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京都地方裁判所 平成22年(ワ)4549号 判決 2012年5月09日

原告

X1他1名

被告

Y1他1名

主文

一  被告らは、原告X2に対し、各自、四六九万七六五七円及びこれに対する平成二一年一二月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告X2のその余の請求及び原告X1の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告X1に生じた費用と被告らに生じた費用の一〇分の一を原告X1の負担とし、原告X2に生じた費用の二〇分の一三と被告らに生じた費用の五分の三を原告X2の負担とし、その余は被告らの負担とする。

四  この判決の一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

一  被告らは、原告X2に対し、連帯して、一一九五万一〇〇〇円及びこれに対する平成二一年一二月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二(1)  主位的請求

被告らは、原告X1に対し、連帯して、一二八万九五三六円及びこれに対する平成二一年一二月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2)  予備的請求

被告らは、原告X2に対し、連帯して、一二八万九五三六円及びこれに対する平成二一年一二月七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  仮執行宣言

第二事案の概要

本件は、信号機による交通整理の行われている交差点において、信号機の青色表示に従い同交差点の横断歩道を横断歩行中の原告X2(以下「原告X2」という。)と被告Y1(以下「被告Y1」という。)運転の普通乗用自動車の衝突事故について、被告Y1及びその使用者である被告Y2株式会社(以下「被告会社」という。)に対し、自動車損害賠償保障法三条又は被告Y1については民法七〇九条、被告会社については同法七一五条一項に基づき、原告X2及び原告X2を雇用し又は同原告に業務委託したなどと主張する原告X1(以下「原告X1」という。)がそれぞれ損害賠償を求め、原告X2は、原告X1の請求が認容されることを解除条件として、原告X1の主張する損害も自己の損害として賠償を求める事案である(遅延損害金請求の起算日はいずれも事故の日)。

一  争いのない事実及び容易に認定できる事実(引用証拠のない事実は争いがない。)

(1)  交通事故の発生

次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した(争いがない)。

① 日時 平成二一年一二月七日午前一〇時〇分ころ

② 場所 京都市中京区河原町通蛸薬師下る塩屋町三二四番地(以下「本件事故現場」という。)

③ 関係車両 被告会社が保有し、被告Y1が運転する事業用普通乗用自動車(ナンバー<省略>)(以下「被告車」という。)

④ 態様 本件事故現場の信号機による交通整理の行われている交差点の横断歩道を対面信号機の青色表示に従って東から西に向かって横断歩行中の原告X2と、南北に通ずる道路を北から南に向かって走行し、上記交差点に進入した被告Y1運転の被告車(タクシー)が衝突した。

(2)  被告らの責任原因

① 被告Y1は、対面信号機の赤色表示に従わず、かつ、前方注視を怠った過失により本件事故を発生させた。

② 被告会社は、被告Y1を雇用するものであり、被告Y1は、被告会社のタクシー運行事業を執行中に本件事故を発生させた。

(3)  原告X2の受傷

原告は、本件事故により、前頭部打撲擦過創、右前頭部打撲傷、右顔面擦過創、左第一中手骨骨折、骨盤骨折等の傷害を負った(甲二)。

(4)  入通院経過(甲二ないし五)

① 平成二一年一二月七日(本件事故当日)から平成二二年一月一三日(三八日間)までa病院入院

② 平成二二年一月一四日及び同年五月二四日a病院通院

③ 平成二二年一月一三日ないし同年五月二四日(及びそれ以降)b整骨院通院(同年五月二四日までの実通院日数九一日)

(5)  症状固定診断

a病院の医師は、平成二二年五月二四日、同日を症状固定日と診断した(乙一)。

(6)  原告らの職業等

原告X1は、「○○○」の名称で理容業を営むものであり、肩書住所地において上記名称で理容所を開設して営業するとともに、京都市<以下省略>において、「△△△」の名称の理容所(以下「本件理容店」という。)を開設し、原告X2が店長として同店の営業を行っている。

二  主な争点及びこれに関する当事者の主張

(1)  原告X1の損害賠償請求の可否及び損害額

① 原告X1の主張

ア 原告X1は、原告X2を雇い入れて同原告に本件理容店の業務、営業を委託している。

原告X2は、法定の資格を有する理容師であり、本件理容店の設備一切を所有するX1からこれを借り受けて、理容の業務、営業を行っている。

原告X2は、原告X1との合意に基づき、本件理容店の収入の中から毎月三二万円を原告X1に支払い、その残額からアルバイト等の人件費を支払い、残りは全額自己の収入とし、原告X1は、人件費以外の仕入代及び諸経費を支払い、毎月三万円ずつ本件理容店開設に当たっての金融機関からの借入金の返済をしている。

