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京都地方裁判所 昭和33年(ワ)929号 判決 1966年11月17日

主文

本件訴訟は、昭和三六年一二月九日、原告の死亡により終了した。

事実

昭和三三年(ワ)第九二九号事件についての当事者双方の「求める裁判」並びに「事実上及び法律上の主張」は、次のとおりである。

原告の主張

(求める裁判)

一、被告会社を解散する。

二、訴訟費用は被告会社の負担とする。

(請求の原因及び被告会社の主張に対する答弁)

一、被告会社は昭和一六年七月二八日設立された織物製造販売等を目的とする資本総額一三二、〇〇〇円(出資一口の金額は一〇〇円)の有限会社であり、原告は総出資口数一三二〇口中六四〇口の出資口数を有する被告会社の社員であつて、その監査役をしているが、原告以外の被告会社々員は土肥精之助(取締役、出資口数六四〇口)及び長島庄三郎(出資口数四〇口)の二名である。

二、被告会社は戦時中企業整備によりその目的である織物製造業を廃し、その所有する工場及び機械類一切を丹後織物丸石有限会社(以下丸石有限会社と略称する)に賃貸し、丸石有限会社はこれを賃借して織物製造業を営んで来たのである。

三、ところで土肥精之助は昭和三三年五月まで丸石有限会社の監査役(従前は取締役)であつたが、現在は同人の息子である土肥良、土肥広がその取締役である。つまり丸石有限会社は経済的には土肥精之助一家の所謂個人会社であり、被告会社の取締役である土肥精之助は同時に丸石有限会社を経営する土肥家の実権者である。そのため従来からやゝもすると丸石有限会社の利益のために被告会社の利益が侵害され、また侵害される虞れがあり、双方の会社の債権債務の関係は不明確であつた。

四、ところが昭和三三年五月一二日、被告会社が丸石有限会社に賃貸していた工場及び機械類が火災に罹り、その大部分が消失した。被告会社の本来の目的は織物製造業であるが、前述の如く丸石有限会社に工場機械類を賃貸してその賃貸料を得るのみの会社になつてしまつていたのであるから、右工場等の消失によつて被告会社はその存続の理由を失つてしまつたのである。のみならず、今仮りに罹災工場を復活するとしても、被告会社は既に久しい以前からその織物製造を廃業してしまつていて現在では製造能力もなく、また原料仕入先、販売等の得意先も消滅してしまつていて回復しえないから、被告会社が自ら織物製造業を営むことはできないし、さりとてこれをあらためて丸石有限会社に賃貸するとしても、その賃貸料だけでは到底工場及び機械類を再建復活するのに要する莫大な費用に相応する収益が伴わないから、それは丸石有限会社の利益にはなつても被告会社にとつては著しい損害を生ずるのみである。結局被告会社は前記火災によつて業務の執行上著しい難局に逢着したのであり、このまゝ会社を継続すれば回復すべからざる損害を生ずる虞れがあるのである。

五、ところで前記火災の後被告会社の当面する重要問題は、被告会社が受取る火災保険金の処置及び罹災後の処置であるが

(一)  このような場合被告会社の取締役である土肥精之助としては信義則上からも当然被告会社と土肥精之助個人及び丸石有限会社との間の計算関係を公明正大にするとともに、被告会社設立以来の社員であり、且つ総出資の約半分を占める大口出資社員である原告との間で火災保険金及び罹災後の処置について、更には被告会社の存続如何について十分に協議すべきであるのに、逆に取締役土肥精之助はこれらの処置に当り、被告会社と丸石有限会社の間の不明朗な計算関係を丸石有限会社に有利に利用して自己及び丸石有限会社の利益を図ろうと企て、何等原告と事前協議をすることなく昭和三三年八月一日招集通知を発して有限会社法第三六条に定められた法定期間をも置かずに同月四日に被告会社の臨時社員総会を開催し、その席上被告会社の重要問題すべてについて一挙に丸石有限会社及び土肥精之助個人に有利な決議をした。

