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京都地方裁判所 平成21年(ワ)3138号 判決 2012年10月17日

原告兼反訴被告

X1

原告

X2他1名

被告

Y1

被告兼反訴原告

Y2株式会社

主文

一  被告らは、連帯して、原告X1に対し、二億三一四三万九九八八円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、原告X2に対し四九五万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、連帯して、原告X3に対し、四九五万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  反訴被告は、反訴原告に対し、五万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告らのその余の請求及び反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを一〇〇分し、その七〇を被告Y1及び被告兼反訴原告の連帯負担とし、その二五を原告兼反訴被告の負担とし、その五を原告X2及び原告X3の連帯負担とする。

七  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

(本訴)

一  被告らは、原告X1に対し、連帯して金三億四〇五三万四三七二円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告X2に対し、連帯して金五五〇万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告X3に対し、連帯して金五五〇万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  仮執行宣言

(反訴)

一  反訴被告は、反訴原告に対し、金五八万五九三二円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  仮執行宣言

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、原告兼反訴被告X1(以下「原告X1」または「反訴被告」という。)と被告Y1(以下「被告Y1」という。)との間の後記交通事故につき、原告X1が被告Y1及び被告Y1の使用者でありかつ被告Y1運転車両の保有者である被告兼反訴原告Y2株式会社(以下「被告会社」または「反訴原告」という。)に対し、連帯して人身損害賠償金を支払うことを求め、併せて、原告X1の父である原告X2(以下「原告X2」という。)及び母である原告X3(以下「原告X3」という。)が子である原告X1が重大な後遺障害を負ったことなどにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料をそれぞれ被告らに連帯して支払うことを求める本訴請求と反訴原告が本件交通事故により反訴原告に生じた物損の賠償を反訴被告に求める反訴請求の事案である。

二  前提となる事実

次の事実は、当事者間に争いがなく、もしくは、後記各証拠または弁論の全趣旨により容易に認められる。

(1)  当事者(争いがない事実)

ア 原告X1は、昭和五二年○月○日生まれの男性であり、後記交通事故による障害により事理を弁識する能力を欠く常況となり、平成一八年一二月八日、京都家庭裁判所により後見開始の審判を受け(同月二六日同審判確定)、それに伴い原告X3が成年後見人に選任され、その後、平成二〇年八月二二日、弁護士Aが成年後見人に追加して選任されるとともに、原告X3が身上監護の事務を、弁護士Aが財産管理の事務を分掌することを定める審判が同家庭裁判所によりなされ、同月二八日同審判は確定した。原告X3は、原告X1の母であり、原告X2は原告X1の父である。

イ 被告会社は、タクシー営業を行う会社であり、被告Y1は、本件事故当時被告会社に勤務するタクシー運転手であったものである。

(2)  本件事故(争いがない事実、甲三、一六、乙一、四の一及び二並びに弁論の全趣旨)

ア 発生日時

平成一八年一月一五日午後四時六分ころ

イ 発生場所

京都市中京区西ノ京中御門東町一〇六番地先西大路太子道交差点(以下「本件交差点」という。)

ウ 本件交差点の概要、当事者、関係車両及び事故態様

本件交差点は、ほぼ南北に通じる西大路通と東西に通じる太子道(新二条通)の十字路交差点にその数一〇メートル北側で西大路通にほぼ東西に通じる旧二条通が交差する交差点が隣接し、その二つの交差点が複合されて一つの交差点として交通規制がされ、交通整理の行われているものである。

西大路通は、本件交差点付近において、交差点入口では三車線(第一車線が左折兼直進、第二車線が直進専用、第三車線が右折専用)、交差点出口では二車線であり、停止線は、南行車線の交差点入口については新二条通との交差部分の手前に、北行車線の交差点入口については太子道との交差部分の手前にそれぞれ設置されており、西大路通から太子道及び旧二条通への右左折は、共通した信号機により整理される形となっている。

被告Y1は、被告会社所属のタクシー車両(以下「被告車」という。)を運転して西大路通を南進して本件交差点に差し掛かり、対面信号機の赤色表示に従い交差点手前の停止線で一度停止し、その後、対面信号機が青色表示に変わったのに従い発進して交差点内に進入して旧二条通へ右折しようとし、その右折中に、対面信号機の青色表示に従い対向直進して本件交差点に進入してきた原告X1運転の自動二輪車(以下「原告車」という。)と衝突した。(以下「本件事故」という。)

