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京都地方裁判所 平成23年(ワ)1663号 判決 2011年1月21日

原告

被告

Y1株式会社 他1名

主文

一  被告Y1株式会社及び被告Y2は、原告に対し、各自二四六二万九〇四三円及びこれに対する平成二〇年七月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告に対し、四一二一万四五〇二円及びこれに対する平成二〇年七月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告Y1株式会社(以下「被告会社」という。)の従業員である被告Y2(以下「被告Y2」という。)が業務運転する普通乗用自動車と原告が運転する普通自動二輪車が丁字交差点において衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)につき、原告が、被告Y2に対し、民法七〇九条に基づき、被告会社に対し、民法七一五条一項に基づき、各自、原告の被った損害の賠償及びこれに対する上記事故日である平成二〇年七月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等(末尾に証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。以下、特に断らない限り、証拠番号には枝番を含む。)

(1)  当事者等

原告は、昭和五五年○月○日生まれの男性である。

被告会社は、一般乗用旅客自動車運送業等を目的とする株式会社であり、その従業員である被告Y2は、被告会社においてタクシー運転手として勤務していた。

(2)  本件事故の発生

ア 発生日時 平成二〇年七月一日午前七時二一分ころ

イ 発生場所 京都市東山区清閑寺山之内町三四番地一(以下「本件事故現場」という。)

ウ 事故態様 原告が普通自動二輪車(以下「原告車」という。)を運転して本件事故現場の東西に走る片側二車線の国道一号線(以下「本件道路」という。)を直進し、左方の側道(以下「本件側道」という。)と本件道路が交差する丁字交差点(以下「本件交差点」という。)に進入したところ、本件側道から左折進入してきた被告Y2が運転する普通乗用自動車(以下「被告車」という。)と衝突した。(態様につき、弁論の全趣旨)

(3)  原告の受傷及び後遺障害

原告は、左足部挫滅創、左第一ないし四中足骨開放骨折、左母趾伸筋腱断裂、左足背部デグロービング損傷、左足背皮膚欠損の傷病により、京都第一赤十字病院整形外科及び形成外科に平成二〇年七月一日から同年一二月一〇日まで入院(入院期間一六三日間)し、同月一七日から平成二一年九月二日までの間、同病院に通院した(通院実日数五日間)。(甲二ないし一二)

京都第一赤十字病院整形外科のA医師(以下「A医師」という。)は、平成二一年九月二日に、左足及び第一趾ないし五趾の関節機能障害、足背知覚脱失等の傷害が症状固定した旨の後遺障害診断書を作成し、同病院形成外科B医師(以下「B医師」という。)は、左足背の醜状障害が同日症状固定した旨の後遺障害診断書を作成した。(甲一一、一二)

原告は、左足第一指ないし五指の機能障害について、「一足の足指の全部の用を廃したもの」(自賠法施行令二条別表後遺障害別等級九級一五号(以下、後遺障害別等級のみを記載する。)に該当するとともに、左足部の瘢痕について「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」(一四級五号)に該当し、これらの障害を併合した結果、併合九級に当たるとの自賠責後遺障害等級認定を受けた。(甲一三)

(4)  損害のてん補

原告は、本件事故に関し、労働基準監督署から四九八万四一四五円の療養補償給付を受けた。

また、原告は、自賠責保険から六一六万円を受領したほか、被告ら加入の任意保険から一四二万〇四六八円の支払を受けた。

二  争点

(1)  事故態様、責任原因及び過失相殺

(原告の主張)

ア 原告は、原告車を運転して本件道路を普通乗用自動車に後続して直進していたところ、同車が左折の合図を出して減速走行したため、原告も減速して、走行車線の右寄りに走行位置を変更した。その後、先行車が本件交差点を左折して進路前方が開けたことから、本件交差点で軽くアクセルを開いて加速しようとしたところ、被告車が、上記左折車両が左折する間に本件側道から左折を完了しようとし、右方の安全確認をせず、原告車の存在に全く気付かないまま本件交差点に左折進入したため、原告車に衝突した。

