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京都地方裁判所 平成7年(ワ)1971号 判決 2002年10月25日

原告

甲山春子

外一四名

原告ら訴訟代理人弁護士

浅岡美恵

浅野則明

芦田禮一

安保嘉博

飯田昭

井関佳法

稲村五男

井上博隆

梅林妙子

湖海信成

下谷靖子

田中彰寿

戸倉晴美

野々山宏

北條雅英

三重利典

吉田薫

吉田真佐子

被告

世界基督教統一神霊協会

同代表者代表役員

乙野一郎

同訴訟代理人弁護士

和島登志雄

今井三義

主文

1  被告は、

(1)  原告甲山春子に対し、

五九一万三六〇〇円

(2)  原告乙川太郎に対し、

一二三九万五七一三円

(3)  原告丙田夏子に対し、

三三七万四〇〇〇円

(4)  原告丁谷秋子に対し、

六〇万円

(5)  原告戊野冬子に対し、

一四万円

(6)  原告東山花子に対し、

三五二万七〇八二円

(7)  原告西川鳥子に対し、

一二一万円

(8)  原告南田風子に対し、

一六万円

(9)  原告北谷月子に対し、

八五万円

(10)  原告春山次郎に対し、

八四七万円

(11)  原告夏川東子に対し、

四二三万円

(12)  原告秋野西子に対し、

七六五万五〇〇〇円

(13)  原告冬谷南子に対し、

一二八万五八〇〇円

(14)  原告花山北子に対し、

二四七万八〇九四円

(15)  原告鳥川風子に対し、

一四五万円

及びそれぞれに対する平成七年九月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告丙田夏子、同東山花子、同南田風子、同北谷月子及び同秋野西子のその余の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  1項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  請求

1  被告は、

(1)  原告甲山春子に対し、

五九一万三六〇〇円

(2)  原告乙川太郎に対し、

一二三九万五七一三円

(3)  原告丙田夏子に対し、

三九八万四〇〇〇円

(4)  原告丁谷秋子に対し、

六〇万円

(5)  原告戊野冬子に対し、

一四万円

(6)  原告東山花子に対し、

四〇二万四三一五円

(7)  原告西川鳥子に対し、

一二一万円

(8)  原告南田風子に対し、

二九万円

(9)  原告北谷月子に対し、

一一一万円

(10)  原告春山次郎に対し、

八四七万円

(11)  原告夏川東子に対し、

四二三万円

(12)  原告秋野西子に対し、

七九三万円

(13)  原告冬谷南子に対し、

一二八万五八〇〇円

(14)  原告花山北子に対し、

二四七万八〇九四円

(15)  原告鳥川風子に対し、

一四五万円

及びそれぞれに対する平成七年九月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要

1  事案の要旨

本件は、被告の信者らの違法な勧誘行為によって、献金又は商品の購入をさせられたとして、原告らが、被告に対し、民法七〇九条又は同法七一五条に基づき、献金相当額、商品購入代金相当額、慰謝料、弁護士費用及びこれらに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日の平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2  争いのない事実

被告は、昭和三九年、東京都により認証を受け、設立登記された宗教法人であり、その母体である世界基督教統一神霊協会(以下「統一教会」という。)は、○○を創始者として設立された宗教団体である。

3  争点

(1)  原告らに対する献金及び商品購入の勧誘行為の違法性の有無

(2)  被告の責任

(3)  損害額

(4)  消滅時効の成否

4  争点についての当事者の主張

<省略>

第3  争点に対する判断

1  争点(1)(原告らに対する献金及び商品購入の勧誘行為の違法性の有無)について

(1)  被告の信者らによる被告への入会及び献金並びに商品購入の勧誘行為の状況

前提事実及び証拠(甲4、5、8、9、10、11、12の1・2・4、13、14、16、17、18、19、20、乙1、2、11、12、15の2・3、17、36、38、証人子山二郎、同丑川三郎、原告甲山春子本人、同乙川太郎本人、同丙田夏子本人、同東山花子本人、同夏川東子本人、同秋野西子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア 被告の信者組織及び活動について

(ア) 株式会社ハッピーワールド(以下「ハッピーワールド」という。)

ハッピーワールドは、昭和四六年、被告の信者らによって、幸世商事株式会社として設立され、その後、商号を昭和五三年三月に株式会社世界のしあわせ、同年一一月にハッピーワールドと変更した。

ハッピーワールド及び同関連会社は、大理石、高麗人参茶、印鑑等を販売していたが、昭和六二年ころ、マスメディア等により霊感商法として問題視されたため、化粧品、宝石、着物も販売するようになった(甲10 一一八頁)。

ハッピーワールド関連会社は、独立の法人格を有していても、実質的にはハッピーワールドの傘下にあって、その指揮を受ける企業であり、被告の信者の一部が上記商品の販売活動に従事していた。

なお、被告の規則二八条には、収益事業として出版業のみが挙げられているが、昭和五八年一月、出版部門が株式会社光言社に分離移行された以後は、被告自らを法的主体としての収益事業及び経済活動は行われていない。

(イ) 連絡協議会

a 設立

被告が主張する連絡協議会と称する被告の信者組織は、昭和五七年、既存の被告の信者組織を集合させて設立され、中央本部と呼ばれる事務局を中心に、概ね、被告の教区に対応してブロック、被告の教会に対応して地区を置き(被告は、その本部を肩書住所地に置き、全国各地に、教区《時期によってはブロックと呼称したこともある。》、教会を置いている。)、ブロック長会議と呼ばれる意思決定機関において、全国的な活動の統制を図り、ブロック、地区において、ハッピーワールド関連会社の取扱商品の販売活動をするとともに、被告の教義の伝道活動を展開していった。なお、連絡協議会においては、規約は文書化されておらず、役員会議の議事録も作成されていなかった(乙36)。

b 活動

連絡協議会は、被告への入会及び献金の勧誘行為並びにハッピーワールド関連会社の商品販売について、全国の各ブロックや各地区毎に新規入会者数や献金又は商品販売による売上金の目標額を定めて、上記勧誘行為及び商品販売活動をさせていた。

一般の被告の信者の多くは、勧誘行為及び商品販売活動をしていた当時、連絡協議会が被告とは独立した団体であるとの認識を欠き、その名称自体も知らず、むしろ、被告自体の組織(教会)に所属し、活動していると認識していた。

c ビデオセンター設置

連絡協議会は、昭和五七年ころ、被告の教義を布教、伝道するため、信者でない人達に被告の教義を教えるビデオ等を見せる施設としてビデオセンターを各地に設置した。ビデオセンターの運営は、被告の信者同士で共同生活を営み、組織の活動や教義の布教活動に専従する献身者と呼ばれる被告の信者らが中心となって行われていた。なお、被告は、同年一〇月、ビデオによる伝道体制の導入を検討し、ビデオセンターの設置について、東京都に相談したところ、ビデオ受講時に受講生から料金を徴収する場合、収益事業と見なされ、規則にないことは行ってはいけないとの指導を受けたことから、昭和五八年一月の責任役員会議において、被告は公式にはビデオ受講施設の設置は行わないことを決定した。

d 被告との関係

被告の幹部がその職を辞した後、連絡協議会の幹部となり、また、連絡協議会の幹部が、その職を辞した後、被告の幹部となることもあり、また、被告と連絡協議会の幹部を兼任する被告の信者もいた(乙12の1 七一頁、15の3 六三、六五、六七頁)。また、被告の幹部が、連絡協議会の集会に参加したり、同協議会の人事異動発表を行うこともあった(証人子山二郎 第一〇回口頭弁論調書一一三頁、乙12の1一二一頁)。

e ハッピーワールド及び同関連会社との関係

連絡協議会の設立当初は、ハッピーワールドの代表取締役が連絡協議会の代表であり、ハッピーワールド関連会社の代表取締役全員が連絡協議会のブロック長を兼務していた。その後も、代表取締役とブロック長を兼務する者がいた。

f マスメディア報道と天地正教

昭和六二年ころ、マスメディアにより、被告が霊感商法を行っているとして社会問題化した。そこで、連絡協議会は、そのころ、被告と別の宗教法人である天地正教の名前を利用して、被告への入会勧誘活動を開始した(甲15の1、16の1 四頁、16の2 四四頁)。

g 連絡協議会の解消

連絡協議会は、平成四年四月ころ、全国的に統括する被告の信者の組織を解消し、各地の信徒会と称する団体に移行した(乙38の1)。

イ 被告の信者らによる被告への入会及び献金の勧誘行為の状況

連絡協議会の各地区に所属していた被告の信者らは、その時期や地域によって、若干の変遷や差異があるが、各種マニュアルに沿って、概ね、以下のとおり、被告への入会及び献金の勧誘活動を行っていた。

(ア) ビデオセンター入会の勧誘行為

姓名判断、手相、家系図などを利用して、被勧誘者の悩みを聞き出したり、殺傷因縁や色情因縁などの因縁により不幸になるなどと述べて、これを解消して人生について勉強しようと述べるなどして、ビデオセンターへの入会を勧誘する。

(イ) ビデオ及び各セミナー受講

被告の信者らは、被勧誘者に対し、被告の教義を教えるビデオを見せ、その感想を聞いて、被告の教義の理解度を確かめ、ツーデーズセミナー、ライフトレーニング、フォーデーズセミナーの順に参加するよう勧める。ツーデーズセミナー及びフォーデーズセミナーは、合宿セミナーであり、ツーデーズセミナーは一泊二日、フォーデーズセミナーは、三泊四日で行われる。ライフトレーニングは、通所の集中講義である。

なお、上記ビデオは、当初、連絡協議会内で作成されたが、後に、被告が監修して作成されたものが使用されていた(証人丑川三郎、第一一回口頭弁論調書 七〇頁)。

(ウ) 被告の信者らのビデオ・セミナー受講者に対する対応

被告の信者らは、ビデオ受講からフォーデーズセミナーまでの間においても、被勧誘者から、悩みや財産状態を聞き出したり、また、家系図を利用して、因縁話などをして、不安にさせた上、かかる不安を解消するためとして、上記セミナー等への参加を勧める。

被告の信者らは、被勧誘者が、フォーデーズセミナー前に、被告の教義に対する信仰を持ったであろうと判断する場合には、それまで学んだことが被告の教義であることや○○がメシアであるなどと明かし、そのように判断できない場合には、被告の名称や○○の名前を秘し、宗教との関連を否定し、フォーデーズセミナーで初めて被告の名称や○○がメシアであるなどと明かす。

(エ) 被告への入会及び献金の勧誘行為

被告の信者らは、被告の名称や○○の名前等を明かした直後、被勧誘者に対し、被告への入会を勧める。

被告の信者らは、被勧誘者の被告入会直前又は直後、被勧誘者の先祖たちが地獄で苦しんでいる、先祖の因縁により、被勧誘者及びその家族も不幸になるなどと言い、因縁を絶つためには献金をする必要があるなどと言って、被告に対する献金を求める。

被告においては、万物復帰、すなわち、「人間が堕落して万物以下の立場に立ってしまったが、万物を神に捧げるために真心と信仰を尽くしていくことにより、本来の神の子としての愛と心情が復帰されていく。そのような人間になることにより、本来の神と人間と万物の関係が取り戻されていく」との教え(乙12の1 三六頁、甲12の4参照)が説かれていたが、その具体的な実践としては、被告ひいては○○に対し、全財産にも相当する程度の金銭を捧げるということであった(甲12の3七三頁)。

(オ) 献金は、被告ないしは連絡協議会の活動資金として使用されているものと推認される。

ウ 被告の信者らによる商品販売の活動状況

(ア) 連絡協議会の各地区に所属していた被告の信者らは、被告の教義である万物復帰という教えの下、その実践として、ハッピーワールド関連会社取扱の商品の販売活動に従事した。その売上は、連絡協議会ないし被告の活動資金に充てられていた。

(イ) 商品購入の勧誘方法

被告の信者らは、各種マニュアルに沿って、一般家庭に対する戸別訪問や展示会において、被勧誘者に対し、ビデオセンターへの入会と同様に、姓名判断、手相、家系図などを利用し、同人の悩みを聞き出したり、殺傷因縁や色情因縁などの因縁により不幸になる、商品を購入すれば、因縁を絶つことができるなどと述べて、商品の購入を勧める。

(ウ) 購入者に対するその後の対応

被告の信者らは、商品を購入した者に対し、上記イの方法で、ビデオセンターへの入会を勧誘した。

(2)  原告らに対する被告の信者らの勧誘行為等

① 原告甲山

前提事実及び証拠(甲A1ないし19《枝番を含む。》、乙A2、3、証人寅田春美、同卯谷夏美、原告甲山春子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人寅田春美、同卯谷夏美の供述及び陳述記載(乙A2、3)並びに辰野四郎及び巳山秋美の陳述記載(乙A4、5)は採用しない。

(ア) 京橋市民大学センター入会

原告甲山(昭和三一年生)は、昭和六三年当時、主婦であり、夫と子供三人(長女、次女、長男)及び夫の両親と同居していた。夫から、一家の生活費として毎月約二五万円を渡されており、同原告が自由に使える金銭は毎月一、二万円程度であった。また、同原告家は、日蓮正宗を信仰していた。

同原告は、昭和六三年春、偶然、子供が幼稚園に通園していたときに知り合った被告の信者の卯谷に会い、その後、同人から、講演会などに誘われるようになったが、これを断っていたものの、卯谷の誘いで、ハッピーワールド関連会社の創美が主催する絵画展や着物の展示会に行き、ローンを組んで絵画や着物を購入したことがある。

同原告は、卯谷に対し、長女の登校拒否や夫との関係など家庭内の悩みや問題を話すようになっていたところ、平成元年三月一六日、卯谷から、京橋市民大学センター(ビデオセンター)を紹介され、同センターに入会した。なお、同センターは、当時、連絡協議会の関西ブロック大阪第四地区が運営しており、その後、平成四年四月ころ、被告の信者らで構成される東大阪信徒会が引き継いで運営している。

(イ) 京橋市民大学センター入会後の経緯

原告甲山は、平成元年三月一八日、京橋市民大学センターにおいて、被告の信者でカウンセラーの寅田から、先祖の病気や因縁などが分かるとして、同人が作成した家系図を示され、「子供が心配ですねえ。」、「特に長男長女が心配です。」、「運勢が悪いですね。」などと言われ、不安を抱いたが、寅田から、「このビデオセンターに通って一生懸命勉強されたら、家族も良くなるし、子供も良くなりますよ。」と言われたので、不安を解消するため、週に二、三回程度、同センターに通い続け、被告の教義を教えるビデオを見たり、講義を受けたりし、その中で、宗教の話が出てきたものの、これは、教養を身に付けるためのものと考えていた。

