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京都地方裁判所 平成25年(ワ)29号 判決 2014年10月17日

原告

被告

株式会社Y

主文

一  被告は、原告に対し、五七五万一六六三円及びこれに対する平成二三年三月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、一一七八万三八〇五円及びこれに対する平成二三年三月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、電動自転車で走行中、被告の設置した駐輪場内の自転車用車輪止めに衝突して転倒し、受傷する事故(後記「本件事故」)に遭ったことにつき、上記駐輪場の設置又は保存に瑕疵があったことによるものであると主張して、被告に対し、民法七一七条一項に基づき、損害賠償及びこれに対する本件事故日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。

一  前提事実(以下の事実は当事者間に争いがないか、掲記の証拠により容易に認定できる。

(1)  事故の発生(以下「本件事故」という。)

日時 平成二三年三月二一日午後三時五〇分ころ

場所 京都府宇治市<以下省略> ○○宇治店(以下「○○宇治店」という。)駐車場内

事故態様 原告が、電動自転車に乗り、府道六九号線から○○宇治店駐車場に入場したところ、被告が利用者のため新たに同駐車場南側に設置した駐輪場(以下「本件駐輪場」という。)の自転車用車輪止め(以下「本件車輪止め」という。)に衝突して転倒し、右大腿骨頸部骨折の傷害を負った。

(2)  本件車輪止めの設置状況

本件駐輪場は、○○宇治店の駐車場南側に新築されたテナント用建物の北側にあり、四〇台分の本件車輪止めが設置されている。

本件車輪止めは、自転車の前輪を枠内に入れて駐車する方式のもので、長さ約六五cm、高さ約一八ないし二八cm、幅約七五cmの長方形状で、直径約一〇mmの鉄製フレームで作られており、本件駐輪場に打設された白色コンクリートに直接ボルトで固定する方法で設置されている。

本件駐輪場と○○宇治店やテナント用建物の位置関係、及び本件車輪止めの設置状況は、別紙図面一及び二のとおりである(甲四の一ないし五、甲九の二の添付図面、甲一九の三ないし五、乙一の添付図面、乙八、九)。

本件事故当時、本件車輪止めの設置を示すカラーコーンやカラーポール、本件駐輪場を囲む鉄柵は設置されていなかった。

二  争点

(1)  被告は本件駐輪場の占有者又は所有者か。

(2)  本件事故は本件駐輪場の設置又は保存の瑕疵によるものか。

(3)  本件事故による原告の損害

三  争点に対する当事者の主張

(1)  争点(1)(被告は本件駐輪場の占有者又は所有者か)について

(原告の主張)

ア 本件駐輪場の占有者

被告は、有限会社a(以下「a社」という。)から、テナント用建物建築工事を請け負い、これに付随して、あるいは別途に、a社から、本件駐輪場の設置工事を請け負った。

建築計画概要書(甲九の二)によれば、工事予定期間は、平成二二年一二月一七日から平成二三年三月一二日であったが、本件事故が発生した平成二三年三月二一日に、本件駐輪場設置工事は完了していなかった。

このことは、本件事故に臨場した警察官が、○○宇治店店長や施設周辺の工事関係者等と面接し、本件駐輪場が工事中である旨確認していることや完了検査合格証(検査済証)の交付が平成二三年三月三一日であることによっても裏付けられる。

したがって、本件事故当時、被告は工事施工者として、本件駐輪場を占有していた。

イ 本件駐輪場の所有者

前記のとおり、本件事故当時、本件駐輪場の設置工事は完成しておらず、被告はa社に本件駐輪場を引き渡していなかったから、本件事故当時の本件駐輪場の所有権は被告にあった。

なお、本件駐輪場の敷地の所有者は有限会社b(以下「b社」という。)であるが、本件駐輪場は、下地のコンクリートにボルトで固定されている構造であること、また注文者であるa社が権原により附属させたと考えられることから、当該土地の附合物には当たらない。

(被告の主張)

