京都地方裁判所 平成16年(行ウ)29号 判決 2006年5月19日
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 被告が平成14年11月29日付けで株式会社A(以下「破産会社」という。)に対してした破産会社の平成11年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成11事業年度」という。)の法人税についての更正処分のうち,所得金額マイナス2億7579万6729円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
2 被告が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした破産会社の平成12年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成12事業年度」という。)の法人税についての更正処分のうち,所得金額マイナス2億4737万6025円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
3 被告が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした破産会社の平成13年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成13事業年度」という。)の法人税についての更正処分のうち,所得金額マイナス6161万3274円及び納付すべき法人税額0円を超える部分並びにこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
4 被告が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした破産会社の平成11年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成11課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)についての更正処分(ただし,審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち,納付すべき税額170万6200円を超える部分並びに消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
5 被告が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした破産会社の平成12年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成12課税期間」という)の消費税等についての更正処分(ただし,審査裁決によ。り一部取り消された後のもの)のうち,納付すべき税額94万0500円を超える部分並びに消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。
6 被告が平成14年11月29日付けで破産会社に対してした破産会社の平成13年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成13課税期間」という。)の消費税等についての更正処分のうち,納付すべき税額80万1000円を超える部分並びに消費税等の過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第2事案の概要
1 本件は,破産会社の破産管財人である原告が,被告が破産会社に対して平成14年11月29日付けで行った,破産会社の平成11事業年度,平成12事業年度及び平成13事業年度(以下,これらを総称して「各事業年度」という。)の法人税額,破産会社の平成11課税期間,平成12課税期間及び平成13課税期間(以下,これらを総称して「各課税期間」という。)の消費税額等についての更正処分及び法人税,消費税等についての過少申告加算税賦課決定処分が違法であるとして,これらの処分のうち,確定申告額を超える部分(ただし,審査裁決により一部取り消された後のもの)及びそれに係る過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事件である。
2 基礎となる事実(当事者間に争いのない事実)
(1) 当事者
破産会社は,不動産の売買及び仲介,ショッピングセンターの開発,賃貸マンションの建設等を目的とする同族会社であったが,平成17年3月1日,破産手続開始決定を受け,原告が破産管財人に選任された。
(2) 本件訴訟に至る経緯
ア 確定申告
破産会社は,被告に対し,各事業年度の法人税について,各法定申告期限までに別表1「課税の経緯(法人税)」の「確定申告」欄記載の金額を記載した確定申告書を提出した。
破産会社は,被告に対し,各課税期間の消費税等について,各法定申告期限までに別表2「課税の経緯(消費税等)」の「確定申告」欄記載の金額を記載した確定申告書を提出した。
イ 各処分
被告は,平成14年11月29日付けで,破産会社に対し,別表1「課税の経緯(法人税)」の「更正処分等」欄記載の金額で,各事業年度の法人税の更正処分(以下「本件各法人税更正処分」という。)及び同処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各法人税に係る賦課決定処分」といい,「本件各法人税更正処分」と併せて「本件各法人税更正処分等」という。)をした。