なお、卯谷は、同原告に、家族等に同センターに通っていることを言わないようにと口止めしていた。

(ウ) 一回目の献金及び被告への入会

a 原告甲山は、平成元年七月三〇日午後二時ころ、いつもと同じようにビデオを見るために、子供三人を連れて、京橋市民大学センターに行くと、寅田から、「お話があります。」と言われて、同センターの一室で、夜になるまで、「今までビデオを見てきたように、アダム、エバが罪を犯し、その子孫が私達です。その罪を取り除くことが必要です。」、「腐った根だと、枝も葉も育ちません。その根を植え替えることで立派な木が育ち、子供も家庭も良くなります。」、「アダム、エバが取って食べると死ぬと言われた実を取って食べたでしょう。死をも覚悟して食べた罪だから、それと同じく死ぬまでの金額を、そして感謝できる金額を献金すれば、アダム、エバの罪がそれでよくなる。腐った根が植え替えられる。」、「アダム、エバの償いをして、家庭を良くするのも悪くするのも、今、あなたにかかっていますよ。どうしますか。」などと献金するよう迫られた。同原告は、献金しなければ家庭が悪くなるなどと考えて不安になり、しばらく黙っていたが、寅田も、同原告の返事を待って、黙っていた。同原告は、同じ部屋にいた子供三人を見て、「子供達には苦労させたくない。」などと思い、五〇万円を献金すると述べた。すると、寅田が、一旦、部屋を出て、すぐに戻り、五〇万円ではなく、原理数の七〇数か四〇数がいいと言うので、同原告は、四〇万円を献金すると述べたところ、寅田は、「明日、持って来て下さい。」と言った。

同原告は、翌三一日、夫に無断で、夫名義の預金を引き出し、同センターにおいて、寅田に対し、被告に対する献金として四〇万円を交付した。

b 原告甲山は、上記献金の際、被告への入会申込書に入会する旨を記入し、そのとき、初めて、被告の存在や献金先が被告であること、寅田及び卯谷がその信者であることを知り、被告が京橋市民大学センターを運営しているものと思った。

(エ) 一回目の献金後の経緯

a 原告甲山は、平成元年八月一七日、京橋市民大学センターにおいて、「ひとつの道」という題名のビデオを見て、被告の教祖である○○の存在を知った。

同原告は、その後も、平成元年一一月一日まで、同センターに通い続け、その間、ツーデーズセミナー、フォーデーズセミナーに参加し、被告の教義を勉強し、同年一一月から一二月には、週三日、午前一〇時三〇分から午後二時ころまで、新生トレーニングに参加し、平成二年一月から二月には、週三日、午前一〇時三〇分から午後二時ころまで、同センターとは別の場所において、実践トレーニングに参加した。

同原告は、平成二年三月から九月までの間、連絡協議会の施設には通わなかったが、被告の信者でアベルと呼ばれる上司のsから週二、三回の電話があった。

同原告は、平成二年一〇月から、被告の城東教会の北地域に所属し、毎週月曜日、古川橋研修センターに通い、被告の教義を勉強したり、祈祷したりするようになった。

b 原告甲山は、上記の教義学習によって、被告の万物復帰の教えに基づき、被告に献金したり、貸付をしたり、被告が関係する会社から商品を購入すれば、それらのお金はすべて地上天国創造に使われ、家庭の幸せにつながると信じるようになった。そして、被告の活動の一環と思って、ハッピーワールド関連会社が主催する展示会に友人等を誘い、商品の購入を勧めたり、ビデオセンター入会の勧誘行為をするようになったが、これらの活動には、月別の目標が立てられていた。なお、上記展示会の事務所には、○○夫妻の写真が掲げてあった。

なお、同原告は、被告の信者から、「甲山家の先祖は霊界で苦しんでいる。その先祖にわずかでも功労があったため、あなたが選ばれて統一教会に導かれたのです。あなたが頑張れば、先祖も楽になるのです。」、「人を騙してでもお金をつくってお父様に捧げることは良いことだ。それは、世の法律に触れても、神の法では讃えられる。」、「サタンである夫や被告の信者以外の者の言葉には耳を貸すな。」、「被告を批判する本を読むと、サタンが入る。」、「毎日アベル(霊の親、上司)と連絡せよ。」などと言われていた。

(オ) 商品の購入

原告甲山は、上記のとおり、万物復帰の教えを信仰していたことから、これに沿うものと考え、以下の商品を購入した。

a 平成三年二月、健康講演会において、被告の信者の巳山に勧められ、ローンを組んで、ハッピーワールド共栄から、高麗人参茶一二本を代金九六万円で購入した。

b 平成四年六月一一日、原告甲山宅において、卯谷から、「判子はとても大事やから、家で大事なものだから、神からのものを入れた方が絶対良い。」などと言われて、関連会社のカマタから、印鑑三本を代金一二万三六〇〇円で購入した。

c 平成四年七月、被告の信者宅又は連絡協議会管理の家において、アベルと呼ばれていた被告の信者の午川冬美から、「先祖が喜ぶから絶対あった方がいい。」、「壷の色が変わったり、何か浮いてきたりとか、霊が降りてくる。」などと言われて、被告の信者又はハッピーワールド関連会社から、霊石壷を代金一〇〇万円で買い、上記午川に対し、被告に対するものとして貸し付けた一〇〇万円の借用証書を交付し、代金と相殺した。

(カ) 二回目の献金

原告甲山は、平成五年七月ころ、被告の信者から、夫との結婚は、サタンの世界の結婚式であるから良くない、神を中心とした本物の世界での結婚式、合同結婚式に行かなければならないと教えられ、そのように信じていたところ、被告の信者の冬谷から、「合同結婚式出席には、二〇〇万円必要だが、今出しておけば、後で出さなくてよい。」、「貸金の分からでもできる。」などと言われたため、冬谷に対し、祝福献金として、被告に貸し付けた一〇〇万円、七〇万円、四〇万円の各借用証書を交付し、これを二一〇万円の献金とした。

(キ) 三回目の献金

原告甲山は、平成五年八月、冬谷から、御父母様(○○夫妻)の勝利のための献金として、三〇万円の献金を求められ、これに応じて、被告に対し、三〇万円を献金した。

(ク) 脱会

原告甲山は、平成五年一二月一九日から二二日までの間、済州島ツアーに参加し、そこで、朝六時に起床してから翌日の午前三時半まで講義を受け、その講義中、○○から、献金をするよう求められた。

同原告は、日本に帰国した直後、夫から、被告を脱会するよう説得され、平成六年初めころ、被告を脱会した。

② 原告乙川

前提事実及び証拠(甲D1ないし3、乙D1ないし19《枝番を含む。》、21、証人未田五郎、原告乙川太郎本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人未田五郎の供述及び陳述記載(乙D16)、申谷六郎、酉野七郎、戌山八郎、亥川花美の陳述記載(乙D1、17、19、21)は採用しない。

(ア) アルファコミュニティー入会

原告乙川(昭和四〇年生)は、平成元年当時、コンピュータ関連の会社に勤め、両親及び妹と同居していた。

同原告は、同年一一月、被告の信者で高校時代の同級生の申谷六郎(以下「申谷」という。)から、「一九九〇年の時代をどのように生きるか」というビジネスセミナーに誘われ、同セミナーに参加した。同セミナーは、連絡協議会が運営するトップビジョン名古屋というビデオセンターが主催したものであり、被告の教義を簡単に説明したものであった。同原告は、上記セミナー終了後、一時間以上、申谷から、ライフビジョンセミナーに参加するよう勧められた。このとき、同原告は、申谷に対し、どのような内容のものかの説明を求めたが、参加してみないと分からない、今は言えないなどと回答された。

同原告は、同年一二月、申谷に誘われてコンサートに行き、その終了後、センターという喫茶店みたいな雰囲気の所に行こう、軽食も用意され、皆も待っているなどと言われ、名古屋トップビジョンに連れられて行った。同原告は、同所で、申谷や被告の信者から、ライフビジョンセミナーなどのセミナーに参加するよう勧められ、このときも、内容の説明を求めたが、参加してみないと分からない、それで人生がより良くなる、人生の目的が分かる、宗教の学習もするが、総合として全部色々なことを学びますなどと回答された。そこで、同原告は、内容がよく分からなかったため、名古屋は遠いからなどと断ったものの、申谷から、何度も、参加するよう勧められ、岐阜県大垣市内に所在するアルファコミュニティー(ビデオセンター)を紹介され、同センターにおける勉強、ライフビジョンセミナー、スリーデーズワークショップに参加することを承諾し、同日午後九時過ぎころ、申谷に連れられて、同センターに行き、ビデオ受講及びセミナーの参加申込をし、頭金として一万円を支払った。なお、同センターは、連絡協議会の中部ブロック岐阜地区が運営していた。

(イ) アルファコミュニティー入会後の経緯及び被告への入会

a 原告乙川は、その後、一週間に二、三回程度、同センターに通い、指定された被告の教義を教えるビデオを見て、その後、被告の信者から、ビデオの感想を聞かれたりした。

同原告は、平成二年一月二〇、二一日、名古屋市において、ライフビジョンセミナーに参加し、講義を受けた。

同原告は、その後も、同センターに通い続け、同年二月一〇日から一二日までの間、被告施設の守山修練所において、スリーデーズセミナーワークショップに参加した。そして、二月一〇日は、被告の教義のうちの創造原理、同月一一日は、被告の教義のうちの堕落論、三日目である同月一二日は、被告の教義のうちの復帰原理の講義を受け、同日午後、それまでの講義が被告の教義であることや○○がメシアであることなどを明かされた。同原告は、このころには、被告の道以外に救いはない、自分もついて行かねばならない、自分の従来聞いていた被告のイメージは間違っていたと考えるようになっていた。

b 原告乙川は、上記のとおり、被告の名や○○の名を明かされた直後、被告の入会申込書への署名を求められた。同原告は、待って欲しいと述べたが、主催者側の被告の信者から、「みんなが署名している」、「君だけがサインしていない。」などと署名を迫られ、同原告は、上記のとおり、そのころには被告の教義を信じるようになっていたことと、三日間のセミナー受講後の独特な雰囲気の中で冷静に考える気持ちの余裕を失っていたこともあり、署名に応じた。この間、同原告ら参加者は、主催者に各自の貴重品を預け、また、主催者側のアドバイザーという者と話をすることはできたが、参加者同士で会話をすることは禁止されていた。

(ウ) 被告入会後の経緯

原告乙川は、その後、被告の万物復帰の教えに基づき、ハッピーワールド関連会社が主催する宝石展や絵画展において、宝石などを購入したり、街頭伝道(街頭で一般人に声を掛け、ビデオセンターに連れて行き、同センター入会を勧誘したりすること)を行った。

(エ) 献金

原告乙川は、被告の信者から、統一原理(万物復帰)に従って献金するよう言われ、献金が被告の教義に沿うものであると信じて、以下のとおり、同原告が所属していた連絡協議会の中部ブロック岐阜地区の施設において、アベルと呼ばれていた上司の被告の信者に対し、被告に対する献金として合計一〇二五万五七一三円を交付した。

平成二年 五月一一日 一〇〇万円

同年 六月 八日 六〇万円

同年 七月一二日

二二二万四七五六円

同年 七月一八日 一二〇万円

同年 七月二三日 一〇〇万円

同年 八月 七日 二六万円

同年一二月二五日

三四万三〇〇〇円

平成三年 三月 二日 四六万円

同年 八月三〇日

一九四万四一〇四円

同年 九月 九日

一万三四四〇円

同年一〇月 七日

一二万五八二〇円

同年一一月 五日

一三万六〇八〇円

同年一二月 二日

一三万六〇八〇円

同年一二月 八日

四六万〇六六五円

同年一二月二五日

一一万五三一〇円

同年一二月三〇日

一万四五八〇円

平成四年 三月 三日

二二万一八七八円

(オ) 脱会

原告乙川は、平成三年一〇月一日ころ、それまで勤務していたコンピュータ関連の会社を退社し、献身者となり、平成四年五月初めまで、比較的熱心な被告の信者として、被告の信者組織の各セミナーなどに参加し、伝道活動(街頭伝道や友人伝道等として、ビデオセンターや連絡協議会が主催するセミナーに誘うこと)、経済活動(珍味の訪問販売を行ったり、展示会に人を勧誘すること)などをした。

同原告は、同年五月初め、家族から、被告の教義が誤りであるという説明を受け、同月一七日、被告を脱会した。

③ 原告丙田

前提事実及び証拠(甲E1ないし4、乙E1ないし6、証人壱田鳥美、原告丙田夏子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人壱田鳥美の供述及び陳述記載(乙E2、5)、弐谷風美、参野九郎の陳述記載(乙E1、3、4、6)は採用しない。

(ア) 原告丙田(昭和二八年生)は、昭和五九年五月当時、夫と子供二人(長男は昭和五四年生、次男は昭和五七年生)及び夫の両親と同居していた。

(イ) 印鑑購入

原告丙田は、昭和五九年五月六日ころ、同人宅において、被告の信者の四山及び五川から、「印鑑にも相がある。」、「欠けている印鑑は良くない。」などと言われたため、欠けていた夫の印鑑を見てもらうと、「これはいけないので、新しいものを作られた方がいいです。」と言われた。同原告は、以前から、欠けている印鑑はよくないと聞いていたこともあって、ハッピーワールド関連会社の天徳堂から、印鑑二本を代金五万円で購入した。

同原告は、その数日後、家系図を作成してもらった。

(ウ) 壷の購入

原告丙田は、昭和六〇年八月に同人の次男が自動車事故で頭蓋骨骨折の重傷を負い、医者から、「いつ後遺症が出るか分からない」と言われており、非常に不安感を抱いていた。

同原告は、昭和六一年三月、被告の信者の壱田から、電話で、心配事を聞かれたので、次男の上記交通事故の件を話たところ、「家系図に何か問題があるのです。」、「家系図を見て下さる先生が来られるから、見てもらわれたらいいんじゃないですか。」と誘われ、同月二七日午後、先生と呼ばれる被告の信者に会うために、同原告宅から壱田が用意した自動車に乗って、一時間ほどかけて、米子の旅館に行った。同原告は、その旅館の大広間に通されたが、同所には多くの壷が並べてあり、その場にいた被告の信者から、どういうものが好みかと尋ねられたので、ピンク色がかった壷を指して、こんな感じはいいですねと答えた。そして、その広間の仕切りがされた場所において、壱田同席の下、先生と呼ばれていた被告の信者から、印鑑購入から数日後に作成された家系図を出され、それを見ながら、説明を受けた。同原告が、次男の上記交通事故のことを話したところ、上記被告の信者は、「そういうのは祖先が以前侍だったための殺傷因縁ですよ。」などと言い、また、同原告が、おばが離婚したことを言うと、上記被告の信者は、「色情因縁の現れ」などと言った。同原告は、その日は、上記被告の信者から、「条件が満たないから、もう一度来なさい。」などと言われ、不安感を抱いたまま帰宅した。

