さいたま地方裁判所 平成21年(ワ)1740号 判決 2011年5月30日
原告
X1 他4名
被告
Y
主文
一 被告は、原告X1に対し、二七万二三〇三円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告X2に対し、二九〇万二七七九円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告X3に対し、七四万三一〇〇円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告は、原告X4に対し、九万二六八〇円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告X5の請求、原告X5を除くその余の原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用中、原告X1と被告との間に生じたものはこれを二〇分し、その一九を同原告の負担とし、その余を被告の負担とし、原告X2と被告との間に生じたものはこれを五分し、その二を同原告の負担とし、その余を被告の負担とし、原告X3と被告との間に生じたものはこれを五分し、その三を同原告の負担とし、その余を被告の負担とし、原告X4と被告との間に生じたものはこれを二五分し、その二四を同原告の負担とし、その余を被告の負担とし、原告X5と被告との間に生じたものは同原告の負担とする。
七 この判決は、第一項ないし第四項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告は、原告X1に対し、三九四万四九三五円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告X2に対し、四八八万〇〇三八円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告は、原告X3に対し、一八一万四六〇〇円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告は、原告X4に対し、一八一万七九〇〇円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告は、原告X5に対し、一七八万四九〇〇円及びこれに対する平成一八年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告X1(以下「原告X1」という。)が運転していた普通貨物自動車と被告が運転する普通乗用自動車が衝突する事故(以下「本件事故」という。)が発生したところ、原告らが、原告X1のほか、同乗していた原告X2(以下「原告X2」という。)、原告X3(以下「原告X3」という。)、原告X4(以下「原告X4」という。)、原告X5(以下「原告X5」という。)が負傷したとして、被告に対し、自賠法三条に基づいて、損害の賠償を請求した事案である。被告は、過失相殺を主張するほか、原告らの損害額を争った。
一 争いのない事実等(証拠を摘示しない事実は、当事者間に争いがない。)
(1) 本件事故の発生
ア 日時 平成一八年一二月一七日午後五時〇分頃
イ 場所 a市b区c町<以下省略>交差点(以下「本件交差点」ないし「本件現場」という。)
ウ 原告車
普通貨物自動車(ナンバー<省略>)
運転者 原告X1
同乗者 原告X2
原告X3(当時五歳)
原告X4(当時二歳)
原告X5(当時約三か月)
エ 被告車
普通乗用自動車(ナンバー<省略>)
運転者 被告
保有者 被告
オ 事故の態様
a市b区d町方面(西方向)から同市b区i町方面(東方向)に向け走行してきた原告車と、e市方面(北方向)からa市b区f町方面(南方向)に向け走行し、本件交差点で左折しようとした被告車が、本件交差点内で衝突した。
(2) 被告の責任原因
被告は、原告らに対し、自賠法三条に基づく損害賠償義務を負う。
(3) 原告X1の前回の事故
ア 原告X1は、平成一八年七月一五日、交差点で信号待ちで停車中、後方からトラックにノーブレーキで追突される事故(以下「前回事故」という。)に遭った。(原告X1)
イ(ア) 原告X1は、同日、救急車で戸田中央総合病院に搬送され、治療を受けた。同病院では、頚椎捻挫との診断を受けた。
(イ) 原告X1は、同月一八日、増田外科医院を受診し、同月一九日から同医院に入院し、同年八月一九日退院した後、同年九月四日まで同医院に通院した。同医院では、後頭部打撲・挫創、頚椎捻挫、腰椎捻挫、両手指先しびれ、両肩打撲、頭蓋内圧亢進症との診断を受けた。
(ウ) 原告X1は、同年九月五日、双樹記念病院を受診した。同病院では、中心性頚髄損傷、腰椎捻挫との診断を受けた。原告X1は、本件事故前、同病院で月に二回程度の診察と週に二ないし三回程度の通院点滴治療を受けていた。
(4) 本件事故後の原告らの治療等の経過
ア(ア) 原告X1は、平成一八年一二月一七日の本件事故後、原告車を運転して東大宮総合病院に行き、同病院で治療を受け、同月一八日まで(実通院日数二日)通院した。原告X1は、同病院において、頚椎捻挫との診断を受けたとの診断を受けた。
(イ) 原告X1は、平成一九年一月一日から平成二〇年四月一四日まで(実通院日数二一七日)、前回事故で通院していた双樹記念病院に通院した。原告X1は、同病院において、中心性頚髄損傷、腰椎捻挫との診断を受けた。(甲三の一ないし一六)
イ(ア) 原告X2は、平成一八年一二月一七日の本件事故後、救急車で東大宮総合病院に搬送され、同月一八日まで(実通院日数二日)通院した。原告X2は、同病院において、頚椎捻挫、右肩打撲症との診断を受けた。(甲一六)
