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京都地方裁判所 平成7年(行ウ)26号 判決 2002年5月31日

原告

原告訴訟代理人弁護士

岩佐英夫

吉田眞佐子

被告

伏見税務署長 西口彰次

被告指定代理人

北佳子

高谷昌樹

森口季夫

岩田千香子

甲斐憲征

日下文男

島田昌英

主文

1  本件訴えのうち、被告が平成5年11月5日付でした原告の平成2年分ないし平成4年分の所得税の各更正処分(ただし、平成4年分については異議決定により一部取り消された後のもの。)及び各過少申告加算税の賦課決定処分のうちの平成2年分は総所得金額145万円、平成3年分は総所得金額180万円、平成4年分は総所得金額132万円をそれぞれ超えない部分の取消しを求める各部分をいずれも却下する。

2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対し、いずれも平成5年11月5日付でした次の各処分を取り消す。

一  原告の平成2年分ないし平成4年分(以下「係争年分」という。)の所得税の各更正処分(ただし、平成4年分については異議決定により一部取り消された後のもの。)及び各過少申告加算税賦課決定

二  原告の平成4年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)に係る消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち納付すべき税額9万3700円を超える部分

第二事実関係

一  事案の概要

本件は、悉皆業を営む原告に対し、被告が、平成5年11月5日付で、係争年分の原告の所得税の各更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分、更に、本件課税期間の消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、以上の各処分を一括して「本件各処分」という。)をしたのに対し、原告が、係争年分の所得税の各処分は、推計課税の必要性及び合理性がなく、課税要件がないのにされた違法な処分であり、消費税の処分は、仕入税額控除の要件を誤ってされた違法な処分であるであるなどと主張し、本件各処分の取消しを求めた事案である。

二  当事者間に争いのない事実等

1  原告は、京都市伏見区深草越後屋敷町の肩書住所地(以下「原告宅」という。)に居住し、同市中京区壬生神明町所在の事業所(以下「原告事業所」という。)において、「A」及び「B」の商号で、悉皆業を営む者であり、その所得税の申告については、白色申告をしていた。また、原告は、本件課税期間に係る消費税について、消費税法2条1項3号(以下、29条、30条1項、7項ないし10項、45条について、平成6年法律第109号による改正前の同法を「法」という。)の個人事業者に当たる。

2  本件訴訟に至る経緯等

(一) 原告は、係争年分の所得税につき、それぞれ、別表1の各確定申告の項中の各年月日に、同項中の総所得金額及び納付すべき税額欄記載のとおりの内容で確定申告をし、また、本件課税期間に係る消費税につき、別表2の確定申告の項中の各年月日に、同項中の課税標準額及び納付すべき税額欄記載のとおりの内容で確定申告をした。

(二) 被告は、平成5年11月5日付で、原告に対し、原告の係争年分の所得税について、総所得金額、納付すべき税額及び過少申告加算税額をそれぞれ別表1の更正処分等の項記載のとおりとする各更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分を行った。また、被告は、同日付で、原告に対し、本件課税期間に係る消費税について、課税標準額、納付すべき税額をそれぞれ別表2の更正処分等の項記載のとおりとする更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

(三) 原告は、平成5年12月6日、被告に対し、本件各処分に対する異議申立てを行ったところ、被告は、平成6年3月4日付で、別表1、別表2の異議決定の項記載のとおり、平成4年分の所得税につき一部取消しをした外は、これを棄却する旨の決定をした。原告は、同決定を不服として、平成6年3月23日、国税不服審判所長に本件各処分(異議決定により一部取り消された後のもの。以下同じ。)に対する審査請求をしたところ、同所長は、平成7年5月29日、同審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行った。原告は、同年6月29日ころ、同裁決に係る裁決書謄本を受領し、同年9月27日、本件訴えを提起した。

3  本件各処分の課税要件についての被告の主張

(一) 平成2年分の所得税

売上金額は、別表4の平成2年分の合計金額欄記載のとおり7608万5862円である。別表3のとおり、同金額に後記(四)の基準で選定した他の事業者(以下「比準同業者」という。)の総売上金額に占める算出所得金額の割合の平均値(以下「平均算出所得率」という。)0.1701を乗じて算出所得金額1294万2205円を算出し、同算出所得金額から特別経費額49万5403円と事業専従者控除額80万円を控除すると、総所得金額は1164万6802円となる。

(二) 平成3年分の所得税

売上金額は、別表4の平成3年分の合計金額欄記載のとおり7249万3835円である。別表3のとおり、同金額に比準同業者の平均算出所得率0.1697を乗じて算出所得金額1230万2203円を算出し、同算出所得金額から特別経費額61万5311円を控除すると、総所得金額は1168万6892円となる。

(三) 平成4年分の所得税

売上金額は、別表4の平成4年分の合計金額欄のとおり5531万7088円である。別表3のとおり、同金額に比準同業者の平均算出所得率0.1675を乗じて算出所得金額926万5612円を算出し、同算出所得金額から特別経費額99万7283円と事業専従者控除額80万円を控除すると、総所得金額は746万8329円となる。

(四) 上記の比準同業者の抽出方法

大阪国税局長は、原告宅の所在地を管轄する伏見税務署、並びに原告事業所の所在地を管轄する中京税務署とこれに隣接する上京、下京、右京、東山及び左京税務署の各税務署長に対し、各税務署管内において下記①ないし⑧のすべての要件を満たす者を抽出の上、報告するよう通達を発し、これにより上記各税務署長から報告を受けた結果に基づき、別表5ないし7の各比準同業者を抽出した。

① 青色申告書により所得税の確定申告書を提出していること。

② 悉皆業を営む者であること。

③ 他の業種を兼業していないこと。

④ 年間を通じて事業を継続して営んでいること。

⑤ 事業所が京都市内にあること。

⑥ 売上金額が2800万円以上、1億5200万円未満であること。

上記売上金額の範囲は、被告が把握し得た原告の売上金額を基に、売上金額が最も大きい平成2年分7608万5862円の約2倍を上限とし、売上金額が最も小さい平成4年分5531万7088円の約半分を下限としたものである。

⑦ 青色事業専従者がいない者、又は青色事業専従者が妻のみである者。

⑧ 対象年分の所得税について、不服申立て又は訴訟が係属中でないこと。

(五) 本件課税期間の消費税

本件課税期間における売上金額の合計(課されるべき消費税額を含む。)5531万7088円に103分の100を乗じて算出した金額から国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項によって1000円未満の端数を切り捨てた金額である5370万5000円が課税標準額であり、これに消費税率100分の3を乗じた161万1150円が上記課税標準額に対する消費税額である。

そして、法30条7項にいう「帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するから控除対象仕入税額を0円とし、通則法119条1項によって100円未満の端数を切り捨てると、本件課税期間における納付すべき税額は、161万1100円となる。

三  争点及び当事者の主張

(争点)

