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京都地方裁判所 平成23年(ワ)1053号 判決 2012年4月25日

京都府<以下省略>

原告

X1(以下「原告X1」という。)

同所

X2(以下「原告X2」という。)

原告ら訴訟代理人弁護士

小川顕彰

東京都港区<以下省略>

被告

株式会社Y1

(以下「被告会社」という。)

同代表者代表取締役

Y4

東京都港区<以下省略>

被告

Y2投資事業有限責任組合

(以下「被告組合」という。)

同代表者無限責任組合員

株式会社Y1

同代表者代表取締役

Y4

千葉県<以下省略>

被告

a投資事業組合業務執行組合員こと

Y3(以下「被告Y3」という。)

東京都<以下省略>

被告

Y4(以下「被告Y4」という。)

仙台市<以下省略>

被告

Y5(以下「被告Y5」という。)

東京都<以下省略>

被告

Y6(以下「被告Y6」という。)

被告ら訴訟代理人弁護士

久万知良

主文

1  被告らは,原告X1に対し,連帯して,3170万円及びこれに対する平成22年9月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  被告らは,原告X2に対し,連帯して,820万円及びこれに対する平成22年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

主文同旨

第2事案の概要

本件は,被告組合との間でいわゆる集団投資スキーム持分を対象とする匿名組合契約を締結した原告らが,被告らが組織的に行った違法な勧誘により上記契約を締結させられたなどとして,被告組合,被告会社及び上記契約に基づく送金先口座名義人である被告Y3に対しては民法719条に基づき,被告会社の役員である被告Y4,被告Y5及び被告Y6に対しては民法719条又は会社法429条に基づき,原告らが被告組合に対して支払った金額及び弁護士費用相当額並びに各原告の最終送金日の翌日以降の民法所定の遅延損害金の賠償を求める事案である。

1  前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)

(1)  当事者等

ア 原告X1と原告X2は夫婦であり,いずれも一般消費者である。

イ 被告会社は,金融商品取引法63条の定める適格機関投資家等特例業務に関する届出をしているものであり,登記簿上,経営コンサルティング,投資事業組合財産の持分の募集及び販売を業とする株式会社である。

ウ 被告Y3は,原告らからの後記(2)の各契約に基づく総額3640万円の振込入金口座の名義人で,a投資事業組合業務執行組合員との肩書きを付している。被告Y3は,金融商品取引法63条の定める適格機関投資家等特例業務に関する届出をしていない。

エ 被告組合は,韓国国内上場企業に対する有価証券への投資事業等を行うものであり,原告らとの間で後記(2)の各契約を締結した者である。

被告組合の無限責任組合員は被告会社である。

オ 被告Y4は,被告会社の代表取締役であり,被告Y6及び被告Y5は,後記(2)の各契約当時,被告会社の取締役であった者である。

(2)  組合契約の締結

ア 平成22年8月30日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数80口,出資金額800万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約1」という。)。

また,同日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数20口,出資金額200万円の内容で,匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約2」という。)。

平成22年9月2日,原告X1は,本件組合契約1及び同2に基づいて,100口分1000万円を,下記の口座(以下「本件口座」という。)に振込送金した。

三井住友銀行浜松町支店 普通預金

口座番号 <省略>

「a投資事業組合業務執行組合員Y3」名義

イ 平成22年9月3日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数100口,出資金額1000万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約3」という。)。

また,同日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数50口,出資金額500万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約4」という。)。

平成22年9月6日,原告X1は,本件組合契約3及び同4に基づいて,150口分1500万円を本件口座に振込送金した。

ウ 平成22年9月9日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数30口,出資金額300万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約5」という。)。

本件組合契約5に先立ち,平成22年9月8日,原告X1は,本件組合契約5の代金として,300万円を本件口座に振込送金した。

エ 平成22年9月9日,原告X2は,被告組合との間で,出資口数30口,出資金額300万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約6」という。)。

また,同日,原告X2は,被告組合との間で,出資口数30口,出資金額300万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約7」という。)。