同原告は、翌二八日午後、再び、壱田が用意した自動車に乗って、上記旅館に行き、先生と呼ばれていた被告の信者から、家系図の説明をされ、預貯金や資産を尋ねられ、その後、「家族を救うために、出家しなさい。」、「あなたには使命がある。」などと言われ、出家できない旨述べると、「壷を授かって自分の使命を知っていきましょう。」と言われた。そして、上記被告の信者が、一旦、席を立ち、戻って来て、前日に同原告が壱田に対して自分(同原告)の好みである旨指し示したピンク色がかった壷を差し出したので、同原告は、感動し、天徳堂から、その壷を上記被告の信者の言い値である代金一二〇万円で購入することにした。同原告は、帰宅する自動車内で、壱田から、代金の捻出方法として、保険による借入などがあると言われた。

同原告は、上記被告の信者から、日を空けると魔が入るから翌日に支払うよう言われたため、翌二九日、定期預金を解約するとともに、郵便局の簡易保険から借入をして、同原告宅において、壱田に対し、上記壷と引き替えに、上記代金を支払った。

(エ) ビデオセンター入会

原告丙田は、上記壷を受け取る際、壱田から、勉強しなければいけないので、ビデオ四〇巻を見るようにと言われ、昭和六一年一〇月ころまで、毎週日曜日、米子市内のビデオセンターに通い、被告の教義を教えるビデオを見たりした。なお、上記ビデオセンターは、連絡協議会の四国ブロック鳥取第二地区が運営していた。

(オ) 高麗人参茶購入

原告丙田は、ビデオセンターに通っていた間である昭和六一年六月二〇日、被告の信者のtから、家系についてもっと大切な話があると言われて、大山のホテルに行った。同原告は、そこで、先生と呼ばれる被告の信者から、家系図の話をされ、「まだ使命が足りない。」、「血統転換をしなければいけないので、高麗人参茶はそのための神薬であるから、これを授かりなさい。」などと言われて不安に思い、家族が悪くならないようになどと考えて、一和ジャパンから、高麗人参茶二〇個を代金一六〇万円で購入することにした。

同原告は、上記被告の信者から、日を空けると魔が入るからなどと言われ、翌二一日、保険からの借入とおじからの借入によって、上記代金を支払った。

(カ) 指輪の購入

原告丙田は、ビデオセンターに通っていた間である昭和六一年八月二四日、被告の信者の壱田から誘われ、宝石の展示会に行った。同原告は、被告の信者の販売員から、ローンにすれば月々わずかで済むなどと言われ、執拗に勧誘行為を受け、ローンを組んでエメラルドの指輪を代金四〇万円で購入した。

(キ) 被告への入会

原告丙田は、昭和六一年一〇月ころ、ビデオを見終わり、ワンデーズセミナー、ツーデーズセミナーという講師による講義を受け、同月二五日、同講義の最後に、「主の路程」という講義を受け、○○がメシアであることや被告の活動などを明かされ、その場で、被告の入会申込書への署名を求められた。同原告は、それまで、被告の教義を学び、これを信ずるようになっていたため、これに署名した。

(ク) 献金

原告丙田は、被告の信者から、先祖や家族を救い、地上天国を創る、被告を脱会すれば不幸になるなどと言われて献金を勧誘され、被告の教義に沿うものと考え、以下のとおり、同原告が所属していた連絡協議会の四国ブロック鳥取第二地区の施設において、被告の信者に対し、被告に対する献金として合計一〇三万四〇〇〇円を献金した。

昭和六二年 五月二九日 三〇万円

同年一二月三一日 五〇万円

昭和六三年 八月一〇日

六万四〇〇〇円

同年一二月一七日 七万円

平成 元年 一月二七日 四万円

同年一二月二三日 三万円

平成 二年 八月二四日 三万円

(ケ) 脱会

原告丙田は、被告に入会後は、連絡協議会の四国ブロック第二地区に所属し、友人等に対し、ハッピーワールド関連会社の商品の購入を勧めたり、友人等をビデオセンター等に勧誘するなどの活動を続けたが、平成三年一二月末、両親及び牧師により、被告を脱会するよう説得され、平成四年一月初め、被告を脱会した。

④ 原告丁谷秋子

前提事実及び証拠(甲15の1、F1ないし3、乙E12、乙F1、2)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する弐谷風美の陳述記載(乙F1、2)は採用しない。

(ア) 原告丁谷秋子(昭和二八年生)は、昭和六二年一〇月ころ、高校時代の友人で当時被告の信者であった原告丙田から、電話で、「サークルに入っているが、友達と二人で家に行きたい。」と言われ、その日に原告丁谷秋子宅で、原告丙田及び被告の信者である弐谷と会った。その際、原告丁谷秋子は、原告丙田らから、霊の存在を信じるかと尋ねられ、信じると答えると、家系図の作成を勧められたので、家系図を作成してもらった。また、原告丁谷秋子は、同年一一月ころ、弐谷から、電話で、詳しい家系図を作成するよう勧められ、同人宅に行ったところ、被告の信者である天徳堂の販売員に、家系図を作成してもらい、因縁の話をされ、お払い済みの数珠だとして勧められ、天徳堂から、数珠を購入した。

(イ) ビデオセンター入会

原告丁谷秋子は、その後、原告丙田から、ビデオセンターに通うよう勧められ、連絡協議会が運営する倉吉のビデオセンターに通い始め、昭和六三年六月ころまでの間に、二、三回、同センターにおいて、ビデオを見た。

(ウ) 献金

原告丁谷秋子は、上記ビデオセンターに通っていた間の昭和六二年一二月一九日、原告丙田の誘いで、弐谷宅に行き、そこで、被告の信者の男性から、因縁の話をされたり、「献金をすれば先祖や家族が救われる」、「お金には魔が入る」などと言われて、献金を求められた。原告丁谷秋子は、困惑して、原告丙田に相談したところ、自分(原告丙田)は借金をしてお金を工面したと言われ、迷ったものの、五〇万円の献金を承諾した。なお、この際、原告丁谷秋子は、預金や保険の金額について聞かれている。

同原告は、その場にいた被告の信者から、魔の入らないうちに、翌日に献金するよう言われたので、翌二〇日、同原告宅付近の路上で、天地正教の信者と称する被告の信者二人に対し、献金として五〇万円を交付した。

(エ) ビデオセンターとの決別

原告丁谷秋子は、昭和六三年六月ころ、倉吉のビデオセンターにおいて、「清めた水」に関連して、金銭の出費を求められたので、疑念を抱き、家族に相談して、ビデオセンターに通うことを止めた。

⑤ 原告戊野

前提事実及び証拠(甲G1、2、乙G1)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する弐谷風美の陳述記載(乙G1)は採用しない。

(ア) 原告戊野(昭和四年生)は、原告丙田の母である。

(イ) 献金

原告戊野は、昭和六二年一二月ころ、同人宅において、被告の信者二人から、一時間ほど、家系図の話をされたが、同原告の夫が怒って、被告の信者二人を帰らせたことがあった。しかし、昭和六三年三月初め、同原告は、その子である原告丙田から、家系図の話を聞くよう勧められ、弐谷宅に行ったところ、原告丙田同席の下、弐谷から、家系図を見ながら、水子の因縁の話をされたり、原告戊野の妹が離婚したことに関して色情因縁であることなどの話をされたりしたため、不安感を抱き、因縁を無くすために、天地正教に献金するよう勧められ、これを承諾した。そして、同原告は、弐谷から、いくら献金できるか尋ねられ、「一〇万円くらいなら。」と答えると、「あと二万円出して下さい。」と言われたので、これを承諾した。

同原告は、同月二〇日ころ、同人の勤務先において、被告の信者のuに対し、天地正教に対する献金として一二万円を交付した。

(ウ) 献金後の経緯

原告戊野は、その後、連絡協議会の四国ブロックの鳥取第一又は第二地区が運営するビデオセンターに行くよう勧められ、数回、同センターに通い、被告の教義を教えるビデオを見たり、被告の信者から話を聞いたりしたが、その内容を信用できず、同センターに通うのを止めた。

⑥ 原告東山花子

前提事実及び証拠(甲H1ないし6、12、13、乙H1ないし4、9ないし13、20、証人六田月美、同七谷十郎、同八野東美、原告東山花子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人六田月美、同七谷十郎、同八野東美の供述及び陳述記載(乙H1、3ないし5)並びにA及びBの陳述記載(乙H2、9)は採用しない。

(ア) 原告東山花子(昭和三九年生)は、平成二年当時、看護婦をし、両親及び妹三人と同居していた。なお、同原告の父は、婿養子である。

(イ) 絵画の購入

原告東山花子は、平成二年九月一四日、被告の信者で職場の同僚の九山西美に誘われて、ハッピーワールド関連会社の丸扇が主催する絵画展に行き、同人及び被告の信者の販売員から、「気に入った絵はありますか。」、「買って損をすることはありませんよ。」などと絵画の購入を勧められ、来場していた人の姿がまばらになっても購入を勧められたため、絵画を購入しないと帰らせてもらえないように感じ、ローンを組んで、丸扇から、絵画一枚を代金二五万七五〇〇円で購入した。同原告は、上記代金をクレジット契約により支払ったので、二六万七二三三円を支出した。

(ウ) マイウエイ総合企画入会

原告東山花子は、平成三年七月二四日、被告の信者の六田から、電話で、アンケートに答えてほしいと言われ、様々な質問をされ、「女ばかりの姉妹だから絶家だ。」と言われ、同月二六日午後七時ころ、六田に、マイウエイ総合企画(ビデオセンター)に連れて行かれた。同原告は、青年意識アンケートに記入し、家庭や職場などの話をしていると、六田や被告の信者の八野から、「理想的な家庭を築くためには自分の悪い性格を直さなければならない。」、「本当の愛を知らないと人を愛せない。」などと言われ、マイウエイ総合企画のビデオ講座受講を勧められたが、その内容について教養を広めるためのものという程度しか分からなかったため、しばらく入会を渋っていた。すると、六田が、午後一〇時三〇分を過ぎても、「悪いところだったら勧めないから。」、「一本ビデオを見て合わないと思ったら止めればいいから。」などとビデオ講座受講を執拗に勧めるため、同原告は、断り切れず、ビデオ講座を受講することにした。なお、マイウエイ総合企画は、連絡協議会の四国ブロック鳥取地区が運営していた。

(エ) マイウエイ総合企画入会後の経緯

原告東山花子は、その後、平成三年七月二八日から八月三一日までの間に、約一八回、マイウエイ総合企画に通い、被告の教義を教えるビデオを見たり、その後、被告の信者のCの話を聞いたりした。また、同原告は、上記の期間、アンケートを採られ、財運や借財という項目には、財運を○、借財も○と回答した。

同原告は、同年八月二七日、マイウエイ総合企画において、Cから、被告の教義の説明を交えながら、○○がメシアであると明かされたが、この時点においては、マイウエイ総合企画で学んだことが被告の教義であるとは明確には認識できなかった。なお、同原告は、被告の信者のA'ことA(以下「A」という。)から、マイウエイ総合企画でのビデオ受講のことを言わないように口止めされていたため、家族にも告げなかった。

同原告は、同年八月二九日、被告の信者の七谷十郎(以下「七谷」という。)のセミナーを一人で受け、その中で、○○の生い立ちや被告の名称、被告の活動などを明かされた。

(オ) 一回目の献金

原告東山花子は、平成三年八月三一日、看護婦の深夜勤務(午前零時三〇分から午前九時まで)を終えた後、マイウエイ総合企画に行き、午前一〇時から、献金の意義を説明するビデオを見て、その後、四畳程度の部屋において、Cから、被告の教義を説明されたり、以前作成された家系図を用いて話をされ、昼食の際には、六田及びAから、被告の教義についての話をされた。同原告は、昼食後、上記四畳程度の部屋で、Cから、「女ばかりの姉妹で絶家なので、長女であるあなたが立たないといけない。運を切り開かないといけないから、あなたが頑張らないといけない。」、「自分の持っているお金をすべて出さないといけない。」などと献金を求められ、これを承諾しないでいると、Cが何も言わずに退席し、六田及びAが、部屋に入って来て、「自分たちもしてきた道だから、あなたもできるでしょう。」、「世界のためにお金が使われると思ったらできるんじゃないの。」などと言われ、七時間以上もかけて献金を要求された。同原告は、当時、被告の万物復帰の教義を信ずるようになっていたこともあり、午後四時過ぎころ、上記の被告の信者らの執拗な勧誘によって、自己の金銭を献金しないでいることに罪悪感を感じるようになり、献金を承諾した。すると、六田及びAが退席し、Cが戻って来て、具体的な献金額を尋ねたので、同原告は、一八〇万くらいと述べたが、Cから、「被告では、切りのいい意味のある数字がある。二一も切りのいい数字なので、二一〇万できたらいい。」と言われ、二一〇万円を目標に献金することにした。同原告は、Cから、サタンが入るからという理由で、三日以内に献金するよう言われ、水行(風呂場で洗面器に水をくんで肩からかけること)四〇杯をするように指示された。

なお、同原告は、上記同日、マイウエイ総合企画で教えられてきたことが、被告の教義であると明確に認識した。

同原告は、同年九月二日、銀行の預金を二〇万円程度引き出し、その後、Aとともに郵便局に行き、貯金を引き出し、午後二時、同人に対し、マイウエイ総合企画において、被告に対する献金として二〇〇万六三四二円を交付した。

なお、同原告が上記当時に有していた預貯金の合計額は二〇〇万円程度であった。

(カ) 被告への入会及び二回目の献金

a 原告東山花子は、平成三年九月四日、被告に入会した。

b 原告東山花子は、平成三年一一月ころ、フォーデーズセミナーに、同年一二月、新生トレーニングに参加し、ホーム(被告の信者が共同生活をする施設)での生活を始めた。このような中で、同原告は、被告を脱会すると先祖にも恨まれるし、子孫も祟られる、救われる道は被告の教義しかない、被告を脱会したら地獄に堕ちるなどと教え込まれた。

同原告は、同年一二月二三日ころ、被告の教義に沿うものと考え、被告に対し、一年間の罪の清算として一三万円を献金した。

(キ) 着物購入

原告東山花子は、平成四年二月一五日、アベルと呼ばれていた上司の被告の信者から、「お母さんを動員して、着物を買ってもらったらどうですか。一二〇万円の目標でどうですか。」と指示されたので、母を着物の展示会に連れて行った。同原告は、万物復帰の教えに基づき、被告の物を買うことがその人の救いにつながると考え、母に金銭を出してもらうが、同原告が買主として契約をすることとして、ローンを組んで、丸扇から、着物一式を代金約一〇〇万円で購入する契約をした。

同原告は、同年三月九日、被告の信者を通して、上記着物一式のうち、帯を交換し、上記契約を代金七八万〇七四〇円に変更してもらい、同額を支払った。

(ク) 脱会

原告東山花子は、その後もホームで生活し、被告の教義の実践として、着物の展示会や健康フェアーなどに友人等を誘うなど被告の信者として活動を続けたが、平成四年六月三〇日、両親らにより、被告から脱会するよう説得され、同年七月末ころ、被告を脱会した。

⑦ 原告西川

前提事実及び証拠(甲I1、3、4、乙I1ないし3)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するD、E、Fの陳述記載(乙I1ないし3)は採用しない。