被告は,平成14年11月29日付けで,破産会社に対し,別表2「課税の経緯(消費税等)」の「更正処分等」欄記載の金額で,各課税期間の消費税等の更正処分(以下「本件各消費税等更正処分」という。)及び同処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各消費税等に係る賦課決定処分」といい,「本件各消費税等更正処分」と併せて「本件各消費税等更正処分等」という。)をした。
ウ 不服申立て
破産会社は,平成14年12月19日に,本件各法人税更正処分等に対して審査請求を行うとともに,本件各消費税等更正処分等に対して異議申立てを行った。この異議申立ては,平成15年1月27日に国税通則法89条1項の規定に基づき審査請求がされたものとみなされ,本件各法人税更正処分等についての審査請求と併合審理がされた。
国税不服審判所長は,平成16年3月26日付けで別表2「課税の経緯(消費税等)」の「裁決」欄記載のとおり,平成11課税期間及び平成12課税期間の消費税等についての更正処分の一部を取り消したが,その余の審査請求はいずれも棄却した。なお,国税不服審判所長は,平成16年4月12日付けで裁決書の訂正を行った。
そこで,被告は,平成16年4月13日付けで別表2「課税の経緯(消費税等)」の「再更正処分等」欄のとおり,平成11課税期間及び平成12課税期間の消費税等の減額更正処分並びに過少申告加算税の減額賦課決定処分をした。
エ 本件訴訟
原告は,本件訴訟においては,次の「3 争点及びこれに関する当事者の主張」で取り上げるもののほかは,別表1「課税の経緯(法人税)」の「更正処分等」欄記載の金額及び別表2「課税の経緯(消費税等)」の「再更正処分等」欄(平成13課税期間については「更正処分等」欄)記載の金額を争っていない。
(3) 株式会社B(以下「B」という。)の破産会社に対する債権回収措置
ア Bは,株式会社Cが株式会社D(以下「D」という。)に対して有していた貸金債権を譲り受けた。
Bは,破産会社を債務者として,上記貸金債権について,法人格否認の法理によって破産会社に対して同額の債権を有すると主張し,これを被保全権利として不動産仮差押命令及び債権仮差押命令の申立てを行った。京都地方裁判所は,平成10年6月30日,破産会社所有に係る別紙物件目録記載1から8までの各建物(以下,同目録記載1の建物を「E」,同目録記載4の建物を「F」,同目録記載5の建物を「G」,同目録記載6の建物を「H」という。),同目録記載3の建物についての賃料債権等について仮差押命令を発した。Bの各申立てに基づいて,同裁判所は,同日,F,G及びHについて強制管理開始決定をし,大津地方裁判所は,同年7月2日,Eについて強制管理開始決定をした(以下,強制管理の対象となった上記の建物を総称して「本件各強制管理物件」という。)。
イ 京都地方裁判所は,平成15年3月28日,Bを原告,破産会社を被告とする貸金請求事件(アの保全処分の本案訴訟。以下,この訴訟を1,2審を通じて「別件訴訟」という。)において,Bの請求を認容し,破産会社に対し,貸金残元金178億7225万7773円,未払利息及び上記貸金の残元金に対する年14%の割合による約定遅延損害金の支払を命じる判決を言い渡した。破産会社は,この判決に対して控訴したが,大阪高等裁判所は,平成16年9月15日,控訴を棄却する判決(請求の減縮により,貸金残元金178億7167万4083円,未払利息及び上記貸金の残元金に対する年14%の割合による約定遅延損害金の支払に変更)を言い渡した。破産会社は,この判決に対し,上告及び上告受理の申立てをしたが,同年11月17日,上告状及び上告受理申立書がいずれも却下された。
ウ 上記判決に従い,破産会社がBに対して支払うべき遅延損害金(以下「本件損害金」という。)の額は,各事業年度において,それぞれ22億6761万6088円である。
(4) 本件各強制管理物件の収支管理
本件各強制管理物件についての収支管理は,執行裁判所の監督の下,各強制管理人が行っていた。各強制管理人は,裁判所に対し,別表3「収支計算報告書等の各裁判所提出日」のとおり,Eについては毎月,F,G,Hについては四半期ごとに収支決算報告書等を提出していた。
3 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 本件損害金の額を各事業年度の損金に算入することの可否-本件損害金債務の確定時期(争点1)
ア 被告の主張
(ア) 本件損害金債務の確定時期は,別件訴訟の判決確定日である平成16年11月17日である。だから,本件損害金は,各事業年度終了までには確定していないから,各事業年度における損金には該当しない。そうすると,破産会社が納付すべき法人税額は,別表1「課税の経緯(法人税)」の「更正処分等」記載のとおりとなるから,本件法人税各更正処分は適法である。
(イ) 上記のとおり本件法人税各更正処分は適法であるから,本件各法人税に係る賦課決定処分は適法である。
イ 原告の主張
(ア) 法人税法は,償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものは,当該事業年度における損金の額に算入することを認めないこととしており(法人税法22条3項2号),債務確定基準を採用している。法人税法が,債務確定基準を採用したのは,企業の恣意を排除し,ひいては課税の公平を確保するためである。