被告Y2は、一時停止規制のある本件側道から本件交差点に左折進入するに当たり、東から進行してくる直進車両の有無及びその安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠り漫然と運転走行した過失により、本件事故を惹起した。よって、被告Y2は、民法七〇九条に基づいて原告に生じた損害を賠償すべき責任があり、本件事故は、被告会社の従業員である被告Y2がその業務中に発生させた事故であることから、被告会社は民法七一五条一項に基づき上記損害を賠償すべき責任がある。

イ 被告らの過失相殺の主張は争う。本件事故は、被告Y2が右方確認を怠った結果生じたものであるから、被告Y2の一方的過失に基づく事故である。本件事故態様は、前記のとおりであって、原告が本件交差点に進入するに際し、追越しを図って加速したことはなく、その他の運転走行上の過失もない。

(被告らの主張)

本件事故は、原告の先行車が左折を開始した直後、原告車が第一車線の中央寄りから追越しを図って加速したため、本件側道から左折を開始した被告車と衝突したものである。また、原告は、前方に本件交差点があることや、先行車で前方の状況が陰になって見通しが悪かったのであるから、本件交差点に進入する車両の有無等安全確認をすべきであり、これを怠った過失がある。したがって、原告の過失を斟酌し、過失相殺がなされるべきである。

(2)  損害額

(原告の主張)

ア 原告に生じた損害は以下のとおりである。

(ア) 治療費 四九八万四一四五円

(イ) 入院雑費 二四万四五〇〇円

1日1500円×163日間

(ウ) 通院交通費 四四〇〇円

市バス片道220円×2(往復)×5日間

(エ) 休業損害 三五七万六七二〇円

計算式:75万5837円(原告の3か月前給与)÷71日=1万0645円(1円未満切捨て)

1万0645円×336日(本件事故日から平成21年8月31日までの期間)=357万6720円

(オ) 受傷慰謝料 二八〇万円

(カ) 後遺障害逸失利益 三一三六万九三五〇円

計算式:567万1500円(平成20年賃金センサス・産業計・企業規模計・男性労働者・35歳~39歳平均賃金)×15.803(32年間のライプニッツ係数)×0.35(後遺障害等級併合9級、労働能力喪失率35%)=3136万9350円(1円未満切捨て)

(キ) 後遺障害慰謝料 七〇〇万円

原告の後遺障害は、後遺障害等級併合九級に該当するので、上記金額が相当である。

イ 上記合計 四九九七万九一一五円

ウ 既払金 一二五六万四六一三円

内訳 労災からの療養補償給付 四九八万四一四五円

任意保険 一四二万〇四六八円

自賠責保険 六一六万円

エ 既払金控除後合計 三七四一万四五〇二円

オ 弁護士費用 三八〇万円

カ 損害合計 四一二一万四五〇二円

上記エとオの合計額

(被告らの主張)

争う。

第三当裁判所の判断

一  事故態様、責任原因及び過失相殺(争点(1))について

(1)  前記の争いのない事実等、証拠(甲一九ないし二五、乙一、四、原告本人、被告Y2本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故につき、以下の事実が認められる。

ア 本件事故現場は、別紙交通事故現場見取図(以下「別紙図面」という。)記載のとおり、東西に走る片側二車線道路である国道一号線(西行車線の幅員各約三・三m)の西行車線(本件道路)が、南北に走る本件側道と交差する丁字交差点である本件交差点内にある。本件交差点には信号機の設置はない。本件道路は、交差点内においても中央線が引かれた優先道路であり、西側に向けて二%の下り勾配で、最高速度は時速五〇kmに規制されている。本件側道は、片側一車線道路で、北行車線の幅員は約四・七mで、本件交差点手前には一時停止の標識が設置され、最高速度は時速四〇kmに規制されている。コンクリートブロック壁の存在により、本件道路から左方(本件側道)への見通し、本件側道から右方(本件道路)への見通しともに悪いが、本件側道において別紙図面の②の地点まで出れば、本件側道から右方約三九m先は見通すことができる。

