京都地方裁判所 平成15年(ワ)1090号 判決 2006年11月22日
主文
1 被告南丹市及び被告Aは,原告に対し,連帯して,110万円及びこれに対する平成15年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告Bに対する請求並びに被告南丹市及び被告Aに対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,被告Bに生じた費用を原告の全部負担とし,その余の費用を10分して,その9を原告の負担とし,その1を被告南丹市及び被告Aの負担とする。
4 この判決の第1項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1 被告らは,原告に対し,連帯して,1100万円及びこれに対する平成15年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告南丹市及び被告Bは,原告に対し,連帯して,110万円及びこれに対する平成17年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1 本件は,原告が,その夫であるCと旧八木町(市町村の廃置分合によって平成18年1月1日から旧八木町を含む4町が合併し,同区域に南丹市が設置された。以下「八木町」という。)の町長であった被告Bが,原告を強制的に精神病院に入院させることを共謀して,C及び八木町職員らが,平成10年2月25日,原告の身体を無理矢理押さえ付けて,医師である被告Aが原告に精神安定剤を注射して原告の意識を失わせた上,原告の意思に反してD病院まで連行したとして,被告南丹市に対して国家賠償法1条1項に基づき,被告B及び被告Aに対して民法709条,719条に基づき,慰謝料及び弁護士費用の合計1100万円の損害賠償金及びこれに対する不法行為後である平成15年7月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払いを求める(前記請求1)とともに,被告Bの指示を受けた八木町職員が,原告の名誉を毀損する虚偽の事実等を記載した書面を作成し,平成10年3月2日,これを被告AやD病院医師らに提供したとして,被告南丹市に対して国家賠償法1条1項に基づき,被告Bに対して民法709条,719条に基づき,慰謝料及び弁護士費用の合計110万円の損害賠償金及びこれに対する不法行為後である平成17年6月4日(請求拡張書面〔平成17年6月2日付け原告準備書面(第10)〕の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払いを求めた(前記請求2)事案である。
2 前提となる事実(争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
(1) 当事者等
ア 原告は,昭和○年○月○日生まれの女性であり,原告とCは,昭和46年2月3日,婚姻届出をした夫婦である(甲1)。
Eは,原告とCとの間の長男(昭和○年○月○日生まれ)である(甲1)。
平成10年2月当時,原告は,当時の自宅にある美容院を経営しており,Cは,八木町議会議員の職にあった。
原告は,平成14年5月20日,名を「F子」から「G子」に変更する旨の届出をした(甲1)。
イ 被告南丹市は,平成18年1月1日,地方自治法7条1項に基づく市町村の廃置分合により八木町を含む4町が合併して設置された地方公共団体である(当裁判所に顕著である。)。
ウ 被告Bは,平成10年2月当時,八木町長の職にあった者である。
エ 被告Aは,京都府亀岡市内で開業する精神科医である。
オ H,I及びJ(以下,この3名を合わせて「本件町職員3名」という。)は,いずれも平成10年2月当時,八木町職員であった者であり,Hは八木町しあわせ課(町民の福祉等に関する業務を取り扱う課。以下「しあわせ課」という。)課長,Iは同課主事の職にあった。
Jは,平成8年3月末まで,同課課長補佐であったが,平成10年2月当時は,同町ふるさと振興課(以下「ふるさと振興課」という。)課長の職にあった(証人J)。
(2) 原告のD病院への移送経過の概要
ア C,E,本件町職員3名及び被告Aは,平成10年2月25日,原告の当時の自宅を訪れ,同所で,C,E及び本件町職員3名が原告の身体を押さえ付け,被告Aは原告に対して精神安定剤であるイソミタール等を注射した(なお,注射に至るまでの経過,注射した薬剤の種類,注射後の原告の状態等の詳細については争いがある。)。
イ その後,C,E,本件町職員3名,被告A及び原告は,八木町の公用車でD病院に行き,原告は同病院でK医師の診察を受け,心因反応と診断されて,同病院に入院(平成11年改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〔以下「精神保健福祉法」という。〕33条1項に規定する医療保護入院。以下「本件入院」という。)することになった。
