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京都地方裁判所 平成25年(ワ)1803号 判決 2015年1月07日

原告

被告

主文

一  被告は、原告に対し、九一一万七六三三円、及び、これに対する平成二二年一一月一三日から支払済みまで年五%の割合による金員、を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告の、その余を被告の負担とする。

四  この判決の一項は、仮に執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

被告は、原告に対し、三二七二万一一一一円、及び、これに対する平成二二年一一月一三日から支払済みまで年五%の割合による金員、を支払え。

第二争いのない事実

被告が運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)は、平成二二年一一月一三日午後三時頃、京都市京都市山科区御陵原西町一二番地三で、原告が運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)に追突し、Aが運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)に玉突した(以下「本件事故」という。)。

第三当事者の主張の要旨

一  原告

(1)  原告は、被告に対し、本件事故について、自動車損害賠償保障法三条又は民法七〇九条に基づき、次の損害の賠償を求める(附帯請求は、不法行為の日から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払請求である。)。

ア 治療関係費 三一万二〇六五円(甲六、七)

イ 入院雑費 一七万四四〇〇円(=一六〇〇円/日×一〇九日〔後記(2)ア〕)

ウ 入通院慰藉料 二二六万〇〇〇〇円(後記(2)ア)

エ 後遺障害慰藉料 二七〇〇万〇〇〇〇円(後記(2)イ)

オ 弁護士費用 二九七万四六四六円

(2)ア  原告(昭和一〇年○月○日生)は、本件事故(平成二二年一一月一三日)により、a病院に、非骨性頚髄損傷の傷病名で、平成二二年一一月一三日~平成二三年三月二日(一〇九日間)、入院し、b診療所に、同年三月五日~五月二六日(実二七日)、通院した(甲二)。

イ  原告は、平成二三年五月二六日、自覚症状(右上肢・下肢の脱力、感覚障害、歩行不能、右上肢・左下肢・後頚部~頭にかけての疼痛)、他覚症状および検査結果(左下肢MMT〔徒手筋力テスト〕一―感覚障害はときどきおこる電撃痛、右上肢MMT二―感覚はほぼ消失・温痛覚なし・触圧覚低下、握力右六kg左四〇kg、平成二二年一一月一三日の頚椎MRI検査でC四/五・五/六に狭窄あり・C六―七レベルで頚髄内T二強調像での高信号域あり・あきらかな骨傷なし)を遺して症状固定したと診断された(甲二)。

左下肢の症状も、右上肢の症状も、それぞれ「せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」(五級の一の二〔平成一五年八月八日基発〇八〇八〇〇二別添一神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準第二―二(2)エ〕)に該当し、併合二級に相当する。又は、併せて「身体性機能障害のため、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもの」(二級の二の二〔同第二―一(1)イ(ウ)b〕)に該当する。

二  被告

(1)  後遺障害非該当

本件事故による損傷は、原告が運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)も、Aが運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)も、軽微であった(乙九、一〇)。

原告の本件事故後の頚部MRI検査で、脊髄損傷を示唆する髄内の明らかな輝度変化や脊髄・神経痕への圧迫所見は認められず、神経学的所見(MMT〔徒手筋力テスト〕)も、知覚障害も、経時的に増悪した。他方、原告は、本件事故前、左下肢機能障害と診断されていた。そして、原告主張の後遺症は、自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断された(甲五、八~一〇〔枝番含〕)。

なお、頚髄損傷の機能レベルがC六の場合の残存運動機能は手首の伸展、C七の場合は肘の伸展・前腕の回内・指の伸展であるから(乙八)、原告主張のC六―七レベルの頚髄損傷により、肩まで運動障害が残ることはありえない。

よって、原告主張の後遺症は、後遺障害慰藉料を発生させる障害ではない。

(2)  素因減額

原告は、本件事故前、クリッペル・トレノー[ネイ]症候群のため左右の脚長差があり、腰椎脊柱管狭窄症・腰部脊柱管狭窄症により腰椎(L三―五)椎弓切除形成・左腰椎(L四)神経痕ブロックを受け、「一下肢の機能の著しい障害」(身体障害者福祉法施行規則別表五 四級四号)に該当するものと診断されていた。また、頚椎(C四/五・五/六)の狭窄があった(甲三、八、乙五p一・二、七)。

よって、このような原告の既往は、八割程度素因減額するべきである。

(3)  過失相殺

原告が座席ベルトを装着していれば、原告が医師に「事故で首と胸がどーんとあたってもおたんや」と説明すること(乙五p一四)等はありえない。

よって、座席ベルトを装着しなかった原告の過失は、少なくとも一割考慮するべきである。

(4)  損益相殺 ▲四六万二八一一円(乙四)