イ 被告Y2は、タクシー乗車客を迎えに行くため、被告車を運転して本件側道を北進し、本件交差点の手前で一時停止規制に従って一時停止し、左折するために右方の状況を窺っていたところ、数台の車両が西方へ通過した後、本件交差点手前に一台の普通乗用自動車(以下「本件先行車」という。)、そこからさらに約二五m後方に一台の普通乗用車が左折合図を出し、減速するのが確認できた。そこで、被告Y2は、これらが本件側道へ左折している間に自らも左折を完了しようとし、上記二台の左折車両以外の右方車両は存在しないものと軽信して、本件先行車の後方から来る二輪車等の確認を十分行わずに停止線から発進し、さらに別紙図面②の地点から加速して左折進入した。一方、原告は、原告車を運転し、本件先行車の後方を追随して本件道路の第一車線を走行し、本件先行車が左折指示器を出し減速したことから、通行路を左寄りからやや右寄りに変更し、時速約四〇kmで走行し、本件先行車が左折したことから視界が開け、本件交差点内で加速するのと同時に、左方の停止線から被告車が出てくるのを認めた。原告は、ハンドル及びブレーキを操作して衝突を回避しようとしたが間に合わず、被告車右前部バンパーと原告車左側面及び原告の左足が衝突した。原告は、上記衝突後もハンドル及びブレーキ操作により転倒することなく進行し、衝突地点から約三四・四m先で停止した。原告車の停止地点手前には、約六・七mの擦過痕が印象された。

(2)  以上の事実関係に照らせば、被告Y2には、一時停止規制のある道路から交差点に左折進入するに当たり、右方から来る直進車両の有無及びその安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠り漫然と運転走行したとの原告主張の過失が優に認められ、被告Y2は、民法七〇九条に基づく責任を負う。また、被告会社は、本件事故が同社の従業員である被告Y2の業務運転中に惹起された事故であることからすれば、民法七一五条に基づく責任がある。

そこで、過失相殺について検討する。

上記の事実関係及び道路状況等に照らせば、被告Y2は、見通しの悪い優先道路に左折進入するにあたり、一時停止規制に従って一時停止したものの、右方からくる左折車両以外の二輪車等の直進の可能性が容易に考えられるのに、上記左折車両以外の直進車両はないものと軽信し、左折車に後続してくる車両の有無及び安全確認が不十分なまま交差点に進行したもので、道路の基本的な優先関係をも考慮すれば、被告Y2の過失は相当に大きいといわざるを得ない。他方、原告も、優先道路を直進していたとはいえ、本件先行車の存在により、本件側道への見通しが悪い状況にあったのであるから、本件交差点に進入するに際し、本件側道から進入してくる車両の動静を十分に確認すべき注意義務があるのに、これを怠った過失が認められる。以上の両者の過失内容に、本件事故態様及び事故現場の状況、道路の基本的な優先関係を総合考慮すれば、原告と被告Y2の過失割合は、原告一、被告Y2・九とするのが相当である。