本件の主要な争点は、次のとおりである。

(1) 所得税についての本件各処分につき、それぞれの確定申告による総所得金額を超えない部分について、その取消しを求めることは適法か。

(2) 本件各処分に至る税務調査に違法な点があるのか、それは本件各処分の取消事由になるのか。

(3) 係争年分の所得税についての推計の必要性。

(4) 係争年分の所得税についての推計の合理性。

(5) 係争年分の所得税についての実額主張の成否。

(6) 本件課税期間の消費税の仕入税額控除の要否。

(当事者の主張)

1 争点(1)について

(一) 被告

原告は、別表1の確定申告欄記載のとおり、係争年分の各総所得金額について、平成2年分は145万円、平成3年分は180万円、平成4年分は132万円であるとして確定申告をした。そうすると、所得税についての本件各処分のうち、確定申告による所得金額を超えない部分については、その取消しを求める原告の訴えは不適法である。

(二) 原告

争う。

2 争点(2)について

(一) 原告

被告の部下職員である乙調査官(以下「乙」という。)及び丙統括官(以下「丙」という。)は、しばしば事前の通知なしに原告宅或いは原告事業所を訪問し、原告に対して調査の具体的かつ合理的な理由を開示しなかった。また、被告の部下職員は、第三者の立会いを口実に、原告が用意した帳簿書類等の調査もせず、一方的に取引先等の反面調査を行った。かかる税務調査は違法であり、これに基づく本件各処分は取り消されるべきである。

(二) 被告

乙及び丙は、原告との間で、電話や連絡せんにより調査日の調整を図り、また、13回にもわたり原告宅或いは原告事業所に赴き、その都度、原告に対し、調査に関係のない第三者の立会いなしに帳簿書類を提示して調査に協力するよう求めるとともに、帳簿書類の提示がなければ実額計算ができず推計課税になり、消費税については仕入税額控除ができなくなる旨を説明した。にもかかわらず、原告は、終始、調査に関係のない第三者の立会いに固執し、第三者の退席を求める乙ないし丙に対し、第三者の立会いのない状態での帳簿書類の提示を明確かつ強固に拒絶し、調査に協力しなかった。

本件各処分に至る税務調査はすべて適法である。

3 争点(3)について

(一) 被告

原告は、前記の被告の主張のとおり、調査において、第三者の立会いのない状態での帳簿書類の提示を明確かつ強固に拒絶し、調査に協力しなかった。したがって、被告は、原告の所得金額を実額で把握することができなかったから、推計の必要性がある。

なお、本件訴訟において原告が提出した各証拠によっても、原告の係争年分の所得金額を実額で把握できないことに変わりがない。

(二) 原告

被告は、前記の原告の主張のとおり、第三者の立会いを口実に、原告の帳簿書類の調査を不当に拒否し、調査を尽くさずに所得税に関する本件各処分をしたもので、推計の必要性はない。

4 争点(4)について

(一) 被告

別表3の平均算出所得率の算出の基礎となった別表5ないし7の各比準同業者(以下「本件同業者」という。)は、原告と業種、業態、立地条件が同一で、事業規模も類似している者で、その申告の内容が法制度上信用に値する青色申告者の全員を機械的に比準同業者として選定したものである。本件同業者の抽出過程に被告の恣意が介在する余地はない。別表3の算出所得金額の推計には合理性がある。

(二) 原告

争う。

5 争点(5)について

(一) 原告

(1) 原告の平成2年分の所得の内訳の実額は、別表8のとおり、マイナス803万9982円であり、更にその詳細は、原告の平成14年2月20日付の第16準備書面の平成2年分決算集計表のとおりである。

原告の平成3年分の所得の内訳の実額は、別表9のとおり、マイナス375万1857円であり、更にその詳細は、上記準備書面の平成3年分決算集計表のとおりである。

原告の平成4年分の所得の内訳の実額は、別表10のとおり、マイナス278万7762円であり、更にその詳細は、前記準備書面の平成4年分決算集計表のとおりである。

(2) 原告は、当初から、実額の主張立証をする方針であること、その準備には相当時間を要することを表明しており、これに対して、裁判所は勿論、被告からも何らの異議はなく原告の準備を待つこととし、まず、調査経過の主張立証から審理に入ることになり、調査経過の主張立証の審理の進行する間に原告の実額の主張立証の準備が進められた。実額の主張立証準備のために審理が遅れたとはいえない。また、原告は、家族ぐるみの労働でやっと支えている零細業者であり、大企業と異なり、専属の税理士も、経理専門の担当者もおらず、正確な実額の主張立証となると、帳簿類、原始資料の厳密なチェックが必要であった。これらの事情を考慮すれば、原告の実額主張が時機に遅れた攻撃防御方法に該当しないことは明らかである。

(3) 原告の妻丁や母戊は、忙しい仕事や家事の中で必死に記帳していた。両名とも、正式に簿記の勉強をしたことがないため、残高記帳をしていないなど完璧な記帳をしていたわけではないが、商売の状況を正しく把握するために金員の出入りをできる限り正確に記帳すべく一生懸命努力していた。このようにして作成された売上台帳、現金出納帳、シート式簡易帳簿は、基本的に信用に値する。

売上先からの原告への支払は、手形、小切手或いは振込によるものが大部分で、これらの入金は、すべて原告提出の預金通帳、手形受取書、割引手形計算書等により客観的に裏付けられている。また、問屋からの支払は、すべて手形、小切手或いは振込によるものである。それ以外の個人の取引は、平成2年は0件、平成3年は2件、平成4年は10件で、合計507万円余りであり、これらはすべてきちんと記帳されており、支払も大部分は振込等である。

シート式簡易帳簿のうちごく一部に記載漏れがあったとしても、他の資料中にその取引の記載があり、すべて決算集計表に整理している。したがって、売上漏れは存在しない。

仮に、帳簿の一部に欠落や不自然な部分があった場合でも、その部分について個別に検討を要するとしても、そのことから直ちに原告が提出した帳簿書類全体の信用性まで否定すべきではない。

(二) 被告

(1) 時機に後れた攻撃防御方法

原告は、本件各処分についての不服申立段階において、推計課税に対する実額反証及び消費税の仕入税額控除に係る帳簿等の提出を一切行わず、係争年分の事業所得金額算出の基礎となる収入金額及び必要経費等の実額について、被告が推計の合理性について立証を終えた第10回口頭弁論期日(平成9年9月5日)よりも更に1年近く経過した第14回口頭弁論期日(平成10年7月31日)において、ようやく、これらを証するものとして甲第101号証以下の書証を提出した。原告の実額の主張及び証拠の提出は、通則法116条、民訴法157条1項により却下されるべきである。

(2) そもそも、原告が実額反証において所得の実額を主張して課税庁のした推計の合理性を否定するには、その主張する収入金額がすべての取引先からすべての取引についての補足漏れのない総収入金額であり、かつ、その収入と対応する必要経費が実際に支出され、当該事業と関連性を有することを合理的な疑いを容れない程度にまで主張・立証する必要がある。

