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京都地方裁判所 昭和32年(行)26号 判決 1960年6月22日

原告 株式会社甚兵衛

被告 中京税務署長

被告補助参加人 田中義雄

訴訟代理人 藤井俊彦 外三名

主文

本件公売処分の無効確認を求める原告の請求を棄却する。

本件公売処分の取消を求める原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

原告訴訟代理人は本位的請求として「被告が昭和三二年一〇月二五日附で原告所有の別紙目録記載の物件についてなした公売処分は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を、予備的請求として「右公売処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を各求め、

被告指定代理人は原告の本位的請求に対し本案前の申立として「原告の訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を、本案の申立として主文第一、第三項と同旨の判決を各求め、原告の予備的請求に対しては主文第二、第三項と同旨の判決を求めた。

第二、当事者双方の主張

一、原告訴訟代理人は次のとおり述べた。

(一)  被告は昭和三二年一〇月九日原告の滞納法人税金八一二、一三〇円につき差押えていた別紙目録記載の物件(以下単に本件物件と称する)を公売する旨原告に通知し、同月二五日公売処分に付して参加人田中義雄に売却し、同年一一月四日京都地方法務局に嘱託し右参加人に所有権移転登記を了した。

(二)  然しながら右公売処分は次の理由によつて無効である。即ち、

(1) 被告は本件公売手続において、国税徴収法施行規則(明治三五年四月一一日勅令第一三五号を指す、以下旧国税徴収法施行規則と称する)第二三条による財産の価格の見積りにあたり物件の第一次評価額を金三、九六六、二九四円とし、それより立退料二〇パーセント及び公売の特殊性三〇パーセント、計五〇パーセントを控除した金二、九八三、一四七円を本件物件の見積価格としたのであるが、右物件の当時の時価は七、三七八、〇〇〇円乃至七、四三六、〇〇〇円であり、右物件には賃借権等落札者に対抗し得る負担の設定はなく所有者である原告は占有しているがこれは何ら落札者に対抗し得るものではなく又これが必ず明渡を拒否するとは限らないから評価にあたり当初から所有者の占有を考慮して本件物件の第一次評価額から二〇パーセントを控除することは誤りであり、かつ公売の特殊性の如き得体の知れぬものを第一次評価額の三〇パーセントと見積りこれを控除することは到底許されないのである。したがつて右の第一次評価額は低廉すぎる上更にその評価額から立退料、公売の特殊性の名目のもとに合計五〇パーセントが理由もなく控除されているのである。要するにかかる見積価格二、九八三、一四七円は不当に低廉であり乱暴ともいうべき評価であつて、旧国税徴収法施行規則第二三条所定の見積りとその公示がなかつたのに等しくこの様な評価を前提としてなされた右公売処分は明白かつ重大な瑕疵があつて無効である。

(2) 被告は原告の滞納法人税八一二、一三〇円を徴取するため滞納税額の一〇倍に近い価格を有する本件物件を公売処分に付したが、このような極めて著しい超過公売処分は重大かつ明白な瑕疵を包蔵するから無効である。

(3) 原告は当時本件家屋の近隣にある原告所有の家屋をその賃借人に売渡す調停を進めていたものでほゞ一月以内には二、五〇〇、〇〇〇円で売買が成立する見込みがあつたので(現に同家屋は昭和三二年一二月二五日に二、五〇〇、〇〇〇円で売却出来た)これを納税に充てることとし、原告代表者等は公売通知のあつた翌日である昭和三二年一〇月一八日中京税務署徴収係係官に右の事情を話し一ケ月公売処分の執行を猶予することを懇請したところ、係官は一旦これを了承した。しかるに右係官は数日後前言をひるがえして結局同月二五日に公売が行われるに至つたのである。原告の滞納税額は八一二、一三〇円にすぎないのに差押えられている本件物件の時価はその一〇倍に近いもので、これを低廉な見積りで分売するときは所有者である原告及び本件物件につき担保権を有する債権者に多大の損害を与えることになり、差押以後すでに二年を経過しているから一乃至二ケ月の猶予が不可能であつたという事情があるとは考えられず、しかも原告につき前記のような金員調達の確実な見込みがあつたわけで、この様な事情のあるときはむしろ公売処分の執行を見合わさなければならないものであり、これを無視してなした本件公売処分は権利の濫用であり無効である。