(イ) 原告X2は、同年一二月二〇日から平成一九年一〇月二六日まで(実通院日数一〇〇日)、小野整形外科皮膚科に通院した。原告X2は、同医院において、頚椎捻挫、円形脱毛との診断を受けた。(甲一七の一ないし一一、一九の一ないし一一)
ウ(ア) 原告X3は、平成一八年一二月一七日の本件事故後、救急車で東大宮総合病院に搬送され、同月一八日まで(実通院日数二日)通院した。原告X3は、同病院において、右手打撲症との診断を受けた。(甲二〇)
(イ) 原告X3は、同年一二月二〇日から平成一九年一〇月二六日まで(実通院日数六〇日)、小野整形外科皮膚科に通院した。原告X3は、同病院において、頚椎捻挫、右手関節捻挫、顔面打撲、円形脱毛症との診断を受けた。(甲二一の一ないし一一、二三の一ないし一一)
エ(ア) 原告X4は、平成一八年一二月一七日の本件事故後、救急車で東大宮総合病院に搬送され、同月一八日まで(実通院日数二日)通院した。原告X4は、同病院において、頚椎捻挫との診断を受けた。(甲二四)
(イ) 原告X4は、同年一二月二〇日から平成一九年一〇月二六日まで(実通院日数六一日)、小野整形外科皮膚科に通院した。(甲二五の一ないし一一、二七の一ないし一一)
オ(ア) 原告X5は、平成一八年一二月一七日の本件事故後、救急車で東大宮総合病院に搬送され、同月一八日まで(実通院日数二日)通院した。原告X5は、同病院において、頚椎捻挫との診断を受けた。(甲二八)
(イ) 原告X5は、同年一二月二〇日から平成一九年一〇月二六日まで(実通院日数五一日)、小野整形外科皮膚科に通院した。原告X5は、同病院において、全身打撲との診断を受けた。(甲二九の一ないし一一、三一の一ないし一一)
(5) 既払金
ア 原告X1は、六四〇万八五〇四円の支払を受けた。
イ 原告X2は、六二万五六六〇円の支払を受けた。
ウ 原告X3は、四四万〇八一〇円の支払を受けた。
エ 原告X4は、四六万四〇五〇円の支払を受けた。
オ 原告X5は、三八万〇六一〇円の支払を受けた。
二 争点
(1) 過失相殺
(被告の主張)
本件事故の態様によれば、原告X1に二〇パーセントの過失がある。
(原告らの主張)
ア 争う。
イ 原告車が本件交差点を通過しようとしていたにもかかわらず、被告は、至近距離から被告車を発進させ、原告車に衝突したものであり、原告X1が被告車の発進を予見することは不可能であり、事故を回避することは不可能であった。
(2) 損害額
(原告らの主張)
ア 原告X1の主張する損害額は、次のとおりである。
(ア) 治療費 一三五万一二六九円
a 原告X1は、本件事故により、頚椎捻挫、中心性頚髄損傷、腰椎捻挫、低髄圧症候群の傷害を負った。
b 原告X1は、上記争いのない事実等(4)アのとおり治療を受け、治療費として一三五万一二六九円を要した。
(イ) 薬剤費 五〇万七九六〇円
(ウ) 交通費 二六万五四六〇円
(エ) 休業損害 六二一万〇七五〇円
a 原告X1は、平成一八年七月一五日に前回事故に遭って頚椎捻挫等の傷害を負い治療をしていたが、職場復帰に向けてリハビリを兼ねて運転をしていた時に本件事故に遭ってしまい、更に治療と休業が続くこととなった。
b 休業期間は、本件事故日から症状固定日である平成二〇年四月一四日までであるが、平成一九年一月一五日までは前回事故による休業期間として休業補償を受けているので、本件では、平成一九年一月一六日から平成二〇年四月一四日までの四五五日間を休業期間として請求する。
c 前回事故当時、原告X1は、トラック運転手としてg会社で勤務し、毎月三二万五〇〇〇円の給料を得る傍ら、h会社でもビル管理の仕事に従事し、事故前の三か月間で二五万三五〇〇円の収入を得ていた。そこで、休業損害の算定基礎収入額を、前回事故の直前の三か月間の収入に基づいて算定すると原告X1の休業損害は、次のとおり、六二一万〇七五〇円となる。
(325000×3+253500)÷90×455=621075
(オ) 通院慰謝料 一六六万〇〇〇〇円
(カ) 損害の填補 六四〇万八五〇四円
(キ) 弁護士費用 三五万八〇〇〇円
(ク) 請求額 三九四万四九三五円
イ 原告X2の主張する損害額は、次のとおりである。
(ア) 治療費 六二万五六六〇円
a 原告X2は、本件事故により、頚椎捻挫、右肩打撲傷、円形脱毛の傷害を負った。
b 原告X2は、上記争いのない事実等(4)イのとおり治療を受け、治療費として六二万五六六〇円を要した。
(イ) 薬剤費 五〇万七九六〇円
(ウ) 交通費 五九二〇円
(エ) 休業損害 二九八万四一一八円
a 原告X2は、本件事故当時三人の乳幼児を抱える家庭の主婦として家事労働に従事していたが、本件事故により平成一八年一二月一七日から平成一九年一〇月二六日までの三一四日間につき家事労働ができなくなり、その間、実母に家事をしてもらった。
b 原告X2の休業損害を平成一九年の賃金センサス第一巻第一表、産業計、企業規模計、学歴計による全年齢女子労働者の平均年収三四六万八八〇〇円に基づいて算定すると、次のとおり、二九八万四一一八円となる。
3468800÷365×314=2984118
(オ) 通院慰謝料 一四五万〇〇〇〇円
(カ) 損害の填補 六二万五六六〇円
(キ) 弁護士費用 四四万〇〇〇〇円
(ク) 請求額 四八八万〇〇三八円
ウ 原告X3の主張する損害額は、次のとおりである。
(ア) 治療費 四四万〇八一〇円
a 原告X3は、本件事故により、頚椎捻挫、右手関節捻挫、顔面打撲、円形脱毛の傷害を負った。
b 原告X3は、上記争いのない事実等(4)ウのとおり治療を受け、治療費として四四万〇八一〇円を要した。
(イ) 看護料 二〇万四六〇〇円
原告X3の通院には、原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり三三〇〇円として、次のとおり、二〇万四六〇〇円の損害が発生した。