以上より、原告らの契約関係は、雇傭関係に類似する側面を持つものの、原告X2は、原告X1から、本件理容店の業務、営業を委託されたものであり、両者の関係は、委任契約と見るのが相当である。

イ 原告X1は、原告X2から毎月三二万円の支払を受けるべきところ、原告X2が本件事故のため平成二二年三月まで休業し、本件理容店を再開した後も売上が回復しないため、上記三二万円の一部しか支払を受けておらず、次のとおり合計一四五万六五三六円の損害を被った。

入金額 損害額

平成二一年一二月 一五万〇六三三円 一六万九三六七円

平成二二年一月 〇円 三二万円

同年二月 〇円 三二万円

同年三月 〇円 三二万円

同年四月 一八万九〇〇〇円 一三万一〇〇〇円

同年五月 一八万八二三一円 一三万一七六九円

同年六月 二五万五六〇〇円 六万四四〇〇円

計一四五万六五三六円

ウ 原告X1の損害は、企業損害として賠償請求が認められるべきである。

② 被告らの主張

ア 原告らの関係は委任契約関係であるから、原告らがそれぞれ独立して営業を営んでおり経済的一体性はない。原告X1の主張する損害は間接損害であり、被告らが賠償すべきものではない。

イ 仮に、原告X1が原告X2から毎月三二万円の支払を受けていたとしても、原告X1は、原告X2に対する月額三二万円の請求権を喪失していないから、原告X1に損害は発生していない。また、原告らの契約関係は、被告らに予見できない事情であるから、原告X1の損害は相当因果関係の範囲を超えている。

ウ 仮に、原告X1の主張の中に、本件事故により原告X1の原告X2に対する請求権が侵害されたとの主張が含まれるとしても、債権侵害が不法行為と評価されるためには強度の違法性が要求されるところ、被告Y1の不法行為には強度の違法性はない。

(2)  原告X2の入院雑費

① 原告X2の主張

a病院入院期間中の入院雑費は、一日当たり二〇〇〇円、三七日分の七万四〇〇〇円である。

② 被告らの主張

一日当たりの相当額は一五〇〇円である。

(3)  原告X2の休業損害

① 原告X2の主張

ア 原告X2は、本件理容店の店長として、本件事故前の三か月間に一か月平均四三万二八六六円の収入を得ていた。

原告X2は、本件事故のため平成二二年三月まで休業し、本件理容店を再開した後も指先の機能の回復が完全とはいえず、同事故前の顧客が戻ってこないため大幅の収入が落ち込み、次のとおり計五九九万三一〇三円の損害を被った(各月の損害額は、四三万二八六六円との差額である。)。

収入 損害額

平成二一年一二月 一〇万一三五七円 三三万一五〇九円

平成二二年一月 〇円 四三万二八六六円

同年二月 〇円 四三万二八六六円

同年三月 〇円 四三万二八六六円

同年四月 一三万円 三〇万二八六六円

同年五月 一一万九〇六九円 三一万三七九七円

同年六月 一五万円 二八万二八六六円

同年七月 一五万〇九〇〇円 二八万一九六六円

同年八月 一八万八五〇〇円 二四万四三六六円

同年九月 一九万六五〇〇円 二三万六三六六円

同年一〇月 八万七九〇〇円 三四万四九六六円

同年一一月 五万四四〇〇円 三七万八四六六円

同年一二月 八万二八〇〇円 三五万〇〇六六円

平成二三年一月 一二万七四〇〇円 三〇万五四六六円

同年二月 一五万九七〇〇円 二七万三一六六円

同年三月 一二万〇四〇〇円 三一万二四六六円

同年四月 一六万四七〇〇円 二六万八一六六円

同年五月 一七万〇五〇〇円 二六万二三六六円

同年六月 二二万七二二五円 二〇万五六四一円

計五九九万三一〇三円

イ 本件理容店に係る収支計算等は、A税理士(以下「A税理士」という。)作成の貸借対照表、損益計算書により客観的に確認できる。

ウ 仮に、原告X1の請求が認められない場合は、前記第二、二、(1)、①、イの原告X1の損害額計一四五万六五三六円は原告X2の未払債務として残っているから、これを原告X2の損害として賠償請求する。

