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京都地方裁判所 平成22年(ワ)1672号 判決 2011年4月19日

主文

1  被告Y1は,原告X1に対し,615万円及びこれに対する平成21年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  被告らは,原告X2に対し,連帯して,850万円及びこれに対する平成19年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

4  訴訟費用中,原告X1と被告Y1との間に生じたものについてはこれを10分し,その9を被告Y1の負担とし,その余を原告X1の負担とし,原告X2と被告Y1及び被告Y2との間に生じたものについてはこれを5分し,その1を被告Y1及び被告Y2の負担とし,その余を原告X2の負担とする。

5  この判決は,1,2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1  被告Y1は,原告X1に対し,690万円及びこれに対する平成21年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  被告らは,連帯して,原告X2に対し,4507万9336円及び内4000万円については平成19年11月8日から,内507万9336円については,被告Y2は平成21年10月9日から,被告Y1は同月15日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

第2事案の概要等

1  事案の概要

本件は,原告らが,原告X2が被告らの運営していた私設更生施設に入所中に,被告らに監禁され,被告らから頻繁に激しい暴行を受け,被告らによって強制的に労働させられたと主張して,被告Y1との間で原告X2の同施設への入所契約を締結した原告X1が,上記のような被告らの原告X2に対する行為は入所契約上の債務不履行にあたるとして,被告Y1に対し,債務不履行に基づく損害賠償として,支払済みの入所契約の報酬分の損害金690万円及びこれに対する平成21年9月14日付け原告ら準備書面送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,原告X2が,上記のような被告らの行為により肉体的・精神的苦痛を受けたと共に最低賃金相当額の損害を受けたとして,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償として,肉体的・精神的苦痛に係る損害金4000万円及びこれに対する損害発生の日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金並びに最低賃金相当額の損害金507万9336円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

なお,被告Y2は,適式の呼出しを受けたのに,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しない。

2  争いのない事実等(被告Y2は,これらの事実を争うことを明らかにしないものと認め,これを自白したものとみなす。)

(1)  当事者等

原告X2は,平成元年7月27日生まれの男性であり,原告X1は,原告X2の父である。

被告Y1は,昭和60年ころ,京都府船井郡京丹波町(以下略)所在の甲寺敷地内において,「青雲塾」という名称の私設更生施設を開設して運営を開始し,その後,「丹波ナチュラルスクール」と改称した上で同施設(以下,改称の前後を通じ「本件施設」という。)を運営してきた者である。

被告Y2は,本件施設の責任者として,本件施設の運営にあたっていた者である。

A(以下「A」という。)は被告Y1の長女であり,B(以下「B」という。)はAの夫である。

C(以下「C」という。)は被告Y1の次女であり,コンビニエンスストアを経営していた者である。

(2)  原告X1は,平成17年10月ころ,本件施設の関係者に対し,本件施設についての問い合わせをした。

(3)  原告X1は,同月10日,被告Y1との間で,被告Y1が原告X2を本件施設において生活させ,原告X2に対し更生に向けた生活指導を実施することを内容とする契約を締結し(以下「本件入所契約」という。),同月31日,被告Y1に対し,原告X2を本件施設に入所させるために必要な費用として300万円(入塾金250万円及び出張費50万円の合計)を支払った(甲1~3)。

(4)  原告X1は,平成17年10月31日,同年11月8日,同年12月5日,平成18年1月5日,同年2月6日,同年5月6日,同年6月8日,同年7月5日,同年8月10日,同年9月8日,同年10月6日,同年12月6日,平成19年1月4日,同年3月6日,同年4月7日,同年5月4日,同年6月7日,同年7月6日,同年8月3日,同年9月8日及び同年10月5日,被告Y1に対し,1か月分の原告X2の生活費として,各15万円を支払った(甲3,4の1~8・10・12・13・15・16・18~24)。

(5)  D,E,F及びGの4名(以下この4名を「Dら4名」という。)は,平成17年10月10日,原告らの自宅を訪れ,原告X2を自宅外に連れ出した上で普通乗用車に乗せて本件施設に連れて行った。

(6)  原告X2は,平成19年3月22日ころ及び同年4月22日ころ,本件施設からの逃亡を図ったが,いずれも失敗し,被告ら及び本件施設の関係者により本件施設へ連れ戻された。

(7)  原告X2は,同年11月8日,本件施設からの逃亡を図ったところ,成功し,同月10日,原告らの自宅へ帰り着いた。

(8)  京都地方検察庁検察官は,平成20年から平成21年にかけて,被告Y1を,原告X2に対する逮捕監禁及び監禁を含む,傷害,逮捕監禁,監禁の罪で起訴し,被告Y2を,原告X2に対する逮捕監禁及び監禁を含む逮捕監禁,監禁の罪で起訴し,当庁は,平成21年8月21日,被告Y2に対し,同人を懲役2年6月に処し,未決勾留日数中140日をその刑に算入するとの判決を言い渡し,同年9月5日,同判決は確定した(甲16)。また,当庁は,平成22年1月28日,被告Y1に対し,被告Y1を懲役3年6月に処し,未決勾留日数中200日をその刑に算入するとの判決を言い渡した。被告Y1はこの判決について大阪高等裁判所に対し控訴したが,同裁判所は,同年7月21日,被告Y1の控訴を棄却するとの判決を言い渡し,同年8月5日,上記の当庁の判決は確定した(以下,被告Y1を被告人とする一連の刑事事件を,審級を通じて「本件被告事件」という。)(甲13~16)。

(9)  原告X1は,平成21年10月14日,被告Y1に対し,同年9月14日付け準備書面をもって,本件入所契約を解除するとの意思表示をした。

3  争点(被告Y2は,各争点についての原告らの主張を争うことを明らかにしないものと認め,これを自白したものとみなす。)

(1)  被告らによる原告X2に対する暴行,監禁及び虐待

(原告らの主張)

ア Dら4名は,平成17年10月10日,被告らの指示を受けて原告X2の連れ出しを実行した。

Dら4名は,その際,原告X2の両手首に手錠をかけ,その身体を抱えて無理矢理自宅の外に連れ出し,原告X2を普通乗用車の後部座席に押し込み,D及びEが原告X2の両側に,Gが運転席に,Fが助手席にそれぞれ乗車して,原告X2を連行する形で本件施設に向けて普通乗用車を発進させた。原告X2は,原告らの自宅から本件施設に至るまで,手錠をかけられたままの状態が続いていた。

イ 原告X2は,同日,本件施設に到着後,本件施設の塾長室において被告Y1と面談した。被告Y1は,その際,原告X2に対し,顔面や腕を警棒で六,七回殴打するなどの暴行を加えた。

ウ 被告らは,同日,原告X2を,本件施設の敷地内にあったプレハブ建物(以下,平成18年中に増築されたプレハブ建物を含めて「本件建物」という。)の2階の,男子入所者を収容している部屋に入れた。本件建物の2階の各部屋の窓には格子がはめられており,被告らは,昼間は原告X2を含む入所者の行動を監視し,夜間には,本件建物自体に外から鍵をかけるなどして,原告X2を監禁状態に置き,原告X2が本件施設からの脱走に成功した平成19年11月8日までの約2年1か月にわたり,この状態を継続した。