また,法人税基本通達2-2-12は,法人税法22条3項2号の「当該事業年度終了までに債務が確定しているもの」とは,①当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること,②当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること,③当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであることの3要件をすべて満たすものとしており,裁判上の債務名義確定までは要求していない。
さらに,国税通則法23条2項1号は,判決確定後の更正を容認しており,訴訟上争われている債務につき判決の確定を待たずに課税標準等の計算の基礎とすることが予定されている。
これらの法の趣旨,解釈等からすると,納税者の恣意を排除し,課税の公平を確保できる程度に,債務成立,具体的給付原因事実の発生及び金額の算定可能性が認められれば,法人税法上の債務の確定を認めるべきである。
本件では,DがBに対して負う債務の成立,具体的給付原因事実の発生及び金額は各消費貸借契約の内容等から明らかである。そして,裁判所が各保全命令を出した時には,裁判所が相当程度確実に被保全権利が認められると判断したものと考えられ,破産会社がBに対していわゆる法人格否認の法理により弁済責任を負うことは相当程度確実になっていたということができるから,債務が確定したというべきである。
そうすると,本件損害金は各事業年度終了までに確定していたから,各事業年度の損金の額に算入されることになり,これを損金の額に算入しないでされた本件各法人税更正処分は違法である。
(イ) 上記のとおり,破産会社が納付すべき法人税額は当初の申告納税額と同額であるから,過少申告加算税を賦課すべきでなく,本件各法人税に係る賦課決定処分は取り消されるべきである。
(2) 本件各課税期間の消費税に係る確定申告が過少であったことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無(争点2)
ア 原告の主張
破産会社は,各課税期間の消費税等の申告に際し,本件各強制管理物件の賃料収入等について収支に計上していない。
しかし,強制管理人が裁判所に対して本件各強制管理物件についての各課税期間の収支報告書等提出を完了したのは,平成11課税期間については確定申告書提出期間(各事業年度の翌年の1月1日から2月28日まで)経過後,平成12課税期間及び平成13課税期間についてはそれぞれ申告期間満了日の22日前,28日前であった。そして,強制管理人の収支報告だけでは課税,非課税取引の分類ができないこと,課税,非課税取引の分類は税務署長と国税不服審判所長との判断が分かれるほど複雑であることを考慮すると,適正な計算のためには様々な調査手続が不可欠であり,強制管理に係る不動産の賃料収入等の収支を当初の税額の基礎とすることは物理的又は実質的に不可能であった。
このように,破産会社が強制管理に係る賃料収入等を更正前の税額の計算の基礎としなかったことについて国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるから,これを過少申告加算税の計算の基礎とすべきでなく,本件各消費税等に係る賦課決定処分は取り消されるべきものである。
イ 被告の主張
以下のとおり,破産会社が行った各課税期間の消費税等に係る確定申告が過少であったことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があったとはいえない。
(ア) 破産会社は,審査請求段階及び本件訴訟において,本件各強制管理物件の収支は破産会社に帰属せず,実際の収益者であるBに帰属する旨の主張をした。これからすると,破産会社は,各課税期間の消費税の確定申告に当たっては,本件各強制管理物件の収支を把握できなかったことから申告額が過小となったものではなく,上記のような法令解釈あるいは事実認定を誤って,強制管理物件に係る収支が自己に帰属しないものとして各課税期間の消費税等に係る確定申告を行ったために,それが過少になったものである。
(イ) また,破産会社は,各課税期間終了までに,本件各強制管理物件について9か月分なしい11か月分の収支を把握することが可能であったから,そこから1年分の収支を見積もって期限内に申告を行うことが可能であった(消費税法基本通達10-1-20は,「事業者が資産の譲渡等を行った場合において,その資産の譲渡等をした日の属する課税期間の末日までにその対価の額が確定していないときは,同日の現況によりその金額を適正に見積もるものとする。この場合において,その後確定した対価の額が見積額と異なるときは,その差額は,その確定した日の属する課税期間における資産の譲渡等の額に加算し,又は当該対価の額から控除するものとする」とし。ている。)。
(ウ) さらに,強制管理人は,平成14年2月1日には,本件のすべての課税期間についての本件各強制管理物件についての収支報告書等を裁判所に提出し終えている。したがって,破産会社は,平成14年11月29日の本件各消費税等更正処分を受けるまでの間に,これらの収支報告書等を閲覧謄写して,それに基づいて修正申告をすることが可能であったのに,これをしなかった。
第3当裁判所の判断
1 本件損害金の額を各事業年度の損金に算入することの可否-本件損害金債務の確定時期(争点1)
(1) 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,法人税法22条3項各号に掲げる額であり,同項各号に掲げる額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される(同条4項)。すなわち,ある金額をどの事業年度の損金として計上すべきかは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり,それは,損金についての義務が確定した時の属する年度に計上すべきとするものというべきである。
