さいたま地方裁判所 平成22年(わ)1054号 判決 2012年2月24日
主文
被告人を死刑に処する。
押収してある柳刃包丁1丁(平成24年押第4号の1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人は,Aと共謀の上,Aの養母であるBを殺害してその死亡保険金を詐取しようと企て,
1(平成22年11月25日付け公訴事実に係るもの)
平成20年3月13日,横浜市a区bc丁目d番e号所在のC方兼有限会社D事務所において,Aが,殺意をもって,B(当時46歳)に睡眠薬を服用させて睡眠状態に陥らせ,1階浴室の水を張った浴槽内にBを沈めて溺れさせ,よって,その頃,その場において,Bを溺水吸引による窒息により死亡させて殺害し,
2(平成23年2月10日付け公訴事実に係るもの)
Bを被保険者とするE損害保険株式会社の普通傷害保険に基づく死亡保険金を詐取するため,平成20年3月14日,横浜市f区gh番地i所在の有限会社F事務所から,Eと損害保険代理店委託契約を締結しているFの経営者Gを介し,同市j区kl丁目m番地所在のE横浜ビル5階E横浜火災新種損害サービスセンターの従業員Hに対し,真実は被告人らがBを殺害したものであるのにその事実を隠し,Bが事故により入浴中浴槽内で溺死した旨記載された,E事故受付票をファクシミリ送信するなどして嘘の事故報告を行い,さらに,同年5月20日頃,Gを介し,上記横浜火災新種損害サービスセンターに保険金請求書等を提出するなどして保険金の支払を請求し,E火災新種損害サービス部長Iに,Bが急激かつ偶然な外来の事故によって溺死したものであり,Eに保険金の支払義務があるものと誤信させて支払を決意させ,よって,同年7月31日,東京都板橋区no番p号所在の株式会社J銀行n支店に開設されたA名義の普通預金口座に3600万円を振込送金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。
第2被告人は,Aと共謀の上,二人のおじであるKが立ち上げた株式会社Lなどを巡る金銭トラブルから,邪魔者となったKを殺害しようと企て,
1(平成22年7月15日付け公訴事実第2に係るもの)
平成21年8月7日午前5時50分頃,埼玉県深谷市qr番地所在のK方において,Aが,殺意をもって,K(当時64歳)の左前胸部を柳刃包丁(刃体の長さ約21センチメートル。平成24年押第4号の1。以下「本件包丁」ともいう)で突き刺し,よって,その頃,その場において,Kを胸部刺創による失血により死亡させて殺害し,
2(平成22年7月15日付け公訴事実第3に係るもの)
上記1の日時,場所において,Aが,業務その他正当な理由による場合でないのに,本件包丁1丁を携帯した。
(証拠の標目)
(省略)
(事実認定の補足説明)
弁護人は,①第1(殺人及び保険金詐欺)の事実について,Bの死亡保険金3600万円がA名義の口座に振込送金されたことは争わないものの,(a)AがBを殺害した事実はなく,(b)仮にAがBを殺害していたとしても,被告人は,Aとの間で殺人及び保険金詐欺に関する共謀を遂げておらず,また,Bが殺害されたことを認識しつつ保険金の請求手続を行ったわけでもないから,無罪である旨,②第2(殺人及び包丁の不法携帯)の事実について,Aが実行行為を行ったことは争わないものの,被告人は,Aとの間で殺人及び包丁の不法携帯に関する共謀を遂げていないから,無罪である旨主張する。そこで,第1及び第2の事実を認定した理由を補足的に説明する。
以下において,第1の事実については,殺人の犯行現場がC方兼D事務所であることから「D事件」と,第2の事実については,Lなどを巡る金銭トラブルが契機となっていることから「L事件」と,それぞれいうこととする。
第1はじめに
本件の事実認定においては,被告人と共謀を遂げた旨のAの証言がとりわけ重要である。そこで,D事件及びL事件のいずれについても,まず,Aの証言及び被告人の捜査段階における自白を除いた関係証拠により両事件の事実経過等を認定し,それを踏まえて,Aの証言の信用性を検討することとする。
第2D事件について
1 Aの証言及び被告人の捜査段階における自白を除いた関係証拠により認められるD事件の事実経過等
(1) 被告人とAとの関係等
ア Dは,内装工事業等を営む有限会社であり,被告人の母親であるCが経営している。
イ 被告人は,高校卒業後,Dで内装工として働いていた。Aと被告人は,互いの母親が姉妹関係にある従兄弟同士であり,Aも,平成4年頃から約3年間,Dに住み込みで働いていた。
ウ 被告人は,Aのことを「M」と呼び,Aは,被告人のことを「兄貴」「Nさん」と呼んでいた。事件当時,被告人とAは,Aが被告人を信頼し,被告人の言うことを何でも聞くような関係にあった。