衝突箇所は、原告車前部と被告車右前部とであり、衝突地点は、本件交差点北側出口付近の横断歩道上、西大路通の北行第一通行帯の中央付近である。原告車は、西大路通の本件交差点の南側入口停止線手前の第二通行帯上に停止していた四輪車をその右側(右折専用レーンの第三通行帯)にはみ出して追越して本件交差点内に進入し、進路を徐々に左側に向けて衝突地点に至っている。

なお、本件交差点の道路状況等は別紙交通事故現場見取図のとおりである。

(3)  原告X1の本件事故による受傷、治療経過の概要及び後遺障害(争いがない。)

ア 原告X1の受傷内容

原告X1は、本件事故により遷延性意識障害を伴う外傷性脳幹部損傷等の傷害を負った。

イ 原告X1の入院治療経過

(ア) a病院入院

平成一八年一月一五日から同年四月一九日まで

平成一八年五月八日から平成二〇年三月二四日まで

(イ) b病院(以下「b病院」という。)入院

平成一八年四月一九日から同年五月八日まで

(ウ) c病院入院

平成二〇年三月二四日から同年七月七日まで

(エ) dセンター入院

平成二〇年七月七日から平成二三年二月二八日まで

(オ) e病院入院

平成二三年二月二八日から平成二四年四月一九日(原告らの平成二四年四月一九日付け訴えの変更申立書)まで

なお、e病院入院中の平成二三年六月九日に症状固定診断を受けており、同日までの通算入院治療日数は一九七二日である。

ウ 後遺障害等

原告X1には、失語、発語困難、四肢体幹不全麻痺、嚥下障害、精神症状(易興奮性等)等の後遺障害が残り、自賠責保険後遺障害等級認定は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として、自賠法施行令二条別表第一の第一級一号該当とされた。

原告X1は、上記症状固定診断の日以降もe病院に入院し、リハビリテーションを受けるなどしており、平成二四年八月一日が、自宅において介護を受け療養を開始する予定の日とされた。

(4)  既払金(争いがない)

ア 労災保険金

(ア) 休業補償給付 二〇二万九五八五円

(イ) 傷病補償年金 六三九万一二四九円

イ 障害厚生年金 八一五万四一〇七円

ウ 自賠責保険金

三九七六万四一九二円(平成二三年一〇月一九日支払)

三  争点及び争点に関する当事者の主張の概要

本件の争点は、(1)被告Y1の責任原因(過失)、反訴被告の責任原因(過失)及び過失相殺(争点一)、(2)原告らの損害の額等(争点二)及び(3)反訴原告の損害の額(争点三)であり、各争点に関する当事者の主張の概要は以下のとおりである。

(1)  争点一について

(原告ら)

被告Y1は、本件交差点を右折進行するに際して、対向直進車両の有無及びその安全を確認して右折進行すべき注意義務があるのにこれを怠った過失がある。

反訴被告の過失は争う。

事故類型に応じた基本的過失割合は、原告車一五対被告車八五であり、被告Y1には、修正要素となるべき徐行なし(-一〇)・早回り右折、著しい過失(著しい前方不注視ないし右折先の横断歩道上に歩行者がいるにもかかわらず右折したため交差点内で停止してしまった場合(-一〇)があり、原告X1に、時速一五km以上三〇km未満の速度違反(+一〇)が認められたとしても、原告X1の過失割合は五%にすぎない。

(被告ら)

原告X1は、対面信号が青色となる寸前から時速九〇kmないし八〇kmの猛スピードで交差点に進入し、そのままの速度で、被告車の進行方向に向かって進行して被告車に原告車を衝突させたのであり、本件事故は原告X1の一方的な過失によるものである。

被告Y1が本件交差点において、早回り右折をしようとしたことは事実であるが、本件交差点は北の停止線と南の停止線との間が六〇mあって、対向直進車が接近する前に十分右折を完了するとの常識的判断の下に右折したのであり、早回り右折をしたことが事故の原因となったものではない。南側停止線で信号待ちをしていた第一、第二車線の車両とは全く事故の発生はなく、原告車のみが猛烈なスピードで交差点に進入し、そのまま直進しておれば何ら事故が生じる余地はなかったにもかかわらず、猛スピードの上、なぜか西の方向に進行することにより、被告車の進行する方向と合致することになり事故発生となった。

