告Y12らが取締役を務める会社であり、平成16年5月31日から平成18年10月25日までの間訴外Fが監査役を務め、その後、被告Y6及び被告Y5が監査役を務めている。訴外Gは、被告Y2社の常務取締役として勤務していた(乙59)。

被告Y4社の代表者取締役及び被告Y8社の代表取締役であるBは被告Y10と同一人であり、訴外Fの親族である。

被告Y13社は、被告Y5が代表取締役を務める会社である。被告Y5は、東京大学を卒業し外資系の金融機関に勤務していた経歴を持ち、平成13年12月頃以降被告Y2社の仕事に関わっており、第1次再生申立ての時点において、民事再生手続について豊富な知識と経験を有していた(被告Y510、15頁)。

この他、被告Y11、同Y7もFグループに属する。

(2)  再生会社における3グループの抗争の経緯等

前提事実記載のとおり、再生会社の資金繰りが悪化するようになり、Fグループ、X2グループ、Eグループは自己の債権回収のため、再生会社経営の主導権を争うようになった。

平成18年3月、X2グループとFグループが共同してEグループを再生会社経営陣から追放したが、その後、X2グループとFグループは再生手続申立てを推進するか否かで対立するようになった。

平成19年4月17日の第1次再生申立ては原告X2の反対により取下げで終わった。

同年6月13日に代表取締役が訴外F及び同Eの2名となり、同年7月19日に原告X2が取締役を解任され、その後同月27日に株主増資及び株式売買によりEグループの保有する株式合計120株が訴外Gに譲渡され、Fグループが主導し、Eグループがこれに協力する形でX2グループを再生会社の経営から排除し、民事再生手続(本件再生事件)を進めていった。

(3)  争点(1)(被告Y4社ら8名の債権の存否)に関する事実

ア 平成18年1月20日、被告Y2社はc銀行に対し、300万円を振込送金した(乙43)。

同年5月18日、再生会社はg法律事務所に対し、「訴外Eに対する交渉着手金」として126万円を振込送金した(乙44の1、2)。

同年9月29日、被告Y2社は訴外Gに対し、1000万円を振込送金した(乙48の1、2)。

被告Y2社は再生会社に対し、同年11月2日、1200万円を振込送金し(乙49)、同年12月4日、599万9160円(振込手数料840円)を振込送金した(乙50)。

被告Y2社は、同年10月27日から平成19年2月23日までパチンコ店「△△」(h店。横浜市<以下省略>。)の営業停止命令を受けた(乙51)。

イ 平成18年12月18日合計2740万9249円が再生会社のi信用金庫j支店の当座預金口座に預け入れられ、同日2720万円が手形又は小切手として引き出され、翌19日、k銀行l支店から再生会社の上記口座に被告Y13社、同Y5、同Y8社、同Y4社を振込人としてそれぞれ680万円が振り込まれ、同日2720万円が同口座から手形又は小切手として引き出された。同月21日にk銀行l支店から再生会社の上記口座に被告Y6、被告Y10、被告Y7、被告Y11を振込人としてそれぞれ680万円ずつが振り込まれ、同日2720万円が同口座から手形又は小切手として引き出された(甲22)。

上記被告Y4社ら8名の各振込受付書の振込依頼人の電話番号欄には、「045-<省略>」と記載されているところ(甲10の1(乙17)、10の2(乙18)、10の3(乙25)、乙19、甲11の1(乙21)、11の2(乙22)、11の3(乙23)、11の4(乙24))、同番号は被告Y2社が契約者であり、被告Y2社が経営する(乙51)パチンコ店「△△」h店の所在する横浜市<以下省略>を設置場所とする(甲13、21)。

同月27日、被告Y8社を振込依頼人、再生会社を受取人として、i信用金庫j支店から同支店の再生会社の当座預金口座に120万円が振込送金された(乙20)。

被告Y2社のk銀行l支店の預金口座に、同月18日、再生会社から2720万円が振り込まれ、同月19日、680万0840円ずつ4口に分けて出金され、同日再生会社から2720万円が振り込まれ、同月21日に680万0840円ずつ4口に分けて出金された(甲45)。