(ア) 京都カルチャーセンター入会

原告西川(昭和二〇年生)は、平成四年一一月末の午後五時ころ、同人宅において、被告の信者のDから、手相をみてもらい、その際、同原告や夫の氏名を聞かれたが、その時は、Dに帰ってもらった。

同原告は、翌日、同人宅において、D及び被告の信者の男性から、悩みを聞かれ、同原告が子宮の病気や会社の同僚とのトラブルで悩んでいると述べたところ、同原告の夫の氏名が記載された紙を見せられ、字画はいいが、このままだと運勢が良くない、良くするには先祖のことを知って供養した方がいい、そのためには、三代前から一〇代前まで分かる良い先生を知っているから行きましょうなどと言われ、京都カルチャーセンターに行くよう勧められた。

同原告は、同年一二月五日、D及び被告の信者に連れられて、同センターに行き、被告の信者のG(以下「G」という。)から、両親、祖父母などの話を聞かれ、Gが作成した家系図を示されるなどして、ビデオ講座の受講を勧められ、受講することにした。なお、同センターは、連絡協議会の北関西ブロック京都地区が運営していた。

(イ) 京都カルチャーセンターでの受講状況

原告西川は、平成四年一二月一九日から平成五年二月二六日までの間、一七回、京都カルチャーセンターに行き、被告の教義を教えるビデオを見たり、GやEから、ビデオを見た感想や悩みを聞かれたりした。なお、同原告は、同センターにいた被告の信者に対し、二回、何の信仰なのかを尋ねたが、そのうちに分かるなどと笑って言われ、回答を得られなかった。

同原告は、平成五年二月二〇日、同センターで開かれた同原告家の供養祭において、同人が二歳のときに亡くなった母等の供養祭を行うことができたとして、涙を流して喜んだ。

同原告は、同月二七日、同センターにおいて、Eと二人で、「主の路程」という講義を受けた上、講師から、○○がメシアであることや被告の活動などを明かされた。同原告は、それまで、同センターで学んだことが被告の教義であるとは認識していなかったが、ビデオによる学習の結果、特段の違和感を持たなかった。

同原告は、その後も引き続き、同センターにおいて、被告の教義を教えるビデオを見た。

(ウ) 献金

原告西川は、平成五年三月二日、京都カルチャーセンターの一室において、E、D、先生と呼ばれていた被告の信者のF(旧姓F')から、今後は、F、E、Dに何でも相談するように言われ、また、同原告の家庭を救うために、神様の前に精一杯捧げて再出発するのがいいなどと言われて献金を求められ、これを承諾した。すると、Fが、「別室で聞いて来ますから。」と言って、一旦退席し、その間、同原告は、Eから、同原告が自由にできる金銭の額を聞かれた。Fが、戻って来て、紙に一〇〇万、一二〇万などと記載し、どれにするか、無理のないところでと尋ねたので、同原告は、一〇〇万を指さし、一〇〇万円を献金することにした。同原告が、Fから、早い方がいいと言われて戸惑っていると、Fは、Eに対し、明日、同原告が預貯金の引き出しに行くのに一緒について行くよう指示した。

同原告は、翌三日、Eとともに、信用金庫に行き、定期預金を解約して、同センターにおいて、Fに対し、被告に対する献金として一〇〇万円を交付した。同原告は、このころ、被告に入会した。

(エ) 献金後の経緯

原告西川は、その後、ハッピーワールド関連会社から高麗人参茶を購入したり、京都カルチャーセンターに通うなどし、少なくとも平成五年六月二三日まで、被告に入会していた。

⑧ 原告南田

前提事実及び証拠(甲J1、2、乙J1)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するHの陳述記載(乙J1)は採用しない。

(ア) サン・アカデミー入会

原告南田は、平成二年一月末当時、大学の四年生であったが、京都市四条通りの路上において、被告の信者のIから、「自己啓発について学んでいる青年サークルです。アンケートをお願いします。」と声をかけられ、アンケートに答え、「ビデオを見ながら、勉強していくんだけど一度来てみませんか。普通の映画のビデオもありますよ。」などと言われ、翌日にサン・アカデミー(ビデオセンター)に行く約束をした。なお、サン・アカデミーは、連絡協議会の北関西ブロック京都地区が運営していた。

同原告は、翌日、サン・アカデミーにおいて、被告の教義を簡単に紹介するビデオを見るなどし、I及び被告の信者の女性から、サン・アカデミーへの入会を勧められ、サン・アカデミーに入会した。

(イ) 被告への入会

原告南田は、その後しばらくの間、サン・アカデミーに通い、被告の教義を教えるビデオを見て、ツーデーズセミナーに参加し、その講義の中で、イエスに代わって他の人が再臨のキリストとして今この時代に来られると教えられ、これを信じた。そして、同原告は、その約一か月後、フォーデーズセミナーに参加し、そこで、○○がメシアであり、それまで学んできたことが被告の教えであることなどを明かされた。

同原告は、被告の教えに共感し、また、被告がキリスト教の一派であると考えて、そのころ、被告に入会した。

同原告は、その後、初級トレーニングに参加し、ホームで被告の信者と共同生活をしながら、被告の教義を勉強し、中級トレーニングに参加した。

(ウ) 献金

原告南田は、平成三年三月、○○が世界平和のために用いるものと信じ、被告の信者の艮町に対し、被告に対する献金として一四万円を交付した。

(エ) 脱会

原告南田は、平成四年二月、被告を脱会した。

⑨ 原告北谷

前提事実及び証拠(甲K1ないし3、乙K2ないし4)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するJ、H、Kの陳述記載(乙K2ないし4)は採用しない。

(ア) 印鑑購入

原告北谷は、会社員であったが、平成二年秋に予定されていた結婚が破綻になったことから精神的に落ち込んでいたところ、同年四月二六日、同人宅において、被告の信者のLから、「この度、この近所に盛運堂という印鑑の会社を開いた社員のものですが、挨拶回りに伺ったものです。姓名判断とか手相とかも少し見れるんですが、何か悩み事などないですか。」と尋ねられ、手相をみてもらったり、姓名判断をしてもらい、その中で、上記結婚の破談の件を話すと、「この人とは別れて良かったですよ。相性も悪いし、もし結婚してもすぐに別れたでしょう。」と言われ、「今あなたはちょうど人生において転換期を迎えている。すごく大事な時ですよ。」、「この時期にこの印鑑を持つことによって運が開かれるでしょう。」などと言われて購入する気持ちになり、盛運堂から、印鑑を代金一二万円で購入した。

(イ) 京都カルチャーセンター入会

原告北谷は、平成二年五月二四日、同人宅において、Lから、同人が作成した家系図を示され、「先祖に幸福な家庭を築くことができなかった家庭がありますね。」、「私よりも、もっと色んな悩みとかを、家系図を通して相談してくれる先生がいらっしゃるから、一度、そこに行きましょう。」などと言われ、京都カルチャーセンターに行くよう勧められた。

同原告は、同年六月一日、同センターにおいて、先生と呼ばれていた被告の信者のKから、同原告の経歴や同人の家族などを聞かれ、「家系図から見ても分かるように、今、あなたが不幸なのは、あなたの祖先に色情の因縁があるからなんだ。祖先があなたにすごく頼っていて、あなたに生まれ変わって欲しいと言ってられるわよ。」、「ちょうど、転換期を迎えている。」、「心の勉強になるから。」などと言われ、同センターへの入会を勧められ、同センターに入会した。

同原告は、その後、同センターに通い、被告の教義を教えるビデオを見て、その感想文を書いたり、被告の信者と話をし、また、ハッピーワールド関連会社からネックレスを購入したりした。

(ウ) 献金

原告北谷は、平成二年七月初め、京都カルチャーセンターにおいて、Kから、○○がメシアであることや被告の活動などを明かされ、同原告が果たさなければいけない○○から課された使命は、一二〇万円の献金であるなどと献金を求められた。同原告は、当時、被告の教えを信じるようになっており、献金しないと災いが生じると考え、Kに対し、献金を承諾した。しかし、現金で出せるのは七〇万円しかないと答えると、Kは、残りは宝石を買うことによっても条件を果たせるなどと言った。そこで、同原告は、同月一三日、アイビーから、ペンダントを代金六四万円で購入し、同年八月一〇日、同センターにおいて、被告に対する献金として七〇万円を交付した。

(エ) 脱会

原告北谷は、その後、フォーデーズセミナーや新生トレーニングに参加し、被告の教義を勉強し、平成二年一二月初め、連絡協議会の北関西ブロック京都地区の活動に従事するために、勤務先の病院に退職願を提出したところ、同病院の事務局長により、被告から脱会するよう説得され、被告を脱会した。

⑩ 原告春山

前提事実及び証拠(甲N1、乙N1、2、4、6)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するM、N、O、Pの陳述記載(乙K1、2、4、6)は採用しない。

(ア) 松江ファミリーサークル入会

原告春山(昭和三六年生)は、平成四年当時、平成元年に両親を亡くして以来、空虚な気持ちになっていたところ、平成四年七月、被告の信者のMが送付した差出人松江ファミリーサークル名義の葉書のアンケートに回答し、返送した。そして、同月二六日、Mから、電話で、占いができる人がいるなどと言われ、松江ファミリーサークルを紹介され、後日、同サークルに行く約束をした。なお、同サークルは、連絡協議会の四国ブロック島根地区又は被告の信者らで構成される島根信徒会(上記島根地区が連絡協議会解消後に存続したもの)が運営していた。

同原告は、翌二七日、Mとともに、同サークルに行き、被告の信者のvから、姓名判断をしてもらったところ、運勢が下降気味で転換期にある、同サークルで勉強して運勢を転換するよう勧められ、同サークルに入会した。

(イ) 松江ファミリーサークル入会後の経緯

原告春山は、その後、週に二、三回、松江ファミリーサークルに通い、被告の教義を教えるビデオを見たり、家族や先祖につき聞かれ、家系図を作成されたり、先生と呼ばれる被告の信者から、「九代目(同原告のこと)の使命が大きい。」と言われたりした。

同原告は、平成四年八月二〇日、同人の従兄弟から、同サークルの運営主体が被告であると言われたため、Mに問い合わせると、Mは、自身が被告の信者であり、絵画も購入したと答えた。このとき、既に同原告は、被告の教義を信じていたため、特に疑問を抱かず、その後も、同サークルに通い、被告の教義を教えるビデオを見ていた。

(ウ) 献金

原告春山は、平成四年八月三一日、被告の信者のQ宅において、M、被告の信者のR、Nが同席の下、自分自身の魂も才能も財産もすべて神から与えられたもので、感謝を込めてお返しするという内容のビデオを見た。その後、同原告は、先生と呼ばれていた被告の信者のwから、家系図に関連して、三代前の祖先が同原告に影響を与えている、弟が短命である、同原告は結婚できないなどと言われて不安感を抱いた。そして、その直後、降雨があり、これを母の霊的な導きとして受け取り、Mに相談したところ、同人から一〇〇〇万円の献金が必要と言われ、これを承諾した。

同原告は、同日午後七時ころ、M及びRに対し、やすぎ農協の定期預金証書を交付し、翌日の九月一日昼、同農協みなみ支所で、両名と落ち合った後、預金を引き出そうとしたが、担当職員が疑問を呈したため、預金を引き出せなかった。同原告は、同日夕方、勤務先の会社を帰社した後、Mとともに喫茶店に行き、そこで、N及び先生と呼ばれていた被告の信者と会い、預金の引出し方法について相談した。そして、N、被告の信者のP(以下「P」という。)、Mらは、預金の引き出し方法について検討し、その結果、被告の信者のOが同原告から活動資金名目で一〇〇〇万円を借入れたと仮装することになった。

同原告は、同月三日朝の通勤途中、Mから、上記検討結果が記載されたメモを渡され、午後零時三〇分、Oとともに、同農協みなみ支所に行き、上記検討結果のとおり、Oの借用金名下に預金を引き出そうとしたが、またもや、担当職員に契約書などがないと駄目だなどと言われ、預金を引き出すことができなかった。

N、Pを始めとする被告の信者は、再度、預金を引き出す方法を検討し、Oが同原告から一〇〇〇万円を借り入れ、これを被告の信者であるMの父が連帯保証したとする公正証書を作成することになった。

同原告は、同月四日夕方、帰社すると、Mが待っており、同人とともに喫茶店に行き、そこで、公正証書の委任状に署名をし、N、Oら被告の信者は、同月七日、これによって公正証書を作成した上、M及びその父、Oらが、同月一〇日、同農協みなみ支所において、同支所の支所長に対し、上記公正証書を示し、同原告の預金一〇〇〇万円の引出しを説得した。

同原告は、同月一一日午前一〇時、同農協みなみ支所近くの公園で、Mと待ち合わせて同支所に行き、同原告一人で預金一〇〇〇万円を線引小切手引で引き出す手続をした後、上記公園に戻り、Mに対し、被告に対する献金として、上記線引小切手を交付した。

(エ) 脱会

原告春山は、その後しばらくの間、松江ファミリーサークルに通っていたが、遅くとも平成六年には、被告を脱会した。

⑪ 原告夏川

前提事実及び証拠(甲O1、7、乙O1ないし5、20、証人S、同T、同U、原告夏川東子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人S、同T及び同Uの供述及び陳述記載(乙O1ないし3、21、23、25)並びにV、Wの陳述記載(乙O4、5、22、24)は採用しない。

(ア) 原告夏川(旧姓夏野、昭和四四年生)は、平成四年当時、両親と妹二人と同居して生活しており、看護婦として稼働し、月給が約一八万円で、預貯金が三〇〇万円程度であった。

(イ) 原告夏川は、平成二年ころ、被告の信者で小学校時代の同級生のxに勧められて、一か月間の間に数回、彦根カルチャーセンターや石山に所在するビデオセンターに通ったことがあるが、ビデオの内容を理解できなかった。

(ウ) 印鑑の購入

原告夏川は、平成四年五月八日、同人宅において、「彦根に姓名判断の店をオープンする宣伝」との口実で、被告の信者のS及びXの訪問を受け、Sに、手相をみてもらい、質問に答えて、仕事や結婚についての悩みを述べた。その後、同原告は、Xに、姓名判断をしてもらい、同人が作成した家系図を示され、色情因縁があり、家系も女系で絶家となるなどと言われ、絶家の具体的事例を述べられたりし、両親から家を継ぐよう言い聞かされて育てられたこともあり、これに畏怖した。同原告は、S及びXから、印鑑を購入すれば、家が守られる、「ある人が印鑑を買って、その後、その息子が交通事故に遭ったが、幸いにも生命に別状はなかったのです。そして、その印鑑を見てみたら、二つに割れていたそうです。印鑑が息子さんを守ってくれたのですね。」、「印鑑でも、短いものは短命になるからよくありません。できるだけ長い印鑑をもたれた方がいいですよ。」などと印鑑の購入を勧められ、ハッピーワールド関連会社のエクセルから、印鑑三本を代金一七万円で購入した。同原告は、Sから、四〇日間は魔が入るので、誰にも言わないようにと口止めされ、これに従った。