原告X1は、猛スピードの関係でうつむき加減で走行し、被告車の動静に全く注意を払うことなく、前方注視義務を怠って衝突した。

(2)  争点二について

(原告ら)

ア 原告X1の損害

(ア) 入院費等 八七万一〇二三円

b病院 二二万三七九〇円(甲六)

dセンター 三六万二四四三円(甲七、二八)

e病院

二八万四七九〇円(甲三三の一から一〇まで)

(イ) 入院雑費 二九五万八〇〇〇円

一九七二日分、一日一五〇〇円

(ウ) 入院付添費 一五九三万円

遷延性意識障害により常時介護が必要で、入院期間一九七二日中、少なくとも一五九三日は近親者による付き添いを要した(dセンターにおいて実際に付き添った日数、それ以外は全ての入院日)

原告X3は本件事故まで看護助手をしていたが、退職して原告X1の付添いをしたのであり、付添介護費用は一日一万円が相当である。

(エ) 付添交通費 四二九万一六二〇円

a病院 七〇万二〇〇〇円(九〇〇円×七八〇日)

b病院

二万一六六〇円(一一四〇円×一九日)

c病院 二一万四二〇〇円(二〇四〇円×一〇五日)

dセンター

三二一万三〇〇〇円(一万四二八〇円×二二五回)

e病院 一四万七六〇円(一万五六四〇円×九回)

(オ) 付添宿泊費 二〇九万八二七五円

dセンター分 (ホテル三泊分三万二五〇〇円、アパート賃借分一七〇万七六三〇円)(甲八の一から三まで、九、三五)

e病院分 (アパート賃借分三五万八一四五円)(甲三六の一から七まで)

(カ) 症状固定後、平成二四年三月三一日までの治療関係費

五〇九万九九五〇円

a 入院費等

九六万五〇七〇円(甲三四の一一から一八まで、四五)

b 入院雑費

四四万四〇〇〇円(二九六日分、一日一五〇〇円)

c 入院付添費

二九六万円(一日一万円、原告X3が付添い)

d 付添交通費

二六万五八八〇円(e病院へ一七往復、一往復一万五六四〇円)

e 付添宿泊費

四六万五〇〇〇円(e病院のためのアパート賃借)

(甲三六の七から一一まで、四六)

(キ) 今後の治療費・介護費等

一億八六六四万九〇八一円

a 今後の治療費 二一一万二六九二円

入院費等 三八万四五七二円(e病院、平成二四年四月から四か月入院してリハビリ等予定分)

入院雑費 一八万三〇〇〇円(上記e病院一二二日分)

入院付添費 一二二万円(一二二日、一日一万円)

付添交通費 一二万五一二〇円

付添宿泊費 二〇万円(アパート賃料四か月分)

b 今後の介護費 一億七四七四万七〇三五円

原告X3が六七歳になるまで 九九三万九六八〇円

平成二四年八月一日から三年間について、原告X3が中心になり介護が行われる予定で、一日一万円、1万円×365日×2.7232(3年のライプニッツ係数)=993万9680円

原告X3・六七歳~原告X1の余命期間 一億六四八〇万七三五五円

四二年間、職業付添人による付添が必要で、一日三万円が相当。3万円×365日×(17.7741-2.7232 45年のライプニッツ係数から3年の係数を差し引き)=1億6480万7355円

