京都地方裁判所 平成11年(行ウ)31号 判決 2001年8月24日
主文
一 原告の被告京都府公安委員会に対する訴えを却下する。
二 原告の被告京都府に対する請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告京都府公安委員会が平成11年9月17日に原告が道路交通法(以下「法」という。)38条1項後段の違反となる行為をしたことを理由としてした原告の法施行令所定の累積点数を2点加算する処分は、これを取り消す。
二 被告京都府は、原告に対し、50万円を支払え。
第二事案の概要
本件は、京都府警察の交通違反取締り担当の警察官が、原告を現行犯逮捕し、引き続きその身柄を拘束したことは違法であり、また、被告京都府公安委員会(以下「被告委員会」という。)が、原告に対し法施行令所定の累積点数を2点加算する措置をとったこと(以下「本体措置」という。)は、違法な行政処分であるとして、原告が、被告委員会に対して本件措置の取消しを、被告京都府に対して、国家賠償法に基づき慰謝料の支払を、それぞれ求めた事案である。
一 争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は、以下のとおりである。
1 原告(昭和17年○月○日生、女性)は、平成11年9月17日午前9時過ぎころ、原動機付自転車(以下「原告車両」という。)を運転して京都市内の公道を進行し、京都市α173番地先所在の別紙図面の国道24号線β交差点に東方向から進入し、青信号に従って北方向に右折した(以下「本件右折」という。)。
その際、本件(交差点付近で交通違反の取締りを実施していた京都府伏見警察署の警察官は、原告車両が本件右折の際に本件交差点の北側の横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)に接近したとき、本件横断歩道を東から西方向に横断しようとする歩行者があったにもかかわらず、本件横断歩道の直前で一時停止せず、その歩行者の通行を妨げたとして(法38条1項後段違反)、同日午前9時30分ころ、原告を現行犯逮捕し(以下、「本件逮捕」いう。)、その後、同日午後6時20分ころまで原告の身柄を拘束した。
2 被告委員会は、その後、前記の違反事実があったとして、原告の法施行令所定の累積点数を2点加算する本件措置をとった。
二 争点及びこれに関する当事者の主張
1 本件措置は、行訴法上の行政処分に当たるか否か。
(被告委員会の主張)
本件措置は、行政機関内部の段階的手続にすぎず、それ自体運転者の権利義務に影響を及ぼすものではないから、行政処分ではない。
よって、被告委員会に対する訴えは不適法である。
(原告の主張)
本件措置の効力が残れば、以後5年以内の運転免許更新の際、優良運転者(法92条の2参照)として取り扱われない不利益を被ることになる。また、仮に累積点数の加算が行政処分に当たらないとすれば、個々の加算措置につき不服があっても、その後、免許取消し等の何らかの処分があるまではこれを争えないことになり、不合理であるよって、本件措置は行政処分に当たるものというべきである。
2 本件逮捕及びその後の身柄拘束は適法か否か。
(被告京都府の主張)
原告は、本件右折の際、本件横断歩道を東から西方向に向かって横断中の60歳前後の男性(以下「本件歩行者」という。)がいたにもかかわらず、同横断歩道の直前で一時停止せず、その前方約1.5メートルを通過して、同男性の通行を妨害したものであり、法38条1項後段の違反となるような行為(法119条1項2号)をしたものである。
そして、原告が、警察官らに呼び止められた後も、免許証の提示を拒み、住所及び氏名を明らかにしないまま逃走を図ったので、警察官らは、原告を現行犯人として逮捕した。
よって、本件逮捕及びその後の身柄拘束は適法である。
(原告の主張)
原告は、本件右折の際、本件横断歩道の直前で一時停止し、その時、本件歩行者との距離が5メートル近くあったことから、本件横断歩道を通過したものであり、法38条1項後段には違反していない。
また、原告は逃走を図ったりしていないにもかかわらず、いきなり警察官らに逮捕された。
第三当裁判所の判断
一 まず、争点1について検討する。
1 行政事件訴訟法にいう行政庁の処分とは、法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、行政庁が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解する(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁参照)。
2 法は、自動車運転等の禁止の命令(法75条の2)、免許の取消し及び停止(法103条2項)、仮免許の取消し及び停止(法106条の2)等の各規定において、「政令で定める基準」に従うものと規定しており、法施行令は、上記各規定における「政令で定める基準」として、法、法施行令及び法に基づく処分に違反する行為を「違反行為」とし、個々の違反行為に所定の点数を付することとする累積点数制度を用いている。
