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さいたま地方裁判所 平成25年(ワ)927号 判決 2015年9月30日

主文

1  原告X1の請求を棄却する。

2  被告は、原告保険会社に対し、1012万9472円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  原告保険会社のその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は、原告X1と被告との間においては、全部原告X1の負担とし、原告保険会社と被告との間においては、これを10分し、その7を原告保険会社の負担とし、その余は被告の負担とする。

5  この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1  甲事件

被告は、原告X1に対し、8610万2375円及びこれに対する平成21年12月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  乙事件

被告は、原告保険会社に対し、3274万9991円及びこれに対する平成23年11月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は、当事者間に争いがないか、争うことを明らかにしない事実である。)

(2) 本件事故の発生

ア  日時 平成20年11月21日午後9時5分頃

イ  場所 群馬県多野郡<以下省略>

ウ  事故態様 原告X1が、原告車両を運転して、別紙1の図面記載のとおり、一般県道(335)上野・小海線(以下「本件県道」という。)を、ぶどう峠方面から群馬県上野村方面に向けて走行中、進行方向右側の山側斜面(以下「本件斜面」という。)から落石があり、当該落石が原告車両のフロントガラス等に衝突し、その衝撃により、原告車両は、本件道路の進行方向左側(谷側)のガードレールに接触し、その後、a橋の欄干に衝突して停止した。

なお、本件斜面には、土留め用の鉄製大型枠工(以下「本件大型枠工」という。)が階段状(土台を含めると4段)に設置されていたが、落石を防ぐための防護柵や金網等は設置されていなかった。(甲A1、3、乙1、20)

(3) 原告X1の既存障害

原告X1は、平成15年8月2日午前6時5分頃、福島県大沼郡<以下省略>付近において、大型自動二輪車を運転中、谷へと転落し、頸髄損傷の障害(以下「本件既存障害」という。)を負った(以下、この事故を「前回事故」という。)。

損害保険料率算出機構さいたま自賠責損害調査事務所(以下「さいたま自賠責損害調査事務所」という。)は、平成16年8月12日、本件既存障害について、自動車損害賠償保障法施行令(以下「自賠法施行令」という。)別表第二第14級10号に当たると認定した。(甲A3~5)

(4) 後遺障害の等級認定

さいたま自賠責損害調査事務所は、平成22年12月1日、原告の後遺障害について、現存障害を自賠法施行令別表第一第2級1号、本件既存障害を自賠法施行令別表第二第3級3号の加重障害と認定した。

原告X1が、平成23年3月7日、本件既存傷害の上記等級認定を不服として異議申立てをしたところ、さいたま自賠責損害調査事務所は、同年4月15日、本件既存障害を同別表第二第5級2号に変更した。(甲A6~8)

(5) 本件保険契約に基づく保険金の支払

ア  本件保険契約の内容は、以下のとおりである(甲B1、2)。

(ア)  保険の目的 原告車両

(イ)  保険期間 平成19年11月22日から1年間

(ウ)  保険金額 人身傷害3000万円(ただし、第1級、第2級又は第3級3号若しくは4号に掲げる後遺障害が発生し、かつ介護が必要と認められる場合は、6000万円が限度となる。)及び車両150万円

(エ)  被保険者 原告X1及びA

イ  原告保険会社は、本件保険契約に基づき、平成20年12月1日、Aに対し、車両保険金175万1640円を支払い、平成23年11月15日までに、原告X1に対し、人身傷害保険金3192万3191円を支払った。(甲B1、4、6)

第3当裁判所の判断

1  前記前提となる事実に、証拠(甲A2、4~8、13、15~21、22の1・2、24、31、甲B5、11~14、乙1~6、9~13、22、23、28、31、32、証人B、証人C、原告X1)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

(1)  本件県道

ア 本件県道は、長野県と群馬県の県境にあるぶどう峠(標高1510m)と同県上野村楢原とを結ぶ道路であり、左右ともに急な山地に接している山間部を縫いながら、曲がりくねって走る形状となっている。なお、同区間の道路は舗装されていて、区間延長は15.8kmであり、自動車の交通量は、平成22年に実施された調査によると、午前7時から午後7時までの時間帯で75台、午前7時から翌午前7時までの時間帯で94台であった。

イ 本件県道では、法面及び道路の防災点検について、職員パトロール及び巡視員パトロールを実施しているところ、本件事故の前後を通じて、本件事故現場では、落石や転石の報告はなかった。しかし、本件事故の発生以前に、本件斜面と地続きの斜面であって、本件事故現場から約30m離れた地点にあるb橋付近では落石が発生した旨の報告例があり、また、ぶどう峠寄りの道路には落石注意の標識が出ている。さらに、本件事故現場からぶどう峠寄りの尾根側(山側)の道路に面した斜面の一部には、落石防止のために、ネットが張られたり、コンクリートが吹き付けられたりしている箇所があった。

