京都地方裁判所 平成20年(行ウ)45号 判決 2012年3月28日
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第3当裁判所の判断
1 本件書籍の無償配布という財務会計行為について住民監査請求を経ているといえるか。
(1) 監査請求の範囲について
地方自治法242条1項の規定による住民監査請求に関し、監査委員は、ある行為・事実について複数の主体がある場合には、いずれの者の責任を問題とするかを含めて、住民監査請求の範囲に限定されず、適切と考えるところに従って、勧告すべき是正措置の内容(同条4項)を選択することができ、また、監査委員は、請求者が主張しない違法、不当の事由についても監査することができるから、結局、監査請求の範囲は、請求の対象とされている財務会計上の行為又は怠る事実により決せられ、当該財務会計上の行為又は怠る事実については、社会経済的な行為又は事実を基礎に、住民が何を監査の対象として監査委員に措置請求をしているものとみるかという観点から、制度の趣旨、目的に適合するように判断すべきものと解される。
(2) 本件各監査請求の範囲について
ア 前提事実に加え、掲記の証拠によれば、次の事実を認めることができる。
(ア) 原告らは、平成20年7月14日、京都市監査委員に対し、「京都市職員措置請求書」と題する書面を提出し、同書面には、①教育委員会が、本件書籍を一般書店から大量に購入し、Y1が本件市長選挙に立候補表明をした後の平成19年12月27日から平成20年1月23日までの間、同市内の各種団体に配布したことが記載されるとともに、②本件書籍の購入・配布は、教育委員会が組織的に本件市長選挙において教育長であったY1を当選させる目的でなしたことは明らかであり、かかる活動に公費を用いることは許されず、本件書籍の購入・配布に支出された公費は209万2320円(購入費191万1000円、郵送料18万1320円)である旨の記載がある(本件各監査請求。甲1(枝番を含む。))。
(イ) 京都市監査委員は、平成20年9月12日付けで、本件各監査請求について、配布行為の違法性をもって購入の違法性を主張するものと解した上、本件書籍の配布行為については、それが公職選挙法136条の2第1項、第2項、同法221条1項1号に違反するか否かについて検討して、結論として上記各条項に反しないとしたが、本件書籍の配布行為自体が地方自治法237条2項に反するか否かは検討しなかった(甲2、弁論の全趣旨)。
イ 監査請求の範囲については、上記(1)の観点から、制度の趣旨、目的に適合するように対象となる財務会計上の行為又は怠る事実を把握し、これにより決すべきところ、上記ア(ア)のとおり、本件各監査請求に係る「京都市職員措置請求書」には、本件書籍の配布行為が取り上げられている上、上記ア(イ)のとおり、京都市監査委員も、本件書籍の配布行為を取り上げて検討していることからすれば、本件各監査請求は、本件書籍の配布行為自体をもその対象としていると見ざるを得ず、本件書籍の無償配布という財務会計行為についても住民監査請求を経ているというべきである。
なお、上記ア(イ)のとおり、同市監査委員は、本件書籍の配布行為が地方自治法237条2項に反するか否かについて検討していないが、地方自治法242条の2第1項は、住民訴訟は監査請求の対象とした違法な行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものとされているのであって、当該行為又は怠る事実について監査請求を経た以上、訴訟において監査請求の理由として主張した事由以外の違法事由を主張することは何ら禁止されていないものと解されるから、この点は上記結論を左右しないというべきである。
3 本件各売買契約の違法性の有無について
(1) 本件書籍を購入することの違法性について
ア 地方自治法2条14項は、地方公共団体はその事務を処理するに当たっては最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと規定し、地方財政法4条1項は、地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要かつ最少の限度を越えてこれを支出してはならない旨規定している。具体的な財務会計行為(予算執行)が上記各規定に反するか否かは、個々の事案の具体的事情に基づいて、社会的、経済的及び政策的見地から総合的にみて、支出目的の達成に必要かつ最少の限度を明らかに超えているか否かによって判断されるべきであり、具体的には、当初定めた金額より少ない支出で所期の目的を達成できることが明らかな場合に、予算執行機関が漫然と支出すれば、予算執行機関は、同項に違反した違法な支出をしたものというべきであると解されるし、当該予算執行自体が、著しく合理性を欠きその適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存するような場合、すなわち、そもそも当該支出により公益上の目的を達成できないにもかかわらず支出がされたか、公益とは別の目的に資する度合が所期の目的よりも遙かに大きく所期の目的のための支出とは評価できないことが明らかな場合にも、同様であると解される。