しかし、同施行令の規定の仕方は、いずれも「違反行為をした場合において、その累積点数が別表…に掲げる点数に該当することとなったとき」というように、上記の各行政処分につき、累積点数それ自体を要件とはせずに、一定の点数に該当する個々の違反行為の存在自体を要件とした文言になっており、累積点数が一定の点数に達することが上記の各行政処分の要件となるものではないと解される。
また、法や法施行令によっても、累積点数を加算する行為については、これをその都度当該運転者に対して一般的に通知することとはされておらず、他の法令の規定に照らしても、このような通知の制度は設けられていないと解される。このことは、累積点数を加算する行為が当該運転者によって不服申立手続や訴訟で争われることを法が予定していないことを窺わせるものといえる。
3 このようにみてくると、累積点数を加算する措置は、公安委員会において各処分要件が整ったかどうかを画一的にチェックするための内部処理のための制度であって、それ自体は、国民の権利義務に何らの影響を与えるものではなく、したがって、行政処分には該当しないものと解するのが相当である。
4 原告は、累積点数加算の段階で行政処分性を認めてこれを訴訟で争えるように解しないと、その後の免許証の更新の際、優良運転者として有効期間5年の免許証の交付を受けられない不利益を被るなど、非常に不合理であると主張する。
しかし、優良運転者の認定基準は、法施行令33条の7により、各号に定める日前5年間において違反行為又は法施行令別表第2の2に掲げる行為をしたことがないこととされており、やはり累積点数が加算されたという事実が要件とされていない。優良運転者に該当する者が免許証の更新の申請に対して有効期間3年の免許証の交付を受けた場合には、その者は、この免許証の交付は、有効期間5年の免許証の交付を受ける法的利益を侵害するものであるとして、抗告訴訟を提起することもできるものと解するのが相当である。
また、免許取消し等の処分を受けた者は、当該処分直近の違反行為のみならず、それ以前の、公安委員会が累積点数算定の根拠としたすべての違反行為の存在を争うことができ、その場合、それらの違反行為についての第一次的な立証責任は公安委員会が負うこと、累積点数算定の基礎となる違反行為は、最後の違反行為があったとされる日を起算日とする過去3年以内における違反行為に限られること(累積点数の定義については法施行令33条の2第1項1号イ参照。)からすれば、免許取消し等の処分を受けるまで累積点数の加算の当否を争えないものと解したとしても、必ずしも不合理とはいえない。
いずれにしても、原告の上記主張は採用できない。
5 よって、原告の累積点数を加算する被告委員会の本件措置は行政処分に当たらず、原告の被告委員会に対する本件措置の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠き不適法である。
二 甲1、3ないし6(枝番を含む。)、乙1及び2(枝番を含む。)、4ないし6、9及び10(枝番を含む。)、証人A、同B及び同Cの各証言、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
1 原告は、昭和50年前後に原動機付自転車の運転免許を取得し、平成11年9月ころには、買物等のために原動機付自転車を運転することもあった。
2 原告は、平成11年9月17日、京都駅付近に所在する旅行関係の会社において旅行代金を支払うため、白色ヘルメットを被り紺色の原告車両(排気量50cc)を運転して京都市内の公道を進行し、同日午前9時4分ころ、本件交差点に東側からさしかかったが、本件交差点の東西方向の道路の信号の表示が赤色であったため、本件交差点の東側停止線の直前の別紙図面①点付近でいったん停車し、右折するため上記信号待ちの車両列の先頭車両となった。このころ、本件交差点付近は晴天であり、本件交差点の東西方向及び南北方向の道路の最高速度はいずれも40キロメートル毎時と指定されていた。
原告は、上記の信号の表示が青色になったのを確認して発進し、右折を開始したが、対向車を確認するため、本件交差点内の中央付近の別紙図面②点付近でいったん減速し、その後再び加速した。原告は、その際、本件歩行者が本件横断歩道を西に向かって横断しているのを確認したが、一時停止することなく、20キロメートル毎時前後の速度で本件横断歩道を通過した(本件右折)。原告車両が本件横断歩道上の同図面③点付近を通過した際には、本件歩行者はその約1.5メートル東方の同図面④点付近を歩行していた。
3 京都府伏見警察署は、同日午前8時半ころから、本件交差点において、通行する車両の交通違反の取締りを実施していた。同署のA巡査部長は、本件交差点の別紙図面⑤点付近に私服姿で立って交通違反を現認する係を担当し、同署のB巡査、D巡査部長及びその他数名の警察官ら(以下「B巡査ら」という。)は、本件横断歩道の北方約50メートル付近にあるγの駐車場の出入口付近の別紙図面⑥点付近で待機して、違反車両を停止させ、取り調べる係等を担当していた。