c 今後の雑費 九七八万九三五四円

症状固定後も病院に入院し、余命期間四六年間、一日一五〇〇円。1500円×365日×17.8801(46年のライプニッツ係数)=978万9354円

(ク) 家屋改造費等 一五七六万八二〇〇円

自宅の改造が必要でその契約金額は一五四八万一二〇〇円である(甲四三)が、助成金が一一五万円支給される予定であるのでこれを差し引き、一四三三万一二〇〇円を要する。

病院等への移動の際に使用する車いすを内部に収納できる自動車を調達する必要が生じ、その購入・改造費として一四三万七〇〇〇円を支出した(甲四四)。

1433万1200円+143万7000円=1576万8200円

(ケ) 休業損害 一一六六万九九一七円

基礎収入月額一八万円、平成二三年六月九日まで一九七二日。

18万円×12か月×1972日÷365日=1166万9917円

(コ) 逸失利益 七六六九万二〇八三円

症状固定時三五歳で就労可能年数は三二年間(ライプニッツ係数一五・八〇二七)、基礎収入は、男子労働者学歴計全年齢平均賃金を得られた蓋然性があるので、平成一八年賃金センサスの同平均賃金額四八五万三一〇〇円、労働能力喪失率は、自賠責後遺障害等級一級で一〇〇%として計算する。

485万3100円×1×15.8027=7669万2083円

(サ) 慰謝料 三二四四万円

生命を危ぶまれる重篤な症状、後遺障害等級一級、被告らは過失を全く認めないなど不当な対応を取ったことなどを考慮すべきである。

傷害慰謝料 四四四万円

後遺障害慰謝料 二八〇〇万円

(シ) 損害のてん補 -五六三三万九一三三円

労災保険 八四二万八三四円

休業補償給付金 二〇二万九五八五円

傷病補償年金 六三九万一二四九円

障害厚生年金 八一五万四一〇七円

自賠責保険金 三九七六万四一九二円

(ス) 自賠責保険金受領までの確定遅延損害金

一一四五万五三五六円

(セ) 成年後見人報酬 三〇九五万円

イ 原告X2及び同X3の各損害

(ア) 慰謝料 各五〇〇万円

(イ) 弁護士費用 各五〇万円

(ウ) 合計 各五五〇万円

(被告ら)

争う。

(3)  争点三について

(反訴原告)

反訴原告は、原告X1により所有する被告車を破損された。

その修理費は五八万五九三二円である(乙一〇)。

(反訴被告)

争う。

乙一〇は信用できない。

第三当裁判所の判断

一  争点一について

(1)  事故類型及び基本的過失割合

前記前提となる事実中の本件事故態様等によると、本件事故は、交通整理の行われている交差点における右折車(被告車)と対向直進車(原告車)との衝突事故で、双方とも対面青信号で交差点に進入している場合に当たり、事故原因となる主たる過失は右折車側の右折に際しての安全確認義務違反、従たる過失が直進車側の前方安全確認及び回避義務違反と想定され、基本的過失割合は、原告X1・一五対被告Y1・八五と解される。

(2)  修正要素、責任原因及び過失割合

修正要素につき検討する。

被告Y1には、事故類型に応じた基本的過失に加え、修正要素と通常評価されるべき過失として、①徐行なしの右折(関係証拠(甲二四)によると、被告車は発進後短時間で時速一五km程度に達する急発進を行っていると認められる。)(-一〇)、②早回り右折(甲一六、乙一)(-一〇)、③右折先の横断歩道に歩行者がいるにもかかわらず右折を開始したため交差点内で停滞し、直進車の進路を長時間閉塞させたという著しい過失(乙一)(-一〇)の三点があると認められる。ただし、②及び③は、右折に際しての右側車線を閉塞する時間を大きくすることにより対向直進車との衝突の危険を高めるという点では共通する要素があり、この二つで合計二〇%の修正を行うのはやや過大であると考えられるので、②及び③で合計一五%の修正にとどめることとする。以上により、被告Y1の修正は二五%となる。

原告X1は、関係証拠(甲二二の四八及び四九、二四)によると、本件交差点への進入に際しては、時速八〇km以上の速度で走行していた事実が認められ、制限速度を三〇km超過する速度違反(+一〇)が認められ、また、関係証拠(甲一六、乙一)によると、通行区分に違反し右折専用レーンから交差点に進入し直進した事実が認められ、これは対向右折車である被告車の運転者被告Y1において対向直進車の有無確認を相当程度困難にした事情となったと推認されるので、著しい過失(+一〇)と評価されるべきであり、以上の修正要素となる過失により、合計二〇%の修正とするのが相当である。