エ 被告らは,本件施設の入所者(以下「入所者」という。)に対し,次のような生活を強制していた。

(ア) 午前7時40分に起床し,午前8時40分から作業に入る。朝食は出されず,朝食抜きで作業に入るのが常であった。作業の内容としては,電機製品の組立て,段ボールの組立て,生花や球根の包装及びチラシの折込みといった内職作業や,農作業,草むしり及び雪かきといった屋外での作業があった。

(イ) 作業の途中の午前11時ころには食事の時間が設けられていたが,支給された弁当は,Cが経営していたコンビニエンスストアで保存期限が切れて廃棄処分とされたものであった。このように保存期限が切れた弁当の中には,悪臭が漂い,腐敗したものも存在した。また,食事は二,三分で済ませなければならず,時間内に食べられなかった分については,被告らによりすべて没収されて廃棄されてしまった。

被告らは,食事の後も入所者に対して作業の継続を強制し,一日の作業の終了後,午後6時ころからは食事の時間としていたが,そこでの食事もカップラーメンか,Cの経営していたコンビニエンスストアで保存期限が切れて廃棄処分とされた弁当であった。

被告らは,夕食後,その日の作業が終了していない者に対し,就寝時間である午後10時まで作業を継続させた。

(ウ) 入所者が本件施設で入浴できたのは1週間に一,二回程度であり,しかも,二,三分程度の時間に限定されていたため,入所者は清潔とはほど遠い状態で,身体中が悪臭にまみれている状態であった。

また,被告らは,入所者に対し,入所者全員がトイレを済ませてからでなければトイレを流してはいけないと命令しており,本件施設のトイレには相当な悪臭が漂っていた。その上,夜間には,本件建物に外から鍵がかけられ,本件建物内にトイレがないために,入所者はバケツをトイレ代わりに使用していた。

(エ) 被告らは,入所者に対し,着衣としてTシャツ又はワイシャツしか与えず,これらの交換は,夏季は2日に1回,冬季は1週間に1回程度にすぎなかった。入所者は,薄着であることから,特に冬季には耐え難い寒さに襲われることになった。

また,被告らは,入所者の就寝時,薄い布を1枚与えるだけで,その他の布団や毛布を与えることはなく,やはり入所者は冬季には耐え難い寒さに襲われることになった。

オ 被告らは,入所者に対し,日常的に,警棒で頭部や手足を殴打するなどの暴行を加えていた。原告X2も,入所後約半年にわたる期間は,ほぼ毎日被告らから暴行を受けていた。また,被告らは,原告X2に対し,壁に向かって一日中立ち続けることを命令することがあったが,その際も,原告X2が疲れて倒れたり,原告X2の姿勢が崩れたりすると,原告X2に対し警棒で殴打するなどの暴行を加えた。

被告らは,平成17年12月31日,原告X2の内職作業が遅いことを理由に,原告X2を,雪の降る中,本件施設の屋外に,パンツ1枚の姿で二,三時間にわたり立たせ続けた。これにより,原告X2は凍死する寸前の状態に陥った。

また,被告らは,平成18年2月ころ,原告X2の作業が遅いことを理由に,原告X2を,雪の降る中,本件施設の屋外の木にパンツ1枚の姿で手錠で縛り付けるということを行い,これにより,原告X2は凍死寸前の状態に陥り,足に凍傷を患った。

カ 原告X2は,平成19年3月22日,本件施設における被告らによる暴行に耐えきれなくなり,本件施設からの逃亡を図った。しかし,被告らは,同日夕方ころ,本件施設から逃げだそうとしていた原告X2を発見し,他の入所者に原告X2を捕まえるように命令し,原告X2は本件建物の外に出たところで捕まった。被告らは,同月23日,本件建物内において,他の入所者が周囲にいる状態で,原告X2に対し,素手で顔面や腹を殴打し,倒れ込んだ原告X2を足蹴にするなど,合計数十発の暴行を加えた。

原告X2は,同年4月22日にも,本件施設からの逃亡を図った。原告X2は,本件施設の敷地外の道路まで逃げることができたが,他の入所者四,五名は原告X2を追跡し,被告Y1も軽トラックに乗って原告X2を追跡し,最終的に原告X2を捕まえた。被告Y1は,原告X2を捕まえた直後,原告X2に対し,木刀で身体中を数十発殴打する暴行を加え,原告X2は,頭からも出血した。

なお,原告X2が本件施設に入所中に病院で診察を受ける際には,常に被告Y2らが付き添い,原告X2に対して自由な発言を禁じていたから,医師の診断は,原告X2が自分の置かれている状況や病状について十分な説明をすることができない中で行われたものにすぎない。

(被告Y1の主張)

ア 原告X1と本件入所契約を締結した被告Y1の依頼を受けたDら4名は,平成17年10月10日,原告X2を自宅から普通乗用車に乗せて,本件施設まで連れて行った。原告X2が暴れるおそれがあったために,Dら4名は,車内では原告X2に対し手錠を使用していた。

イ 被告Y1は,原告X2が本件施設に到着した際に原告X2と面談した。原告X2は,このとき,被告Y1の話を全く聞こうとしていなかったため,被告Y1は,原告X2の注意を促すために,目の前にあったこたつを警棒でたたいて音を出し,話を聞くように大きな声で叱った。

しかし,その後,被告Y1が原告X2に対して原告X2が本件施設に連れてこられた理由について説明しようとしても,原告X2はこれを聞くような状態ではなかった。このため,被告Y1は,原告X2に対しては一定程度時間をかけて指導していくほかないと考えて,その場ではそれ以上の話をしなかった。

ウ 被告Y1は,入所者が本件建物を抜け出して何らかの事故に遭うことを防止するために,本件建物の窓には格子を取り付け,夜間は鍵をかけていた。しかし,緊急時の対応のために宿直担当者を配置し,入所者に何かあれば被告Y1に対して連絡することとしていた。

エ 本件施設における入所者の生活は,次のようなものであった。

(ア) 本件施設における入所者の生活スケジュールは,日によって作業や勉強などの内容が異なっていたため,常に一定というわけではなかったが,午前7時40分ころに起床し,午前9時ころから内職の作業(主に電機部品の組立て),農作業及び寺の境内の清掃を行い,入所者によっては勉強をすることとしていた。入所者からの希望もあって,朝食は食べないこととなっていたため,昼食は午前11時ころからとなっていた。その後,休憩を挟んで午後の作業等を行い(開始する時間はまちまちであったが,午後1時ころから開始することが多かった。),遅くとも午後4時ころまでには作業を終了して,夕食及び入浴を経て,その後は居室でテレビを見るなどして自由に過ごすこととしていた。なお,被告らが昼間に入所者を間断なく監視していたことはないし,入所者に対して夕食後の作業を強制することもなかった。