ア 本件駐輪場の占有者

被告は、b社からテナント用建物の建築と本件駐輪場の設置工事を請け負ったa社から、平成二二年一一月四日、同工事を請け負った。この時点では本件駐輪場に本件車輪止めを設置する予定はなかった。

その後、本件駐輪場の賃借予定者であった株式会社c(以下「c社」という。)から、本件駐輪場が東から西に傾斜しているので、自転車が倒れないよう本件車輪止めを設置して欲しいとの要望があり、同年一二月一日の追加工事契約の際に本件車輪止めを設置することとなった。

被告は、平成二三年三月五日、本件車輪止めの設置工事を完了し、同月一四日、完了検査を受け、同月一五日、c社にテナント用建物と本件駐輪場を引き渡した。

このように、本件事故が発生した平成二三年三月二一日には、本件駐輪場設置工事はすでに完了し、本件駐輪場の賃借人であるc社に引渡済みであるから、本件駐輪場の占有者はc社であり、被告ではない。

イ 本件駐輪場の所有者

本件駐輪場の所有者は、敷地の所有者であるb社である。

(2)  争点(2)(本件事故は本件駐輪場の設置又は保存の瑕疵によるものか)について

(原告の主張)

本件車輪止めは、通行人の通行の障害になりうる長さであり、かつ高さが低く、本件駐輪場に打設されたコンクリートと同系色の比較的細い鉄製フレームで作られていることから、通行中の者にとっては、極めて視界に捉えにくい工作物である。

このような工作物を買い物客が頻繁に往来する駐車場内に設置する場合、通行中の者が衝突して転倒等しないよう、カラーコーン等で本件車輪止めの設置を知らしめるか、あるいは本件駐輪場全体を鉄柵で囲むなどして、全体として本件駐輪場の安全性を確保しなければならない。

そして、このような危険防止措置は、比較的簡易であり、それほど費用の掛かるものでもない。

しかるに、被告は、本件事故当時、このような安全策を何ら講じておらず、本件駐輪場は全体として本来有すべき安全性を欠いていた。

そのため、原告は、本件車輪止めに全く気付かないまま、いつものように、西側入口からテナント用建物に沿って東進し、○○宇治店に向かおうと、電動自転車を時速約一〇km走行させていたところ、約一二m東進した地点で、前回に訪れた際には設置されていなかった本件車輪止めの一番手前の一基に電動自転車前輪を衝突させ、転倒した。

本件事故につき、原告に前方不注意の過失があるとしても、本件事故当日は春分の頃の午後四時前で、曇り空の上、少し薄暗い状況にあり、電動自転車に乗って本件車輪止めを発見することは極めて困難であったことや、原告は本件事故当時六八歳と高齢であったことなどを考慮すると、原告の過失が三割を超えることはない。

(被告の主張)

本件車輪止めは鉛色で、本件駐輪場を示すために打設された白色コンクリートと同化することはないし、本件車輪止めは四〇台分が並んで設置されており、全体として目立つものである。また、本件駐輪場自体に白色コンクリートが打設され、周りのアスファルトから際立っている。

このように、本件駐輪場や本件車輪止めは、通行人から認識しやすいものであり、まして自転車や電動自転車に乗った人がそのまま駐輪場に乗り込んでくることなど想定し難く、カラーコーンや鉄柵を敢えて設置しなかったとしても、本件駐輪場が本来有すべき安全性を欠いていたとはいえない。

本件事故の原因は、原告の前方不注視にある。

(3)  争点(3)(本件事故による原告の損害)について

(原告の主張)

ア 治療費 六四万〇四六五円

原告は、本件事故により、右大腿骨頸部骨折の傷害を負い、d病院に搬送され、人工骨頭置換手術を含む下記の入通院治療を受けた。

入院 五二日(平成二三年三月二一日から同年五月一一日まで)

通院 一五六日間(平成二三年五月一二日から同年一〇月一四日まで、実通院日数一三日)