A巡査部長は、別紙図面⑤点付近において、原告の前記の右折(本件右折)を現認し、法38条1項後段違反としてB巡査らに無線で連絡した。B巡査も同図面⑥点付近において原告の本件右折を現認しており、同所付近で、北進してくる原告車両に停止を求め、前記駐車場内の出入口付近の別紙図面⑦点付近に誘導した。原告は、原告車両を、同図面⑦点付近に、同駐車場の内側に向けて停止させた。
4 B巡査は、上記⑦点付近において、原告に対し、横断歩道を横断している歩行者がいるときに横断歩道の手前で停止せず歩行者の前方を通過するのは法38条1項後段違反になる、本件右折の際に本件歩行者の前を通過した行為については上記違反が成立するという趣旨のことを述べて、身元確認のため、免許証の提示を求めた。原告は、これに対し、自分は十分に安全確認をし、本件歩行者との距離が十分にあったことを確認して本件横断歩道を通過したのであるから、違反はしていないと主張し、免許証の提示を拒んだ。
B巡査らは、さらに原告に対し、違反の事実を認めるかどうかは原告の自由であるが、警察としては原告の法違反として手続を進めるので免許証を提示してもらいたい等と述べて、免許証の提示を強く求め続けたが、原告は、自分は安全確認をしており違反はしていないから免許証を見せる必要はない、ナンバープレートの番号から調べれば分かるだろう等と主張して、免許証の提示を頑強に拒み続けた。このような問答が、約25分間続けられた。
5 そして、原告は、同日午前9時30分ころ、B巡査らに対し、自分は忙しいのでもう行くという趣旨の発言をし、原告車両のハンドルに手をかけ、その場を離れようとするかのような素振りを見せた。そこで、B巡査は、直ちに、原告に対し、法違反の現行犯人として逮捕する旨告知して、両手で原告の右手をつかみ、原告車両のハンドルから手を離させ、他の警察官が原告の左側から原告車両のハンドルを両手で把持した(本件逮捕)。
原告は、逮捕されることは全く予想していなかったので、「何でそんなことができるの。やめてください。免許証を出しますから、やめて。」等と言いながら、やや抵抗した。B巡査は、「あなたが住居や氏名を明らかにせず、ここから立ち去ろうとしたから逮捕するのです。おとなしくしなさい。」等と言って原告に手錠をかけた。他の警察官らは、本件逮捕に伴う捜索及び差押えを行い、原告車両、そのエンジンキー及び原告の運転免許証を差し押さえた。
原告は、その間、B巡査らに対し、「手錠をかけられるくらいなら免許証を出します。私の物を勝手にいじらないで。」等と述べた。B巡査は、これに対し、原告は既に逮捕されており、立ち去ることはできないこと、原告車両やエンジンキーは既に警察が押収して保管していること等を説明した。
6(一) A巡査部長やその他の警祭官ら(以下「A巡査部長ら」という。)は、原告をパトカーで伏見署に搬送し、同日午前9時42分ころ到着した。
(二) 原告は、本件逮捕についての弁解録取において、「横断歩行者があるのは知っていたが、十分に距離があったので、悪いことをしたとは思っていない。」と述べた。
(三) A巡査部長やC巡査らは、同日午前11時5分ころから35分ころまでの間、本件交差点において、原告を立ち会わせて、原告の本件右折の際の法38条1項後段違反被疑事件につき実況見分を実施した。その際、原告は、対向車を確認するため本件交差点の中央付近で一時停止し、さらに本件横断歩道の手前で一時停止して本件歩行者の動静を確認し、その進路前方を十分通過できるものと判断して進行した旨指示説明し、A巡査部長は、原告車両が別紙図面②点付近で一時減速した、原告車両が同図面③点付近を通過したとき本件歩行者は原告車両から約1.5メートル離れた同図面④点付近を歩いていたと指示説明した。
(四) C巡査は、実況見分終了後、同日の昼前から昼食をはさんで夕方ころまで、伏見署において原告に対する取調べを行い、その供述調書を作成した。原告は、取調べにおいて、C巡査に対し、早く調書を取って原告を釈放するよう求めた。C巡査は、原告の供述として、(1) 本件右折の際の状況については実況見分の際に指示したとおりである、(2) 本件逮捕の前にB巡査らに免許証の提示を拒んだのは、免許証を見せたら最後であり見せないと決めていたからである、(3) 本件逮捕の印象が強かったので逮捕されたときの状況はよく覚えていない、(4) 法38条1項後段違反については違反の重大性は理解したし反省している、等の内容を録取した調書を記載して、原告に読ませた。原告は、これに署名した(捺印は拒否した。)。
(五) 原告は、同日午後6時20分ころ釈放されるとともに、同日午後6時22分ころ、本件右折の際の法38条1項後段違反の事実につき反則告知を受けた。
7 京都地方検察庁の検事は、上記の被疑事実について、平成12年6月30日付で、起訴猶予を理由とする不起訴処分をした。
三 争点2について検討する。
1(一) 法は、車両等が横断歩道等に接近する場合において「横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」と規定しており(38条1項後段)、同規定の違反となるような行為をした者は3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられるものとし(119条1項2号)、過失により上記の罪を犯した者は10万円以下の罰金に処せられるものとしている(同条2項)。