(イ) 入所者は,本件建物の食事室で食事を取ることが多かったが,境内で入所者同士で輪になって和気あいあいと食事をすることも多く,被告らは,入所者に対して食事の時間を制限したことはない。

食事の内容についても,コンビニエンスストアの弁当を出すこともあったが,被告Y2が調理した丼ものや焼き魚などを食べさせることもあった。なお,コンビニエンスストアの弁当については,Cが経営していたコンビニエンスストアから消費期限が間近に迫ったものをもらい受けて出していたが,実際に傷んでいたり腐っていたりしたものを入所者に対して出したことはない。

また,平成19年6月ころ以降になると,Aが入所者の食事の準備を担当することになり,栄養のバランスを考慮して,コンビニエンスストアの弁当ではない食事の割合が増加していった。

(ウ) 入所者は,冬場で屋外の作業がなく汗をかかないような場合を除き,基本的に毎日入浴していたし,被告らは入所者に対し入浴時間を制限していなかった。

また,入所者が,できるだけ決まった時間にまとめてトイレに行くようにするというルールを決めていたようではあるが,被告らがそのような内容の指示又は命令をしていたことはない。

したがって,入所者の身体に悪臭が漂っていたり,トイレが不潔な環境であったりといったことはなかった。

(エ) 被告らは,季節に合わせて入所者の保護者から服を送ってもらうなどして,入所者には一般的な服装をさせるようにしており,冬にTシャツだけで過ごさせていたようなことはない。

また,被告らは入所者に対して布団や毛布を与えており,入所者は本件建物の居室のエアコンを自由に使用していた。

オ 被告Y1は,入所者がまじめに作業に取り組もうとしないなど,更生にあたって問題となる行動をとり,叱っても聞かないような場合には,平手打ちをするなどの体罰を加えることがあった。もっとも,被告Y1は,入所者に対して何ら理由もなく暴力をふるうことはなかったし,その程度についても,警棒などで強く殴るようなことはなく,平手打ち(びんた)もけがをさせるような強度のものではなかった。これは原告X2に対しても同様であり,被告らが,原告X2に対して日常的に暴行を加えたり,入所後半年間にわたり毎日暴行を加えたりしていたことはない。被告Y1は,原告X2が作業にまじめに取り組もうとしなかった際に,原告X2に対し壁に向かって立たせる罰を加えたことがあるが,最も長いときでも2時間程度であり,一日中立たせるようなことはなかった。

また,被告らは,平成17年12月31日に原告X2を雪の中でパンツ1枚の姿で立たせていないし,平成18年ころに原告X2をパンツ1枚の姿で屋外の木に手錠で縛り付けてもいない。本件施設は,甲寺の境内にあり,甲寺には檀家の人々が日常的に多く訪れており,特に大晦日である平成17年12月31日にはほとんどひっきりなしに檀家の人々が訪れていたから,そのような日に被告らがそのような異様なことをするわけがなく,仮にそのようなことがあったとすれば,この時点で警察への通報が行われているはずであるが,そうした事実もない。

カ 原告X2には,もともと本件施設に入所した当初から,正常ではない言動がみられることがあったが,上記の脱走未遂に先立つ平成18年8月ころからは,以前にも増して意味不明の言動がみられるようになり,本件施設においても意味不明の発言をしていた。原告X1及び原告X2の姉は,同年10月ころに本件施設を訪れて原告X2と面会したが,このとき,原告X2は自分の父親や姉を認識することができなかった。このため,原告X2は,同年11月9日に乙病院の精神科で診察を受けたが,このとき,原告X2は,幻聴体験を推定させる訴えをしており,さらに加害念慮及び自殺念慮を訴えた。このため,同病院の医師は,原告X2について,「軽度知的障害,反応性精神病又は統合失調症」であると診断した。原告X2の加害念慮及び自殺念慮はその後も平成19年6月まで続いていた。

原告X2は,こうした精神状況の下で,同年3月及び4月の2度にわたり,本件施設からの逃亡を試みたが,いずれも,被告Y1や他の入所者が近くにいる中で突然走って逃げだそうとしたという稚拙なもので,近くにいた入所者が取り押さえるなどして失敗に終わった。このとき,原告X2には,周囲の人の気を引こうとしたような節も見受けられた。

被告らは,いずれの脱走の際も,逃げようとする原告X2を押さえつけたことはあったが,殴ったり蹴ったりといった暴行を加えてはいないし,木刀で殴りつけてもいない。

(2)  親権者の承諾又は監護権の委託

(被告Y1の主張)

被告Y1は,平成17年10月6日ころ,本件施設を訪れた原告X1に対し,本件施設では,入所者が悪いことをしたときなど,必要な場合には被告Y1が入所者に対して「愛のムチ」として体罰を加えることがあることや,本件施設の入所にあたっては,本人の了解なしに連れて行くことになるから,本件施設から本件施設の関係者が迎えに行って連れ出すことになり,連れ出す際には暴れる子供もいるため,事故防止のために手錠などを使用して実力で拘束することがあることを説明した。

仮にこのような説明の存在が認められないとしても,原告X1は,本件入所契約の締結に際して,原告X2の生活や原告X2に対する指導方法については被告Y1に委ねていた。したがって,本件入所契約の中には,原告X1が被告Y1及び本件施設の関係者に対して懲戒権及び居所指定権を含む包括的な監護権を委託するとの内容が含まれていたものである。

したがって,Dら4名が原告X2を本件施設に連れて行く際に手錠をかけたのも,被告らが本件施設の居室を夜間に外から施錠していたのも,原告X2の親権者であった原告X1から包括的な監護権を委託されていた被告Y1が,原告X2の更生のために必要な行為を,事故防止という正当な目的のために,社会通念上相当な範囲内で行ったものであるから,いずれも違法性がない。

(原告らの主張)

被告Y1は,本件入所契約締結の際,原告X1に対して,原告X2の連れ出し方について,「暴れたらくくることもあります。」と説明をしたことはなく,原告X1が,原告X2の連れ出しの際に被告ら又は本件施設の関係者が原告X2に手錠をかける等の行為をすることを了承していたことはない。

また,被告Y1は,本件入所契約締結の際,原告X1に対して,「愛のムチをすることもあります。」などと説明をしたことはなく,原告X1が,被告Y1が原告X2に対し体罰を加えることを了承していたことはない。

(3)  本件入所契約の債務不履行解除

(原告X1の主張)

ア 次のような事情に照らせば,本件入所契約は,被告Y1が,原告X2を本件施設に入所させて原告X2に対して最善の教育を行い,原告X2を更生させることを内容としていた。

(ア) 被告Y1は,インターネット上において,本件施設を,京都の寺院の境内の写真を掲載し,「京都府船井郡京丹波町(以下略)の山の懐にいだかれた甲寺内に子供達を預かり,共に生活することで,彼らの心の回復を目指す」及び「塾で暮らして全寮制の高校に行ける。ナチュラルスクールで訓練後,社会に復帰(就職)できます。」などの文言により宣伝していた。