理由

第一後遺障害該当性・程度、素因減額

一  当裁判所の判断

(1)  左下肢(腰椎)の後遺症の後遺障害該当性・程度について

確かに、原告は、本件事故直後、左下肢の症状増悪を訴えた(後記二(3)ア(ア))。

しかし、左下肢の症状は、本件事故から約一か月後、本件事故前の程度に改善した(後記二(3)ア(オ))。本件事故により、下肢の筋肉・運動を支配する神経に影響があったことを認める画像検査等はない。主治医の所見も、左下肢の症状について、本件事故との因果関係を否定できないという消極的なものにすぎない(後記二(3)ア(ク))。

そもそも、原告は、先天性血管病変のため下肢短縮の症状が発生していたほどであったし(後記二(1)ア)、本件事故前、左下肢の疼痛を訴え、腰椎椎弓切除形成術を受けるほどの脊柱管狭窄症の疾患があり(後記二(1)イ)、本件事故直前も、疼痛・痺れを訴えていた(後記二(1)ウエ)。

また、本件事故から約三か月後には右下肢の痺れが現れたように(後記二(3)ア(ケ)・エ)、下肢(腰椎)の症状には、経時的な増悪が認められる。

したがって、左下肢の後遺症について、本件事故との因果関係は認められない。

(2)  右上肢(頚椎)の後遺症の後遺障害該当性・程度について

確かに、本件事故直後の電子カルテには、MMT(徒手筋力テスト)で右上肢に問題がないとの記載があった(後記二(3)ア(ア))。

しかし、本件事故直後、頚部と四肢の痺れを訴え、当日、右上肢には痺れ残存と訴えていたこと、握力差が著しかったこと(後記二(3)ア(ア))、その後も、右上肢の著しい機能障害の訴えは、一貫していたことから(後記二(3)ア(ウ)(エ)(オ)(キ)・イ(ア)(イ)(ウ))、前記MMTの結果の記載が正確であったと認めるには疑いが残る。また、上肢の筋肉・運動を支配する神経であるC六・七において(後記二(5)ア)、本件事故直後、MRI検査によるT二強調像での高信号域の所見が、主治医により示されたところ(後記二(3)ア(ア))、これは、脊髄挫傷の急性期に認められ得るものである(後記二(5)イ)。そもそも、原告の右上肢について、本件事故前、異常を認める証拠はなく、症状固定時、MMT二(重力がなければ動かせる)・感覚ほぼ消失・温痛覚なし・触圧覚低下・握力六kgであった(後記二(3)エ)。

なお、車両の損傷の程度と人体への影響との関係は、複雑な要素(車両重量・接触面積・衝突部位の可塑性・車両の緩衝機能・防御意識・頑健さ等)によって影響されるから、単純に車両の損傷の程度が小さいから人体への影響も小さいとは評価できない。

したがって、右上肢の後遺症について、本件事故との因果関係を認める。そして、その程度は、一下肢の中等度の単麻痺が認められるものとして、「せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」(七級の三〔平成一五年八月八日基発〇八〇八〇〇二別添一神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準第二―二(2)オ〕)に相当すると評価する。

(3)  素因減額について

本件事故直後、MRI検査で認められた頚椎(C五/六)狭窄は(後記二(3)ア(ア))、その性質からも、約一年半後に圧迫や狭窄が増悪したことからも(後記二(3)エ)、外傷性変化ではなく経年性変化たる素因であったと認められる。また、原告の症状について、原告の先天性血管病変が関連しているとの主治医の所見もある(後記二(3)ア(カ))。

したがって、原告の傷害に基づく治療等と後遺障害は、原告の既往が、易発化・重篤化させたものとして、三〇%の素因減額を認める。

(4)  損害額について

ア 治療関係費 三三万五六三五円

a病院:三〇万一六七五円(甲六、乙一―一~五)

b診療所:二万九三八〇円(甲七、乙二―一~三)

c薬局:四五八〇円(乙三―一~二)。

イ 入院雑費 一六万五〇〇〇円

一五〇〇円/日×一一〇日間(後記(3)ア)=一六万五〇〇〇円

ウ 入通院慰藉料 二〇〇万〇〇〇〇円

入通院期間(後記(3)アイ)を考慮した。

エ 後遺障害慰藉料 一〇〇〇万〇〇〇〇円

後遺障害の程度(前記(2))を考慮した。

オ 素因減額(前記(3)) ▲三〇%

二  前記一の判断のために証拠等により認定した事実

(1)ア  原告(昭和一〇年○月○日生)は、クリッペル・トレノー[ネイ]症候群(先天性血管病変)のため左右の脚長差があった(甲三、乙六p一〇)。

イ  原告は、腰部脊柱管狭窄症と診断され、平成一八年一二月六日、腰椎(L三―五)椎弓切除形成術を受け、腰痛・左下肢痛が軽快したものの、股関節MRI検査で異常所見が認められなかったのに、荷重時の左股関節痛を訴えるようになったため、平成一九年八月二三日、左腰椎(L四)神経根部ブロックを受けたところ、効果が認められた(乙七p五)。