(三)  かりに本件公売処分が無効でないとしても、これには前記(二)の(1)(2)に主張したような瑕疵があるからその取消を求める。取消の訴の適法理由は次のとおりである。

(1) 本件取消の訴は国税徴収法(明治三〇年三月二九日法律第二一号、以下旧国税徴収法と称する)に規定する再調査及び審査の決定を経ていない。しかしながら本件物件の評価は大阪国税局徴収指導第三課評定官の調査の結果その指導により被告が決定したもので、本件では同法第三一条の二第一項但書の規定に云う「当該処分ニ係ル調査ガ国税庁又ハ国税局ノ職員ニヨリ為サレタル旨ノ記載アル書面」による通知はなされてはないが法は無意味な行為を要求するものではないという法理にもとずく同条の精神から実質的にみて本件では右但書が類推適用されると考えられるから再調査の対象とはならず、その決定を経ずして出訴しうるのである。

(2) 本件物件の落札者である参加人田中義雄は何時原告に対し本件物件の明渡を求め、訴を提起し、いわゆる明渡断行の仮処分を求めるかも知れない状況にあり(現に明渡の訴が提起され又執行吏保管の仮処分がなされている)、明渡断行命令が発せられることになれば原告は著しい損害を生ずることになるのでこれを避けるため訴を起して本件公売処分に瑕疵あることを知らせ仮処分命令の申請を阻止する必要があり、又参加人はすでに本件物件について嘱託による所有権移転登記を得ているのであつて、再調査、審査決定によつて公売処分が取消されたとしても右の登記はたゞちに抹消されるものでなく、終局には落札者に対する登記抹消の判決を得なければならないのである。以上の様な事情のあるときは旧国税徴収法第三一条の四第一項の再調査の決定もしくは審査の決定を経ることにより著しい損害を生ずる虞あるときあるいはその他正当なる事由があることになり再調査あるいは審査決定を経由しないで出訴することができる。

二、被告指定代理人は本案前の主張として次のとおり述べた。

(一)  行政処分の無効確認を求める訴は国を被告とすべきであつて行政庁を被告とすべきではない。この点において中京税務署長を被告とした原告の無効確認の訴は不適法である。

(二)  公売処分の取消の訴は再調査、審査の決定を経ていないから不適法である。原告は旧国税徴収法第三一条の二第一項但書の規定の類推適用を主張するが、右条項は調査が国税局職員によつてなされた旨の記載ある書面による通知のあつた場合の例外規定であり、その記載のない本件には適用がない。本件物件の評価について大阪国税局職員が指導したことはあるが、これは大蔵省組織規程第一三四条にもとずく行政組織上の指導に過ぎず、このような指導の事実のあつたことを根拠に実質的な観点から同条を類推適用することは外観的形式的な事実に着眼して画一的に適用すべき行政法規の性質に反し許されないことである。又かりに同条の類推適用があるとしてもこれは再調査決定を経ない理由とはなるが審査決定を経なくてもよいという根拠にはならない。原告は更に再調査、審査決定を経ることによつて著しい損害を蒙るおそれがあり正当の理由があつたと主張するが、参加人に明渡断行の仮処分を申請する意図も、従つてこの仮処分命令が発せられた事実もなく、又原告主張の事実はいずれも旧国税徴収法第三一条の四第一項但書の著しい損害を生ずるおそれあるときその他正当なる事由あるときには当らない。