(3)  この点、被告Y2は、本件先行車の存在により右方を見通すことができなかった旨述べるが、証拠(甲二〇、二二)によれば、被告ら主張のとおりに本件先行車を配置した場合でも、見通しの一部は妨げられるものの、完全に妨げられた状況ではなく、ことに、本件先行車や原告車が走行しており、一所に留まっていたわけでないことを考慮すれば、被告Y2から原告車の存在を視認することができなかったとはいえず、数秒間停止して右方確認をしている際に、右方からの直進二輪車等の存在を考慮に入れて安全確認をしていれば、原告車を認識することができたものと認められる。また、被告Y2は、原告にも速度超過がある旨供述するので、この点について検討するに、衝突後に原告が停止した地点は、衝突地点から約三四・四m先の地点(別紙図面のfile_6.jpgの地点)であり、本件道路が西側に向かって下り勾配二%であることを考慮すれば、衝突時にブレーキをかけたことを前提として、その停止距離から合理的に推測できる原告車の速度は、時速六〇km前後と考えられる。そして、原告の供述及び本件道路上に印象された原告車の擦過痕が、停止地点の手前にのみ約六・七mの長さで印象された事実に照らせば、原告は、転倒回避のために、衝突直後に急ブレーキをかけていなかったものと認められるから、衝突前の原告車の速度は、上記に推測したよりも低速であったと考えられる。以上のほか、被告Y2の供述によれば、同人の感覚としても原告車の速度は時速五〇ないし六〇kmというものであったことも考慮すれば、少なくとも、原告車が規制速度である時速五〇kmを一五km以上超過する時速六五km以上の速度で走行していたと認めることはできず、原告車の速度超過の点を著しい過失として評価することはできず、上記に認定した過失割合を左右しない。なお、原告が本件先行車の存在により左方見通しが悪かったにもかかわらず、左方に十分な注意を払わなかったとの点については、本件道路は優先道路(甲一九ないし二一)であり、道路の基本的な優先関係、優先道路を走行している際には見通しの悪い交差点における徐行義務はないこと、及び被告Y2の上記過失に鑑みれば、この過失は、上記に認定した過失割合に織り込み済みであり、上記に認定した過失割合を左右しない。

二  損害額(争点(2))について

(1)  まず、前提として、前記争いのない事実等、証拠(甲二ないし一二、二五、乙三、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告の治療経過及び後遺障害について以下の事実が認められる。

ア 原告は、本件事故により、左足が被告車右前部バンパーに挟まり、これにより左第一ないし第四中足骨開放骨折、左足背部デグロービング損傷、左長母趾伸筋腱断裂等の傷害を負い、京都第一赤十字病院に緊急搬送され、それぞれ、観血的骨折骨接合術、デブリドマン、腱縫合術の臨時手術が行われた。

平成二〇年七月三一日時点では、受傷日から約三か月間の加療が必要となる見込みとされていた。

イ 創部に対して徹底的な洗浄、デブリドマンが行われたが、創部からアイテル(膿)様の汚染があり、同年九月一九日に創部浸出液の培養検査が行われたところ、後日、MRSA感染が認められた。

ウ 同月二四日、形成外科を受診し、肉芽の色調は良好であるが、未だ一部骨露出があることが確認され、今後、肉芽増殖させつつ植皮を行っていく方針となった。創部からMRSAは検出されているものの「activeな」感染徴候は認められなかった。

エ 同年一〇月九日、左第一、二及び四中足骨の骨癒合は得られておらず、第三中足骨が腐骨化し、骨髄炎の疑いがあったため、同月一六日に骨掻爬、切除の観血的手術が行われた。今後も腐骨に対してデブリドマンを行っていく方針となった。

オ 同年一一月一九日、同病院整形外科から形成外科に転科したが、同月二八日時点においても、創部の治癒は進んでいなかった。

原告は、創部が治癒しないままに退院することとなり、同年一二月一〇日、両松葉杖をして退院した。

カ 平成二一年一月二一日の診察時には、改善が見られるものの、未だ創部の浸出及び第一、二趾周囲に腫脹が残存しており、圧迫包帯による処置が続行された。

キ 同年四月二二日、創部の治癒が確認された。このころには、アーチサポート装着下での歩行は可能となったものの、足底接地時の疼痛、足趾の背側拘縮が残存し、経過観察が行われた。