被告Y4社らから再生会社に対する680万円ずつの振込送金については、訴外Gがまとめて送金手続を行った(乙59、訴外G・3頁、6頁)。

同月22日、被告Y2社は、k銀行から4800万円の融資を受けた。(甲45)。

ウ 平成19年3月2日、被告Y4社が平成18年12月19日の金銭消費貸借契約により、再生会社に対し、弁済期日を平成19年12月19日とし、680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認するという内容の債務承認弁済契約公正証書(乙1)、被告Y5が平成18年12月19日の金銭消費貸借契約により、再生会社に対し、弁済期日を平成19年12月19日とし、680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書(乙2)、被告Y6が平成18年12月21日の金銭消費貸借契約により、再生会社に対し、弁済期を平成19年12月21日とし、680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書(乙4)、被告Y7が再生会社に対し、平成18年12月21日の金銭消費貸借契約により、弁済期を平成19年12月21日とし、680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたとする内容の債務承認弁済契約公正証書(乙5)、被告Y10が、再生会社に対し、平成18年12月21日の金銭消費貸借契約により、弁済期を平成19年12月21日とし、680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書(乙6)、被告Y11が再生会社に対し、平成18年12月21日の金銭消費貸借契約により、弁済期を平成19年12月21日として680万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書(乙7)がそれぞれ作成された。上記公正証書は、いずれも同一の公証人役場において同一の公証人により作成されたもので、被告Y4社、被告Y5、被告Y6、被告Y7の代理人はいずれも同一人(J)であり、再生会社の代理人としていずれも訴外Gが列席している。なお、金銭消費貸借契約の利率はいずれも年15パーセント、損害金率は年21.9パーセントである。

平成18年12月25日、上記公証人役場において、被告Y8社が同月19日の金銭消費貸借契約により、再生会社に対し、弁済期を平成19年12月19日とし、800万円を貸し渡し、再生会社がこれを受領して借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書が作成された。被告Y8社の代理人は、前記被告Y4社らの代理人と同一人物であり、再生会社の代理人として前記Y4社らと同様に訴外Gが列席し、金銭消費貸借契約の利率は年15パーセントとし、損害金率は年21.9パーセントと前記Y4社らの債権と同様であった(乙3)。

平成18年12月19日、被告Y13社は、弁済期を平成19年12月19日、利率は年15パーセント、損害金率は年21.9パーセントで680万円を再生会社が被告Y5から借り受けたことを承認する内容の債務承認弁済契約公正証書を作成することについて、上記債権者代理人と同一人物を代理人とし、再生会社は訴外Gを代理人とする委任状が作成された(乙8)。

(4)  争点(2)(被告Y9、同Y3及び同Y12の債権の存否)に関する事実

平成19年3月27日、被告Y2社のk銀行l支店の当座預金口座から「振込資金」として、100万円ずつ5回計500万円が出金された後、訴外Fから同口座に500万円が振り込まれた(甲45)。同日、同支店から、再生会社のi信用金庫j支店の当座預金口座に訴外F、訴外G、被告Y9、同Y3、同Y12を振込依頼人として、各100万円計500万円が振込送金された(甲12の1ないし12の5(乙26ないし乙28))。

この各100万円ずつ5口の送金手続は、訴外Gがまとめて行った(証人G・10頁)。

同月28日、再生会社の上記i信用金庫j支店の当座預金口座に現金で276万7179円が入金され、同月29日に548万1000円が引き出され(甲23)、同日、同支店において、再生会社から訴外d株式会社へ548万0160円が振込送金された(乙31)。

同月27日付けで、被告Y9を貸主とし、再生会社を借主とする、同日100万円を被告Y9から再生会社が借り受け、最終弁済期限は平成19年5月31日、利率は年4パーセント、損害金率は年20パーセントとの金銭消費貸借契約証書(乙9)、被告Y3を貸主とし再生会社を借主とする同内容の金銭消費貸借契約証書(乙10)、被告Y12を貸主、再生会社を借主とする同内容の金銭消費貸借契約証書(乙11)が存在する。