被告指定代理人は本案についての答弁並に主張として次のとおり述べた。

(一)  原告主張事実中、被告が昭和三二年一〇月九日原告の滞納法人税金八一二、一三〇円につき差押えていた本件物件を公売する旨原告に通知し、同月二五日公売処分に付して参加人田中義雄に売却し、同年一一月四日京都地方法務局に嘱託して右参加人に所有権移転登記を了したこと、及び被告が本件公売処分に際し本件物件の見積価格を二、九八三、一四七円と評定したことは認めるがその余の事実はこれを争う。

(二)  公売処分において目的物件の価格をいかほどに見積るかは収税官吏の裁量の範囲にあたり、その評価が低廉であつたとしても公売処分を違法とするものではない。

(三)  公売目的物件の価格の見積り、公示の手続は公売処分そのものにつき基本的要素をなすものでない。又その上価格が適正であるか否かは特別な調査をまつて始めて認織出来るものであるから評価の瑕疵は明白かつ重大なものではなく無効原因とはならない。

(四)  本件評価は適正である。被告は目的物件の評価にあたり自治庁長官の定める評定基準にもとずいて京都市中京区長が算出した固定資産税評価額(二、二五七、一二〇円)、相続税課税標準(五、一九六、一〇四円)、鑑定人梅田孫助の鑑定の結果、及び実地測量施行の結果を綜合参酌したものである。又本件物件である家屋には公売当時居住者があり、これはたしかに原告主張のように賃借人の如く落札者に対抗しうる者ではないがその明渡を拒否するときは、明渡を受けるまで日時及び費用を要するから、その価格は全く空屋の場合より低下するのが通常である。旧国税徴収法施行規則第二三条の見積価格は物件が不当に低廉で公売され滞納者の利益を害することを防止する趣旨のものであるが、滞納処分を前提として行われるという性質から、滞納税金をなるべく速に取立てる必要上通常一般の売買価格では入札者を得られない場合でも処分を中止することは出来ないという関係上、評価格も最低の処分価格を示すもので市価とは必ずしも一致せず、低廉となることはあり得るのである。

第三、証拠<省略>

理由

被告が昭和三二年一〇月九日原告の滞納法人税金八一二、一三〇円につき差押えていた本件物件を公売する旨原告に通知し、同月二五日公売処分に付して参加人田中義雄に売却し、同年一一月四日京都地方法務局に嘱託して右参加人に所有権移転登記を了したこと、及び被告が本件公売処分にあたり本件物件の見積価格を二、九八三、一四七円と評定したことは当事者間に争がない。

よつて先ず本件公売処分の無効確認を求める原告の請求について判断する。

右請求は被告に対し被告のなした公売処分という行政処分の無効確認を求めるものであるところ、これに対し被告は国の機関たる被告のなした右行政処分の無効確認を求める訴は権利主体たる国を「被告」とすべきものであつて国の機関たる被告には当事者適格がないと主張するのであるが、行政処分の無効確認訴訟は行政事件訴訟特例法第二条にいういわゆる抗告訴訟と比較するとき、行政処分の効力を争う点においてはこれと類似するから、少くとも同法第三条の規定をこれに類推適用すべきものといわなければならない。そうだとすれば、行政処分の無効確認訴訟は当該行政処分をした行政庁を「被告」としなければならないものであることは明らかであり、権利主体たる国を「被告」とすべきであつて国の機関たる被告には当事者適格がないとする被告の主張は失当である。

そこで進んで原告が本件公売処分の無効なりとする主張の当否については順次検討を加える。

(一)  原告はその主張の如き理由により本件公売処分にあたり被告のなした見積価格二、九八三、一四七円は不当に低廉であり乱暴ともいうべき評価であつて、旧国税徴収法施行規則第二三条所定の見積りとその公示がなかつたに等しいと主張するが、国税滞納処分たる公売手続において旧国税徴収法施行規則第二三条所定の価格の見積りとその公示がなされている以上、その見積価格が幾何であつたかは、公売処分を違法とする理由とはなり得ないものである。いわんや公売処分を当然無効とする理由にはならない。けだし見積価格は最低公売価格を示すに過ぎず公売処分の基本的要素をなすものではなく、現実に公売された価格がその基本的要素をなすものであるからである。然らば原告のこの点に関する主張は理由がないこと明らかである。