(2) AとBとの関係及び事件当日までBが置かれていた状況
ア Aは,平成18年11月8日頃,Bと出会い系サイトで知り合い,以降,Bの養子になるとともに,生活保護費を不正に受給させてそれを取り上げるなど,Bを金銭を得るための道具として利用していた。
イ Bは,平成19年6月頃,詐欺の事実で逮捕,起訴された。Aは,同年9月に行われたその公判に情状証人として出廷し,その際,被告人も,Aに頼まれて同行した。Bは,同月25日,保護観察付き執行猶予の判決を受けて釈放され,それ以後,ビジネスホテル,被告人の知人方,Aの実家などを転々とし,平成20年1月30日から事件発生当日まで,D事務所で寝泊まりしていた。Bは,Dで簡単な手伝いはしていたものの従業員ではなく,給料の支払も全く受けておらず,被告人やAが,BをDで働かせて欲しいとCに言ったこともなかった。
ウ Bは,DとAから金銭を借りた旨記載した架空の念書と借用書を平成19年10月8日付けで作成していた。Bは,その念書等について,同年12月12日付けの保護観察官宛の手紙に,「本当かどうか分かりませんが,500万のお金を使ったり迷惑をかけられたということで借用書と誓約書を書かされ取られています。逃げだしたら実家や子供の所に行ってお金を取り返すとか言われて脅されているので,何もできない」旨書き,また,同月18日に面接した保護観察官に対し,「借用書と誓約書は,Oさん(被告人のこと)かAが持っている。アパートを用意するので売春しろと言われて売春した」旨述べていた。
なお,この念書及び借用書は,後日,被告人の内妻方から発見された。
エ Bは,平成20年になってから,Cに対し,「Aから売春させられました。Nさん(被告人のこと)に命令されているとAが言ってました」などと話したことがあった。Cは,それを聞いてすぐに被告人を呼び出し,事実を問い質したところ,被告人は,それを否定した。
(3) Bの傷害保険加入状況
被告人は,Bが釈放された9日後の平成19年10月4日,高校の先輩であるGが経営するFの事務所にBを連れて行き,Gに対し,「Dに新しい従業員が入ったので,労災を掛けるまでの間にけがしたりしても困るから,傷害保険を掛ける」などと言って,BをEの普通傷害保険に加入させた。この保険の死亡保険金額は,特約が外されるなどして3600万円となった。
なお,Cは,当時,Dの従業員を別の団体保険に加入させており,その死亡補償金は500万円であった。
(4) 事件前後の被告人らの行動
ア AとBは,平成20年3月12日夜から翌13日未明にかけて,D事務所で酒を飲んでおり,その途中,被告人がD事務所に来た。
イ Bは,平成20年3月13日の早朝,起きてふらふらと歩きながらトイレに行き,それを見たCから声をかけられたが,反応しなかった。また,トイレから戻ってきたとき,ズボンの後ろの辺りから一,二メートル程の長さのトイレットペーパーを引きずっており,それを見たAらに大笑いされたが,それにも反応せず,意識が朦朧とした状態であった。
ウ 被告人とCは,平成20年3月13日午前8時頃,車でD事務所を出発し,被告人の本妻方で被告人の次男を預かって,同日午前9時頃,D事務所に戻り,Aを乗車させて近くのファミリーレストランに出かけ,食事をした。被告人,C,Aらは,同日午前11時過ぎ頃,D事務所に戻り,Cが,浴槽内に沈んでいるBを発見した。被告人は,119番通報をした上,係員の電話による指示に従いBを浴槽から引き上げるなどした。D事務所に臨場した救急隊員は,Bが死亡していることを確認し,神奈川警察署に通報した。
エ D事務所に臨場した警察官は,被告人から,「私が事情を説明します」などと申し出られたため,主として被告人から事情を聴取した。その際,被告人は,「前日,Bは深夜まで酒を飲んでいた。日本酒を一升瓶の半分近く飲んだ。Bは,躁うつ的なところがあって,アルコール依存症的なところもあった」旨説明した。警察官は,被告人の説明等を踏まえて,Bが,飲酒して入浴し,浴槽内で寝込んでしまったために溺死したものと判断し,Bの死亡を犯罪によるものではなく,事故死として処理した。
(5) Bの遺体の状況等
監察医は,平成20年3月14日,Bの遺体の検案を実施し,溺水吸引による窒息死と判断した。監察医は,Bの遺体の解剖を行わなかったが,検案時にBの遺体の心臓血を採取した。その血中エタノール濃度は,0.1ミリグラムパーミリリットル未満であった。
なお,この測定は,下限値が0.1ミリグラムパーミリリットルであったから,血中エタノール濃度が下限値未満であることは明らかであるものの,その正確な数値は分からないということになる。
(6) 被告人がBの死亡保険金の請求手続等をした状況
