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さいたま地方裁判所 平成21年(行ウ)27号 判決 2011年5月25日

主文

1  本件訴えをいずれも却下する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第3当裁判所の判断

1  法76条1項は、土地区画整理事業の施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質変更若しくは建築物その他の工作物の新築等を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくはたい積を行おうとする者は、建設大臣が施行する土地区画整理事業にあっては、建設大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあっては都道府県知事の許可を受けなければならない旨定め、さらに同条2項は、都道府県知事は、前項に規定する許可の申請があった場合において、その許可をしようとするときは、施行者の意見を聞かなければならない旨定めている。

法が、土地区画整理事業の施行地区内において建築等を行おうとする者に対し、建設大臣施行の事業以外の場合に都道府県知事の許可を要する旨定めている趣旨は、本条が建築行為等を行おうとする者の私権の行使を制限するものであって重大な制約を課するものであることから、「事業の施行の障害となるおそれ」の判断にあたって、事業の遂行の見地に傾く可能性のある施行者よりも客観的な判断をなし得る者が適切であること、広く都市計画上、地域全体の状況からの判断も加えて許可するか否か、許可するとしても条件をつけるか否かを決すべきものとの考慮からであると考えられる。そして、許可する場合には事業遂行を行う施行者の意見を聞くことが要求されているものの、従前の土地所有者等に対する意見を聞くことは予定されていないのである。そうすると、同条は、専ら建築行為等を行おうとする者の私権の保護と事業の遂行の調整を図るために設けられた規定というべきであり、土地区画整理事業の施行区域内に従前土地所有権等を有していた者の個人的な利益を保護するものということはできない。なお、前提とされている仮換地指定処分が取り消される可能性があるとしても、そのことから法76条1項が施行区域内の土地所有者らの個別的利益を保護するものとは認められない。

そうであれば、本件敷地について土地所有権を有していたことを理由に原告らに本件許可の取消を求める法律上の利益があるとの主張は認められない。

2  よって、本件訴えを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 遠山廣直 裁判官 八木貴美子 水越壮夫)

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