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さいたま地方裁判所 平成21年(ワ)199号 判決 2010年4月14日

住所<省略>

原告

同訴訟代理人弁護士

福村武雄

神野直弘

住所<省略>

被告

株式会社ユーエスセキュリティー

同代表者代表取締役

Y1

同訴訟代理人弁護士

平野大

住所<省略>

被告

Y1

(就業場所)

住所<省略>

被告

Y2

(就業場所)

住所<省略>

被告

Y3

(就業場所)

住所<省略>

被告

Y4

上記5名訴訟代理人弁護士

楠忠義

主文

1  被告株式会社ユーエスセキュリティー及び被告Y1は,原告に対し,連帯して,2541万円及びこれに対する平成21年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は,原告と被告株式会社ユーエスセキュリティー及び被告Y1との間に生じたものは同被告らの負担とし,原告とその余の被告らとの間に生じたものは,原告の各負担とする。

4  この判決は,主文第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

(1)  被告らは,原告に対し,連帯して,2541万円及びこれに対する平成21年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)  訴訟費用は被告らの負担とする。

(3)  仮執行宣言

2  請求の趣旨に対する答弁

(1)  原告の請求をいずれも棄却する。

(2)  訴訟費用は原告の負担とする。

第2事案の概要

本件は,訴外TOPホールディング株式会社(以下「TOP」という。)が,被告株式会社ユーエスセキュリティー(以下「被告会社」という。)の未公開株を,原告に対し虚偽の事実を述べて被告会社又は訴外TOPの従業員をして原告に売りつけ売買代金を騙取したとして,被告会社に対し,主位的に,訴外TOPとの民法719条に基づき,又は,民法715条1項に基づき損害賠償請求し,予備的に民法703条,704条に基づき不当利得返還請求し,被告Y1(以下「被告Y1」という。),被告Y2(以下「被告Y2」という。),被告Y3(以下「Y3」という。)及び被告Y4(以下「被告Y4」という。)に対し,会社法429条1項に基づき,損害賠償請求した事案である。

1  前提となる事実(争いのない事実及び掲記の証拠により認められる。)

(1)  当事者

ア 原告は,昭和6年○月○日生まれの女性である。

イ 被告会社は,会社の目的を「紙及び再生紙の製造,加工,販売等」と登記している株式会社である。

ウ 平成18年10月から平成20年当時,被告Y1は,被告会社の代表取締役であり,被告Y2,被告Y3及び被告Y4は,被告会社の取締役であった。

(2)  被告会社の未公開株の原告に対する販売

ア 原告は,訴外A(以下「A」という。)及び訴外B(以下「B」という。)に「近いうちに上場され,その際は必ず値上がりする。」と断定的な説明による勧誘を受けて(以下「本件勧誘」という。),その勧誘を信じて,下記のとおり,被告会社発行の未公開株を購入し(以下「本件売買」という。),被告会社名義の銀行口座に売買代金を送金した(甲7の1ないし6,甲8の1ないし10,甲9の1ないし6,甲10,11の1ないし4,甲12,13の1,2,甲14,15の1,2,甲16,17の1ないし6,甲18,19の1ないし10,甲20,21の1,2,甲22,23の1,2)。

① 平成18年12月19日 10株購入 売買代金525万円

② 平成18年12月25日 6株購入 売買代金315万円

③ 平成19年5月1日 4株購入 売買代金210万円

④ 平成19年8月21日 2株購入 売買代金105万円

⑤ 平成19年10月11日 2株購入 売買代金105万円

⑥ 平成19年11月2日 6株購入 売買代金315万円

⑦ 平成19年12月14日 10株購入 売買代金525万円

⑧ 平成20年2月15日 2株購入 売買代金105万円

⑨ 平成20年3月10日 2株購入 売買代金105万円

上記合計44株(以下「本件未公開株」という。)売買代金2310万円

イ 上記売買代金のうち1575万円は,平成18年5月30日に開設された,被告会社名義の三井住友銀行東京中央支店普通金口座(口座番号7885258。以下「本件口座」という。)に振込送金された(乙6)。うち420万円は,代金振込先をUSS投資事業有限責任組合名義の預金口座に振り込まれた(甲12,14,20,22)。