(イ) 被告Y1は,平成17年10月6日,本件施設内において原告X1と面談した際,原告X1に対し,「当スクールでは,特待生として全寮制の高校にも行かせるし,大学も九州大学などにも進学している。X2君がスクールに来たときには,なぜここに来たのかということについて,X2君が納得できるように話をする。」と述べ,本件施設に入所した後の日程表を見せながら,「ここでは勉強や座禅などをしていく。私の親は保護司をしており,私があとを継いでこのスクールを運営し,20数年の実績がある。私自身は寺の住職をしており,頼まれて地方に講演に行くことも多く,1回につき100万円の講師料をいただいている。」と述べた。

(ウ) 原告X1は,上記(ア)の宣伝内容や,上記(イ)のような被告Y1の言動を信用し,被告Y1との間で本件入所契約を締結するに至った。

イ しかし,被告Y1は,本件入所契約に基づいて原告X2を入所させた後,原告X2を本件施設内に監禁し,暴行によって労働を強制していたものであって,このような行為は,原告X2に対する教育と呼べるようなものではなく,原告X2の更生を阻害するものにすぎなかった。

したがって,被告Y1は,本件入所契約に基づく義務を何ら履行していない。

ウ また,被告ら及び本件施設の関係者による,本件施設内での暴行及び監禁等の事実が平成20年9月9日に露呈し,被告らが傷害容疑で逮捕され,本件施設は閉鎖となった。その後,本件施設の関係者8名が逮捕され,これにより,本件施設の運営の継続及び今後の運営再開は完全に不可能な状態となった。

したがって,被告Y1の本件入所契約に基づく債務は,現在では履行不能の状態にある。

エ よって,原告X1は,平成21年9月14日付け準備書面の送達をもって,本件入所契約を解除するとの意思表示をした。

(被告Y1の主張)

原告X1が主張する「最善の教育を行う義務」とは,あまりにも抽象的で,具体的な義務とは言えないし,被告Y1と原告X1との間にそのような義務についての合意は存在しない。また,本件施設のようなフリースクールへの入所にあたって,「更生」という結果を約束するような合意もありえない。

原告X1及び被告Y1の本件入所契約締結時の意思を合理的に解釈すれば,本件入所契約の内容は,原告X2を本件施設で生活させ,農作業等に従事させるなどして更生に向けた生活指導を実施するというものであり,その期間の定めがないものと解すべきである。そして,被告Y1はその義務を履行しているのであって,そこには何ら債務不履行は存在しない。

また,原告X1は,履行不能による解除を主張するが,本件においては,平成19年11月8日に原告X2が本件施設を脱走し,原告X1が同月10日に被告Y1に対して原告X2を自宅で生活させるとの意向を示していたものであるから,その時点で被告Y1と原告X1との合意により本件入所契約は終了しているから,原告X1の主張は失当である。

なお,被告Y1が,本件入所契約の締結に先立って,原告X1に対し,被告Y1の父親が保護司であったとか,被告Y1自身が寺の住職であるといった説明をしたことはない。

(4)  原告X1の損害

(原告X1の主張)

原告X1は,被告Y1に対し,本件入所契約に関して,次のとおりの金銭を支払っている。

ア 入塾金  250万円

イ 出張費  50万円

ウ 生活費  390万円

(平成17年10月から平成19年11月までの2年2か月にわたり,毎月10日限り15万円の支払。)

エ 合計  690万円

被告Y1は,争点(3)についての原告らの主張のとおり,本件入所契約に基づく債務を何ら履行せず,また,その債務を履行することはもはや不可能になったものであるから,上記の支払済みの金銭は,被告Y1の債務不履行により原告X1に生じた損害ということができる。

(被告Y1の主張)

争点(3)についての主張のとおり,被告Y1の債務不履行については争う。

原告X1が被告Y1に対し入塾金として250万円,原告X2を自宅から本件施設まで連れ出すのに必要な費用として50万円を支払ったことは認めるが,入所後の毎月15万円の生活費については,原告の提出する証拠で確認できる限りにおいてのみ認める。

(5)  原告X2の損害

(原告X2の主張)

ア 暴行,監禁及び虐待による損害

争点(1)についての原告らの主張のとおり,被告らは,共同して,約2年1か月もの間,原告X2を監禁し,日常的に暴行を加えてきた。

この結果,原告X2は,身体的にも精神的にも深刻な損害を負い,かかる損害を金銭的に評価した金額は,4000万円を下ることはない。

イ 強制労働による損害

被告ら及び本件施設の関係者は,原告X2を含む入所者に対して,賃金を一切支払うことなく,1日あたり9時間以上の労働を休日も全く設けずに強制し,この結果,原告X2は労基法32条1項所定の法定労働時間を上回る週63時間以上の労働を強制された。

原告X2は,強制労働により,当該労働についての賃金相当額の損害を受けたというべきであり,京都府における最低賃金が,平成18年9月までは時給682円,同年10月以降は時給686円であったことから,原告X2の強制労働による損害は次のとおりとなる。

(ア) 平成17年10月11日から平成18年9月30日までの強制労働

原告X2の1週間あたりの賃金相当額は,

通常賃金分 682円×40時間=2万7280円

割増賃金分 682円×1.25倍×23時間=1万9607円

合計  4万6887円

となり,1日あたりの賃金相当額は,これを7日で割った6698円となるから,この期間全体の賃金相当額は,

6698円×354日=237万1092円

(イ) 平成18年10月1日から平成19年11月7日までの強制労働原告X2の1週間あたりの賃金相当額は,

通常賃金分 686円×40時間=2万7440円

割増賃金分 682円×1.25倍×23時間=1万9722円

合計  4万7162円

となり,1日あたりの賃金相当額は,これを7日で割った6737円となるから,この期間全体の賃金相当額は,

6737円×402日=270万8274円

(ウ) 賃金相当額の損害の合計  507万9366円

(被告Y1の主張)

ア 暴行,監禁及び虐待による損害

争う。

イ 強制労働による損害

被告Y1は,原告X2に対して内職や農作業をするように指導していたが,これは賃金が発生すべき性質の労働ではない。

そもそも,原告X2が作業に従事していたのは,1日あたり5時間程度であるし,農作業など屋外での作業もあったことから,天候によって休んだり時間が短縮されたりすることもあった。

また,被告Y1が原告X2に対して一日も休むこともなく週7日作業に従事させていたことはなく,少なくとも週1日は作業に従事させない日があった。

被告Y1は,原告X2の更生を図るために,原告X2をこのような程度の時間にわたって内職や農作業に従事させることについて,原告X2の親権者である原告X1に対して説明を行い,原告X1の同意も得ていた。また,原告X1は,原告X2が行う作業について対価が発生するようなものでないことも十分に理解し,黙示的に同意していた。

したがって,被告Y1は,原告X2に対して,強制労働に関する損害賠償責任を負わない。

第3争点に対する判断

1  争点(1)(被告らによる原告に対する暴行,監禁及び虐待)について

(1)  前記争いのない事実等及び証拠(甲1,7~12,17,18,22~25,乙A1~7,44~46)によれば,次の事実が認められる。

ア 原告X1は,平成17年10月ころ,それまでに4回の精神科病院への入院経験があり,そのころも精神的に不安定となっていた原告X2の家庭内暴力に悩んでいたことから,そのころに知った本件施設に原告X2を預けることを考え,本件施設を訪れ,被告らと面会した。