(3) 甲3の記載内容及び作成経過等(甲3,証人I)
ア Iは,D病院のケースワーカーLの要請に応じて,本件入院当時までにC及び被告Bから聴取した原告の生育歴や言動等をまとめた書面(甲3の「C(聞き取り調査)」と題する書面。以下「本件聴取書」という。)を作成して,Lに交付した。
イ 本件聴取書中には,以下のような記載がある。
(ア) 原告が3歳のときに両親が離婚し,その後母は会社社長の妾になった。
(イ) 原告が幼いころから,母が次々と違う男を自宅に連れ込み肉体関係をもっていた。
(ウ) 原告は,長男を出産する際,「こんなつらい目にあわせるあんたが憎い」等とCを責め,出産後ころから,原告に異常と思える言動が目立ち始め,10年くらい前から異常さが増した。
(エ) 8年前,原告は上半身裸の姿でいきなりカセットテープの束でCを殴りつけた。
(オ) Cが家に入ろうとすると原告が刃物を持って暴れる。
(カ) 原告はいつもベッドの下に飾りの日本刀を隠していた。
(キ) 原告が中身の入った缶ビールを息子の頭めがけて投げた。
(ク) 原告がCに対し催涙スプレーを噴射した。
(ケ) 原告が暴力団員に「夫を殺してほしい」と依頼した。
(コ) 原告が三角関係のもつれから関係者と公道でカーチェイスを演じた。
(サ) Cの母が亡くなる直前,原告がCの母に対し,「あんたはCと関係があった」などと罵倒した。
(4) 本件入院をめぐる訴訟の経過
ア 原告は,平成10年5月12日,D病院を退院したが,平成13年12月ころ,本件入院は,精神保健福祉法の規定する要件を満たしておらず,退院までの間,違法に身体の自由を拘束された等として,京都府,D病院及びK医師を被告として,京都地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した(京都地方裁判所平成13年(ワ)第3291号事件。以下「別件訴訟」という。)。その後,原告は,平成15年4月15日,本件訴訟を提起した。
イ 京都地方裁判所は,平成17年9月29日,別件訴訟について,原告の請求をいずれも棄却したが,原告はこれを不服として控訴し,現在,控訴審で審理中である。
3 争点及びこれに対する当事者の主張
(1) 原告のD病院への移送が違法といえるか否か(争点1)
(原告の主張)
ア Cは,平成10年2月,原告と夫婦喧嘩をしたことをきっかけに,原告を強制的に精神病院に入院させようと考え,被告Bに相談した。
イ 被告Bは,同月24日夜,自宅で本件町職員3名と打ち合わせ,同職員らに対し,事前にD病院に空きベッドがあることを確認した上,被告Aの往診に同行し,原告をD病院に強制的に入院させるよう命じた。
ウ 本件町職員3名は,被告Bの上記指示を受けて,同月25日午後4時ころ,C及び被告Aらとともに原告宅に裏口から入り,いきなり原告に襲いかかって原告を押さえ付け,被告Aは,本件町職員3名らによって押さえ付けられている原告に対し,その同意を得ることのないまま,精神安定剤であるイソミタール,コントミン及びピレチアを無理矢理注射して原告の意識を失わせた。そして,本件町職員3名らは,意識を失ってぐったりしている原告を八木町の公用車に乗せて,原告の意思に反して,強制的にD病院に連行した。
エ 被告Aは,原告に入院の必要性があるか否かを判断するために原告を診察することもなく,専らCら家族の意見に影響されて,原告に攻撃性や自傷他害のおそれがあるものとして,当初から原告を強制的に病院に移送する意図で,原告の同意を得ないまま注射に及んだものである。
また,本件町職員3名は,何ら法令上の根拠もないのに,被告Aに同行して,原告の身体を押さえ付け,同被告が注射をするのを幇助した上,原告を強制的にD病院に連行したものである。
これらの被告A及び本件町職員3名の行為は,原告を違法に拘束し,原告の身体の自由を侵害したものであり,被告Aは,民法709条,719条に基づき,被告南丹市は,国家賠償法1条1項に基づき,いずれも原告に対して損害賠償責任がある。
さらに,本件町職員3名の前記行為は,被告Bの指示に基づくものであるところ,同指示は町長としての地位・権限に基づくものとはいえず,個人として行ったものであるというべきであるから,被告Bは,原告に対し,個人として,民法709条,719条に基づき,損害賠償責任がある。
(被告南丹市の主張)
ア 本件町職員3名は,平成10年2月24日,被告Bから,しあわせ課にCから相談があるかもしれないから相談にのってあげるようにとの連絡を受け,これまでの原告の異常な行動について報告を受けた。なお,Jは,当時,ふるさと振興課に所属していたが,従前,しあわせ課に所属しており,Cとも面識があったため,被告Bから上記連絡を受けたものである。
