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京都地方裁判所 平成12年(ワ)3087号 判決 2001年9月10日

原告

森川純子

同訴訟代理人弁護士

川中宏

同上

森川明

被告

社団法人全国社会保険協会連合会

同代表者理事

永野健

同訴訟代理人弁護士

狩野祐光

同上

榎本英紀

主文

1  原告が被告に対し,パートタイム看護婦として労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

2  被告は,原告に対し,平成12年5月5日から本判決確定の日まで毎月5日限り18万0775円を支払え。

3  原告のその余の請求に係る訴えを却下する。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

理由

第1請求

1  主文1項同旨

2  被告は,原告に対し,平成12年5月5日から毎月5日限り18万0775円を支払え。

第2事案の概要

本件は,被告がパートタイム看護婦として原告を雇用していたが,雇用期間が満了したとして原告を雇止めしたため,原告が被告に対し,雇止めは信義則上許されないとして,その地位の確認と賃金の支払を求めた事案である。

1  争いのない事実

(1)  被告は,健康保険及び厚生年金保険その他社会保険事業の円滑な運営を促進し,併せて被保険者及び被扶養者の福祉を図ると共に,社会保障制度の確立に資することを目的とし,社会保険事業の円滑な運営を図るため必要とされる病院等を経営する社団法人であり,社会保険京都病院(以下「被告病院」という。)を経営している。

(2)  原告は,看護婦の資格を有し,平成10年2月20日,西陣公共職業安定所(ハローワーク)の紹介により,被告病院のパートタイム看護婦として,雇用期間を同年4月1日から平成11年3月31日までとする約定で採用され,平成12年3月末日まで働いていた者であり,被告から毎月5日払いで賃金を支給され,同年1月分から同年3月分までの賃金として合計54万2325円(1か月平均18万0775円)を受け取った。

(3)  被告病院では,外来の診療科が14科目あり,各診療科には原則として一定の看護婦が配属され,その看護婦が有給休暇や生理休暇等を取得した場合には,代わりの看護婦が配置されていたのであるが,原告は,外来の特定の診療科には所属せず,各診療科の看護婦の勤務の状況に応じて,看護婦の不足する診療科に配置されてきたものであり,その所定勤務時間は午前9時から午後3時45分まで(実働6時間)であった。

(4)  原告は,平成11年2月19日,被告病院事務局次長仁張冨美夫(以下「仁張」という。)から原告の雇用期間が同年3月末日で終了する旨告げられ,これに異議を述べ,原告が加入していた健康保険病院労働組合社会保険京都病院支部(以下「組合」という。)が被告病院と交渉した結果,同月31日,改めて雇用期間を同年4月1日から同年9月末日とする労働契約を締結し,更に,同月30日,雇用期間を同年10月1日から平成12年3月31日までとする労働契約を締結した。

(5)  原告は,遅くとも同年2月29日には,仁張から原告の雇用期間が同年3月31日で終了し,原告の雇用を継続しない旨告げられ,同年4月1日と同月2日が被告病院の外来の休診日であったため,同月3日同病院に赴いたが,就労させてもらえなかった。すなわち,被告は,原告との間の労働契約が雇用期間の満了によって終了したと主張し,同年3月31日をもって原告を雇止めした(以下「本件雇止め」という。)。

(6)  ところで,被告は,健康保険病院労働組合(中央本部)との間で,平成11年3月24日,短時間労働者の労働条件について協定を締結すると共に,確認書を取り交わしたが,その協定書第2項では「雇用期間は1年以内とする。ただし,雇用期間更新の有無については,雇用期間満了の1箇月前に,必要に応じて決定する。」とされ,前記確認書第1項では「協定書第2項ただし書きについては,施設において更新する必要がないと認める場合以外は,更新を行う趣旨である。」と確認された。

2  争点

本件雇止めは,解雇に関する法理が類推適用されるものであって,合理的な理由がない限り信義則上許されないといえるか。

(原告の主張)