(2)  本件事故現場

ア 本件事故現場周辺は、別紙3の位置図記載のとおり、被告が指定する北沢鳥獣保護区の南端部に近接し、当該鳥獣保護区の南側は、自然環境保全地域に指定されており、国有林が茂っていることから、野生動植物の生息地、生育地として重要な地域となっている。

本件事故現場周辺では、パトロール員や本件県道の維持管理を受託している建設会社の関係者及び地元の住民によって、沿道におけるニホンジカの姿が頻繁に目撃されており、被告も、本件事故以前から、本件事故現場周辺にニホンジカ等の野生動物が出没することを認識していた。そして、本件事故後の調査においても、本件大型枠工の頂部周辺にニホンジカの糞が数箇所にわたってあることや、直上部の斜面に沿って足跡があることが確認されている。

イ 本件斜面には、土留め用の本件大型枠工が階段状(土台を含めると4段)に設置されており、本件大型枠工の頂部には、約1.5mの平地がある。そして、その上部に別紙4の「上野小海線落石箇所横断図」記載のとおり約27~30度の勾配の緩斜面が水平距離で4m続いており、この部分から上方に向かって、徐々に平均勾配38.8度(最急勾配41.9度)の急斜面となっている。

本件斜面上には、直径20cm前後の石が多数散在している。

ウ 本件道路の道幅は約5.4mであり、別紙1の図面記載のとおり、谷側にはガードレールが設置されている。

(3)  前回事故

原告X1は、平成15年8月2日午前6時5分頃、福島県大沼郡<以下省略>付近において、大型自動二輪車を運転中に谷へと転落した。その結果、原告X1は、四肢麻痺となり、頸髄損傷、右肘部管症候群、腰部脊柱管狭窄症と診断された。その後、左半身の麻痺が残存し、左上肢装具及びロフストランド杖なしでは歩行不能の状態となった。

さいたま自賠責損害調査事務所は、平成16年8月12日付けで、本件既存障害について、時間の経過とともに左下肢を中心に運動機能の低下が強く認められるところ、一般的に時期をおいて増悪した症状については、交通事故のような外傷に起因したものとは捉え難いなどとして、前回事故との因果関係が不明であることを理由に、自賠法施行令別表第二第14級10号に当たると認定した。

(4)  前回事故後の原告X1の稼働状況

ア 原告X1は、平成19年6月1日から平成20年3月31日までの間、原告X1の妹の夫が事実上の経営者である株式会社c工芸(以下「c工芸」という。)本社工場に補助職員として勤務し、事務室の補助作業や工場の補助作業に従事した。原告X1は、前回事故により、左半身が不自由な状況であり、いずれも、椅子に座ったり、杖をついてもできる作業であった。

イ 原告X1は、同年4月1日から、c工芸の関東・東京地区の営業担当(契約社員)として雇用され、以下のとおり給与を得ていた(なお、原告X1は、本件事故の翌日である同年11月22日から欠勤している。)。

(ア) 同年4月分 37万8000円

(イ) 同年5月分 36万円

(ウ) 同年6月分 37万8000円

(エ) 同年7月分 39万6000円

(オ) 同年8月分 37万8000円

(カ) 同年9月分 36万円

(キ) 同年10月分 39万6000円

(ク) 同年11月分 25万2000円

(5)  本件事故

ア 原告X1が、平成20年11月21日午後9時5分頃、別紙1の図面記載のとおり、原告車両を運転して、ぶどう峠方面から群馬県上野村方面に向けて、本件県道を原告車両で走行中、本件斜面から落石があり、当該落石が原告車両の運転席側のフロントガラスやドアガラスに直撃し(フロントガラスにひびが入った。)、その衝撃により、原告車両は、本件県道の進行方向左側(谷側)のガードレールに接触し、その後、b橋の欄干に衝突して停止した。本件事故の直後、本件道路上には小さな石から拳大の石まで多数散乱していた。

イ 原告X1は、同日の午後11時20分頃、本件道路付近から約5km下ったところで、携帯電話により藤岡警察署へ本件事故の発生を通報した。

ウ d土木事務所の所長であったDは、同年12月11日、被告の県土整備部長に宛てて、本件斜面からの落石により本件事故が発生したものであり、本件道路は通常有すべき安全性を欠いており瑕疵があったとする事故報告書を作成した。

(6)  本件事故後の原告X1の入通院状況

ア 原告X1は、平成20年11月26日、e病院で初めて診察を受けた。e病院のE医師(以下「E医師」という。)は、原告X1の病名を頸椎捻挫、右母指、右膝捻挫とし、同月21日(本件事故日)より約2週間の安静通院加療を要する見込みと診断した。