前記二の事実によれば、原告は、本件右折の際、本件横断歩道の直前で一時停止せず、本件歩行者の進路前方約1.5メートルを、20キロメートル毎時前後の速度で走行したのであるから、法119条1項2号の、法38条1項後段の違反となるような行為をしたものというべきである。
そして、A巡査部長及びB巡査は、原告の上記の違反行為を現認したもので、B巡査らは、本件横断歩道から約50メ一トル離れた場所でA巡査部長からの連絡を受けて、本件右折後直進してきた原告を制止し、別紙図面⑦点付近まで誘導し、約25分間にわたって身元確認のため免許証の提示を求めて問答を繰り返した後に、本件逮捕をしたのであり、原告は、法38条1項後段違反の現行犯人(刑訴法212条1項)に該当していたものというべきである。
(二) 原告は、本件右折の際、本件横断歩道の直前付近で一時停止しており、しかも、その時点で、本件歩行者との距離は少なくとも5メートルあることを確認した上で発車し、本件歩行者の進路前方の本件横断歩道を通過したものであると主張する。そして、原告は、その本人尋問においても、同趣旨の供述をし、本件横断歩道の直前で一旦停止した際、すでに、その手前の本件横断歩道を東から西へ女性が2人横断して通過した旨も供述する。
しかし、原告の上記供述によると、原告が本件横断歩道の直前で一時停止した際、本件横断歩道を本件歩行者よりも先に横断した女性2人と本件歩行者との間隔がすでに約5メートルあったことになるところ、前記女性2名は、対面信号が青色に変わった時から本件横断歩道を横断し始めた可能性もあり、上記のような間隔となった具体的状況が不明であるといわざるを得ない。また、原告が主張するような状況であったならば、むしろ、横断歩道の直前であえて一時停止をする理由はなく、そのまま通過するのが通常とも考えられる。
いずれにしても、原告の上記供述を直ちに採用することはできない。
(三) また、原告は、特定の目的をもって本件歩行者に危害を加えようとする積極的な意思を有していなかったから、法38条1項後段違反の故意がなかったとも主張する。
しかし、上記違反の罪の故意犯が成立するためには、横断歩道を通過する際の歩行者との位置関係についての認識があれば足り、積極的な害意までは要しないものと解される。本件において、原告に本件歩行者に対して積極的な害意まであったことは認められないが、本件歩行者と原告車両との位置関係についての認識を有していたことは、前記二掲記の各証拠により認められ、上記違反の故意があったものといえる。原告の上記主張は理由がない。
2(一) ただ、原告が法38条1項後段違反の現行犯人に該当していたとしても、逮捕が人の自由を拘束するという重大な苦痛を与えること、同違反の罪が比較的軽微なものであることからすれば、当該被疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりするおそれがないにもかかわらず、警察官があえて現行犯逮捕をしたような場合には、当該逮捕が違法となることもあり得る。そして、上記の逃亡や罪証隠滅のおそれは、その客観的可能性、その意図を推測させる事情の有無等を具体的に総合考慮して判断すべきである。
前記二の事実によれば、原告は、約25分間にもわたってB巡査らから免許証の提示を求められたのに、これに応じず、自らの住所や氏名を明らかにしないまま、原告車両のハンドルに手をかけ、その場を離れようとするかのような素振りを見せたのであり、それは、原告の実際の意図がたといどうであれ、外形的には原告に逃亡の意図があったものと推測されてもやむを得ない状況であったことは確かであり、逃亡のおそれがあり、逮捕の必要性があったものと認められる。
(二) 原告は、本件逮捕の直前に逃走を図ったことはなく、ただ免許証の提示を拒んだだけで、身動き1つしていないのに、B巡査らが、互いに目配せを3回ほどした後、後から飛びかかるようにして手錠をかけてきた旨供述する。
しかし、原告の上記供述の内容は、B巡査らが免許証の提示を求めてから約25分間を費やし、なおも免許証の提示を得られる見通しが立たなかったことで苛立ちや焦燥感を抱いていたことを考慮しても、やや不自然であると考えられ、直ちに採用できない。
3 以上のとおり、本件逮捕に違法な点は認められず、むしろ、本件逮捕は適法というべきである。なお、原告は、本件逮捕の後、約9時間にわたって身柄を拘束されているが、前記二の事実によれば、伏見署は、同拘束中に、現場の実況見分、原告の取調べ及びその供述調書作成を実施しており、法38条1項後段違反の軽微性を考慮しても、その拘束時間につき特に違法な点は認められない。
四 以上の次第であって、原告の被告委員会に対する訴えは不適法であるのでこれを却下し、被告京都府に対する請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用につき行訴法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木良一 裁判官 古谷恭一郎 裁判官 秋吉信彦)