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京都地方裁判所 平成10年(ワ)3181号 判決 2002年2月27日

本訴 平成10年(ワ)第3181号 損害賠償請求事件

反訴 同11年(ワ)第45号 立替金請求事件

主文

1  原告は,被告に対し,704万2674円及びこれに対する平成10年11月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

2  原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は,本訴・反訴を通じ,原告の負担とする。

4  この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

(本訴請求)

被告は,原告に対し,2306万8222円及びこれに対する平成10年10月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(反訴請求)

主文1項と同旨

第2事案の概要

本件は,被告との間で商品先物取引の委託契約を締結した原告が,被告との一連の取引は,被告担当社員による説明義務違反,無断・一任売買,いわゆる特定売買等によって,全体として違法な取引と評価されるべきであるとして,同取引から生じた差損金について,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償を求めたのに対し(本訴),被告が,原告に対し,東京工業品取引所及び東京穀物商品取引所の商品先物取引における立替契約に基づく立替金の支払を求めた(反訴)事案である。

1  争いのない事実

(1)  当事者

ア 被告は,商品先物市場における上場商品の売買及び受託業務を行うことを目的とする株式会社であって,東京工業商品取引所及び東京穀物商品取引所の商品取引員である。

イ 原告は,後記(3)のとおり,平成8年から同10年にかけて,被告との間で商品先物取引委託契約(以下「基本契約」という。)に基づき,別紙1のとおりの商品先物取引を行った。

原告の経歴は,次のとおりである。すなわち,昭和25年6月,株式会社Bに入社し,同37年6月退社し,同月,中小企業等協同組合法に基づくC協同組合(当時D協同組合)に,事務局専従職員として入社し,ここで参事を経て常務理事に就任した。同57年12月,上記協同組合の100パーセント子会社である株式会社Eの設立に伴い,上記協同組合の常務理事在任のまま取締役に就任した。平成8年3月,任期満了にあたり,上記会社及び協同組合を定年により退任・退社し,同年5月から,株式会社F(当時商号,株式会社G。以下「株式会社F」という。)に常勤社員に準じる身分で,もっぱら,同社グループ企業の総務・経理部門の事務作業業務に従事し,同9年9月,同社代表取締役に就任した。

原告は,被告との取引にあたり,就職先を秘していたが,被告との取引期間中は,株式会社Fに在職していたこととなる。

(2)  取引開始の経緯

ア 原告は,上記(1)イのとおり同8年3月に在職していた会社及び協同組合の退職に際し,退職慰労金として約2700万円の支給を受けた。これと従前からの定期預金・証券会社の投資信託・株式を合わせた当時の原告の手持ちの金額は約3000万円程度であった。原告が,同年5月に就職した株式会社Fにおける年収は500万ないし600万円程度であった。

イ 原告は,同年6月ころ,日本経済新聞に掲載された被告の広告(内容は,株式を保有しながら商品先物が行え,攻めの分散投資を勧めるもの)をみ,同月27日,被告に対し,はがきで商品先物取引に関する資料請求をした。

数日後,被告から,原告に対し,「代表取締役Hのあいさつ」「MFC社の会社案内」「MFCウィークリーのデータの見方」「MFCウィークリーレポート」「商品先物取引委託のガイド」「貴金属先物取引の案内」「はじめてでもよくわかる商品先物取引クイック講座」等が送付されてきた。

ウ 同年7月2日,被告社員A(当時,被告課長代理。以下「A」という。)から,原告に対し,電話があった。

エ 同月5日,原告は,Aに対し,電話を入れ,商品先物取引を開始するための口座開設に必要な書類の送付を依頼した。これに応じ,被告から,原告に対し,口座開設に必要な書類一式が送付されてきた。

オ 同月6日,Aから,原告に対し電話があった。同日,原告は,被告に対し,口座開設に必要な書類を送付した。

カ 同月8日付で,原告と被告は,基本契約を締結した。

キ 同月14日,Aから,原告に対し,電話を入れ,書類が整ったこと,口座へ資金を送金して取引を開始して欲しいこととの連絡があった。

ク 同月15日,原告は,Aに対し,電話を入れ,原告が商品先物取引をするにあたり,適した商品は何かとの質問をし,Aは,東京白金,米国産大豆等の話をしたところ,原告は,Aに対し,また情報は入れてくださいと述べた。

ケ 同月23日,原告は,被告の先物取引口座に50万円を振り込み送金し,被告との取引を開始した。

(3)  原告名義による被告との間の同8年7月23日から同10年10月12日までの取引は,別紙1(商品先物取引一覧表)のとおり,銀・白金(プラチナ)・パラジウム・トウモロコシ・東京米国産大豆・アラビカコーヒー・ロブスターコーヒー・東京粗糖・東京ゴムの商品取引の委託であり,被告は,上記(1)アのとおりの商品取引所において,これらの取引を行った(以下「本件取引」という。ただし,取引の違法性については,後記2(1)のとおり,争いがある。)。