そこで、本件書籍の購入については、本件書籍の内容、本件書籍購入の目的、本件書籍購入の経緯等の具体的事情を考慮に入れた上、本件書籍を購入することが、上記のような場合に当たるかどうかを判断することとする。
イ 被告は、地方財政法4条1項は、地方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき指針を一般的、抽象的に示したものにすぎず、公金の支出を具体的に規制するものではなく、支出の違法性の根拠となるものではない旨主張する。
確かに、同項の規定は簡潔なものにとどまっている上、予算額は当該目的を達成するのに必要な額として定められているのが通常であり、予算額の範囲内でどれだけの支出をすれば所期の目的を達成することができるかは、原則として、予算執行機関の裁量的判断に委ねられた事項であるから、予算額の範囲内で予算の執行がされた場合、通常は同項違反の問題は生じないと解されるが、予算の執行に当たっては、個々の具体的な事情に基づいて判断し、最も少ない額をもって目的を達するように努めるべきことは、執行機関に課せられた当然の義務であるから、この限りにおいて、同項は予算執行機関に法的義務を課したものと解するのが相当であり、被告の上記主張は採用できない。
ウ まず、本件書籍の内容についてみると、証拠(甲3、乙1)によれば、本件書籍は、第1章が京都市立a高校、同b高校をはじめとする市立高校の改革に関する取組みを、第2章が京都市立小中学校の学習指導要領や小中一貫教育への取組みを、第3章が明治維新期の京都における初等公教育の実情や平成10年に組織された「人づくり21世紀委員会」の取組みを、第4章が広報紙、授業参観、勤労体験、ボランティアの教育活動への参画、学校評価システム、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)等を通じた地域住民の学校教育への参画を、第5章が各校の学校作りを支援する事業、弾力的な予算執行、教員の希望転任制度等の各校、各職員の自主性の尊重への取組みを、第6章が教育改革推進会議等の市民参画プロジェクトの内容を、第7章が教員の研修、カリキュラム開発の支援等の教員の育成や教員評価に関する取組みを、第8章が不登校の児童、生徒に対する支援への取組みを、第9章が障害を有する児童、生徒に対する教育への取組みや総合制の養護学校の開設とそこにおける教育活動を、第10章が京都市における学校統合への取組みを、それぞれ紹介するものであること、本件書籍の第11章は上記各章の内容に関連させつつY1の教育長としての教育に対する考え方をインタビュー形式で収録したものであることが認められる。
上記のとおり、本件書籍は、それが主として従来京都市において行われてきた教育に関する取組みを紹介するものであり、上記2(2)ア(イ)、(カ)のとおり、同市においては、本件書籍を購入後、同市内外の関係者に、従来同市において行われてきた教育に関する取組みを紹介するという広報の手段(媒体)として配布されることを予定していたものであるから、同市は、本件各売買契約により、広報のための媒体を取得するという一定の公益上の目的を達することができるといえる。
他方、上記証拠によれば、本件書籍は、そのほとんどの章において教育長であるY1の発言が登場し、第11章においてY1の写真入りでY1の教育長としての教育に対する考え方をインタビュー形式で収録しているものの、その大部分が従来京都市において行われてきた教育に関する取組みを紹介するものであり、各章におけるY1の発言も他の登場人物(例えば、第1章のA等)の発言と同列に扱われ,Y1のインタビュー記事も、各章における同市の取組みに関連する形で教育長としての考え方を示したものにすぎないものということができ、本件書籍の内容自体から、直ちにY1の本件市長選挙へ向けての実績及び政策の宣伝目的の存在を推認することはできない。
エ 次に、本件書籍購入がその配布を目的としてされているので、本件書籍購入の目的を判断するに当たっては、その配布について検討する必要がある。
まず、本件書籍の配布先をみると、前提事実(3)のとおり、1400冊の本件書籍のうち、572冊が同市内の市立学校に、488冊が同市内の団体、個人等に、220冊が同市外の団体、個人等に、それぞれ配布されており、本件市長選挙に利害関係を生じ得るのは前2者であるところ、同市内の市立学校及びその関係者であれば、その立場上、本件書籍を読むまでもなく、Y1について面識を有することはもちろん、Y1の教育長としての実績や考え方についても認識していたことが推認されるし、同市内の団体、個人等については、証拠(甲5)によれば、配布先のほとんどが、京都市会議員、同市の行政委員会の委員、京都府議会議員、国会議員、同市内の大学の学長や教授、同市内の企業の代表者、同市PTA連絡協議会の関係者、「人づくり21世紀委員会」等教育関係の団体の関係者及び同市生涯学習振興財団の関係者等で構成されており、それらの関係者も、その立場上、本件書籍の配布以前から、教育長としてのY1の存在を認識し、その実績や考え方についてもある程度認識していたことが推認されるから、それらの配布先からして、直ちにY1の本件市長選挙へ向けての実績及び政策の宣伝目的の存在を肯定することは困難といわざるを得ない。