原告X1は、同年12月11日、E医師に対し、入院を希望する旨の申出をしたものの、E医師は、入院の適応はないと回答した。

イ 原告X1は、①平成21年3月5日から同月30日までの間、f病院に、②同日から同年6月30日までの間、gリハビリテーションセンターに、③同年7月1日から同月31日までの間、e病院に、④同年8月10日から同年9月10日までの間、h病院(以下「h病院」という。)にそれぞれ入院した。

また、原告X1は、①平成20年12月17日から平成22年2月4日までのうち4日間、gリハビリテーションセンターに、②平成20年11月26日から平成22年2月3日までのうち14日間、e病院に、③平成21年1月5日から同年12月7日までのうち7日間、f病院に、④平成21年12月24日、h病院にそれぞれ通院した。

ウ 平成21年6月12日付けのgリハビリテーションセンターからe病院へ宛てた診療情報提供書には、本来、当初の目的は達成され、自宅退院も可能と考えられるが、原告X1の転院希望が強く、e病院を紹介することとした旨の記載がある。

また、原告X1が、e病院に入院し、リハビリをしていた際には、基本動作は起居から立位まで全て自立、床からの立ち上がりも両上肢、右下肢を使用した自立レベル、移動は屋内、屋外ともに片ロフストランド杖にて自立、ADL(日常生活動作)は全て自立レベルであった。e病院のF医師は、h病院に宛てて平成21年7月22日付けで作成した診療情報提供書において、現在は、PT、OT施行し、左短下肢装具装着し、片松葉杖により屋外歩行も可能となっていること、歩行時に左大腿後面の痛み、右尺骨神経の痺れを認めているが、日常生活を送ることはほぼ問題なく可能であること、本来の当初の目的は達成され、自宅退院も可能と思われるが、原告X1の転院希望が強く、h病院を紹介することとしたことなどを記載している。

さらに、原告X1は、h病院に入院し、身体の状態に合わせて機能訓練を行い、日常生活動作能力等を向上させる目的でリハビリテーションを行ったところ、同病院でも、ADLは、入浴以外全て自立レベルであり、同年8月14日には、屋外坂道の歩行や階段の昇降を安定して行うことができていた。また、h病院のリハビリテーション総合実施計画書には、環境欄に、自宅改造及び福祉機器及び介護保険サービスはいずれも不要であること、第三者の不利欄に、退院後の主介護者、家族構成の変化、家族内役割の変化及び家族の社会活動の変化もいずれも不要であることがそれぞれ記載されている。

エ 原告X1は、h病院を退院した後、痛み、痺れ等が日々増強し、日常生活を送るのが困難となった。また、原告X1は、被告及び原告保険会社との本件事故の補償に関する交渉に疲れ、適応障害、うつ状態を発症し、i病院に通院をするようになった。さらに、排便・排尿障害も現れるようになり、杖を用い20~30歩くのが限度の状況である。

オ 原告X1は、平成22年2月4日、gリハビリテーションセンターのG医師により、平成21年12月31日、症状が固定したとの診断を受けた。なお、平成22年2月4日にG医師により作成された後遺障害診断書(甲A2。以下「本件後遺障害診断書」という。)の「傷病名」の欄には、「頸髄損傷」との記載があり、「他覚症状および検査結果 精神・神経の障害」の欄には、「XPでは骨傷ないが、MRIにて脊髄腫脹像、C4/5、5/6、6/7髄内輝度変化を認める。痙性四肢不全麻痺を認め、本来麻痺は、左に強いが、右上肢は肘部管症候群の影響もあり、障害が著しい。握力は、右12kg、左14kg 日常生活は、左手での片手動作となっており、右手は物を抑える程度の補助手機能となっている。歩行は、ロフストランド杖および左短下肢装具を使用しており、杖装具なしでは歩行不可能。うつ病の併発あり、精神科通院中。」との記載がある。

(7)  後遺障害の等級認定

ア さいたま自賠責損害調査事務所は、平成22年12月1日、本件後遺障害診断書に、本件既存障害として、「頸髄損傷、右肘部管症候群、腰部脊柱管狭窄症」との記載があり、平成15年12月3日時点における「脊髄症状判定用(本件事故(平成20年11月21日)以前)」(gリハビリテーションセンター発行/平成22年8月12日付け)上、「Brown Sequard typeのC5/6での頚損」、「左肩関節拘縮(+)外転90°」、「左下肢装具装用しロフストランド杖使用で歩行、杖・装具なし歩行不能」との記載があることからすると、脊髄症状のため労務に服することは困難であり、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」として、本件既存障害は自賠法施行令別表第二第3級3号に当たると認定した。