3300×62=204600
(ウ) 通院慰謝料 一四五万〇〇〇〇円
(エ) 損害の填補 四四万〇八一〇円
(オ) 弁護士費用 一六万〇〇〇〇円
(カ) 請求額 一八一万四六〇〇円
エ 原告X4の主張する損害額は、次のとおりである。
(ア) 治療費 四六万四〇五〇円
a 原告X4は、本件事故により、頚椎捻挫、頭部打撲、円形脱毛の傷害を負った。
b 原告X4は、上記争いのない事実等(4)エのとおり治療を受け、治療費として四六万四〇五〇円を要した。
(イ) 看護料 二〇万七九〇〇円
原告X4の通院には、原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり三三〇〇円として、次のとおり、二〇万七九〇〇円の損害が発生した。
3300×63=207900
(ウ) 通院慰謝料 一四五万〇〇〇〇円
(エ) 損害の填補 四六万四〇五〇円
(オ) 弁護士費用 一六万〇〇〇〇円
(カ) 請求額 一八一万七九〇〇円
オ 原告X5の主張する損害額は、次のとおりである。
(ア) 治療費 三八万〇六一〇円
a 原告X5は、本件事故により、頚椎捻挫、全身打撲の傷害を負った。
b 原告X5は、上記争いのない事実等(4)オのとおり治療を受け、治療費として三八万〇六一〇円を要した。
(イ) 看護料 一七万四九〇〇円
原告X5の通院には、原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり三三〇〇円として、次のとおり、一七万四九〇〇円の損害が発生した。
3300×53=174900
(ウ) 通院慰謝料 一四五万〇〇〇〇円
(エ) 損害の填補 三八万〇六一〇円
(オ) 弁護士費用 一六万〇〇〇〇円
(カ) 請求額 一七八万四九〇〇円
(被告の主張)
ア(ア) 原告らの主張ア(ア)のうち、原告X1がその主張の日に、その主張の通院をしたことは認めるが、治療の必要性は否認する。
(イ) 同ア(イ)ないし(オ)、(キ)は否認する。
イ(ア) 原告らの主張イ(ア)のうち、原告X2がその主張の日に、その主張の通院をしたことは認めるが、治療の必要性は否認する。
原告X2の傷害の治療として必要かつ相当な期間は平成一九年二月末日までであり、その間の治療費は二四万二一四〇円である。
原告X2は、本件事故直後の診察で「右後頚~肩痛」を訴えているが、レントゲン写真では異常は見つかっていない。本件事故の翌日である平成一八年一二月一八日には「右僧帽筋」の「緊張」はあるものの、「頚椎」「運動痛-(マイナス)」の状態であり、同日付の診断書では加療一週間と診断されている。原告X2は、その後も頚部痛、頭痛を訴えているが、平成一九年二月二六日の時点では「関節可動域 制限なし」と診断されている。このように、原告X2は、頚部痛、頭痛を訴えているものの他覚所見はなく、原告X2が本件事故によって負傷したとしても、その傷害は極めて軽微なものであった。治療としても、鎮痛剤、湿布、胃薬、肩凝り等を緩和するためのビタミン剤が処方されているだけで、特段の治療はなされていない。こうした事清からするならば、原告X2の傷害の治療として必要かつ相当な期間は二か月程度であり、本件事故から約二か月が経過し、医療記録上、関節可動域に制限がないことが明らかとなった平成一九年三月一日以降の治療費については、本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。
(イ) 同イ(イ)ないし(オ)、(キ)は否認する。
原告X2の傷害は極めて軽微なものであり、就労不能な状態にあったとは言い難く、休業損害を認めることはできない。
ウ(ア) 原告らの主張ウ(ア)のうち、原告X3がその主張の日に、その主張の通院をしたことは認めるが、治療の必要性は否認する。
原告X3の傷害を裏付けるような証拠はない。
本件事故直後の診察で「右手打撲」と診断されているが、レントゲン写真は撮っておらず、腫脹等の他覚所見もなく、消炎鎮痛処置も行っていない。本件事故の翌日である平成一八年一二月一八日には「左手 運動痛-(マイナス)」の記載はあるが、「右手打撲」を裏付けるような記載はない。同年一二月二〇日には「右手打撲」を思わせる「右手関節痛」の記載があるが、同年一二月二五日以降はそういった記載は一切なくなっている。他方、同年一二月二〇日の診察以降、「右顔面痛」「頚部痛」が加わり、原告X3は平成一九年一〇月二六日まで「頚部痛」を訴えているが、平成一八年一二月二五日の時点で「頚部 関節可動域 制限なし」と診断されており、他覚所見のある訴えではない。このように、医療記録上、原告X3の「右手打撲」を裏付けるような所見はないばかりか、後に「右手関節痛」の訴えはなくなり、「頚部痛」の訴えに変わっている。また、原告X3の当時の年齢を考えれば、原告X3自ら医師に対して症状を伝えたとは考え難く、実際に「右手関節痛」「頚部痛」があったのかどうか疑わしい。したがって、本件事故によって原告X3が負傷したことはない。
(イ) 同イ(イ)、(ウ)、(オ)は否認する。
エ(ア) 原告らの主張エ(ア)のうち、原告X4がその主張の日に、その主張の通院をしたことは認めるが、治療の必要性は否認する。
原告X4の傷害を裏付けるような証拠はない。
本件事故直後の診察では「症状なし」とされ、何らの処置もされていない。本件事故の翌日である平成一八年一二月一八日の診察では「頚椎」「関節可動域 制限なし」とされている。その後も、医療記録上、特に関節可動域の制限等を窺わせるような記載はなされていない。確かに「頭痛」「頚部痛」の訴えはあるが、「頚部痛」に関しては本件事故から一か月以上経過した平成一九年二月一三日に初めてその旨の記載がなされているに過ぎず、また、原告X4の当時の年齢を考えれば、原告X4自ら医師に対して症状を伝えたとは考え難い。したがって、本件事故によって原告X4が負傷したことはない。