オ さらに、原告らは、本件書籍の配布にはいくつかの明文の規定に反する点があり、それ自体違法であり、結局、配布を目的とする購入にも違法性があるとするような主張をするので、原告ら主張の点について検討する。
(ア) 地方公務員法30条、36条2項1号及び4号との関係
a 憲法15条2項が、すべて公務員は全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない旨定めているのを受け、地方公務員法30条は、一般職に属する地方公務員(以下「職員」という。同法4条1項参照)が、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならない旨規定し、職員が全体の奉仕者であることを受け、同法36条2項は、職員は、公の選挙又は投票において特定の人を支持する目的をもって、同項各号に掲げる政治的行為をしてはならない旨規定し、同項1号は、公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすることを、同項4号は、地方公共団体の資材、資金等を利用し、又は利用させることを挙げている。
上記「特定の人」とは、当該選挙において立候補の制度がとられている場合においては、法令の規定に基づく正式の立候補届出又は推薦届出により候補者としての地位を有するに至った者をいい、まだ候補者としての地位を有しない者はこれに含まれないと解される。
b 前提事実(3)、上記2(3)の認定事実のとおり、本件書籍の配布は、平成20年1月までに完了したのに対し、上記2(4)オのとおり、本件市長選挙の告示は同年2月3日であり、Y1が法令の規定に基づく正式の立候補届出をしたのは同日以降であると認められるから、本件書籍の配布は、「特定の人」を支持する目的をもってされたとはいえず、地方公務員法36条2項に違反しないというべきである。
(イ) 公職選挙法221条1項1号との関係
a 公職選挙法221条1項1号は、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、供与の申込み又は約束をした者を処罰する旨規定するところ、同項が、犯罪行為成立時期について何ら規定していないことから、同項は、必ずしも法定の選挙運動期間中における行為のみに適用されるものではなく、選挙の期日の告示又は当該選挙の立候補届出前の行為にも適用されると解される。
そして、当選を得しめる目的とは、特定の候補者(上記のとおり立候補届出前の者も含まれると解される。)を支持してその当選を目的とすることをいい、供与の対象となる物品その他の財産上の利益は、およそ人の需要又は欲望を満足させるに足りるものであって財産上の価値を有すれば足りると解される。
b しかし、上記ウで認定した本件書籍の内容や、上記エで認定した本件書籍の配布先からしても、本件市長選挙においてY1を支持しその当選を得しめる目的を肯定することは困難といわざるを得ず、本件書籍の配布は、公職選挙法221条1項1号に反しない。
c 原告らは、本件書籍の配布時期が、本件市長選挙の直前であったことを問題とし、当選を得しめる目的が存在する旨主張するようである。確かに、上記2(3)において認定したとおり、本件書籍の配布が平成19年12月末から平成20年1月末にかけてされたのに対し、上記2(4)のとおり、本件市長選挙は、同年2月3日に告示がされ、同月17日に投開票が実施されたから、本件書籍の配布時期から当選を得しめる目的の存在を推認する余地が全くないとはいえない。
しかしながら、上記2(1)ス~ニ、(2)ア(ク)のとおり、本件書籍の発行日が平成19年12月27日、京都市への納品日が同月19日、25日であったが、上記発行日はc社のBにおいて作成した出版スケジュールに沿ったものであったことが認められ、教育委員会において、本件書籍の納品後これを速やかに(発行日から1か月程度で)配布したこと自体は、本件書籍の配布による広報を効果的に行うためにも必要であり(発行日から日が経つにつれて、配布予定先が独自に本件書籍を購入したりすることによる重複も生じ得る。)、直ちに当選を得しめる目的を推認させる事実とはいえず、本件書籍の配布時期から当選を得しめる目的の存在を推認することはできないというべきである。
(ウ) 公職選挙法239条の2第2項、136条の2第2項4号との関係
a 公職選挙法136条の2第1項1号は、地方公共団体の公務員が、その地位を利用して選挙運動をすることができないとし、同条第2項4号は、地方公共団体の公務員が公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者を推薦し、支持する目的をもって、その地位を利用して、新聞その他の刊行物を発行し、文書図画を頒布し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせることを、同条1項の禁止行為に該当するとみなす旨規定し、同法239条の2第2項は、同法136条の2の規定に違反して選挙運動又は行為をした者を処罰する旨規定する。