原告と被告との間の労働契約は,期間の定めのある労働契約であるが,あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在しているか,あるいは,少なくとも原告において期間満了後も雇用が継続されると期待することに合理性が認められる場合であるから,雇止めには解雇に関する法理が類推適用され,契約の更新を拒絶することが相当と認められる合理的な理由が必要である。しかし,本件雇止めは,期間満了の一事をもって行われたものであり,何ら合理的な理由がないので,信義則上許されないというべきである。

(被告の主張)

原告と被告との間の労働契約は,期間の定めのあるパートタイム看護婦としての契約であり,原告が期間満了後の雇用を期待できる事情はなかった。すなわち,パートタイム看護婦は,その採用方法や勤務時間が正規職員看護婦と異なる上,一時的な欠員の補充や当直明け勤務の負担の軽減のため,補充的,応援的な勤務をするもので,熟練を要せず,正規職員看護婦に命じられて責任の軽い補助的な業務を担当するものであり,特に契約の更新を必要とするものではなく,また,被告が原告に対し更新の期待を抱かせるような言動をしたことはない。したがって,原告と被告との間の労働契約は当然に期間の満了により終了するのであって,解雇に関する法理は類推適用されず,合理的な理由がない限り雇止めが許されないということはできない。

第3争点に対する判断

1  事実関係

前記争いのない事実の外,証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によると,大要,以下の事実を認めることができる。

(1)  原告は,昭和62年に看護婦免許を取得し,平成5年1月まで病院で働いた後,退職して育児に専念していたが,子供に手が掛からなくなった外,経済的な理由もあって,日勤であれば勤められると思い,平成10年2月20日,被告病院で採用面接を受け,その際,総看護婦長辻喜代子(以下「辻」という。)から,パートの雇用期間は1年になっているが,他のパートタイム看護婦は長年勤めて,よく働いてくれているという話をされ,同日付で,業務内容を外来看護業務全般とし,雇用期間を同年4月1日から平成11年3月31日までとする,パートタイム看護婦としての労働契約を締結した。

(2)  原告は,平成10年4月1日から外来看護業務に従事し,外来の診療科の看護婦が休暇を取得した際の代替要員として働き,午前と午後で別の診療科へ応援に行くこともあったが,その業務内容については,それぞれの診療科によって特殊性,専門性があり,パートタイム看護婦であっても,適切な看護処置を行うためには,正規職員看護婦と同様の専門的知識及び技術が必要であり,しかも,臨機応変かつ迅速に,時には一人で判断し行動しなければならないこともあり,看護業務については,正規職員看護婦より勤務時間が短いだけで,その他は同看護婦と同様の勤務をし,責任を負担していた。

(3)  原告は,同年12月,外来の看護婦長佐藤紀代子(以下「佐藤」という。)から平成11年4月以降の進退について質問され,雇用継続を希望し,子供が平成12年4月に小学校に入学すれば,三交替勤務も可能であると答えたが,平成11年2月19日,仁張から同年3月31日で雇止めをする旨通告されたため,組合に相談して被告病院と交渉し,同月5日,仁張から雇用期間を同年4月1日から同年9月30日までとする労働契約書を示され,他のパートタイム看護婦と同様,雇用期間は形式上6か月であるが,期間が満了しても雇用は継続され,辞めさせられることはないものと思い,前記契約書に署名押印した。

(4)  すなわち,原告は,組合が同年2月24日被告病院に対し,定型のパート労働契約書第6条の「雇用期間満了を以て退職するものとする」との規定を削除することと,パート労働契約について今後も従来と同様の取り扱いをすることを文書で要求し,その結果として,原告の労働契約の期間も同年4月1日以降は他のパート看護婦と同様に6か月となり,同年3月5日には,仁張が組合の書記長であった富田清子(以下「富田」という。)の質問に答え,6か月の期間は形式だけであり,これで辞めさせることはないと説明したので,原告の労働契約も,他のパートタイム看護婦と同じ条件となり,反復更新されるものと理解した。