(イ) 同エ(イ)、(ウ)、(オ)は否認する。
オ(ア) 原告らの主張オ(ア)のうち、原告X5がその主張の日に、その主張の通院をしたことは認めるが、治療の必要性は否認する。
原告X5の傷害を裏付けるような証拠はない。
本件事故直後の診察では「症状なし」とされ、何らの処置もされていない。本件事故の翌日である平成一八年一二月一八日の診察でも「頚椎」「関節可動域制限なし」とされ、何ら異常は見られない。医療記録上、「よく泣く」「夜泣き」といった記載もあるが、原告X5の当時の年齢を考えれば特に不自然なことではない。したがって、本件事故によって原告X5が負傷したことはない。
(イ) 同オ(イ)、(ウ)、(オ)は否認する。
(3) 寄与度減額
(被告の主張)
仮に、原告X1主張の損害と本件事故との間に相当因果関係が認められたとしても、原告X1の症状が悪化したことを裏付ける客観的な資料はないこと、本件事故の際、原告車、被告車のいずれも速度が出ておらず、事故の衝撃も軽微であったことからすると、原告X1の損害に対する本件事故の寄与度は五割を超えることはない。
(原告X1の主張)
争う。
第三争点に対する判断
一 争点(1)(過失相殺)について
(1) 証拠(甲三九、乙一四、一五、原告X1、原告X2、被告)によれば、次の事実が認められる。
ア 本件現場は、別紙図面のとおりの、a市b区d町方面(西方向)から同市b区i町方面(東方向)に通じる片側一車線の道路(以下「東西道路」という。)と、e市方面(北方向)からa市b区f町方面(南方向)に通じる道路(以下「南北道路」という。)とが交差する信号機による交通整理の行われていない交差点である。東西道路の最高速度は、時速四〇キロメートルである。南北道路の本件交差点入口に一時停止の標識が設けられていた。本件交差点の北東側にホテルの建物があった。
イ 原告X1は、原告車を運転して本件現場に程近い自宅を出て、同区d町方面(西方向)から同区i町方面(東方向)に向け、東西道路を時速約四〇キロメートルの速度で進行し、本件交差点に差し掛かったところ、自車の前を走行していたタクシーが本件交差点東側出口(別紙図面表示のfile_5.jpg)付近に停止し、次いで、交差する南北道路の左方から被告車が本件交差点内に頭を出した後、停止線付近まで後退するのを認めた。原告X1は、東西道路の対向車線にまで出てタクシーを追い越して進行しようと考え、本件交差点内のセンターラインを跨いで走行したところ、事故の直前になって、停止してくれると考えていた被告車が本件交差点内に進入し、原告車と至近距離にまで走行してきたのを発見し、ハンドルを右に転ぱするとともに、クラクションを鳴らしたが、別紙図面表示のfile_6.jpg付近で、原告車のバンパーの左角が被告車のバンパーの右角付近に衝突した。
ウ 被告は、被告車を運転して、e市方面(北方向)からa市b区f町方面(南方向)に向け、南北道路を進行し、本件交差点で左折する予定で、本件交差点入口に設けられた一時停止の標識に従って、一時停止した。
エ 被告は、交差する東西道路を確認した際、タクシーが東西道路を右方から進行して来て自車の前を通り、本件交差点東側出口付近に停止して、客を降ろそうとしているのを認めた。被告は、左折するのにタクシーが障害となったので、一度被告車を後退させたものの、タクシーがなかなか発進しなかったことから、被告車を大回りさせて左折し、東西道路の対向車線にまで出てタクシーを追い越して進行しようと考え、東西道路の対向車線を走行してくる車両はないことを確認したものの、東西道路を右方から走行してくる車両の有無の確認を怠ったまま、本件交差点内に低速度で進入したところ、クラクションの音で、右方から原告車が来るのに気づき、急ブレーキをかけたが、別紙図面表示のfile_7.jpg付近で、被告車と原告車が衝突した。
オ 本件事故により、原告車は、前部バンパーの左角付近が損傷し、被告車は、前部バンパーの右角付近が損傷した。
(2) 上記(1)に認定の事実によれば、被告は、本件交差点手前において一時停止した上、停止線を越えて本件交差点内に進出したものの、東西道路を走行してきたタクシーが本件交差点東側出口付近に停止し、左折するのに障害となったので、一度被告車を後退させたものの、その後、タクシーがなかなか発進しなかったことから、被告車を大回りさせて左折し、東西道路の対向車線にまで出てタクシーを追い越して進行しようと考え、東西道路を右方から走行してくる車両の有無の確認を怠ったまま、本件交差点内に進入したため、本件事故を発生させたものである。これに対し、原告X1は、被告車が交差する南北道路の左方から本件交差点内に頭を出した後、停止線付近まで後退するのを認めたのであるから、原告X1において、被告車がそのまま停止してくれると考えたのは、もっともというべきであり、原告X1は、事故の直前になって、被告車が本件交差点内に進入し、原告車と至近距離にまで走行してきたのを発見し、クラクションを鳴らすなどしたが、本件事故を避けることができなかったのであるから、原告X1に過失はないと認めるのが相当である。
二 争点(2)(損害額)について
(1) 原告X1
ア 原告X1の症状の経過等
証拠(甲二、三の一ないし一六、五、六の一ないし三、七、八の一ないし一六、乙一ないし四、六ないし八、原告X1)によれば、次の事実が認められる。
(ア) 前回事故後の症状の経過等
a 原告X1は、平成一八年七月一五日、交差点で信号待ちで停車中、後方からトラックに追突される前回事故に遭った。
b 原告X1は、同日、救急車で戸田中央総合病院に搬送され、治療を受けた。同病院では、頚椎捻挫と診断され、レントゲン写真では、骨傷は認められなかった。