ア 被告人は,Bが死亡した翌日である平成20年3月14日,Gに対し,Bが入浴中に浴槽内で溺死した旨報告した。
イ Bの法定相続人は,Aのほかには,同じくBの養子になっていたPと,Bの実子二人がいた。被告人は,平成20年4月頃,Bの元夫に電話で連絡を取り,Bが死亡したこと,Bが会社の傷害保険に加入していて,死亡保険金を請求できることを伝えた上で,実子からAに傷害保険の受取りを委任するよう頼んだが,その際,保険金額については一切話さなかった。
ウ 被告人は,平成20年5月20日頃,保険金請求書及び法定相続人3人の委任状(保険金の受取り等をAに委任する旨のもの)を,Gを介して,E横浜火災新種損害サービスセンターに送付した。
(7) 死亡保険金振込直後の被告人らの金銭の費消状況
ア 平成20年7月31日,Eから,第1の2に認定したAの口座にBの死亡保険金3600万円が振込送金された。Aは,その日のうちに全額を引き出して被告人の内妻方に持参した。
イ Aは,平成20年7月31日,当時同居していた内妻のQに対し,800万円持って帰る旨のメールを携帯電話で送信した。
ウ 被告人は,平成20年7月31日,本妻方の家賃45万円余りを支払った。これは,滞納していた3か月分と同年8月分の合計額である。また,被告人は,同年8月7日,滞納していた内妻の治療費合計227万円余りを支払ったほか,同月上旬,2回にわたり内妻あるいは本妻らと旅行して合計30万円余りを支払った。さらに,Gに対し,同年7月末に300万円を,翌8月に500万円をそれぞれ貸した。
2 Aの証言について
(1) Aの証言の内容
Aは,D事件に関し,被告人との間で共謀を遂げた経緯,犯行の準備や実行の状況,犯行後の状況等について,概略,次のとおり証言している。
ア 私は,かねて被告人のことを何でもできるすごい人だと思っており,ずっと被告人について行こうと考えていた。被告人から,被告人と私との関係をマジンガーZというロボットに例えて,被告人が頭で,私が体だと言われて,そうだなと思ったことがあった。
イ 私は,Bと知り合ってから,金銭を得るための道具としてBを利用していたが,次第にBを目障りで邪魔な存在と感じるようになり,平成19年9月頃,被告人に相談した。すると,Bに保険を掛けて殺害し,保険会社から死亡保険金を騙し取ればよいと提案され,そんなことも考えつくのかと感心した。
ウ その後,私は,被告人の指示で,Bを監視下に置き売春をさせるなどしていた。この頃,被告人と私とで,Bに,Dからお金を借りたという架空の念書と,私からお金を借りたという架空の借用書を書かせた。被告人は,これらの念書と借用書を書かせた理由について,Bが逃げないようにするためと,保険金がもしBの子供に渡った場合でも,借用書等をBの家族に見せて保険金を回収できるようにするためである,と話していた。
エ 私は,平成20年3月11日深夜から翌12日未明にかけて,被告人から,同月13日にBを浴槽内に沈めて殺害しろと言われた。借金の返済や生活費に困り,欲しい車もあったし,これを断ったら被告人に捨てられるかもしれないなどと思って,二つ返事で承諾した。殺害は,被告人が用意した飲み物にロヒプノールという睡眠薬を混ぜてBに飲ませ,水を張った浴槽内に沈めて溺れさせるという方法で行うことになった。また,犯行時,被告人はアリバイを作るために外出すること,Bが死亡した時間を分からなくするために,風呂を追い炊き状態にすること,殺害後の警察及び救急隊への対応や保険金請求の手続はすべて被告人が引き受けることなどが決まった。後日,被告人から,同月12日頃にB殺害の実行を決意した理由について,Bが,その頃,Cに対して被告人に売春させられたと話したため,そのことに腹が立ったからだ,と聞かされた。
オ 被告人が,平成20年3月13日未明,ドリンク剤などを買ってD事務所に来た。私は,被告人と二人で台所に行き,ロヒプノール15錠程度を包丁で細かく刻み,ドリンク剤2本にロヒプノール七,八錠分ぐらいずつ入れた。被告人は,1本は試し用で1本は本番用だと言っていた。私が,同日午前2時半から3時頃,そのうちの1本をBに飲ませたところ,Bは5分から10分ぐらいですぐに眠った。Bは,同日午前5時か5時半頃,起きてトイレに行ったが,まともに歩けていなかった。トイレから出てくると,トイレットペーパーを背中の後ろに尻尾みたいにつけており,それを皆に笑われたが,全く反応していなかった。そして,またすぐに寝てしまった。