b 上記(イ)b、cにおいて認定説示したとおり、本件書籍の内容及び配布時期から、本件書籍の配布が、本件市長選挙においてY1を推薦し、支持する目的をもってされたということはできず、本件書籍の配布時期からも上記目的の存在を推認することはできないから、本件書籍の配布は、公職選挙法239条の2第2項、136条の2第2項4号に反しない。
(エ) 以上(ア)~(ウ)のとおり、本件書籍の配布自体に、原告ら主張の違法はないものということができる。
カ 本件書籍の出版の経緯についてみると、上記2(1)イ、ウのとおり、本件書籍の出版の企画が発案されたのは平成16年11月ころであり、上記2(2)ア(ア)のとおり、京都市は本件書籍の配布以前にも同市の教育行政に関する書籍を関係者に配布しており、上記2(2)ア(イ)のとおり、CがDから引継ぎを受けた平成18年9月ころにはすでに本件書籍についても関係者に配布することが予定されていたことが認められる一方、上記2(4)のとおり、Eが本件市長選挙に立候補しない意向を表明したのは平成19年10月16日、Y1が本件市長選挙に立候補する意向を固めたのは同年11月24日であるから、直ちに、本件書籍が、Y1の本件市長選挙へ向けての実績及び政策の宣伝を目的として企画されたものということはできない。
原告らは、平成18年12月、FがリライトをしてBに送付したものの、翌年1月に、本件書籍の主要な記事である京都市立a高校の改革に関する取組みを中心となって行った同高校の校長A自らの著書がベストセラーとなったこともあって(甲21~26)、本件書籍の出版は一旦頓挫したが、同年7月末ころに、Y1の市長選挙立候補が現実化したことから、選挙運動の一環として、公職選挙法に露骨に抵触しないように配慮しながら、Bや教育委員会職員が書き直しをして、本件市長選挙の時期に合わせて出版したものであると主張する。確かに、本件書籍の購入及び配布の時期が本件市長選挙告示に近接しており、本件書籍の出版の経緯からもその時期であることの必然性が認められるとはいえないが、Y1が本件市長選挙立候補を決めた時期について何ら具体的な裏付けとなる証拠がないうえ、本件各売買契約による購入分で本件書籍の出版を支えたという面があるというにせよ、上記エで認定した教育委員会による配布先や配布数との関係では、選挙運動となる意味はほとんどうかがえず、本件証拠中原告らの主張に合致するものを総合しても、原告ら主張の事実が推認できるとはいいがたい。
キ 以上ウ~カによれば、本件書籍の購入が、そもそも当該支出により公益上の目的を達成できないにもかかわらず支出がされたか、公益とは別の目的に資する度合が所期の目的よりも遙かに大きく所期の目的のための支出とは評価できないことが明らかな場合であるとはいえず、本件各売買契約を締結して公費を支出すること自体が地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するとはいえないというべきである。
(2) 本件書籍を書店から定価で購入することの違法性
ア(ア) 上記(1)アのとおり、具体的事情に基づいて、社会的、経済的及び政策的見地から総合的にみて、当初定めた金額より少ない支出で所期の目的を達成できることが明らかな場合に、予算執行機関が漫然と支出すれば、予算執行機関は、同項に違反した違法な支出をしたものというべきであって、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に反すると解される。
(イ) 上記2(2)ア(エ)のとおり、京都市が、c社から直接購入した場合には、本件書籍を少なくとも定価の1割引きで購入することができたことが認められ、これにより本件書籍の所有権を取得するという同一の目的を達成することができたから、本件書籍を定価で購入することは、当初定めた金額より少ない支出で所期の目的を達成できることが明らかな場合であるといわざるを得ず、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するというべきである。
イ 被告の主張について
(ア) 被告は、上記第2の3(2)ア(ア)b(a)のとおり主張するが、以下のとおりいずれも採用できない。
まず、書籍に再販売価格維持制度があるとする点について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律23条1項は、公正取引委員会が指定する商品のうち一定の要件を備えたものを生産し又は販売する事業者が、当該商品の販売の相手方たる事業者とその商品の再販売価格(その相手方たる事業者又はその相手方たる事業者の販売する当該商品を買い受けて販売する事業者がその商品を販売する価格をいう。)を決定し、これを維持するためにする正当な行為については、同法の規定(同法2条9項4号は再販売価格の拘束を「不公正な取引方法」としており、同法19条により禁じられている。)を適用しないとし、同条4項は著作物を発行する事業者又はその発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格を決定し、これを維持するためにする正当な行為についても、同条1項と同様とする旨定めているが、上記各規定によっても、書籍の購入一般ではなく、著者であるという地位を利用して再販売価格を下回る価格で購入することができる場合に、そのような手段を採らず、単一の販売者(本件ではc社)から再販売価格で購入することが、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反しない根拠となるものではないというべきである。