c 原告X1は、同月一八日、増田外科医院を受診し、頸部痛、腰痛、頭痛、両手のしびれを訴えた。原告X1は、同月一九日から同医院に入院し、同年八月一九日退院した後、同年九月四日まで同医院に通院した。その間、原告X1は、電気療法、牽引、低周波治療等を受けた。
d 原告X1は、同年九月五日、双樹記念病院を受診し、頭痛、頸部痛を訴えた。原告X1は、中心性頚髄損傷、腰椎捻挫との診断のもとに、概ね月二回程度診察を受けるほか、週に二ないし三回程度通院してめまいの改善薬やビタミン剤等の点滴治療を受けた。
e 原告X1は、原告X1の担当医であるA医師(以下「A医師」という。)に対し、同年一一月七日、少し楽になってきた、しびれがとれてきたと説明したほか、同月二一日、仕事ができたと報告した。
f 原告X1は、前回事故当時、トラック運転手としてg会社で勤務する傍ら、h会社でもビル管理の仕事に従事していたが、前回事故で受傷したことにより、いずれも休業するようになった。
(イ) 本件事故後の症状の経過等
a 原告X1は、同年一二月一七日の本件事故後、原告車を運転して東大宮総合病院に行き、同病院で治療を受け、同月一八日まで通院した。その際、原告X1は、医師に対し、前回事故について説明するとともに、項部痛等を訴えた。
b 原告X1は、同日、双樹記念病院において点滴治療を受けたが、医師の診察を受けなかった。原告X1は、同月一九日、A医師の診察を受け、症状は変わらないなどと説明した。カルテには、両日の欄に本件事故に関する記載はなく、原告X1は、平成一九年一月四日、A医師に対し、本件事故以来、両手にしびれが生じたと訴えた。
c 原告X1は、本件事故後、同病院において本件事故前と同様の点滴治療(上記(ア)d)を受けた。
d A医師は、平成二〇年二月、中心性頚髄損傷、低髄圧症候群との診断のもとに、治療にもかかわらず原告X1の頭痛が高度で症状が軽快しないとして、原告X1についてブラッドパッチの施行が望ましいと考える旨の川越リハビリテーション病院宛の紹介状を原告X1に発行した。原告X1は、同月一八日、同リハビリテーション病院でブラッドパッチを受けた。
e 原告X1は、同年四月一四日まで、双樹記念病院に通院した。A医師は、原告X1について、同日症状固定との診断をし、その旨の後遣障害診断書を発行した(受傷日時として、平成一八年七月一五日と記載されている。)。同診断書には、傷病名として中心性頚髄損傷、低髄圧症候群、自覚症状として肩がはる、項部痛と記載されている。
f さいたま自賠責調査事務所は、平成二〇年八月一二日、項部痛については、症状を裏付ける客観的な医学所見は乏しいとし、原告X1が訴える症状は、後遣障害に該当しないと判断した。
g 原告X1は、本件事故直前には、前回事故による手足のしびれや頭痛等の症状が徐々に良くなりつつあり、職場復帰も考えるようになっていたが、本件事故で再度受傷したことにより、休業の継続を余儀なくされた。原告X1は、本件事故後、休業が長引いたことにより、g会社を解雇されたが、平成二二年二月から、再就職先で稼働するようになった。
イ 原告X1の損害
(ア) 治療費 一三〇万一二六九円
a 証拠(甲七、八の一ないし一六、一〇の一ないし四、一〇の六)によれば、原告X1は、治療費として、合計一三〇万一二六九円(文書料を含む。)を支出したことが認められる。
b 原告X1は、本件事故に基づく損害として、川越リハビリテーション病院で施行したブラッドパッチの費用五万円(甲一〇の五)を主張する。
上記ア(イ)に認定のとおり、A医師は、平成二〇年二月、中心性頚髄損傷、低髄圧症候群との診断のもとに、治療にもかかわらず原告X1の頭痛が高度で症状が軽快しないことから、原告X1についてブラッドパッチの施行が望ましいと考えて、原告X1に川越リハビリテーション病院を紹介し、これに基づいて、同病院でブラッドパッチが施行されたものである。
ところで、証拠(乙八)によれば、低髄液圧症候群は、髄液の漏出に起因し、起立性の頭痛を典型的な症状とするものであることが認められるところ、本件全証拠によっても、原告X1について、本件事故後、髄液の漏出が認められたとか、起立性の頭痛が認められたとの事実を認めるに足りない。したがって、原告X1に低髄液圧症候群が発症したと認めることはできず、上記ブラッドパッチの費用は、本件事故に基づく損害とは認められない(なお、A医師は、原告X1について中心性頚髄損傷と診断したものであるが、証拠〔乙八〕によれば、原告X1に頚髄損傷が生じたのであれば、MRI検査により認められるべき所見が原告X1について存しないことが認められる。したがって、A医師の上記診断は、根拠を欠くものといわざるを得ず、採用することができない。)。
(イ) 薬剤費 五〇万七九六〇円
証拠(甲九の一ないし一五の各一及び二)によれば、原告X1は、薬剤費として、合計五〇万七九六〇円を支出したことが認められる。
(ウ) 交通費 二六万五四六〇円
a 弁論の全趣旨によれば、原告X1は、平成一八年一二月一八日東大宮病院に通院した際、七二〇円の交通費を支出したことが認められる。
b 弁論の全趣旨によれば、原告X1は、双樹記念病院に通院した際、バス、電車を乗り継ぎ(往復一二二〇円)、合計二六万四七四〇円の交通費を支出したことが認められる。
(380+840)×217=264740
c したがって、交通費は、二六万五四六〇円となる。
(エ) 休業損害 六二一万〇七五〇円
a 証拠(甲一二の一ないし四、一四の一ないし九、原告X1)によれば、原告X1は、前回事故に遭うまで、トラック運転手としてg会社で勤務し、毎月三二万五〇〇〇円の給料を得る傍ら、h会社でもビル管理の仕事に従事し、事故前の三か月間で二五万三五〇〇円の収入を得ていたことが認められる。