被告Y1は,その際,原告X1に対し,座禅,説教,食事及び勉強等について記載された本件施設の日課表のコピーを示した上で,自分は寺の住職で,保護司をしていた父親を引き継いで本件施設を経営している,被告Y2は学校教師をしていた,本件施設に入れば寮付きの高校に特待生扱いで入ることができ,きちんとした大学にも入れるなどと述べた。また,被告らは,原告X1に対し,本件施設のあった寺の和室を見せて,入所者をここで寝泊まりさせていると述べた。また,被告Y1は,原告X1に対し,入所者については,厳しくしつけることもあると述べた。

そこで,原告X1は,被告Y1の言葉を信用し,原告X2を本件施設に入れることを決め,同月10日,被告Y1との間で本件入所契約を締結した。被告Y1は,原告X1に対し,「どうしてここに連れられたか最初に説明して納得させるから,事前には本人には伝えないようにしてください。」「子供さんが寝ている間に連れて行きます。警察から手錠も借りているので,使うこともあります。」と述べ,原告X1はこの言葉に従い,原告X2には本件施設への入所を決めたことを知らせなかった。

イ 被告Y1の指示を受けたDら4名は,同日早朝,東京都(以下略)の原告らの自宅を訪れ,自室で寝ていた原告X2に対し,「起きろ。」「警察だからついて来い。」などと述べ,顔面を手けんで殴打したり,ベッドに押さえ込んだり,腰付近を踏みつけたりするなどの暴行を加え,原告X2の両手首及び両足首にそれぞれ手錠をかけ,普通乗用車の後部座席に押し込んだ上,同日午後0時30分ころ,本件施設に原告X2を連行した。

被告Y1は,両手首に手錠をかけられたままの原告X2に対し,正座の姿勢をとらせた上で,「おまえは親に捨てられたんや。」「お前に帰るとこなんかない。」と怒鳴りつけ,原告X2が何か発言しようとすると,原告X2に対し,顔面や腕を警棒で5~6回殴打する暴行を加えた。また,同席していた被告Y2も,原告X2に対し,顔面を平手打ちする暴行を加えた。被告Y1は,同日,原告X2を本件建物の2階の居室に入れた。

ウ 本件建物の2階の居室には,窓にアルミの格子が取り付けられていたため,原告X2を含む入所者は,窓から外に出ることはできなかった。本件建物は,平成18年ころに増築されたが,増築された建物も含め,本件建物の居室の窓には全てアルミの格子が取り付けられていた。

また,本件施設の敷地内には,トタン葺きの建物(以下「塾長室建物」という。)が存在し,被告Y1は,平成18年ころに本件建物が増築されるまでは,夜間に塾長室建物内部の塾長室に泊まり込み,入所者を監視していた。増築後の本件建物の1階部分には,宿直室が設けられ,本件施設の関係者が泊まり込んで入所者を監視した。

エ 被告Y1及び本件施設の関係者は,入所者を午前7時半ころに起床させ,昼間は夕方ころまで内職や草刈りなどの農作業をさせた。被告らは,昼間に入所者が本件建物内で作業をする際や,夜間に入所者が本件建物で就寝する際には,本件建物の2階部分を外から施錠し,入所者が本件建物の外に出られないようにしていた。

オ 被告らは,平成17年10月下旬以降,入所者に対し,昼食と夕食のみを出すようになり,これらの食事には,丼ものや焼き魚定食などもあったが,ほとんどはインスタントラーメンや保存期限の切れたコンビニエンスストアの弁当などであり,保存期限の切れた弁当の中には,腐った臭いのするものもあった。被告Y2が,食事をするのが遅い入所者の食事を取り上げて捨てることもあった。

カ 本件施設の入浴施設は,本件建物の増築部分の1階に存在したが,被告らは,入所者に対し,冬場は1週間に1回程度の入浴しか許さず,夏場でも草刈り等の屋外での作業をしたときにしか入浴を許さなかった上に,これらの入浴をいずれも1回あたり4~5分で済ませるように指示していた。

キ 被告らは,入所者に対し,1日あたり5回程度,決められた時間のみトイレを使用することを許していた。増築前の本件建物の2階部分にはトイレがなかったため,入所者は,外部から施錠される夜間には居室内のバケツで排便をしており,居室内には汚物の臭いが漂っていた。

増築後の本件建物の2階部分の各居室にはトイレが設置されたが,被告らは,入所者に対し,トイレを使用する度に水を流すことを禁じ,最後に使用した入所者がまとめて水を流すように指示していた。

ク 被告Y1は,入所者に対し,「ここから逃げたら,戸塚ヨットスクールみたいなもっとひどいところにぶち込んでやる。」「脱走はもちろん,脱走という言葉や,それに近い言葉を使っても,どつきあげたる。」と述べて,本件施設からの脱走を強く禁じていた。また,被告Y1は,入所者に対し,「チクリをする子ほど改心している。」「お前らがいつ塾を出れるかはワシが決める。」「脱走すれば,出れるのが3年延びる。」などと述べて,相互に入所者を監視し合うように指示し,他の入所者の脱走計画などについての被告らへの密告を奨励していた。

ケ 被告Y1は,原告X2が本件施設に入所していた平成17年10月10日から平成19年11月8日までの間,原告X2の内職作業が遅い,食事をするのが遅い,目つきが悪いといったことを理由に,原告X2に対し,恒常的に,木刀や手けんで顔面,腕及び背中等を殴打したり,身体を踏みつけたりする暴行を加えていた。また,被告Y2も,同様に,原告X2の顔面を平手打ちしたり,ラッピングフィルムの箱で原告X2の頭を叩いたりする暴行を加えていた。

コ 被告らは,平成17年12月31日午後1時ころ,原告X2,H(以下「H」という。)及び他の入所者1名に対し,ジャージのズボンを履いたのみの格好で,氷の上に裸足で立ち続けることを強制した。このとき,原告X2の足には,先の方が真っ赤になり,その後に内出血したように黒ずみ,最後には皮が剥けるという傷害の結果が生じた。

サ 被告らは,平成18年1月ころ,原告X2に対し,Tシャツ姿で,本件施設の敷地内の木を抱くように回した両手首に手錠をかけられた状態で,昼から夕方ころまで立ち続けることを強制した。

シ 原告X1は,同年3月ころ,本件施設を訪れ,原告X2と面会した。しかし,被告らが,原告X1との面会に先立ち,原告X2に対し「一切いらんことはしゃべるな。」と口止めした上,原告X2と原告X1との面会にも同席したため,原告X2は,原告X1に対し,助けを求めたり,本件施設で実際にはどのような処遇を受けているかについて伝えたりすることはできなかった。