イ 本件町職員3名は,同日の夜,Cから,原告が包丁を振り回したとの相談を受け,専門家に相談した方がよいと助言して,被告Aを紹介し,翌25日に被告Aに往診してもらうことになった。
しあわせ課では,相談業務の一環として,相談者のために,各種関係機関等へ同行することがあり,本件でも,被告Aが原告宅へ往診に行くに際し,本件町職員3名が同行することになった。
ウ 本件町職員3名は,被告A及びCらとともに,同月25日,原告宅へ行った。そして,本件町職員3名と被告Aは,CとEが原告に対して入院するよう説得している間,建物の外で待機していたが,原告は暴れている様子で,中から「お前,何するんや。」と大声が聞こえてきたため,建物内に入った。
建物内では,原告がリビングのソファーに仰向けになって,Cに上から押さえ付けられており,また,Cの眼鏡が床に落ちている状況であった。
エ 被告Aは,原告に話しかけた後,Cの要請を受けて原告に精神安定剤を注射することになり,被告Aから原告の身体を押さえておくようにと依頼された本件町職員3名は,被告Aが暴れている原告に対して安全に注射ができるように,Cとともに原告の体を押さえた。
オ 被告Aが原告に注射をすると,原告は落ち着き,その後,歩いて車に乗った。原告は,D病院に行く車中でも普通に話をしていたのであり,注射により意識を失ったことはない。
カ 上記のとおり,被告Aのした注射は,①原告が前日には包丁を振り回し,当日にもCに暴行するなど自傷他害の事態に至る危険が切迫している状況下で,②Cから治療を受けるように説得されても応じる様子のない原告を,安全に病院に移送して診察を受けさせるため,③Cの依頼のもと,④医師である被告Aが,⑤暴れる原告に対して,必要最小限の行為として,精神安定剤を注射したというものであり,本件町職員3名は,被告Aの指示に従い,暴れている原告に対して安全に注射を打つためにその身体を押さえていたにすぎない。
したがって,本件町職員3名の上記行為は正当行為であり,何ら違法ではない。
(被告B及び被告Aの主張)
ア 被告Bは,平成10年2月23日,Cから,原告が傘でCをつつくなどしてコートがぼろぼろになったこと,それまでにも原告に包丁を振り回されて腹部を刺されたり,カセットテープの束で頭部を殴られるなどの暴行を受けており,もはや家族だけで対応するのは限界であることなどを聞いた。
そこで,被告Bは,Cに対し,しあわせ課に相談するように言い,翌24日,本件町職員3名を町長室に呼び,Cの相談にのってあげてほしいと伝えた。
Cは,同日,しあわせ課に相談し,その後,町職員とともに病院にも行った。
同日の夜,被告Bが自宅で本件町職員3名から上記の経過について報告を受けていたところ,Cがやってきて,原告が包丁を振り回して襲ってきたと話したため,Iが被告Aに電話をして相談し,翌25日に被告Aが原告を往診することになった。
そこで,被告Bは,本件町職員3名に対し,医師である被告Aの指示に従うよう言った。
上記のとおり,被告Bは,Cから相談を受け,町長の職務として,所管のしあわせ課職員らに相談にのるよう指示をし,また,職員らに対しては,医師の指示に従うよう言っただけであり,被告Aの注射を促したり,精神病院に無理矢理入院させるよう指示したことはない。
イ 被告Aは,本件入院の前日である平成10年2月24日,八木町職員から,Cの相談にのってほしい旨の連絡を受け,CとEの問診を行ったところ,両名は原告に入院治療を受けさせることを希望していた。この問診の際,原告が以前カーチェイスを演じたとか,Cに対し刃物を振り回したことなど,原告の異常な行動についての話があったことから,被告Aは,原告が精神病に罹患している疑いが濃く,在宅での治療が困難ではないかと考えた。そして,Cから往診の要請があったため,被告Aは翌25日に原告宅に往診することになった。
往診当日,被告Aは,事前にD病院に空きベッドがあることを確認の上,本件町職員3名とともに原告宅に赴き,C及びEが原告に入院するよう説得する間,屋外で待機していたところ,中から大声が聞こえてきた。
そこで,被告Aが本件町職員3名とともに家の中に入ると,Cがソファーの上で原告の身体を押さえており,原告は仰向けになってなおも暴れる様子であった。Cは,原告に対し「あなたは病院に行って治療しなければならない。」と言っていたが,原告は興奮して,会話が成り立つような状況ではなかった。
被告Aは,原告に対し,医師である旨名乗り,問診を始めたが,原告はますます興奮した様子で,話ができる状態ではなかった。そして,Cから原告を落ち着かせてほしい旨依頼されたため,原告の安全を図るため本件町職員3名に原告の身体を押さえてもらい,原告の興奮を鎮めるため,精神安定剤であるイソミタール,レボトミン及びピレチアを注射した。