イ 入院雑費 七万八〇〇〇円

一五〇〇円×五二日

ウ 通院交通費(タクシー代) 五三四〇円

エ 入通院慰謝料 一七六万〇〇〇〇円

原告は入院期間中、入院初日から手術の日までの一〇日間と術後の一〇日間は仰向けに寝たままで、寝返りも打てない状態であった。

オ 後遺障害慰謝料 八三〇万〇〇〇〇円

人工骨頭置換手術を受けた原告の後遺障害は、自賠責後遺障害別等級表第八級の七(以下、等級のみで表す。)の「一下肢三大関節中一関節の用を廃したもの」に相当する。

カ 弁護士費用 一〇〇万〇〇〇〇円

キ 合計 一一七八万三八〇五円

(被告の主張)

いずれも不知

第三争点に対する判断

一  争点(1)(被告は本件駐輪場の占有者又は所有者か)について

(1)  掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 被告は、平成二二年一一月四日、b社からテナント用建物の建築と本件駐輪場の設置工事を請け負ったa社から、同工事を請け負った。

被告とa社間の上記工事請負契約では、工期を平成二二年一一月五日から平成二三年三月五日まで、請負代金を五〇〇〇万円(税込み)、支払日を完成引渡時とする約定であった。(乙一、二)

イ 被告は、平成二二年一二月一日、b社からテナント用建物の建築に関する第二期追加工事を請け負ったa社から、同追加工事を請け負った。

被告とa社間の上記追加工事請負契約では、工期を平成二二年一二月一日から平成二三年三月一五日まで、請負代金を一二六〇万円(税込み)、支払日を完成引渡時とする約定であった。

b社とa社との間で上記追加工事請負契約と同時又は同契約に追加して、本件駐輪場に本件車輪止めを設置することが決まり、被告はa社から上記追加工事の一環として、本件車輪止めの設置工事を請け負った。(乙三ないし五)

ウ 被告は、本件車輪止め設置をe株式会社に依頼し、平成二三年三月五日ころ、同会社は本件車輪止めの設置を終えた。

a社は、平成二三年三月一四日、テナント用建物につき完了検査を受け、同月三一日、完了検査合格証の交付を受けた。(甲九の二、乙六)

(2)  前記のとおり、被告は、テナント用建物の建築と本件駐輪場の設置工事を一体のものとして請け負っていること、テナント用建物建築の追加工事の一つとして本件車輪止めの設置工事を請け負っていることからすれば、本件車輪止めが設置された本件駐輪場の引渡は、特段の事情がない限り、テナント用建物の引渡と同時に行われるはずであるところ、本件全証拠によっても、かかる特段の事情は認められない。

そして、テナント用建物の引渡は、完了検査合格証が交付された平成二三年三月三一日以降に、完了検査合格証を含む一式書類と鍵の交付によって行われたものと推認され、本件事故が発生した同月二一日時点で、本件駐輪場は引渡未了であり、未だ工事施工者である被告の占有下にあったものと認められる。

このことは、本件事故の通報を受けて臨場した警察官が、○○宇治店店長、施設周辺の工事関係者らと面接し、本件駐輪場が施工中であると聴取していること(甲一〇の一・二)によっても裏付けられる。

(3)  これに対し、被告は、平成二三年三月一四日に完了検査自体は行われており、完了検査に問題がなかったことから、同月一五日に本件駐輪場を含めてテナント用建物をc社に引き渡したと主張する。

しかし、証拠(乙一一)によれば、c社はb社からテナント用建物や本件駐輪場を賃借する予定であった者にすぎず、被告が直接c社にテナント用建物や本件駐輪場を引き渡すとは考えがたい。

また、証拠(乙一一)によれば、b社とc社間のテナント用建物の賃貸借契約において、賃貸借開始日は平成二三年四月一日とされており、同日以前に引渡があったとは解されない。

さらに、被告は、本件事故当時、○○宇治店の買い物客は既に本件駐輪場を使用していたとも主張するが、これを裏付ける証拠はなく、かえって証拠(甲二一、原告)によれば、本件事故当時、本件駐輪場に自転車や単車はなく、本件駐輪場の北に設けられている駐車区画を示す白線(甲四の四、甲一九の四、乙八参照)も引かれていなかったことが認められる。