ク 同年九月二日、同病院整形外科、形成外科ともに、症状固定の診断をした。

同病院整形外科A医師は、以下の内容の後遺障害診断書を作成した。(甲一二)

「傷病名 左足部挫滅創、左第一・二・三・四中足骨開放骨折、左母趾伸筋腱断裂、デグロービング損傷

自覚症状 片脚立ち、正座、爪先立ち困難。自転車、スキー剣道ができない。高所へのものの出し入れ、歩行時の左方向へと寄って行く。左足部の知覚障害。砂利道など傾斜のある地面での歩行困難。

他覚症状等 足背知覚脱失。(左足部の)知覚鈍麻、関節拘縮」

(なお、その他、関節機能障害について、足関節、第一趾ないし第五趾について左右の可動域数値が記載されている。)

また、同病院形成外科B医師により、左足背部に、幅一四cm、長さ一二cmの瘢痕が残った旨の後遺障害診断書が作成された。

ケ 原告は、左足第一指ないし五指の機能障害について、左第一足指の指節間関節及び中足指節間関節並びに左第二ないし第五足指の近位指節間関節及び中足指節間関節のいずれも健側の可動域角度の一/二以下に制限されていることから、「一足の足指の全部の用を廃したもの」として、九級一五号の認定を受けるとともに、左足部の瘢痕について「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」として一四級五号の認定を受け、これらは併合九級相当と評価された。

(2)  原告に生じた損害

ア 治療費 四九八万四一四五円

証拠(甲六ないし一〇、甲一七)によれば、本件事故後から平成二一年九月二日の症状固定時までの間に、少なくとも四九八万四一四五円の治療費相当の損害が発生したと認められる。

ところで、被告らは、原告の長期治療の原因がMRSA感染によるものであることを理由として、平成二一年一月一日以降の治療費、通院交通費、及び休業損害につき責任を負わない旨主張する。確かに、前記(1)で認定した治療経過によれば、MRSA感染の影響で、当初三か月の加療予定であったものが、創部が長期間治癒せず、入院及び通院期間も長期化したことは否めない。しかし、上記の経過からすれば、MRSAの感染源は創部であることが明らかであること、MRSAは常在菌で、上記のような汚染損傷の場合には、感染の危険性は十分にあること、原告は、受傷当時、二七歳であり、特に全身状態に問題はなく、医療機関による重過失により感染が発生あるいは治療の長期化を招いたとの事情も窺えないことからすれば、MRSA感染による治療の長期化についても相当因果関係の範囲内にあるものと認めるのが相当である。

よって、本件事故後から症状固定日までの治療に係る損害について相当因果関係ある損害と認める。したがって、上記治療費四九八万四一四五円を相当因果関係ある損害と認める。

イ 入院雑費 二四万四五〇〇円

一日あたり1500円×163日(入院日数)を相当な損害と認める。

ウ 通院交通費 四四〇〇円

前記争いのない事実等及び甲二五により、440円×2(往復)×通院実日数5日間を相当な損害と認める。

エ 休業損害 二七八万九八一五円

前記(1)の事実からすれば、本件の受傷のため、平成二〇年一二月一〇日までの入院を余儀なくされ、同日の退院時には両松葉杖歩行の状態で、平成二一年一月二一日時点においても未だ創部からの浸出が見られ、左中足部の腫脹が見られたとの症状経過を考慮すれば、本件事故日から平成二一年一月末までの間(二一五日間)は全く就労が不可能であったものと認められる。そして、その後、平成二一年四月二二日までの間(八一日間)には、自力歩行が可能となり、創の治癒も確認されていることから、八〇%の労働制限があったものと認める。その後、同年八月三一日までの間(一三一日間)は、残存した障害の内容、程度、求職活動が開始されたことなどを考慮し、四〇%の労働制限を認める。