2  争点

(1)  本件取引は全体として違法な取引となるか。

(原告の主張)

商品先物取引は,少額の証拠金でも差金決済により多額の取引ができる投機性の高い経済行為であり,また多額の差損金が発生する危険な行為でもある。そして,売り買いの決定には,商品の需要供給の関係,政治・経済の動向など市場価格形成の要因に関して相当に高度な知識を必要とし,またその知識を活用する経験が必要となる。したがって,商品取引員の外務員は,顧客の勧誘・取引の委託等に当たり,当該顧客の能力等に十分に配慮して無理な勧誘は避け,また,売り買いの判断を誤らせないよう配慮するべき注意義務を負う。そして,仮に商品取引の外務員が,商品先物取引の知識経験等の全くない顧客に対し,上記注意義務に違反し,手数料等の出捐を繰り返すばかりの無意味な取引を継続させることに専心する場合は,当該一連の勧誘及び取引は,全体として債務不履行ないし不法行為の違法性を帯びるというべきである。これを本件においてより詳細に検討すると,外務員の注意義務違反は次のとおりとなる。

ア 誠実かつ公正の原則違反(商品取引所法136条の17)

商品取引所法136条の17は,商品取引員並びにその役員及び使用人は,顧客に対して誠実かつ公正にその業務を遂行しなければならないとして誠実かつ公正の原則を規定しているところ,これを受けて,説明義務違反や無断売買・一任売買等による先物委託者の被害に関する裁判例にあっては,外務員の不法行為責任及び商品取引員の使用者責任を認めて解決する傾向にあり,不法行為の成否の基準については,特に違法性の判断を重視して,勧誘から取引方法までの一連の行為が全体として違法性を有するか否かを問題とする傾向にある。

本件においても,被告担当者(主にA)は,上記義務に反し,説明義務違反や無断売買・一任売買を行ってきた違法がある。

イ 適合性原則違反(商品取引所法136条の25の1項4号,受託業務規則3条,5条1項2号)

商品市場における取引の受託等に際し,商品取引員(ないしその外務員)が,顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って委託者の保護に欠けることとなり又はそのおそれがある場合には,主務大臣は商品取引員に対し,受託等業務の運営の改善や3か月以内の期間を定めて商品市場における取引又は受託等の停止を命令することができる(商品取引所法136条の25の1項4号)。また,商品先物取引協会は,自主規制規則として「受託等業務に関する規則」を制定し,商品市場における取引について,顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託等業務を禁止するとともに(同規則3条1項),不適当と認められる受託等業務を行うことのないよう,顧客の適合性を調査し,先物取引に不適当と判断される者の参入を防止し(同規則3条2項),取引開始後も顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不相当と認められる過度な取引が行われないよう,適切な委託者管理を行うことを求めている(同規則3条3項)。また,商品取引員の受託業務管理体制の整備を要求するとともに(同規則7条),社内規則として,受託業務管理規則の制定を義務づけている。受託業務管理規則においては,健全な委託者層の拡大を図るため,委託者の適格性の審査について明確な判断プロセスと判断基準を示し,また,経験の浅い委託者について適当な習熟期間を設けて保護育成措置を講ずることなどを定めている。また商品取引所の市場管理基本要綱では,過当投機の防止のために建玉制限を設けている。

以上は,先物取引の有する投機性の高さ・取引リスクの大きさにかんがみ,不適当と考えられる勧誘等から顧客を保護するためには,顧客の取引適合性を厳格に問わなければならないことを明らかにしたものである(いわゆる適合性の原則)。そして,この「顧客の知識,経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる」かの判断に当たっては,証券取引員ないしその外務員による勧誘のあり方(説明義務,リスク開示,不当勧誘等),無断売買・一任売買や過当売買の有無なども密接に関連する問題となる。

本件においても,原告は,本件取引前には商品先物取引の経験が全くなく,退職金等の高利回りによる運用を考えていたに過ぎないのに,被告は,原告に対して商品先物取引の危険性についての説明義務を尽くさず,無断売買・一任売買等を繰り返し,約2年間で292回もの過大な建玉を行って,原告に多額の損害を被らせたもので,適合性原則に違反するということができる。

ウ 説明義務違反(商品取引所法施行規則46条9号,受託業務規則4条,5条3号,4号)

商品先物取引は,顧客が多額の損失金を出す危険性の高い投機的取引である以上,商品取引受託業者(以下「受託業者」という。)と顧客との間には,信義誠実の原則・善管注意義務の基礎が存在し,受託業者としては,顧客に不測の損害を生じさせないようにする最低限の義務として,顧客に対し,金銭喪失の危険性や資金投入方法について,次のとおりの事項の説明義務を負う。