本件組合契約6及び同7に先立ち,平成22年9月8日,原告X2は,本件組合契約6及び同7の代金として,600万円を本件口座に振込送金した。

オ 平成22年9月14日,原告X2は,被告組合との間で,出資口数15口,出資金額150万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約8」という。)。

本件組合契約8に先立ち,平成22年9月13日,原告X2は,本件組合契約8の代金として,150万円を本件口座に振込送金した。

カ 平成22年9月18日,原告X1は,被告組合との間で,出資口数9口,出資金額90万円を内容とする匿名組合契約を締結した(以下「本件組合契約9」という。本件組合契約1ないし同9を併せて,以下「本件各組合契約」という。)。

平成22年9月22日,原告X1は,本件組合契約9に基づいて,9口分90万円を本件口座に振込送金した。

2  争点及び当事者の主張

本件の主な争点は,本件各組合契約の勧誘等に関し被告らに不法行為が成立するかであり,争点に対する当事者の主張は以下のとおりである。

(原告らの主張)

(1) 原告らが本件各組合契約の締結に至った事実経過は以下のとおりである。

ア 平成22年8月27日,被告会社から原告X1宛にダイレクトメールが送付された。このダイレクトメール送付と前後して,原告X1宛に何度も「Y1社から書類は届いていませんか。必死で探しているのですが。」という電話がされるようになった。

b社のAと名乗る者は,原告X2に対し,「Y1社という会社を知らないか。」「Y1社のファンドはとても優良だ。」「将来的に,値段が5倍10倍,ゆくゆくは15倍にもなる。」という話をしたが,原告X2は「直接Y1社に話を聞く。」と言って,適当に話を切り上げた。

イ b社以外の者からも原告X1宛に執拗な勧誘の電話がかかってきたことから,原告X2は,同月28日,被告会社のフリーダイヤル宛に電話をした。

原告X2の電話対応をしたのはBという人物であり,原告X2が「Y1社のファンドが5倍10倍になるとよく電話がかかってくるのですが,どういうことですか。」と尋ねると,Bは「10倍なら安すぎるくらいです。」と返答をした。

原告X2はこの話を聞き,被告会社の募集しているファンドは将来値上がりが確実なのだと誤信した。

そして,Bに代わってC部長という人物が電話口に出てきて,原告X2に対して「ちょうど良いときに電話をしてきてくれた。限定49人のうち残りが少ないので,口数を仮押さえしておきましょう。送付した封筒の中に申込用紙があるので,とりあえず50口と書いて送って下さい。後で増やしても減らしてもいいですよ。100口までは大丈夫です。」と言った。

ウ 原告X2がC部長との電話を切ると,b社のAからタイミング良く電話があり,Aは原告X2に対して「何口取れますか。」と尋ねた。原告X2がAに対して「100口あるらしい。」と回答すると,Aは原告X2に対して「本当は100口全部がほしいけれども,80口はどうしてもほしい。」と言い,原告X2に対して80口分を購入するよう勧誘した。そこで,原告X2は,80口はAに譲るため,20口は原告X1のためにと思い,原告X1と相談のうえ,100口を申し込むことにした。

エ これに対しAは,b社の顧客であるDが喜んでいる,すぐにでもお礼をしたいと言っている等と言い,翌日には,Aの顧客であるDという男性から,「このたびは,Y2を譲ってもらえるということで,家内が大変喜んでおります。」「●●●様にご迷惑をかけてはいけないので,b社にすぐにお金を預けておきます。」という内容の電話があった。

原告X2は,Dとの上記電話が終わった後に,b社のAに電話をして,「Y2に振り込むお金が大金だから立て替えられない。」と伝えると,Aは,「9月6日には,D夫妻と譲渡証明書を作成するための弁護士とガードマンを連れてお金を持っていく。」と言った。

オ 同年8月30日には,C部長から電話があり,「これは素晴らしいものだから,人に譲らずに持っておいた方がよいですよ。」と言われた。

カ 原告X1及び原告X2は,上記の経緯から,被告会社のファンドが値上がり確実で,しかも,原告X1が立て替えた金銭についても,数日後にはb社のAを介して戻ってくると誤信し,本件組合契約1及び同2を締結した。