ウ 原告は,注射により落ち着き,自ら歩いて車に乗り込んで,D病院へ行ったのであり,原告が注射により意識を失った事実はない。そして,原告は,D病院において,入院治療の必要性があると診断され,同病院に入院した。
エ 以上のとおり,被告Aのした注射は,医師としての正当な医療行為であり,その後のD病院への搬送についても,原告は自ら歩いて車に乗り込んでいるのであって,その経過に何ら違法な点はない。
(2) 本件聴取書による原告に対する名誉毀損等の成否(争点2)
(原告の主張)
ア Iは,平成10年3月2日,本件聴取書を作成して,被告A及びLにこれを提供したところ,本件聴取書には,実際には死別であるのに,原告が3歳のときに両親が離婚したとか,Cの母は平成6年5月に死亡しているのに,平成9年10月に死亡したなど,虚偽の事実が記載されている上,原告の母について,「社長の妾になる」,「次々と違う男を自宅に連れ込み肉体関係をもっていた」など,原告の母の名誉を毀損する虚偽の事実が記載されている。
また,Iは,その職務上知り得た原告に関する情報を,原告の同意を得ることなく第三者に提供したのであり,これが原告のプライバシーを侵害することは明らかである。
イ 原告は,本件聴取書の上記記載によって,その名誉及び名誉感情を著しく傷つけられるとともにプライバシーを侵害され,重大な精神的苦痛を被った。
ウ 本件聴取書は,被告Bの指示に基づき,八木町職員であるIが作成したものであるが,被告Bの上記指示は,八木町長としての職務権限を違法に濫用・逸脱するものであり,故意に原告に重大な精神的苦痛を与えたものであるから,被告Bは,原告に対し,個人として,民法709条,719条に基づき,損害賠償責任がある。
また,Iは,八木町職員として,本件聴取書を作成し,これを第三者に提供して原告に損害を与えたものであるから,被告南丹市は,原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償責任がある。
(被告南丹市の主張)
ア Iは,平成10年2月24日にC及びEから相談を受けた際,原告の従前の言動について聴取し,これをメモに取った。また,Iは,上記C及びEからの聴取に先立ち,被告Bからも概略について説明を受け,その内容もメモに取っていた。
イ 原告がD病院に入院した後,同病院のケースワーカーからしあわせ課に対し,原告のこれまでの状況やしあわせ課が把握している情報を教えてほしいと連絡があった。そこで,Iは,CやE,被告Bらから聴き取りをした内容をまとめて本件聴取書を作成し,D病院に提出したのであり,その提供先は原告の医療に関わる医師等に限られているから,事実を流布したわけではない。
ウ 原告が虚偽の事実であると主張する部分については,いずれもIがCの発言を忠実に録取したものであり,それが事実に反するか否かを判断することはIには不可能である。
エ 仮に,本件聴取書の記載が原告の名誉を毀損するものであるとしても,本件聴取書が作成・交付されたのは,原告を含む町民の健康という公共の利害に関し,専ら公益を図る目的に出たものであり,また,原告が指摘するように本件聴取書の記載中,事実に相違する部分があったとしても,なおその主要部分においては真実であったというべきである。
そして,Iは,原告の夫であるCから聴取した内容を整理して本件聴取書を作成したのであり,その記載内容を真実と信じたことにつき相当な理由があるから,原告に対する名誉毀損は成立しない。
オ 本件聴取書は,原告の治療に資するため,原告に対する医療行為を行う病院ないし医師に対してのみ交付されたものであり,このような目的・交付先に照らせば,原告のプライバシーを侵害するものとはいえない。
(被告Bの主張)
被告Bは,本件聴取書の作成に何ら関与したことはなく,Iに作成を指示したこともない。また,被告Bは,本件聴取書がD病院に提供されたことも知らない。
(3) 原告の損害(争点3)
(原告の主張)
ア 原告は,被告Aにその意思に反して注射をされ,被告A及び本件町職員3名らに強制的にD病院に連行されたことによって精神的苦痛を受け,以下の損害を被った。
(ア) 慰謝料 1000万円
(イ) 弁護士費用 100万円
イ 原告は,本件聴取書の提供による名誉及び名誉感情の毀損,プライバシー侵害によって精神的苦痛を受け,以下の損害を被った。
(ア) 慰謝料 100万円
(イ) 弁護士費用 10万円
(被告南丹市及び被告Bの主張)
原告の主張はいずれも争う。
(被告Aの主張)
原告の主張アは争う。
第3当裁判所の判断
1 争点1について
(1) 前記前提となる事実に加え,甲3,乙1,乙2,丙1ないし4,丙8,丙11,丙12,丙15,丙21ないし23並びに証人C,証人I,証人J及び証人Hの各証言並びに原告,被告B及び被告Aの各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 本件入院前日までの経過