他方において、さいたま自賠責損害調査事務所は、①「四肢体幹の痺れ、右上肢運動障害、左下肢運動障害、排尿・排便障害」等の症状については、本件後遺障害診断書上、頸髄損傷の傷病名が認められ、提出の画像及び神経学的所見の推移等から、本件事故の頸髄損傷による症状と捉えられること、②その障害の程度については、本件後遺障害診断書や「脊髄症状判定用(症状固定時付近)」(gリハビリテーションセンター発行/平成22年8月12日付け)によれば、本件既存障害より右上肢の障害の悪化が目立ち、排尿障害もあること、歩行能力低下もみられロフストランド杖及び左下肢装具を使用しても、屋内における短距離の歩行をする程度であること、屋外では車椅子を併用していることが認められるところ、脊髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時他人の介護を要するものと認められるとして、現存障害は、自賠法施行令別表第一第2級1号に当たると認定した。

イ 原告X1が、平成23年3月7日、本件既存障害に係る上記アの認定を不服として異議申立てをしたところ(前回事故の後、訓練により運動能力が回復し、1日当たり8時間、週に4、5日間、150~250kmの距離を小型ワゴンを運転して営業活動に従事するまでに回復したことなどを理由に、本件既存障害の認定は重きに失するとするもの)、さいたま自賠責損害調査事務所は、同年4月15日、本件既存障害は、上記アと同様の理由から脊髄症状のために労務に服することは困難なものと捉えられるが、原告X1の本件事故直前の就業実態として、平成19年6月1日から平成20年3月31日までの間、補助職員として臨時採用され、同年4月1日からは営業職員として有期契約採用されていることを理由に、現存障害は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として、自賠法施行令別表第二第5級2号に当たると認定した。

2  争点(1)(本件道路の設置又は管理上の瑕疵の有無)について

(1)  国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するのが相当である(最高裁昭和45年8月20日第一小法廷判決・民集24巻9号1268頁参照)。そして、当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである(最高裁昭和53年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁参照)。

(2)  これを本件についてみると、前記認定のとおり、本件斜面は、平均勾配38.8度(最急勾配41.9度)の急斜面となっており、本件斜面には直径20cm前後の石が多数散在しているのであるから、これらの石が風雨等の自然的環境の下で落石しやすい状況となることは否定されないというべきである。そして、これらの石に、何らかの衝撃や振動等が加われば、落石に至ることは十分に想定されるところである(前記認定のとおり、本件事故現場周辺では、パトロール員や本件県道の維持管理を受託している建設会社の関係者及び地元の住民によって、沿道におけるニホンジカの姿が頻繁に目撃されている上、本件事故後の調査においても、本件大型枠工の頂部周辺にニホンジカの糞が数箇所にわたってあることや、直上部の斜面に沿って足跡があることが確認されていることからすると、ニホンジカ等の動物が、本件斜面上の石に衝撃を加える可能性もある。なお、被告が、本件事故の発生以前から、本件事故現場周辺にニホンジカ等の野生動物が出没することを認識していたことも前記認定のとおりである。)。現に、本件事故の直後、本件道路上には小さな石から拳大の石まで多数散乱していたし、本件事故の発生以前に、本件斜面と地続きの斜面であって、本件事故現場から約30m離れた地点にあるb橋付近では落石が発生した旨の報告例もある。加えて、ぶどう峠寄りの本件県道上には落石注意の標識が出ており、本件事故現場よりぶどう峠寄りの尾根側(山側)の本件県道に面した斜面の一部には、落石を防止するためのネットが張られたり、コンクリートが吹き付けられたりしていた箇所もあるのである。確かに、本件斜面上には、本件大型枠工が存在するが、前記認定のとおり、本件大型枠工は、土留め用に設置されたものであって、落石防止を目的としているものではないばかりか、原告保険会社の依頼により、技術士の資格を有するj事務所のBが、本件斜面上で落石の実験をすべく、本件斜面上で石を転がしたところ、本件大型枠工の上部で当該石が跳ねて本件道路上に落下したことが認められ(甲B11、12、証人B)、これによれば、本件大型枠工は、落石防止のための十分な機能を有していないというべきである。

以上によれば、本件道路は、本件事故当時、客観的にみて落石の危険性があったものであり、被告もそのことを認識することが可能であったというべきである。

それにもかかわらず、被告は、本件事故当時、本件斜面上からの落石を防止するため防護柵を設置するなど適切な措置を採っていなかったものであり(なお、群馬県内の山間部の道路において、動物による落石のリスクを考慮して、防護策を講じた例も存在する。証人C)、本件道路は、道路として通常備えるべき安全性を欠いていたと認めるのが相当である。