b 上記aに認定の収入に基づいて、原告X1主張の休業期間である平成一九年一月一六日から平成二〇年四月一四日まで(四五五日)の休業損害について判断すると、原告X1の休業損害は、次のとおり、六二一万〇七五〇円となる。
(325000×3+253500)÷90×455=621075
(オ) 通院慰謝料 一二三万〇〇〇〇円
上記争いのない事実等(4)ア、上記ア(イ)に認定の原告X1の傷害の内容、程度、通院期間等、諸般の事情を考慮すると、原告X1の通院慰謝料は、一二三万円をもって相当と認める。
ウ 争点(3)(寄与度減額)について
(ア) 前回事故は、上記争いのない事実等(3)アのとおり、交差点で停車中に後方からトラックにノーブレーキで追突されたものであるのに対し、本件事故は、上記争いのない事実等(1)オ及び上記一(1)に認定のとおり、市街地における交差点で出会い頭に衝突したもので、原告車の損傷の程度も、バンパー等を損傷した程度の比較的軽微なものであったのであるから、原告X1に与えた衝撃は、本件事故によるものより、前回事故によるものの方が大きかったと認められる。また、上記アに認定の事実によれば、原告X1は、前回事故から本件事故までの約四か月間、双樹記念病院に通院して点滴治療を受けていたものであり、症状について改善傾向が認められたものであるが、本件事故当時、前回事故に基づく症状がなお残存していたと認められ、本件事故後の原告X1の症状は、前回事故及び本件事故が相まって生じたと認めるのが相当である。これらの事情からすれば、本件事故後の原告X1の症状には、前回事故による症状が影響を及ぼしているというべきであり、前回事故と本件事故の態様、程度、原告X1の前回事故後の症状及び治療経過、本件事故後の症状及び治療経過に照らすと、原告X1の本件事故後の症状等に対する前回事故の寄与度は、三〇パーセントを下らないと認めるのが相当である。
(イ) したがって、上記イ(ア)ないし(オ)の合計九五一万五四三九円から三〇パーセントを減額すると、その残額は六六六万〇八〇七円となる。
エ 損害の填補 六四〇万八五〇四円
上記争いのない事実等(5)アのとおり、原告X1は、六四〇万八五〇四円の支払を受けたから、上記ウ(イ)の六六六万〇八〇七円からこれを控除すると、その残額は、二五万二三〇三円となる。
オ 弁護士費用 二万〇〇〇〇円
本件記録によれば、原告X1は、本件訴訟の提起、追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害は、二万円と認めるのが相当である。
カ したがって、被告は、原告X1に対し、二七万二三〇三円及びこれに対する不法行為の日である平成一八年一二月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
(2) 原告X2
ア 治療費 六二万五六六〇円
証拠(甲一六、一七の一ないし一一、一九の一ないし一一、乙一〇、原告X2)によれば、原告X2は、本件事故の日である平成一八年一二月一七日、東大宮病院において、右後頚から肩にかけての痛みを訴えたが、レントゲン写真では異常はなかったこと、翌一八日には、右僧帽筋に緊張が認められたものの、頚椎の運動痛はなく、鎮痛剤、湿布等が投与されたこと、原告X2は、同月二〇日から、自宅近くの小野整形外科皮膚科に、子供一ないし三人を連れて、一緒に通院するようになったこと、原告X2は、小野整形外科皮膚科で、当初頚部痛を訴え、以後、頻繁に小野整形外科皮膚科に通院するようになったが、平成一九年一月頃からは、頭痛を訴えたほか、円形脱毛が認められ、通院の都度、消炎鎮痛処置が行われたこと、原告X2は、同年六月及び九月に頭痛を訴えたほかは、小野整形外科皮膚科のカルテには、同年七月から通院を止めた同年一〇月二六日までの間、原告X2について消炎鎮痛処置との連続して記載されていること、原告X2は、自動車運転手として稼働していたが、本件事故当時は、原告X5を出産して間もなくで育児休業中であったものであり、平成一九年春頃から、再度稼働するようになったことが認められる。
以上の事実によれば、原告X2については、平成一九年一〇月二六日まで治療の必要があったと認められる。
証拠(甲一八、一九の一ないし一一)によれば、原告X2は、治療費として、合計六二万五六六〇円(文書料を含む。)を支出したことが認められる。
イ 通院交通費 七二〇円
(ア) 弁論の全趣旨によれば、原告X2は、平成一八年一二月一八日東大宮病院に通院した際、七二〇円の交通費を要したことが認められる。
(イ) 原告X2は、小野整形外科皮膚科に通院した際、自家用車を使用したと主張し、小野整形外科皮膚科との距離を往復二キロメートルとして、交通費合計五九二〇円を主張する。
しかしながら、本件記録及び証拠(甲一七の一ないし一一)によれば、原告らの自宅は、a市b区j町○―○○○―○○であるところ、小野整形外科皮膚科の所在地は、△△―△△△―△であり、往復二キロメートルもあるとは認め難い。他に原告X2の上記交通費を認めるに足りる的確な証拠はない。
ウ 休業損害 一四九万二〇五九円
(ア) 証拠(原告X2)によれば、原告X2は、本件事故当時育児休暇中で、家庭の主婦として家事労働に従事していたものであったこと、原告X2は、本件事故により傷害を負い、通院の必要があったことなどにより、平成一八年一二月一七日から平成一九年一〇月二六日までの三一四日間につき家事労働を十分にできなくなり、その間、実母に家事を手伝ってもらうなどしたことが認められるところ、原告X2の傷害が他覚的所見のない頚部痛及び頭痛等であることを考慮すると、原告X2の休業割合は、上記休業期間中平均して五〇パーセントと認めるのが相当である。
(イ) 原告X2の休業損害を、平成一九年の賃金センサス第一巻第一表、産業計、企業規模計、学歴計による全年齢女子労働者の平均年収三四六万八八〇〇円に基づいて算定すると、次のとおり、一四九万二〇五九円となる。