したがって、被告の上記主張はいずれも採用できず、ほかに、前記認定を覆すに足る証拠はない。

(4)  以上によれば、本件事故当時、本件駐輪場の占有者は被告と認められ、被告は、本件駐輪場の設置又は保存の瑕疵につき、民法七一七条一項本文の責任を負う。

二  争点(2)(本件事故は本件駐輪場の設置又は保存の瑕疵によるものか)について

(1)  本件駐輪場の設置又は保存の瑕疵

ア 前記前提事実及び証拠(甲四の一ないし五、甲一九の三ないし五、乙九)によれば、本件駐輪場に設置された本件車輪止めは、自転車の前輪を枠内に入れて駐車する方式のもので、別紙図面二のとおり、直径約一〇mmの鉛色の鉄製フレームで、長さ約六五cm、高さ約一八ないし二八cm、幅約七・五cmの長方形状に形作られ、本件駐輪場に打設された白色コンクリートに直接ボルトで固定されていること、本件車輪止めを形作る鉛色の細い鉄製フレームは、本件駐輪場の周りのアスファルトと同系色であり、遠目にはこのアスファルトと同化し、天候によっては本件駐輪場に打設された白色コンクリートとも同化して、その存在を認識しづらいこと、しかるに、本件事故当時、本件車輪止めの設置を示すカラーコーンやカラーポール、本件駐輪場を囲む腰高の鉄柵は設置されていなかったことが認められる。

このように、本件車輪止めは、本件駐輪場に設置された障害物であり、このような障害物を人や車の往来のある駐車場内に設置するにあたっては、歩行者や自転車がこれに衝突して転倒することがないよう、周りと同化しない色を用いるとか、カラーコーンや柵等で注意を促すといった措置を講じ、安全を確保すべきところ、かかる措置を欠いた本件事故当時の本件駐輪場には、本来有すべき安全性を欠いた設置上の瑕疵があったというべきである。

イ この点、被告は、本件駐輪場には白色コンクリートが打設され、周りのアスファルトから際立っている上、本件車輪止めも四〇台分が並んで設置されており、全体として目立つものであって、通行人に認識しやすく、本件駐輪場が本来有すべき安全性を欠いていたとはいえないと主張する。

しかし、証拠(甲四の一、甲一九の三・四)によれば、本件駐輪場自体は打設された白色コンクリートによって他と区別できるものの、本件車輪止めの存在が認識しづらいことには変わりがなく、西側入口から駐車場に入ると、四〇台分の本件車輪止めが縦一列に重なって見える可能性があり、全体として目立つとは限らないことが認められる。

したがって、上記被告の主張は採用できない。

(2)  本件事故態様

証拠(甲二一、乙一の添付図面、原告)によれば、以下の事実が認められる。

テナント用建物の建築が始まった平成二二年一二月半ばころから、本件駐輪場の辺りに、金属製の黄色の板でできた高さ約二m、長さ約三〇mの工事用の塀が設置された。

原告は、西側入口からこの塀に沿って電動自転車を進め、○○宇治店の西側の外壁沿いに電動自転車を停め、同店で買い物をするのが常であった。

平成二三年一月、二月は寒さが厳しく、原告は○○宇治店を訪れていなかった。

原告は、本件事故当日の同年三月二一日午後三時五〇分ころ、久しぶりに○○宇治店に買い物に行こうと、いつものように電動自転車に乗り、西側入口から駐車場に入ったところ、工事用の塀が撤去されているのを認めた。

原告は、テナント用建物が完成したらしいことや、まだ入居がないことなどに気を留めながら、これまでと同じ経路で○○宇治店に向かおうと、撤去された塀付近を、時速約一〇kmで東に直進した。