原告X2は,Aと同年9月9日に京都で会うとのアポイントメントをとったが,同日に原告X2がAに電話をすると,「明日の10日でしたよね。」と言われ,結局,同年9月9日にAと会うことはできなかった。

キ また,同年8月27日ころからは,b社のA以外にも,cセンターのEと名乗る人物から,原告X1宛に頻繁に電話がかかってくるようになった。Eは,「近畿地方の未公開株や社債等の販売で迷惑を被っている人の調査をしている,何かあれば相談に乗る。」等と言ったため,その時点で被告会社の話を聞いていた原告X2は,Eに対して被告会社の話をした。

すると,Eは「調査する。」と返答し,その後,「ほかのところはだめだけれども,Y2は良い。」「次にそういう話があれば,財力のある客が2人,FとGという知り合いがいるから,一度聞いておいてほしい。」等と言った。

ク そこで,原告X2が,Eとの電話を切った後にC部長宛に電話をしたところ,C部長は,原告X2に対し,「●●●さんは,きっちりしてくれているから,特別に部長枠があるからそれを回します。」「何口必要ですか。」と原告X1を優遇する旨の発言をした。そこで,原告X2は,Eに電話して,まだ被告会社のファンドが入手できると伝えたところ,Eは「100口と50口の合計150口がほしい。」「すぐにお金を持って行きます。」と言った。

その後,Fからも電話があり,「世界を股にかけて貿易の仕事をしている。Y1を買える●●●さんがうらやましい。焼きもちを焼きます。譲ってくれるとはありがたい。」等と言った。また,名古屋にいるというGからは,「60を過ぎた母親がいて,株でむちゃくちゃ損をして体調を壊しており,母が電話に出られません。Y2を譲ってくれる●●●さんのことを聞き,本当に感謝しています。Y2が手に入れば母も元気になると思います。」等と言った。

原告X1は,このような経緯で,本件組合契約3及び同4を締結した。

ケ 同年9月8日午前,Gは電話で原告X2に対し,「ありがとうございました。母親が体調を崩していたけれども,Y1の債権を確保できたことで元気を取り戻すことができました。」「あと30口あると,もっと元気になれるのですが。」「お金はもうEに預けてありますから。」とさらに30口の勧誘をした。

原告X1及び原告X2は,このような経緯で,本件組合契約5ないし同7を締結した。

コ 同年9月13日,C部長は電話で,「●●●様は,前倒しで払ってくれるから,特別枠を優先的に回しましょう。」「部長枠はなくなったけれども取締役枠が15口あります。」と言い,さらに原告X1及び原告X2に対して出資の勧誘をした。原告X2は,被告会社の特別の信頼を得ており,一般の人とは異なって優遇してもらえると思い,本件組合契約8を締結した。

サ 同年9月18日ころ,Fは電話で原告X2に対し,「あと8口か9口,何とかなりませんか。」とさらなる投資を勧めた。そこで,原告X2が被告会社に確認をすると,被告会社従業員から「9口と言わず10口残っている。」と言われたため,原告X2はFに対して「あと8口か9口あるらしいですよ。」と伝えると,Fは,「そうでしょう。私が●●●の親戚だと名乗ってY1に電話をしたら,まだあると言っていましたよ。」と言った。

そこで,原告X1は本件組合契約9を締結した。

(2) 被告会社の行う事業は,匿名組合契約の形式により,他者から金銭等の出資,拠出を集め,当該金銭等を用いて何らかの事業・投資を行い,当該事業,投資から生じる収益等を出資者に分配するしくみである「集団投資スキーム」(以下「ファンド」という。)の持分の販売,勧誘行為を行う第二種金融商品取引業である。

ファンドの持分の自己募集や販売,勧誘を行う場合には,第二種金融商品取引業の登録が原則として必要であり,例外的に,1名以上の適格機関投資家かつ49名以下の一般の投資家に勧誘する「少人数科募」については,適格機関投資家等特例業務の届出で足りるとされている。

しかし,被告会社が行っていたファンドの私募は50名を超えて勧誘されたもので上記届出では足りないうえ,金融庁が被告会社宛に警告書を発出していることからも明らかなように,被告会社は無登録で第二種金融商品取引業を行っていた。