次に、本件各売買契約が1号随意契約であるとする点について、地方自治法施行令167条の2第1項1号は、地方自治法234条2項の規定により随意契約によることができる場合として、売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ、同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするときを挙げるが、これは、飽くまでも、競争入札によらずに随意契約をできる場合について定めたものにすぎず、随意契約によった場合の契約代金額が地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反することを許容するものと解することはできない。
(イ) 被告は、上記第2の3(2)ア(ア)b(b)のとおり主張するが、仮に一般的な書籍に付けられる定価が1500円で、本件書籍の定価(1300円)がそれよりも低く設定されていたとしても、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するか否かは、飽くまでも本件書籍の定価を基準として検討されるべきであり、本件書籍の定価の1割引きで購入可能であった以上、やはり上記各規定に反するというべきである。
(ウ) 被告は、上記第2の3(2)ア(ア)b(c)のとおり主張するが、本件書籍の出版の経緯は上記2(1)において認定したとおりであり、本件書籍の当初の原稿は教育委員会ないしその依頼を受けたGが作成したものであると認められる上、著者割引で購入できるとの認識の有無は、これを故意又は重過失の有無の検討に際し考慮し得るとはいい得るものの、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するか否かの判断は飽くまでも客観的にされるべきであり、上記事情を消極的事情として考慮するのは相当といえないから、被告の上記主張は採用できない。
(エ) 被告は、上記第2の3(2)ア(ア)b(d)のとおり主張するが、上記2(2)ア(エ)のとおり、本件書籍を本件各書店の店頭に平積みすることは、本件書籍の露出の機会を増やし、販売促進を狙ったものであり、京都市内外の関係者以外の一般人に対する本件書籍出版による広報目的に資するものといえるが、その効果と本件書籍を定価の1割引きで購入する利益とを比較して、前者が大きいことが検討された形跡はないし、上記のような販売促進効果が得られたと認めるに足りる証拠もないから、この点のみをもって、本件書籍を定価で購入することが相当であったとはいえず、被告の上記主張は直ちには採用できない。
4 本件各売買契約の代金の支払に係る手続の違法性について
(1)ア 地方自治法232条の3は、普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(支出負担行為)は、法令の定めるところに従い、これをしなければならないと定めるところ、専決規程3条、別表の「総務課長」欄の(15)ただし書は、1件10万円以下の契約及び理財局長が別に定める随意契約並びにこれらに伴う経費の支出決定に関することを総務課長の専決事項とし、本件書籍の購入は、随意契約ガイドラインにより理財局長が定める特定の1者でなければ供給することができない物件の買入れに係る契約に該当するから、専決権者である総務課長の決裁を経る必要がある。
イ 本件各売買契約については、契約書が作成されていないため、契約締結時点を直ちに確定することは困難であるものの、上記2(2)ア(キ)のとおり、Cが、平成19年11月26日、c社に対し、京都市として、本件各書店から本件書籍を合計1400冊購入することに確定したことを伝え、その後、上記確定内容がc社から本件各書店に伝えられたこと、上記2(2)ア(ク)のとおり、同年12月19日には本件書籍が納品されたことが認められ、上記各事実から、本件各売買契約は、c社が同年11月26日以降、本件各書店に対し、本件各書店から本件書籍を合計1400冊購入する旨の同市の意思を伝え、本件各書店がこれを了解した時点(これは納品日である同年12月19日よりも前の時点であるとみるのが合理的である。)で、締結されたものと評価するのが相当である。
ウ そうすると、上記2(2)イ、ウのとおり、本件各売買契約に係る支出負担行為書が作成されたのは平成19年12月21日以降であり、かつ、Y2がその決裁をしたのも同日以降であるから、本件各売買契約は、専決権者であるY2の決裁を得る前に締結されたものとみざるを得ず、形式的には専決規程3条に反するというべきである。
