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京都地方裁判所 平成13年(行ウ)5号 判決 2002年9月20日

原告

原告訴訟代理人弁護士

吉田大地

被告

右京税務署長

柴山文雄

被告指定代理人

中村和洋

上谷美佐夫

森口季夫

河田貞明

山内勝

安田英生

田中茂樹

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が原告に対して平成11年7月7日付でした原告の平成8年分の所得税の再更正処分のうち、納付すべき税額1114万円を超える部分(ただし、平成12年11月20日付の裁決により一部取り消された後のもの)は、これを取り消す。

二  被告が原告に対して平成11年1月29日付でした原告の平成8年分の所得税の過少申告加算税賦課決定のうち、161万1000円を超える部分(平成12年11月20日付の裁決により一部取り消された後のもの)は、これを取り消す。

第二事案の概要

本件は、原告が、原告の平成8年分の所得税に関し、原告が平成8年1月16日に売却した別紙物件目録記載2の各土地(以下、一緒に「本件2土地」という。)は、平成6年3月3日に原告が父親から相続した土地であるから、上記売却に係る譲渡所得の算定においては、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例である租税特別措置法(以下「措置法」という。)39条1項により、原告が支払った相続税額のうち政令で定める金額を取得費として加算して算定しなければならなかったにもかかわらず、武蔵野税務署長(以下「被告処分庁」という。)は、措置法39条1項の適用は認められないとして、平成11年7月7日付で再更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をしたと主張し、被告処分庁の地位を承継した被告に対し、それらの処分の取消しを求めた抗告訴訟である。

一  争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は、以下のとおりである。

1  乙(以下「乙」という。)は、もと、別紙物件目録1記載の土地(以下「本件1土地」という。)を所有し、登記簿上、その所有名義を有していたが、平成6年3月3日死亡し、その妻丙、丙との間の長男の原告及び他の3名の子が相続した。

2  原告は、平成8年3月15日、被告処分庁に対し、平成7年分の原告の所得税の確定申告書を提出した(乙1)。原告は、上記申告において、平成7年中に、原告が所有していた本件1土地と丁(以下「丁」という。)が所有していた本件2土地を交換し、本件2土地の所有権を取得したとして、同交換について、固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例である所得税法58条1項(以下「交換特例」という。)の適用を求めた。

また、原告は、これより先、平成7年8月2日、本件1土地につき、乙から平成6年3月3日相続により取得したことを原因とする所有権移転登記を経由した上、平成7年2月4日交換を原因として、本件1土地については丁のための所有権移転登記、本件2土地については原告のための所有権移転登記を各経由した。

3  原告は、平成8年中に、本件2土地を、戊及びAに譲渡し(以下「本件譲渡」という。)、平成8年1月16日、売買を原因とするその旨の所有権移転登記を経由した。

4  原告は、平成9年3月17日、被告処分庁に対し、平成8年分の所得税の確定申告書を提出したが(甲1の1)、この申告において、本件譲渡について、本件2土地が乙から相続によって取得した財産であるとして、措置法39条1項(以下「取得費加算特例」という。)の適用を求めた(乙3)。同確定申告は、別表1のとおり、総所得金額を644万7097円(損益通算前の金額は1644万7097円)、分離短期譲渡所得の金額を0円(損益通算前の金額はマイナス1000万円)、還付されるべき税額を239万6025円とするものであった。

5  原告は、平成9年9月9日、国税還付加算金(雑所得)の申告漏れがあったとして、平成8年分の所得税の修正申告をした(甲1の2)。同修正申告は、別表1のとおり、総所得金額を649万9597円(損益通算前の金額は1649万9597円)、分離短期譲渡所得の金額を0円(損益通算前の金額はマイナス1000万円)、還付されるべき税額を238万5625円とするものであった。

6  原告は、平成11年1月13日、平成8年分の所得税の再修正申告をした。同再修正申告は、別表1のとおり、総所得金額を1434万0427円(損益通算前の金額は1644万9597円)、分離短期譲渡所得の金額を0円(損益通算前の金額はマイナス215万9170円)、還付されるべき税額を47万2125円とするものであった。