(3)  これに対し、被告は、①本件道路付近では、本件事故以前に、落石や転石が発生したという報告はなかった、②本件事故後、被告の担当者が、本件斜面の上部から、その付近の幾つかの石を本件道路に向かって転がす実験をしたところ、石は、いずれも本件斜面の途中にある木の根や窪地等に引っかかるか、又は本件大型枠工の棚板部分で止まり、本件道路に落ちることはなかった、③平成20年11月18日に、本件県道のパトロールが実施されているが、本件道路に落石があった事実はなかったこと、同月13日以降、本件事故現場周辺には降雨がなかったこと、本件斜面には枯れ枝が茂っていたことなどからすれば、被告において、本件大型枠工を乗り越えて本件道路に到達するような落石が発生することを具体的に予見することは不可能であった、④被告は、職員及び外注を含めた態勢により、本件道路を含む本件県道の維持及び保全業務を遂行し、落石や転石等が本件県道上に認められる場合には、それを除去するとともに、日記に記録し、本件県道を通行する車両や利用者に不測の被害が発生しないよう管理を尽くしていたなどとして、本件事故は、想定外の態様で発生したものであり、被告が本件事故を回避することは不可能であったと主張する。

しかし、前記認定のとおり、本件道路の交通量は少ないことからすれば、落石や転石の報告例がないからといって、本件事故以前に落石等がなかったと断定することはできない。また、被告による実験の結果、石が本件道路に落ちることがなかったとしても、それは、飽くまで被告による実験の条件(石に加えたエネルギー等)の下で、そのような結果になったというにすぎず、当該実験結果をもって、本件斜面から本件道路へ落石することが通常ではあり得ないと結論付けることはできない(現に、上記認定のとおり、Bがした実験では、本件斜面上で転がした石が本件道路上に落下したことが認められる。)。さらに、平成20年11月18日に実施された本件県道のパトロールにおいて、本件道路に落石があった事実がなかったこと、同月13日以降、本件事故現場周辺で降雨がなかったこと、本件斜面には枯れ枝が茂っていたことは、いずれも本件斜面から本件道路に到達する落石があることを否定する重大な条件ということはできない。加えて、前記認定のとおり、被告は本件県道の維持及び保全業務を遂行していたことは認められるものの、上述したところによれば、それが必要にして十分なものであったとまでいうことはできない。

以上によれば、本件事故が想定外の態様で発生したものであって、被告が本件事故を回避することは不可能であったなどということはできず、被告の上記主張は、採用することはできない。

3  争点(2)(原告車両が橋の欄干に激突したことによる原告X1の受傷と本件事故との間の因果関係の有無)について

(1)  前記認定のとおり、原告X1は、夜間に、原告車両を運転し、山間部にある本件道路を走行していたところ、本件斜面から、突然落石があり、それが運転席側のフロントガラスやドアガラスを直撃したこと、そして、フロントガラスにひびが入ったことから視界が十分に確保されないこととなったことが認められる。そうすると、このような突発的な事態に遭遇した後、本件斜面の反対側にあるガードレールに衝突し、谷への転落の危険を回避しようとして右に転把したところ、この時点で、ブレーキの踏み込みが弱くなり、b橋まで走行してその欄干に激突して停車したとしても不自然であるとまではいえない。

したがって、原告車両がb橋の欄干に激突して原告X1が受傷したことと本件事故との間には相当因果関係があるというべきである。

(2)  これに対し、被告は、本件事故の発生日は、本件道路の路面は乾燥しており、原告車両が当時時速40kmで走行していたとすると、その停止距離は約17mであるところ、これは本件事故現場からガードレールまでの距離とほぼ同程度であること、そうすると、原告X1は、本件事故の際に、ブレーキを強く踏んだことがうかがわれることから、原告車両はガードレール付近で停止できたはずであるところ、原告車両は同所で停止することなく、さらにそこから13、4m先のb橋まで走行していることなどからすれば、原告車両がb橋の欄干に衝突するに至った経緯は、通常とはかけ離れた不自然なものであるといわざるを得ず、原告車両が当該欄干に激突し原告X1が受傷したことと本件事故との間には相当因果関係がないと主張する。

しかし、上記説示のとおり、原告X1が、原告車両に落石が直撃した後、b橋まで走行しその欄干に衝突するに至ったことは不自然であるとまではいえないのであって、被告の上記主張は採用することができない。