(ア) わずかな証拠金でも巨額の売買が成立すること

(イ) 値動きによって,短期間で,巨額の利益が得ることもあれば,巨額の損失を被ることもあること(いわゆるハイリスク・ハイリターン)

(ウ) 実際に評価益(差引益)が出るのは全注文のうち3割程度にしか過ぎないこと

(エ) 何度も連続して益を得るのは非常に困難であること

(オ) 証拠金は余裕資金を使わなければならないこと

(カ) 資金の投入は計画的にしなければならないこと

ところが,本件において,被告は,原告に対し,上記のとおりの説明はおろか,ことさら先物取引の投機性についての説明を避け,以上の説明義務を全く履行しなかった。

またさらに,受託業者は,顧客に対し,顧客の自己決定・自己責任の基礎となる資料を提供するため,当該取引内容の詳細を説明し,その理解を助けるため,次のような説明義務を負う。すなわち,先物取引における売り買いの決定には,商品需要供給の関係,政治・経済の動向など市場価格形成の要因に関して相当に高度な知識を必要とし,さらにその知識を活用する経験が必要となるのであるから,個々の専門用語の説明のみならず,こうした売買について自己決定するのに不可欠な要素・要因についても十分な説明をする義務がある。仮に,受託業者に同説明義務違反が認められる場合には,現になされた取引は,自己決定・自己責任の基礎を欠くこととなり,ひいては,業者主導の(禁止事項である)実質的一任売買化をもたらすことになる。したがって,同説明の欠如は,その後の全ての売買の違法性を基礎づけるものとなるのであって,顧客の責任を問い得ないものとなる。

被告担当者は,原告に対し,電話で,先物取引は資産運用として高い利益が出る,リスクを避ける方法もあるので安全な資産運用となるなどと無責任な説明をしただけで,説明義務を全く履行しなかった。

エ 断定的判断の提供(商品取引所法136条の18第1号)

商品取引員は,商品市場における売買取引について,その顧客に対し,利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供してその委託を勧誘することは,商品取引の投機的本質を誤認させることであり,法律で強く禁止されている。

ところが,被告担当者は,原告に対してその都度一方的に相場の値上がりが必至であるかのような説明をして買建てを勧め,あるいは一方的に相場の値下がりが必至であるかのような説明をして売り建てを勧めており,それらの反対の値動きをする可能性を示すような判断材料は全く提供していない。したがって,被告は,原告に対し,利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供してその委託を勧誘したものであって,前記禁止事項に違反している。

オ 無断売買・一任売買(商品取引所法136条の18第3号,同法施行規則46条3号,受託契約準則24条)

商品市場における取引につき,商品取引員は,数量,対価の額又は約定価格等その他の主務省令で定める事項について顧客の指示を受けないでその委託を受け,又はその委託の取り次ぎを引き受けてはならない(商品取引所法136条の18第3号)。

商品先物取引においては,経験の浅い委託者は,先物取引の仕組みや相場の変動要因などについての理解不十分から,外務員等の担当者に任せきりになり,ついに担当者が委託者に無断で売買してしまうケースがある。中でも,一任売買・無断取引は,未経験な委託者が不用意に先物取引に誘い込まれる原因となり,また商品取引員がその裁量権を乱用して過当な数量の取引をし,いわゆる「転がし」による手数料稼ぎの手段とするおそれがある。

本件においても,被告担当者は,一任売買,更には無断売買を繰り返していたのであり,その事実は被告の提供した録音テープに克明に記録されており,被告担当者の一任売買ないし無断売買の事実が認められる。

カ 過大な売買取引(商品取引所法施行規則46条2号)・過大・無意味な反復売買(いわゆる特定売買)・転がし

もっぱら投機的利益の追求を目的として,受託等業務に係る取引と対当させて,過大な数量の取引をすることは法令で強く禁止されている。また,過大な反復売買や転がしも裁判例上違法とされている。本件でも,被告はわずか2年4か月足らずの間に,292回もの取引(584回もの売りと買い)を行い,原告に3000万円を超える差引損金を発生させ,1473万5200円もの手数料稼ぎをしたのであり,これは過大な数量の取引,過大な反復売買及び転がしに当たる。これをより詳細に検討してみると以下のとおりとなる。

(ア) 特定売買比率

本件取引中,特定売買は別紙(2)のとおりであり,合計では166回となる。そこで,本件取引における特定売買比率は,

166÷292回×100≒56.85パーセント

となる。

(イ) 月間回転率

月間回転率とは,取引期間の全日数を分母とし,取引の行われた回数(枚数によらず建てて落とすごとに1回と数える。)を分子として,これに30に日数を掛けて算出した数値であり,これによって,1か月平均の取引回数すなわち取引頻度が明らかになる。本件における平成8年7月23日から同10年10月12日までの全取引日数は812日であり,取引回数は292回であるから,月間回転率は,