(ア) Cは,平成10年2月23日,被告Bの自宅へ行き,同被告に対し,原告に傘でつつかれ,コートが破れた等と話した。
被告Bは,以前にもCから原告に腹部を刺された等の話を聞いていたことから,Cに対し,一度しあわせ課に相談に行ったらどうかと助言した。
(イ) 被告Bは,同月24日の午前中,本件町職員3名を町長室に呼び,前日のCからの話及び原告の従前の言動等について話した上で,Cの相談にのるよう指示した。
Cは,同日,八木町役場を訪れ,本件町職員3名に対し,原告が暴行をふるって自分の身が危ない旨相談し,原告を医師に診察してもらうことになった。
Cは,同日,J及びIに同行してもらい,亀岡市内のクリニックMで,D病院の医師でもあるN医師の問診を受けた。
N医師は,上記問診の結果,原告本人を直接診察しないと,最終的な判断はできないが,自分は原告宅へ往診できないとして,被告Aを紹介した。これを受けて,Cは,Eにも連絡を取った上,J及びIとともに被告Aの開設する医院で被告Aに相談した。
このとき,C及びEは,被告Aに対し,原告がCを包丁で刺したり,物を投げつけたりしたことや,カーチェイスを演じたことなどを話し,原告を入院させたいとの希望を伝えたが,被告Aは,原告を直接診察しないと入院の必要性を判断できない旨答えた。
(ウ) 本件町職員3名は,同日夜,被告Bの自宅で,Cの相談を受けた後の経過について,医師が原告を診察しないと分からない旨話していること等を被告Bに報告したが,この報告中に,Cが「原告が包丁様のものを振り回し,とても家の中に入れない。自分の身が危ない。」と言って被告Bの自宅へやってきた。
そこで,Iは,被告Aに連絡を取り,往診を早くしてほしい旨伝えた。被告Aは,原告に入院治療の必要性があった場合のために,D病院に空きベッドがあることを確認の上,翌日の午後4時ころに被告Aが原告宅へ往診することとし,合わせて,C及び被告Aの依頼を受け,本件町職員3名が往診に同行することになった。被告Bは,本件町職員3名に対し,被告Aの指示に従うように言った。
(エ) Cは,同日,自宅には帰らず,Eの住むマンションに泊まった。
イ 本件入院当日の経過
(ア) 原告は,同月25日,自宅にある美容院で平常どおり美容師として仕事をしていた。
本件町職員3名は,原告宅への往診に同行する前に,被告Bに対し,これから出発する旨報告した。これに対し,被告Bは,被告Aの指示に従うように話した。
(イ) 被告Aは,同日午後4時ころ,原告宅への往診に先立ち,D病院のN医師に電話をし,「今から注射をして連れて行く。」旨伝えた。これに対し,N医師は,診察に支障があるから注射をせずに連れてきてほしい旨話したが,被告Aは,原告は刃物を持っているからとても無理である等と答えた。
C,E,本件町職員3名及び被告Aは,同日午後4時ころ,八木町役場で待ち合わせをし,原告宅へ向かった。そして,原告宅に到着後,まずCとEが原告宅内に入り,リビングにおいて,原告に対し,医師の診察を受けるよう説得しようと話しかけたところ,原告がCの顔を叩いたため,Cは「何するんや」と叫び,Eとともに原告をソファー上で押さえ付けた。
(ウ) 被告A及び本件町職員3名は,当初,原告宅の裏口の外で待機していたが,上記Cの声を聞き,裏口から原告宅内に入った。リビングでは,C及びEがソファーの上で仰向けになっている原告を押さえている状態であり,原告はなお暴れている状態であった。
(エ) 被告Aは,原告に対し,医師である旨を話して,問診をしようとしたが,原告は興奮しており,会話が成り立つ状態ではなかった。
(オ) Cは,被告Aに対し,原告を落ち着かせてほしい旨依頼し,被告Aは,本件町職員3名に対し,原告の身体を押さえておくよう指示し,被告Aから指示を受けた本件町職員3名は,C及びEとともに原告を押さえ付け(以下「本件幇助」という。),被告Aは,この状態で,原告に対し,精神安定剤であるイソミタール,レボトミン及びピレチアを注射した(以下「本件注射」という。)。
(カ) 本件注射後,原告は,おとなしくなり,八木町の公用車に乗せられ,C,E,本件町職員3名及び被告Aは,原告をD病院に搬送した(以下「本件搬送」という。)。
その車中,原告は,病院に連れて行かれることについて納得していない様子で,不満を述べるなどしていた。
(キ) 原告らは,同日午後5時ころにD病院に到着し,被告Aが,N医師に対し,「イソミタール等を注射したが,もう覚めかけている。」旨説明した。
原告は,同日午後5時30分ころから,D病院でK医師の診察を受け,心因反応と診断されて,Cの同意のもと,同病院に医療保護入院することになった。
(2) 以上の事実を前提に,本件注射,本件幇助及び本件搬送(以下合わせて「本件移送」という。)が違法といえる否かについて検討する。