(5)  争点(3)(被告Y1社の債権の存否)に関する事実

再生会社は、平成16年7月5日頃、b社に対する債務(元金1億5980万円)の期限の利益を喪失した(乙41)。

平成17年8月25日、埼玉県信用保証協会が再生会社のc銀行に対する債務3960万3331円と7241万3308円の合計1億1201万6639円を代位弁済した(乙40の1、2)。

平成18年3月1日、訴外Eと再生会社の代理人訴外Hが列席し、公証人役場において、再生会社が、同年2月24日現在、訴外Eに対し、再生会社が訴外株式会社c銀行に対する債務9710万円、b社に対する債務1710万円を訴外Eが平成17年6月13日に代位弁済したことにより再生会社が負担する求償債務金の合計額1億1420万円の債務を負担していることを承認する内容の債務弁済契約公正証書(乙15)及び同日現在、昭和62年7月16日から平成12年7月30日までの間、複数回にわたり締結した利息付金銭消費貸借契約に基づく利息の残債務金である5647万2922円の債務を負担していること(元金は支払済み)を承認する内容の債務弁済契約公正証書(乙16)が作成された。上記各公正証書において、再生会社は訴外Eに対し、同人の請求があったときに債務金全額を速やかに一括して支払うものとし、利息は約定しないものと規定された。

再生会社と被告Y1社との間で、平成19年7月27日付け債務残高確認書(乙42の1)が作成され、同確認書には、再生会社が被告Y1社に対し、平成18年4月17日付けで訴外Eから被告Y1社に譲渡された債権の残高1億0243万8000円及び平成19年6月18日付けで訴外Eから譲渡された債権の残高2472万3324円の合計1億2716万1324円の債務が存在する旨が記載されている。

上記債務残高確認書が作成されたのと同日である同年7月27日に開催された再生会社の取締役会(出席者は訴外F、訴外E、訴外H及び訴外G)において、被告Y1社の有する7716万1324円の債権を被告Y2社に譲渡することを承認する旨が可決され(乙42の2)、被告Y1社は被告Y2社に同債権を譲渡したと再生会社に通知した(乙42の3)。

(6)  争点(4)(被告Y1社からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)に関する事実

平成19年7月27日付けで、被告Y1社が再生会社に対して有する貸付債権のうち7716万1324円分の債権について、被告Y1社を譲渡人、被告Y2社を譲受人、譲渡代金を3100万円とする債権譲渡契約書が作成され、同日確定日付が付された。同契約書において、訴外E及び訴外Hが同債権譲渡契約の売主保証人とされ、訴外E及び訴外Hは、債権譲渡契約成立の条件として再生会社の民事再生手続の遂行にあたり、被告Y2社及び訴外Gに全面的に協力する旨規定された。同契約書には、同日、再生会社が上記債権譲渡を承諾したと記載された。(甲35)

同日、訴外E、訴外H、訴外Kが訴外Gに対し、再生会社の普通株式合計240株を譲渡し、その条件として、訴外E及び訴外Hは、再生会社の民事再生手続の遂行に当たり、訴外Gの意向を尊重し、全面的に尊重することを約する旨を規定する株式売買契約書が作成された(甲36)。

(7)  争点(5)(訴外F及び被告Y9からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)に関する事実

再生会社と訴外Fとの間で、同人に対する再生会社の平成15年6月30日現在の債務残高は長期未払金5890万6853円であると確認する内容の残高確認書が存在し(乙55の1)、平成19年3月12日、訴外Fが有する同額の債権を被告Y2社に同日譲渡した旨を訴外Fは再生会社に宛てて通知した(乙55の2)。再生会社と被告Y9との間で、再生会社の被告Y9に対する平成15年6月30日現在の債務残高は長期未払金1136万4995円であると確認する残高確認書が存在し(乙56の1)、平成19年3月12日、被告Y9が有する同額の債権を被告Y2社に同日譲渡した旨を被告Y9は再生会社に宛てて通知した(乙56の2)。

同日、再生会社が被告Y2社に対し、7027万1848円の債務を負担していることを確認し、弁済期限を平成20年3月12日とし、利率を年7パーセントとして同日一括で返済する旨の債務承認弁済契約書が作成された(乙57)。