(エ) 彦根カルチャーセンター入会と被告への入会

a 原告夏川は、平成四年五月二〇日ころ、同人宅において、S及び被告の信者のY(以下「Y」という。)から、古印供養の祈りをしてもらい、Yから、人生の勉強ができるところであるとして、彦根カルチャーセンターを紹介された。なお、同センターは、連絡協議会の北関西ブロック滋賀地区が運営していたが、同年四月ころに被告の信者で構成される彦根信徒会が運営を引き継いだ。

同原告は、その後、週三回程度、同センターに通い、被告の教義を教えるビデオを見たり、被告の信者から感想を聞かれたりした。同原告は、聖書の話が出てきたため、宗教であれば止めようと思い、被告の信者に対して質問したが、宗教ではないと否定された。また、同原告は、同センターにおいて、被告の信者から、同人の給料、預貯金や家族の仕事、資産などを聞かれた。

b 原告夏川は、平成四年六月二七日、彦根カルチャーセンターでの特別セミナーにおいて、被告の信者で講師のWから、初めて、ここが被告であることやメシアである○○のことを告げられた。そして、同原告は、ビデオ学習等によって、既に被告の教義を信じていたため、同日、同センターにおいて、被告入会申込書に署名し、これを同センターに提出した。

(オ) 一回目の献金

原告夏川は、平成四年六月二八日、彦根カルチャーセンターにおいて、自分のためだけにお金を使うと、大腸の病気や癌になるという内容のビデオを見せられ、その後、被告の信者のUから、家系のことを良く見てくれる先生がいると言われて、南彦根のマンションの一室に連れて行かれた。

同原告は、上記マンションの一室の部屋において、先生と呼ばれていた被告の信者のVと二人にされ、Vから、同センターでの感想を聞かれ、感謝している、これも先祖のおかげだと思うと答えると、「あなたの先祖がここまで守ってくれたのですよ。特にあなたは、亡くなられたお祖母さんがいつも霊界で働きかけておられます。そして、その先祖は、今、あなたに夏野家が犯してきた罪の清算をしてほしいと願っておられます。」、その罪の清算として、出家や献金など三つの方法があり、この中からできるものを選んで下さいと言われ、自分にできるのは献金しかないと思い、献金を選択した。その直後、Vは、別室に行き、Uが、同原告のいる部屋に入って来て、同原告に対し、「あなたのために、今、先生が祈っておられるのですよ。」と言った。しばらくして、Vが戻って来て、紙に「二〇〇」と記載し、「これだけ出してほしいと先祖は言われています。」と言い二〇〇万円の献金を求めたが、同原告が、「ちょっと難しい。」と答えると、Vは再び別室に行った。しばらくして、また、Vが戻って来て、紙に「一二〇」と記載し、「先祖の罪の清算をここできちんとしておかないとあなたが霊界へ行ったとき、先祖はあなたを訴え地獄へ突き落とすでしょう。お祖母さんも、今、どれほど霊界で苦しんでおられるか分かりません。」などと言ったため、同原告は、不安感を募らせ、献金するしかないという気持ちになり、一二〇万円の献金を承諾した。同原告は、Vから、サタンが入ってはいけないとして、上記献金のことを口止めされ、また、三日以内に献金しないと交通事故などに遭うなどと言われた。なお、Vは、普段は、被告の信者から「先生」とは呼ばれていなかったものの、献金を勧める話をするときにだけ、「先生」と呼ばれていた。

同原告は、翌二九日、Sに同行されて、郵便局及び農業協同組合に行き、預貯金を引き出し、上記南彦根のマンションの一室において、Vに対し、被告に対する献金として一二〇万円を交付した。この後、上記献金は、同センターを通して、被告の大津教会に納められた。

(カ) 二回目の献金

原告夏川は、その後も、彦根カルチャーセンターに通い、ビデオを見るなどし、平成四年八月八、九日、ツーデーズセミナー、同年一一月五日から八日までの間、フォーデーズセミナーに参加し、被告の教義をより深く信仰するようになった。

同原告は、同年一一月末ころ、同センターの一室において、U同席の下、先生と呼ばれていた被告の信者のTから、「一回献金したのにまたと思われるかもしれないけど、万物を通じて家族の救いがある。」、「今まで先祖が守って下さったから、ここまで来られたわ。霊界が働いていたから。」、「でも、これからは、あなた自身が頑張らなければいけないわ。家族を救うためにも、まず万物を通じないと、なかなか救われないのよ。」などと言われ、Uからは、「二回もと思われるかもしれないけれども、私も献金した。」、「人間的に見たらその何回も献金するのは何だろうと思うかもしれないけれども、ご父母様の心情が分かるから。」などと言われ、献金を求められ、献金が被告の教義に沿うものであり、家族を救うことになると思い、一二〇万円の献金を承諾した。その際、同原告は、Tから、三日以内に献金しないと交通事故などに遭うなどと言われた。

同原告は、定期貯金を解約したりして、預貯金を引き出し、同年一二月一日、同センターにおいて、Tに対し、被告に対する献金として一二〇万円を交付した。その後、上記献金は、同センターを通して、被告の大津教会に納められた。

(キ) 三回目の献金

原告夏川は、平成四年一二月、母と妹を彦根カルチャーセンターに連れて行ったことにより、家族に同原告が被告に入会していることが判明し、被告を脱会するよう説得されたが、引き続き、被告の信者として、同センターに通ったり、ハッピーワールド関連会社から、宝石を購入するなどしていた。

同原告は、平成五年一一月七日から一〇日までの間、韓国で開催された修練会に参加しようとしたところ、その開催日の前日の六日、被告の信者の巽村から、参加費用として一万ドル(約一一〇万円)の献金が必要と言われ、困惑したが、献金は参加後でよいからと言われたので、そのまま参加した。そして、上記修練会において、○○や日本人の幹部から、「エバ国家である日本が、今、世界のために頑張らないとこれから先日本は悲惨な道を歩むことになる、そのためにも、一万ドル献金をしなければいけない。」などと繰り返し献金を求められた。

同原告は、同月二九日、Wに対し、上記修練会参加のための献金として一一〇万円を交付した。

(ク) 脱会

原告夏川は、平成六年三月ころ、家族や牧師により、被告から脱会するよう説得され、五〇数日後、被告と決別し、平成七年夏、被告に対し、脱会届を提出した。

⑫ 原告秋野

前提事実及び証拠(甲Q1ないし7、乙Q1、4、5、7、14ないし19、証人Z、同a、同b、原告秋野西子本人)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反する証人Z、同a、同bの供述及び陳述記載(乙Q14、15、17)並びにc及びdの陳述記載(乙Q16、18)は採用しない。

(ア) 原告秋野(昭和一六年生)は、平成五年当時、夫及び子供三人(長女、次女及び長男)と同居する家庭の主婦であり、また、四人姉妹の長女であった。

(イ) 長居カルチャーセンター入会

原告秋野は、平成五年三月一二日、同人宅において、被告の信者のbから、アンケートを採られ、家族構成などを答え、次いで、当時心配していた長男の姓名判断をしてもらったところ、「青年期も中年期も老年期も殺傷因縁がある。」と言われたため、不安感を抱いた。同原告は、bから、長居カルチャーセンターの開運講演会に行くよう勧められ、同意したが、これを口止めされた。bは、帰り際、ビデオを見たりして、いろいろ勉強していけば幸せになれると言ったので、同原告は、当時、マスメディアが被告を取り上げていたことを想起し、「統一教会じゃないんですか。」と尋ねたが、bは、「統一教会じゃありませんよ。そういえば統一教会もビデオを見たりしますね。」と答えた。

同原告は、同月一九日、同センターにおいて、開運講演会を受けたところ、四人姉妹であるから、絶家である、絶家は絶家同士結婚するようになっている、死後も永遠に地獄にいなければならなくなるなどと言われ、また、長男がbから殺傷因縁があると言われたこともあり、絶望的な気持ちになったが、同センターに通って勉強すれば、幸せにつながると言われ、通うこととし、同センターに対し、受講料として一〇万円を支払った。なお、同センターは、当時、連絡協議会の南関西ブロック大阪第六地区(浪速ブロックと呼ばれたこともある。)が運営していたが、その後、平成四年四月ころ、被告の信者で構成される浪速信徒会が運営を引き継いだ。

(ウ) 長居カルチャーセンター入会後の経緯

原告秋野は、その後、週四、五回、長居カルチャーセンターに通い、被告の教義を教えるビデオを見て、被告の信者から感想を聞かれたりした。そのような中で、同原告は、平成五年四月、被告の信者から、同人が作成した家系図を示され、その際、同原告の夫の姉が早く亡くなっているので、そのような姉の運勢が同原告の長女にかかってくる、同原告の夫の父母も早く亡くなっているので、同原告家は早死にの家系である、先祖は永遠の地獄で苦しんでいる、同原告の妹二人が未婚であるので、天国に行けないなどと言われ、不安感を募らせた。また、同原告は、同年五月中旬、被告の信者のaから、預貯金や保険等を詳しく聞かれ、同原告名義のもの、その子名義のものの金額を答えた。

同原告は、同月二五日ころ、先生と呼ばれていた被告の信者のZから、今までビデオ等で学んだことは被告の教義であり、○○がメシアであると明かされた。同原告は、これを聞いて、驚いたが、既に、ビデオ学習等により被告の教義を信じるようになっていたことから、被告の教義の信仰を続けることを決意した。そして、同月二七日、同センターで同原告家の先祖供養祭が開催され、同原告は、被告を信仰することを感謝する手紙を朗読した。

(エ) 一回目の献金及び被告への入会

a 原告秋野は、平成五年五月二八日、長居カルチャーセンターの一室において、a同席の下、Zから、先祖の罪を清算しないといけない、献金しないと、この世のいろいろな悪い出来事も清算し続けていくことができないなどと献金を求められたが、これを承諾することに躊躇した。Zが、一旦部屋を出て行ったので、同原告が、aに対し、同人も献金したのか尋ねると、aは、自分も何千万円の単位で献金したと答えたので驚愕していたところ、しばらくして、Zが部屋に戻って来て、「三〇〇万と出ました。」と述べたので、同原告は、何とか可能な範囲であると考え、これを承諾した。なお、この当時、同原告は、同センターにおいて、被告の信者から、家族に被告の名称を言っても理解されないから、言わないようにと口止めされていた。

同原告は、同月三一日、aと信託銀行で待ち合わせた上、同原告名義の預金から一七二万八〇〇〇円を引き出し、次女名義の預金から一〇二万六〇〇〇円を引き出した上、aとともに、被告の阿倍野教会に行き、被告に対し、献金として三〇〇万円を交付した。

b 原告秋野は、上記献金の際、被告に入会申込書を提出して入会した。

(オ) 二回目の献金

原告秋野は、その後も同センターに通い、ライフトレーニング、フォーデーズセミナーに参加し、被告の教義の信仰をより深めた。そのような中で、同原告は、先生と呼ばれていた被告の信者のdから、この前は、先祖開放で先祖の罪を清算したが、今度は、同原告の罪を清算しなければならない、そのためには、物の代表であるお金を神に捧げる必要がある、そうしないと、同原告も近い将来、精神分裂病を患い苦労している兄嫁と同じようになってしまうなどと言われ、より不安感、恐怖心を募らせ、献金しなければならないと思うようになった。

同原告は、平成五年八月一六日ころ、長居カルチャーセンターの一室において、dから、先祖を引っ張っていくのだからとして、一回目の献金額である三〇〇万円よりも多い献金を求められたが、もはや自己名義の預貯金では資金を捻出できなかったので、その旨述べた。それに対し、dは、被告が借りる形でもいいと述べたので、同原告は、そのような形にして、三三〇万円を用意することにした。

同原告は、翌一七日、長女の預金から一七一万円を引き出し、生命保険を解約して解約返戻金を受け取った上、同センターにおいて、被告の信者のcに対し、被告に対する貸付金として二〇〇万、被告に対する献金として一三〇万円を交付した。なお、上記貸付金は本訴訟係属後に完済された。

(カ) 袋帯及び小物類の購入

原告秋野は、新生トレーニングに参加していた平成五年一〇月二二日、ハッピーワールド関連会社である創美が主催する着物展示会において、アベルと呼ばれる被告の信者のeらから、「天の物を家に置いておくことはすごくお守りになる」、「○○の奥さんである△△という人の関係のものを持つということは素晴らしいことである。」などと言われ、着物類の購入を強く勧められ、これを購入することが被告の教義に沿うものであると考え、創美から、袋帯及び小物類を代金五一万五〇〇〇円(消費税込み)で購入した。同原告は、夫に発覚されるのを避けるために、aに対して袋帯を預けた。

(キ) 三回目の献金

原告秋野は、新生トレーニングに参加したところ、同原告らには罪が数多くあり、いくらお金を積んでもなかなか清算し切れないが、メシアである○○に会えば、罪が多く清算されるから、韓国で開催される修練会に参加するよう勧められ、これに参加しようと考え、平成五年一一月末ころ、修練会に参加しようとしたが、家族に知られて、その反対に遭い、参加できなかった。

同原告は、家族に内緒で、長居カルチャーセンターや西田辺教育センターに通い続け、e、b、aから、修練会に参加しない本人にも大変な責任があるが、参加させなかった者の方がよりサタンが打つ(重い病気や死んでしまったり、重大な事故に遭うの意)と言われ、不安感を募らせた。そして、同原告は、平成六年三月二八日、同人の次女及び長男の預金から一五〇万円ずつ引き出し、そのころ、aに対し、被告に対する貸付金として三〇〇万円を交付した。

同原告は、同年五月九日、上記修練会への参加費用の一万ドル献金として、上記平成六年三月二八日付け貸付金のうち一一〇万円を献金することとし、一九〇万円は返金を受けた。

同原告は、同年五月二一日から二四日、上記修練会に参加したが、その際、○○から、家に帰ったら、預貯金通帳を全部出して、被告に出しなさいと言われた。そして、同原告は、同月三〇日ころ、被告に対し、三〇万円を交付した。

(ク) 脱会

原告秋野は、その後も、被告の信者として、長居カルチャーセンターや西田辺教育センターに通い続けていたが、平成六年一〇月中旬、家族により、被告から脱会するよう説得され、四二日後、被告を脱会した。

⑬ 原告冬谷

前提事実及び証拠(甲R1ないし5、乙R1、3)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するfの陳述記載(乙R1、3)は採用しない。

(ア) ライフクリエイトセンター入会

原告冬谷(昭和四四年生)は、昭和六三年当時、短期大学の一年生(当時一九歳)であったところ、同年一〇月、被告の信者で中学時代の友人のg(以下「g」という。)に誘われて、神戸市三宮に所在するライフクリエイトセンター(ビデオセンター)に行き、被告の信者やgから、ビデオを見たり、人と話をしたりしながら自分の可能性を見つけられる、宗教ではないと説明され、同センターに入会した。なお、同センターは、連絡協議会の北関西ブロック兵庫第一地区が運営していた。