ウ  原告は、平成二一年七月九日、最近立つと腰痛・一〇〇m歩けない、左下肢が痺れる時があると訴え、X線検査で、腰椎(L四/五)の不安定性・辷りありとの所見を示された(乙七p三)。

原告は、平成二二年一月二三日、左下肢痛が一週間前から増強・三〇~五〇m歩くと痛くてそれ以上進めなくなる等と訴えた(乙七p五)。

エ  原告は、平成二二年八月頃、左下肢機能障害(左下肢筋力低下のため一km以上の歩行不能)として、「一下肢の機能の著しい障害」(身体障害者福祉法施行規則別表五 四級四号)に該当するものと判断された(甲三、乙七p一五)。

オ  原告は、平成二二年一〇月、両側脇当て握り付き杖を使用するようになった(甲一四、一七、乙七p一八~一九、原告本人p五)。

(2)ア  原告は、平成二二年一一月一三日、普通乗用自動車を運転して信号待ち停止中、追突され玉突きした本件事故に遭った(甲一七、原告本人)。

イ  原告が運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)は、本件事故により、後トランク部に凹損・右後フェンダとドアに変形・前バンパーに凹損が生じた(乙九)。

Aが運転する普通乗用自動車(〔ナンバー<省略>〕)、は、本件事故により、後バンパーに凹損が生じた(乙一〇)。

(3)ア  原告は、救急搬送され、a病院に、頚髄中心性損傷・頚椎捻挫の傷病名で、平成二二年一一月一三日~平成二三年三月二日(一一〇日間)、入院した(甲六、乙一―一~五、五、六)。

(ア) 平成二二年一一月一三日、気分不良・頚部と四肢の痺れ・右上肢の痺れと違和感と脱力残存・左下肢の脱力悪化と異常感覚増強を訴え(乙五p一~八)、頚椎MRI検査で、頚椎(C六―七)にT二強調像での高信号域・頚椎(C五/六)。狭窄の所見が示され(乙五P二)、MMT(徒手筋力テスト)が、上肢は左右五・下肢は右五左三、握力が三五kg/九kgと電子カルテに記録された(乙五p二)。

(イ) 同年一一月一五日、右胸部に掌大の範囲で疼痛を訴えた(乙五p一〇~一一)。

(ウ) 同年一一月一六日、「事故で首と胸がどーんとあたってもおたんや」「それから胸が痛む」、右上肢の表在感覚軽度鈍麻・深部感覚軽度鈍麻、右後頭部~上肢・手指(特にⅢ・Ⅳ指)に痺れありと訴えた(乙五p一四~一六)。

(エ) 同年一一月一八日、頚椎カラー装着の上での歩行練習について、もともと左下肢がうまく動かないし右手が握れないことにはリハビリができない・痺れもとれないと訴えた(乙五p一九)。

(オ) 同年一二月五日、右手は動くようになってきているが使い物にはならない・左下肢は受傷前と同様まで戻ってきた・リハビリのしすぎで左上肢と右下肢の痛みが強いと訴え、MMTが、右上肢近位~手指一~二・左上肢四~五・右下肢四~五・左下肢二であり、右肩屈曲七〇~八〇度・外転八〇~九〇度程度であった(乙五p三〇~三一)。

(カ) 平成二三年一月五日、おそらく限局する身体各所の痛みは先天性血管病変(クリッペル・トレノーネイ症候群)が関連している・元々のADL(日常生活動作)障害もあり頚髄損傷だけの問題ではないとの所見が示された(乙六P一〇)。

(キ) 同年一月一三日、右上肢を拳上できたり動かせるようになってきたが二〇秒は保持できない、痺れも昨日からなくなってきている、右第三・四指を曲げると首まで痛みが走ると訴えた(乙六P三六)。

(ク) 同年一月二〇日、上肢の症状(右脱力・疼痛・痺れ)については頚椎MRI検査でT二強調像での高信号域があり中心性脊髄損傷に伴うものと考えて治療している・下肢の症状については頚椎由来の症状かどうかは判断が難しいが否定はできないとの所見が示された(乙六p六〇)。

(ケ) 同年二月七日、右側臥位で頚部痛は軽快したが、右下肢が痺れるようになったと訴えた(乙六p一一一~一一二)。

(コ) 同年二月二〇日頃、両側脇当て握り付き杖を固定する等改造した自作装具を使用して歩行するようになった(甲一五―一~五、乙六p一四五・一四九・一五四)。

(サ) 同年二月二八日、床に落ちたものを拾おうと前かがみになったら、右頚部~上肢に電撃痛があったと訴えた(乙六p一七一・一七三)。

イ  原告は、b診療所に、頚髄損傷の傷病名で、平成二三年三月五日~五月二六日(実二六日)、通院し(甲七、乙二―一~三、七)、c薬局で、調剤を受けた(甲七、乙三―一~二)。