(5)  原告は,同年10月初めころ,仁張から雇用期間を同月1日から平成12年3月31日までとする契約書への署名を求められたとき,「これで最後やからね」と言われ,直ちに署名せず,組合に交渉してもらったが,その交渉が進展せず,契約書がないのに雇っておくことはできないという話があったため,やむなく前記契約書に署名したが,同契約書第2条(雇用期間の定め)には,他のパートタイム看護婦の契約の例に見られたような「今回の更新をもって最終とし平成12年3月31日をもって本契約は終了する」との記載はなかった。

(6)  原告は,平成11年10月中旬ころ,佐藤に対し,同年4月から夜勤もできるので正規職員看護婦として働きたいと改めて申し入れたが,これを伝え聞いた辻から,正規職員看護婦になるためには採用試験を受けてもらわなければならないと言われ,同年11月15日に試験を受けたものの,同月下旬ころ不採用の通知を受け,その後,平成12年1月ころ,組合から同年4月以降も勤めるのであれば仁張に挨拶しておくように指示され,仁張に対し,同月以降もパートタイム看護婦として勤務したいと申し入れたが,同年2月29日,仁張から期間満了により契約は終了すると告げられ,同年4月1日以降の就労を拒否された。

(7)  被告は,被告病院の看護婦につき,同月3日付でパートタイム看護婦1名を採用し,健康管理センターに配属した外,外来の診療科では,同年3月31日付で,原告を雇止めし,正規職員看護婦2名を病棟勤務から配置転換して外来勤務とし,また,2名の看護婦が切迫早(流)産のため休暇を取り又は欠勤し,その内1名が同年2月29日から産休に入ったため,同年3月6日健康管理センターから正規職員看護婦1名を応援として配置し,同年5月5日付で正式に配置転換し,他の1名が同月6日から産休に入ったため,同月15日から応援者1名を配置したのであり,要するに,被告は,原告の雇止めに伴って新たなパートタイム看護婦1名を採用した。

(8)  被告病院では,非正規職員として,パートタイム助産婦・看護婦と,宿日直のみを勤務内容としアルバイト看護婦と呼ばれる非常勤嘱託職員看護婦とを採用してきたが,勤務内容,賃金,身分保障等において両者の取扱には大きな違いがあり,後者については雇止めの例が多数あったのに対し,前者については雇用期間が6か月とされていたものの,期間満了後も契約が更新されて定年(満60歳の年度末)まで勤務した者が多く,現在も勤務しているパートタイム助産婦2名の勤続年数は約10年と約7年,同じくパートタイム看護婦1名の勤続年数は約20年であり,いずれも雇用期間を6か月(当初は2か月)として契約が更新されてきた。

(9)  被告病院では,看護婦の採用手続につき,パートタイム看護婦の場合は履歴書及び看護婦免許の確認と総看護婦長による面接だけの簡易な方法であったが,正規職員看護婦の場合は定期採用と中途採用で若干の違いがあるものの,筆記試験,面接及び健康診断を行っており,また,パートタイム看護婦から正規職員看護婦を優先的に採用するという人事制度は採っていないが,これまでに,パートタイム看護婦の内4名が,正規職員看護婦に欠員が生じたことや夜勤ができるようになったことから,同看護婦になるための試験を受けることなく,同看護婦に採用された。