無登録で金融商品取引業を行った者には刑事罰が科されることや改正後の金融商品取引法において無登録で金融商品取引業を行う者との取引は無効になるとの規定が設けられた趣旨からすれば,明確に金融商品取引法に違反した被告らの行為には,その制度設計自体からして不法行為が成立する。

(3) また,被告らは,上記の本件各組合契約締結に至る経緯のとおり,「A」「G」「F」等と名乗る者らと共謀して,被告組合が募集するファンドが有望な投資であるかのように告げ,将来償還される額について「10倍なら安すぎる位です。」などとして,必ず元本以上の金額が返ってくる旨の断定的判断を提供し,また,「数倍の値段で買い取る。」等の虚偽の事実を告げて金銭を交付させており,組織的に原告らを欺罔しファンドへの出資名目で金銭を詐取していたことは明白である。

(4) 被告会社及び被告組合は,上記のとおり組織的に違法な本件各組合契約の勧誘をしたものであり,不法行為責任を負う。

また,被告Y4,被告Y6及び被告Y5は,被告会社の取締役として,各種法令に違反することがないように被告会社を組織・運営する任務を負っていたにもかかわらず,組織的に,金融商品取引法等に違反する行為を行い,出資証券を数倍で買い取る者が存在するかのように装い,匿名組合契約締結に藉口して金銭を出捐させるために被告会社を組織運営していたものであり,同人らが企画,立案して違法行為を実行していたことが明らかであるだけでなく,同人らが上記任務を故意に懈怠し,原告らに損害を与えたことも明らかである。

さらに,被告Y3は,a投資事業組合業務執行組合員という肩書の銀行口座を開設しているところ,被告会社から本件口座への入金指示がされていること及び被告Y3が本件口座を開設した結果,被告会社の違法行為により原告らは本件口座に入金する方法によって損害を生じさせられたものであり,被告Y3の行為は,被告会社の不法行為に欠くことのできないものであったことからして,被告Y3が他の被告らと意思を通じて本件の違法な事業を行っていることは明白であり,被告Y3は,他の被告らとの共同不法行為者として,原告らの受けた損害を賠償する責任を負う。

(被告らの主張)

本件各組合契約の締結及びそれに基づく送金があったことは認めるが,被告会社らは適法に業務を遂行してきた善良な業者であり,被告らが行ってきたのは決して詐欺商法ではない。

被告会社は原告に対し,振込前に重要事項説明書,契約書を送付して重要事項及び契約内容を説明し,リスク説明などもしている。原告らはそのことを承知の上で本件口座へ振込をしたものである。

第3争点に対する判断

1  上記前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

(1)  被告組合及び被告会社は,金融商品取引法29条に基づく金融商品取引業の登録をしていない。

被告会社は,被告組合の無限責任組合員かつ業務執行役であり,金融商品取引法63条の定める適格機関投資家等特例業務に関する届出をしている。(甲2,甲14,甲17の1,調査嘱託)

(2)  原告らに対して送付された被告組合の内容を説明するパンフレットの末尾には,被告会社を発行者とするような記載がある。(甲4)

(3)  本件各組合契約は,出資金を1口10万円とするもので,原告らは被告組合の事業に出資し,被告組合は原告らに対し,当該事業から生じた損益を分配することを内容としていた。ここでいう事業とは,契約期間中に被告組合が行う,韓国国内上場企業に対する有価証券等への投資事業又は場合によって各種関連する事業等に対しての投資であり,具体的な投資先の選択は被告組合の判断によるとされていた。(甲5,甲9(いずれも枝番号を含む。))

(4)  本件口座の名義は「a投資事業組合業務執行組合員Y3」であり,当該口座には,平成22年8月18日から平成22年11月4日までの間,原告らのほかに123名の者から,1回あたり10万円以上で10万円を単位とする振込がされた。(甲6,甲15)

(5)  金融庁は,平成23年2月16日付けで,被告会社が金融商品取引業に該当する行為を行っていると認めたため直ちに当該行為を取り止めるよう求める旨の警告書を発出し,同警告書は,同年2月17日に被告会社に到達した。(甲14,調査嘱託)