事業に係る所得金額を実額で把握するためには、個々の取引に伴う収入や支出をその都度継続的に記録した会計帳簿と原始記録の存在が必要不可欠である。

原告が実額反証に供するとして提出した売上台帳(甲101)、現金出納帳(甲2001及び3001)、シート式簡易帳簿(甲4001)、職払台帳(甲2002、3002、4002)は、品名欄の記載がなく単に入金額のみ記帳されているものがあったり、取引の日付が前後逆になっている箇所が散見されたり、一部の欄はボールペンで記載されているのに残りの欄は鉛筆で記載されているものがある等の数々の問題点・疑問点が存在する。原告は、上記書証により、原告主張の収入金額がすべての取引先からのすべての取引についての補足漏れのない総収入金額であることを合理的な疑いを容れない程度にまで立証できていないことは明らかである。また、原告が提出した帳簿等は、日々継続して正確に記帳されたとはいえず、売上に係る仕切書控、納品書控についても、そのすべてのものが提出されていない。原告が提出した納品書控等(甲127、128、130、131)は、その一部が破棄され欠落している部分がある。原告は、仕入については仕入帳を作成しておらず、その支払金額を証するものとして領収書を提出するのみであり、請求書、納品書等は提出していない。

このように、原告主張の総収入金額を実額で認めるに足りる的確な証拠は提出されておらず、経費の実額も証明されていない。

6 争点(6)について

(一) 原告

(1) 原告は、本件課税期間中に、別表11の「取引日」、「資産又は役務の内容」、「金額」、「支払先氏名又は屋号」欄記載のとおりの課税仕入れ(以下「本件課税仕入れ」という。)をした(同金額は、いずれも消費税額を含む金額である。)。

(2) 原告は、本件課税仕入れについて、同表の「領収書」、「請求書等」、「記載されている帳簿」欄記載の各書類を、いずれも、法令の定めに従って所持して保管しており、本件訴訟においても、同表の「(甲)書証番号」欄のとおりの各甲号証として提出している。

上記請求書等の各書類のうち、「請求書」及び「領収書」には、「取引日」、「資産又は役務の内容」、「金額」、「作成者の名称」欄記載の事項が、「帳簿」には、「取引日」、「資産又は役務の内容」、「金額」欄記載の事項が記載されている。

(3) 上記の請求書や帳簿等(以下「本件帳簿等」という。)は、いずれも法30条8項所定の帳簿(以下「法定帳簿」という。)又は9項所定の請求書等(以下「法定請求書等」という。)に該当し、これらを補完するその他の証拠によって、本件課税仕入れは明らかに認められる。そして、原告が本件帳簿等を保存(法30条7項所定)していたことは動かし難い事実である。

本件課税期間に係る原告の消費税額の算定に当たり、課税標準額に対する消費税額から、本件課税仕入れに係る消費税額を、仕入税額控除として控除すべきである。

(4) 法30条7項の「保存」の意義等

法30条7項に規定する「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」の要件は厳格に解釈すべきであり、「保存」とは「もとの状態を保って失わぬこと」であり、「提示」とは「提示して示すこと」であって、両者は全く別の概念である。したがって、納税者が税務職員による帳簿又は請求書等の提示要請に応じなかった場合でも、客観的に帳簿又は請求書等の保存があり、仕入税額が判明する場合であれば、同条の要件を満たさないというべきである。提示がないから保存がない、として仕入税額控除を否認する被告の解釈は、租税法規の読み替えともいうべき拡張解釈であり、租税法律主義に反する。

(5) 法定帳簿又は法定請求書等の提示拒否の事実の有無

原告は、本件課税期間中に、本件課税仕入れをし、それに係る本件帳簿等を保存し、税務調査に際して、被告の部下職員である乙或いは丙にこれを提示した。にもかかわらず、被告は、立会人がいたことを理由に、上記書類の確認義務も尽くさなかった。このように、被告は、税務調査の全過程を通じて、税務当局側が帳簿及び領収証等の備付け状況等を確認するために社会通念上当然に要求される程度の努力も行わなかったもので、法30条7項についてどのような解釈をしたとしても、法定帳簿等を「保存しない場合」には該当しない。

(二) 被告

(1) 法30条7項の「保存」の意義

法30条7項に規定する「保存」には、適法な税務調査に対して、帳簿等の保存の有無及びその記載内容を確認し得る状態に置くことを含むものであり、消費税の調査において提示を拒否すれば、「保存」がないというべきである。

(2) 法定帳簿等の提示拒否

原告は、本件各処分に至る税務調査において、乙及び丙に対し、第三者の立会いの下で、書類らしきものの入った箱を指し示す、或いは、第三者の立会いの下で体裁だけの提示状況の証拠写真を撮るためだけに机上に置く(検甲2、3)などの行動をしたにすぎず、あくまで調査に関係のない第三者の立会いに固執し、帳簿等の資料の提示を拒絶した。

したがって、原告は、適法な調査に応じてその内容を確認し得るように提示できる状態、態様で法定帳簿や法定請求書等を保存していなかったというべきである。

第三当裁判所の判断

一  争点(1)について

1  通則法においては、納税者が、申告をした後に、その申告が過大であるとしてその誤りを是正するためには、所定の期間内に減額の更正をすることが求められている(同法23条)。このことからすると、申告の後に、課税庁の増額更正処分があった場合において、納税者が、減額更正の請求という同法の定める特別の手続を経由することなしに、増額更正処分のうちの申告額を超えない部分の取消しを訴求することは、原則として不適法であって、例外的に、その申告の錯誤が客観的に明白かつ重大であって、減額更正の請求以外に是正を許さないならば納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情があるときに限り、適法となると解される(最判昭和57年2月23日・民集36巻2号215頁、最判昭和39年10月22目・民集18巻8号1762頁参照)。

2  以上の法的判断に従えば、原告は、別表1の確定申告欄記載のとおり、平成2年分145万円、平成3年分180万円及び平成4年分132万円をそれぞれ係争年分の総所得金額として確定申告をしているのであって、しかも、後記判断のとおり、原告の係争年分の各総所得金額は、いずれも、原告が取消しを求める所得税についての本件各処分(増額更正と過少申告加算税の賦課決定)の認定額を上回るものと認められるから、結局、原告が申告について錯誤があったということもできず(なお、原告は、後記のとおり、そもそも、錯誤があったという主張すらしていない。)、結局、所得税についての本件各処分の取消しを求める訴えのうち、上記の確定申告所得金額を超えない部分については、不適法であるといわざるを得ない。

二  争点(2)(3)について

1  当事者間に争いがない事実等に、証拠(甲1ないし11、14ないし20、検甲1ないし15、乙15ないし18、19の1及び2、20、41、49〔枝番を含む。〕、証人乙、同C、同丙、同丁〔一部〕、原告本人〔一部〕)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(1) 原告(昭和24年生)は、原告事業所において、「A」及び「B」の商号で、悉皆業を営む者である。伏見区内の原告宅には、原告ら家族が居住し、その一部でも丁が金加工等の仕事をしていた。