そして、基礎収入について、原告は、本件事故当時、印刷業を営むショウワドウ・イープレス株式会社(以下「ショウワドウ・イープレス」という。)において就労しており、本件事故前三か月間の給与額は七五万五八三七円(甲一四ないし一六)であったから、一日あたり基礎収入を以下の計算により八三九八円と認める。

計算式:(本給30万2682+付加給45万3155)÷90=8398(1円未満切捨て)

以上により、下記の計算式により、下記金額を休業損害と認めるのが相当である。

計算式:8398円×(215+0.8×81+0.4×131)=278万9815円(1円未満切捨て)

なお、原告は、平成二〇年一二月三一日にショウワドウ・イープレスの倒産により離職しているが、本件事故前に原告に健康上の問題は窺えず、有機溶剤作業主任者の資格を有していることや年齢等を考慮すれば、倒産後の就職の可能性は十分にあったといえるから、休業損害を倒産前に限定すべきとは解されない。

オ 受傷慰謝料 二五〇万円

本件の受傷内容、入通院経過に照らし、左記が相当である。

カ 後遺障害逸失利益 二一三〇万九六四二円

原告は、前記(1)に記載の後遺障害が残存したものと認められ、その障害の内容、程度に照らすと、その労働能力の三五%を就労可能年齢まで喪失したものと認められる。

基礎収入については、平成二〇年賃金センサス・産業計・企業規模計・男性労働者・全年齢平均五五〇万三九〇〇円の七割である三八五万二七三〇円とする。すなわち、原告は、平成三年から事故時まで同一の会社に勤めていたところ、その事故前年の収入が二七〇万三〇七〇円(甲一四の二)であり、三五歳から三九歳男性の平均賃金の収入を得られた蓋然性があるとはいえないが、他方で、同会社は、平成二〇年一二月三一日に倒産に至っており、会社の経営状態により原告の賃金が低額となっていた可能性があることに、前記の原告の資格及び年齢をも考慮すれば、平成二〇年賃金センサス男性全年齢平均五五〇万三九〇〇円の七割程度の収入を得られた蓋然性があるものと見るのが相当である計算式:550万3900円(平成20年賃金センサス・産業計・企業規模計・男性労働者・全年齢平均)×0.7×15.803(32年間のライプニッツ係数)×0.35(後遺障害等級併合9級、労働能力喪失率35%)=2130万9642円(1円未満切捨て)

キ 後遺障害慰謝料 六七〇万円

後遺障害の内容、程度(九級)に照らし、左記金額を相当とする。

ク 上記合計 三八五三万二五〇二円

(3)  過失相殺後の金額

上記(2)クから前記のとおり、原告の過失割合である一割を控除すると、上記の金額となる。

計算式 3853万2502円×(1-0.1)=3467万9251円(1円未満切捨て)

(4)  損害のてん補

争いのない事実等(4)のとおり、原告は、自賠責保険から六一六万円、被告ら加入の任意保険から一四二万〇四六八円の合計七五八万〇四六八円の支払を受けており、これが、前記(3)の損害額(元金)に充当され、二七〇九万八七八三円となる。

また、原告が支払を受けた労災保険の療養補償給付四九八万四一四五円については、その性質に照らし、前記(2)アないしウの各損害にてん補されるところ、その合計額(五二三万三〇四五円)に前記の過失相殺率(九割)を乗じた額(523万3045円×0.9=470万9740円(1円未満切捨て)は上記給付額を下回るから、この額限りで控除されることになる。

よって、損害のてん補後の残額は、二二三八万九〇四三円(一円未満切捨て)となる。

(5)  弁護士費用 二二四万円

本件の損害額及び事案に鑑み、二二四万円を相当な弁護士費用として認める。

(6)  損害合計 二四六二万九〇四三円

上記(4)と(5)の合計額

第四結論

よって、原告の請求は、被告友常及び被告会社に対し、各自二四六二万九〇四三円及びこれに対する不法行為日である平成二〇年七月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 中武由紀)

交通事故現場見取図<省略>

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