(3)  本件未公開株の株券の裏面には,いずれも被告Y1に対して平成18年1月20日発行されたと印字され,株主名に原告名が記載されて,登録証印欄に被告会社名の印象が押印されている(甲8の1ないし10,甲9の1ないし6,甲11の1ないし4,甲13の1,2,甲15の1,2,甲17の1ないし6,甲19の1ないし10,甲21の1,2,甲23の1,2)。そのうち,一部は株主名に「USS投資事業有限責任組合」が記載され,次いで原告名が記載されてる(甲17の1ないし6,甲21の1,2,甲23の1,2)。

(4)  AとBは,「TOPホールディングス株式会社」の名刺(Bは「課長」の肩書き)と被告を勤務先とする「エンジェルパック一般小包便第2営業部」の肩書きが記載された名刺を原告に渡した(甲5,6)。

(5)  TOPは,平成17年10月3日,目的を「個人投資家への国内外の投資情報の提供,ベンチャー企業への投資及び経営合理化などに関するコンサルタント業務,投資に関するコンサルティング業務,有価証券の取得及び保有,投資事業組合財産の運用及び管理」等とし,訴外株式会社グローバルカードシステムから分割したとして設立登記がなされ,代表取締役はC他1名であったが,平成19年6月26日解散し,同日解散登記をして,平成20年4月30日清算結了の登記がなされている(乙1)。

(6)  被告Y1は,訴外株式会社ユニコジャパン(以下「ユニコ」という。)から,株式譲渡代金として,平成17年8月31日に300万円,同年9月30日に1000万円,同年10月25日に500万円を受領した(乙4の1ないし3)。

(7)  被告会社は,平成20年3月28日,USS投資事業有限責任組合から原告に対し,被告会社の普通株式4株(記号番号2A02577~02580)の譲渡承認を求められ,譲渡を承認した(乙5)。

(8)  本件口座へは,原告以外の個人顧客から,多くの振込入金(未公開株の売買代金)がある(乙6)。

2  原告の主張要旨

(1)  被告会社の責任

ア 不法行為に基づく損害賠償請求

(ア) TOPとの共同不法行為(民法719条)

① AとBはTOPの従業員として,原告に対し,本件勧誘をした。本件勧誘は,本件株式が上場される可能性が極めて低いのにもかかわらず,また,上場されても著しく低廉であったにもにもかかわらず,近いうちに上場され,その際は必ず値上がりすると断定的な判断を用いた,違法な未公開株式の販売勧誘行為であった(以下「本件不法行為」という。)。

被告会社は,TOPと共謀して,故意にこのような違法な勧誘行為をした。

② 仮に,TOPと共謀していなかったとしても,本件不法行為を知り得たのに被告名義の本件口座を開設して協力したり,漫然と株式譲渡の承認をし続けて株式購入行為を助長し,促進したのであるから,重大な過失による共同不法行為責任がある。

(イ) 被告会社の使用者責任(民法715条2項)

① 本件勧誘をしたAとBは被告会社の従業員である。AとBは業務の一環として,上記のとおり違法で暴利行為である本件勧誘を行った。

② 仮に,AとBは被告会社の従業員でなかったとしても,AとBを被告会社の従業員と同道させて営業させ,そのため名刺も作っていたのであるから,本件勧誘は,被告会社の業務の執行に付きなされたといえ,被告会社は,AとBの本件勧誘に対し,使用者責任を負う。

(ウ) 損害(代金額2310万円,弁護士費用231万円)