もっとも、財務会計行為がその権限を有する者の決済を経ずにされた場合であっても、その瑕疵の治癒が全く許されないとはいえないと解されるところ、証拠(甲10、乙33)及び弁論の全趣旨によれば、同市の財務会計システムの操作マニュアルにおいては、支出負担行為書の起案に先立ち又はそれと同時に積算内訳明細を登録することとされ、支出負担行為書には債権者明細書や積算内訳書を添付することとされており、それらの明細書や内訳書として、債権者から送付される見積書を添付することが行われており、債権者から見積書が送付される前に支出負担行為書を起案してこれを決済に回すことは困難であったことが認められる上、上記2(2)イのとおり、本件各書店が教育委員会に対し本件各売買契約に係る見積書を提出したのが同月19日以降であったこと、上記2(2)ウのとおり、専決権者であるY2は、同月21日以降、上記のとおり締結された本件各売買契約について、何らの修正もすることなく決裁を行ったこと(なお、前提事実(2)のとおり、本件各書店への代金の支払は平成20年2月25日には完了しており、遅くともそれまでにはいずれの支出負担行為書の決裁も完了していたことが認められる。)が認められ、それらがいずれも同一の会計年度内にされていること(地方自治法208条2項参照)をも併せ考えれば、本件各売買契約に関する専決規程3条違反の瑕疵は、Y2の上記決裁により治癒されたというべきであり、本件各売買契約に基づく代金の支出が手続的に違法であるということはできない。
(2) 原告らのその余の主張について
原告らは、上記(1)のような支出負担行為書作成の経緯が、公文書管理規則6条1項に反する旨主張する。
公文書管理規則6条1項(甲14)は、意思決定に当たっては公文書を作成する旨規定し、同規定は、意思決定に先行して公文書の作成を要する趣旨と解されるが、同条2項が、意思決定と同時に公文書を作成することが困難な場合にあっては、口頭により処理するものとし、事後速やかに公文書を作成するものとする旨規定しており、同項の規定によれば、公文書の作成に当たり困難な事情が存する場合には、意思決定に先行して公文書が作成されていないとしても、必ずしも同規則に反するものではないと解される。
しかるところ、上記(1)において認定説示したとおり、本件各売買契約の締結前に支出負担行為書は作成されていなかったものの、京都市の財務会計システムにおいては、債権者から見積書が送付される前に支出負担行為書を起案してこれを決済に回すことは困難であったこと、本件各書店が教育委員会に対し本件各売買契約に係る見積書を提出したのが平成19年12月19日以降であったことが認められるから、本件各売買契約の締結については、その意思決定に先行して公文書を作成することが困難な事情が存するといえ、同規則6条に反するとはいえない。
5 Y2の故意又は重過失の有無(本件書籍購入に関して)
上記3(2)アのとおり、本件書籍を定価で購入したことは、地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するというべきであり、Y2は、本件各売買契約の専決権者として、上記違反について故意又は重大な過失がある場合に限り、地方自治法243条の2第1項に基づき、損害賠償責任を負う。
しかるところ、上記2(1)のとおり、本件書籍の基となる原稿は教育委員会ないしその依頼を受けたGにより作成されたものの、その後の編集作業の主たる部分はc社のBが行ったこと、上記2(1)トのとおり、本件書籍は、c社(H及びB)の判断によりその編者がc社とされたことに加え、証拠(甲3、乙1)によれば、本件書籍は、教育委員会の外部の者(c社)による取材に基づき発行された体裁をとっていること(本件書籍の「はじめに」の部分を参照)が認められ、上記各事実から、本件各売買契約当時、本件書籍が、京都市又は教育委員会が著者や編者として購入の際に割引を受けられるものであるかということ自体、客観的に明確ではなかったというべきである。加えて、上記2(2)ア(エ)のとおり、Hは、同市がc社から直接購入した場合に、本件書籍を少なくとも定価の1割引きで購入できることをCに伝えておらず、I及びHは、単に書店を通じて購入してほしい旨教育委員会に伝えていたにすぎなかったから、かかる事情を併せ考慮すれば、Cの上司として本件各売買契約を専決したY2において、少なくとも、本件書籍を定価よりも安価に(1割引で)購入し得ることを認識することが容易に可能であったということはできず、Y2に地方自治法2条14項、地方財政法4条1項違反について故意や重大な過失があったとはいえないというべきである。
6 本件書籍配布のための支出負担行為の違法性について
(1) 地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償の請求等(これには、同号ただし書及び243条の2第3項に基づき同条の2第1項に規定する職員に対する賠償命令を求める場合も含まれる。)を求める住民訴訟において、当該職員の財務会計上の行為をとらえて同規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、同原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当であり、原因行為の違法がそれ自体でいわば無媒介に財務会計上の行為の違法をもたらすという関係にあるとは解されない。