4  争点(3)(本件事故により原告X1が被った損害の内容及び額)について

(1)  原告らは、原告X1が、本件事故により、頸髄損傷を負ったと主張し、これに沿う証拠として、G医師作成の本件後遺障害診断書及び意見書(甲A18)等がある。

しかし、頸髄損傷とは、外傷に伴う瞬時の物理的外力による中枢神経である脊髄組織の打撲、挫滅、内出血又は断裂をいうところ、原則として事故(受傷)直後又は1、2日以内には、最悪の症状を呈することとなり、その後、多くは、時間の経過と共に、症状が改善していくものとされている(乙13、18、24~27)。しかるに、前記認定のとおり、原告X1は、本件事故の5日後である平成20年11月26日、e病院で初めて診察を受けたばかりか、E医師は、原告X1の病名を頸椎捻挫、右母指、右膝捻挫とし、同月21日(本件事故日)より約2週間の安静通院加療を要する見込みと診断したにすぎないこと、原告X1は、同年12月11日、E医師に対し、入院を希望する旨の申出をしたものの、E医師は、入院の適応はないと回答したことが認められる。加えて、前記認定のとおり、その後、原告X1は、①平成21年3月5日から同月30日までの間、f病院に、②同日から同年6月30日までの間、gリハビリテーションセンターに、③同年7月1日から同月31日までの間、e病院に、④同年8月10日から同年9月10日までh病院にそれぞれ入院したところ、平成21年6月12日付けのgリハビリテーションセンターからe病院へ宛てた診療情報提供書には、本来、当初の目的は達成され、自宅退院も可能と考えられるが、原告X1の転院希望が強く、e病院を紹介することとした旨の記載があること、また、e病院に入院した際には、基本動作は起居から立位まで全て自立、床からの立ち上がりも両上肢、右下肢を使用した自立レベル、移動は屋内、屋外ともに片ロフストランド杖にて自立、ADL(日常生活動作)は全て自立レベルであったこと、e病院のF医師は、h病院に宛てて平成21年7月22日付けで作成した診療情報提供書において、現在は、PT、OT施行し、左短下肢装具装着し、片松葉杖により屋外歩行も可能となっていること、歩行時に左大腿後面の痛み、右尺骨神経の痺れを認めているが、日常生活はほぼ問題なく可能であること、本来の当初の目的は達成され、自宅退院も可能と思われるが、原告X1の転院希望が強く、h病院を紹介することとしたことなどを記載していること、さらに、原告X1は、h病院でも、ADLは、入浴以外全て自立レベルであり、同年8月14日には、屋外坂道の歩行や階段の昇降を安定して行うことができていたこと、それにもかかわらず、原告X1は、h病院を退院した後、痛み、痺れ等が日々増強し、日常生活を送るのが困難になり、適応障害、うつ状態を発症し、i病院に通院をするようになった上、排便・排尿障害も現れるようになるなど重篤な身体的症状を呈するようになったことなどが認められる。仮に、原告X1が、本件事故によって頸髄損傷を負ったとすれば、このように、本件事故後、重篤な症状を呈することなく推移し、9箇月以上が経過してから、症状が最悪の状態になるということは考え難いというべきである(乙13)。

この点に、①医療法人k病院脊椎外科に勤務しておりlセンターの顧問でもあるH医師は、本件事故後、e病院及びgリハビリセンターで撮影されたMRIには、頸髄損傷であればみられるはずの髄内輝度変化や脊髄腫脹像が認められない(髄内輝度変化とされているのは脊髄内の灰白質にすぎない。)としていること、②G医師は、上記MRIについて、髄内輝度変化と捉えるか、灰白質陰影と捉えるかは争点となり得るとしているところ(甲A18)、原告X1の現在の重篤な症状からすれば、明確な髄内輝度変化を看取し得ないというのは医学的にみて疑問であること(髄内の信号変化の有無及びその領域の範囲は、臨床経過及び予後と相関しており、MRI検査で髄内変化の強いものほど症状は回復しにくく予後は悪いとされている。乙25。また、G医師自身、原告X1について、明確な輝度変化を残す例でみられるような重度の脊髄損傷例と同程度の麻痺には当たらない可能性があることを示唆している。甲A18)、③原告X1は、上肢の麻痺が続いているとしているにもかかわらず、e病院の医療記録では筋萎縮はないとされているが、このようなことは頸髄損傷では考え難いこと(乙10、13)、④原告X1のように、頸髄損傷で下肢の運動障害及び感覚障害がある場合には、下肢の腱反射が亢進するはずであるところ、同医療記録によれば、退院時において「やや亢進」とされているにすぎないこと(乙10、13)、⑤同医療記録によれば、原告X1には病的反射も見られないこと(乙10、13)、⑥H医師は、原告X1のMRIに頸椎による脊髄圧迫所見がみられることについて、軽度の頸部頸椎症を示す所見とするところ(乙13)、頸部頸椎症とは、頸椎の経年的変化による椎間板の膨隆により脊髄が圧迫され、脊髄白質の感覚や運動電動路が障害され、四肢に運動麻痺や感覚障害を生ずる疾患であり、40~50歳の中年以降の男子に多く、加齢とともに徐々に症状が進行していくものであること(乙29)、原告X1の上記認定に係る病状の推移は、頸部頸椎症から説明する方が合理的であるということができること、また、原告X1の現在の身体的症状は、うつ病の発症に伴う心因性のものである疑いも否定できないこと(乙13)などを併せ考慮すれば、G医師作成の本件後遺障害診断書及び意見書(甲A18)等をもって、原告X1が頸髄損傷を負ったと認めることはできないというべきである。

以上によれば、原告らの上記主張は採用することができない。

(2)  上記(1)の説示を踏まえて、原告X1が被った損害の内容及び額について検討する。

ア 治療費 127万5430円

上記認定のとおり、原告X1は、本件事故後、e病院、gリハビリテーションセンター、f病院及びh病院で入通院治療を受けているところ、証拠(甲B7~9)及び弁論の全趣旨によれば、これらの治療費は合計182万2044円であることが認められる。