原告X1は,このとき,原告X2がやせているように感じたため,被告らに対し,原告X2に出されている食事について尋ねたが,被告らは,原告X1に対し「ちゃんと食べさせてます。」と短く答えたにすぎなかった。

ス 被告Y1は,平成18年7月14日,Hが本件施設から被告Y2の自動車を奪って脱走を図ったものの失敗した際に,塾長室建物の縁側の前に入所者及び被告Y2を集め,その目の前で,Hに対し,特殊警棒でめった打ちにする暴行を加えた上,自動車を運転することができる入所者に対し,「お前らもHみたいなことをしたら承知せえへんぞ。」と言って脅しつけた。

セ 原告X2は,同年7月ころ,持病の真珠腫性中耳炎が悪化したため,同月中の4回の丙病院への通院を経て,同月4日から同月16日までの間入院し,その後も平成19年7月17日までの間,4回にわたり通院した。被告らが,入院に先立ち,原告X2に対し,「病院でもいらんことは一切言うな。」「口チャックやぞ。」と述べており,通院時にも被告Y2や被告Y1に原告X2の監視を命令された他の入所者が同行していたため,原告X2は,通院時に逃走することはできず,また,丙病院の医療関係者等に対しても,助けを求めたり,本件施設で実際にはどのような処遇を受けているかについて伝えたりすることはできなかった。

ソ 原告X2は,本件施設で恒常的に被告らから監禁されたり暴行されたりしていたことから,平成18年夏ころ以降,精神状態が悪化し,意味不明な言動をとることがあり,被告らはこれに腹を立てて,ますます原告X2に対する暴行を強めるようになった。

タ 原告X1は,同年9月ころ,本件施設を訪れ,原告X2と面会した。しかし,上記のとおり原告X2の精神状態が悪化しており,原告X1のことを認識することもできない状態になっていたため,原告X2は,原告X1に対し,助けを求めたり,本件施設で実際にはどのような処遇を受けているかについて伝えたりすることはできなかった。

チ 原告X2は,同年11月9日以降,上記のとおりの精神状態の悪化により,乙病院に通院するようになった。被告らが,原告X2に対し口止めをしており,通院時にも被告Y2や被告Y1に原告X2の監視を命令された他の入所者が同行していたため,原告X2は,通院時に逃走することはできず,また,乙病院の医療関係者等に対しても,助けを求めたり,本件施設で実際にはどのような処遇を受けているかについて伝えたりすることはできなかった。

原告X2は,乙病院のI医師(以下「I医師」という。)に対し,幻聴体験を推定させる訴えを行い,被害念慮,加害的念慮及び自殺念慮を述べた。I医師は,原告X2の所見を踏まえ,原告X2を軽度知的障害及び反応性精神病又は統合失調症と診断した。

ツ 原告X2は,平成19年3月22日ころ,本件施設に拉致されてから1年半近くが経過し,このままでは監禁されたまま死ぬのではないかと思い詰めたことから,食事のために本件建物の1階部分に下りた際,サンダル履きのまま走り,本件施設からの脱走を図った。しかし,他の入所者が原告X2を追いかけて取り押さえ,脱走は失敗に終わった。

被告Y1は,同月24日ころ,本件建物の入所者の居室で,原告X2に対し,顔面,腕及びみぞおち部分等を手けんで7~8発殴打する暴行を加え,原告X2と同じ居室にいた入所者に対し「何でお前らしっかり見とかんかったんや。」と怒鳴りつけた。

テ 原告X2は,同年4月22日ころ,屋外での草刈り作業を終えて入浴に向かう際,被告らの監視の隙をついて,再度本件施設からの脱走を図った。しかし,被告Y1及び他の入所者が原告X2を追いかけて取り押さえ,この脱走も失敗に終わった。

被告Y1は,本件敷地内において,他の入所者及び被告Y2の目の前で,原告X2に対し,「次に逃げたら,骨折るぞ。」などと怒鳴りつけた上,原告X2に対し,両足及び両腕を木刀で数十発殴打したり,額を木刀の先端部分で小突いたりする暴行を加え,この結果,原告X2には,額から出血するという傷害の結果が生じた。

ト 被告Y1は,同年8月ころ,入所者約6名が本件施設から脱走を図った際,本件施設に連れ戻された4名のうちの1名に対し,入所者及び被告Y2の目の前で,全身を木刀でめった打ちにする暴行を加えた。

ナ 原告X2は,その後も被告らから暴力を受け続けたため,このままではいつか殺されてしまうと思うようになり,同年11月8日,被告Y2の監視の隙をついて,再々度本件施設からの脱走を図り,成功した。

原告X2は,ヒッチハイクをしたり,資金の援助を受けたりして,同月10日,原告らの自宅に帰り着いた。

(2)  以上の認定に対し,被告Y1は,本件施設における入所者の生活状況は,上記認定のような劣悪なものではなかったと主張し,その証拠として,B及びAの本件被告事件における証人尋問調書(乙A5,6),本件施設で3年以上生活していたJ(以下「J」という。)の本件被告事件における証人尋問調書(乙A7)並びにHがHの親族及び被告Y1と共に写っている写真(乙A8,9),入所者若しくは入所者であった者又はその保護者からの嘆願書(乙A12~16)及びこれらの者からの被告Y1に対する年賀状等(乙A17~41)を提出する。

しかし,B及びAの証人尋問調書(乙A5,6)については,自己の妻の父又は自己の父をかばう態度に出ているとするのが自然であるから,直ちにこれらを根拠に本件施設の生活状況を認定することはできない。また,Jの証人尋問調書(乙A7)によれば,Jが本件施設に入所していたのは平成16年3月までの期間であったのであるから,平成17年10月10日から平成19年11月8日までの本件施設における生活状況が問題となる本件において,Jの本件被告事件における証言内容をそのまま認定の基礎とすることはできない。さらに,HとHの家族及び被告Y1が共に写っている写真(乙A8,9)も,被告Y1の立会いのもとで撮影されたものと認められるから,被告Y1が,原告X2に対するのと同様に,Hに対して口止めをしている状況で撮影された可能性がある。そして,嘆願書(乙A12~16)及び年賀状等(乙A17~41)の作成者についても,原告X2と同時期に本件施設に入所していたHの祖母及び母親の作成に係る平成18年1月1日付けの年賀状(乙A39)を除き,原告X2と同時期に入所していた入所者本人又はその保護者によるものと明らかに認められるものは存在しないから,これらを重視することはできないし,Hの祖母及び母親の作成に係る年賀状についても,この年賀状の作成以前にHが被告らに口止めされることなく祖母及び母親と面会して本件施設の状況について伝える機会があったことを認めるに足りる証拠はないから,これを重視することもできない。

(4)  また,被告Y1は,原告X2が乙病院で「軽度知的障害,反応性精神病又は統合失調症」と診断されたのは,原告X2が本件施設に入所する前から常軌を逸した異常な言動をしていたことと矛盾しないものであり,被告Y1が原告X2に対して日常的,継続的に暴行を加えたことによって精神状態が悪化したということはなく,原告X2の通院の際に被告Y2が原告X2に対して自由な発言を禁じていたことはないとも主張する。