(8)  争点(6)(訴外b社に対する代位弁済等に係る被告Y2社の債権の存否)に関する事実

被告Y2社は、所有する神奈川県大和市<以下省略>の宅地に昭和63年6月8日、再生会社のe生命保険相互会社に対する債務を担保するため極度額6億5000万円の根抵当権を設定し、その後平成13年3月6日債権譲渡を原因として訴外b社に根抵当権は移転した。それ以外に、上記土地には、被告Y2社を債務者とする株式会社整理回収機構の極度額3億円の根抵当権や被告Y2社及び訴外有限会社mを債務者とする株式会社整理回収機構の極度額3億円の根抵当権が設定されていた。

平成19年3月29日、被告Y2社は訴外n株式会社に上記土地を売却した。それに伴い、それらの根抵当権設定登記は、同日解除により抹消された(甲40)。

同月22日、訴外株式会社o債権回収から被告Y2社に対し、再生会社の訴外b社に対する債務合計2億0006万8758円(元金1億4270万、利息54万9011円、遅延損害金5681万9747円)の支払期日が同月29日であることが書面で通知された(乙12)。

e生命保険相互会社から再生会社に対する昭和63年6月17日付け証書貸付けに基づく債権は平成13年3月6日に訴外b社が譲り受けたところ、平成19年3月29日、被告Y2社から訴外b社に1億4270万円が、再生会社から訴外b社に5736万8758円がそれぞれ振込送金された(乙34の1、2、35の1、2)。

同年4月10日、被告Y2社の代理人Jと再生会社の代理人訴外Gが列席して、被告Y2社が再生会社に対し、同年3月29日、弁済期日を平成20年3月28日、利率を年7パーセント、損害金率を年14.6パーセントとし6168万6836円を貸し渡し、再生会社がこれを受領し、借り受けたことを確認する内容の債務承認弁済契約公正証書が作成された(乙14)。

同年5月18日、被告Y2社の代表取締役である被告Y3と再生会社の代表取締役である訴外Fが列席し、再生会社は、同日現在、被告Y2社に対し、同社が平成19年3月29日に代位弁済した再生会社の昭和63年6月17日貸付のe生命保険相互会社の債権譲受人である訴外b社に対する1億4270万円の求償債務を負担していることを承認し、弁済条件を規定する内容の債務承認弁済契約公正証書が作成された(乙13)。

2  争点(1)(被告Y4社ら8名の債権の存否)について

(1)  前記認定事実によると、平成18年12月当時、再生会社は、3つのグループによる支配争いから売上げである現金に対する強制執行が行われるなど危機的な状況にあり、再生手続を申し立てるか否かでX2グループと対立していたFグループとしては、民事再生手続を進めるため、又はそれを有利に進めるため、自己のグループ内の者に再生会社に対する債権を取得させる必要があったものといえる。そのようなことから、Fグループは、債権を自己のグループ内の複数の者に帰属させようとする行為を行う動機があった。

この点、被告らは、被告らの主張する再生会社への貸付当時のFグループの保有株式割合が35パーセントにすぎなかったことから、各貸付当時には、民事再生手続において多数派を占めることは不可能であり、その後増資によりFグループの保有株式数が増加したことにより本件再生手続申立てが可能となったものであって、各貸付当時には、その後の再生会社内の3グループの抗争の経過など予想できず、民事再生手続を主導的に進めることは念頭にあるはずがなかったなどと主張する。しかし、各貸付当時Fグループは保有株式数が過半数には及ばなかったものの、全体の35パーセントを保有しており、他の保有者の一部と協働するなどすれば、民事再生事件を進めること、同事件において有利な地位に立つことは十分に可能であったといえること、現にその後X2グループの反対により第1次再生申立てが頓挫したこと、3グループの対立は平成18年12月当時、相当激しかったことなどから、当時、Fグループは、今後申し立てる可能性がある民事再生事件において再生計画可決のため再生債権者の頭数を具備するため、自己のグループ内の者に架空の債権を取得させる必要があったものといえる。