(2) 原告が行っていた悉皆業の業務の内容は、概ね、まず、着物の図柄や構図を決め、仲間問屋から預かった訪問着、色留袖等の着物用の白生地を、各職人に渡して、加工内容を指示して加工を委託し、各職人が指示に従って、下のし、糸目状、引染、水洗、地入等の約20工程にも分けられた加工を順次施していき、それを原告が納品を受ける。そして、原告は、それを商品にして仲間問屋に納品して、対価を受ける、というものである。原告が白生地の委託を受ける仲間問屋は、株式会社D、E株式会社、株式会社F、株式会社G、H、株式会社Iなどがある。原告が、各職人に白生地の委託加工を外注する際に、難物があると、白生地を買い取りさせて、手直しの後に仕入れる場合もある。また、原告自身が生地を買う場合も僅かではあるがある。その後、商品は、仲間問屋から、更に、前売り問屋、小売屋を経て、消費者へ渡る。

(3) 原告は、そのほか、白生地をJ商店、株式会社Kから仕入れたり、僅かではあるが、株式会社I、L、M、N、O等から帯や着物を仕入れたり、また、Pから材料を仕入れて着物に金粉や金箔を貼ったり、金泥という金加工業もしていた。

(4) 平成2年ないし平成4年当時、問屋から原告への支払は、ほとんどが手形・小切手であった。

(5) 原告から各職人への支払は外注費とされていた。呉服業界では、各取引関係が人的信頼関係に基づいているので、仕事をスムーズにするためには一定の交際費の支出が必要な場合もあり、原告も問屋を接待することもあった。

(6) 売上台帳は、主として原告の母親の戊が記載し、平成2年分及び平成3年分の現金出納帳は戊が、平成4年分のシート式簡易帳簿は原告の妻の丁が記載した。

(7) 原告は、平成2年及び平成3年中は、2ないし3台の車両を所有し、平成4年には1台をリースし、他に1又は2台を所有していたもので、1台は京都市中京区に、もう1台は京都市伏見区に駐車していた。また、原告の両親は、平成3年11月から、京都市中京区所在の原告事業所の建物の2階に居住し始めた。

(本件各処分に至る調査の経緯)

(8) 被告は、原告が提出した係争年分の所得税の確定申告書及び平成2年1月1日から同年12月31日まで、平成3年1月1日から同年12月31日までの各課税期間及び本件課税期間に係る消費税の確定申告書に記載された内容が適正なものか否かを確認するため、部下職員である丙、乙をして、調査に当たらせた。

(9) 乙は、事前に原告と日時の調整を行った上、平成5年5月11日午後2時ころ、原告宅に赴き、所得税及び消費税の調査を実施しようとした。原告及びその妻丁がこれに応対したが、更に、Q民主商工会事務局のR及びSを同席させていた。

乙は、原告宅の仏間において、原告に対し、所得税及び消費税の確定申告の内容が正しいかどうかを確認するための調査であることを説明すると共に、調査に関係のない第三者の立会いは認められないとして、R及びSを退席させるよう要請した。

しかし、原告は、「調査には応じます。」などと言いながらも、RやSの退席の要求には応じず、RやSは立ち会ってメモをとり続けた。原告は、「私は居てもらっても結構、時間は十分あるからじっくり付き合う。」などと言って、Rも、「守秘義務というのは、お前が甲さんのことを外でべらべらしゃべってはいけないということで、ここでは、甲さんが居てもらってもよいと言っているのだから、守秘義務は関係ない。」などと述べ、結局、RもSもその場から退席しなかった。そして、原告は、帳簿書類を乙に提示したことはなかった。

そこで、乙は、その場における調査ができないものと判断し、調査に協力してもらえない場合は反面調査を行うことを原告に説明した上、原告宅を辞去した。

(10) 乙は、平成5年5月14日、原告宅に赴いたが、不在であったため、「5月17日午後5時ころ担当まで連絡いただきたい。」旨の連絡せんを原告宅の郵便受けに投函した。原告は、同月17日、伏見税務署に対し、税務調査の目的と内容及び立会人を認めない理由を問い質したり、原告の同意なしの反面調査は認められないこと等を記載した「税務調査についての請願書」と題する書面(甲1)を提出した。

乙は、同月18日、原告事業所に赴き、原告に対し、前記の請願書についての回答を行う旨伝えたところ、原告は、玄関の戸を閉めたまま、「昨日の請願書の回答は文書でもらうことになっている。」と申し立てるのみで、乙と話をしようとしなかった。そのため、乙はその場を辞去した。

(11) 乙は、平成5年6月1日午前10時30分ころ、原告宅に赴いたところ、原告がR、S及びTの3名を同席させていた。乙は、請願書の回答について、原告に対し、口頭で、調査理由については、申告された所得金額の確認及び適正に申告されているかの確認であること、立会いについては守秘義務違反になるおそれがあり、税理士資格のない第三者が税務行為を行うと税理士法違反のおそれがあること、また、調査に立ち会っている者が、調査の途中で口をはさむと調査の進行の妨げになるおそれがあること、反面調査については、仮に帳簿書類等を見せてもらっても、調査における問題点の解明のためには、反面調査が必要なことがあり、また、反面調査を行うか否かの判断は調査担当職員の裁量である等と説明をした。原告の方では、更に乙に質問を続けた。また、原告らと乙との間で、乙らがそれまでに原告事業所や原告宅を訪れた日時を確認し、調査の目的や理由の開示、立会人を認めるのか、反面調査の可否等についてやりとりがされた。乙は、R、S及びTの退席を要求し、結局、第三者の立会いを認めるのかどうかについては双方の意思が平行線をたどったままであったので、その場における調査ができないものと判断し、原告宅を辞去した。

(12) 乙は、平成5年6月上旬ころから、原告の取引先に対する反面調査を行った。

(13) 原告は、同月7日及び同月16日、民主商工会の事務局の関係者らと共に伏見税務署の総務課を訪れ、原告の取引先へ反面調査を行ったこと等に対する抗議を行った。更に、原告は、伏見税務署に対し、同月22日から25日にかけて、「税務調査についての請願書(その3)」(甲3)、「抗議書」と題する書面(甲4)、「税務調査に対する請願書(その4)」と題する書面(甲5)を提出した。これらの各書面には、次の調査を受ける日時の都合のほか、それまでの原告の抗議や請願書を無視して株式会社Uらの原告の取引先に不当な反面調査が進められており、取引形態から非常に弱い立場の原告は、このような反面調査により得意先を失いかねないこと、生活状況は苦しく、このような生活苦の中では税金を支払うことができないこと、違法な税務調査を直ちに中止するよう求めること等々が記載されていた。なお、その際、原告は、伏見税務署の総務課の応接セットの机の上で持参した帳簿書類様のものを広げたことがあったが、僅かの時間であって、税務署の職員らがそれを調査できるような時間はなかった。