2  判断

前記争いのない事実と前記1で認定した事実をもとに判断すると,原告と被告との間の労働契約は,実質的に見て期間の定めのない契約に当たるということはできないが,原告に雇用継続に対する合理的な期待があり,解雇に関する法理が類推適用されるというべきである。すなわち,原告は,被告との間で,期間の定めのある労働契約を締結したのであるが,期間満了後の雇用継続に関する被告側の採用面接時の説明,原告の職務内容の正規職員看護婦との異同,契約更新に至った経緯,被告側の更新時の説明,他のパートタイム看護婦に対する雇止めの実例の有無,被告病院の外来の本件雇止め後の状況等の諸事情を勘案すると,原告が期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があるということができ,この期待は法的保護に値するものであるから,原告に対する雇止めには解雇に関する法理が類推適用され,単に労働契約の期間が満了したというだけでは雇止めは許されず,客観的に合理的な理由が必要であり,これを欠く雇止めは社会通念上相当として是認することができないといわなければならない。ところが,本件雇止めは,期間満了のみを理由とするものであって,客観的にみて合理的な理由があるとはいい難いので,信義則上許されないものというべきである。

なお,以下において,原告の採用面接時や平成11年3月5日の状況等につき,補足して説明することとする。

(1)  まず,原告の採用面接時の状況につき,辻は,原告に契約期間が1年であることを確認したが,原告から質問はなかった旨証言し,陳述書(<証拠略>)においても,原告から期間満了後も雇用が継続されるかどうかという質問はなかったし,パートタイム看護婦の多くが雇用を継続されていると説明したこともない旨記載し,仁張も同旨の証言をしているが,原告は,本人尋問及び陳述書(<証拠略>)において,前記認定のとおり辻から説明があった旨述べているところ,原告が被告病院の採用面接を受けた動機の外,原告が平成12年4月から正規職員看護婦として働きたいとの意欲を示していたことなどにかんがみると,原告の供述の信用性は高く,これに反する辻及び仁張の各証言や辻の前記陳述書中の記載を採用することはできない。

(2)  次に,平成11年3月5日の状況につき,仁張作成のメモ(<証拠略>)には,原告とは同年4月から平成12年3月まで契約するが,6か月毎の契約とし,同月末日で辞めてもらう旨記載され,また,仁張は,証人尋問及び陳述書(<証拠略>)において,原告及び富田に対し,前記メモを読み上げ,原告の雇用期間を1年間だけ延長するけれども,形式上は他のパートタイム看護婦と同様に6か月毎に労働契約書を作成する旨の話をしたと述べているが,1年限りの契約を締結するつもりであったのに,他のパートタイム看護婦と同様に6か月毎に契約書を作成することとしたというのは疑問であるし,その理由についても,事務処理上の便宜からであるという了解し難い説明をしたり,組合から期間6か月の契約を反復継続するよう要求されていたので妥協したと説明したり,一貫性を欠いているといわなければならない。また,辻は,仁張が原告及び富田に対し,前記メモを読み上げ,原告とは新たに1年間の契約を結ぶが,1年後には必ず辞めてもらうと説明し,これに対して原告及び富田から何の反論もなかった旨証言しているが,被告は原告との間で雇用期間を1年とする契約書を取り交わしていないし,原告及び富田から反論がなかったとする点は,平成11年3月5日の話し合いに至った経緯等に照らして疑義があるので,辻の前記証言は信用性が乏しいといわざるを得ない。

これに対し,原告及び富田は,前同日の状況につき,本人又は証人尋問及び各陳述書(<証拠略>)において,仁張が契約書を読み上げた際,富田が6か月の雇用期間満了をもって退職するものとするとの規定について異議を述べると,仁張から形式上このようになっているだけで,同規定によって辞めさせることはなく,他のパートタイム看護婦と同じであると言われ,原告についても,他のパートタイム看護婦と同様に期間満了後も継続して雇用されることになったと思ったと述べており,その内容は,組合の被告病院に対する同年2月24日付申し入れ書(<証拠略>)の存在を含め,同年3月5日に至るまでの経過にかんがみると,信用性は高いというべきである。

したがって,原告は,労働契約書に記載された雇用期間が満了しても辞めさせられることはないとの理解のもとに,雇用期間を平成11年4月1日から同年9月30日までとする労働契約書を取り交わしたものということができる。

