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さいたま地方裁判所 平成22年(行ウ)6号 判決 2011年1月26日

主文

1  本件訴えをいずれも却下する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第3当裁判所の判断

1  争点(1)(本件訴え1は適法か)について

(1)  本件訴え1は、a及びbらが本件廃棄物を除去すべき排出事業者に該当するとして、原告が被告に対し、法19条の5第1項に基づく措置命令及び法19条の8に基づく行政代執行をなすよう求めている訴えであり、法令に基づく申請を前提としていない義務付けの訴えであるから、行政事件訴訟法3条6項1号、37条の2所定の非申請型義務付けの訴えに当たる。そして、非申請型義務付けの訴えにおいては、「一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があることが訴えの適法要件の1つとされている(同条の2第1項)。

(2)  これを本件についてみると、原告は、本件廃棄物が除去されないことにより原告に生じる損害として、①本件廃棄物により本件第2土地を取得した原告の環境権及び財産権が侵害されていること、及び、②本件廃棄物が除去されなければ、本件第2土地に老人福祉センターを建設する事業計画が実現できず、原告は同計画により予定していた利益を得ることができないことを主張する。

しかし、上記①及び②のいずれの損害も、填補が可能な財産上の損害であるところ、これが「重大な損害」に該当すると認めるに足りる証拠はない。よって、本件訴え1は非申請型義務付けの訴えの適法要件を充たさず不適法である。

2  本件訴え2について

本件訴え2は、平成23年4月1日から本件廃棄物の除去が完了するまでの間、1か月30万円の割合による金員の支払を求めるものであり、これは将来の給付を求める訴えに当たる。将来の給付を求める訴えは、「あらかじめその請求をする必要がある場合」でなければ提起することができないとされているところ(民事訴訟法135条)、本件において、原告が被告に対し、あらかじめ上記の請求をする必要性があるといえる事情を認めるに足りる証拠はない。

したがって、「あらかじめその請求をする必要がある場合」には当たらないから、本件訴え2は将来給付の訴えの適法要件を充たさず、不適法である。

(裁判長裁判官 遠山廣直 裁判官 八木貴美子 髙部祐未)

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