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京都地方裁判所 平成16年(わ)833号 判決 2004年9月02日

主文

被告人を懲役5年に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、平成15年12月9日午後1時31分ころ、京都市伏見区深草佐野屋敷町<番地略>付近道路において、法定の除外事由がないのに、国土交通大臣の委任を受けた最寄りの運輸管理部長又は陸運支局長の行う検査を受けておらず、自動車損害賠償責任保険契約も自動車損害賠償責任共済契約も締結されていない普通乗用自動車(車台番号××)を運転して運行の用に供し、その際、同車に他車の自動車登録番号標「○○」を取り付けて運転し、もって自動車登録番号標を当該自動車以外の自動車に使用したものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

罰  条

無免許運転の点 道路交通法117条の4第1号、 64条

車検を受けていない自動車を運行の用に供した点

道路運送車両法108条1号、 58条1項、 62条1項、平成15年政令第259号による改正前の同法施行令9条1項2号、9条2項1号

自賠責保険契約等が締結されていない自動車を運行の用に供した点

自動車損害賠償保障法86条の3第1号、 5条

自動車登録番号標を他の自動車に使用した点

道路運送車両法109条1号、 98条3項

科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段、10条

1個の行為が4個の罪名に触れる場合であるから、1罪として刑及び犯情の最も重い無免許運転の罪の刑で処断する。

刑種の選択 所定刑中懲役刑を選択

訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない)

(量刑の理由)

本件は、車検切れで、自賠責保険等もかけられていない普通乗用自動車に他の自動車の登録番号標を取り付けて無免許で運転したという事案である。被告人は、無免許であるにもかかわらず、車検が切れて、自動車登録番号標もなく、自賠責保険にも加入していない自動車を手に入れて、本件犯行に及んだものである。被告人には服役した交通関係の前科が3犯あるところ、これらは道路交通法違反、業務上過失傷害の罪、道路交通法違反、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反の罪及び道路交通法違反の罪を犯したものであり、いずれも無免許運転と他の罪とを犯したものである。そして、上記のほかにも前科が10犯あり、このうちには平成11年以降の罰金前科が3犯あることも併せ考えると、被告人は、交通法規を全く無視しており、規範意識も乏しいというべきである。そして、被告人が、一応反省の弁を述べるものの、本件のような行為の危険性についての認識が十分であるとはいえないことや、身近に適切な監督者がいないことなどにかんがみると、最後の服役を終えてから約10年半が経過していることなどを考慮しても、被告人に対しては、たとえ短期間であっても矯正施設に収容して矯正教育を施す必要があると判断し、主文のとおり量刑した。

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