292÷812×30≒10.79回

となる。

(ウ) 手数料化率

手数料化率とは,差引差損金の合計を分母とし,委託手数料の合計を分子として割り出した数値であり,これによって,当該先物取引受託契約によって委託者が被った全損害のうちの手数料割合が明らかになる。本件における差引損益は3011万0896円であり,委託手数料合計は1473万5200円であるから,手数料化率は,

1473万5200円÷3011万0896円×100≒48.94パーセント

となる。

なお,手数料化率については,平成11年商品取引法改正の際のヒヤリング等で出された意見でも,平均的委託者は,約1年の取引期間中,委託証拠金のほとんどが手数料として徴収され,取引から撤退しているというものがあり,このような手数料化率の実態は,委託者が,ほとんど勝ち目のない勝負に誘い込まれていることを示すものといえる。すなわち,高い手数料化率は,取引全体の違法性を示すものということができるのである。

(エ) 違法性の判断基準

取引全体の違法性判断は,以上の特定売買比率,月間回転率,手数料化率の総合的評価によりなされるべきものである。これらの基準値としては,農林水産省等主務省主導によるチェックシステム・ミニマムモニタリング(MMT)が実施された当時の業界新聞(商取ニュース昭和63年12月6日)に,主務省が,特定売買比率は20パーセント,月間回転率は3回以内,手数料化率は10パーセントとする数値を示したといった報道が有り,これら数値は基準として合理的なものということができる。

これに対し,被告は,チェックシステム・ミニマムモニタリングは,いずれも廃止されており,ゆえに特定売買は違法ではなく,上記検討は無意味と主張する。しかし,チェックシステム等はもともと受託業務の適正化を図る目的で行われたものであり,その必要性自体に何ら変わりはないというべきである。また,特定売買は,個々の取引内容自体がそもそも委託者を食い物にする違法な取引というべきものであるから,被告の主張には理由がない。

(被告の主張)

ア 誠実かつ公正の原則違反

商品取引員ならびにその役員及び使用人が,顧客に対し,誠実かつ公正にその業務を遂行しなければならないことは,平成11年4月1日から施行された平成10年法律42号による改正後の商品取引所法136条の17が規定する。この誠実・公正義務とは,商品取引員とその役員及び使用人に対して,適正な受託契約の履行を行うことや,公正な取引を行うという義務を課すものであり,例えば,一方で顧客の利益を犠牲にして,他方で不当に自己の利益を追求することを禁止するものと解されている。

上記のとおり,この改正規定は,本件取引終了後に制定されたものであり,本件には直接適用されないものであるが,本件取引にこれを適用したとしても,被告側に上記原則違反に該当する事実は存在しない。

イ 適合性原則違反

本件取引は,上記争いのない事実(第2の1(2))の取引開始の経緯のとおり,原告から,被告に対する資料請求から出発したものであり,被告の勧誘行為にはなんら問題はなかった。そして,確かに,商品取引を行うについては,商品先物取引不適格者の参入防止を図る必要があり,被告の受託業務管理規則第2条においてもその旨の条項を置いているが,原告にあっては,本件取引開始前にも投資経験があるなど,そのいずれにも該当しないことは明らかであった。

ウ 説明義務違反

商品取引員が,顧客に対し,どのような説明をするべきかについては,商品取引所法そのものが自主規制団体(本件当時)である社団法人日本商品取引員協会の自主規制に委ねているのであり(平成10年法律42号による改正前の商品取引所法54条の5の2号),被告は,その自主規制規則である「受託業務に関する規則」に基づき,社内規則として「受託業務管理規則(規程)」(「以下被告規則」という。)。を制定しているそして,被告社員Aは,原告の勧誘に当たり,被告規則が,商品先物取引の委託の勧誘にあたっては,受託契約準則,「商品先物取引ー委託のガイド」等の関係書面を交付し,商品先物取引の仕組み(特に委託証拠金制度,損益の計算方法等),上場商品に関する知識及び情報収集の方法等の基本的知識について詳細に説明するとともに,取引の投機的本質について危険開示を行い,顧客の判断と責任において取引を行うことについて顧客に十分な自覚を促した上で参加を求めることとすると定めるのに沿った説明・勧誘を行ったのであって,被告に上記義務違反はない。

また,商品先物取引に関する説明義務のうち最も重要な事項は危険性の告知であるが,そもそも原告は,本件取引の開始に当たり,ハイリスク・ハイリターンが利益を大きくとることはできるが,大きな損失を伴うこともあり得ることだと理解していたし,商品先物取引がこれにあたることも理解していた。

