さいたま地方裁判所 平成21年(行ウ)15号 判決 2010年2月24日
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第3争点に対する判断
1(1) 前記争いのない事実等によれば、本件督促処分は、原告が駐車禁止場所に本件車両を駐車したために、取り締まり警察官により確認標章を付けられたが、反則金の納付をしなかったため、本件車両の使用者として本件納付命令を受けたものの、その納付期限を経過しても放置違反金の納付をしなかったことから、なされたものである。したがって、本件督促処分は適法である。
(2) 原告は、納付命令の制度は、運転者の責任の追及が困難な場合に、補充的に使用者の責任追及をすることができるよう導入された制度であるから、運転者が特定されている場合には、そもそも法51条の4第4項の適用がなく、また運転者に対して公訴提起がされなかった場合にも、同条項ただし書きにより、車両の使用者に対する納付命令を発することができない旨主張する。
そこで検討するに、放置違反金の納付命令の制度は、駐車違反にかかる違反行為者たる運転者の責任追及を十分なしえない事態にかんがみ、車両の包括的な運行支配を有する使用者に対して放置違反金を課することによってその責任追及を強化し、もって違法駐車を抑止することを目的として導入された制度である。
そして、同制度が、本来的に使用者が負っている責任を強化するものであることからすると、同制度上の使用者の責任は、運転者の責任とは別個に追及しうるものといえる。法51条の4第4項ただし書きは、この両立する責任について、「当該違法駐車行為に係る事件について公訴を提起され」た場合には、車両の使用者に対する納付命令を発しないと規定している。
ところで、公訴を提起するか否かは、原則として検察官の専権に委ねられているのであって、運転者が反則金の納付をしない場合に、検察官の判断により運転者に対する公訴が提起されないことは当然に予定されているというべきである。にもかかわらず、上記ただし書きは、かかる場合を使用者に納付命令を発しえない場合として規定していない。
また、上記制度の目的に照らすと、同条項ただし書きは、既に運転者に対する責任追及がなされていると評価できる場合には、重ねて納付命令による使用者の責任追及をしないこととしたものと解すべきであって、この意味で、法は使用者の責任を補充的な責任と位置づけているといえるが、それ以上に、運転者に対して公訴提起をしない場合にまで使用者に対する責任追及を免れさせる趣旨を含むものと解することはできない。
そうすると、「公訴を提起され」た場合には、公訴提起をしない場合は含まれないものと解するのが相当である。
以上より、原告の上記主張には理由がない。
(3) さらに、原告は、実質的には原告車両は違法駐車車両に該当しないにもかかわらず、形式的に駐車禁止場所に駐車したということのみで、違法駐車車両に該当すると判断している違法があると主張する。
しかしながら、放置違反金の納付命令等の手続について定めた法51条の4によれば、駐車車両が、法51条1項にいう「違法駐車と認められる場合」であって、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にある場合に、確認標章の取り付けの対象となるところ、本件駐車場所は駐車禁止場所に指定されており、駐車禁止場所の指定は、公安委員会が交通の安全と円滑を図るなどのために必要があると認める場所について行われているものである(法4条、45条参照)。
本件では、上記争いのない事実等によれば、本件道路の幅員が、車道及び歩道を合わせて約18メートルであることが認められるが、このことによって直ちに本件道路についての駐車禁止場所の指定が不当とはいえず、他にこれを認めるに足りる事情もない。
以上より、原告の上記主張は採用できない。
2 以上のとおりであるから、本件督促処分は適法であり、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 遠山廣直 裁判官 八木貴美子 辻山千絵)