大判例

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京都地方裁判所 昭和32年(ワ)530号・昭31年(ワ)1099号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕一、裁判上の自白は、相手方が挙証責任を負う事実を肯定する陳述に限られず、自己が挙証責任を負う事実を否定する陳述も含むと解するのが相当である。

二、判示のように、バイカイによつて損失として簿外にぬき出した利益をもつて、債務を支払つたと認定された事例

〔判決理由〕被告が、上者の昭和二九年度滞納所得税合計金一〇、六〇〇、七九〇円徴収のため、上者が原告に対し金二、二四〇、〇〇〇円の立替債権を有するとして、原告を第三債務者とし、昭和三一年一〇月一三日付で、国税徴収法に基き債権差押手続をしたことは当事者間に争がない。

右債権中金一、六一〇、〇〇〇円を超える部分について、上者が原告の債務を立替支払した事実の不存在を、被告は、当初認め(被告の陳述した答弁書に、「右金額を超える債権の存在しないことは認める。」との記載があり、上記部分の債務不存在を被告が認めたと解すれば、上記部分の債務不存在について認諾が成立したことになるが、被告の陳述した答弁書の「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との記載および答弁書のその他の記載を綜合すれば、上記部分について上者が原告の債務を立替支払した事実の不存在を、被告が認めたものであると解するのが相当である。)、その後これを撤回し、原告は、右撤回に異議を述たので、この点について判断する。

ところで、裁判上の自白は、口頭弁論または準備手続でなされるところの、相手方の主張事実と一致する自己に不利益な事実の陳述であるが、ここに自己に不利益な事実の陳述とは、相手方が挙証負任を負う事実を肯定する陳述に限られず、自己が挙証責任を負う事実を否定する陳述も含むと解するのが相当である。

したがつて、本件において、上者が原告の債務を立替支払した事実は、被告が挙証責任を負う事実であるが、右事実を否定した被告の陳述は、裁判上の自白に該当し、被告は、右自白が真実に反し、かつ錯誤にもとづくことを証明しない限り、右自白を撤回しえない。(中略)

そこで、上者の立替支払分合計金一、二九〇、〇〇〇円を原告が上者に返済したか否かにつき判断する。

(証拠―省略)を綜合すれば、原告は前記簿外債務の支払のため、

(1) 昭和二八年七月四日、平和不動産、東京海上、三越各五、〇〇〇株、単価それぞれ五一五円、九一四円、六二八円のいわゆるバイカイを、京都証券取引所につけ出し、原告の買付約定帳および売付約定帳の委託者氏名欄を空白にしておき、同年七月一五日、上記と同一銘柄、同一株数、単価それぞれ五七二円一、〇一〇円、七二五円のいわゆるバイカイを、京都証券取引所につけ出し、買付約定帳の上記七月四日の取引分の委託者氏名欄および売付約定帳の上記七月一五日取引分の委託者氏名欄に、架空名義(菱田善夫、八田良一、工藤英造)を記載し、売付約定帳の上記七月四日取引分の委託氏名欄および買付約定帳の上記七月一五日取引分の委託者氏名欄に、自己(原告自身)と記載し、合計金九八七、五〇〇円(手数料金二一二、五〇〇円差引)を損失として簿外にぬき出し、

(2) 昭和二八年七月一四日、平和不動産五、〇〇〇株、東京海上一〇、〇〇〇株、三越五、〇〇〇株、単価それぞれ五四九円、九七〇円、七〇七円の時間外仕切売買を京都証券取引所に届け出で、仕切売買の帳簿である売約定帳および買約定帳のいずれにも、後に上記取引を記載しうるように、空白を残しておいて、同年七月二三日、平和不動産五、〇〇〇株、東京海上一〇、〇〇〇株、単価それぞれ五三三円、九四四円の時間外仕切売買を京都証券取引所に届け出で、買約定帳の上記空白にしておいた部分に、上記七月一四日の平和不動産、東京海上の仕切売買を売主それぞれ仁田信夫、富田信好(いずれも架空名義)として記載し、売約定帳に、上記七月二三日の仕切売買を、買主それぞれ仁田、富田として、記載し、同年七月二四日、三越五、〇〇〇株、単価七一八円の時間外仕切売買を京都証券取引所に届け出で、売約定帳の上記空白にしておいた部分に、上記七月一四日の三越の仕切売買を、買主市来明(架空名義)として、記載し、買約定帳に、上記七月二四日の仕切売買を、売主市来明として、記載し、合計金三九五、〇〇〇円を損失として簿外にぬき出し、上記(1)(2)合計金一、三八二、五〇〇円を、前記立替金債務の返済金として、上者に支払つたことを認めることができる。

被告は、右反対売買は上者の現実の取引であつた旨争うが、この点の証人(省略)の証言は採用し難いし、他に以上認定を左右するに足る証拠はない。

そうだとすれば、原告の上者に対する金一、二九〇、〇〇〇円の立替債務は、すでに消滅しており、その余の点を判断するまでもなく、原告は上者に何ら債務を負担するものではないといわねばならない。(小西勝 石田恒良 堀口武彦)

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