② 被告らの主張

ア 原告X2は、平成二二年三月五日には営業を再開していたから、休業期間は本件事故翌日の平成二一年一二月八日から平成二二年三月四日までの八七日間である。

イ 原告X2の本件事故前の収入を明らかにする信頼できる資料はない。原告X2の平成二二年分(同年三月五日ないし同年一二月三一日の三〇二日間分)の収入は、確定申告書によれば、四〇一万三二〇〇円、一日当たり一万三二八八円であり、これを基礎収入とすると、上記八七日間の休業損害は一一五万六〇五六円となる。

ウ 原告X2について後遺障害の認定はされておらず、同原告の機能の回復は完全であり、喪失した労働能力はない。収入の減少と本件事故とは因果関係がない。

(4)  原告X2の精神的損害

① 原告X2の主張

被害の大きさ、被告Y1の過失の重大性、本件理容店の売上げが回復せず、原告X2の収入が激減していることを考慮すると、原告X2に支払われるべき慰謝料は少なくとも五五〇万円を下回らない。

② 被告らの主張

原告X2の入院日数は約一か月、a病院への通院日数はわずか二日であるから、慰謝料は五三万円を超えることはない。

第三当裁判所の判断

一  被告らの責任原因

前記第二、一、(2)の事実によれば、被告Y1及び被告会社は、それぞれ民法七〇九条及び七一五条一項に基づき、本件事故による損害の賠償義務を負う。

二  原告X1の損害賠償請求の可否

(1)  甲八号証、一〇号証の一・二、一三号証、一四号証の一・二、一五、一六号証、一八号証の一、一九、二〇号証、二二号証によれば、次の事実が認められる。

① 原告X1は、昭和六〇年ころ、「○○○」の営業表示で理容業を始め、最初は京都市宇治市内に理容所を開設し、平成五年、京都市<以下省略>を賃借し、同室において本件理容店を開設した。

② 原告らは、平成二一年一月、原告X2が本件理容店の店長となること、同理容店に係る人件費以外の仕入代及び諸経費は原告X1が負担し、原告X2は、人件費を負担するほか、毎月三二万円を原告X1に支払うこと、同理容店の売上げは原告X2の収入とすることを合意した。

以後、本件事故の日まで、原告X2は、上記合意に基づき、店長として本件理容店を運営し、原告X1に対して毎月三二万円を支払い、原告X1は、人件費以外の仕入代及び諸経費を負担した。

③ 原告X2は、本件事故後の平成二二年三月八日、本件理容店を営む事業者として平成二一年分の所得税の確定申告をした。上記確定申告に係る確定申告書付属の収支内訳書(一般用)には、売上原価〇円と記載され、経費は給料賃金と業務委託費のみが記載され、「本年中における特殊事情」欄には、本年分より原告X1と業務委託契約を結び、同原告に対して業務委託費を支払う、原告X1は本件理容店に係る仕入及び人件費以外の必要経費を支払う旨の記載がある。

なお、原告X2の平成二二年分の所得税確定申告書付属の収支内訳書(一般用)においては、原告X1には支払手数料(ロイヤリティ)八八万七一四二円を支払い、売上原価及び他の経費をすべて原告X2が支出したものとされている。しかし、平成二二年一月以降も、経費の分担、原告X2から原告X1に対する月額三二万円の支払についての原告ら間の合意は変更されていない(ただし、平成二三年一月から三二万円が二二万円に減額された。)。

(2)  前記認定事実に加え、原告X2が、本件理容店の運営に関し、原告X1の指揮命令を受けていたことが窺えないことに照らすと、原告X1と原告X2が雇用契約関係にあると解することはできず、平成二一年一月以降、原告X2が原告X1の営業表示(「○○○」)で本件理容店の営業をし、損益は原告X2に帰属するという、原告X1を委任者、原告X2を受託者とする経営委任に類似する契約関係があったものと解するのが相当である。

(3)  したがって、原告らは、それぞれ独立した事業者であり、両者の間に経済的一体性があるとはいえない。原告X1は間接被害者であり、同原告の主張する損害は間接損害であるが、上記説示に照らすと、原告X1は、被告らに対し、その損害の賠償を請求することはできないと解さざるを得ない。

三  原告X2の損害

(1)  入院雑費

a病院での入院三八日のうち原告X2主張の三七日につき、一日一五〇〇円、計五万五五〇〇円の入院雑費を認めるのが相当である。

(2)  休業損害

① 症状固定時期

ア 原告X2の受傷、入通院経過及び症状固定診断は、前記第二、一、(3)ないし(5)記載のとおりであり、甲五、六号証及び乙一号証によると、具体的な症状の推移について、次の事実が認められる。

