京都地方裁判所 平成6年(わ)1301号 判決 1995年10月12日
裁判所書記官
宇野久美子
(被告人の表示)
氏名
中井靖郎
生年月日
昭和八年一月二日
本籍
京都府相楽郡精華町大字拓榴小字垣内五三番地
住居
右同所
職業
精華町議会議員
主文
被告人を懲役一年及び罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(認定した犯罪事実)
被告人は、長女中井康惠の委任を受けて同人らと共有していた山林を丸石商事株式会社に売却するとともに自己の及び右中井康惠の代理人として同人の税務申告手続を行った者、石橋平和は同社の代表取締役、岡田勇は同社が扱った不動産取引において真実は売買当事者でないのに売買当事者としての名義貸をするなどしていた者であるが、右石橋、岡田と共謀の上、
第一 被告人が右中井康惠らと共有していた京都府相楽郡精華町大字乾谷小字徳所一三一番、同町大字拓榴小字徳所一六番二所在の山林を同社に売却したことに関し、被告人の所得税を免れようと企て、真実の買主は同社であるのにあたかも買主が右岡田であるかのように仮装するとともに売買価格を圧縮した虚偽の内容の売買契約書を作成するなどの方法により、右売却に係る所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一二日、京都府宇治市大久保町井ノ尻六〇番地の三所在の所轄宇治税務署において、同税務署長に対し、被告人の平成三年分の実際の総所得金額が五二七万五七九二円で、分離長期譲渡所得金額が四億一七八五万三三四九円であったにもかかわらず、被告人の同年分の総所得金額が五二七万五七九二円で、分離長期譲渡所得金額が三億二四六六万五四八七円で、これに対する所得税額が七九〇四万九九〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億二三四万六九〇〇円との差額二三二九万七〇〇〇円を免れ、
第二 右中井康惠が被告人らと共有していた右山林を同社に売却したことに関し、右中井康惠の所得税を免れようと企て、第一と同様の方法により、右売却に係る所得の一部を秘匿した上、平成四年三月一六日、同税務署において、同税務署長に対し、右中井康惠の平成三年分の実際の総所得金額が八四万九〇七一円で、分離長期譲渡所得金額が三億六〇四一万七二九九円であったにもかかわらず、同人の同年分の総所得金額が八四万九〇七一円で、分離長期譲渡所得金額が二億六七二二万九四三七円で、これに対する所得税額が六四八〇万七二〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額八八一〇万四二〇〇円との差額二三二九万七〇〇〇円を免れた。
(証拠)
判示事実全部について
一 被告人の公判供述
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第137号から第140号まで、第142号から第145号まで)、検察官調書(検第146号、第147号、第149号)
一 分離前相被告人岡田勇の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第154号、第158号、第159号、第164号、第166号)、検察官調書(検第167号から第170号まで)
一 分離前相被告人石橋平和の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第172号、第174号、第175号、第177号、第181号、第201号。ただし、検第172号、第175号、第177号については不同意部分を除く。)、検察官調書(検第208号、第209号)
一 黒坂敏夫の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第113号から第115号まで)
一 藪下秋生の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第116号、第121号、第125号、第127号、第130号、第131号)、検察官調書(検第133号から第135号まで。ただし、検第135号については不同意部分を除く。)
一 電話聴取書(検第5号)
一 査察官調査書(検第6号から第14号まで、第21号、第28号、第32号、第43号、第45号、第61号、第62号、第64号、第66号、第80号、第85号、第103号、第105号、第107号)
判示第一の事実
一 証明書(検第1号)
一 脱税額計算書(検第3号)
判示第二の事実
一 中井康惠の大蔵事務官に対する質問てん末書(検第15号、第16号)
一 証明書(検第2号)
一 脱税額計算書(検第4号)
(法令の適用)
一 罰条 いずれも刑法(平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前のもの。以下同じ。)六〇条、所得税法二三八条(判示第二の行為については、更に同法二四四条一項)
二 刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑
三 併合罪の処理 刑法四五条前段
1 懲役刑について 刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)
2 罰金刑について 刑法四八条二項
四 労役場留置 刑法一八条
五 刑の執行猶予(懲役刑について)
刑法二五条一項
(検察官浦文計出席)
(求刑 懲役一年及び罰金七〇〇万円)
(裁判官 山口裕之)