エ 断定的判断の提供

本件において,Aをはじめ被告が,原告に対して,利益を生じさせることが確実であると誤解させるような断定的な判断の提供をして勧誘を行った事実はない。

オ 無断売買・一任売買

本件取引は,原告と被告担当社員(主としてA)との,電話やファックスを用いた密接かつ頻繁な連絡のもと全て原告の意思に基づいて行われたものである。一部,一任取引的なものも認められるが,これも全て原告側の日中の連絡の困難性など原告の事情に応じ,原告からの包括的な委任のもとでなされたものであり,著しく社会的相当性を欠くとまではいえないものである。

カ 過大な売買取引・過大・無意味な反復売買(いわゆる特定売買)・転がし

本件取引中では,特定売買が行われているが,そのことをもって取引の違法性を基礎づける事実ということはできないし,本件においては,過大な売買取引といった事実も認められない。すなわち,①特定売買そのものは全く禁止の対象となっておらず,委託者にとって効用も有ること,②原告主張のチェックシステムで問題となる取引開始後3か月に関しては,原告は,特定売買を一切していないこと,③特定売買比率について,その高低を判断するための客観的基準が存在しないこと,④本件取引中,Aは委託手数料に固執したような営業を一切していないこと,⑤手数料化率,売買回転率についても,統一的算式がないことは同様である,また仮に原告主張の計算式に当てはめたとしても,その高低を判断する客観的基準が存在しない。また,原告主張のチェックシステムは,そもそも取引開始後3か月未満の委託者を対象としたものである上,その違反を絶対的排除要因と判断しているものではないし,チェックシステム・ミニマムモニタリングは,すでに廃止されていることなどからも原告の主張は,理由がない。なお,以下は,一応の反論ための被告による特定売買比率,月間回転率,手数料化率の計算である。

(ア) 特定売買比率

本件取引中の特定売買は,両建51回,直し11回,途転10回,日計り67回,不抜け18回の合計157回である。そうすると,取引全体の回数は292回であるから,本件取引における特定売買比率は,

157÷292×100≒53.76パーセント

となる。

原告主張の別紙(2)については,同一取引について複数の特定売買が該当する場合に,これを複数として数えるなどの誤りがあり(農林水産省食品流通局商業課長作成「委託者売買状況チェックシステム報告書等作成要領」の2(2)ないし通商産業省産業政策局商務課長作成「報告書等作成要領」の3(2)によれば,同一建玉について売(買)直し,途転等が重なっている場合には,①売(買)直し,②途転,③日計り,④両建玉,⑤手数料不抜けの順で重複させず,いずれか1回とすることとされている。),妥当でない。

(イ) 月間回転率

そもそも,売買回転率については統一的な算式はない。ただ参考として,仮に,関門商品取引所における平成9年8月当時の回答計算式(売買回転率=当該月間受託売買枚数÷月末現在受託取組枚数÷2)にのっとって計算してみれば,以下のとおりとなる。

本件において,取引日数は546日,毎月の営業日数は約21日であるから,取引月数は546を21で除した26か月となる。そして,本件取引における売買枚数は4496枚であるから,月間受託売買枚数は4496を26で除した172.9枚となる。一方,取組枚数(残玉)累計は2万7433枚であるから,月末現在受託取組枚数は,2万7433枚を546で除した50.2となるから,月間回転率は,

172.9÷50.2÷2=1.72

となる。

(ウ) 手数料化率

手数料化率とは,月間受取手数料を月末現在の預り委託証拠金で除し,これに100を掛けたものである。

本件においては,月間累計手数料が1473万5200円,月末累計預り委託証拠金が,1億9321万1481円であるから,手数料化率は,

1473万5200円÷1億9321万1481円×100≒7.6

となる。

(2)  損害等(なお,以下の本訴・反訴の損害について,原告被告双方は,本訴が認められる場合には反訴は原告の主張のとおり認められず,本訴が認められない場合には,反訴は被告の主張のとおり認められるということで合意している。)

ア 本訴について

(原告の主張)

原告は,被告に対し,委託証拠金として1768万1685円,委託証拠金充当有価証券として538万6537円の計2306万8222円を預託していたが,これは全て,上記(1)の違法取引によって損失となった。したがって,原告が上記(1)の違法取引によって被った損害額は,2306万8222円である。

(被告の主張)

仮に上記(1)について原告の主張が認められたとしても,原告が主張する損害は,平成10年10月の急激な円高等被告の責任とはいえない別の要因によって生じたものであり,因果関係がない。

イ 反訴について

(被告の主張)