ア 精神障害者と診断される前の移送について
(ア) 本件入院は,精神保健福祉法33条1項に規定する医療保護入院であるが,本件当時,同項に規定する指定医の診察を受けさせるために被診察者を精神病院へ移送する手続について定める規定はなかった。
本来,医師の診察を受けるか否か,病院に入院するか否かといった判断は,本人の自由な意思に基づいてなされるべきものであるところ,医療保護入院は,指定医により精神障害者と診断された者の医療及び保護のため,保護者の同意を要件に,精神障害者をその同意なくして入院させるものである。
そして,精神障害の疑いがある者について,医療保護入院の前提となる指定医の診察を受けさせるために精神病院に移送する段階においては,未だ医療保護入院の要件を満たす否かは不明であることに照らせば,その移送には,原則として本人の同意が必要であるというべきである。
(イ) 他方,精神障害は本人に病識がないことも多く,指定医の診察を受けるために精神病院に移送することについて本人の同意が得られない場合があることも否定できない。
そのような場合,いかに自傷他害のおそれが顕著であるなど緊急に入院させる必要があっても,本人の同意がないために病院に移送することができないとすることは,かえって,本人の医療及び保護を害することになり,精神保健福祉法の趣旨にも反する結果となる。
(ウ) したがって,医師の診察の結果,精神障害者であると診断され,その病状に照らして,自傷他害のおそれが顕著であるなど緊急に入院させる必要が認められる者については,その保護者となるべき者の同意がある場合には,本人の同意がなくても,医療保護入院の前提となる指定医の診察を受けさせるために精神病院に移送することができると解するのが相当である。
そして,その場合,本人を移送するために,保護者となるべき者の同意のもとで,本人の行動を制限する措置をとることも,その方法が社会通念上相当と認められ,かつ,移送の目的を達するのに必要最小限のものである限り,許されるというべきである。但し,精神安定剤の投与については,本人の心身に及ぼす影響に鑑み,本件のように注射の方法によるにせよ,経口投与の方法によるにせよ,医師によって行われ,かつ,身体の拘束等の他に適切な方法がない場合に限られると解するのが相当である。
以下,この見地から,本件注射,本件幇助及び本件搬送が違法であるか否かについて検討する。
イ 本件注射について
(ア) 前記(1)ア(イ)(ウ)認定の経過のとおり,被告Aは,前日である平成10年2月24日に,C及びEから原告の従前の行動等について話を聞いた上,原告を直接診察しなければ入院の必要性を判断できないとして,原告宅に往診することになったのであるから,往診の主たる目的は,原告を診察して,精神障害の有無や入院の必要性の有無につき,医学的見地から判断することにあったと認められる。
そして,被告Aが原告に対し問診を試みた際,原告が興奮状態で会話が成り立たない状況であったことは前記(1)イ(エ)認定のとおりであるところ,被告Aは,この状況から,CやEから聞いていた話が裏付けられたと考え,入院の必要性があると判断した旨供述する(被告A本人)。
しかしながら,被告Aが原告宅内に入った時点では,既にC及びEが原告を押さえ付けていたのであるから,被告Aにはどのような経過で原告がC及びEに押さえ付けられるに至ったのかも分からないはずであり,また,押さえ付けられている状況下で原告がC及びEに抵抗して暴れているからといって,それが精神障害の影響によるものと直ちにいうことはできないから,原告を診察するためには,まず,C及びEと原告を引き離し,原告の興奮が静まるか否かを見極めながら,十分に問診を尽くすことが必要というべきである。
それにもかかわらず,被告Aは,問診を試みて会話が成り立たないことを確認すると,間もなく原告に本件注射をしており,その後は問診等を行っていないのであって(被告A本人),十分に問診を尽くしたとはいい難い上,上記注射までの間,C及びEと原告を引き離したことも窺われない。
そうすると,被告Aは,不十分な問診しか行わないまま,専らCやEから聴取した事情をもとに,原告に精神障害があると判断したものといわざるを得ない。
(イ) 次に,本件注射について検討する。
注射は,身体への物理的侵襲を伴うだけでなく,精神安定剤を注射した上で患者を病院に移送した場合,その薬効により,移送後の医師の診察に支障を来す可能性があるから,この点からも移送に当たって患者に精神安定剤等を注射することはできる限り避けるべきであり,前記(1)イ(イ)認定のとおり,N医師も,往診前の電話を受けた際,被告Aに対し,注射をせずに移送するよう求めている。