(14) 原告は、更に、平成5年6月28日午前9時ころ、丁とともに伏見税務署に来署した。丙が、原告に対し、第三者の立会いのないところで帳簿の提示をするなどの調査協力を要請したが、原告は、「帳簿の提示はできない。ただし、申告是認を前提とするなら提示する。」と言い、このため、丙が、「申告是認になるか、修正申告になるかは帳簿提示を受けて調査した後の結果であり、現在の状況では結果をお約束はできない。まず帳簿の提示をお願いします。」と説得し、更に、帳簿等の提示がない場合には所得税について実額計算ができず推計課税の可能性があることを説明した。

(15) 乙及び丙は、平成5年7月23日、調査のため原告宅に赴いた。原告は、原告宅仏間において、妻丁のほか、R、S、更に民主商工会の会員6名も同席させていた。乙及び丙は、繰り返し立会人の退席を求め、これに応じずに調査を求める原告側との間でやりとりが繰り返されたが、結局、前記の立会人らは退去しなかった。

そこで、乙及び丙は、その場における調査ができないものと判断し、原告宅を辞去した。原告らは、その場に書類らしき物を用意していたが、それを乙や丙に提示したりしたことはなかった。

(16) その後も、乙は、多数回にわたり、原告宅及び原告事業所に、架電或いは連絡せんの方法により、税務調査の日程調整を図るべく連絡し、これに対し、原告は、次回の調査日についての日程調整を文書で回答する旨申し出た。しかし、原告は、結局、これを実行しなかった。

(17) 乙は、平成5年10月8日、原告事業所において、丁に対し、調査担当者が自由に見られる状態でなければ帳簿を提示したことにはならない旨説明した上で、消費税については帳簿書類等の提示がなければ仕入税額控除は認められない旨を説明し、そのことを原告にも伝えるよう依頼した。丁はその旨原告に対して説明した。

(18) 平成5年10月22日、乙は、原告から「総務に1時半に行くので、1時にそちらに行きます。」との電話連絡を受けたため、原告に対し「来ていただくのは結構ですけれども、本人さんのみで来てください。」と依頼し、原告は「そのつもりです。」と答えた。原告は、同日午後1時ころ、伏見税務署に、丁、R、その他約20名の者と共に来署した。

乙は、原告を事務室カウンター内の応接に案内しようとしたところ、原告は、それを無視して、持参したバインダーに書類を綴ったもの1冊、ファイル1冊、それに書類綴り等をカウンターの外側に置かれた机の上に並べ、丁は、その書類等が置かれた状況等を持参した写真機で撮影し始めた。そこで、乙は、原告及び丁に対し、写真撮影の中止を申し入れたが、原告は、「構へん、ここで撮って、ここで書類を見てんか」と発言し、その場を動かなかった。

乙は、前記の書類等が机の上に並べられ、一部広げられた状態を見たが、写真撮影の中止を申し入れたり、立会人を排除するために原告を事務室カウンター内の応接に案内したりしていて、その書類が原告の帳簿書類であるのかどうかも確認できなかった。乙は、「この状況では今までの状況と何ら変わりません。周りに調査に関係のない第三者がいるという状況が変わっていませんから。」などと繰り返し言い、更に、書類の提示は職員が自由に見られる状態にしなければ提示したことにはならないこと、及び帳簿の確認ができない状態では消費税の仕入税額控除は認められないことを更に具体的に説明した。

その後、原告は、丁とともにカウンター内に入り、カウンター内の応接セットで丙に対し、反面調査の経緯等の確認を求め、更に、以前提出した請願の文書に回答することを求めるなどした。そして、丙が、書面による回答はできないであろうなどと言うと、原告と丁は、総務課へ行くと言って一方的に席を立ってしまった。

その際、原告や丁は、前記のバインダーに書類を綴ったもの等をカウンター内まで持ち込み、丙に対し、その一部を示した。これに対し、丙は、それらの書類を税務署に置いていくよう言ったが、原告らはそれを拒絶し、数分の間でその内容を確認するよう求めた。しかし、丙は、短時間での調査はできないと言い、結局、丙らは、これらの書類の内容を確認することはできなかった。

(19) 乙は、平成5年10月25日午前10時過ぎころ、原告事業所に架電をし、丁に対し、調査に関係のない第三者の立会いがない状態で被告側の調査結果の話をし、その上で修正申告をする意思があるか否かを確認したいので速やかに電話をしてほしい旨原告に伝えるよう依頼し、同日午前11時ころ、原告に対し、更に電話で、調査結果についてのおおよその金額について回答し、更に、本件課税期間の消費税については、帳簿書類の提示がなければ仕入税額控除は認められないことを説明した。そして、乙は、原告に対し、修正申告をする意思があるのであれば、当日の午後5時までにその旨の返事をしてくれれば再度詳しい説明をする旨伝えたが原告からそれまでに連絡はなかった。

(20) 乙は、平成5年10月28日、原告から電話連絡を受けたが、修正申告をする意思がないものとみなして更正処分を行う旨原告に対して説明した。

(21) 被告は、同年11月5日、原告に対し、本件各処分をした。

2  ところで、税務調査の手続に違法があったとしても、国家賠償法上の違法となることがあるとしても、その手続の違法が理由となってそれに基づく課税処分が違法となることは原則としてないものと解するのが相当である。そして、税務調査による質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要性があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当程度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられており、また、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知等も、質問検査を行う上での法律上一律の要件とされているものではない(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・訟務月報40巻2号305頁参照)。税務調査において、納税者本人以外に税理士資格等を有しない第三者を立ち会わせるか否かについても、調査担当者の合理的な裁量に委ねられていると解される(最高裁昭和61年2月13日第一小法廷判決・税務訴訟資料150号317頁参照)。

3  前記1の認定事実によれば、乙及び丙は、電話や連絡せんにより調査日の調整を図り、また、多数回にわたり原告宅ないしは原告事業所に赴き、第三者の立会いなしに帳簿書類を提示して調査に協力するよう求めるとともに、帳簿書類の提示がなければ実額計算ができず推計課税になる旨原告に再三説明したものであって、被告側の税務調査は、後記のとおりやや頑なな点はあったとしても、全体としては、約7か月間に亘って相当ねばり強く、原告側の都合も考慮しながら進められたものというべきである。にもかかわらず、原告は、結局、調査に関係のない第三者の立会いに固執し、この調査に協力しなかったものというほかない。

したがって、調査の手続に違法な点は見当たらず、むしろ、一連の調査は、すべて適法であったということができる。

また、このような状況の下では、被告において、原告の所得金額を実額をもって把握することは不可能であったことは明らかである。また、後記判断のとおり、原告が本件訴訟において提出した各証拠からも、原告の所得金額を実額で把握することはできないといわざるを得ない。したがって、原告の係争年分の所得金額を推計することには、その必要性があるというべきである。

三  争点(4)について

1  被告の主張は、係争年分の各売上金額を実額で把握した上、これを基に本件同業者の平均算出所得率から係争年分の各算出所得金額を推計するものであるので、この推計の合理性について検討する。