7  被告処分庁は、平成11年1月29日付で、原告に対し、平成8年分の原告の所得税につき、別表1のとおり、総所得金額を1649万9597円、分離短期譲渡所得額を4808万8078円、納付すべき税額を2428万3600円とする更正処分、及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分をした。なお、上記の更正処分は、平成7年分の所得税の更正処分と共にされたもので、同更正処分は、原告が主張していた本件1土地と本件2土地との交換については、本件2土地を本件1土地の譲渡直前の用途に供していないから交換特例の適用がないことを理由とするもので、平成8年分の所得税の上記更正処分は、本件譲渡につき、本件2土地が乙の遺産ではなく取得費加算特例の要件がないことを理由とするものであった。

8  原告は、被告処分庁に対し、平成11年2月26日付で平成7年分の所得税の更正処分と併せて平成8年分の所得税の更正処分について異議申立てをしたところ、被告処分庁は、同年6月2日付で、原告の平成7年分の所得税については譲渡資産の取得費の計算に一部誤りがあるとして更正処分等を一部取り消す異議決定を行い、平成8年分の所得税については理由がないとして異議の申立てを棄却する決定をした(甲3の2)。

9  そこで、原告は、更に、平成11年6月30日、国税不服審判所長に対し、審査請求をした。

10  ところが、被告処分庁は、上記審査請求中に、譲渡資産の取得費の計算に一部誤りがあるとして、平成11年7月7日付で、原告の平成8年分の所得税につき、別表1のとおり、総所得金額を1649万9597円、分離短期譲渡所得額を4882万2120円、納付すべき税額を2468万7300円とする増額再更正処分、及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分をした。

11  その後、国税不服審判所長は、平成12年11月20日付をもって、平成7年分の所得税については、原告が主張する本件1土地と本件2土地の交換について交換特例の適用があるとして更正処分等を一部取り消し、平成8年分の所得税については、それに伴って、本件譲渡について、本件2土地について取得日の引き継ぎがされる結果、譲渡所得の区分が短期譲渡所得から長期譲渡所得に変わること等の理由により、別表1のとおり、総所得金額を1649万9597円、分離長期譲渡所得額を6148万7194円、納付すべき税額を1354万7300円として、前記の再更正処分の一部を取り消し、かつ、平成11年7月7日付の過少申告加算税の額6万円を取り消し、更に、平成11年1月29日付の過少申告加算税371万2500円のうち161万1000円を取り消す旨の裁決をした。原告は、そのころ、同裁決書謄本の送達を受けた。

12  その後、原告は、上記裁決の結果を不服として、平成13年2月14日、本件訴訟を提起した。

二  争点及びこれに関する当事者の主張

本件の争点は、原告の平成8年分の所得税の課税要件のうち、本件譲渡について取得費加算特例の適用があるか否かであり、基本的には、次の3点である。

1  争点①

取得費加算特例を定めた措置法39条1項の「当該相続税額に係る課税価格(同法第19条の規定の適用がある場合には、同条の規定により当該課税価格とみなされた金額)の計算の基礎に算入された資産」とは、実際に、納税者が相続税の申告においてその資産を計上するなどして、課税手続上も課税価格に算入されたものでなければならないのか。それとも、相続税の課税手続如何にかかわらず、具体的事実として、相続税法上、課税価格の計算の基礎に算入されるべき資産であればよいのか。

(被告の主張)

(1) 措置法39条1項は、相続人が同一資産について相続税及び所得税の二重課税を受けるとの印象をもって税負担感が強くなることに対処するため政策的に所得税を軽減するための規定である。

(2) 本件2土地は、被相続人乙に係る相続税の原告の申告、更正の請求、修正申告のいずれにおいても、相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入されておらず、相続税の課税対象となっていない。したがって、本件2土地は、措置法39条1項所定の資産には、そもそも、該当しない。