なお、被告らは、原告X1が、本件交差点内で進路を左側に取ったことを、被告車の移動方向にあえて進んで衝突の結果を生じさせた過失とするが、青信号で交差点に進入した直進車が対向右折車により進路を妨害された場合、とっさに左側に進路をとって衝突を避けようとすることは自然な対応であり、仮に、進路を直進で保っていれば、結果的に右折車の右側をすり抜けることができてむしろ衝突を避けることができたという状況があったとしても、過失とは認められず、仮に過失とするにしても基本的過失割合において評価済みの過失であることは明らかであり、修正要素として取り上げるべき特段の過失とは認められない。また、被告らは、原告X1がうつむき加減で前方注視を怠って交差点に進入したと主張するが、上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。

以上を総合すると、被告Y1及び反訴被告の双方に責任原因としての過失を認めるとともに、過失相殺を認め、過失割合を原告X1・一対被告Y1・九とするのが相当である。

二  争点二について

以下、計算については、各損害項目毎に一円未満切り捨ての端数処理を行う。

(1)  原告X1の損害

ア 入院費等 八七万一〇二三円

b病院 二二万三七九〇円(甲六)

dセンター 三六万二四四三円(甲七、二八)

e病院 二八万四七九〇円(甲三四の一から八まで、平成二三年二月二八日から平成二三年五月三一日までの入院費)

イ 入院雑費 二九五万八〇〇〇円

平成二三年六月九日(症状固定日)までの入院日数は、一九七二日であり、一日一五〇〇円を認める。

1972日×1500円=295万8000円

ウ 入院付添費 一二七四万四〇〇〇円

遷延性意識障害により常時介護が必要で、入院期間一九七二日中、少なくとも一五九三日は近親者による付き添いを要したと認める。(甲二六、原告X3本人)

付添介護費用は、一日八〇〇〇円が相当である。

8000円×1593日=1274万4000円

エ 付添交通費 四二九万一六二〇円

関係証拠(甲二六、原告X3本人)及び弁論の全趣旨により、上記の原告ら主張金額を認める。

オ 付添宿泊費 二〇九万八二七五円

関係証拠(甲八の一から三まで、九、三五及び三六の一から七まで、なお、平成二三年六月分にかかる甲三六の七の五万円に関しては、日割り計算により、この項目に一万五〇〇〇円、後記カ(オ)の項目に三万五〇〇〇円をそれぞれ算入させる。)により原告ら主張の上記金額を認める。

カ 症状固定後、平成二四年三月三一日までの治療関係費

四五〇万七九五〇円

(ア) 入院費等 九六万五〇七〇円(甲三四の九から一八まで、四五の一から一〇まで)

(イ) 入院雑費 四四万四〇〇〇円(二九六日分、一日一五〇〇円)

(ウ) 入院付添費 二三六万八〇〇〇円(一日八〇〇〇円)

(エ) 付添交通費 二六万五八八〇円(e病院へ一七往復、一往復一万五六四〇円)

(オ) 付添宿泊費 四六万五〇〇〇円(e病院のためのアパート賃借)(甲三六の七~一一、四六。なお、甲三六の七については、前記のとおりこのうち三万五〇〇〇円を算入して上記書証記載の金額を合計すると、四八万五〇〇〇円となるのであるが、原告X1の主張の範囲内で四六万五〇〇〇円を認めることとした。)

キ 今後の治療費・介護費等 一億一九六九万二〇〇六円

(ア) 今後の治療費 一八六万八六九二円(弁論の全趣旨)

a 入院費等 三八万四五七二円(e病院、平成二四年四月から四か月入院してリハビリ等予定分)

b 入院雑費 一八万三〇〇〇円(上記e病院一二二日分)

c 入院付添費 九七万六〇〇〇円(一二二日、一日八〇〇〇円)

d 付添交通費 一二万五一二〇円

e 付添宿泊費 二〇万円(アパート賃料四か月分、月額五万円)

(イ) 今後の介護費 一億一七八二万三三一四円

原告X3が六七歳になるまで 七九五万一七四四円

平成二四年八月一日から三年間について、原告X3が中心になり介護が行われる予定で、一日八〇〇〇円、8000円×365日×2.7232(3年のライプニッツ係数)=795万1744円

原告X3六七歳~原告X1の余命期間 一億九八七万一五七〇円

四二年間、職業付添人による付添が必要で、一日二万円(二四時間を二人で担当する前提で、少なくとも一人一日一万円が必要である)が相当。2万円×365日×(17.7741-2.7232 45年のライプニッツ係数から3年の係数を差し引き)=1億987万1570円