イ 民法703条,704条に基づく不当利得返還請求

(ア) 本件勧誘は,購入の対象となっていた本件株式の価値という重要事項について,上記のとおり,事実と異なることを知りながら虚偽の事実を告げて勧誘したといえる。したがって,本件勧誘は,消費者契約法4条1項1号に違反し,又株価の将来の不確実な事項について断定的判断の提供をしているので同法4条1項2号にも違反する。

原告は,被告に対し,本訴状をもって,消費者契約法4条1項1号,2号により,本件売買契約を取り消した。

(イ) 利得(代金額2310万円),民法704条後段の損害(弁護士費用231万円)

(2)  被告Y1,被告Y2,被告Y3及び被告Y4の会社法429条1項に基づく責任(被告Y1は代表取締役として,その余は取締役として)

ア 被告Y1の責任

本件勧誘は被告会社が組織的に行っている。被告Y1も,自ら本件株式を第三者への転売を知りながらユニコに売却し,被告名義の本件口座を開設したり,キャッシュカードを作成してTOPに交付したり,被告会社が上場を意図しているような書面を株主に送付してさらなる購入を促すなど,被告会社の代表取締役として,業務監督上の重大な任務懈怠がある。

したがって,会社法429条1項に基づき,本件勧誘に基づく原告の損害に対し,損害賠償責任がある。

イ 被告Y2,被告Y3及び被告Y4の責任

本件勧誘行為は,一部従業員の単発的な行為による偶発的なものではなく,被告会社が業として行った違法行為である。したがって,被告会社の取締役である被告Y2,被告Y3及び被告Y4は,被告Y1の上記アの任務懈怠行為に対し監督義務に違反した重大な過失がある。

したがって,会社法429条1項に基づき,本件勧誘に基づく原告の損害に対し,損害賠償責任がある。

ウ 損害(代金額2310万円,弁護士費用231万円)

3  被告の主張

(1)  被告会社は,原告に対し,本件株式を44株譲渡していないし,代金2310万円を受領していない。

被告Y1は,平成17年9月ころ,投資会社であったユニコジャパンに,被告会社の株式を譲渡した。ところが,その後,ユニコが被告会社に無断で,被告会社とは全く取引関係がない,投資情報の提供などを目的とする投資勧誘会社であるTOPに本件株式を譲渡し,その後,TOPが被告会社に無断で,原告に対し,継続的に販売した。

A及びBは,TOPの従業員であろうが,被告会社の従業員を装い,自社株と仮装して本件株式を原告に対して販売したのである。

そして,TOPは,自社株を販売しているかのように装うために,株券の裏面にはTOPの名義を隠し,被告Y1から直接原告に販売されたかのように表示し,さらに,振込指定口座を被告会社名義の本件口座とし,1575万円を振り込ませた(甲7,10,16,18)。

また,TOPは,被告会社を投資先として指定したUSS投資事業有限責任組合の組合員に原告を加入させる投資事業組合契約を締結させ,同組合から原告に本件株式が売買された表示をし,代金振込先を同組合名義の預金口座として(甲12,14,20,22),合計420万円を振込送金させた。

いずれの口座も,TOPが預金通帳,銀行印及び預金カードなどを保管し,管理していた。被告らは,本件口座への入金を知らなかったし,引き出しはしなかった。

本件口座は,ユニコから,将来の財務上の手伝いをするためにの預金口座として利用し,余剰金が生じたら被告会社のために貯めておくと言われ,被告会社使用の預金口座ではないと指示され,これを容認していたため,本件口座の利用実態が全く分からなかった。

(2)  以上から,被告会社は本件口座に対する入金額を利得していないし,USS投資事業有限責任組合名義口座に入金された金額は,不当利得していない。

(3)  被告会社は,損害賠償請求を受けた一部の株主との間で,株金額の返還に応じる和解をしたが(甲28),それは,TOPの配下で被告会社株式を販売した販売業者らが,被告会社の被害状況に配慮して,株式代金の返還に応じたからであり,被告が支払ったのではない。