(3)  ところで,被告は,仁張が同年10月初めころ「これで最後やからね」と言って原告に契約書への署名を求め,原告もこれに応じて署名したのであるから,原告は平成12年3月31日限り契約が終了することを明確に認識していた旨主張しているが,原告は,平成11年3月5日に仁張から言われたとおり,契約書の雇用期間は形式上のもので,これをもって辞めさせられることはないと信頼していたにもかかわらず,前記のとおり「これで最後やからね」という仁張の発言があったため,直ちに契約書に署名せず組合に相談したというのであるから,仁張の前記発言があったとしても,なお期間満了後の雇用継続に対する原告の期待は合理的なものであったということができる。

これに関し,被告は,当事者の一方が期間満了後の雇用継続を期待しただけで,当事者双方の合意した期間の定めが事後的に覆されるというのは,契約自由の原則に照らして問題がある旨の主張をしているが,前記のとおり,原告が単に主観的,一方的に期間満了後の雇用継続を期待していたに過ぎないのではなく,周囲の事情に照らしても,原告の前記期待に合理性があると認められる場合には,信義則上その合理的な期待を保護すべきであると考えられるので,被告の前記主張は採用することができない。

(4)  更に,被告は,以前は看護婦の不足が著しく,多くの看護婦を確保して少しでも長く勤めてもらうため,本人の希望に沿ってパートタイム看護婦として採用し,契約を反復更新するという雇用管理方針を採っていたが,平成7,8年ころからは,看護婦の不足状況が改善したため,それまでのパートタイム看護婦の雇止めが事実上できなくなっている状況を考慮し,人材の向上を図り,反復更新による雇用継続の期待を生じさせないため,新たに雇い入れるパートタイム看護婦から期間を1年として更新をしないという方針に変更した旨主張し,被告病院事務長であった堅田一義の陳述書(<証拠略>)にも同旨の記載があり,辻及び仁張もこれに沿う証言をしているが,辻は,総看護婦長であり,看護婦の人事を任されている上,被告病院の管理者会議の構成員であるにもかかわらず,前記の方針変更については仁張から聞かされたに過ぎないこと,富田は,被告病院に対し,原告についてだけ雇用期間を1年とした理由を団体交渉の席上で追及したが,上記のような方針変更に関する説明を受けなかったこと,被告は,原告との間で,最初は期間を1年とする労働契約を締結したが,その後は,組合との交渉の結果とはいえ,2回にわたって期間を6か月とする労働契約を締結したことなどを考慮すると,少なくとも原告の採用及び更新に関しては,被告の主張するようなパートタイム看護婦の採用方針の変更があったとしても,被告病院において十分に徹底されていなかったといわざるを得ないので,原告の雇用継続に対する期待が合理性のないものということはできない。

3  結論

以上のとおりであるから,本件雇止めが信義則上許されない結果として,期間満了後における原告と被告との間の法律関係は,従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解すべきである。したがって,原告は,被告に対し,パートタイム看護婦として労働契約上の権利を有する地位にあるということができる。また,被告は,その責に帰すべき事由により原告の就労を拒否しているので,原告に対して賃金を支払わなければならない。もっとも,原告の賃金請求のうち本件口頭弁論終結の日の翌日以降の将来請求分については,本件訴訟に至った経緯,被告の応訴態度等に照らし,本判決確定の日までの分は,原告においてあらかじめ請求する必要があると認められるが,その翌日以降の分は,本判決が確定しても,なお被告がこれに反して原告に賃金を支払わないと認めるに足りる事情はないので,訴えの利益を欠くものとして却下を免れないというべきである。

よって,原告の請求は,パートタイム看護婦として労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と本判決確定の日までの賃金の支払を求める限度で認容することとし,その余の請求に係る訴えを却下することとする。

(裁判官 河田充規)

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