同原告は、同センターに通い、被告の教義を教えるビデオを見たり、被告の信者からその感想を聞かれたりした。そのような中、同原告は、同センターに数回通ったころ、被告の信者から、親にはここに通っていることを言わない方がよいと言われ、また、被告の信者に対し、宗教かと尋ねたら、宗教ではないと回答された。

同原告は、同センターに通い始めてから約二週間後、ツーデーズセミナーに参加し、一泊二日間、朝から晩まで講義を受け、神やサタンなど被告の教義を教えられ、次いで、ライフトレーニングに参加し、約二週間、一日一時間三〇分程度、被告の教義を教える講義を受けた。

同原告は、同年一二月二八日から三一日までの間、フォーデーズセミナーに参加し、それまで教えられたことが被告の教義であり、○○がメシアであると明かされた。

(イ) 被告への入会及びその後の経緯

a 原告冬谷は、平成元年一月一日から二月末くらいまでの間、新生トレーニングに参加し、被告の教義を信ずるようになっており、そのころ、被告に入会した。

b 原告冬谷は、このころから、被告の信者から、「あなたは氏族のメシアである。」、「自分や家族を救う使命がある。」、「背後にはたくさんの先祖の霊がいて苦しんでおり、被告の教えを知らずに死んだ者は皆苦しんでいる。」と言われたり、また、「この道を知ったのに離れてしまえば罪が重くなり、家族も後々苦しむ。」、「被告にいた人間がここを離れて普通の結婚をすると奇形児を生む。」と言われたりし、不安感を抱いた。

(ウ) 振袖の購入

原告冬谷は、平成元年二月、連絡協議会の北関西ブロック兵庫第一地区兵庫青年支部の学生部に所属し、被告の信者から、実践(ビデオセンターへの入会を勧誘したり、被告に関連する物の販売をしたり、購入すること)をしないと、悪の条件が積み重なり、家族が死んでから地獄に堕ちるなどと言われ、これを信じるようになった。

同原告は、同年一〇月、上記の考えから、母をハッピーワールド関連会社の京鶴が開催している着物の展示会に連れて行き、「タワー」と呼ばれる奥の別室で、販売を担当する被告の信者に対し、母が着物を購入しそうにもないことを告げると、上記被告の信者は、同原告がアルバイトして買うことを勧め、同原告は、これに従い、京鶴から、振袖を代金七六万四六〇〇円で購入した。

同原告は、上記青年支部が新生トレーニング等を行っていた白石ビルの地下に、上記振袖を置いていた。

(エ) 絵画の購入

原告冬谷は、平成三年三月、短期大学を卒業して就職後、上記兵庫青年支部の青年部に所属していたものの、しばらく同部の活動から離れていたが、○○は貧しい人々のためにお金を使っているなどと考え、被告の活動から離れることに罪悪感を持っていた。

そのような心理状態の際、同原告は、平成四年七月二七日、上記青年部の責任者のyから誘われて、京鶴が開催している神戸チサンホテルでの絵画展に行き、被告の信者の坤木から絵画の購入を勧められたところ、被告の活動から離れていることや、お金を持っていることの罪悪感、善いことのためにお金を使いたいという思いから、ローンを組んで、京鶴から、絵画を代金三一万一二〇〇円で購入した。

(オ) 脱会

原告冬谷は、平成五年二月ころ、元被告の信者や被告に反対する宗教団体から話を聞き、被告と決別し、同年春、正式に被告を脱会した。

⑭ 原告花山

前提事実及び証拠(甲S1、3ないし11、乙S1ないし3)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するh、i、jの陳述記載(乙S1ないし3)は採用しない。

(ア) 京橋市民大学センター入会

原告花山(昭和四六年生)は、平成三年一二月ころ、松下電器海外庶務の従業員をしていたが、会社の同僚であった被告の信者から、ビデオセンターに誘われ、最初は断り続けていたが、同人から「先祖は皆地獄で苦しんでいる。それを今生きているあなたが救ってあげないといけない使命がある。」などと言われ、不安を抱き、同人の勧めに応じ、同月八日、京橋市民大学センターに行った。同原告は、被告の信者のkに、姓名判断をされたり、家系図を作成されたりし、「このままでは家族と同じ過ちを繰り返すことになる。家族や先祖、子孫を救う道はここにしかない。」などと言われ、京橋市民大学センターに入会した。同原告は、以後、同センターに通い、被告の教義を教えるビデオを見るようになった。

(イ) 被告への入会

原告花山は、平成四年二月二日、ツーデーズセミナー、同年四月、ライフトレーニング、同年五月五日、フォーデーズセミナー、上級トレーニングに参加し、被告の教義をより深く信仰するようになった。

同原告は、フォーデーズセミナーのころまでに、それまで学んだことが被告の教義であり、○○がメシアであると明かされ、そのころまでには、被告の教義を信じずるようになっていたため、被告に入会した。

(ウ) ダイヤ付ルビーネックレス及び時計の購入

原告花山は、平成四年五月二三日、ハッピーワールド関連会社のクリベルが開催している宝石の展示会において、被告の信者の1らから、「ルビーは神の愛を表すから、持っていると神の愛に満たされ、神に守られる。よく似合うからこれを買ったらいい。」などと購入を勧められ、「大変だけど、二人で天のために頑張ろうね。万物条件になるよ。」などと言われた。

同原告は、上記1らの言葉や万物復帰を信ずる気持ちから、ローンを組んで、クリベルからダイヤ付ルビーネックレスを代金三〇万円で、時計を代金四万一〇〇〇円でそれぞれ購入し、合計三五万四六〇〇円を支払った。

(エ) 着物、帯及び小物類の購入

原告花山は、平成四年七月、新生トレーニングにおいて、被告の信者のmから、「着物を一般の店で買って後悔している。絶対創美のものを購入したらいい。天のものだから万物条件になる。」、「着物には、今まで苦労してきた女性(先祖)の恨みがこもっているから、天の万物を私達後孫が授かったことで、その女性達の恨みを開放してあげないといけない。」などと言われ、被告の教義を信仰する気持ちから、着物を購入しないといけないと考えるようになった。同原告は、同月二五日、創美が開催する着物の展示会において、被告の信者から、「絞りが安くなっているからこれにしたらよい。花山さんのために準備されたみたいね。先祖も喜んでいる。」と言われ、、ローンを組んで、創美から着物、帯及び小物類を代金四六万二九〇二円で購入し、合計四八万四三五四円を支払った。

(オ) 一回目の献金

原告花山は、平成四年八月から、新生トレーニングB(後に実践トレーニングに名称変更)に参加し、同年一一月には、松下電器を退社し、東大阪信徒会青年支部の活動に従事するようになり、より深く、被告の教義を信仰するようになった。

同原告は、同年一二月のボーナスが支給される時期に、上司の被告の信者のn及びoから、「働いて得た分の一〇分の三をまず天に捧げなければならない。お金はすべて自分のものではなく神から預かっているものだから、自分勝手に使えばサタンが入る。それは泥棒と同じだ。万物条件を立てることによって守られる。できる限り精一杯の金額を捧げなさい。」と言われて献金を求められ、被告の教義に沿うものと考え、oに対し、被告に対する献金として一〇万円を交付した。

同原告は、また、被告の信者から、「祝福を受けるためには、三数のお金を四回捧げなければならない。」と言われ、被告の教義に沿うものと考え、同年一二月、oに対し、被告に対する献金として三万円を、平成五年夏、上司の被告の信者のhに対し、被告に対する献金として九〇〇〇円を交付した。

(カ) 着物(恋待ちつぼみ)、草履及びバック、足袋の購入

原告花山は、平成五年二月、東大阪信徒会の研修隊において、伝道活動や経済活動を行っていたところ、上司のn及びkから、ハッピーワールド関連会社の商品販売の実績を追及され、「天の万物を授かることによって救われるのだから、親に嘘をついて無理を言ってでもお金を出させることで、親の救いにつながる。」などと言われ続け、何としてでも買って先祖や親を救わなければならないと考えるようになり、また、「恋待ちつぼみという着物はお父様(○○)を慕う気持ちを表すから、これを持っていると心情が近くなる。」などと言われ、創美から、同月一九日、着物(恋待ちつぼみ)を代金三五万円で、同月二〇日、草履及びバックを代金一〇万〇九四〇円で、そのころ、足袋を代金二五〇〇円で購入した。

(キ) 二回目の献金

原告花山は、平成五年三月、上司の被告の信者から、○○からアメリカのケーブルテレビを買収するため皆三〇万円を献金するようにと命令された、その指示に応じなければならない、天の摂理を進めていかなければと言われ続けた。同原告は、これに応じ、kに対し、被告に対する献金として三〇万円を交付した。

(ク) 三回目の献金

原告花山は、平成五年一二月までに、被告の信者のpに対し、被告に対する献金として一五万八八〇〇円を交付した。

(ケ) 四回目の献金

原告花山は、平成五年一二月ころ、平成七年八月二五日に開催される合同結婚式の費用として、pに対し、被告に対する献金として一〇万二〇〇〇円を交付した。

(コ) 五回目以降の献金

原告花山は、平成五年末から平成六年始めにかけて、韓国で開催される修練会に参加し、○○から、一万ドル(日本円にして一一〇万円)の献金を求められ、「達成できなければ日本が四分割され、他国の植民地にされてしまう」、「世界の母(エバ国家日本)としての使命があるのに、日本から献金が出なければ子供(他の国々)を食べさせていけない。日本が滅びようとする危険な状態にある。」、「日本は、戦後、他国の需要(ベトナム戦争等)で他の国を犠牲にして大きくなったのだから、今度は、他国のためにそのお金を出して犠牲になっていかなければならない。そのために天からお金を与えられているのだ。」などと言われた。

同原告は、日本に帰国した直後、東大阪信徒会青年支部の集会において、被告の信者のjらから、「何としてでもこの献金を全うしなければ先祖に祟られ、子孫末代まで蕩滅罪が残る。霊界に行ったとき、何故あのときどんなことをしてでもしなかったのかと恨まれる。」、「命懸けで日本の使命を果たさなければならない。」などと言われ、献金を求められた。その後も、○○から「先生(○○)はこんなに苦労してボロボロになるまで日本のためにしているのに、何故、日本はできないのか。もう日本を見捨てる。」などとの指令が来て、同原告は、毎日のように、hらから、献金を求められた。

同原告は、上記の献金要請に応じ、被告の教義に沿うものと考え、以下のとおり、hに対し、被告に対する献金を交付した。

平成六年六月まで 三万円

七月 七〇〇〇円

八月 二万三五〇〇円

九月 一万三〇〇〇円

一〇月 五〇〇〇円

一一月 一〇〇〇円

(サ) 脱会

原告花山は、東大阪信徒会に所属し、伝道活動や経済活動をしたり、ビデオセンターでカウンセラーをするなど積極的に東大阪信徒会青年支部の活動を行っていたが、平成七年一月二日から、家族より、被告から脱会するよう説得され、同年五月八日、被告を脱会した。

⑮ 原告鳥川

前提事実及び証拠(甲T1、乙T1、2)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。これに反するn、iの陳述記載(乙T1、2)は採用しない。

(ア) 京橋市民大学センター入会

原告鳥川(昭和三七年生)は、平成四年一一月二二日、原告花山と同じ松下電器海外庶務グループに派遣社員として勤務していたところ、当時被告の信者であった原告花山に誘われ、毛皮やアクセサリーの展示会に行き、アイビーから、コート等を購入した。

原告鳥川は、その後、原告花山に誘われて、京橋市民大学センターに行き、oから、「ここには、いろいろな人が来て勉強をしている。絶対に宗教ではない。」と言われたので、同センターに入会した。

(イ) 献金

原告鳥川は、その後、同センターに通い、被告の教義の内容を教えるビデオを見るなどし、平成四年一二月一二日、ツーデーズセミナーに参加し、その後まもなく、ライフトレーニングに参加した。

同原告は、ライフトレーニングにおいて、先生と呼ばれていた被告の信者のnから、家系図を見てもらい、「母方の祖母が二度の結婚で、二度とも夫と死別している因縁で、同原告が結婚できず、できても子供ができない。子供が生まれても奇形児が生まれる。兄夫婦に子供ができないのもその因縁のためである。」と言われて、不安感を抱いた。そして、さらに「その因縁を断ち切って救ってくれるのが○○である。そのためには家庭の完成数が一二だから、一二〇万円を献金するように。」と言われて献金を勧められた。同原告が、これに対し、「一二〇万円ものお金は定期を解約しないといけないし、その時間もない。」と答えると、その場にいた被告の信者のqが代わりに解約しに行くと述べたので、同原告は、一二〇万円の献金を承諾した。

同原告は、それから数日後の同月二九日、qに対し、預金通帳及び保険証を預け、定期預金を解約して預金を引き出してもらった。

同原告は、翌三〇日、qとともに、被告の阿倍野教会に行き、被告に対し、一二〇万円を献金した。

(ウ) 脱会

原告鳥川は、ライフトレーニング後、平成四年一二月三〇日夜からフォーデーズセミナーに、平成五年一月から、上級トレーニングに参加したが、タレントのrの被告脱会を知り、被告を脱会した。

(3)  検討

ア 総論

(ア)  献金勧誘行為の違法性

一般に、特定の宗教の信者が自己の属する宗教団体に加入を勧誘し、教義の学習を勧めた上、献金を勧誘する行為は、社会通念上相当な範囲に止まっている限り、信教の自由により保障された宗教活動の範囲内にあるといえる。しかし、これらの宗教活動が、その目的が利益獲得等の目的を併せ有し、方法・手段が宗教であることを秘した上、その教義を信じ込ませ、あるいは殊更に害悪を告知するなどして相手方を不安に陥れる等して、相手方の自由意思を制約するものであり、その結果、相手方の財産と比較して不当に多額の金員を献金させるなど、社会通念上相当な範囲を逸脱している場合には、違法であるというべきである。

この見地から、本件における原告らに対する一連の献金等の勧誘行為の違法性につき、まず全般的に検討する。

a  目的

上記各認定事実によれば、被告の信者は、概ね、各種マニュアルに沿って、当初は宗教団体であることを秘して、ビデオセンターあるいは被告に入会させた者に対し、被告の教義(万物復帰)に因縁話を織り込んで、事前に調査した財産状態を勘案した額の献金を求め、その場で多額の献金を承諾させ、熟慮の機会を与えないために、家族等への口外を禁止して、数日以内に多額の献金をさせていること、新規信者は、被告に入会後、被告の万物復帰という教えの下、間断なく執拗に、献金を求められてこれに応じ、また、被告の信者が運営するハッピーワールド関連会社の商品を購入させられていること、献金あるいは商品購入代金は、被告ないし連絡協議会の活動資金として用いられていることが認められる。

