京都地方裁判所 平成4年(ワ)787号 判決 1994年3月29日
原告
生田嘉男
ほか二名
被告
野中明彦
ほか三名
主文
一 被告野中明彦、同中西佳美及び同中西常和は、連帯して、原告生田嘉男に対し金六六四万八三九〇円、原告金山美保及び原告生田直美に対し各金三三二万四一九五円並びにこれらに対する平成二年一一月九日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らの被告野中明彦、同中西佳美及び同中西常和に対するその余の請求並びに被告高木正徳に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用のうち、原告らと被告野中明彦及び同中西佳美との間に生じた分は、これを八分し、その一を右被告らの、その余を原告らの負担とし、原告らと被告中西常和との間に生じた分はこれを四分し、その一を被告中西常和の、その余を原告らの負担とし、原告らと被告高木正徳との間に生じた分は原告らの負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告らの請求
被告野中明彦及び同中西佳美は、連帯して、原告生田嘉男に対し金五一一三万五六七五円、原告金山美保及び原告生田直美に対し各金一七二五万二四五三円並びにこれらに対する平成二年一一月九日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
被告中西常和及び同高木正徳は、連帯して、原告生田嘉男に対し金二四七三万〇八一五円、原告金山美保及び原告生田直美に対し各金一二七五万二四五三円並びにこれらに対する平成二年一一月九日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、道路を横断中に普通乗用自動車に衝突されて死亡した者の相続人が、自動車の運転者に対し民法七〇九条に基づき、自動車の保有者等に対し自賠法三条に基づき、損害賠償を請求した事件である。
一 争いのない事実
1 交通事故の発生(以下「本件事故」という。)
(一) 日時 平成二年一一月九日午前四時二〇分ころ
(二) 場所 京都市左京区聖護院川原町二五番地先路上(春日北通、以下「本件道路」という。)
(三) 加害車両 被告野中明彦(以下「被告野中」という。)が運転していた普通乗用自動車(京都五二ひ七一七二、以下「被告車」という。)
(四) 事故態様 本件道路を北から南へ横断していた亡生田徳子(以下「徳子」という。)に、本件道路を東から西へ進行してきた被告車前部が衝突して徳子をはね飛ばした。
2 徳子の死亡と相続
徳子は、本件事故により、即死した。
原告生田嘉男は徳子の夫、原告金山美保及び原告生田直美は徳子の子であり、他に徳子の相続人はいない。
二 争点
1 被告野中の過失の有無
原告らは、被告野中には、<1>酒気帯び運転、<2>制限速度違反、<3>前方不注視、<4>事故回避義務違反の過失があると主張している。
これに対し、被告野中は、本件事故は被害者である徳子が被告車の進路上に突然飛び出したために生じたものであり、被告野中に過失はないと主張している。
2 被告中西佳美、同中西常和及び同高木正徳の運行供用者責任の有無
原告らは、被告中西佳美(以下「被告佳美」という。)及び同中西常和(以下「被告常和」という。)は、被告車の所有者であり、同高木正徳(以下「被告高木」という。)は被告常和から被告車を無償で借り受け、自己のために補助参加人と自動車保険契約を締結した者であり、同被告が被告野中に被告車を一時貸与中に本件事故が発生したものであつて、被告佳美、同常和及び同高木はいずれも被告車の運行供用者であるから、自賠法三条により、原告らの損害を賠償する責任があると主張している。
これに対する、被告らの主張等は次のとおりである。
(一) 被告佳美は、被告車は被告佳美所有名義であるが、本件事故は自分の知らない間に被告野中が運転して起こしたものであるから、被告佳美に責任はないと主張している。
(二) 被告常和は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しない。
(三) 被告高木は、被告車について補助参加人と自動車保険契約を締結した事実は認めるが、被告常和から被告車を無償で借り受けた事実及び被告野中に被告車を一時貸与した事実を否認している。
3 損害額
4 過失相殺
第三争点に対する判断
一 被告野中の過失の有無
1 証拠(甲二三~三二、乙一)によると、以下の事実が認められる。
(一) 本件事故現場の状況は、別紙図面のとおりである。
本件道路は、幅員が約九・八メートルのアスフアルトで舗装された平坦な道路で、東行西行各一車線で、南北共に歩道が、また道路北側には幅約一・九メートルの時間制限駐車区間が設置されており、また最高速度は時速四〇キロメートルに制限されていた。本件事故現場は、東大路通りとの交差点の西側横断歩道の西詰から西方約八〇メートルの地点で、本件事故当時は深夜であつたが、道路北側には約四五メートル間隔で街路灯があり、南側はところどころに看板等の明かりがあつて、比較的明るかつた。
(二) 被告野中は、本件事故前日である平成二年一一月八日午後九時ころから事故当日である同月九日午前三時三〇分ころまで友人と居酒屋、スナツク等で飲食した後、被告車を運転して帰宅する途中で、本件事故現場にさしかかつた。
被告野中は、被告車を運転し、時速約四〇キロメートルで、前照灯を点灯して本件道路を東方から西方へ向かつて進行したが、深夜であり他に車両の通行がなかつたため安心して遠方を見て進行し、また、別紙図面<1>地点からは時速約七〇キロメートルまで加速して進行した。そして、被告野中は、別紙図面<2>地点で進路前方を右から左へ横断歩行中の徳子を前方約一〇・八メートルの同図面<ア>地点に認めたが、ブレーキをかけることなく別紙図面<×>地点で、被告車左前部を徳子に衝突させて同人を跳ね飛ばした。
被告野中は、別紙図面<4>地点で停止し、ルームミラーで後方を見たところ、人らしい物が倒れていたので、飲酒運転による事故がばれるのをおそれ、そのまま逃走した。
(三) 徳子は、バイクを運転して新聞配達の途中で本件事故現場にさしかかつた。徳子は、別紙図面中の<×>地点の左上バス駐車枠内の「1.90」と記載された地点付近にバイクを止め、本件道路を北から南へ小走りに横断中に、別紙図面<×>地点において、被告車に衝突された。