本件取引終了後の同10年10月12日において,被告は,原告についての取引所税・委託手数料及び消費税を含め,合計2197万9163円の差損金を立替払いした(以下「本件立替金」という。)。被告は,原告に対し,同年11月2日,同月12日を指定日として,本件立替金の請求をしたが,その支払がされなかったので,受託契約準則の定めるところにより,同月30日付をもって,原告が,被告に対し,預託していた委託証拠金1493万6489円を本件立替金に充当した。よって,本件立替金の残額は,704万2674円である。

(原告の主張)

被告主張の立替の事実は認めるが,本件立替金は,上記(1)(原告の主張)のとおり全体として違法な取引から生じたものであり,当該取引は債務不履行ないし不法行為を構成するものであるから,本件取引全体が公序良俗に反し無効なものというべきである。また,取引自体は無効とならないとしても,全体として違法な取引であることからすれば,被告の権利行使は信義則に反し,許されないというべきである。

(3)  過失相殺

(被告の主張)

原告は,同10年10月に入ってからの急激な円高に際し,貴金属を中心に保有していた買い玉の値洗いが極度に悪化し,追証拠金の差し入れか,建玉の処分(いわゆる損切り)とするかの状況に追い込まれた。そこで原告は,当初,追証拠金を入れてその場を凌ごうとしたものの,なおも円高が進んだ結果,買建玉を維持しきれず,やむなく全建玉の手仕舞いに踏み切った。これにより,原告は,同年10月6日から12日までの間で,2754万7508円の差損金を生じたのであり,これは本件において原告の主張する損害(差損金)の約91パーセントに及ぶものである。以上によれば,原告主張の損害は,同10年10月における原告自身の取引の維持・継続判断における重大な過失に基づくものということができるから,仮に本件取引が全体として違法なものとして不法行為が成立するとしても,損害額の算定にあたっては,上記過失が十分斟酌されるべきである。

(原告の主張)

原告は,本件取引開始前までは,商品先物取引の経験がなく,定年退職した後の退職金の高利率による運用を考えて,被告との商品先物取引委託契約を締結したところ,被告(その担当社員A)は,商品先物取引の危険性についての説明義務を尽くさず,また無断ないし一任売買,特定売買等違法な取引を繰り返し,約2年間で292回もの過大な建玉を行って多額の手数料を取得し,原告に多額の損害を被らせたのであって,原告に過失はない。

第3争点に対する判断

1  争点(1)について

(1)  証拠(甲178,乙2,4,5,7ないし10,22ないし24,28ないし31,33,36ないし38,証人A,原告本人,弁論の全趣旨・枝番のある書証は枝番を含む。)及び前記争いのない事実(第2の1)を総合すれば,以下の事実が認められる。

ア 原告は,平成8年当時,退職金等の手持金を,銀行預金等より高利回りで運用する方法を検討していた。その折,原告は,被告の出した新聞広告を目にし,運用先としての商品先物取引に興味を持って,自ら被告にはがきで資料請求をした。

被告が原告に送付した資料(商品先物取引 委託のガイド)には,損益計算の具体例,委託本証拠金・委託(受渡)手数料一覧表,「登録外務員」等の用語説明,委託契約の手順等商品先物取引の基本的知識が掲載されているほか,商品先物取引の危険性(いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」)を商品先物取引の仕組みの具体的紹介の中でも取り上げられ,その危険性の高さと自己責任の重さが指摘されており,また,断定的判断,一任取引の禁止等取引における禁止事項を挙げて,自己責任が強調されている。

イ 被告における原告の担当は,このときから主にAであり,Aは,被告から原告に対して資料を送付した後,約1か月後にあたる同年7月2日,原告に対し,商品先物取引の勧誘のため電話をした。その後,原告と被告との間で基本契約が締結される同月8日までの間,原告とAは,互いに1ないし2日ごとに基本契約締結に向け,電話をしあったが,その際,Aが,原告に対し,過剰な勧誘をするなどの事実はなく,相互の連絡は原告の商品先物取引開始の意思に沿うものであった。

そして,原告は,被告に対し,基本契約締結に当たり,商品先物取引の危険性とこれに対する自己責任を約諾書等のかたちで確認していた。

ウ 原告は,同年10月13日ころ(取引開始後約3か月)には,上記アの被告資料を読み,またAから電話で補足的な説明を受けることにより,損益については特定の商品(白金)について値動きを見て損益計算ができる程度に,委託証拠金制度についてその種類と徴収の仕組みを,値幅制限(いわゆるストップ安・ストップ高)については,これにより売買注文が不成立となる場合もあることなど,商品先物取引の基本的仕組みを理解することができた。

エ 原告は,被告から株式会社Fに電話連絡が入ることを避けるため,本件取引期間中,被告に対し,就職の事実及びこれによる年収等は知らせたものの,会社名やその連絡先等は明らかにしなかった。そのため,Aを中心とする被告担当者(以下「A等」という。)は,平日の日中,自ら原告と直接連絡をとることができず,日中の連絡手段は,昼休み等を利用した原告からAへの電話にほぼ限定されていた。