(ア) 平成二二年四月九日時点で、右大腿部前面の圧痛及び骨折部の屈曲・伸展時痛はやや軽減し、母指CM関節部の圧痛は持続し、頸の側屈時痛も持続していた。

同年六月一四日時点では、右内転筋部の圧痛は持続し、骨折部の屈曲・伸展時痛はやや軽減し、母指CM関節部の圧痛は持続し、頸の側屈時痛も持続していた。

同年八月一二日時点においても、骨折部の屈曲・伸展時痛及び母指CM関節部の圧痛が軽減しつつも持続していた。

(イ) 平成二二年五月二四日の症状固定診断当時、自覚症状は、左母指の運動制限、左上肢しびれ、左手が使いにくい、右臀部の痛みなどであり、左手母指の関節可動域角度は、健側と比較し(他動)、IP関節屈曲が五度少ないほかは、差異がなかった。

イ 平成二二年五月二四日に症状固定の診断がなされた経緯は不明だが、b整骨院通院中、前記認定のとおり症状改善が見られたことなどからすると、同日を症状固定日としたa病院医師の診断が明らかに不合理であるということはできない。したがって、同日を症状固定日と認めるのが相当である。

被告らは、b整骨院での施術の必要性を争うが、本件では施術費用が請求されているわけではなく、同年一月一三日時点でa病院の医師が転帰「継続」と診断し(甲二)、上記のとおりb整骨院に通院中も母指CM関節部の圧痛等があったこと、職業上、左母指の傷害の影響は大きいと推測されることに照らし、少なくとも平成二二年二月末ころまでは一〇〇パーセントの休業の必要性を認める。

症状の推移に照らすと、原告X2は、遅くとも同年三月五日には営業を再開しているが(乙二)、なおその後も本件事故による傷害の影響で労働能力の回復は十分ではなかったものと認められる。

② 原告X2の基礎収入

ア 甲一〇号証の二・四・六によれば、原告X2に係る平成二一年九月ないし一一月の各月の売上げ、給料手当(経費)は、後記(ア)ないし(ウ)の各a、b記載のとおりであり、aからbを控除し、さらに原告X1に支払った各月三二万円を控除した残額(所得)は、各c記載のとおりとなり、上記三か月の各c(所得)の平均は四〇万二八六六円(一円未満切捨て。以下同じ)となる。これを三〇日で除すると、一日当たりの基礎収入は、一万三四二八円となる。

(ア) 平成二一年九月

a 九二万七二〇〇円(売上げ)

b 二一万五二〇〇円(給料手当)

c 三九万二〇〇〇円(a-b-320,000)

(イ) 平成二一年一〇月

a 九三万八二〇〇円(売上げ)

b 二〇万七二〇〇円(給料手当)

c 四一万一〇〇〇円(a-b-320,000)

(ウ) 平成二一年一一月

a 九三万六〇〇〇円(売上げ)

b 二一万〇四〇〇円(給料手当)

c 四〇万五六〇〇円(a-b-320,000)

イ 上記の売上げ及び給料手当の額は、A税理士が、原告X1から依頼を受け、同原告の提供した帳票類等の原始記録に基づいて作成した(甲二一)上記各月の試算表(損益計算書。甲一〇の二・四・六)に記載された金額であり、上記原始記録そのものは証拠として本訴に提出されていないが、上記試算表は、その作成経緯に照らし信用性がないとはいえず、被告らから信用性を疑うべき具体的根拠の指摘もない。

③ 症状固定日までの原告X2の休業損害

ア 営業再開までの所得

(ア) 平成二一年一二月

甲一七号証の一・二によると、平成二一年一二月の原告X2の売上げは二九万九六〇〇円、給料賃金は七万七六〇〇円であり、前者から後者を差し引いた残額二二万二〇〇〇円から、原告X1に支払うべき三二万円を控除すると、マイナス九万八〇〇〇円となる(甲一七号証の二の信用性を疑うべき具体的根拠はない。)。なお、甲一九号証には、本件事故後、毎月、上記三二万円の全部又は一部が未払であるとの記載があるが、そうだとしても、所得の計算上は、毎月経費として三二万円が発生しているものとして計算するのが相当である。