確かに,上記認定のとおり,原告X2は,本件施設に入所する前も4回にわたり精神科病院に入院した経験を有し,証拠(乙A2)によれば,原告X2自身,本件被告事件における証人尋問において,本件施設に入所する前,自己の姉に対して包丁を持ち出して言い合いになったり,ふざけて「セックスさせろ。」と言ったりしたことを認めている。

しかし,証拠(乙A3)によれば,原告X2が本件施設に入所する前に精神科病院に入院していたのは,強迫性障害と診断されていたことによるものであるし,また,上記認定のとおり,原告X2は,平成18年夏ころ以降,自分でも何を言っているのかが訳が分からなくなり,意味不明の言動を繰り返すという状態に陥り,医師に対しても幻聴体験を推定させる訴えを行い,被害念慮,加害的念慮及び自殺念慮を述べていたものと認められ,その反面,原告X2の精神状態が本件施設入所前にもこの程度にまで達していたことを認めるに足りる証拠がない以上,原告X2の精神状態が,本件施設での生活によって悪化したことを認めることができるというべきである。

なお,被告Y2は,本件被告事件の証人尋問調書(乙A4)において,原告X2に対して本件施設の実情を話すことを禁じたことはないとの趣旨の証言をしたことが認められるが,証拠(甲11)によれば,被告Y1は,京都地方検察庁検察官に対し,児童相談所が本件施設の調査を実施した際に被告Y2と共に入所者に対して事前に口止めを行い,事情聴取の際にも同席して入所者に自由な発言をさせないようにしたこと,入所者の親が本件施設を訪れて入所者と面会した際に被告Y2と共に同席して入所者に自由な発言をさせないようにしたことをそれぞれ認める供述をしていることが認められ,上記認定及び被告Y1自身のこのような供述を踏まえれば,被告Y2は,原告X2の通院時に,原告X2に対して自由な発言を禁止していたものと認めることができる。

(5)  したがって,被告Y1の主張する点にはいずれも理由はなく,被告らが,原告X2を本件施設に入所させるために暴行を加えた上,手錠という道具を用いて両手足の自由を完全に奪って連行したこと,本件施設に到着した直後の原告X2に対し親から捨てられたと述べた上で暴行を加えることにより絶望感を与えたこと,原告X2が本件施設に入所していた全期間にわたって原告X2の自由を奪った上,劣悪な生活環境下に置くと共に恒常的に暴力を加えて原告X2の精神を悪化させたこと,原告X2が本件施設からの脱走に失敗した際には他の入所者に対する見せしめの意味も込めて強い暴行を加えたことをそれぞれ認めることができる。

2  争点(2)(親権者の承諾又は監護権の委託)について

(1)  被告Y1は,原告X1が,本件入所契約の締結にあたって,被告らが入所者に対して必要な場合には体罰を加えることがあることや,子供を本人の了解なしに本件施設に連行する際には実力で拘束することがあることを説明しており,原告X1はこの2点を了解した上で本件入所契約を締結したから,被告らの行為は違法性がないと主張する。

しかし,争点(1)についての認定のとおり,被告らが,原告X1に対し,体罰や実力での拘束について,厳しくしつけることもあるとか,手錠も借りているので使うこともあるなどと述べていたことは認められるものの,被告らが実際に本件施設において原告X2に対して恒常的に加えていたような暴行の内容や,暴行を加えた上で両手首及び両足首に手錠をはめて連行するという具体的な連行の態様について明確に説明したことを認めるに足りる証拠はないから,この点についての被告Y1の主張は前提を欠き理由がない。

(2)  また,被告Y1は,原告X1は,本件入所契約の締結にあたり,被告Y1に対し懲戒権及び居所指定権を含む包括的な監護権を委託していたなどと主張し,被告らの行為には違法性がないとも主張する。

確かに,本件入所契約は,原告X1が原告X2の更生を図るために,原告X2を本件施設に入所させることを中心的な内容とするものであり,原告X2が本件施設において自由奔放な生活をしたり,本件施設から自分の意思で容易に帰宅できたのでは,本件入所契約を締結した原告X1の意思に反することは明らかであり,原告X1は,本件入所契約を締結した当時,被告ら及び本件施設の関係者が原告X2に対して一定の範囲内で懲戒権を行使することや,原告X2の居所移転の自由を一定の範囲内で制限することを許容していたとは認められる。

しかし,原告X2は,本件入所契約を締結した当時,16歳であり,未成年であるとはいえ,一定の意思能力を有していたのであるから,原告X1がこのような意思のもとに本件入所契約を締結していたとしても,被告らの行為が原告X2に対する関係で違法性を阻却されるのは,被告ら及び本件施設の関係者による原告X2に対する懲戒権の行使や,居所移転の自由の制限が,原告X2の更生のために具体的事情に基づいて必要な範囲内で,かつ社会通念上相当な範囲内であると認められる場合に限られるというべきである。

そして,争点(1)についての認定のとおり,被告らの原告X2に対する暴行は,必ずしも原告X2の更生を目的としていたものとは認められず,むしろ,懲戒権の行使の具体的根拠となる事実を欠いたまま行われていたものと認められるし,その内容も,懲戒権の行使として社会通念上相当な範囲を大きく逸脱していたものと認められる。また,被告らが原告X2に対して本件施設からの脱走を禁止し,脱走した場合に暴行を加えていたことについても,本件施設の生活環境が劣悪だったことと合わせれば,原告X2の人格権を毀損し,肉体的苦痛及び精神的苦痛を与えるものであったことは明らかであり,同様に社会通念上相当な範囲を大きく逸脱していたものと認められる。

(3)  したがって,この点についての被告Y1の主張にはいずれも理由がなく,被告らの行為が原告X2に対する関係で違法性を阻却されることはない。

3  争点(3)(本件入所契約の債務不履行解除)について

(1)  争点(1)についての認定のとおり,原告X1は,平成17年10月ころ,原告X2の家庭内暴力に悩んでいたことから,本件施設に原告X2を入所させようと考えたところ,被告Y1は,原告X1に対し,本件施設において座禅や説教をさせたりしながら,場合によっては高校に入学させたり,大学に進学させたりするとか,入所者を本件施設のあった寺の和室に寝泊まりさせていると説明し,原告X1は被告Y1のこのような説明内容を踏まえて本件入所契約を締結したことが認められる。

(2)  このような本件入所契約の締結に至る経緯を踏まえて原告X1の意思を合理的に解釈すれば,本件入所契約において,被告Y1が原告X1に対して負っていた中心的債務は,被告Y1が原告X2を本件施設において預かり,社会通念上原告X2の更生のために必要であると認められるような指導を,適切な生活環境のもとで実施するとの内容であったと認めるのが相当である。

(3)  そして,争点(1)についての認定のとおり,被告らは,原告X2が本件施設に入所していた全期間にわたって,原告X2の自由を奪った上,劣悪な生活環境下に置くと共に恒常的に暴力を加えて原告X2の精神状態を悪化させていたものと認められ,原告X2の更生のために必要であると社会通念上認められるような指導を実施していたとは認められないし,その生活環境も適切なものであったとは認めることができない。