(二)  原告は、原告の滞納法人税額八一二、一三〇円を徴収するため滞納税額の一〇倍に近い価格を有する本件物件(宅地及び地上建物)につき被告において公売処分に付したが、このような極めて著しい超過公売処分は重大かつ明白な瑕疵を包蔵するから無効であると主張する。本件物件の公売当時の価格が原告主張の如きものであつたかどうかは暫く措くとしても、原告会社代表者稲井勇造本人尋問の結果によると本件物件は金三、三三三、〇〇〇円で公売されたことが認められるのであるから、この点よりみても本件公売は超過公売であることは自ら明らかである。然しながら、一般的にいつて、国税滞納処分たる公売は滞納税金の徴収に必要な限度において実施することを要し適当な物件があるのにこれを差しおいて租税債権者を著しく上回る価格を有する他の財産につき公売をなしたときはその公売処分は違法たるを免れないけれども、滞納者に他に滞納税金に達するような差押え公売する物件がない場合に滞納税金の徴収のため滞納税額の一〇倍に近い価格の物件を差押え公売したとしてもこれは適法であるといわなければならない。本件において右公売処分当時原告所有の別の不動産(本件物件より価格が低いが本件滞納税金の徴収が不可能ではないと認められるもの)があつたことは右稲井勇造尋問の結果によつて認められるけれども、右稲井勇造尋問の結果により真正に成立したと認むべき甲第七号証によると、右物件は登記簿上稲井勇造個人所有名義になつていたことが認められる(被告において右物件が原告の所有であることを本件公売処分当時知つていたとする右稲井勇造の供述は措信し難い)のであるから、被告が他に原告の滞納税金を徴収するに適当な財産がないとして原告所有の本件物件を公売したことは違法ではない。かつ又本件物件たる宅地と地上建物とを分離して公売することは通常の場合極めて困難でありその上分割公売による公売代価の低下を防ぐため右宅地及び地上建物を一括公売に付したことはむしろ所有者(納税者たる原告)の利益を考慮したものと認められるのであるから、この点よりしても本件公売は違法ではない。然らば、本件公売処分は超過公売処分であるから無効であるとの原告の主張も理由がない。

(三)  原告はその主張の如き理由により本件公売処分の執行は権利の濫用であると主張する。この点に関し、原告は原告所有の別の家屋をその賃借人に売渡す調停を進めておりほゞ一ケ月以内には代金二、五〇〇、〇〇〇円位で売買が成立する見込でありこれを以て本件納税に充てる旨係官佐々木康介に事情を詳述し公売処分の執行の猶予を得たとする原告代表者本人尋問の結果はたやすく措信できず、却つて証人佐々木康介の証言によると、本件公売処分においては公売通知後原告より二、三回に亘つて公売処分の執行の猶予の申入れがあり、その猶予の理由として原告代表者が徴税係係官佐々木康介に述べたところは、当時大阪高等裁判所に係属中の訴訟において勝訴すれば損害賠償金が入るから右訴訟の判決言渡があるまで公売処分の執行を猶予してほしいということであり、従つて係官佐々木康介としては原告において滞納税金を調達する確実な見込がないと判断し上司に相談することなく右申入れを拒絶し、結局予定通り昭和三二年一〇月二五日に被告が本件公売処分を執行したことが認められるのであつて、公売処分の執行の猶予を得たことを前提とする原告の主張は理由がない。しかも原告が被告の権利濫用として主張する事実全部がかりに存するとしても、その事実のみでは本件公売処分の執行を当然無効とする理由たり得ず、その瑕疵は取消し得べき瑕疵に過ぎないものである。けだし、公売処分の執行が被告の権利濫用として無効といゝうるためには、原告主張の如き事実の存するのみでは足らず、更に被告において徴税権の行使に藉口して専ら滞納者たる原告或は公売物件につき利害関係を有する第三者を窮地に陥れることを目的として公売処分を執行した事実の存することを必要とすると解すべきだからである。しからば本件公売処分の執行は被告の権利濫用であつて無効であるとする原告の主張も亦理由がない。