(2)  上記(1)(Fグループは再生会社に対する債権を自己のグループ内の者に取得させる必要があったこと)の他、再生会社の口座から被告Y2社の口座へ送金額と被告Y2社の口座からの出金額(各840円は手数料と考えられる)と被告Y4社ら8名が出捐した(被告らの主張)金銭で再生会社の口座へ振込送金された額が同額であり、日にちもせいぜい1日違いであること、被告Y4社ら8名の資金の出所は本件証拠上全く不明であり、被告Y2社が再生会社から返済を受けた時期と極めて近接した時期に被告ら8名が各680万円という多額の現金(被告Y8社は680万円を超える800万円)を用意したというのは不自然であり(訴外Gは各680万円を貸与できる人物を探した結果であると証言するが、その経緯は不明確であり(訴外G・6頁)、訴外Fと身内だから、頼まれたからという理由だけでは説得力に欠け、被告Y4社及び被告Y8社の代表者である被告Y10の供述は、計2160万円もの金銭を再生会社に貸し付けたというのに、その資金の調達方法、約定利息の内容などについて不明確で、到底信用できない。)、被告らは、被告Y2社(訴外G)が被告Y4社ら8名の資金を受け取り、被告Y4社ら8名の名前でまとめて送金したと供述し、その理由を説明する(被告Y10・10ないし12頁、14頁)が、被告Y4社ら8名が出捐したのであれば、被告Y2社(訴外G)がとりまとめる必要もない。

被告Y4社、同Y5、同Y6、同Y7、同Y10、同Y11の債務承認弁済契約公正証書は、いずれも被告らの主張する貸付日から約2か月半後である平成19年3月2日に同一の公証人役場において同一機会に作成されたもので、再生会社の代理人としてFグループの一員である訴外Gが列席して作成されていることから、Fグループの意向のもと作成されたと推認できること、前記のとおりFグループは再生会社に対する債権を取得する必要があり、虚偽の内容の債権を仮装する動機があったと考えられることなどからすると、各公正証書をもって被告らの債権の存在が証明されたとはいえない(被告Y8社の債務弁済契約公正証書も作成日付は被告らの主張する貸付日と近接しているものの、その他の事情は前記と同様である)。

以上の検討結果から、被告Y4社ら8名の各680万円(被告Y8社は、800万円のうちの680万円)の債権について、それらの者が実際に出捐し、再生会社に貸し付けたものとは認められず、被告Y2社が再生会社から再生会社の資金により振り出された手形又は小切手を受領し、被告Y2社(訴外G)が同額の金員を被告Y4社ら4名の名前を使用して再生会社に振込送金し、さらに、被告Y2社が同額の手形又は小切手を受領し、同社(訴外G)が同額の金員を被告Y6ら4名の名前を使用して再生会社に振込送金したものと認めるのが相当である。

さらに、被告Y8社の120万円の振り込みについても資金の出所を示す証拠はないこと、被告Y8社の代表取締役である被告Y10は訴外Fの親族であり、両者は極めて親しい関係にあると認められること(被告Y10、弁論の全趣旨)、被告らも認めているとおり、被告Y4社ら8名について送金手続を被告Y2社(訴外G)が代行していることから、被告Y2社の関与が強く推認されること、上記680万円の貸付けと近接した日に振込がなされていること、上記公正証書以外に貸付けを裏付ける客観的証拠はなく、再生会社の資金を上記のとおり被告Y2社(訴外G)が作為的に被告Y4社ら4名の名前を使用して振込送金した680万円を含む800万円の債権について1つの公正証書が作成されていることからすると、被告Y8社の120万円の債権についても、同様なことがなされた疑いが否定できず、本件証拠上、被告Y8社が再生会社に対し120万円を貸し付けたものとは認められない。

(3)  よって、被告Y4社ら8名の再生会社に対する貸付けは実体があるとは認められず、被告Y4社らと再生会社との間で真実は貸付けがないのに、これがあるかのように装うことを合意したものと推認され、通謀虚偽表示に当たり、無効である。