3468800÷365×314×0.5=1492059
エ 通院慰謝料 一一五万〇〇〇〇円
上記争いのない事実等(4)イ、上記アに認定の原告X2の傷害の内容、程度、通院期間等、諸般の事情を考慮すると、原告X2の通院慰謝料は、一一五万円をもって相当と認める。
オ 損害の填補
上記争いのない事実等(5)イのとおり、原告X2は、六二万五六六〇円の支払を受けたから、上記アないしエの合計三二六万八四三九円からこれを控除すると、その残額は、二六四万二七七九円となる。
カ 弁護士費用 二六万〇〇〇〇円
本件記録によれば、原告X2は、本件訴訟の提起、追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害は、二六万円と認めるのが相当である。
キ したがって、被告は、原告X2に対し、二九〇万二七七九円及びこれに対する不法行為の日である平成一八年一二月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
(3) 原告X3
ア 治療費 三二万八九一〇円
証拠(甲二〇、二一の一ないし一一、二三の一ないし一一、乙一一、原告X2)によれば、原告X3は、本件事故時に右手を打撲したこと、原告X3は、同月二〇日から、原告X2とともに小野整形外科皮膚科に通院するようになったこと、原告X3は、同日には、頚部痛、右手関節痛を訴えたほか、ストレスによると認められる脱毛が認められたこと、原告X3は、その後、関節可動域に制限は認められなかったものの、平成一九年六月まで断続的に頚部痛を訴えたこと、小野整形外科皮膚科のカルテには、同年七月から通院を止めた同年一〇月二六日までの間、原告X3について、概ね変化なしと連続して記載されていることが認められる(乙一一には、同年九月に、頚部の痛みが認められた旨の記載が認められるが、本件全証拠によっても、これが本件事故に起因するものであることを認めるに足りない。)。
以上の事実によれば、原告X3については、平成一九年六月末日まで治療の必要があったと認められる。
証拠(甲二二、二三の一ないし七)によれば、原告X3は、本件事故時から平成一九年六月末日までの治療費として、三二万八九一〇円(文書料を含む。)を支出したことが認められる。
イ 看護料 四万五〇〇〇円
原告X3の通院には、原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり一〇〇〇円として、四万六〇〇〇円の損害が発生したと主張する。
原告X3の本件事故当時の年齢からすると、原告X3が小野整形外科皮膚科に通院するについて、原告X2が付き添う必要があったというべきところ、証拠(甲一六、一七の一ないし一一、一九の一ないし一一、二〇、二一の一ないし一一、二三の一ないし一一)によれば、原告X3が小野整形外科皮膚科に通院した際には、ほぼ例外なく、原告X2も通院していることが認められるのであり、もともと原告X2自身も治療を受ける必要があり、通院の際に、子供一ないし三名を連れて通院したものであること、原告らの自宅と小野整形外科皮膚科とは比較的近くにあることに鑑みると、原告X3の通院付添費として、通院一回当たり一〇〇〇円が相当と認める。したがって、原告X3の通院付添費は、東大宮病院(一回)と小野整形外科皮膚科(四四回)について合計四万五〇〇〇円と認められる。
1000×45=45000
ウ 通院慰謝料 七五万〇〇〇〇円
上記争いのない事実等(4)ウ、上記アに認定の原告X3の傷害の内容、程度、通院期間等、諸般の事情を考慮すると、原告X3の通院慰謝料は、七五万円をもって相当と認める。
エ 損害の填補
上記争いのない事実等(5)ウのとおり、原告X3は、四四万〇八一〇円の支払を受けたから、上記アないしウの一一二万三九一〇円からこれを控除すると、その残額は、六八万三一〇〇円となる。
オ 弁護士費用 六万〇〇〇〇円
本件記録によれば、原告X3は、本件訴訟の提起、追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害は、六万円と認めるのが相当である。
カ したがって、被告は、原告X3に対し、七四万三一〇〇円及びこれに対する不法行為の日である平成一八年一二月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
(4) 原告X4
ア 治療費 一七万九七三〇円
証拠(甲二四、二五の一ないし一一、二七の一ないし一一、乙一二、原告X2)及び弁論の全趣旨によれば、原告X4は、本件事故当日の平成一八年一二月一七日、東大宮病院では、症状なしとの診断を受け、翌一八日には、頚椎について関節可動域制限なしとの診断を受けたこと、原告X4は、同月二〇日から、原告X2とともに小野整形外科皮膚科に通院するようになったこと、同日には、頭痛を訴えたほか、ストレスによると認められる脱毛が認められたこと、原告X4は、その後、平成一九年二月頃から頭痛のほか頚部痛を訴えるようになり、同年三月頃まで続いたこと、小野整形外科皮膚科のカルテには、同年四月から通院を止めた同年一〇月二六までの間、原告X4について、概ね変化なしと連続して記載されていることが認められる(乙一二には、同年九月及び同年一〇月に、頚部痛が認められた旨の記載が認められるが、本件全証拠によっても、これが本件事故に起因するものであることを認めるに足りない。)。
以上の事実によれば、原告X4については、平成一九年三月末日まで治療の必要があったと認められる。
証拠(甲二六、二七の一ないし四)によれば、原告X4は、本件事故時から平成一九年三月末日までの治療費として、一七万九七三〇円(文書料を含む。)を支出したことが認められる。
イ 看護料 一万九〇〇〇円