上記のことからすれば、被告の信者は、被告の教義の伝道という目的に併せて、勧誘行為の対象者の財産を供出させ、被告において多額の資金を集めることを重要な目的としていたと認められる。

b  方法・手段

(a)  因縁話など困惑・畏怖させるような言動を用いた勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、組織的、計画的に、手相をみたり、家系図鑑定などを行い、色情因縁や殺傷因縁、絶家などの因縁話をするなどして、原告らを困惑・畏怖させて不安感を抱かせ、その心理状態に付け込んで、被告への入会及び献金を勧誘していると認められるものがあるが、かかる勧誘行為は、それ自体、社会的相当性を逸脱した方法というべきである。

(b)  宗教性を秘匿しての勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者らは、ビデオセンターが被告の教義を組織的・計画的に伝道するために設置されたものであるにもかかわらず、同センターへの入会を勧誘する際、これを秘し、宗教との関連性すら秘匿し又は明確に否定し、被勧誘者がビデオ受講をしている間、被勧誘者に対しては、ビデオセンターに通っていることを口外しないよう指導し、被告の教義に対する理解度をチェックしつつ、被勧誘者の悩み等を聞き、その悩み等を解決するために、次のセミナー等のプログラムに参加することを勧めるなどし、組織的・体系的に救いを被告の教義に求めざるを得なくするように誘導し、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、それまで学んだことが被告の教義であり、○○がメシアであるなどと明かし、被告への入会を勧め、既に被告の教義以外に救いはないと信じ込み、その点で自由意思を制約された心理状態の原告らに対し、多額の献金をすることが被告の教えに適うなどとして献金を求めているのである。

このような勧誘手段は、欺罔的であり、また、組織的、計画的に自由意思を制約することを意図して行われている点で悪質であり、信仰の選択の重要性にも照らせば、社会的相当性を逸脱した、極めて不当な方法であると言わざるを得ない。

(c)  したがって、上記の各手段が併用された、あるいはその一方が用いられた献金勧誘行為は、違法であるというべきである。

c  結果

上記のとおり、被告の資金集めをも重要な目的とする、社会的相当性を逸脱した、不当な勧誘行為によって、原告らがその財産状態と比して多額の献金をさせられたとすれば、その被害は重大であるといえる。

(イ)  商品購入の勧誘行為の違法性

a  特定の宗教団体の信者が、宗教活動の一環として、これに付随して、当該宗教団体の活動資金を獲得するために、商品購入の勧誘を行うことは、献金勧誘行為について検討したのと同様に、社会通念上、その目的が正当であり、かつ、方法及び結果が相当である限り、正当な行為であって、違法ではないが、これに反し、当該行為が、目的、方法、結果から見て社会通念上相当な範囲を逸脱している場合には、違法であるというべきである。

b  被告入会前における原告らに対する商品購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、組織的、計画的に、連絡協議会あるいは被告の活動資金を獲得するため、連絡協議会により定められた目標額を達成すべく、戸別訪問や展示会において、被勧誘者に対し、手相、姓名判断、家系図を利用し、因縁話をするなど、困惑・畏怖させるような話をして不安感を抱かせ、その心理状態に付け込んで商品の勧誘行為をし、結果的に原告らの資産に比較して高額の商品を購入させているものが認められるところ、これは、社会的相当性を大きく逸脱し、違法性を有する行為というべきである。

しかし、他方、上記認定事実によれば、原告らの中には、被告への入会前に、被告の信者から特段困惑・畏怖させるような話をされることなく、自らの自由な意思により、商品を購入したと評価されるものが認められるが、このような場合、商品購入の勧誘行為自体は、それが組織的、計画的に、被告への献金勧誘行為目的を秘してされていたとしても、未だ社会的相当性を逸脱した違法な行為ということはできない。

c  被告入会後における原告らに対する商品購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者らは、組織的、計画的に、宗教との関連性を秘匿して、原告らにビデオセンターへの入会を勧誘し、被告の教義を教え込んで被告に入会させた上で、被告の万物復帰の教えに基づき、ハッピーワールド関連会社の商品を購入すれば、救いにつながり幸せになれるなどと述べて商品購入を勧誘しており、既に被告の教義によるほか救いはないと信じ込み、その点で自由意思を制約された心理状態にある原告らに、その財産状態に比較して高額の商品を購入させているのであり、これは、献金勧誘行為について検討したのと同様、社会的相当性を逸脱した違法な行為であるといわざるを得ない。

イ 各原告に対する献金及び商品購入の勧誘行為の違法性について

① 原告甲山

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告甲山に対し、京橋市民大学センター入会の勧誘行為時、家系図を用いて、運勢が悪いなどと述べ、不安感を抱かせ、同センターに通っていることを口外しないよう口止めし、同原告が同センターに通っていた約六か月間、宗教との関連すら告げずに被告の教義を教え込み、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、一回目の献金を勧誘し、その勧誘行為時においては、長時間にわたって、執拗に献金を求め、熟慮の機会を与えないために、その翌日に献金をさせ、その際、被告に入会させていること、その後も被告の教義に沿うものとして献金を求め、少なくとも合計二八〇万円を献金させており、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

b 商品購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、原告甲山に対する商品購入の勧誘行為は、被告に入会後、被告の教義を信じ込んでいた同原告に対し、その心理状態を利用して、被告の教義に沿うものとして勧誘したものであり、高麗人参茶一二本を代金九六万円、印鑑三本を代金一二万三六〇〇円、霊石壷を代金一〇〇万円で購入させており、その各代金額がいずれも同原告にとって不相当に高額であることからすれば、被告の信者らによる同原告に対する各商品購入の勧誘行為は、違法というべきである。

② 原告乙川(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告乙川に対し、アルファコミュニティー入会の勧誘行為時、特定の宗教との関連を否定し、同人がアルファコミュニティーに通っていた約二か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込んでおり、被告入会申込書への署名を求める際には、三日間のセミナー受講後の独特の雰囲気を利用して、やや強引に入会申込書に署名をさせていること、被告に入会後、被告の教義に沿うものとして献金を勧誘し、多数回にわたり、少なくとも合計一〇二五万五七一三円に及ぶ献金をさせていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

③ 原告丙田

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告丙田に対し、壷購入時、具体的な因縁話をして不安感を抱かせて、ビデオセンターへの入会を勧め、同人がビデオセンターに通っていた六か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、被告の教義を信仰したと判断した時点において、被告に入会させ、その後、被告の教義に沿うものとして献金を勧誘し、少なくとも合計一〇三万四〇〇〇円を献金させていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

b 印鑑購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、原告丙田は、ビデオセンター及び被告への入会前、被告の信者らから、「印鑑にも相がある」、「欠けている印鑑は良くない。」、夫の欠けている印鑑につき、「これはいけない。」などと言われて、以前から、欠けている印鑑は良くないと聞いていたことから、印鑑二本を代金五万円で購入したことが認められる。

これによれば、上記勧誘文言は、困惑・畏怖させる程度のものとはいえないし、また、同原告がこれによって困惑・畏怖したと認めるに足りる証拠もない。

したがって、被告の信者らによる同原告に対する印鑑購入の勧誘行為が違法ということはできない。

c 壷購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、壷を購入させるという意図を隠して、家系図を見る先生に会うと言って、原告丙田を旅館に連れ出し、その先生と呼ばれていた被告の信者において、長時間、同原告に対し、殺傷因縁や色情因縁などの具体的な因縁話をして、不安感を抱かせるとともに、購入すれば家族を因縁から救うことができるなどと言い、さらに、予め別の被告の信者が聴取した同原告の好みの壷を差し出して、いかにも神秘的な現象が起こったかのように装い、かつ、事前に同人から聞き出した財産状態に基づいて代金額を決めて壷を購入させ、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、代金一二〇万円を支払わせたこと、その代金額が同原告にとって不相当に高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する壷購入の勧誘行為は、詐欺的、恐喝的な手段によるものであり、社会的相当性を逸脱し、違法というべきである。

d 高麗人参茶購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、高麗人参茶を購入させる意図を隠して、家系につき話があると呼び出して、先生と呼ばれていた被告の信者において、原告丙田に対し、上記壷を購入しただけでは、家族を救うことができない、血統転換が必要である旨述べ、上記の壷購入の際の説明から同原告が不安な心理状態にあったことを利用して、高麗人参茶二〇個を購入させ、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、代金一六〇万円を支払わせたこと、その代金額が同原告にとって不相当に高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する高麗人参茶購入の勧誘行為は、詐欺的、恐喝的な手段によるものであり、社会的相当性を逸脱し、違法というべきである。

e 指輪購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、原告丙田が、ビデオセンターに入会後、被告への入会前、被告の信者に誘われて、展示会に行き、被告の信者の販売員に勧誘されて、指輪を代金四〇万円で購入したことが認められるが、上記勧誘行為時、その勧誘が執拗であったとしても、未だ同原告を困惑・畏怖させたり、欺罔するなどの言動がされたことを認めるに足りる証拠はない。また、同原告は、本人尋問において、同人を展示会に誘った被告の信者との関係上、つい購入した旨供述していることから(原告丙田夏子本人 第二五回口頭弁論調書二一、二二頁)、被告の教義や教えを信じ込んでいたために、指輪を購入したと認めることもできない。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する指輪購入の勧誘行為を違法ということはできない。

④ 原告丁谷秋子(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告丁谷秋子がビデオセンターに通っていた間、同人を被告の信者宅に連れて行き、同原告に対し、因縁話をして、献金をすれば先祖や家族が救われる、お金を持っていることが災いの元になるかのように述べて不安感を抱かせ、同人の財産状態に基づき決めた額の献金を承諾させ、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、五〇万円を献金させていること、同献金額が同原告にとって多額であること、天地正教から来たと称する被告の信者が上記献金を受け取ったことなどが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果は社会的相当性を逸脱し、違法というべきである。

⑤ 原告戊野(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告戊野に対し、家系図に基づき具体的な因縁話をして、不安感を抱かせて、献金を承諾させ、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、天地正教に対するものとして、一二万円を献金させていること、同献金額が同原告にとって多額であることなどが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑥ 原告東山花子

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告東山花子に対し、マイウエイ総合企画入会の勧誘行為時、同原告の家は絶家であるなどと言って、不安感を抱かせ、執拗に勧誘し、マイウエイ総合企画に通っていることを口外しないよう口止めし、同原告の財産状態を調査していること、同原告がマイウエイ総合企画に通っていた約一か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、一回目の献金を勧誘し、その勧誘行為時においては、同原告の家は絶家になってしまう、そうならないためには献金をする必要があるなどと言って、七時間以上の長時間にわたり執拗に献金を求め、同原告の不安感に付け込み、これを承諾させ、熟慮の機会を与えないために、その二日後に、二〇〇万六三四二円もの献金をさせ、その直後、被告に入会させていること、その後、被告の教義に沿うものとして、二回目の献金をさせていること、少なくとも合計二一三万六三四二円の献金をさせ、これが同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

b 絵画購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者が、原告東山花子がマイウエイ総合企画に入会する約一年前、絵画の展示会において、同人に対し、執拗に絵画の購入を勧誘したことが認められるものの、未だその勧誘行為が社会的相当性を逸脱した違法なものであると認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告の信者らによる同原告に対する絵画の購入勧誘行為を違法ということはできない。

c 着物購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、被告に入会後、被告の教義を信じ込み、被告の物を買わせることがその人の救いにつながると信じていた原告東山花子に対し、同人の母を着物の展示会に連れ出せた上、着物の購入を勧め、同原告に着物を代金七八万〇七四〇円で購入させており、その代金額が同原告にとって高額であることからすれば、被告の信者らによる同原告に対する着物購入の勧誘行為は、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑦ 原告西川(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告西川に対し、京都カルチャーセンターに入会させる意図を隠して、姓名判断を用いて、このままだと運勢が良くない、先生にみてもらったらいいなどと言って、同原告を同センターに入会させ、同人が同センターに通っていた約二か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、その間、同原告から、二回にわたり質問されるも、被告の名称を回答せず、同原告が被告の教義を信仰したと確認した段階で被告の名前や○○の名を明かした上、被告の教義に沿うものとして、一回目の献金を勧誘して、これを承諾させ、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、一〇〇万円もの献金をさせ、そのころ、被告に入会させていること、同献金額が同原告にとって多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑧ 原告南田(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告南田がサン・アカデミーに通い、フォーデーズセミナーに参加するまでの約二か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、被告に入会させ、その後、被告の教義に沿うものとして献金を勧誘し、一四万円を献金させていること、同献金額が同原告にとって多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑨ 原告北谷

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、京都カルチャーセンターに入会させる意図を隠して、家系図を通して相談してくれる先生がいると言って、原告北谷を同センターに連れ出し、同センター入会の勧誘行為時、具体的な因縁話をして、不安感を抱かせて同センターに入会させ、同原告が同センターに通っていた約一か月間、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、被告や○○の名を明かし、被告の教義に沿うものとして一回目の献金を勧誘し、その勧誘の際には、一度は、一二〇万円という多額の献金を求め、同原告が断ると、献金額を七〇万円とする代わりに、宝石の購入でも被告の教義を実践することになるなどと言って、七〇万円を献金させ、アイビーからペンダントを代金六四万円で購入させていること、同献金額及び代金額は同原告にとって不相当に高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

b 印鑑購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告北谷が京都カルチャーセンター入会の勧誘を受ける前、手相や姓名判断において、同人から、結婚破綻の件を聞いた上、同人が転換期を迎えている、印鑑を購入すれば、運が開かれるなどと言って、印鑑を代金一二万円で購入させたことが認められる。

しかし、上記の勧誘文言は、同原告に害悪を告知し、同人を困惑・畏怖させる程度のものとはいえないし、また、同原告が困惑・畏怖したと認めるに足りる証拠もない。

したがって、被告の信者らによる同原告に対する印鑑購入の勧誘行為が違法ということはできない。

⑩ 原告春山

上記認定事実によれば、被告の信者は、松江ファミリーサークルに入会させる意図を隠して、占いのできる者がいると言って、原告春山を同サークルに連れ出し、同サークル入会の勧誘行為時、運勢が下降気味であるなどと言って、不安感を抱かせて同サークルに入会させ、同人が同サークルに通い始めてから約一か月間は、宗教との関連を告げず、被告の教義を教え込み、約一か月後、同原告が、自ら、同サークルが被告の関連施設であると気付いたものの、既に被告の教義を信仰していたものであり、その後、被告の教義に沿うものとして、一回目の献金を勧誘し、一〇〇〇万円という同原告にとって極めて多額の献金を求め、直ちに、同原告の預金の引き出しに取り掛かり、預金先の担当者から疑問を呈され、預金の引き出しを拒否されるや、架空の貸付を提示して、預金の引き出しを図り、これも拒否されるや、架空の貸付及び連帯保証に係わる公正証書まで作成し、同原告をして、預金を引き出させ、執拗なまでに極めて多額の献金を促したことが認められる。

