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京都地方裁判所 平成4年(わ)1321号 判決 1993年12月20日

本店の所在地

京都市中京区二条通堺町西入観音町八一番地

法人の名称

株式会社八善工務店

代表者の住所

京都市左京区修学院登り内町一八番地

代表者の氏名

森田茂

本籍

京都市左京区吉田近衛町二一番地の七

住居

京都市左京区修学院登り内町一八番地

会社役員

森田茂

昭和二二年四月六日生

右株式会社八善工務店及び森田茂に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官矢野敬一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社八善工務店を罰金五、〇〇〇万円に、被告人森田茂を懲役一年六月に処する。

被告人森田茂に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社八善工務店(以下「被告会社」という。)は、京都市中京区二条通堺町西入観音町八一番地に本店を置き、不動産の売買、仲介、管理等の業務を目的とする株式会社であり、被告人森田茂は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人森田茂は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六億三、二二五万一、八四六円、課税土地譲渡利益金額が六億六、九〇五万九、〇〇〇円で、これらに対する法人税額が合計四億五、六九五万〇、二〇〇円であるのに、不動産の買入れに際し、架空の費用が掛かったように仮装して不動産仕入高を実際よりも多額に計上するなどの方法により、その所得金額のうち三億〇、四〇三万〇、一七〇円及び課税土地譲渡利益金額のうち三億六、九四一万七、〇〇〇円を秘匿した上、平成元年七月三一日、京都市中京区柳馬場二条下ル等持寺町一五番地所在の所轄中京税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三億二、八二二万一、六七六円、課税土地譲渡利益金額が二億九、九六四万二、〇〇〇円で、これらに対する法人税額は合計二億一、八四三万二、五〇〇円である旨の虚偽の内容の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額二億三、八五一万七、七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人森田の当公判廷における供述

一  被告人森田の検察官に対する各供述調書(四通)及び収税官吏作成の被告人森田に対する各質問てん末書(六通)

一  平井賢治(二通)、川瀬一郎、惣司定次郎、後藤泰三及び田中譲治の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の萩恒夫、平井賢治(二通)、田中譲治(二通)及び松山軒三に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の脱税額計算書

一  収税官吏作成の査察官調査書八通

一  検察官作成の電話聴取書(検第39号)

一  株式会社八善工務店代表者森田茂作成の法人税確定申告書の謄本

一  京都地方法務局登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖役員欄用紙謄本(三通)

(法令の適用)

被告会社及び被告人森田の各所為はいずれも法人税法一五九条一項(被告会社については、さらに同法一六四条一項、一五九条二項)に該当するところ、被告人森田につき所定刑中懲役刑を選択し、被告会社については免れた判示法人税の額に相当する金額の、被告人森田についてはその所定刑期の各範囲内で、被告会社を罰金五、〇〇〇万円に、被告人森田を懲役一年六月に処し、情状により被告人森田に対し刑法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、不動産の売買、仲介、管理等を行う被告会社の代表取締役が、判示のとおり、不正の行為により法人税をほ脱したという事犯であるところ、ほ脱に係る法人税額は二億三、八〇〇万円余に上っており、国庫収入に多額の損害を与え、租税の均衡負担をも害したものであって、その結果は重大である。また、不動産売買に際して架空の仕入原価を計上するため伝票操作を行い、その過程で売買の仲介人から受け取った内容虚偽の領収証を利用するなど、その態様にも看過し難い悪質さが認められるのであって、以上を総合すれば、被告会社及び被告人森田の刑事責任は軽いということはできず、一般予防及び特別予防の見地からしても重く問擬されてしかるべき事案といわなければならない。

しかしながら他方、本件起訴に係る法人税のほ脱率は五二パーセント余りであって、この種事案の中にあって特に高いとまではいうことができないし、本件の発覚後、被告会社において、本税のほか重加算税及び延滞税を完納しており、また、被告人森田においてはさしたる前科もなく、事実関係を率直に認め、被告会社の経理体制を改善することを誓っている等反省の情が認められることなど被告会社及び被告人森田双方にとって酌むべき諸事情も認められるので、以上を併せ勘案した上、被告会社及び被告人森田につき、主文掲記のとおり刑を量定した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷鐵雄 裁判官 今崎幸彦 裁判官 山本善平)

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