(ア) 平成二三年三月八日、右手と左足が使えないのが困る・右手を伸ばすと頸の方まで痛みが走ると訴えた(乙七P二三)。

(イ) 同年四月四日、松葉杖で挑戦してみたら、右上肢に力を入れると右手背部に痛みが走った、自作装具であれば自立していけると訴えた(乙七P四一)。

(ウ) 同年五月一二日、右上肢に力が入らないことがある・肩がだるい・これが一番困っていると訴えた(乙七p六三)。

ウ  原告は、平成二三年五月二六日、自覚症状(右上肢・下肢の脱力、感覚障害、歩行不能、右上肢・左下肢・後頚部~頭にかけての疼痛)、他覚症状および検査結果(左下肢MMT〔徒手筋力テスト〕一―感覚障害はときどきおこる電撃痛、右上肢MMT二―感覚はほぼ消失・温痛覚なし・触圧覚低下、握力右六kg左四〇kg、平成二二年一一月一三日の頚椎MRI検査でC四/五・五/六に狭窄あり・C六―七レベルで頚髄内T二強調像での高信号域あり・あきらかな骨傷なし)を遺して症状固定したと診断された(甲二)。

エ  平成二三年一〇月二〇日、右足首が一か月半ほど前から痛くなってきた等と訴えた(乙七P九三)。

平成二四年二月二三日、一か月前から左手首が痛い・自分では使いすぎだと思っている・ほとんど左手に頼っている・それが一か月ちょっとくらい前からと訴えた(乙七p一〇三)。

平成二四年六月一四日、右下肢も外側の痺れがきつくなっている・左は痺れていたが右は最近・右側頭部の感覚低下が新たに出現と訴え、頚椎MRI検査で、頚椎(C四/五)左優位圧迫所見増悪・頚椎(C五/六)全体的狭窄増悪・頚椎(C六/七)狭窄増悪圧迫軽度との所見が示された(乙七p一〇九~一一〇)。

(4)  原告は、被害者請求において、平成二四年三月二一日、自賠責保険における後遺障害には該当しないものと判断され(甲九)、平成二五年一月一五日、前回回答の通りと判断された(甲一〇)。

(5)ア  支配筋の神経レベルは、肩関節の内転筋および内側回旋筋でC六・七・八、肘関節の屈筋でC五・六、伸筋でC七・八、前腕の外旋筋でC六、内旋筋でC七・八、手関節がC六・七、指がC七・八との専門的知見がある(甲一三)。

頚髄損傷の機能レベルがC六の場合の残存運動機能は、手首の伸展、C七の場合は肘の伸展・前腕の回内・指の伸展との専門的知見がある(乙八)。

イ  MRI検査で、細胞内や間質の水分が増加した状態である脊髄挫傷はT二強調像で高信号を示し、脊髄出血は、急性期にはT二強調像で低信号を示し、慢性期にはT二強調像で軽度高信号を示すとの専門的知見がある(甲一二)。

脊髄損傷のMRI検査による診断において、髄内信号変化には、急性期におけるT二強調像での低信号域(出血を示唆)、慢性期におけるT二強調像での高信号域(脊髄軟化あるいは嚢腫を示唆)が高度損傷の典型的所見であるとの専門的知見がある(乙八)。

第二過失相殺

信号待ち停止中の普通乗用自動車を運転していた原告が追突され右胸部痛を訴えた受傷機転は(前記第一―二(2)ア、(3)ア(イ)(ウ))、座席ベルトを装着していても不合理とは評価できず、「胸が閉まった」等との表現ではなく「胸がどーんとあたって」と表現したことも(前記第一―二(3)ア(ウ))、不自然とは評価できない。

原告は、本件事故直後、頚部・右上肢・両下肢が動かせなくなったため、警察官が原告を助手席に移動させて、警察官が原告の運転していた普通乗用自動車を移動させたと具体的に供述するところ(原告本人p九・四一)、警察官が座席ベルトの取り外した状況について供述しなかったということでは、座席ベルトの不装着の事実を認めるに足りない。

したがって、原告の座席ベルト不装着の過失は認められない。

第三損益相殺(乙四) ▲四六万二八一一円

第四被告に負担させる原告の弁護士費用 八三万〇〇〇〇円

本件事案の性質・認容額等を考慮した。

第五結論

原告の請求は、被告に対し、本件事故について、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害九一一万七六三三円の賠償、及び、これに対する不法行為の日である平成二二年一一月一三日から支払済みまで民法所定年五%の割合による遅延損害金の支払、を求める限度で理由があるから、一部認容し、主文の通り判決する。

(裁判官 永野公規)

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