オ 原告は,本件取引以前に株式取引において信用取引の経験があったものの,商品先物取引経験はなかったことや,上記エのとおり,原告自身,日中は仕事があったため,自ら先物取引に当たっての相場の動きやこれを予測するための諸種の情報・資料を収集することは非常に困難であったことなどの事情から,取引情報の主な入手源は,Aであった。

カ 上記エの原告からAへの日中の電話のほか,Aは,在宅中の原告に電話し(原告からの日中の電話と合わせれば,電話の回数は,ほぼ毎日であり,日に2回以上となることも多かった。),また,ほぼ毎日ファックスで情報提供をするなどしていた。そして原告は,このファックスの内容についてもその都度チェックし,電話による会話には出ていたが,ファックスに記載がない事項や誤り・疑問点等に気付いたときは,電話の際に指摘し,是正・補充を求めるなどしていた。

キ そのほか,被告は本社管理部から(直接の担当社員等を経由させないで),原告に対し,取引の都度,売買報告書,計算書及び残高照合通知書を通知していた。以上の通知には,記載内容に相違ないし不明な点があった場合の連絡先・返信用チェック項目があったが,原告は,売買報告書及び計算書に関し,被告本社管理部にクレームの電話等を入れたことはなく,残高照合通知書については,最後の2回分を除いては,記載内容に相違ないとする欄にチェックして返信しており,最後の2回分については,返信はしていないものの,本社管理部に直接クレームをつけることなどはしなかった。そして,その他本件取引期間中に,原告から,被告本社管理部に対し,本件取引に関するクレームを出したことはなかった。

ク 本件取引の中には,原告からAに売買を一任したものも有った。原告は,一任売買にあたる取引についても,その都度,Aから電話やファックスで相場状況等についての情報提供を受け,事前の予測と現在の結果の比較,今後の展開について,電話で直接Aから意見等を聞いて確認するなどしていた。

ケ 本件取引における原告の最終的な差引損益は3011万0896円の損であったが,このほとんどが,本件取引開始後から同10年9月ころまでの間は,時折損を出しつつも,総じて差引益を残すかたちで推移していたものが,同年10月から本件取引終了までの間,連続して損を出し続けた結果,形成されたものであった(この間の差引損合計は,2727万7508円に昇る。)。

(2)ア  適合性原則

上記(1)の認定事実のとおり,原告は,約3000万円という高額の手持金の運用先として,自ら商品先物取引を選択していること,商品先物取引の経験はなかったものの,株式信用取引の経験のほか,組合理事や株式会社取締役を経るなど一定の社会的地位に従事したこと,本件取引当時,年収は500ないし600万円であったこと等を総合すれば,原告は,少なくとも通常人程度の経済知識等を有していたと認めることができ,本件取引開始に当たり,被告に適合性原則違反があったとは認められない。そして,上記(1)認定事実オ及びカのとおり,本件取引中,原告とAとは緊密に連絡を取り合っており,取引等の詳細については毎日のようにファックスも利用していたこと,Aが,原告の知識・経験不足につけ込んで,ことさら虚偽の情報を伝えたり,明白に不利な取引に誘引するなどしたことを認定するに足りる証拠はなく,かかる事実がうかがえないこと等からすれば,継続する取引に当たっても被告に適合性原則違反は認められず,この点に関する原告の主張は理由がない。

イ  無断売買

そして,上記ア認定事実のほか,前記(1)キの認定事実によれば,原告は,本件取引のすべてについて,事前に,又は取引直後に認識していたこと並びにそれらが原告の意思に基づく取引であったことを認めることができるから,原告の無断売買の主張は理由がない。この点,原告は,原告とAとの電話による会話録(「録音テープ反訳書」。甲179ないし191)上,明らかにAが原告に無断で売買したことを前提とするやりとりが複数存在するとして,Aによる無断売買の主張に理由があるとするところ,確かに,同証拠上,一見原告指摘のとおりと思われる箇所は存在する。しかし,同証拠中の前後の文脈の中でこれをみれば,原告からの一任のもとでしたAの取引報告とも理解できるのであり,これらのみから直ちに無断売買の事実を認定するには足りないといわざるを得ず,他にこれを認めるに足りる証拠はない(なお,原告主張に沿う証拠として,原告の陳述書(甲178)及び原告本人の供述が存在するが,この内容を裏付ける証拠はなく,直ちに採用することはできない。)。

ウ  説明義務違反,断定的判断の提供

前記(1)アないしカ及び上記アの認定事実のとおり,原告は,被告資料及びAからの説明によって商品先物取引の仕組みや危険性についてひととおり理解することができており,個々の取引に当たっては,Aとの緊密な連絡状況のもと,自らAに対し疑問点を質問するなど十分な意思疎通が図られていたと認めることができるのであり,被告に説明義務違反があったとは認められず,この点に関する原告の主張は理由がない。