(原告の主張)

争う。

2  争点②

本件2土地は、乙の死亡による相続において、乙の遺産として、相続税の課税価格の計算の基礎に算入されるべき資産であるか否か。

(被告の主張)

(1) 乙は、その死亡した平成6年3月3日まで、本件1土地を取得していたもので、他方、本件2土地は丁の所有であった。原告は、同日、相続によって本件1土地を取得し、その後、平成7年中に、丁との間で、本件1土地と本件2土地を交換し、本件2土地の所有権を取得した。

(2) したがって、本件2土地は、乙に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入されるべき資産に当たらないことは明らかである。

(原告の主張)

(1) 乙は、遅くとも、その死亡前である平成5年9月30日までに、丁との間で、本件1土地と本件2土地の交換をし、本件2土地の所有権を取得した。ただし、その旨の移転登記手続をしないままに死亡した。

(2) このように、本件2土地は、乙に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入されるべき資産である。

3  争点③

原告が本件譲渡に係る本件2土地について、争点②の原告の主張をすることが信義則に反するといえるか。

(被告の主張)

原告は、乙の平成5年分の準確定申告において本件1土地と本件2土地を交換した旨の譲渡取得の申告をしていないこと、遺産分割協議においても、本件2土地を乙の相続財産として遺産分割の対象にしていないこと、平成7年2月4日付で本件1土地と本件2土地を交換する旨の交換証書を作成し、同年7月27日付でその交換に係る契約書を作成していること、本件1土地及び本件2土地について平成7年2月4日付交換を原因とする所有権移転登記を経由したこと、平成7年分の所得税の確定申告において、前記各土地の交換が平成7年に行われたことを前提に交換特例の適用を求めて申告したこと、乙の相続税に係る更正の請求及び修正申告において、本件2土地を乙の相続財産にしていなかったこと、税務調査から異議申立て、審査請求に至るまでの間、一貫して、前記各土地の交換の効力発生時期が平成7年であることを前提に主張していたこと、以上からすれば、原告は、乙の死亡後である平成7年中に、自ら前記各土地の交換をしたとの前提で、その課税手続や登記手続等をしてきたものといえる。

にもかかわらず、裁決において交換特例の適用が認められるや、原告は、急遽、上記の態度を翻し、本件訴訟を提起し、争点②の原告の主張のように主張することは、信義則に反し許されない。

(原告の主張)

争う。被告が主張する上記の一連の行為は、それぞれやむを得ない事情、又は、もっともな事情があったためになされた行為である。

第三当裁判所の判断

一  甲1ないし30(枝番を含む。)、乙1ないし14(枝番を含む。)(以下「本件各証拠」という。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  乙は、相当多くの不動産を所有しており、平成4年7月ころ、同年8月31日に本件1土地が分筆される前の土地(後記の分筆前)を所有していた。また、丁は同日本件2土地が分筆される前の各土地を所有していた。

2  丁は、自己の所有地上にマンションを建設することを計画し、平成4年6月1日、Bに対し、コンビ・システム事業の申込みをした(甲13の4)。同計画の敷地所在地の中には、乙の所有であった本件1土地部分は含まれていなかった。

3  その後、丁の前記計画がC金融公庫によって承認され、平成4年8月25日付で、C金融公庫大阪支店長から、B宛に、同計画の事業承認通知書(甲17)が送られた。

4  しかし、丁は、乙の所有であった本件1土地部分もマンションの敷地として利用した方が道路に面することが可能となって、間口の有効利用ができると判断し、乙に対し、本件1土地部分と本件2土地部分とを交換譲渡して欲しい旨申し込んだところ、乙がこれを了承したので、以後、丁の前記事業の建設会社の担当者であったD(以下「D」という。)の仲介により、両土地の交換に向けての準備を進めることとなった。

5  まず、乙及び丁は、平成4年8月31日、前記の各元地番の土地から、本件1土地及び本件2土地をそれぞれ分筆する手続をした。ただし、当時は、本件1土地の地目は山林、本件2土地の地目は畑であった。