2  まず、別表3の①の各売上金額については、原告は、平成2年分につき8310万8460円、平成3年分につき7328万9257円、平成4年分につき6142万6458円と主張しており、いずれの年分においても、原告主張額が被告主張額を上回っており、原告において、少なくとも、別表3の①の被告主張額以上あったことについては、当事者間に争いがないものと認められる。

3  次に、別表3の②③については、前記の争いがない事実や認定事実、それに、証拠(乙1ないし14、20ないし40)及び弁論の全趣旨によれば、次のとおり認められる。

(1) 係争年分の期間において、原告宅の所在地を管轄する伏見税務署、原告事業所の所在地を管轄する中京税務署、これに隣接する地域を管轄する上京・下京・右京・東山・左京の各税務署管内で、次の条件、すなわち、①青色申告書により所得税の確定申告書を提出していること、②悉皆業を営む者であること、③他の業種を兼業していないこと、④年間を通じて事業を継続して営んでいること、⑤事業所が京都市内にあること、⑥売上金額が2800万円以上、1億5200万円未満であること、⑦青色事業専従者がいない者、⑧係争年分の所得税について不服申立て又は訴訟が係属中でないこと、をすべて充たす同業者は、別表5ないし7の同業者欄の合計33名の本件同業者である。

(2) 本件同業者の係争年分の売上金額、売上原価・一般経費の額、算出所得金額、算出所得率は、それぞれ、別表5ないし7のとおりであり、本件同業者33名の算出所得率(パーセント)の平均値は、平成2年分が別表5のとおり17.01、平成3年分が別表6のとおり16.97、平成4年分が別表7のとおり16.75である。

4  上記認定事実によれば、本件同業者の選定基準は、業種の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性等の点において同業者の類似性を判別する要件として一応合理的なものであったというべきである。また、選定された本件同業者の数が、係争年分のいずれの年においても33名であることは、原告の算出所得金額を推計するに当たって、同業者の個性を平均化するに足りる選定件数であるといえる。

また、係争年分の本件同業者の各算出所得率をみると、平成2年分においてはその最大の者が東山のfile_2.jpgで29.7、最少の者が右京のfile_3.jpgで10.33、平成3年分においてはその最大の者が中京のfile_4.jpgで30.97、最少の者が上京のfile_5.jpgで9.36、平成4年分においてはその最大の者が中京のfile_6.jpgで28.16、最少の者が右京のfile_7.jpgで9.14であり、本件各同業者相互間の数値の差異に照らして、極めて特異な数値を示す同業者として、これを廃除して推計すべきであると考えられるような同業者は、係争年分のいずれにおいてもないというべきである。なお、係争年分の原告の売上金額については、前記のとおり、その売上金額の上限まで確定されたものではないが、原告主張額によっても、前記の基準である1億5200万円未満としたことに特に不合理はないというべきである。

このようにみてくると、別表3の①の各売上金額に同表②の平均算出所得率を乗じて図表③の算出所得金額を推計することは合理性があると認めることができる。

四  争点(5)について

1  前記の認定事実及び前掲各証拠、それに本件記録に照らすと、原告は、本件訴訟の提起に至るまでの不服申立段階において、実額反証及び消費税の仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等の提出を一切行っておらず、実額主張を証するものとして甲第101号証以下の書証を提出したのは、本件第10回口頭弁論期日(平成9年9月5日)から更に1年近くも経過した本件第14回口頭弁論期日(平成10年7月31日)においてであり、本件訴訟を提起してから約2年10か月もの長期間が経過してからである。このような事情や通則法116条及び民訴法157条1項の趣旨にかんがみると、原告の実額の主張・立証は時機に遅れたものと評価されてもやむを得ない点もあることは確かである。

しかし、前掲各証拠や証人丁の証言、原告本人尋問の結果から認められる原告の事業形態、原告が実額反証のために提出した帳簿又は請求書等の書証、それに本件訴訟の手続経過等をも総合勘案すると、原告の実額主張の内容についての判断に入るまでもなく、この主張を時機に遅れたものとして却下するのは、相当ではないというべきである。

2  進んで、原告の実額主張について検討する。

(1) まず、原告の実額主張によれば、係争年分の原告の事業所得は、平成2年分がマイナス803万9982円、平成3年分がマイナス375万1857円、平成4年分がマイナス278万7762円であって、係争年分それぞれの確定申告期間内に原告が自らした確定申告による事業所得の金額(平成2年分145万円、平成3年分180万円、平成4年分132万円、別表1参照)と、いずれの年分においても、マイナスかプラスかの点も含めて相当に異なっている。しかも、原告は、異議申立て及び審査請求の段階では、前記のように赤字の主張はしておらず、各確定申告による所得金額は是認する主張をしていた。この点について、原告は、原告の実際の経営状況は赤字であったが、取引銀行の行員から「申告が赤字にならないように」と注意されていたため、丁が融資がされなくなると倒産になると考え、あえて前記のようなプラスの申告をした等と主張する。

しかし、かような主張をすること自体、原告は自らした確定申告の内容がもともと信用性のないものであることを自認することになり(この主張は、前記のとおり、錯誤により客観的に誤った内容の確定申告をした、との主張とも異なる。)、ひいては、原告や丁が係争年分中に、継続的に、請求書や領収証等の書類を整理し、甲号証として提出されている売上台帳(甲101)、現金出納帳(甲2001、3001)、シート式簡易帳簿(甲4001)、職払台帳(甲2002、3002、4002)等の記帳を適時に行っていたのか否かについて疑問を生じさせるものであるといわなければならない。

(2) 更に加えて、原告の実額主張によると、平成2年分の事業所得については、別表8において、売上金額8310万8460円に対し、被告が特別経費として認めるV信用金庫西御池支店での手形割引料49万5403円(別表8の「経費」の中の割引料参照。)を除いた経費の総額が8985万3039円となり、仮にそのまま算出所得として概算するとマイナス約674万円となる。同様にして、平成3年分の算出所得を仮に概算すると、別表9において(ただし、別表9の「経費」の中の「割引料」70万3900円を諸経費から控除する。)マイナス約224万円となり、同様にして平成4年分の算出所得を仮に概算すると、別表10において(ただし、別表10の「返品金額」はマイナスとして算入し、「経費」の中の「割引料」を経費総額から除外する。)マイナス約99万円となる。これらの数字は、特に原告主張の経費について被告が区分する一般経費との関係が不明のままのものであるなど不正確なものであることは確かではある。しかし、前記認定のとおり、別表5ないし7の本件同業者の算出所得率は、その最低の者においても、平成2年分は10.33、平成3年分は9.36、平成4年分は9.14(いずれもパーセント)のいずれもプラス(黒字)であって、前記のような不正確な数値ではあるとしても、仮に原告主張の実額主張が正しいものとした場合には、これらのほぼ同種・同規模の本件同業者の中の所得率が最低の者と原告との間に極めて大きな所得率の差異があったことになり、このような大きな相違、しかも赤字の累積が生じたことについては、原告において何らかの合理的な説明を要するものと考えられる。しかし、原告は、そのような事情について、何ら合理的に説明し得る事情を主張・立証しているとはいえない。