そして、専決規程2条2項が、教育長その他の専決権者は、重要若しくは異例と認める事項又は解釈上疑義のある事項について、上司の決定を受けなければならないとし、4条1項が、教育長その他の専決権者は、専決規程の定めるところにより専決した事項で、必要と認めるものについては、直ちに上司に報告しなければならないとしている(乙7)ことなどからすれば、専決権者たる総務課長は、その専決権限を行使するに当たって、本来的権限者たる市長の判断やそれに関連する上司(教育長を含む。)の決定がある場合には、同判断や決定が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、それらを尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。
(2) 本件においては、後記7(2)イのとおり、上司(教育長)であるY1が本件書籍の配布を決定しており、Y2は、本件書籍を配布する旨の決定が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、それらを尊重しその内容に応じた財務会計上の措置をとるべき義務がある。
前記3(1)オで認定したとおり、配布行為自体に違法性は認められず、同ウで認定したとおり、本件書籍の内容自体にも一定の公益上の目的が認められ、本件書籍を公金を用いて配布する旨の決定が地方自治法2条14項、地方財政法4条1項に違反するとはいえないから、本件書籍を配布する旨の決定が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合であるとはいえない。
7 財務会計行為としての本件書籍の無償配布の違法性について
(1) 原告らの主張が時機に後れた攻撃防御方法に当たるか
民事訴訟法157条1項は、当事者が、①故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法については、②これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めるときは、これを却下することができる旨規定している。
本件において、原告らは、訴え提起の当初から本件書籍の配布行為の違法性を主張していた(例えば、訴状7頁以下)が、同主張は、配布行為の財務会計的な側面に着目したものではなく、本件書籍の購入及び配布に要する費用の支出という財務会計上の行為の違法性を導くためのものにすぎなかったのに対し、上記第2の3(3)ア(原告らの主張)は、本件書籍の配布行為自体を違法な財産の「譲渡」(地方自治法237条2項)という財務会計上の行為ととらえるものであり、同主張は、原告らの準備書面6(平成23年8月17日受付)において初めて主張されたものであるから、同主張は、上記①の時機に後れて提出した攻撃防御方法に該当する余地がないとはいえない。
しかしながら、上記②の訴訟の完結が遅延するとは、その攻撃防御方法が提出されなかったならば訴訟を完結することができたであろう時期よりも、その提出を認めて審理した場合の訴訟の完結の時期が遅れることと解されるところ、本件の審理においては、原告らの上記主張について、被告の第7準備書面(平成23年9月28日付け)で反論がされた後、同年12月20日の口頭弁論期日において、上記各主張とは別個の争点である上記第2の3(2)ア(ア)の点について証人Bの取調べが行われている上、原告らの上記第2の3(3)アの主張については、同期日以降、新たな証拠調べを要しなかったから、原告らの上記主張について、その提出を認めて審理した結果、その提出がされなかった場合に本件訴訟を完結することができたであろう時期よりも、訴訟の完結の時期が遅れたということはできず、上記②の要件を満たさないというべきである。
したがって、原告らの上記主張は、これを時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきとはいえない。
(2) 本件書籍の無償配布行為の違法性
ア 本件書籍の無償配布が財産の譲渡(地方自治法237条2項)に当たるか
地方自治法237条2項の「譲渡」には、有償譲渡と無償譲渡(贈与)とが含まれるが、いずれにしても、その対象たる財産が物の所有権である場合には、当該所有権の移転を伴うものであることを要すると解される。
しかるところ、前提事実(3)のとおり配布された本件書籍1280冊のうち572冊は、上記2(3)エのとおり、市立学校分として、京都市立学校に配布されたものであり、上記各書籍の所有権は、配布後も依然として京都市に帰属していると認められるから、それらの配布行為は、同項の「譲渡」に該当しないというべきである。