(6)  平成23年10月20日,東京都は被告会社及び被告組合に対して,実際には確実でないにも関わらず,「年4%の配当」を約束するかのような誇大な広告で,通信販売により投資を募っていたとして,特定商取引に関する法律15条1項に基づき,3か月間業務の一部を停止することを命じた。(甲17の1)

2  上記1(1)及び(2)の事実によれば,被告組合と被告会社とは一体として本件各組合契約の締結に関与していたことが認められ,同(3)ないし(6)によれば,被告組合及び被告会社の行った本件各組合契約の勧誘及び締結は,金融商品取引法28条2項2号,2条2項5号に定める第二種金融商品取引業に該当する業務の一環であったといえる。

同法29条は,金融商品取引業を行うためには内閣総理大臣の登録を受けることを要すると定め,同法63条1項1号及び同法施行令17条の12第2項は,例外的に,1人以上の適格機関投資家かつ49人以下の一般投資家を相手とする私募については上記登録義務は課されず,適格機関投資家等特例業務の届出をすれば足りると定めている。

上記1(4)の事実によれば,本件口座はその名義からして被告組合の事業に関する金銭を振り込むための口座であると推認されること,その口座に123名の者から本件各組合契約の出資金と同様の口単位で振込がされていること,本件口座への振込人の名義,人数やその出資金額からして,上記振込人の大部分が適格機関投資家ではなく一般投資家であると推認されることからすれば,被告組合及び被告会社が行っていた事業は,適格機関投資家等特例業務の届出で足りる取引であるとはいえず,被告組合及び被告会社がした業務は同法29条に違反するものであるといえる。

そして,平成23年法律第49号による改正後の同法171条の2によって,無登録業者が売り付けた未公開有価証券にかかる売買契約は原則として無効とされたものであるが,その趣旨は,近年,高齢者等が無登録業者から未公開株等を不当な高値で売り付けられるなどといった事例が多発していることを踏まえて,投資対象の価値に関する情報が不十分で投資者が適切な投資判断ができないものにつき,不当な利益を得るおそれがある行為を防止することにあるところ,上記改正の背景や趣旨からすれば,本件各組合契約締結当時の同契約においてもその趣旨は同様にあてはまること,上記1(5)及び(6)の事実に加え,その他本件の全ての証拠を検討しても,本件各組合契約が無登録業者によってされてもなおその適正が確保されていることを窺わせるに足りる事情がないことにかんがみると,被告組合及び被告会社がした本件各組合契約の勧誘及び締結は,原告らに対する不法行為を構成するといえる。

また,被告Y4,同Y5,同Y6は,被告会社の代表取締役又は取締役として,法令を遵守して適正に業務を行い又はこれを監督する任務を負っているものであるが,本件各組合契約締結後の事情である上記1(5)及び(6)の事実に加えて,被告らが本件訴訟においてその任務を適正に遂行していたことを具体的に何ら主張しないということも併せ考慮すると,被告Y4,同Y5,同Y6は民法719条又は会社法419条に基づく損害賠償責任を各自負うというべきである。

さらに,被告Y3は本件口座の名義人であり,本件口座の開設をし,本件口座への振込にかかる契約の内容についても知っていたと推認されるところ,被告らはその推認を覆すに足りる事情を何ら主張しないこと,本件口座の開設は上記不法行為をするに際し必要不可欠であるといえることにかんがみると,被告Y3には民法719条に基づく共同不法行為責任が成立するというべきである。

そして,原告らが本件各組合契約に基づいて何らかの利益配当を受けたことを窺わせる証拠はないから,原告らが本件各組合契約に基づいて支払った金額全部が原告らの損害となり,その賠償請求に要する原告ら主張の弁護士費用相当額及び民法所定の遅延損害金と併せて,被告らは連帯して賠償する義務を負うというべきである。

3  結論

以上によれば,原告らの請求はいずれも理由があるから認容する。

(裁判長裁判官 瀧華聡之 裁判官 堀田喜公衣 裁判官梶山太郎は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 瀧華聡之)

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