このようにみてくると、原告の実額主張は、まず、それを全体としてみた場合でも、果たして真実に合致したものか否かについて、大きな疑問があるものといわなければならない。

(3) また、原告がその実額主張を証するものとして提出した売上台帳(甲101)、現金出納帳(甲2001、3001)、シート式簡易帳簿(甲4001)、職払台帳(甲2002、3002、4002)は、前記のような一般的な疑問がある上に、形式的にも不備なもので、適時に継続的にその都度記帳されたのかどうか更に疑問があるといわざるを得ない。

まず、売上台帳(甲101)については、丁もその証人尋問において認めている個人売上や単発売上で記帳漏れの分があるほか、品名の記載がないもの、取引の日付が逆になっているものがあり、それが日々継続して、取引毎に適時に適正に記載されたものかどうかについては疑問があるといわざるを得ない。また、現金出納帳(甲2001、3001)については、まず、現金残高が一切記載されていないほか、立て替え分の記載もなく、例えば、甲3001の№4は1月分の記載漏れを1月分の通常の記載の後に一括して記載していると窺われる箇所があるなど、取引や金員の動きを網羅的に記載したものとはいい難い点がある。更に、シート式簡易帳簿(甲4001)については、現金の残高がマイナスになることはあり得ないのに、マイナスの記載があるほか(例えば、№10、11、12)、取引ごとの現金残高が記載されておらず、日、摘要、入金、出金はボールペンで記載されているが、現金残高を含むその余の欄では鉛筆で記載されている。職払台帳(甲2002、3002、4002)については、取引の日付が逆になっている箇所が散見され、現金仕入れ、支払金額、差し引き残高欄の記載がほとんどない。

(4) 更に、原告が実額主張の証拠として提出した領収証には、原告側がこれを改ざんして虚偽の内容となっていると認められるものが存在する。すなわち、後記の各書証の存在と甲2001、3001、3002、証人丁の証言及び弁論の全趣旨によれば、甲3027の1の領収証は、実際の支払金額が25万円であるにもかかわらず、後から100万円の位を示す「1」が書き加えられ、125万円に故意に改ざんされたものであること(丁もその証人尋問において改ざんがあったことを認めている。)、更に、甲2083の25の領収証の金額の記載も、実際の支払金額が1300円であるにもかかわらず、後から1円の位を示す「0」が書き加えられて1万3000円に改ざんされたもので、同様に、甲2083の27の領収証の金額の記載も、実際の支払金額が1400円であるにもかかわらず、後から1円の位を示す「0」が書き加えられて1万4000円に改ざんされたものであることが認められる(なお、原告は、甲2083の27に係る支払については、その主張を撤回した。)。そして、上記のうち、甲2083の25の領収証の改ざんされた1万3000円の金額については、現金出納帳にもこの改ざんされた金額の方が記載されている。

このように、原告が実額主張の立証として提出した領収証の一部に金額をより多額に改ざんした事実があることは、単に記載ミスや記載漏れがあった場合等とは大きく異なり、原告提出の他の各書証の記載の信用性にもより大きな疑問を生じさせるものといわなければならない。

(5) のみならず、原告の実額主張による経費についてみると、平成2年分の現金出納帳(甲2001)に「W」の支払金額として2万3180円が事業用経費として記載されているのにもかかわらず、原告は自らこれが必要経費であるとの主張はせず、また、現金出納帳(甲2001、3001)及びシート式簡易帳簿(甲4001)に事業用の接待交際費として記載されている5000円以下(ただし、X〔株式会社Y〕については1万円以下。)の各飲食費の項目について、原告は、結局、原告が一人で行った可能性があるとして、これらを必要経費として主張しないこととしている。また、電気・ガス・水道代についても、旅費・交通費についても、いずれも、原告主張の各項目の内容自体からは家事関連費との区別が明らかでなく、結局、事業専用率の根拠が合理的であるとはいい難く、家事関連費が相当程度含まれている疑いが残る。

これらの点からすると、原告や丁においては、係争年分の当時、もともと常日頃から、本業に係る必要経費か家事関連費かの区別自体を明確に意識していなかったもので、そのまま領収証の保管をしたり現金出納帳に記帳したりしていたのではないかと推認せざるを得ない。結局、原告が主張する家事関連費の按分基準(原告の平成10年12月9日付準備書面添付の別表1)なるものが合理性を有するとは必ずしもいえないと考えられる。

特別経費についても、例えば、京都市伏見区所在の原告宅の建物について、原告は、同建物に係る減価償却費の30パーセント相当額を必要経費に算入すべき旨主張するが、丁の証言、原告本人尋問の結果や弁論の全趣旨によれば、同建物は、主として原告の居住の用に供されているものであることが認められ、事業専用率が30パーセントとなる事情を認めるに足りる証拠もない。

(6) 以上のような諸点を総合すると、原告の実額主張は、単に、原告が提出した前記の各書証に採用できないものが個々的にあるというにとどまらず、その主張の主要部分を証するものと原告が主張している前記の甲101、甲2001、3001、甲4001、甲2002、3002、4002等の主要な書証を含め、提出された各証拠の全体としての評価が極めて疑問であって、これらの各証拠を採用することができないものといわざるを得ず、結局、その立証がないものといわざるを得ない。

(7) 原告の実額主張は、これを採用することはできない。

五  争点(6)について

1  仕入額税控除について、法30条1項は、事業者が国内において課税仕入を行った場合には、当該課税仕入を行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から上記課税仕入に係る消費税額等を控除する旨を規定する。そして、同条7項は、上記1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入の税額については適用しない、ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合には、この限りでない旨を規定する。更に、同条8項は帳簿について、同条9項は請求書等についてそれぞれ記載されていなければならない各法定記載事項を具体的に列挙している。また、同条10項の委任に基づく令50条1項では、仕入税額控除の適用を受けようとする事業者は法定帳簿又は法定請求書等を整理し、法定帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、法定請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これに準ずるものの所在地に保存しなければならない旨を規定し、法定帳簿と法定請求書等の保存期間が法令で定められている。

更に、法は、一般的な記帳義務として、法58条において、事業者は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれに行った資産の譲渡等又は課税仕入に関する事項を記録し、かつ当該帳簿を保存しなければならない旨も規定している。

2  これらの各規定及び法の他の規定によれば、仕入税額控除は、広く消費税を課税する結果、取引の各段階で課税されることによる税負担の累積を防止するため、それぞれの取引の前段階の取引に係る消費税額を控除することを認めたものと解される。そして、仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合についての法30条7項は、法定帳簿や法定請求書等の記載要件を定めた同条8項及び9項、更には保存期間や保存場所についての上記規定と共に、主として課税庁において、多量の課税仕入の存否及びそれに係る消費税額を迅速かつ正確に把握して事務処理をするためには、明確な内容の帳簿や請求書等が必要であるところから、かような法定帳簿や法定請求書等の保存がない場合を仕入税額控除をしない場合の実体要件(仕入税額控除の不適用要件)として定めたものと解される。