以上によれば、被告の信者らよる同原告に対する被告への献金の勧誘行為は、組織的、計画的な被告への献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑪ 原告夏川(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告夏川が彦根カルチャーセンターに通っていた約一か月間、被告の教義を教え込み、同原告の質問に対して宗教性を明確に否定し、同人から財産状態を聞き出した上、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、被告や○○の名を明かして被告に入会させ、その翌日に被告の教義に沿うものとして一回目の献金を勧誘し、その勧誘行為時においては、献金を求める意図を隠して、家系のことをみてくれる先生がいると言って、マンションの一室に連れて行き、先生と呼ばれていた被告の信者において、同原告に対し、先祖が罪の清算を願っている、そのためには献金をする必要があるなどと言って不安感を抱かせて、献金を承諾させ、予め聴取した財産状態に基づき献金額を提示し、熟慮の機会を与えないために、その翌日に、一二〇万円もの献金をさせ、その後、ビデオ学習などにより被告の教義をより深く信仰するようになった同原告に対し、被告の教義に沿うものとして重ねて献金を勧誘し、一回目の献金も含めて少なくとも合計三五〇万円もの献金をさせていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑫ 原告秋野

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告秋野に対し、長居カルチャーセンターに入会させる意図を隠して、具体的な因縁話をして、不安感を抱かせ、開運講演会への参加を勧め、その際、同人から被告と関連するか尋ねられたのに、これを否定し、開運講演会においては、同人に対し、より具体的な因縁話をして、不安感を募らせ、長居カルチャーセンターに入会させ、同人が同センターに通っていた約一か月半の間、被告の教義を教え込み、これに因縁話を織り込んで、被告の教義によるほか救いはないと信じさせ、また、同人からその財産状態を聞き出し、被告の教義に対する信仰を持ったと判断した時点において、被告や○○の名を明かし、その直後、同原告家の先祖供養際を開催した上、被告の教義に沿うものとして、一回目の献金を勧誘し、その勧誘行為時においては、先祖の罪を清算するために献金しないといけないなどと言って、執拗に献金を求め、予め聴取した財産状態に基づき献金額を提示し、献金を承諾させ、熟慮の機会を与えないために、家族には言わないように口止めし、その三日後に、三〇〇万円という多額の献金をさせて入会させたこと、その後、被告の教義の信仰をより深めた同原告に対し、被告の教義に沿うものとして重ねて献金を勧誘し、少なくとも合計五七〇万円もの献金をさせていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な被告への入会及び献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

b 袋帯及び小物類購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告秋野が被告に入会後に、同人に対し、被告に関連する物を持てばお守りになるなどと被告に関連する物の購入が被告の教義に適う旨勧めて、袋帯及び小物類を代金五一万五〇〇〇円で購入させており、同代金額が同原告にとって高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する袋帯及び小物類購入の勧誘行為は、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑬ 原告冬谷(商品購入の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告冬谷がライフクリエイトセンターに通っていた間、同人に被告との関係を秘して被告の教義を教え込み、同センターに通っていることを言わないように口止めし、同原告が宗教かと尋ねたのに対し、これを否定し、約二か月後のフォーデーズセミナーにおいて、既に被告の教義を信じ込んだ同原告に対し、それまで学んだことが被告の教義であり、○○がメシアであると明かし、その後、新生トレーニングに参加させて、入会させたこと、そして、振袖購入の勧誘行為については、被告の信者が、被告の教義の実践として勧誘して、振袖を代金七六万四六〇〇円で購入させており、同代金額が同原告にとって不相当に高額であること、絵画購入の勧誘行為については、同原告が被告の活動から離れていることの罪悪感を有していたところ、被告の教義に沿うものとして勧誘され、代金三一万一二〇〇円で絵画を購入し、同代金額が当時短大卒業後一年目の同原告にとっては不相当に高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する振袖及び絵画購入の勧誘行為は、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑭ 原告花山

a 献金の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告花山に対し、先祖が地獄で苦しんでいる、同人には先祖を救う使命があるなどと言って、京橋市民大学センターに連れ出し、同センター入会勧誘行為時にも、先祖や家族を救うためなどと言って、同人に不安感を抱かせて同センターに入会させ、同人が同センターに通っていた約五か月間、宗教との関連を秘匿し、被告の教義を教え込み、約五か月後のフォーデーズセミナーのころまでに、被告や○○の名を明かして、同人を被告に入会させ、その後、被告の教義に沿うものとして、重ねて献金を要求し、合計七七万九三〇〇万円という多額の献金をさせていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

これに対し、被告は、同原告が、同人の姉から、被告や同センターのことを聞いて知っていたと主張し、同原告からその旨聞いたとの被告の信者の陳述書(乙S1及び2)を提出するが、これによれば、同原告の姉が、上記勧誘当時、被告の信者であったことは推認されるものの、上記姉が東京に住み、同原告が関西に住んでいたこと、同原告と同人の姉との連絡状況が不明であること、上記認定事実のとおり、一般的に被告の信者が信者でない者に対しビデオセンターが被告の関連施設であると告げないことからすれば、被告の上記主張を認めることはできない。

b 商品購入の勧誘行為

上記認定事実によれば、被告の信者は、原告花山が被告に入会後、同人に対し、被告に関連する物を買えば、神に守られる、万物復帰の教えに適うなどとして購入を勧め、ダイヤ付ルビーネックレスを代金三〇万円で、時計を代金四万一〇〇〇円で、着物、帯及び小物類を代金四六万二九〇二円で、着物(恋待ちつぼみ)を代金三五万円で、草履及びバックを代金一〇万〇九四〇円で、足袋を代金二五〇〇円で購入させており、代金合計額は一二五万七三四二円となり、同原告にとっては不相当に高額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する上記各商品購入の勧誘行為は、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

⑮ 原告鳥川(献金の勧誘行為)

上記認定事実によれば、被告の信者は、京橋市民大学センター入会勧誘行為時、原告鳥川に対し、宗教ではないと断言していること、献金の勧誘行為時、先生と呼ばれていた被告の信者において、同原告に対し、家系図によって具体的な因縁話をして、不安感を抱かせ、その因縁を絶つためには献金をする必要があるなどと言って、献金を承諾させ、同人が定期預金を解約しに行く時間がないと述べると、被告の信者において、代わりに解約することとし、熟慮の機会を与えないために、それから数日のうちに、被告の信者において、定期預金を解約し、一二〇万円という多額の献金をさせていること、同献金額が同原告にとって不相当に多額であることが認められる。

以上によれば、被告の信者らによる同原告に対する献金の勧誘行為は、組織的、計画的な献金の勧誘行為の一環としてされたものであり、その目的、手段及び結果に照らし、社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

2  争点(2)(被告の責任)について

(1) 上記検討した被告の信者の違法行為が、直ちに、被告自体の行為であることを認めるに足りる証拠は存在しないから、民法七〇九条に基づく原告らの主張は理由がない。

しかし、宗教法人の信者が不法行為により他人に損害を被らせた場合、その宗教法人は、信者との間に雇用等の契約関係がなくとも、実質的な指揮監督関係があり、かつその不法行為が宗教法人の宗教的活動等の事業の執行についてされたものであるときは、民法七一五条の使用者責任を負うというべきである。

これを本件について検討するに、上記認定事実によれば、原告らに対して不法行為を行った被告の信者は、連絡協議会ないし信徒会に所属していたところ、被告と連絡協議会との間にはその幹部クラスにおいて人的交流がみられ、被告の幹部が連絡協議会の人事異動を発表していること、連絡協議会が設置したビデオセンターにおけるビデオは、被告が監修して作成されたものが使用されていたこと、連絡協議会では規約が文書化されておらず、議事録も作成されていなかったこと、連絡協議会ないし信徒会が、被告の信者に対し、被告の教義の実践として、伝道活動や経済活動を指示し、献金の勧誘活動をさせ、献金された金銭が被告に交付されていること、一般の被告の信者は、連絡協議会ないし信徒会にではなく、被告に所属していると認識していたこと、信徒会は連絡協議会が解消して移行されたものであることがそれぞれ認められるのであり、これらのことからすれば、連絡協議会ないし信徒会と被告とは、実質的に一体の関係にあると推認される。

したがって、被告と上記認定事実の各献金及び商品購入の勧誘行為をした被告の信者との間には、連絡協議会ないし信徒会を通じた実質的な指揮監督関係があったというべきである。

よって、被告は、被告の信者による不法行為について、民法七一五条による責任を負う。

(2)  被告は、原告らが行った献金のうち、合同結婚式の主催は被告とは別個の団体である世界文化体育大典実行委員会、韓国で開催された修練会の主催も被告とは別個の団体である世界平和女性連合であるから、これらに関連してされた献金の勧誘行為については、民法七一五条による責任を負わないと主張する。しかし、上記各団体が、被告とは実質的にも別個の団体であるといえるかは疑問がある上、上記認定事実によれば、連絡協議会ないし信徒会は、被告の信者をして、合同結婚式又は修練会への参加を勧め、献金を勧誘させていたこと、直接の献金の交付先は、ビデオセンター又は被告の教会であることからすれば、被告の上記主張は採用できない。

被告は、また、原告丁谷秋子及び原告戊野の献金先である天地正教は被告とは別個の宗教法人であり、民法七一五条による責任を負わないと主張するが、上記認定事実によれば、連絡協議会は、被告の信者をして、天地正教名を利用して、被告への献金の勧誘行為をさせていたのであるから、被告の上記主張は採用できない。

3  争点(3)(損害額)について

(1)  慰謝料の算定

前記のとおり、被告の信者による原告らに対する一連の献金及び商品購入の勧誘行為には、社会的相当性を逸脱した違法な行為であると評価すべきものがあり、これにより、原告らは、不安感を抱かせられたり、多額の献金や商品の購入を決意させられるなどして、相当の精神的苦痛を受けたものと認められるところ、この精神的苦痛は、原告が違法に出捐させられた献金額ないし商品購入相当額の返還を受けただけでは回復できないものがあるというべきである。そして、具体的な慰謝料の額については、本件における原告らの主張及び弁論の全趣旨を勘案し、献金額及び商品購入代金額の多寡を斟酌して、その概ね一割相当額とするのが相当である。

(2)  各原告の損害額は、上記認定事実及び上記慰謝料の算定で説示したところによれば、以下のとおりと認めるのが相当である。

① 原告甲山

a 献金相当額 二八〇万円

b 高麗人参茶、印鑑、霊石壷購入代金相当額 二〇八万三六〇〇円

c 慰謝料 四九万円

d 弁護士費用 五四万円

② 原告乙川

a 献金相当額

一〇二五万五七一三円

b 慰謝料 一〇二万円

c 弁護士費用 一一二万円

③ 原告丙田

a 献金相当額

一〇三万四〇〇〇円

b 壷及び高麗人参茶購入代金相当額 一七六万円

c 慰謝料 二八万円

d 弁護士費用 三〇万円

④ 原告丁谷秋子

a 献金相当額 五〇万円

b 慰謝料 五万円

c 弁護士費用 五万円

⑤ 原告戊野

a 献金相当額 一二万円

b 慰謝料 一万円

c 弁護士費用 一万円

⑥ 原告東山花子

a 献金相当額

二一三万六三四二円

b 着物購入代金相当額

七八万〇七四〇円

c 慰謝料 二九万円

d 弁護士費用 三二万円

⑦ 原告西川

a 献金相当額 一〇〇万円

b 慰謝料 一〇万円

c 弁護士費用 一一万円

⑧ 原告南田

a 献金相当額 一四万円

b 慰謝料 一万円

c 弁護士費用 一万円

⑨ 原告北谷

a 献金相当額 七〇万円

b 慰謝料 七万円

c 弁護士費用 八万円

⑩ 原告春山

a 献金相当額 七〇〇万円

b 慰謝料 七〇万円

c 弁護士費用 七七万円

⑪ 原告夏川

a 献金相当額 三五〇万円

b 慰謝料 三五万円

c 弁護士費用 三八万円

⑫ 原告秋野

a 献金相当額 五七〇万円

b 袋帯及び小物類購入代金相当額

五一万五〇〇〇円

c 長居カルチャーセンター受講料相当額 一〇万円

d 慰謝料 六四万円

e 弁護士費用 七〇万円

⑬ 原告冬谷

a 振袖及び絵画購入代金相当額

一〇七万五八〇〇円

b 慰謝料 一〇万円

c 弁護士費用 一一万円

⑭ 原告花山

a 献金相当額 七七万九三〇〇円

b ダイヤ付ルビーネックレス、時計、着物二着、帯、小物類、草履、バック及び足袋購入代金相当額

一二七万八七九四円

c 慰謝料 二〇万円

d 弁護士費用 二二万円

⑮ 原告鳥川

a 献金相当額 一二〇万円

b 慰謝料 一二万円

c 弁護士費用 一三万円

4  争点(4)(消滅時効の成否)について

民法七一五条の使用者責任において民法七二四条の加害者を知るとは、被害者が、使用者及び使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実に加えて、不法行為が使用者の事業の執行につきされたものであると通常人が判断するに足りる事実をも認識することをいうと解される。

これを本件についてみると、証拠(甲A16、D3、E3、F3、G2、H11、J2、K21、O8、R5、S1)及び弁論の全趣旨によれば、原告甲山は平成六年一月に、同乙川は平成五年二月に、同丙田、同丁谷秋子及び同戊野は平成四年一二月に、同東山花子は平成五年二月に、同南田は平成六年八月に、同北谷は同年一〇月に、同夏川は平成七年二月に、同冬谷は平成五年六月に、同花山は平成七年六月に、いずれも献金ないし商品購入の勧誘行為の被害を受けたとして、原告ら訴訟代理人に本件訴訟を委任たこと、献金及び商品購入のいずれの勧誘行為についても、被告、連絡協議会、ハッピーワールド、同関連会社及び被告の信者らの関係は、必ずしも明白なものではなく、弁護士への上記委任までは、被告の信者の不法行為が被告の事業の執行につきされたものであるか否かについての判断は極めて困難であったことが認められる。

そうすると、被告に対する損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、上記委任の時点であったと認めるのが相当である。

したがって、被告の消滅時効の主張は理由がない。

第4  結論

以上のとおりであるから、本件の結論は、以下のとおりである。

1  原告甲山の請求は理由があるから認容する。

2  原告乙川の請求は理由があるから認容する。

3  原告丙田の請求は、被告に対し、三三七万四〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。

4  原告丁谷秋子の請求は理由があるから認容する。

5  原告戊野の請求は理由があるから認容する。

6  原告東山花子の請求は、被告に対し、三五二万七〇八二円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。

7  原告西川の請求は理由があるから認容する。

8  原告南田の請求は、被告に対し、一六万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。

9  原告北谷の請求は、被告に対し、八五万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。

10  原告春山の請求は理由があるから認容する。

11  原告夏川の請求は理由があるから認容する。

12  原告秋野の請求は、被告に対し、七六五万五〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年九月八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。

13  原告冬谷の請求は理由があるから認容する。

14  原告花山の請求は理由があるから認容する。

15  原告鳥川の請求は理由があるから認容する。

(裁判長裁判官・赤西芳文、裁判官・鈴木謙也、裁判官・矢作泰幸)

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