カ 被告人とCは,平成20年3月13日午前8時頃,D事務所を出発した。その際,被告人から午前9時までにはBを風呂に沈めておくよう言われた。私は,まだ薬が効いているBを揺すって起こし,本番用のドリンク剤を飲ませた。15分ぐらいすると,Bが,軽くたたいたり,ゆすったりしても起きない状態になった。同日午前9時頃,Bの服を脱がせて,風呂場まで連れて行き,水を張った浴槽内に沈めて殺害した。風呂を追い炊き状態にするなどした後,被告人に携帯電話で連絡をして迎えに来てもらい,被告人らと近くのファミリーレストランに行った。被告人やCらとともにD事務所に戻ると,Cが浴槽内に沈んでいるBを発見した。
キ Bの死亡保険金請求の準備や手続はそのほとんどを被告人が行った。平成20年7月31日,保険金3600万円が私の口座に振り込まれると,私は,その日のうちに,被告人とともに銀行に行って全額を引き出し,被告人の内妻方に持って行き,被告人に全額を手渡した。被告人から必要な額を聞かれたので,借金の返済と生活費などで600万円と答えたら,車の購入代金と併せて800万円でいいだろうと言われ,その場で800万円を手渡された。Q方に向かう途中,200万円で車を買ったため,Q方には600万円を持って行った。
ク 被告人は,平成20年7月31日に約280万円で車を,翌8月1日に約52万円で内妻方の各種電化製品をそれぞれ購入し,これらの支払に保険金を充てていた。さらに,被告人は,本妻方や内妻方の家賃や光熱費も保険金から支払っていた。
(2) Aの証言の信用性について
ア Aの証言は,全体として上記1の認定事実とよく整合しており,事態の推移を説明するものとして自然である。のみならず,被告人との間でBの殺害及び死亡保険金の詐取に関する共謀を遂げたという核心的部分は,上記1の認定事実のうち,とりわけ,Aと被告人との関係,Bの傷害保険への加入手続及びBの死亡保険金の請求手続に被告人が主体的に関与した状況,死亡保険金の支払後に被告人が多額の金銭を費消した状況等によって裏付けられているといえる。
イ Aの証言は,例えば,①釈放された後のBを宿泊させたビジネスホテルを,後日,被告人と二人で「ホテルあの世の手前」と言っていたとか,②被告人とともにロヒプノールをドリンク剤2本に入れる作業をした際,ドリンク剤の商品名が「ポップだな」と言って笑い合ったとかなど,具体的なエピソードを交えつつ,事実経過を詳細に述べたものであって,実際に体験した者にしか語り得ない臨場感に富んでいる。また,弁護人の反対尋問にも全く動揺していない。
ウ Aは,捜査段階でD事件を自白した理由について,「死刑は怖いが,遺族の立場になって考えると話さないといけないと思った。子供に面と向かって,罪を償って出てきたと言いたかった」旨,また,被告人に対する思いについて,「被告人の指示があってやったことではあるが,自分も欲があってやったことなので十分重い責任があり,二人の責任に違いはない。被告人に対する恨みとかの気持ちはない」旨それぞれ述べ,心情を率直に吐露している。また,記憶になかったり,曖昧だったりする事柄については,その旨有り体に述べている。このように,Aは,その証言態度が真摯かつ誠実である。
エ Aは,D事件の殺人の被疑事実により逮捕される約4か月半も前であって,L事件の被疑事実により逮捕される前でもある平成22年6月20日に,自ら上申書を作成してD事件を自白している(Aの証言。甲124)。このように,Aは,D事件の取調べが始まっていなかったと思われる時点で自ら自白し,それ以来これを維持している。しかも,当初から一貫して被告人と共謀の上でBを殺害した旨供述しているのであって,この供述が変転した形跡はない。
オ Aは,D事件,L事件を含む殺人等の罪で起訴され,既に無期懲役刑の判決が確定して受刑中なのであるから,今更,自己の刑事責任を軽減させるために,殊更に虚偽の証言をして被告人に責任を転嫁する理由がない。
カ これらによれば,被告人との間でBの殺害及びその死亡保険金の詐取に関する共謀を遂げ,自らBの殺害を実行した旨のAの上記証言の信用性に疑いを差し挟む余地はないというべきである。
なお,弁護人は,Aの上記証言の信用性をるる論難するが,いずれも関係証拠を正解せずに独自の見解を述べるものにすぎず,採用できない。念のため付言すると,弁護人は,薬学者であるRの科学的証言に照らせば,Aが,その証言するように,D事件当日の午前2時半から3時頃,ロヒプノール七,八錠分ぐらいを入れたドリンク剤をBに飲ませたのだとすると,当日の午前5時か5時半頃,Bが自ら起きてトイレに行くことはあり得ないから,Aの証言は信用できない旨主張する。なるほど,Rは,Aの証言する量のロヒプノールを服用した場合,服用から約3時間しか経過していない時点で,一人で立って歩くのはまず不可能であるという趣旨の証言をしている。しかし,それは,実験結果等の実証的なデータに基づくものではなく,あくまで専門家とはいえ一人の学者の推測に留まるものであるから,この証言を根拠にして,Bが自ら起きてトイレに行くことがあり得ないとまで断定することはできない。また,上記1に認定したとおり,Bは,事件当日の早朝,ふらふらと歩きながらトイレに行くなど意識が朦朧とした状態にあったところ,Bの死亡時の血中エタノール濃度は極めて低い数値であったことに鑑みると,Bが意識の朦朧とした状態にあったのは,飲酒したことに原因があるとは考えられないから,多量の睡眠薬を服用したことによるものとみることが可能である。このように,Aの上記証言は,Rの証言により否定されるものではないばかりか,かえって,Bが,事件当日の早朝,意識の朦朧とした状態にあったという事実により裏付けられているといえる。弁護人の上記主張は採用できない。