したがって、同条7項の規定は、主として、課税庁側から課税仕入れについての調査・確認をする場合を念頭に置いたもので、しかも、租税実体法規としての性質を有することは明らかであるというべきであって、上記規定の文言や法の他の規定に照らしても、上記7項の規定が原告が主張するように、単に課税仕入の立証方法を制限したものにすぎないと解することはできない。

3  このようにみてくると、法30条7項の保存とは、法定帳簿又は法定請求書等が単に物理的状態として納税者の下に存在しているだけでは足りず、前記のとおりに法令で定められた期間を通じて、法令所定の場所において、税務職員の質問検査権に基づく適法な調査により直ちに確認できるような状態での保存を意味するものと解するのが相当である。そして、税務調査において、税務職員が納税者に対し、社会通念上当然に要求される程度の努力を行って、適法に法定帳簿や法定請求書等の提示を求めて調査しようとしたのに対し、納税者がこれを明確に拒絶したと認められる場合には、納税者は、そもそも法定帳簿等を保管していないか、又はそれらを何らかの形で保管していても、少なくとも以上のような意味での保存がなかったものとの推認が強く働くものと解すべきである。

被告は、税務調査において納税者が拒否をすれば保存がないなどと主張するが、保存と提示とはその意味が異なるものである以上、法30条7項の趣旨を上記のように解したとしても、同主張をそのまま採用することはできない。また、同項の趣旨は前記のとおりであって、前記判断と異なる原告の主張も採用することができない。

4  そして、本件においては、原告は、法定帳簿、法定請求書等を保存していたとして、別表11記載のとおりの各甲号証を提出するが、前判示のような意味での「保存がない」といえるか否かについては、これらの甲号証の検討と共に、税務調査の経緯、態様、それに対する事業者の対応等の諸事情を総合判断して決すべきものと解される。

5  以上の判示に従って、前記のような意味での保存がなかったといえるか否かについて検討する。

(1) 原告は、本件各処分に至る税務調査の際に、原告宅において帳簿書類を用意していたり、或いは、これを伏見税務署に持参したもので、その帳簿書類は、別表11記載の甲号証の一部であると主張する。

しかしながら、そもそも、これらの甲号証の一部を原告が税務調査の当時原告宅に用意していたことや、原告らが伏見税務署へ反面調査の抗議のために訪れた際に持参した書類がこれらの甲号証と同一物であることについては、いずれも、これを認めるに足りる証拠がない。検甲4ないし6の帳簿類を撮影した写真は、調査時に撮影された写真ではなく、本件各処分の後の平成6年1月又は2月に撮影されたものであるし、検甲8ないし15の帳簿類を撮影した写真も平成13年12月22日に撮影されたものである。のみならず、これらの甲号証については、前判示のとおり、その記載について疑問があるものが多数あるほか、特に、平成4年分のシート式簡易帳簿(甲4001)は、その記載が継続的に取引の都度されたものか否かについても疑問があるものである。

(2) 前記二の1で認定した事実関係によれば、原告は、本件調査が開始された後の平成5年5月ころから、乙や丙から帳簿類の提示を求められ、平成5年10月8日及び同月22日には、消費税については帳簿書類の提示がない場合は仕入税額控除は認められない旨を直接又は間接に告げられ、その後も、本件各処分がされた平成5年11月5日ころまで何度か同趣旨の説明を受けたもので、自ら帳簿類を乙や丙に調査ができるように提示したり、或いは、帳簿類を伏見税務署に持参して保管してもらい、その内容について調査してもらう機会も十分にあり、それらが可能であったと考えられる。しかし、原告は、反面調査に対する抗議や第三者の立会いを認めてもらうことに終始し、上記の期間に亘ってこれらの行為を一切しなかったもので、結局、明確に、かつ強固に、課税庁側に対して、帳簿類の提出を拒絶したものというほかない。

したがって、少なくとも、本件各処分に至る前の段階で、本件課税期間に係る本件課税仕入れについての法定帳簿や法定請求書について、前判示のような意味での保存はなかったものと推認されるものというべきである。

(3) 確かに、本件各処分に至る調査を全体としてみると、課税庁側もやや頑なであると窺える事情もないではなく、特に、平成5年10月22日に原告が伏見税務署に赴いた際には、乙や丙は、原告に対し、持参した書類を税務署側で調査に要する期間だけ預からせて欲しいと原告らを更に説得することも不可能ではなかったと考えられる。

しかし、平成5年10月22日の上記の際にも、前記の認定事実によれば、原告らは、その言動からしても、数分間だけ持参した書類を税務署の職員に見せようとする態度を示しただけで、それらを伏見税務署において調査してもらうつもりは、そもそも全くなかったとみられても致し方ない状況であったといえる。このように、前判示のとおり、本件各処分に至る一連の税務調査は、適法であっただけでなく、課税庁側としては、社会通念上当然に要求される程度の努力は尽くしたものというべきである。

(4) 更に、原告が、本件訴訟において、法定請求書等の書証であるとして別表11の各甲号証を提出したのは、本件訴訟が提起された平成7年9月27日から3年近くも経過した平成10年7月31日の第14回口頭弁論期日に至ってである。

(5) このようにみてくると、本件訴訟において、前記の経緯で別表11の各甲号証が提出されたとしても、調査に対する原告の対応が前記のとおりであった以上、その当時において、前判示の推認が覆るものではなく、調査当時(それは法所定の保管期間中である。)、法定帳簿や法定請求書について前判示の意味での保存はなかったものと推認するのが相当であり、そのように推認されても致し方ないというべきである。

6  そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、本件課税期間の原告の消費税については、法30条7項により仕入税額控除の適用はないというべきである。

六  結論

1  原告の係争年分の事業所得金額については、被告主張のとおり、少なくとも、平成2年分が1164万6802円以上、平成3年分が1168万6892円以上、平成4年分が746万8329円以上あったものと認められるから、その範囲内でされた係争年分の各所得税に関する本件各処分は、いずれも適法である。

2  また、前判示のとおり、平成4年分の原告の売上金額は、少なくとも5531万7088円あるものといえるもので、本件課税期間の原告の消費税については、仕入税額控除の適用はないから、その消費税額は161万1150円以上となり、その範囲内でされた同消費税についての本件各処分も適法である。

3  よって、原告の本件請求のうち、係争年分の所得税の本件各処分の平成2年分については総所得金額145万円、平成3年分については総所得金額180万円、平成4年分については総所得金額132万円を超えない部分の取消しを求める部分はいずれも不適法であるからこれを却下し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 八木良一 裁判官 飯野里朗 裁判官 谷田好史)

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