今般,平成21年6月10日,本件株式の販売業者らが詐欺罪で兵庫県警に逮捕されたため,和解に応じられなくなったのである。

第3当裁判所の判断

1  前提となる事実及び証拠(甲5,6,8の1ないし10,9の1ないし6,11の1ないし4,13の1,2,甲15の1,2,甲16,17の1ないし6,甲19の1ないし10,21の1,2,甲23の1,2,甲26ないし31,乙1ないし3,4の1ないし3,乙5ないし10,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(1)  被告会社の事業と株式公開

ア 被告会社は,個人情報の記載された文書を回収し,再生紙として資源を再利用することを目的とする会社である。被告Y1は,被告会社の設立当初,株式を発行済み株式の約6割を所有していたが,自己所有株式を譲渡し,現在は株式占有率は25パーセント程度である。

被告Y1は,平成17年8月末ころから平成18年3月ころまで,所有する被告会社の株式約1130株をユニコに対し,1株平均4万円で売却し,代金4650万円程度を取得した。ユニコに売却した。被告会社は,その後増資したが,被告Y1の株式保有率は著しく低下している。被告Y1の株式売却は,起業者としては不自然である。

被告会社は,株式公開を目指しているが,本件当時も,現在も株式公開の具体的な予定や準備はなされていない。

イ 被告Y1は,ユニコが被告会社株を第三者に被告会社から直接第三者へ売却する形で売却することを予想していた。そのため,株券の裏側に株式譲受人欄を空欄にしたまま,第三者に売却する際にその譲渡承認がされていることを明らかにする趣旨で,被告会社印を押捺し,株券を引き渡した。

そこで,被告Y1は,その際,ユニコの代表者Dに対し,郵政公社との提携企業であるような誤解を招かないために郵政公社の名を出さないこと,株式公開が確実であるとは言わないこと,高額な価額で売却しないように申し入れた。

(2)  ユニコの被告会社株のTOPへの譲渡とTOPの被告株式の販売

ア ユニコは,被告Y1から購入した被告株式を,3分割して,TOPへ譲渡した。TOPは,本件株式を含む被告株式を,1株50万円程度で一般顧客に販売した。

イ AとBは,TOPの従業員であり,本件勧誘を行った。平成19年6月,TOPが解散してからは,被告会社に研修の立場で,被告会社の名刺を持って,従業員と一緒に営業に回った。本件売買のうち,被告会社に研修の立場であったときに,原告に勧誘したものがあり,その際,原告に対して被告会社の名刺を渡している。

(3)  被告会社とTOPとの関係

ア 被告Y1は,平成18年1月ころにユニコの代表者から紹介されてTOPの代表取締役であるC社長を知った。その後,同年2月ころ,原告Xがユニコに販売した株式の3分割し,TOPに販売するに際して,株券の発送方法とユニコとTOPが被告株式を販売した株主を確認するためにユニコの代表者のDが被告会社を訪れ,そのときCが同道してを正式に紹介された。

イ 被告Y1は,そのとき,被告Y1がユニコに販売した被告株式が,ユニコからTOPによって,700株程度は個人投資家に販売されていることを知り,TOPが投資事業を行う会社であると認識した。

ウ その被告会社は,TOPから4000万円の融資を受け(現在も返済中)た。

エ TOPは,平成19年6月に解散した。その際,被告会社は,Eから,TOPの従業員を研修として連れて歩いて欲しいと言われ,TOP従業員であったAとBを研修として預かり,名刺を作って,被告会社の事業である小包便の営業に被告会社の従業員と一緒に歩かせた。

被告Y1は,Eに対し,TOPが平成19年6月に解散する少し前に,被告会社の株式の販売は止めて欲しいと話し,被告会社では名義書換に応じないと強く話した。

(4)  本件口座の開設と同口座の利用

ア 被告Y1は,平成18年5月,TOPのEから,財務上の協力をする,又資金の協力をする,具体的には,USS投資事業組合を作り,同組合で販売する株式(被告株式同様に未公開株式)の販売を行いその代金の一部などを貯蓄して財務の手伝いをしたいと説明を受け,本件口座を開設した。