してみると、本件公売処分の無効原因とする原告の主張はすべて理由がないから、本件公売処分の無効確認を求める原告の請求は失当として棄却すべきものである。

次に本件公売処分の取消を求める原告の訴の適否について検討を加える。

本訴は旧国税徴収法に規定する再調査及び審査の決定を経ないで出訴したものなることは原告の自認するところであり、又原告において右再調査及び審査の各請求をしていないことは弁論の全趣旨に徴し当事者間に争のないところである。原告は本件公売処分の執行にあたり本件物件の評価(価格の見積り)は大阪国税局徴収指導第三課評定官の調査の結果その指導により被告が決定したものであるから、旧国税徴収法第三一条の二第一項但書の規定の類推適用を受け、本件公売処分についての不服申立は再調査の対象とはならず、その決定を経ずして出訴し得ると主張するが、かりに原告主張の如く大阪国税局の職員が本件物件の評価につき調査し指導した事実があつたとしても、原告主張の右条項は当該処分にかゝる調査が国税庁若しくは国税局の職員によつてなされた旨の記載のある書面による通知のあつた場合の例外規定であるから、その記載のない本件において、大阪国税局職員の指導のあつた事実を捉えて実質的な観点から同条項を類推適用することは外観的形式的な事実に着眼して画一的に適用すべき行政法規の性質に反し許されないものであること正に被告主張のとおりであるからこの点に関する原告の主張は採用の限りではない。原告は更に再調査、再審査決定を経ることによつて著しい損害を生ずるおそれがあり正当の理由があるから旧国税徴収法第三一条の四第一項但書の規定に基き再調査あるいは審査決定を経ないで出訴できると主張するけれども、そもそも違法な行政処分の取消又は変更を求めるいわゆる抗告訴訟に訴願(訴願、再調査の請求、審査の請求、異議の申立等をいう、以下同じ)前置主義を認めかつ訴願期間を設けた趣旨は、一般に司法権による救済を求める前に当該処分行政庁に対し行政処分の当否を再度考案する機会を与えるとともに行政組織の内部における監督的立場にある機関をして行政庁の処分を適正迅速に匡正する機会を与え、かつ訴願を提起せぬため行政処分を何時までも不確定な状態に放置することは適当でないからできるだけ早くその効果を確定させようとして右訴願期間経過後は訴願は勿論いわゆる抗告訴訟を提起して行政処分そのものの効力を争えないとするところであるから、右訴願期間内に訴願を提起するか或は又訴願を提起しなくても訴願の裁決を経ることにより著しい損害を生ずる虞がありその他正当の事由がある事実を主訴して出張しない限り行政処分は右訴願期間の満了とともに確定しその効力は当然無効を主張する場合を除き爾後争いえないものである。本件においては本件公売処分のなされたことを原告が知つた日は公売処分執行の昭和三二年一〇月二五日であることは原告代表者本人尋問の結果によつても充分窺えるのみならず、旧国税徴収法第三一条の一第一項本文所定の一ケ月の期間内にこれに対する再調査の請求を原告がしていないことも前認定のとおりであり、かつ又本件取消の訴は右再調査の請求期間である昭和三二年一一月二五日を経過して提起せられたものなることは記録上明らかであるから、原告主張の如き理由は訴願前置を排除する理由とはなり得ず、結局本件取消の訴は訴願を経ないで出訴した不適法のものといわなければならない。しからば本件取消の訴は不適法として却下すべきものである。

以上の次第であるから訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 増田幸次郎 井上清一郎 川口公隆)

(物件目録省略)

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