そして,その趣旨は,納税者の恣意を排除し,公平な課税と法的安定性を維持するところにあると解されるから,義務が確定した時とは,単にその義務が発生しているだけでは足りず,客観的に見て義務の存在が確定していることを要する。
本件についてみると,各事業年度において,DのBに対する貸金返還債務及びその不履行による損害賠償債務も,破産会社の法人格を否認し,Dの債務について破産会社も責任を負うべき根拠事実も既に発生していた。
しかし,破産会社は,別件訴訟において,DのBに対する債務及び破産会社の法人格が否認されDの債務について破産会社が責任を負うことを争っており(弁論の全趣旨),各事業年度においては,別件訴訟は,なお第1審に係属中であったというのであるから,本件各事業年度においては,破産会社が本件損害金の支払義務を負うことが客観的に見て確定したということはできない(破産会社が本件損害金の支払義務を負うことは,遅くとも別件訴訟についての控訴審判決に対する上告状及び上告受理申立書が却下された平成16年11月17日には確定したことは明らかである。)。
むしろ,破産会社が,別件訴訟において,DのBに対する債務及び破産会社の法人格が否認されるべきことを争いながら,一方で,本件損害金を各事業年度の損金の額に算入することを認めることは,実質的には,将来別件訴訟において敗訴することにそなえた引当金等を損金の額に算入することを認めることと変わりがない(破産会社は,金額もさることながら,DのBに対する債務につき,破産会社も責任を負うことを争っていたのであり,DがBに対して負う債務の金額等が明らかであるとしても,破産会社がその金額の債務を負うか否かは明らかとはいえない。)。なお,BがDに対して有する貸金債権について,法人格否認の法理によって破産会社に対して有する同額の債権を被保全権利とする仮差押命令が発せられている。しかし,仮差押命令は,債権者の疎明に基づき発せられるものであり,通常,債務者を審尋することもないから,仮差押命令が発せられたからといって,客観的に見て被保全権利(別件訴訟で請求されたものの一部である。甲3,甲4,甲7)についての債務者の債務が確定したとはいうことができない。
(2) (1)のとおりであるから,破産会社が納付すべき法人税額は,本件法人税各更正処分のとおりであって,本件各法人税に係る賦課決定処分は適法である。
2 本件各課税期間の消費税に係る確定申告が過少であったことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」の有無(争点2)
破産会社は,本件各消費税等更正処分等に対する審査請求手続及び破産手続開始前の本件訴訟においては,本件各強制管理物件に係る収支は破産会社に帰属せず,実際の収益者であるBに帰属する旨の主張をしていた(争いがない。)。そうすると,破産会社は,上記の見解に基づいて本件各強制管理物件の賃料収入等を収支に計上しなかったもの,すなわち,本件各強制管理物件に係る収支の帰属者についての認識の相違の結果,各課税期間の消費税等の申告額が過少になったものと推認することができる。
ところで,過少申告加算税が,申告に係る納付すべき税額が過少であった場合に,当初から適法に申告,納税した者とこれを怠った者との間に生ずる不公平を是正することによって申告納税制度の信用を維持し,もって適正な期限内申告の実現と公平な税負担を図ろうとするものであることに照らすと,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」とは,申告当時適法とみられた申告が,その後の事情の変更により,納税者の故意又は過失に基づかないで,過少申告となった場合のような真にやむを得ない理由をいうのであって,納税者の法令の解釈ないし事実の認識に誤りがあったため申告額が過少となったような場合には,上記「正当な理由」があるということはできないから,破産会社の各課税期間の消費税等の申告額が過少になったことにつき上記「正当な理由」があるということはできない。
また,本件各強制管理物件に係る収支は,別表3「収支計算報告書等の各裁判所提出日」のとおり,その収支報告書等が裁判所に提出されていたのであって,各課税期間の収支報告書等のすべてが申告期限内に裁判所に提出されていたわけではないが,各課税期間中の相当部分は,申告期限内に裁判所に提出され,残りの期間の分もそれほどは時間をおかずに提出されているから,破産会社としては,既に提出されている収支報告書等を基に年間の収支を見積もって申告し,各課税期間の収支報告書等が出そろった後に,必要に応じて修正申告(ないしは更正の請求)をすることも不可能ではなかったのであるから(国税通則法19条,23条,65条5項,消費税法基本通達10-1-20),上記収支の帰属者についての認識の相違がなかったとしても,これらをせず,本件各強制管理物件に係る収支のすべてを申告しなかったことについて,破産会社に国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があったとは,認められない。
3 以上のとおり,第2「事案の概要」1記載の各処分は適法であるから,原告の請求は理由がない。
第4結論
以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決する。
(裁判官 下馬場直志 裁判官 豊田里麻)
裁判長裁判官水上敏は,転補のため署名押印することができない。裁判官 下馬場直志