3 被告人の弁解について
(1) 被告人は,当公判廷において,D事件に関し,概略,次のように弁解している。
ア Bが釈放される前,私は,Aから,BがDの傷害保険に入れるかと聞かれた。BがDに入っても,すぐに辞めるかもしれないので,Dの従業員が入る保険には加入させず,GのFに連れて行くことにした。Bと二人でFの事務所に行き,Dで働くことになった女性として,BをGに紹介した。Aから,けがをしたり死んだりしたときに対応できる保険がよいと聞かされていたので,そのままGに伝えた。その後,GとBは二人で保険の話をしていたが,その中味をほとんど聞いていなかった。
イ 私は,AにBの殺害を指示したことはないし,AからBを殺害しようという話が出たこともないし,Bに睡眠薬を飲ませたこともない。
ウ Bが溺死した当日,たまたまGから私に電話があって,それをきっかけにAが私に保険金を請求してくれと頼んできた。私は,何も分からないので,Gが集めてくれといった書類を指示どおりに集めただけである。保険金請求手続については,AとGが直接やり取りをすることはなく,すべて自分が間に入って行った。
エ 平成20年7月31日,Aの口座に3600万円が振り込まれると,Aは,全額引き出して,私の内妻方に持参し,私に渡してきた。Aにはとりあえず必要と言った金額の800万円を手渡し,残りの2800万円は私が預かることになった。Aが口座に入った保険金を全額引き出して私に預けたのは,Aには銀行にお金を預けておくという習慣がないからだと思う。
(2) 被告人の弁解の信用性について
ア 被告人の弁解は,上記1の認定事実,とりわけ,Aと被告人との関係,Bの傷害保険への加入手続及びBの死亡保険金の請求手続に被告人が主体的に関与した状況,死亡保険金の支払後に被告人が多額の金銭を費消した状況等に照らして,不自然,不合理である。
イ 被告人は,捜査段階の一時期,Aと共謀してBを殺害し,その死亡保険金を詐取した旨の供述もしていたのに,その後に供述を変遷させて否認に転じた理由について,何ら合理的な説明をなし得ていない。
なお,弁護人は,被告人の上記自白について,取調官の利益誘導,脅迫に基づくものであって,任意性を欠く旨主張する。しかし,①被告人と弁護人との接見状況(甲96),②被告人の取調べを担当した警察官であるSの証言(その信用性は高いといえる)により認められる取調べ状況,③被告人が,L事件で起訴された約1週間後であり,D事件の殺人の被疑事実により逮捕される約3か月半前である平成22年7月21日に,自ら上申書を作成して,初めてD事件について自白したという経緯等に照らせば,自白の任意性は優に認められ,弁護人の主張に沿う被告人の公判供述は信用できないから,弁護人の上記主張は採用できない。
ウ これらによれば,被告人の弁解は信用できないというべきである。
第3L事件について
1 Aの証言及び被告人の捜査段階における自白を除いた関係証拠により認められるL事件の事実経過等
(1) 被告人とKとの間の金銭トラブルについて
ア K方は,平成21年4月27日,隣家の火災により類焼し,同年5月22日,県民共済から,K名義の口座に火災共済金946万円余りが振り込まれた。さらに,Kは,被告人の協力を得て株式会社Tに対して火災保険金を請求することになった。Kは,被告人の保険金請求やTとの交渉の手際のよさなどに感心して,同年6月,火災共済金の中から500万円を被告人に預け,運用して増やすよう依頼した。
なお,Kは,この頃,被告人の勧めによりLを設立して葬儀屋を始めることにし,被告人にLの通帳や印鑑を預けた。
イ Kは,平成20年7月6日,Tから火災保険金825万円余りが振り込まれると,同月15日,そのうちの500万円をL代表K名義の口座(以下「L口座」という)に振込入金した。被告人は,同月16日から同月28日にかけて,この口座から合計498万円を引き出した。
ウ Kは,平成21年7月,姉のUにLの話をした。すると,上記Uから,Kの体調が芳しくないことや,葬儀屋は一朝一夕にできる仕事ではないことを理由に反対され,さらに,被告人に預けたLの通帳や印鑑を返してもらうよう説得された。これに応じて,被告人に通帳等の返還を求めたものの,被告人が返さないため,同年8月4日,L口座を利用停止にし,その残高を調べたところ二,三万円しかないことが分かった。