したがって、同項に反するか否かは、本件書籍1280冊のうち市立学校以外に配布された708冊(以下「市立学校以外分」という。)について検討すれば足りることになる。
イ 市立学校以外分の無償配布行為の権限者及び行為者
原告らは、無償配布行為の主体を特定していないが、これが権限を有する者によりされた財務会計上の行為であることを前提として主張しているものと解される。
そして、市立学校以外分の無償配布行為を地方自治法237条2項の財産の「譲渡」とみる場合、財産の管理及び処分は普通地方公共団体の長の権限に属する(同法149条6号)が、専決規程(乙7)3条及び別表の教育長欄(14)が、「物品の譲渡」を挙げていることから、教育長であったY1が、市立学校以外分の無償配布行為の専決権者であったと認められる。
また、上記2(2)ア(カ)の事実に加え、証拠(甲4、乙31、33、証人C、証人Y1)及び弁論の全趣旨によれば、本件書籍の購入が決定されたのは平成19年10月22日の教育委員会の幹部会においてであり、同幹部会には専決権者であるY1も出席し、上記の決定に特に異議を述べなかったこと、本件書籍の配布は、京都市教育委員会名でされたことが認められ、上記配布行為は、実質的にも専決権者であるY1の決定の下にされたものと認められる。
ウ 市立学校以外分の無償配布行為の違法性の有無
(ア) 地方自治法237条2項は、行政財産に関する同法238条の4第1項の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくしてこれを譲渡してはならない旨規定し、京都市においては、これを受けて物品条例(乙39)11条2号が、「特に公益上の必要に基づき、物品を譲渡するとき」に該当する場合には、物品を譲与することができる旨規定している。
(イ) 上記3(1)ウにおいて検討したところによれば、本件書籍は、主として従来京都市において行われてきた教育に関する取り組みを紹介するものであり、これを配布することは、同市内外の関係者に、従来同市において行われてきた教育に関する取組みを紹介するという広報手段としての意義があり、これは同市の利益になる活動といえるから、市立学校以外分の無償配布行為は、「公益上の必要に基づき、物品を譲渡するとき」に該当するといえ、地方自治法237条2項の「条例」による譲渡として、同項に違反しないというべきである。
8 Y1及びY3の不法行為の有無
(1) Y1及びY3が本件書籍の購入及び配布に関し、京都市との関係で違法な不法行為を行って同市がその損害賠償請求権を有するに至るのは、飽くまでも、同市の権利又は同市の法的に保護された利益を侵害するかどうかが問題となる違法事由に関してであるところ、原告らが主張する各違法事由のうち上記の違法事由に該当するのは、本件書籍を書店から定価で購入したことの違法性に限られる(のみならず、上記3~7において検討したとおり、上記以外の財務会計法規違反はそもそも認められない。)から、両名の不法行為責任の有無を判断する前提として、本件書籍を書店から定価で購入したことに関する両名の注意義務の存否及び内容を検討する。
(2) 京都市教育委員会通則(昭和25年教育委規則第4号。乙6)12条は、教育長は、事務局職員等を指揮監督するとし、15条は、教育長が欠けたときは、教育次長がその職務を行うとし、20条1項は、教育次長が教育長を補佐するとしているから、本件書籍の購入についても事務局職員(具体的には、J、Y2、C、Kら)を指揮監督する義務が生じる余地が全くないとはいえないものの、教育長(教育長職務代理)及び教育次長は、財務会計行為を行う権限を有する者ではなく、専決権者による財務会計行為には、本来的権限者である市長の指揮監督が及んでいることも併せ考えると、専決権者の上司が専決権者による財務会計行為に関し、何らかの措置をとるべき義務を有するというためには、これを基礎付ける具体的な事情が必要と解される。
(3) しかるところ、上記5において説示したところによれば、本件各売買契約を締結することを決定した平成19年10月22日の幹部会の当時、本件書籍が、京都市又は教育委員会が著者や編者として購入の際に割引を受けられるものであるかということ自体、客観的に明確ではなかったことに加え、Hは、同市がc社から直接購入した場合に、本件書籍を少なくとも定価の1割引きで購入できることをCに伝えなかったため、C自身そのことを認識しておらず、I及びHも、単に書店を通じて購入してほしい旨教育委員会に伝えていたにすぎなかったから、かかる事情の下では、本件各売買契約の直接の担当者でなく、決裁に関与することもないY1及びY3において、本件書籍を少なくとも定価の1割引きで購入できることを認識することはできず、他に上記の認識の可能性を基礎付ける事情がうかがわれない以上、Y1及びY3において、本件書籍を定価で購入することに関し、何らかの措置をとるべき義務はなかったというべきである。
したがって、Y1及びY3が、本件書籍の購入及び配布に関し、同市に対する不法行為を行ったとはいえない。
9 結論
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却する。
(裁判長裁判官 瀧華聡之 裁判官 奥野寿則 高橋正典)