6  その後、平成4年9月11日付で、丁の前記計画に関し、Bから、建築基準法第18条第2項の規定による計画通知書(建築物)(甲21)が、京都市に提出された。同通知書にも、その敷地の中に本件1土地は含まれていない。

7  丁は、とりあえず、本件1土地についての敷地使用権がないと、本件1土地をマンションの敷地とすることができないと助言され、乙にその旨を伝え、乙は、本件1土地を使用する権限を丁に付与する目的で、平成5年1月11日、丁との間で、本件1土地について、賃料1か月5万円、賃借期間36か年の約定で丁に賃借する旨の契約を締結した。ただし、丁から乙に対し、実際に前記の賃料が支払われたことはなかった。

8  その後、平成5年1月22日付で、C金融公庫大阪支店長から、B宛に、融資予約変更通知書(甲18)が送られてきた。かかる変更通知書の建設場所の中には、本件1土地の記載があったが、融資予約条件のうちの担保物件の中に、本件1土地の所有者は乙である旨の記載がされていた。

9  丁は、平成5年3月9日に、本件2土地について、地目を畑から雑種地とする変更手続をした。また、乙は、同年9月30日に、本件1土地について、地目を山林から宅地とする変更手続をした。

10  平成5年9月30日、本件1土地がその敷地の一部となっている丁所有に係るマンションが新築完成した。

11  その後、平成5年12月9日付で、C金融公庫大阪支店長から、B宛に、建設場所の中に本件1土地を含む内容の総額決定通知書(甲19)が送られてきた。

12  ところが、乙は、丁との間で、前記各土地の交換契約の契約書の作成をしないまま、更に、前記各土地についての交換による所有権移転登記手続をしないまま、平成6年3月3日、死亡し、原告及び乙の他の相続人らがその地位を相続した。

13  原告は、平成6年3月15日、乙の平成5年分の所得税につき、準確定申告をしたが、その申告には、本件1土地と本件2土地を交換したとする譲渡所得については、何ら記載しなかった。

14  その後、原告及び乙の他の相続人らは、遺産分割協議を行い、平成6年5月24日付で、原告が乙から相続する財産の中に本件1土地を含む内容の遺産分割協議書(乙6)を作成した。同遺産分割協議書においては、むろん、本件2土地が乙の遺産とはされていなかった。

15  原告及び乙の他の相続人らは、前記の遺産分割協議に基づき、平成6年11月4日付で、相続税の基礎となる財産の中に本件1土地を含めて、相続税の申告書(乙5)を右京税務署に提出した。

16  その後、戊らから、原告に対し、本件2土地を含む土地について購入希望があり、原告はこれを承諾したところ、平成7年6月17日付で、戊から、原告に対し、本件2土地を含む土地の買付けを証する買付証明書が送られてきた。

17  そこで、原告は、平成7年7月27日付で、丁との間で、交換価格を1720万円とし、本件1土地と本件2土地を交換する旨の合意をし、土地交換契約書を作成し、更に、平成7年8月2日付で、丁との間で、平成7年2月4日に原告と丁との間で前記の交換がされたことを証する交換証書(以下「本件交換証書」という。)を作成した。そして、原告及び丁は、平成7年8月2日、本件2土地について、丁から平成7年2月4日交換を原因として原告へ所有権が移転された旨の登記を、本件1土地について、平成6年3月3日相続を原因として原告へ所有権が移転された旨の登記と、更に、丁に平成7年2月4日交換を原因として所有権が移転された旨の登記をそれぞれ経由する手続をした。

18  その後、原告は、平成7年9月12日付で、相続税の更正の請求書(乙12)を右京税務署に提出した。原告は、この更正請求においても、本件2土地が相続財産である旨の修正はしなかった。