この点について,被告Aは,N医師に電話をしたのは本件注射後であり,往診前に注射をすることを予告することはない旨供述するが,上記電話の内容からして,注射前のやりとりであることは明らかであり,N医師が被告Aの発言を誤解したとか,架空の会話内容を創作したとは考え難い(被告Aは,N医師が本件注射の薬剤を誤って説明している点を指摘するが,3種類の薬剤を注射したという点は合致しており,上記認定を左右するほどの矛盾とはいえない。)。むしろ,前記認定の会話内容からすると,被告Aは,往診前の段階で,原告が刃物を持っているとの前提で,注射した上で移送することを念頭に置いていたことが窺われる。
そして,被告Aは,原告が現にCに暴行をふるったり,刃物を振り回したりしている状況を見ておらず,ほかに,問診時において,原告に自傷他害のおそれが顕著であるなど,直ちに精神安定剤を注射して原告の興奮を静める必要があったことを示す具体的な事情も窺われない(Cは,原告が包丁を取りに行くような動きをした旨証言するが,Eはその陳述書〔丙12〕ではこの点に全く触れておらず,また,原告宅の間取り〔丙15末尾に添付の見取り図〕からしても,上記事実を直ちに認めることはできない。)。
また,問診当日には,CやEのほか,本件町職員3名が同行していたのであり,いかに原告が興奮状態にあったとしても,その場には成人男性6人がいたのであるから,精神安定剤を注射しなくても,自傷他害の事態を防止し,原告を安全にD病院に移送することは可能であったというべきである。
(ウ) 以上によれば,本件注射については,被告Aの問診では,本件当時,原告に自傷他害のおそれがあるなど緊急に入院させる必要があったとは直ちに認められない上,本人の行動を制限する措置として社会通念上相当とは認められず,かつ,他に適当な方法がなく,必要最小限のものともいえない。
したがって,本件注射は違法というほかない。
ウ 本件幇助について
本件町職員3名は,本件注射の際,被告Aの指示を受けて原告の身体を押さえ付けているが,本件注射自体が違法であることは前記イで判示したとおりである。
そして,本件町職員3名は,被告Aの往診の目的が原告を診察することにあることを認識した上で,町の福祉にかかる業務の一環として被告Aに同行したものと認められるところ,本件町職員3名が原告宅に入った時点では,C及びEが原告を押さえ付けている状態であったのであるから,まずはC及びEと原告を引き離すなどして,被告Aによる診察が可能な態勢となるよう補助すべきであったというべきである。
それにもかかわらず,本件町職員3名は,上記のような補助をすることもないまま,被告Aが十分な問診もしていない段階で,現に原告が包丁を持っている等,危険が切迫した状況にもないのに,注射をするために押さえてほしいとの被告Aの指示に安易に従い,C及びEも含め成人男性5名で原告を押さえ付け,被告Aの本件注射を補助したものであり,たとえ医師である被告Aの指示があっても,本件幇助は違法であるというほかない。
エ 本件搬送について
本件注射後,原告はおとなしくなり,車に乗せられていること(前記(1)イ(カ)。なお,被告A及び本件町職員3名は原告は自ら車に乗り込んだとの供述ないし証言をするが,本件注射後間もなくのことであること及び原告の後記車中での状態,言動に照らせば,原告が任意に乗り込んだとは認められない。),D病院到着時に被告Aが「もう覚めかけている。」と発言していること(前記1(1)イ(キ))等に照らせば,車に乗り込んでからも,原告は本件注射の影響下にあったと認められること,原告は,車中で,病院に連れて行かれることについて不満を述べるなどしていたこと(前記(1)イ(カ))を考慮すれば,本件搬送が原告の意思に反するものであったことは明らかである。
したがって,本件搬送は違法というほかない。
オ 以上によれば,本件移送は全体として違法といえる。
なお,原告は,D病院においてK医師に心因反応と診断されて,医療保護入院しているが(原告がこの医療保護入院が違法であると主張して別件訴訟が現在も審理中であることは前記前提となる事実(4)のとおりである。),原告に精神障害があったか否かによって,本件移送の違法性が左右されるとはいえない。
(3) 被告Bの不法行為責任について
ア 前記(1)ア認定のとおり,被告Bは,Cの相談を受け,本件町職員3名に対してCの相談にのるよう指示しているところ,しあわせ課の担当業務に関して,町長である被告B自ら,担当課員であるI及びHのみならず,既にしあわせ課から他課に異動していたJに対して直接指示をし,その後も自宅で本件町職員3名から報告を受けるなどしていることからすると,被告Bは,Cとの個人的関係(本件当時,被告Bは八木町長,Cは同町議会議員という関係にあっただけでなく,被告Bの供述によれば,同被告はかつてCの父親に世話になったこともあったと認められる。)を背景に上記指示をしたものといえる。