西側入口から本件駐輪場までは、別紙図面一のとおり、約一〇〇〇分の三五の上がり勾配であるものの、電動自転車のモーターが稼働し、速度が落ちることはなかった。

原告は、以前に訪れたときは塀があったのみで駐輪設備はなかったため、本件駐輪場があると認識することも、周りと異なる白色コンクリートが打設されていることに気を留めることもなく、またカラーコーンや柵等がなかったため、本件車輪止めが設置されていることにも全く気付かないまま進行し、約一二m東進した地点で、本件駐輪場に設置された本件車輪止めのうち一番手前の一基に電動自転車の前輪を衝突させ、電動自転車ごと前に投げ出されるような状態で地面に転倒した。

(3)  過失割合

ア 前記の本件事故態様によれば、本件事故は、被告が、本件駐輪場の設置にあたり、本件車輪止め自体の視認性を高めたり、カラーコーンや柵等でその存在について注意を喚起するといった安全上の措置を欠いたことに起因するものということができる。

そして、前記のような本件車輪止めの視認性にかんがみれば、上記のような安全上の措置を欠けば衝突・転倒の危険があることは容易に予見可能であり、しかも上記のような安全上の措置を講じることは、比較的簡便かつ安価であることからすれば、本件駐輪場の占有者である被告の責任は重い。

イ 他方、原告にも、テナント用建物の完成や同建物への入居の有無に気を取られ、前方注視を怠った過失がある。

すなわち、本件事故当日が曇りで少し薄暗い状況にあったにせよ、本件駐輪場に周りと異なる白色コンクリートが打設されていることは容易に認識できたはずであり、その上で注意深く進行すれば、本件車輪止めの存在にも気付くことができたはずでありながら、原告は、本件車輪止めの存在に全く気付かないまま衝突していることからすれば、原告の前方不注意もまた看過できず、その割合は、前記被告の過失内容と比較して、三割を下らないというべきである。

三  争点(3)(本件事故による原告の損害)について

(1)  治療費 六四万〇四六五円

前記前提事実及び証拠(甲三、五、六、二一、原告)によれば、原告は、本件事故により、右大腿骨頸部骨折の傷害を負い、d病院に搬送され、人工骨頭置換手術を含む下記の入通院治療を受けたこと、この治療に上記金額を要したことが認められる。

入院 五二日(平成二三年三月二一日から同年五月一一日まで)

通院 一五六日間(平成二三年五月一二日から同年一〇月一四日まで、実通院日数一三日)

(2)  入院雑費 七万八〇〇〇円

入院雑費として、前記入院期間五二日を通じて一日一五〇〇円を、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

(3)  通院交通費(タクシー代) 五三四〇円

本件事故による受傷部位に照らし、退院時や通院時にタクシーを利用する必要があったものと認められ、証拠(甲六)によれば、通院交通費として上記金額を要したものと認められる。

(4)  入通院慰謝料 一二五万〇〇〇〇円

本件事故による受傷内容に前記入通院期間及び通院実日数を併せ考慮すれば、入通院慰謝料としては、上記金額が相当である。

(5)  後遺障害慰謝料 五五〇万〇〇〇〇円

証拠(甲二〇、二一、原告)によれば、原告は本件事故により右大腿骨頸部を骨折し、人工骨頭への置換を余儀なくされたこと、右股関節の可動域は、健側の四分の三程度に制限されていることが認められ、「関節の機能に著しい障害を残すもの」として、後遺障害等級一〇級に相当するというべきである。

このような原告の後遺障害の内容及び程度に、原告の年齢(本件事故時六八歳、甲二)やその他一切の事情を併せ考慮すれば、後遺障害慰謝料としては、上記金額が相当である。

(6)  小計 七四七万三八〇五円

前記(1)ないし(5)の小計

(7)  過失相殺 三〇%

前記認定のとおり。

(8)  過失相殺後の残額 五二三万一六六三円

前記(6)の小計×(100-30)%(1円未満切捨て)

(9)  弁護士費用 五二万〇〇〇〇円

前記認容額に、本件事案の難易、審理の経過等を併せ考慮すれば、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は上記のとおりと認められる。

(10)  合計 五七五万一六六三円

前記(8)+前記(9)

四  結語

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 上田賀代)

別紙図面一・二<省略>

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