したがって,被告Y1は原告X1に対する本件入所契約に基づく債務を十分に履行していないものと認められるから,原告X1による被告Y1の債務不履行を理由とする解除には理由があるというべきである。

(4)  なお,被告Y1は,原告X1が平成19年11月10日に被告Y1に対して今後は原告X2を自宅で生活するとの意向を示したことにより,本件入所契約は被告Y1と原告X1との合意により終了しているから,原告X1の履行不能を理由とする解除の主張は失当であると主張する。

しかし,原告X1が被告Y1に対して本件入所契約を解除するとの意思表示をした平成21年9月14日付け原告ら準備書面には,「被告Y1は,上記契約(本件入所契約)による原告X2に対して最善の教育を行い,原告X2を更生させる義務を全く果たすことなく,上記契約(本件入所契約)に基づく債務を全く履行していない。」との記載があり,原告X1の意思を合理的に解釈すれば,原告X1のした解除の意思表示は,当該意思表示時点における履行不能を理由とするものばかりではなく,上記(3)に記載したような,原告X2が本件入所契約に基づき本件施設に入所していた期間における被告Y1の債務不履行をも理由とするものというべきである。

したがって,この点についての被告Y1の主張には理由がない。

4  争点(4)(原告X1の損害)について

(1)  争点(3)についての判断のとおり,被告Y1は本件入所契約に基づく原告X1に対する債務を十分に履行していないものと認められ,原告X1が本件入所契約に基づいて被告Y1に対して支払った金銭は,いずれもこの債務不履行によって生じた損害であると認められる。

(2)  よって,支払につき争いのない入塾金250万円及び出張費50万円のほか,証拠(甲3,4の1~8・10・12・13・15・16・18~24)によって支払が認められる生活費315万円を,この債務不履行による損害と認めることができる。

この点について,原告X1は,生活費については平成17年10月から平成19年11月までの間,毎月15万円を支払い,合計390万円を支払ったと主張する。しかし,原告X1が生活費の支払と主張する証拠のうち,平成18年8月25日付け「ご利用明細」(甲4の9)については,同証拠に「X2の入院費他」との記載があること,原告X2が丙病院に入院した時期と近接していること,原告X1は同年6月,7月,8月及び9月に被告Y1に対して生活費として毎月15万円を支払っていることが認められることから,これをいずれかの月の生活費についての支払と認めることはできない。また,その余の証拠(甲4の11・14・17)についても,証拠に「つきそい費他」「乙病院医療費他」「乙病院代」との各記載があること,これらの証拠の日付の属する月にはこれらの支払とは別個に15万円の支払があることから,これらの証拠に係る支払をいずれかの月の生活費についての支払と認めることはできない。

したがって,生活費の支払のうち,平成18年3月,同年4月,同年11月及び平成19年2月の各月分については,その支払を認めるに足りる証拠がない。原告X1は,証人尋問調書(乙A3)によれば,生活費を毎月欠かさず支払っていたと証言していることが認められるが,これだけでは支払の事実を認めることはできないというべきである。

(3)  したがって,原告X1の被告Y1に対する請求は,被告Y1に対し615万円及びこれに対する平成21年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。

5  争点(5)(原告X2の損害)について

(1)  暴行,監禁及び虐待による損害について

争点(1)についての認定のとおり,原告X2は,暴行を受けた上,両手足に手錠をかけられて本件施設に連行された直後から,本件施設からの脱走に成功するまでの,758日間にも及ぶ長期間にわたって,自由を奪われた上,劣悪な生活環境下に置かれ,被告らから恒常的に暴力を加えられて,精神状態を悪化させられたものと認められ,この他,本件において現れた一切の事情を考慮すれば,かかる長期間に渡り原告X2が受けていた肉体的苦痛及び精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,850万円とするのが相当である。

(2)  強制労働による損害について

原告らは,原告X2が週63時間を上回る労働を強制されたと主張し,この労働時間を,原告X2が本件施設に入所していた期間全体について計算し,最低賃金額を元に算定した金額が原告X2の損害となると主張する。

しかし,被告らが原告X2に対して一定の労働を無償で行わせていたとしても,本件入所契約は,争点(3)についての判断のとおり,被告Y1が社会通念上原告X2の更生のために必要であると認められるような指導を行うことを内容としていたものであり,原告X1も,本件入所契約に先立って被告Y1から本件施設における生活について説明を受けていた以上,原告X2が一定の作業に従事する可能性については認識していたものと認められる。原告X1は,本件被告事件の証人尋問調書(乙A3)において,被告Y1が原告X1に対して示した日課のコピーの内容について,座禅,説教,食事及び勉強についてのみ言及しているが,上記のような本件入所契約の内容や,本件施設が農村地帯に位置していたことからすれば,何らかの作業への従事可能性について全く説明がなかったというのはかえって不自然である。

そうすると,被告らが原告X2を一定の作業に無償で従事させることそれ自体が,原告X2に対する不法行為を構成するということはできない。

本件においては,被告らが,原告X2を含む入所者に対し,一定の無償労働をさせるにあたって,社会通念上相当な範囲を逸脱した指導が,時には暴力を用いて行われていたことが問題となっているのであり,この点について不法行為の成立を認めることができるとしても,そこから直ちに無償労働に従事させていたことそれ自体が不法行為となるということはできない。

そして,被告らが原告X2に対して無償労働に関して社会通念上相当な範囲を逸脱した指導をしていたことについては,上記(1)において損害として評価済みということができるから,この点についての原告らの主張には理由がない。

(3)  したがって,原告X2の被告Y1に対する請求は,被告Y1に対し850万円及びこれに対する平成19年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。

第4原告X2の被告Y2に対する請求についての判断

1  被告Y2は,争点(1)(被告らによる原告に対する暴行,監禁及び虐待)に関する原告X2の主張事実を自白したものとみなされるから,被告Y2の原告に対する違法行為が認められる。

2  被告Y2は,争点(5)(原告X2の損害)に関する原告X2の主張事実のうち,損害の基礎となる事実を自白したものとみなされるから,その評価について検討する。

(1)  暴行,監禁及び虐待による損害について

上記判断のとおり,原告X2の慰謝料は,850万円とするのが相当である。

(2)  強制労働による損害について

上記判断のとおり,本件においては,被告らが,原告X2を含む入所者に対し,一定の無償労働に従事させていたことそれ自体が不法行為となるということはできないから,この点についての原告の主張には理由がない。

(3)  したがって,原告X2の被告Y2に対する請求は,被告Y2に対し,被告Y1と連帯して850万円及びこれに対する平成19年11月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

第5結論

よって,原告X1の請求は,被告Y1に対し615万円及びこれに対する平成21年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,原告X2の請求は,被告Y1及び被告Y2に対し,連帯して850万円及びこれに対する平成19年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉川愼一 裁判官 吉岡真一 裁判官 髙嶋諒)

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