被告Y1は,本件口座の開設後その通帳とキャッシュカードをCに渡した。それによって,Cは本件口座に振り込まれた預金を自由に払い戻すことができることになった。

イ そのとき,本件口座とは別に,三井住友銀行,東京中央支店にも被告会社名義の普通預金口座を開設し,被告会社の代表印と銀行員をEに渡した。本件口座開設後に,TOPからの新たな融資はなかった。

(5)  被告の譲渡承認

被告Y1は,株券をユニコに対し,株券裏面の譲受人空欄のまま被告会社印を押捺して渡し,ユニコはこれを株券裏面の譲受人空欄のままTOPに譲渡し,原告に売却した都度,株券裏面の譲受人欄に原告の記名を印字して先に押捺された被告会社印と相まって,株券裏面の譲受人欄を譲受人原告として完成させて,原告に渡し,被告会社にはその都度譲渡承認を求めなかった。

そのため,被告Y1は,ユニコに売却した株式が誰に売却されているのか分からなかった。ただし,被告Y1は,譲渡承認を求められたらば,これに応じるつもりであった。

(6)  被告Y1に認識(TOPの被告会社株の販売内容)

被告Y1は,平成19年3月ころには,TOPが被告会社の株式を1株50万円程度で販売されていることを知ったが,TOPに販売価格での抗議をしなかった。

2  被告らの責任について

(1)  上記1の認定事実によれば,本件勧誘をしたAとBは,被告の従業員ではないけれども,被告の名刺を持って,本件売買を勧誘し,被告Y1が本件口座を開設し,TOPのEに本件口座を利用させ,TOPが解散した後も,AとBを預かり,その後も本件売買が続いていることなど,上記1の事実関係からすると,被告Y1は,TOPのCをユニコのDに紹介され,融資を受けるようになって,投資会社であるTOPが,被告Y1がユニコに売却した未公開の被告株式を,広く一般客に販売しようとしていること,その際,被告株式が上場を目指しており,上場された場合には,株価が上がり,利益が得られること,それも確実性が高いと,被告株式購入の利益を強調して販売することも半ば容認しつつ,TOPのEに対し,本件口座の開設と利用を承諾して応じたこと,その後,TOPが被告株式を1株50万円で売却していることを知った後も,融資を受けている関係もあって,TOPとの関係を切れないで容認してきたことものと推認できる。

(2)  以上の推認以上に,本件勧誘や本件売買に積極的に関わったことまでは推認できない。

(3)  以上によれば,被告Y1は,被告会社の代表者として被告名義の本件口座を開設しているから,本件勧誘に対し,被告会社に,TOPと民法719条の共同不法行為責任が成立すると解するのが相当である。

被告Y1は,被告代表者として,その業務において,被告会社が不法行為を行わないようにすべき義務があるから,任務懈怠であり,会社法429条1項の損害賠償責任が生じると解するべきである。

(4)  しかしながら,被告Y2,被告Y3及び被告Y4については,被告Y1の本件口座開設に対し,被告Y2,被告Y3及び被告Y4がどのような認識を有していたか明らかではなく,本件株式の販売が被告Y1の所有株式の売却であることから,被告Y2,被告Y3及び被告Y4に対し,会社法429条1項の損害賠償責任を認めることは困難である。

3  以上によれば,原告の被告会社及び被告Y1に対する請求は理由があるから認容し,その余の被告らに対する請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担については,民事訴訟法61条,65条1項本文を各適用し,訴訟費用の負担の裁判に対して仮執行宣言を付すのは相当でないから付さないこととし,主文のとおり判決する。

(裁判官 髙橋光雄)

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