エ Kは,平成20年8月6日,L口座の残高の少なさなどに怒りを募らせて,Lの件をやめることを決意し,予定されていたL用の電話回線とファックス回線の設置工事を拒否し,業者を追い返した。さらに,訪ねてきた被告人に対し,「金を返せ。裁判を起こす。弁護士にも言ってある」などと言ったところ,被告人はかなり焦っている様子であった。
(2) 被告人とAの犯行前後の行動について
ア 被告人とAは,平成20年8月6日午後0時前頃,埼玉県東松山市内のファミリーレストランで会って話をし,そこを出ると,被告人の運転する車で川崎市内の被告人の内妻方に行き,被告人がAに本件包丁を渡した。その後,二人は,被告人の運転する車でD事務所に行き,Aが軍手と作業服を入手した。
イ Aは,平成20年8月6日午後5時半頃,車でD事務所を出発すると,同日午後11時頃,K方付近に到着し,その後,K方に入った。Aは,同日午前5時50分頃,本件包丁を使用して第2に認定した実行行為を行った。
(3) 犯行前後に被告人とAとの間で交わされたメールの内容等について
L事件の当日である平成20年8月7日,Aと被告人との間において,携帯電話により,次のようなメールや電話のやり取りがされた。Aは,被告人に対し,午前1時に「おきてひそんでました たぶんわれます ばらしは もみあいでよいですか」というメールを,午前5時21分に「がたがたして よなか おきてまってました いまやっとねましたが こいきかれてます いまやりますか」というメールをそれぞれ送信した。被告人は,Aに対し,午前5時24分に「じょうきょうはんだんはまかすいまがめんどうなしとおもう」というメールを送信した。Aは,被告人に対し,午前5時55分に「おわりましたが まわらがおきていてどうすればよいですか」というメールを送信した。Aは,被告人に対し,午前5時59分に電話をかけて16秒間通話し,被告人は,Aに対し,午前6時01分に「戸締まり確認」というメールを送信した。
2 Aの証言について
(1) Aは,L事件に関し,被告人との間で共謀を遂げた状況,犯行を実行した状況,犯行の前後に被告人との間でメールや電話のやり取りをした状況等について,概略,次のとおり証言している。
ア 被告人は,平成21年5月頃に私の紹介した人間との間で,葬儀屋を立ち上げて,2000万円くらいの融資を受けて儲けようという話をしていた。被告人は,火災被害により火災共済金などを手に入れていたKにこの話を持ちかけたところ,Kは乗り気になっていた。
イ Kは,Lで融資を受ける話について,平成21年の7月末から8月初め頃,心境が変わったのか,被告人との間でトラブルになっていたようだった。同年8月6日,被告人と,東松山のファミリーレストランで会った際,被告人が,「KがLをやらない,金を返せと言ってきている。自分の子供の悪口を言ってきた」などと話した後,「もう許せねえ,殺してくれないか」などと頼んできた。私は,「被告人を邪魔する者は全部排除しよう。既にBを殺害していたので,前に行くのも地獄,後ろに行くのも地獄だ。被告人が儲かれば自分も儲かる」などと考え,二つ返事で承諾した。その場で,被告人から,K方の合鍵を渡され,実行日は早ければ早いほうがよいと言われたので,その日に行くと答えると,Kが寝ている夜10時以降がよいと言われた。被告人から,自殺に見せかけるためにK方の包丁を使えとも言われたが,切れる包丁がなかったらどうするのか尋ねたところ,被告人の内妻方にある包丁を取りに行くということになった。
ウ 私と被告人は,ファミリーレストランから川崎市内の被告人の内妻方に向かう車中で,自殺に見せかけるために,Kのどこをどのように刺せばよいかという話や,殺害の報酬の話などをした。被告人の内妻方に着くと,被告人から本件包丁の入った紙袋を渡された。そこから車でD事務所に行き,私は,指紋が残らないようにするための軍手などを用意した。
エ その後,私は,被告人と別れ,車でD事務所を出発し,平成20年8月6日午後11時頃,K方付近に着いた。K方の様子を窺ったり,携帯電話で被告人と話をしたりした後,K方に入ると,予想に反してKが起きていたので,飲酒しながら話をすることになった。このとき,被告人に対し,「Kが起きて待っていた。自殺に偽装するのは無理なので,殺害する方法は,自殺じゃなくて,もみあった形で殺す方法でもいいですか」という内容のメールを送信した。
