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京都地方裁判所 平成17年(ワ)2579号 判決 2006年8月01日

原告 株式会社滋賀銀行

同代表者代表取締役 A

同訴訟代理人弁護士 西村捷三

同 小林生也

同 久保陽一

同 高坂佳詩子

同 中山博雄

被告 Y

同訴訟代理人弁護士 井木ひろし

主文

1  被告は、原告に対し、1530万円及びこれに対する平成17年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、平成17年8月31日午前11時すぎ、原告山科支店において、原告(担当者はB〔以下「B」という。〕)に対し、190万円(千円札で1900枚)を交付し、これを1万円札170枚、500円硬貨200枚及び100円硬貨1000枚に両替するよう依頼し、原告はこれを承諾した。

2  原告は、被告に対し、500円硬貨200枚及び100円硬貨1000枚とともに、誤って1万円札1700枚を交付した。

3  よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、誤払いした1530万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成17年11月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因第1項は認める。

2  請求原因第2項については、Bが被告に500円硬貨200枚及び100円硬貨1000枚を交付したことは認め、その余は否認する。

原告が、平成17年8月31日当時の原告山科支店内を撮影したビデオテープとして提出する検甲第2号証及び第3号証並びにこれを1本にまとめたものとして提出する検甲第1号証(以下これらを「本件ビデオテープ」という。)、並びに、本件ビデオテープを写真化したものとして提出する甲第1号証については、その撮影場所が原告山科支店内であることは認め、その撮影日時及び撮影内容を否認する。原告は、裁判前の交渉段階で本件ビデオテープの存在を明らかにしなかったし、訴訟提起後何か月もかかってこれらが提出されるのは不自然である。

理由

第一請求原因について

一  請求原因第1項の事実は、当事者間に争いがない。

二  請求原因第2項の事実について

1  証拠等によれば、次の事実が認められる。

(1) 被告は、平成17年8月当時、パチンコ店の景品交換業務に従事し、同月中だけで、17回、原告山科支店において1万円札を千円札に両替することを依頼したことがある(弁論の全趣旨により成立が認められる甲第4号証の1ないし17、原告本人尋問の結果)。

(2) 被告は、平成17年8月31日午前11時すぎ、原告山科支店において、Bに対し、190万円(千円札で1900枚)を交付し、これを1万円札170枚、500円硬貨200枚及び100円硬貨1000枚に両替するよう依頼した(上記一で認定した事実)。

(3) Bは、被告に交付する現金を用意する際、被告が日頃は千円札への両替を依頼することから、直感的に、170万円分を千円札100枚の束で換算して「17束」に両替えすると考えてしまい、今回は千円札から1万円札への両替であることを思い出したが、「17束」という数字にとらわれたまま、1万円札1000枚の大束(100枚の束10束を束ねたもの)1束と1万円札100枚の束7束(合計1700万円)を用意した(弁論の全趣旨により成立が認められる甲第1号証〔写真34ないし54〕及び甲第11号証、証人Bの証言)。

(4) Bは、被告に対し、500円硬貨200枚及び100円硬貨1000枚とともに、1万円札1000枚の大束1束と1万円札100枚の束7束を交付した(甲第1号証〔写真58ないし61〕及び甲第11号証、証人Bの証言)。

(5) Bは、原告山科支店の窓口業務終了後、現金在高帳上の現金残高と店舗内の現金残高を照合したところ、現金保管庫内の現金が1万円札で1530枚不足していることが判明した(甲第1号証〔写真75ないし88〕、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第5号証、甲第11号証、証人Bの証言)。

(6) Bは、平成17年8月31日午後5時ころ、被告に電話し、1530万円を過誤払いしたと思われるので確認させてほしい旨告げたところ、被告は、「170万円と1700万円を間違えたらその場で分かる。」などと返答した(争いがない。)。

2  被告は、本件ビデオテープ提出の経過からすると、その撮影日時、撮影内容を否認するとして、本件ビデオテープが合成されたものであるかのように主張する。

しかし、検甲第2号証及び甲第3号証には、合成されたような不自然な箇所は存しないし、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第9号証及び第10号証の1ないし14、甲第11号証並びに弁論の全趣旨によれば、検甲第2号証及び甲第3号証は、平成17年8月31日の原告山科支店内を撮影したビデオテープであることが認められる。

また、本件ビデオテープは銀行内を撮影したものであるから、保安の必要上、原告が容易にその存在及び内容を開示できないことは明らかであり、原告が被告との交渉過程で本件ビデオテープの存在を明らかにしなかったとしても、それだけで本件ビデオテープの存在が不自然であるなどとはいえない。さらに、原告は、被告が第1回口頭弁論期日に答弁書で本件ビデオテープの開示を求めたのに対し、その次の期日である第1回弁論準備手続期日に、甲第1号証を提出しているのであって、その証拠としての提出時期についても何ら不自然なところはない。

他に、本件ビデオテープが平成17年8月31日の原告山科支店内を撮影したビデオテープであることを疑わせるに足りる証拠はない。

3  上記1で認定した事実によると、請求原因第2項の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

第二結論

よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を、仮執行の宣言について同法259条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 阪口彰洋)

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