もっとも、上記認定のとおり、原告X1の要望により入院治療が長引いたことが認められることからすると、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項を類推適用して、上記治療費の3割を減額することが相当である。

そうすると、被告が賠償すべき治療費の合計は、127万5430円(円未満切り捨て。以下同じ。)となる。

イ 付添費 0円

(ア) 原告X1は、Aの入院付添費として117万6500円(日額6500円×181日)を請求している。

しかし、Aが、原告X1の入院期間中、付添いをしたと認めるに足りる証拠はない。加えて、前記認定のとおり、原告X1は、平成20年12月11日、e病院のE医師に対し、入院を希望したものの、入院の適応はないとの回答を受けたこと、平成21年6月12日付けのgリハビリテーションセンターからe病院へ宛てた診療情報提供書には、本来、当初の目的は達成され、自宅退院も可能と考えられる旨の記載があること、原告X1が、同年7月1日から同月31日までの間、e病院でリハビリテーションをしていた際には、ADLは全て自立レベルであった上、同年8月10日から同年9月10日までの間、h病院でリハビリテーションをしていた際にも、ADLは、入浴以外全て自立レベルであったことなどからすると、Aが入院期間中に原告X1に付き添う必要があったとまで認めることはできない。

以上によれば、原告の入院付添費の請求は理由がない。

(イ) また、原告X1は、Aの自宅付添費180万円(日額8000円×本件事故日から症状固定日までの期間で入院期間を除く225日)及びIの自宅付添費12万8571円(日額2000円×225日×2/7)を請求している。

しかし、前記認定のとおり、e病院のE医師は、平成20年11月27日付けで、原告X1は同月21日より約2週間の安静通院加療を要する見込みであると診断しているにすぎない上、原告X1が、同年12月11日、E医師に対し、入院を希望したのに対し、入院の適応はないとの回答を受けていることが認められることからすれば、原告X1は、平成21年3月5日にf病院に入院するまでの間、A及びIによる付添いが必要な状態にあったとまではいえない、また、上記認定のとおり、原告X1が、同年7月1日から同月31日までの間、e病院でリハビリテーションをしていた際には、ADLは全て自立レベルであった上、e病院がh病院に宛てて作成した診療情報提供書には、自宅退院が可能であると思われるとの記載があること、原告X1が、同年8月10日から同年9月10日までの間、h病院でリハビリテーションを行っていた際にも、ADLは、入浴以外全て自立レベルであったことなどからすると、原告X1が、e病院を退院してからh病院に転院するまでの間も、A及びIによる付添いが必要な状態にあったとまではいえない。

そして、上記認定のとおり、原告X1は、h病院を退院した後、痛み、痺れ等が日々増強し、日常生活を送るのが困難になっていったことが認められるものの、上記(1)において説示したところによれば、原告X1の症状の悪化と本件事故との間には相当因果関係は認められない。したがって、h病院退院後のA及びIの自宅付添費も認めることはできない。

ウ 入院雑費 17万6475円

上記認定のとおり、原告X1は、合計181日間にわたって入院をしたところ、その間の入院雑費は、1日当たり1500円が相当である。

(計算式)

1500円×181日間=27万1500円

もっとも、上記認定のとおり、原告X1の要望により入院治療が長引いたことが認められることからすると、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項を類推適用して、上記入院雑費の3割5分を減額することが相当である。

そうすると、被告が賠償すべき入院雑費の合計は、17万6475円となる。

エ 通院交通費等 44万3800円

(ア) 証拠(甲A9、甲B7~9)及び弁論の全趣旨によれば、原告X1が通院をするのに要した通院交通費は、合計44万3800円であると認められる。

(イ) 原告X1は、Iの付添交通費として、31万3071円(往復9740円×退院後225日×1/7)を請求している。

しかし、上記イ(イ)で説示したとおり、Iの付添いは、本件事故と相当因果関係があるものとは認められないから、Iの通院交通費の請求は理由がない。

オ 介護費用 0円

原告X1は、本件事故により、介護を要するようになったとして、介護費用5785万4691円を請求している。

しかし、上記(1)において説示したところによれば、原告X1のh病院の退院後の症状と本件事故との間に相当因果関係を認めることはできないから、上記介護費用の請求は理由がない。

カ 住宅改修費用及び福祉車両購入費用 0円

原告X1は、原告X1が階段の昇降をしなくてすむようにし、また、段差で転倒するのを防止するため、原告X1の居宅について浴室を1階に設置し、段差を解消するための改修工事をする必要が生じたとして、住宅改修費用322万7616円を、福祉車両(車両m助手席リフトアップシート車)を購入する必要があるとして、同車両の購入費用370万0266円をそれぞれ請求している。