よって、原告らの請求は理由があるから、被告Y2社の債権の存否、公序良俗違反について判断するまでもなく、被告Y4社ら8名の債権については0円と査定することとする。

3  争点(2)(被告Y9、同Y3及び同Y12の債権の存否)について

前記認定のとおり、Fグループは、当時、再生会社に対する債権を仮装して、自己のグループ内の者に債権を帰属させようとする動機があったといえること、被告Y9、同Y3及び同Y12は訴外Fの妻、子であること、被告Y2社の口座からの出金及び5口の再生会社への各100万円の送金が同日同支店においてなされていること、被告Y2社の口座からの出金額、再生会社の口座への送金額、訴外Fから出捐された金銭の被告Y2社の口座への振込額が同額であること、被告Y2社が送金手続を代行する必要性もないのに、被告Y2社の口座に訴外Fから500万円が入金されていること、5名の債権者のうち2名(訴外F、訴外G)は査定の裁判において0円と査定されており、それ以外の3名についても、資金の出所は本件証拠上全く不明であることなどからすると、上記金銭の移転は、訴外Fが被告Y2社に資金が出し、被告Y2社から被告Y9ら5名の名前を使用して再生会社へ振込送金したと認めるのが相当である。

以上から、被告Y9、同Y3及び同Y12が出捐し、再生会社に貸し付けたものとは認められず、被告Y9、同Y3及び同Y12と再生会社との間で、真実は貸付がないのに、これがあるかのように装うことを合意したものと推認され、通謀虚偽表示に当たり、無効である。

よって、原告らの請求には理由があるから、公序良俗違反の主張について判断するまでもなく、被告Y9、同Y3及び同Y12の債権については、0円と査定することとする。

4  争点(3)(被告Y1社の債権の存否)について

前記認定事実によると、被告Y1社は訴外Eが以前から営むパチンコ店の経営に関連して設立したもので、その設立後約半年で取締役を義娘であるAに譲ったというが、両人の密接な関係、Aが上記パチンコ店の経営を主体的に行っていたと認めるに足りる証拠はないこと、同人への社員権譲渡の経緯、対価の支払が不明であることからすると、上記譲渡後も訴外Eが実質的には被告Y1社を支配していたものと認められる。

そして、前記認定事実のとおり、Fグループは、平成18年12月当時、債権を自己のグループ内の複数の者に帰属させようとする動機があったところ、平成19年4月の第1次再生申立てが取下げで終わった後、Fグループが主導し、Eグループがこれに協力する形で、本件再生事件申立ての準備がなされたこと(前記認定事実(2))から、訴外EなどEグループも、自己の債権を被告Y1社に譲渡したように装い、再生債権者の頭数を増やす目的があったものといえる。

再生会社と被告Y1社との間の債務残高確認書(乙42)が作成されたという平成19年7月27日の約1か月半後に本件再生事件の申立てがなされていること、再生会社の当時の代表取締役は訴外Fであり、同人の意向により、再生会社を債務者とする確認書を作成することは容易であり、同書の存在に基づき訴外Eから被告Y1社への債権譲渡の事実を認めることはできないこと、被告Y1社から訴外Eに対し、債権譲渡された代金の支払の立証もないことからすると、訴外Eと被告Y1社との間で、真実は債権譲渡の事実はないのに、これを譲り受けたかのように仮装することについて合意があったものと推認され、通謀虚偽表示に当たり、被告Y1社は再生会社に対する債権を取得していない。

なお、同日開催された再生会社の取締役会において、同債権譲渡を承認する旨決議された議事録が存在するが(乙42の2)、当時の再生会社の状況からすると、訴外Eと被告Y1社との債権譲渡を裏付けるには足りない。

よって、原告らの請求には理由があり、被告Y1社の債権については0円と査定することとする。

5  争点(4)(被告Y1社からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)について

前記4認定のとおり、訴外Eと被告Y1社の債権譲渡は仮装によるもので無効であるから、被告Y2社が被告Y1社から債権を承継取得することはない。

そして、被告Y2社は、訴外Fの息子である被告Y3が代表取締役を務める会社であること、被告Y2社は、再生会社について平成19年6月29日第2次破産申立てをしているにもかかわらず、再生会社に対する債権について、その額面の40パーセント以上に当たる3100万円という高額で取得する旨の譲渡契約を同年7月27日に締結したということ(甲35)、同譲渡契約書には、当事者である被告Y1社、被告Y2社以外に、訴外E、訴外H、訴外Gが保証人として署名押印し、再生会社も債権譲渡を承認すると訴外Fが記名押印し、訴外E及び訴外Hが被告Y2社及び訴外G主導の民事再生に協力するように確約していることからすると、被告Y2社は訴外Eと被告Y1社との間の通謀虚偽表示による債権譲渡につき、善意の第三者とはいえない。