オ 平成20年8月7日の早朝,Kが寝てしまった。私は,被告人に対し,「Kと話をして,寝るチャンスを窺っていた。近所の人に声を聞かれてしまっているが,今殺害しますか」という内容のメールを送信した。近所の人に声を聞かれていると書いたのは,そうすれば,被告人が待ったをかけてくれるのではないかと思ったからである。すると,被告人から,「状況判断は任せる。今が問題ないと思う」という内容のメールが返ってきたため,今,殺害しろという意味だと思った。軍手をはめて本件包丁を取り出し,寝ているKを覗いていたところ急に寝返りを打ったため,驚いてそのままの勢いで刺してしまった。当初は自殺に見せかけようと考えていたが,実際にはそんな余裕がなかった。
カ 私は,殺害後,被告人に対し,「終わりました」という内容のメールを送信した。返信がなかったため,被告人に電話をかけたところ,被告人から,「戸締まりを確認しろ。もう周りが明るいので,夜まで待て」などと指示があった。しかし,Kが死んでいる部屋で夜まで待てるわけもないから,「待てない」と答えた。
キ 私は,K方を出た後,車で川崎市内の被告人の本妻方に行き,被告人と合流した。その際,被告人にご苦労さんと言われた。
(2) Aの証言の信用性について
ア Aの証言は,全体として上記1の認定事実とよく整合しており,事態の推移に関する説明として自然である。のみならず,被告人との間でKの殺害に関する共謀を遂げたという核心的部分が,上記1の認定事実,とりわけ,Aと被告人との間で犯行前後に交わされたメールの内容等によって裏付けられているといえる。
イ Aの証言は,例えば,被告人が,本件包丁をAに渡した際,被告人のDNAを消すために漂白剤に漬けてきたなどと言っていたなど,具体的なエピソードを交えつつ,詳細に事実経過を述べたものであって,体験した者にしか語り得ない臨場感に富んでいる。また,弁護人の反対尋問にも全く動揺していない。
ウ Aは,L事件の当日のうちに,知人のVを訪ね,Vが恐怖を覚えるほどのただならぬ雰囲気で,「おじさんが好きだったのに,被告人が言うから殺した。被告人とおじさんとの間でトラブルがあり,被告人がものすごく怒って,私におじさんを殺せという話になった。被告人から渡された包丁で胸の辺りを刺した」旨話をして,犯行を打ち明けている(Vの証言)。AがVに打ち明けた時期や状況,既にD事件を打ち明けていたというAとVとの関係(Vの証言)に照らせば,その述べた内容の信用性は極めて高いといえるのであって,Aのこのような言動は,Aの証言の信用性を裏付けているといえる。
エ Aの証言態度が真摯かつ誠実であることは,D事件で説明したのと同様である。
オ Aは,L事件の被疑事実により逮捕される約3週間前の平成22年6月3日に,自ら上申書を作成してL事件を自白し(Aの証言。甲124),それ以来,これを維持している。しかも,当初から一貫して被告人と共謀の上でKを殺害した旨供述しているのであって,この供述が変転した形跡はない。
カ Aには,今更,虚偽の証言をして被告人に責任を転嫁する理由がないことは,D事件で説明したのと同様である。
キ これらによれば,被告人との間でKの殺害に関する共謀を遂げ,自らKを殺害した旨のAの上記証言の信用性に疑いを差し挟む余地はないというべきである。なお,弁護人は,Aの上記証言の信用性をるる論難するが,いずれも関係証拠を正解せずに独自の見解を述べるものにすぎず,採用できない。
3 被告人の弁解について
(1) 被告人は,当公判廷において,L事件に関し,概略,次のように弁解している。
ア 私は,Aが暴力団から借りた金の返済を援助したり,Aの儲け話を信じて300万円渡すなどして,Aに合計数百万円の金を貸していた。しかし,Aは,何かと理由をつけて返済をしていなかった。
イ Aは,平成21年8月6日,「他から融資を受けて700万円を必ず返す。返せなかったら腹を切る。そのときは脇差しか何か貸してくださいね」などと言っていた。そこで,内妻方で,「駄目だったらこれで腹切れよ」などと言って,Aに本件包丁を渡した。
ウ その後,Aは,融資先と話をつけると言ってどこかに行った。平成20年8月6日から翌7日にかけての夜中に,Aから,「融資してくれると言ってたのに,融資してくれない。相手とけんかになるからやっちゃっていいか」という内容のメールが送られてきた。意味がよく分からないから返信しないでいたところ,翌7日の朝方に,Aから,「相手が寝るのを待っていた。今からやりますか」というようなメールが来た。何をやるのか意味が分からなかったが,お前が勝手に決めろよという内容のメールを返信した。そうすると,Aから,「身動きがとれません」だったか,「周りが起きています」とかいうメールが来た。これも意味が分からなかったので返信しなかったら,Aから電話があり,身動きがとれないと言っていた。そこで,中にいるんだったら内鍵かけて頭抱えて隠れていろという意味で,「戸締まりをしろ」という内容のメールを送信した。