また,Aによる断定的判断の提供については,原告は証拠として,上記イと同様,原告とAとの電話による会話録(「録音テープ反訳書」。甲179ないし191)上のAの発言を挙げるところ,確かに同証拠の会話内容のほとんどがAから原告に対する売買の報告,今後の見通しの確認,相場変動の予測意見であり,Aの主導で会話がなされていたことは認められる。しかしながら,取引に関する情報を外務員から収集すること自体が,直ちに断定的判断の提供となるものでなく,相場の予測意見の提供も同様ということができること,会話中,Aがことさらに自己の意見に固執し,原告を説得するなどした事実は伺われないこと,原告は,相場の予測と現実の動向との差がもたらすハイリスク・ハイリターンの意味を理解していたこと等の事実を総合すれば,Aから原告に断定的判断の提供があったとは認めることができない。そして,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は理由がない。

エ  一任売買

前記(1)ク及び上記アの認定事実のとおり,本件取引中には,原告からAに対する売買の一任が有った。そして,一任売買は商品取引所法136条の18第3号によって禁止されているものである。しかしながら,一任売買であることは,直ちに私法上の違法性を導くものではないこと,前記(1)エないしクの認定事実を総合すれば,本件における一任売買は,平日日中等の連絡の困難さという原告側の事情によるところが大きいと考えられること,原告とAとのファックス等による連絡状況は緊密であり,原告は,Aによる事前の予測と事後の取引結果について,ほぼ取引日中に確認し,疑問点等は自分からの電話の際にも問いただしていたこと等からすれば,原告は自己の責任のもと,Aに売買を一任していたと認めることができるのであり(他にAが原告の知識・経験不足に乗じて一任売買に誘引した等特段の事情を認めるに足りる証拠はない。),本件の一任売買は債務不履行ないし不法行為上の違法性を基礎づけるに足りないものとするのが相当である。

オ  過大な売買取引,過大・無意味な反復売買(いわゆる特定売買)

特定売買比率,月間回転率,手数料化率によって算出された数字から取引の過大性・無意味性を主張する前提として,原告は,農林水産省が,①特定売買比率を全体の20パーセント以下とする,②売買回転率を月間3回以内に留める,③手数料化率を10パーセントとするといった基準をチェックシステム導入に際してした決定が,判断基準となると主張するが,乙41によれば,かえって,そのような決定はなかった事実が認めらる。

確かに,一般論としては,原告主張のとおり,商品先物取引において,受託業者が顧客から手数料を取得することを主たる目的として利益のでないことが明らかな取引に過剰に誘引し,売買を繰り返させることは許されず,そのような取引は,仮に顧客の意思に基づくものであったとしても,全体として違法性を有するに至ることがあり得る。そして,この判断に際し,特定売買比率や月間回転率,手数料化率の数値が参考になることも否定できない。

しかしながら,まず,特定売買については,これによって利益を出すことは,相場を読み解く高度の情報力と理解力・判断力を要し,損を出す危険性が一般的に高い取引であるとはいえても,違法として禁止されているものではないこと,すでになされた取引の損の危険性を回避する手段としての合理性も認められること,本件取引においても,取引開始後3か月以降は特定売買がなされているが,差益を出したものも多くあったのであり,この比率の高さが直ちに上記違法性を基礎づけるものではないといわざるを得ない。次に,月間回転率については,そもそも業界において定まった計算式がなく(争いがない。),また,仮に原告主張の計算によっても,上記のとおり,その高低の判断基準がないことからすれば,やはり直ちに上記違法性を基礎づけるものではないといわざるを得ない。月間回転率で指摘した点は,手数料化率についても当てはまるほか,手数料化率はたぶんに結果論的な側面が大きいのであって,これもやはり直ちに上記違法性を基礎づけるものではないといわざるを得ない。

そして本件において,他にAが手数料取得を主たる目的として原告を取引に誘引したことを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は理由がない。

カ  誠実かつ公正の原則

前記(2)並びに上記アないしウの認定事実を総合しても,本件取引に際し,被告に誠実かつ公正の原則違反があったことを推認できず,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,原告の主張は理由がない。

(3)  まとめ

その他原告の主張に即して検討しても,原告の被告に対する損害賠償請求権の存在を認めることはできないので,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。

2  争点(2)について

前記第2の2(2)及び上記1のとおり,原告の請求は理由がないから,被告が,原告に対し,被告主張のとおりの704万2674円の立替金があることが認められる。

3  結論

以上のとおりであるから,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,被告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本信弘 裁判官 浅田秀俊 裁判官 中野希美)

(別紙省略)

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