原告X4は、原告X4の通院に原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり三三〇〇円として、二〇万四六〇〇円の損害を主張する。
原告X4の本件事故当時の年齢からすると、原告X4が小野整形外科皮膚科に通院するについて、原告X2が付き添う必要があったというべきところ、証拠(甲一六、一七の一ないし一一、一九の一ないし一一、二四、二五の一ないし一一、二七の一ないし一一)によれば、原告X4についても、小野整形外科皮膚科に通院した際には、ほぼ例外なく、原告X2も通院していることが認められるのであり、もともと原告X2自身も治療を受ける必要があり、通院の際に、子供一ないし三名を連れて通院したものであること、原告らの自宅と小野整形外科皮膚科とは比較的近くにあることに鑑みると、原告X4の通院付添費として、通院一回当たり一〇〇〇円が相当と認める。したがって、原告X4の通院付添費は、東大宮病院(一回)と小野整形外科皮膚科(一八回)について合計一万九〇〇〇円と認められる。
1000×19=19000
ウ 通院慰謝料 三五万〇〇〇〇円
上記争いのない事実等(4)エ、上記アに認定の原告X4の傷害の内容、程度、通院期間等、諸般の事情を考慮すると、原告X4の通院慰謝料は、三五万円をもって相当と認める。
エ 損害の填補
上記争いのない事実等(5)エのとおり、原告X4は、四六万四〇五〇円の支払を受けたから、上記アないしウの合計五四万八七三〇円からこれを控除すると、その残額は、八万四六八〇円となる。
オ 弁護士費用 八〇〇〇円
本件記録によれば、原告X4は、本件訴訟の提起、追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任したことが認められるところ、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害は、八〇〇〇円と認めるのが相当である。
カ したがって、被告は、原告X4に対し、九万二六八〇円及びこれに対する不法行為の日である平成一八年一二月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。
(5) 原告X5
ア 治療費 一〇万一五三〇円
証拠(甲二八、二九の一ないし一一、三一の一ないし一一、乙一三、原告X2)及び弁論の全趣旨によれば、原告X5は、ホーム事故時にチャイルドシートをしていたものの、事故による衝撃を受けたこと、原告X5は、本件事故当日の平成一八年一二月一七日、東大宮病院では、症状なしとの診断を受け、翌一八日には、頚椎について関節可動域制限なしとの診断を受けたこと、原告X2は、同月二〇日から、自己が小野整形外科皮膚科に通院した際、原告X5を連れて行き、C医師の診察を受けさせ、平成一九年二月頃まで、それまでなかった夜泣きがひどくなったほか、車に乗ると泣いて嫌がるようになったと訴えたこと、これに対し、B医師は、原告X5を診察したものの、投薬などの措置を採らなかったこと、小野整形外科皮膚科のカルテには、同年三月以降から通院を止めた同年一〇月二六までの間、原告X5について、変化なしと連続して記載されていることが認められる(乙一三には、同年九月に、項部痛が疑われた記載が認められるが、本件全証拠によっても、これが本件事故に起因するものであることを認めるに足りない。)。
以上の事実によれば、原告X5について、本件事故に基づく身体的、精神的異常が生じたことにより夜泣きがひどくなったものであり、原告X5について医師による経過観察を受けさせる必要があったと認められ、その期間としては、平成一九年一月末日までをもって相当と認める。
証拠(甲三〇、三一の一ないし二)によれば、本件事故時から平成一九年一月末日までに要した治療費は、六万七八三〇円(文書料を含む。)と認められる。原告X5の同年二月一日以降の治療費については、本件事故との相当因果関係が認められない。
イ 通院付添費 一万一〇〇〇円
原告X5は、原告X5の通院に原告X2や原告X2の実母が付き添ったので、通院付添費として、通院一回当たり三三〇〇円として、二〇万四六〇〇円の損害を主張する。
原告X5の本件事故当時の年齢からすると、原告X5が小野整形外科皮膚科に通院するについて、原告X2が付き添う必要があったというべきところ、証拠(甲一六、一七の一ないし一一、一九の一ないし一一、二八、二九の一ないし一一、三一の一ないし一一)によれば、原告X5についても、小野整形外科皮膚科に通院した際には、ほぼ例外なく、原告X2も通院していることが認められるのであり、もともと原告X2自身も治療を受ける必要があり、通院の際に、子供一ないし三名を連れて通院したものであること、原告らの自宅と小野整形外科皮膚科とは比較的近くにあることに鑑みると、原告X5の通院付添費として、通院一回当たり一〇〇〇円が相当と認める。したがって、原告X5の通院付添費は、東大宮病院(一回)と小野整形外科皮膚科(四回)について合計五〇〇〇円と認められる。
1000×5=5000
ウ 通院慰謝料 一〇万〇〇〇〇円
上記争いのない事実等(4)オ、上記アに認定の原告の傷害の内容、程度、通院期間等、諸般の事情を考慮すると、原告X5の通院慰謝料は、一〇万円をもって相当と認める。
エ 損害の填補
上記争いのない事実等(5)オのとおり、原告X5は、三八万〇六一〇円の支払を受けたから、上記アないしウの原告X5の損害は、全部填補されたこととなる。
オ したがって、原告X5の被告に対する請求は、理由がない。
三 以上の次第で、原告X5の請求は理由がないからこれを棄却し、原告X5を除くその余の原告らの請求は、主文第一項ないし第四項の限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 岩田眞)
<以下省略>