しかし,その指示は,Cの相談にのること及び被告Aの往診に同行するに当たり,同被告の指示に従うことといった抽象的な内容にとどまり,被告Bが,原告を入院させることについてCと共謀したとか,本件町職員3名に対して,原告を強制的に病院に連行するよう具体的に指示したとまで認めるに足りる証拠はない。
イ 以上によれば,本件幇助及び本件搬送は,往診時の具体的な状況を前提とするものであり,事前に被告Bが「医師の指示に従うように」との抽象的な指示をしたからといって,本件町職員3名の本件幇助(但し,これに加わったのは,本件町職員3名とC及びEの5名)及び本件搬送(但し,これに加わったのは,本件町職員3名と被告A,C及びEの6名)につき,不法行為責任があるとはいえない。
なお,本件注射は,被告Aが,往診時の具体的状況下で,医師としての判断に基づいて行ったものであり,被告Bが本件注射を共謀・指示した証拠はないから,同被告は,本件注射につき,不法行為責任があるとはいえない。
(4) まとめ
以上によれば,本件移送について,被告Aは民法709条,719条に基づき,被告南丹市は国家賠償法1条1項に基づき,いずれも原告に対して損害賠償責任がある。
2 争点2について
(1) 本件聴取書の記載
甲3によれば,本件聴取書には,前記前提となる事実(3)記載の事実をはじめとして,原告やその家族の生育歴や,原告が異常な行動を取ったり,Cら家族に暴行を加えた事実等が記載されており,その中には原告の社会的評価を低下させる事実の記載や原告のプライバシーに関わる記載があると認められる。
また,本件聴取書には,原告の母について,「会社社長の妾」,「違う男性を自宅に連れ込み肉体関係をもっていた」等の記載があり,これが原告の名誉感情を害するであることは否定できない。
(2) 本件聴取書の作成の経緯・目的,交付の目的
ア 乙8及び証人Iの証言によれば,Iは,平成10年2月24日に町長室で被告Bから聞いた話(前記1(1)ア(イ))及び同日,Cから相談を受けた際に聴取した事項についてメモをしていたこと,原告がD病院に入院した後,Lから八木町の持っている情報を提供してほしいと依頼を受け,上記メモを清書して本件聴取書を作成し,同年3月2日にLに提供し,証拠上日時は特定できないが,被告Aにも提供したと認められる(なお,甲5の1・2によれば,本件聴取書をL等に提供することについては,C及びEの同意があると認められる。)。
イ また,原告の母に関する前記記載は,Cが原告自身から聞いた事実をそのままIに話し,これをIが本件聴取書に記載したものと認められる(丙22,弁論の全趣旨)。
(3) 本件聴取書の提出は違法といえるか否か
ア 上記(2)で認定したところによれば,本件聴取書は,D病院において,医療保護入院中の原告に対して適切に医療及び保護を行う際の資料として用いる目的で,Iがしあわせ課の業務の一環として作成したものであり,その作成経緯・目的に違法な点は見られない。
イ また,提供先も原告に対して医療を行う医師等に限定されているということができるから,Iが本件聴取書をL等に提供したことをもって,公然と事実を摘示したということはできない(なお,原告は,後日,別件訴訟において,本件聴取書が書証として提出されたことを指摘するが,そのことをもって,Iが本件聴取書を提供したことが公然と事実を適示したことになるとはいえない。)。
ウ 上記ア,イに加えて,本件入院における原告の保護者であるCがD病院への情報提供につき同意していること,C自身,A医院やD病院において診察を受けた際,本件聴取書に記載されている事実等についても自ら話していること(丙5)に照らせば,本件聴取書の提供が違法とはいえない。
(4) まとめ
以上によれば,本件聴取書の提供は違法とはいえないから,本件聴取書の提供にかかる原告の被告南丹市及び被告Bに対する請求はいずれも理由がない。
3 争点3について
本件町職員3名及び被告Aによる本件移送によって原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,本件移送にかかる前記認定事実に加えて,本件移送はもともと原告の家族であるC及びEが原告の入院を希望したことに端を発し,被告Aは上記両名から相談を受けて往診することになり,本件町職員3名はC及び被告Aから依頼されて同行することになったものであることを斟酌すれば,100万円が相当であり,弁護士費用としては10万円が相当である。
4 結論
以上によれば,原告の請求は,被告南丹市及び被告Aに対し,110万円及びこれに対する本件移送の後である平成15年7月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,被告Bに対する請求並びに被告南丹市及び被告Aに対するその余の請求はいずれも理由がないから棄却し,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中義則 裁判官 阪口彰洋 裁判官 大橋弘治)