(イ) 平成二二年一月及び同年二月

この期間、売上げ及び給料賃金の発生はなく(甲一四の二)、原告X1に支払うべき一か月三二万円の二か月分、計六四万円が事業経費として発生した。

(ウ) したがって、本件事故の日から平成二二年二月二八日までの間の原告X2の所得は、マイナス七三万八〇〇〇円である。

イ 営業再開から症状固定日までの間の所得

(ア) 甲一四号証の一・二によれば、平成二二年三月上旬の本件理容店営業再開から症状固定日までの間の原告X2の各月毎の売上げ、給料賃金(経費)は、後記aないしcの各(a)、(b)記載のとおりであり、(a)から(b)を控除し、さらに原告X1に支払った各月三二万円(ただし、平成二二年五月については三二万円の三一分の二四に相当する二四万七七四一円)を控除した残額(所得)は、各(c)記載のとおりとなり、その所得の合計は、マイナス二九万六二五七円である。

a 平成二二年三月

(a) 九万七八〇〇円(売上げ)

(b) 一万円(給料賃金)

(c) -二三万二二〇〇円(a-b-320,000)

b 平成二二年四月

(a) 三〇万四〇〇〇円(売上げ)

(b) 一万五〇〇〇円(給料賃金)

(c) -三万一〇〇〇円(a-b-320,000)

c 平成二二年五月(二四日まで)

(a) 二四万五六五一円(売上げ)

同月の売上げ三一万七三〇〇円の三一分の二四相当額

(b) 三万〇九六七円(給料賃金当)

同月の給料賃金四万円の三一分の二四相当額

(c) -三万三〇五七円(a-b-247,741)

(イ) 上記(ア)の各月の売上げ及び給料賃金は、原告X1作成の報告書別紙(甲一四の二)記載の金額であり、直接の裏付けとなる原始記録は提出されていないが、上記別紙は、税理士作成の平成二二年分の所得税確定申告書付属の収支内訳書(一般用)(甲一三)と整合するから、信用性がある。

ウ 休業損害の額

本件事故の日の属する月の初日である平成二一年一二月一日(前記のとおり所得計算において同月分の経費全額を用いた関係上、同月一日ないし同月六日の収入も計算に含める。)から症状固定日の平成二二年五月二四日までの一七五日間における原告X2のうべかりし所得は、二三四万九九〇〇円(一三、四二八×一七五)であるのに対し、上記期間における同原告の所得は、マイナス一〇三万四二五七円(-(738,000+296,257))であるから、同原告の減収(休業損害)は、三三八万四一五七円と認めるのが相当である。

④ 症状固定後の損害

原告X2は、休業損害として、平成二三年六月までの減収を主張するが、弁論の全趣旨によれば、損害保険料率算出機構が原告X2の後遺障害認定をした事実はないことが認められること、骨折部位が完全に癒合していないことを認めるべき証拠はなく、症状固定時において、左手母指にはほとんど関節機能障害がないこと、仮に、症状固定後相当期間に亘って売上げが減少したとしても、本件事故による受傷(及び後遺障害)がその唯一の原因であることの証明はないことなどにかんがみると、症状固定後に本件事故と相当因果関係のある休業損害が発生したものと認め、さらにその具体的損害額を認定することは困難である。ただし、原告X2の職業からして、症状固定時から一定期間、左手母指のしびれ等が仕事の能率に影響し、減収につながった可能性は否定できないから、この点を慰謝料の増額事由として考慮する。

(3)  慰謝料

傷害の部位、程度、症状固定時までの入通院期間及び上記増額事由等を総合考慮し、一六五万円をもって相当とする。

(4)  損害てん補

前記(1)ないし(3)の損害合計五〇八万九六五七円から既払金八一万二〇〇〇円(乙四、弁論の全趣旨)を控除すると、残額は、四二七万七六五七円となる。

(5)  弁護士費用

事案の内容、訴訟の経過及び認容額等の諸般の事情を総合し、四二万円をもって本件事故と相当因果関係のある弁護士費用と認める。

四  結論

以上の次第で、原告X2の本訴請求は、被告ら各自に対し、四六九万七六五七円及びこれに対する平成二一年一二月七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告X2のその余の請求及び原告X1の本訴請求はいずれも理由がない。なお、本件においては、原告X2は当初からの原告であること及び予備的請求は実質的には原告X2の請求の拡張に過ぎないなどの事情にかんがみると、主観的予備的併合を認めても関係者の地位を不安定にするなどの弊害のおそれはないから、予備的請求に係る訴えは適法と解すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤明)

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