19  原告は、平成7年10月22日、戊らとの間で、本件2土地を、その他3筆の土地と合わせて、売買代金1億8194万1000円の約定で売却する旨の合意をし、平成8年1月16日、戊らから原告に対し、売却代金の残額が支払われ、同日、同日付売買を原因とする所有権移転登記が経由された(本件譲渡)。

20  原告は、平成8年3月15日、平成7年分の原告の所得税の確定申告において、平成7年中に本件1土地と本件2土地を交換したとして、その交換について、交換特例(所得税法58条1項)の適用を求めた。

21  丁も、平成8年、平成7年分の丁の所得税の確定申告において、平成7年中に、原告との間で、本件2土地と本件1土地とを交換したとして、交換特例の適用を求めた。

22  原告及び乙の他の相続人らは、平成8年7月8日、相続税の基礎となる財産の中に本件1土地を含めて、相続税の修正申告書(乙13)を右京税務署に提出した。

23  その後、前記のとおりの経緯で、平成12年11月20日、国税不服審判所長の裁決によって、平成7年分の原告の所得税について、本件1土地と本件2土地の交換が平成7年中に原告と丁との間で行われたことを前提とし、原告からその旨の申告があったものとして、その交換に所得税法58条1項の交換特例の適用があって、課税の関係では同交換による本件1土地の譲渡がなかったものとすることとされ、平成8年分の原告の所得税について、本件2土地の本件譲渡による譲渡所得について、平成7年中の前記交換について交換特例の適用があるとしたことに伴って、取得日の引き継ぎがされ、長期譲渡所得とされ、これらの事由等を理由として、平成7年分の原告の所得税についての更正処分の一部と平成8年分の原告の再更正処分の一部が取り消されるに至った。

二  争点②に対する判断

確かに、証人Dは、乙は、丁との間で、遅くとも丁マンションが新築完成した平成5年9月30日までに本件1土地と本件2土地との交換契約をしたものであるとの証言をし、また、原告本人もこれに沿う供述をする。そして、前記第三の一の認定事実のとおり、平成4年6月ころから、乙と丁との間で、両土地の交換に向けての分筆手続や地目変更の手続が進められていたことは認められる。

しかしながら、乙が、丁との間で、両土地の交換を約する契約書を作成したり、その旨の移転登記手続をしたことは、証拠上、認められない。むしろ、前記第三の一の認定事実及び本件各証拠を総合すると、乙が進めていた交換に向けての手続は、乙の死亡によっていわば棚上げになったもので、原告や丁も、そのように認識した上で、乙の死亡後、その相続人の1人である原告が本件1土地を相続により取得し、その上で、丁との間で平成7年中に本件2土地との交換の合意をしたものであることが認められる。証人Dも、審査請求の時点では、乙の死亡により交換は棚上げになった旨の証言をしていたもので、丁も、本件訴訟が係属中の平成13年5月15日、大阪国税局の職員に対し、乙の死亡後の平成7年に、原告との間で両土地の交換の合意をした旨を供述している。

そうすると、本件2土地は、乙の遺産ではなく、乙の死亡に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入されるべき資産ではないことは明らかである。したがって、本件2土地は、争点①についていずれの解釈を採るとしても、措置法39条1項の「当該相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産」には該当しないといえる。

三  結論

1  原告の平成8年分の所得税の課税要件のうち、本件譲渡について取得費加算特例の適用があるか否かの点以外の、その余の被告の主張の課税要件については、原告がこれを明らかに争わないので自白したものとみなす。

2  そうすると、その余の点(争点①及び争点③)について判断するまでもなく、被告処分庁がした原告の平成8年分の所得税についての再更正処分(平成12年11月20日付の裁決により一部取り消された後のもの)及び平成11年1月29日付の過少申告加算税の賦課決定処分(同裁決で一部取り消された後のもの)は適法であったといえる。なお、納付すべき税額については、別表2「所得税額の計算」記載のとおりである。

3  以上より、原告の本件請求はいずれも理由がなく、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 八木良一 裁判官 古谷恭一郎 裁判官 谷田好史)

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