(ウ) 今後の雑費 〇円

症状固定後も病院に入院しているが、平成二四年八月以降は自宅での生活が見込まれており、入院雑費が必要となる蓋然性が証拠上認められない。

ク 家屋改造費等 一五七六万八二〇〇円

自宅改造工事費 一四三三万一二〇〇円(甲四三、弁論の全趣旨)

病院等への移動の際に使用する自動車購入・改造費一四三万七〇〇〇円(甲四四)

1433万1200円+143万7000円=1576万8200円

ケ 休業損害 一一六六万九九一七円

基礎収入月額一八万円、平成二三年六月九日まで一九七二日。

18万円×12か月×1972日÷365日=1166万9917円

コ 逸失利益 七六六九万二〇八三円

症状固定時三五歳で就労可能年数は三二年間(ライプニッツ係数一五・八〇二七)、基礎収入は、事故時の年齢が二八歳であり、男子労働者学歴計の症状固定時に対応する年代の平均賃金を生涯にわたり得られた蓋然性があるので、平成一八年賃金センサスの男子労働者学歴計三〇歳から三四歳の平均賃金額四八五万三一〇〇円を採用し、労働能力喪失率は自賠責後遺障害等級一級で一〇〇%として計算する。

485万3100円×1×15.8027=7669万2083円

サ 慰謝料 三二四〇万円

傷害慰謝料については、生命を危ぶまれる重篤な症状により、少なくとも二年六か月以上は症状の改善変動が続く状態で入院治療を受けていたと認められることから、重傷表適用で治療期間二年六か月相当の傷害慰謝料として四四〇万円程度が標準的金額であると考えられる。

後遺障害慰謝料については、後遺症の内容及び程度によると、二八〇〇万円程度が標準的金額であると考えられる。

これに、本件事故発生の原因たる過失の大半は被告側にあり、このことは、事故類型からも、被告らにおいて容易にその内容を知ることができた被告会社保有のドライブレコーダー(乙一)はじめ関係証拠からも、疑う余地が乏しいにもかかわらず、被告らが過失責任を一切否認する態度を本件訴訟の口頭弁論終結時に至るまでほぼ一貫して取っていることは、慰謝料の加算増額の理由となりうる事情ではあるが、原告主張金額を考慮すると、原告主張金額とおり、傷害慰謝料は四四〇万円、後遺障害慰謝料は二八〇〇万円とするのが相当である。

シ 小計 二億八三六九万三〇七四円

ス 過失相殺

×0.9=2億5532万3766円

セ 損害のてん補及び自賠責保険金分の確定遅延損害金

-5633万9133円=1億9898万4633円

自賠責保険金の金額三九七六万四一九二円対する本件事故発生日(平成一八年一月一五日)から自賠責保険金支払の日(平成二三年一〇月一九日)まで五年と二七八日についての年五分の割合による金員は、一一四五万五三五五円である。(3976万4192円×(0.25+278÷365×0.05)=1145万5355円+1145万5355円=2億1043万9988円

ソ 成年後見人報酬 二一〇〇万円

損害のてん補控除等の後の損害額の約一割相当額を成年後見人の本件訴訟における訴訟業務に関する報酬相当額と認める。

タ 合計 二億三一四三万九九八八円

(2)  原告X2及び同X3の損害

(ア) 慰謝料 各五〇〇万円

(イ) 過失相殺

×0.9=各450万円

(ウ) 弁護士費用 四五万円

(エ) 合計 各四九五万円

三  争点三について

(1)  修理費

反訴原告車両の修理費相当額として、関係証拠(甲二二の三〇、乙三の一から六まで、一〇)により、五〇万円を認める。

(2)  過失相殺

×0.1=5万円

四  まとめ

よって、原告X1の請求は、被告らに対し、連帯して、二億三一四三万九九八八円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で、原告X2及び原告X3の各請求は、それぞれ、被告らに対し、連帯して、四九五万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で、反訴原告の請求は、反訴被告に対し、五万円及びこれに対する平成一八年一月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で、それぞれ理由があり、その余の各請求には理由がない。

以上の次第で、主文のとおり判決する。

(裁判官 栁本つとむ)

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