しかし、上記(1)において説示したところによれば、原告X1のh病院の退院後の症状と本件事故との間に相当因果関係を認めることはできないから、上記住宅改修費用及び福祉車両購入費用の請求はいずれも理由がない。

キ 装具及びシューズ代 0円

原告X1は、装具及びシューズの購入費用として5万4110円を請求しているところ、当該費用が本件事故と相当因果関係のある損害であると認めるに足りる証拠はない。

ク 休業損害 350万3049円

(ア) 前記認定のとおり、原告X1は、本件事故前は、平成20年4月1日からc工芸の営業担当の契約社員として稼働しており、同年8月は37万8000円、同年9月は36万円、同年10月は39万6000円の給与を得ていたことが認められる。

そうすると、原告X1の本件事故前の直近3か月の収入は、1日当たり1万2326円ということとなる。

(計算式)

(37万8000円+36万円+39万6000円)÷92日=1万2326円

(イ) 前記認定のとおり、原告X1は、本件事故後は、稼働しておらず、かつ、原告X1の症状は平成21年12月31日に固定したことが認められる。

そうすると、本件事故日である平成20年11月21日から症状固定日である平成21年12月31日までの間(合計406日間)の休業損害は、500万4356円となる。

(計算式)

1万2326円×406日=500万4356円

(ウ) もっとも、このように休業期間が長引いたのは、上記認定のとおり、入院中、ADLがほとんど自立した状態にあり、日常生活を送ることがほぼ可能な状態であったにもかかわらず、原告X1の要望により入院治療が長引いたことが少なからず左右していると認められることからすると、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項を類推適用して、上記休業損害の3割を減額することが相当である。

そうすると、被告が賠償すべき休業損害の合計は、350万3049円となる。

ケ 入通院慰謝料 180万円

前記認定に係る原告X1の傷害の内容及び程度、入通院の状況に、上記認定のとおり原告X1の要望により入院治療が長引いたことなどを併せ考慮すれば、入通院慰謝料は180万円と認めるのが相当である。

コ 後遺障害による逸失利益 97万3918円

(ア) 上記(1)において説示したとおり、原告X1が、本件事故によって頸髄損傷を負ったと認めることはできないものの、原告X1は、前回事故から稼働することができるまでに回復していたにもかかわらず、本件事故後、一貫して右手や左足の痺れや疼痛等を訴え、入退院や通院を繰り返してきたことなどからすると、原告X1は、本件事故によって、自賠法施行令別表第二第14級9号の後遺障害を負ったものと認めるのが相当である。

(イ) 進んで、後遺障害による逸失利益について検討すると、前記認定のとおり、原告X1は、本件事故前、c工芸で契約社員として稼働しており、平成20年8月は37万8000円、同年9月は36万円、同年10月は39万6000円の給与を得ていたこと、これを1日当たりで換算すると1万2326円であることが認められる。そうすると、原告X1の基礎収入は、年間449万8990円(1万2326円×365日)であると認められる。

そして、原告X1は症状固定日において66歳であったことや、原告X1の後遺障害の内容及びその程度が自賠法施行令別表第二第14級9号であることなどを勘案すれば、原告X1の労働能力喪失期間は5年間と認めるのが相当である。

以上によれば、原告X1の本件事故による後遺障害による逸失利益は97万3918円となる。

(計算式)

449万8990円×0.05(労働能力喪失率)×4.3295(ライプニッツ係数)=97万3918円

サ 後遺障害による慰謝料 110万円

本件事故による後遺障害の内容及び程度等からすれば、後遺障害による慰謝料は110万円と認めるのが相当である。

シ 合計 927万2672円

上記ア~シを合計すると、927万2672円となる。

5  争点(4)(過失相殺の可否)について

被告は、原告X1は、落石の危険のある本件道路の斜面側を走行していたのであるから、原告X1にも、本件事故の発生について過失があると主張するが、前記認定のとおり、本件道路は、道幅が約5.4mと狭い上、進行方向間もない地点で左側へ急カーブしていることから(乙1)、原告X1が本件道路の斜面側を走行していたからといって、過失があるとまではいえない。

したがって、被告の上記主張は採用することができない。

6  結論

以上によれば、前記前提となる事実のとおり、原告X1は、原告保険会社から3192万3191円を受領していることから、その損害は全て填補されていることとなる。

また、原告保険会社は、前記前提となる事実のとおり、Aに対し、本件保険契約に基づき、車両保険金175万1640円を支払っていることが認められることから(ただし、本件訴訟においては、原告車両の時価額87万円からスクラップ代金1万3200円を控除した85万6800円を請求している。)、原告保険会社の被告に対する求償金の合計は1012万9472円となる。

以上によれば、原告X1の請求は理由がなく、原告保険会社の請求は主文掲記の限度で理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 志田原信三 裁判官 鈴木拓児 野口由佳子)

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