さいたま家庭裁判所飯能出張所 平成15年(家)20号 審判 2007年11月13日
主文
被相続人の相続財産から申立人らにそれぞれ330万円ずつを分与する。
理由
1 申立ての要旨
(1) 被相続人(大正○年○月○日生)は,平成13年×月×日に死亡し,相続が開始した。
(2) 被相続人には法定相続人が見当たらなかったので,被相続人の従兄弟であるAの申立てにより,平成13年×月×日,相続財産管理人として○○○○が選任され(当庁平成13年(家)第○○○号),同人の申立てにより,相続債権者及び受遺者への請求申出の催告に次いで相続人捜索の公告がされたが(当庁平成14年(家)第○○号),その催告期間内(平成14年×月×日まで)にその権利を主張する者はいなかった。
(3) Aは,被相続人と特別の縁故があったとして,平成15年×月×日,本件申立て(特別縁故者に対する相続財産の分与の申立て)をした。
(4) Aは,平成16年×月×日に死亡し,申立人ら(妻であるB及び養女であるC)が相続し(法定相続分各2分の1),平成17年×月×日及び平成19年×月×日,本件審判手続の承継を申し立てた。
2 認定事実
本件及び上記1(2)の各事件の記録によれば,上記1の各事実のほか,以下の事実が認められる。
(1) 平成8年×月×日,被相続人が生前最後に同居していた兄Fが死亡した。被相続人は衰弱しており,対応できる状態ではなかったため,Aがその葬儀等一切を被相続人に代わって事実上主宰し,その費用を負担した。
(2) Aは,同年×月×日,被相続人を○○病院に入院させ,平成13年×月×日に死亡するまで4年半以上の間,妻(申立人B)とともに療養看護等の諸般の世話をし続けた。
(3) 相続財産管理人の報告(平成14年×月×日付け報告書)によれば,資産としては預金残高1979万7918円が残っている。
(4) 他方,同報告によれば,Aに対する不当利得返還請求債権が556万5722円あるとされている。
3 相続財産管理人の意見等
(1) 相続財産管理人の意見
本件申立てにつき,相続財産管理人の意見を聴いたところ,平成15年×月×日付けで,Aを特別縁故者と認め,同人に対し,相続財産の中から500万円を分与するのが相当であるとの意見書が提出された。
(2) 家庭裁判所調査官の意見
本件申立てにつき包括調査を命じられた家庭裁判所調査官は,平成15年11月26日付けで,同様に特別縁故者と認めるのが相当とした上,上記2(4)の不当利得返還金額556万5722円と相殺できるような程度,できれば被相続人の亡兄の葬儀にかかる費用に相当する分も加算した金額を現存している預金から分与してはどうかと考えるとの意見を提出した。なお,同調査官は,上記不当利得返還金額についてはさらに増加する可能性を指摘している。
(3) 代理人弁護士の意見
上記不当利得返還金額に関しては,同調査官の調査以降,代理人弁護士が意見書等を提出する予定があるというのでこれを待っていたが,現時点で提出されていない。
この審判はその金額を確定することを目的とするものではないから,これ以上待たずに審判することとした。
4 上記2の(1)及び(2)の事実によれば,申立人は民法958条の3第1項所定の特別縁故者に該当すると判断される。
そして,一切の事情を考慮し,分与額は,上記2(3)の預金残高の約3分の1(これは,民法900条3号所定の場合の兄弟姉妹の相続分4分の1を上回る割合である。)に相当する660万円とし,申立人らにそれぞれその2分の1に相当する330万円ずつを分与することとする。
5 なお,上記分与金額については,上記不当利得返還金額を相殺した上で,相続財産管理人から申立人らに支払うこととするのが相当である。