よって、原告らの請求には理由があり、その余の公序良俗違反の主張について判断するまでもなく、被告Y2社の被告Y1社からの譲受けに係る再生会社に対する債権は0円と査定することとする。

6  争点(5)(訴外F及び被告Y9からの譲受けに係る被告Y2社の債権の存否)について

前記認定のとおり、Fグループには再生会社に対する債権を仮装する目的があったこと、訴外F及び被告Y9の平成15年6月30日現在の債務残高確認書(訴外Fは5890万6853円―乙55の1、被告Y9は1136万4995円―乙56の1)は「長期未払金」というだけで、その債務の発生原因が不明である上、両名が再生会社に対し貸し付けたとする資金の出所が不明であること、訴外F及び被告Y9と被告Y2社との近しい関係などを総合すると、訴外F及び被告Y9が再生会社に対し上記債権を有していたとは認められない。

そして、各債権譲渡通知(乙55の2、56の2)は、本件再生事件の申立ての約半年前で、第1次再生申立てを行った平成19年4月17日の約1か月前である同年3月12日になされており、当時の再生会社はFグループの訴外Fが代表取締役であったことから、真実債権譲渡の事実がないにもかかわらず、それを仮装して債権譲渡通知をすることは容易であったといえ、同様に、同日作成された債務承認弁済契約書(乙57)を被告Y2社の債権の根拠とすることはできない。他に被告らの主張を認めるに足りる証拠はない。

よって、訴外F及び被告Y9が再生会社に対し債権を有していたことは認められず、両名から被告Y2社が債権を承継取得することはない。

したがって、被告Y9及び訴外Fからの譲受けに係る被告Y2社の債権は0円と査定することとする。

7  争点(6)(訴外b社に対する代位弁済等に係る被告Y2社の債権の存否)について

前記認定事実によると、被告Y2社が、平成19年3月29日、再生会社の訴外b社に対する1億4270万円の債務を代位弁済したと認められる。

被告Y2社が代位弁済のための資金をどのように用意したかについて裏付けとなる計算書類がないことや被告Y2社が平成18年7月1日から平成20年6月30日までの総勘定元帳について文書提出命令が発せられたのに、これを拒否したこと(弁論の全趣旨)は、上記代位弁済があったとの認定を覆す事情とはならない。

よって、被告Y2社は、平成19年3月29日、再生会社の訴外b社に対する1億4270万円の債務を代位弁済し、同年5月18日、再生会社との間でその求償債権の弁済方法について合意したことにより、届出に係る求償金1億4270万円及び弁済期の翌日である同月25日から再生手続開始の前日である同年10月9日まで年5パーセントの割合による遅延損害金267万8068円の再生債権を有するものと認められる。

他方、同年3月29日付け貸付金6168万6836円の債権については、前記認定事実のとおり、同年4月10日付け債務承認弁済契約公正証書(乙14)が作成されているものの、被告Y2社が再生会社に貸し渡した金員をどのように用意したかについて裏付けとなる証拠の提出がないこと、上記公正証書作成当時、再生会社の代表取締役は訴外Fであり、各公正証書が作成された約4ないし5か月後に本件再生事件の申立てがなされていること、被告Y2社に対して平成18年7月1日から平成20年6月30日までの総勘定元帳の提出を命じる文書提出命令が発せらているのに、被告Y2社はこれを拒否したこと(弁論の全趣旨)などを総合考慮すると、上記債権の存在を認めることはできない。

よって、被告Y2社は、再生会社に対し、訴外b社に対する代位弁済に係る求償金1億4270万円及びこれに対する遅延損害金267万8068円の合計1億4537万8068円の再生債権を有する。

8  結論

以上から、被告Y2社の届け出た再生債権の額は1億4537万8068円と査定すべきものであり、その余の被告らの届け出た再生債権の額はいずれも0円と査定すべきものであるから、各査定の申立てに対する裁判を上記趣旨に変更することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 窪木稔 裁判官 山口信恭 裁判官宮澤睦子は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 窪木稔)

【別紙】査定額一覧表<省略>

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