(2) 被告人の弁解の信用性について
ア 被告人の弁解は,Aが単独でKの殺害を決意した理由について,何ら説得的な説明をしていないなど,その内容自体が不自然,不合理である。
イ 被告人の弁解は,上記1の認定事実,とりわけメールの文面に照らしても,不自然,不合理である。
ウ これらによれば,被告人の弁解は信用できないというべきである。
第4結論
以上の次第で,被告人は,Aとの間で,D事件及びL事件のいずれに関しても共謀を遂げていたことが明らかである。弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
罰条
第1の1及び第2の1の各所為
いずれも刑法60条,199条
第1の2の所為
刑法60条,246条1項
第2の2の所為
刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第3号,22条
刑種の選択
第1の1,第2の1の各罪
いずれも死刑を選択
第2の2の罪
懲役刑を選択
併合罪の処理
刑法45条前段,46条1項本文,10条(犯情の重い第1の1の罪について選択した死刑で処断するので,他の刑を科さない)
没収
押収してある柳刃包丁1丁(平成24年押第4号の1)
刑法46条1項ただし書,19条1項2号,2項本文(第2の1の犯行供用物件で被告人以外の者に属しない)
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件の量刑に当たっては,とりわけ,①結果の重大性,②犯行の計画性や冷酷さ,③動機に酌量の余地がないこと,④Aに比して責任が相当に重いことを重視した。
犯行により二人の生命が奪われている。Bは,Aに金銭を得るための道具として利用され続けた挙げ句,利用価値がなくなったとみなされるや,やっかい払いをするかのごとく保険を掛けられて殺害された。Kは,被告人の言動に不信を抱き,資金の返還を求めるなどしただけであるのに,有無を言わさず殺害された。いわれのない理由で理不尽に生命を奪われたB及びKの無念さは,察するに余りある。結果は極めて重大である。
D事件についてみると,被告人らは,Bを傷害保険に加入させた上,Bに多量の睡眠薬を混入したドリンク剤を飲ませて熟睡させ,事故死に見せかけるため注意を払いつつ,水を張った浴槽内に沈め溺死させて殺害し,さらに死亡保険金3600万円も取得している。D事件は,周到に準備されて巧妙に敢行された計画性の高い,冷酷な犯行である。そればかりか,被告人らは,Bを殺害してその命を多額の金銭に換えたのであって,そのような利欲的でおぞましい動機に酌量の余地などない。
L事件についてみると,被告人らは,Kに設立させたLに多額の融資を受けさせて儲けようとしたのに,Kが,被告人に不信を抱き,Lの件をやめると言い出したり,資金の返還を求めたりなどしたことから,邪魔者となったKを自殺に見せかけて殺害することを決意した。そして,凶器等を準備してK方に赴き,酔って眠ってしまったKの左胸を,本件包丁で,その刃先が身体やその下の座布団を貫いて畳に達するほど力を込めて突き刺して殺害している。L事件も,計画的に実行された冷酷,非道な犯行である。のみならず,その余りにも身勝手な動機にやはり酌量の余地はない。
被告人とAの責任の違いを検討すると,D事件では,被告人が,Bに保険を掛けて殺害することを発案した上,自ら傷害保険の加入手続をし,犯行直前には,Bの言動に立腹していよいよその殺害を決意するや,Aに対し,殺害の実行やその具体的方法などを指示している。さらに,殺害後は,警察官等に対し,事故死を装って嘘の説明をし,死亡保険金の受取りに関する手続を行い,支払を受けた保険金の7割を超える2800万円を得ている。L事件では,被告人が,自らにとって邪魔者となったKの殺害を計画した上,Aに対し,その実行を依頼するとともに凶器やK方の合鍵を与え,さらに,現場から携帯電話で連絡,相談をしてきたAに指示をしているのである。これらに照らせば,被告人は,いずれの事件においても,終始主導的立場から,被告人に逆らうのことのないAを意のままに動かし実行行為を担わせていたと認められるのであって,その責任はAに比べて相当に重いというべきである。
以上に加えて,遺族らの被告人に対する処罰感情が峻厳であり,とりわけBの遺族が極刑を望んでいること,被告人は,捜査段階で罪を認めた時期があったものの,その後は不合理な弁解に終始し,責任逃れに汲々としているのであって,反省,改悛の情が窺われないことを併せ勘案すると,被告人の刑事責任は誠に重大である。被告人に対しては,死刑をもって臨まざるを得ないと判断した。
(求刑 死刑 本件包丁の没収)
(裁判長裁判官 田村眞 裁判官 安藤祥一郎 裁判官 湯浅雄士)