(二)  しかして右臨時社員総会でなされた決議の内容は次のとおりである。

(1)焼残木中、大きいものは町内に寄附し、その他は近隣数戸に無償分譲したことを事後承認する旨の決議。

(2)罹災機械を罹災数日後に丸石有限会社の分と一括して他へ売却し、その代金を丸石有限会社に預け勘定にしていることを事後承認する旨の決議。

(3)火災焼跡整理費について丸石有限会社が支出したものを被告会社において分担することを承認する旨の決議。

(4)丸石有限会社が賃借中の工場、建物、機械に要した改修費を有益費として丸石有限会社へ償還することを承認し、機械については別途考慮する旨の決議。

(5)丸石有限会社が賃借中の建物、機械について従来一〇余年間支払つてきた火災保険料を被告会社において火災保険金受領分に応じて負担することを承認する旨の決議。

(6)火災による損害賠償を丸石有限会社に請求しないことを承認する旨の決議。

(7)残存機械(老朽品で帳簿価格の数分の一にしか当らないもの)を処分することとし、その方法は取締役土肥精之助に一任する旨の決議。

(8)昭和三三年七月二五日被告会社所有不動産全部を丸石有限会社に売却し、その代金を前記(4)の有益費償還金と相殺したことを事後承認する旨の決議。

(9)昭和三二年度決算時計上の未収入金一、九一〇、〇〇〇円は丸石有限会社に対する債権であるが、その中一、二七九、七〇〇円は単に帳簿上の形式的な存在にすぎないものとして丸石有限会社に対し右債権の不存在を承認する旨の決議。

(10)丸石有限会社に対し、被告会社において火災見舞金一、〇〇〇、〇〇〇円を贈与することを承認する旨の決議。

(11)被告会社取締役土肥精之助に対し六三〇、〇〇〇円余の役員報酬を支払うことを承認する旨の決議。

(12)被告会社の土肥精之助からの借入金昭和三三年七月三一日現在の元利合計三五八、一七二円を直ちに返済する。但し借入時と返還時の貨幣価値の相違を考慮して将来被告会社解散若しくは社員退社による持分分配の際、財産評価差額分について、立替及び貸付元金の五倍以下の範囲内で物価指数変動に比例した額につき土肥精之助に優先配分する旨の決議。

(13)定款第一九条により取締役の相続人が所定の役職に就任するときは前任者の持分の一部または全部を後任者に譲渡することに当社全員同意すべきことを承認する旨の決議。

(三)  これらの各決議事項はすべて被告会社の重要問題であるから、当然社員総会前に充分に協議して然る後に正式に社員総会に附議すべきである。仮りに事前の協議を要せず社員総会の決議だけで法律上は可としても、その場合には少なくとも総会の招集に法定の一週間以上の余裕期間を置いて大口出資社員である原告に対し被告会社の取るべき方策に対して十分調査考慮し得る期間を与えるべきであるから取締役土肥精之助の右臨時社員総会の招集手続は違法である。

のみならず、右各決議の内容はすべて丸石有限会社と土肥精之助個人の利益を図つた極めて不当なものである。

即ち

(1)前記(二)の(1)の決議は、会社財産を土肥一家の個人的利益(名誉慾等)のために不当に処分するものである。

(2)同(2)の決議は、被告会社と丸石有限会社の分別計算関係を不明にし、且つその代金を銀行に預けず丸石有限会社に預けて不当に同会社の利益を図るものである。

(3)同(3)の決議は、本件工場の火災は賃借中の丸石有限会社の失火であるから、同会社が全部支出するのが当然であるのに、被告会社にも分担せしめる不当なものである。

(4)同(4)の決議について、有益費は賃借終了時の現物について支出すべきもので、火災で焼失した物件について有益費償還はあり得ない。また焼残り物件については賃借物件の返還引渡を受けない限りは支出を要しない。しかも焼失した物件については支出した有益費につき価格の増加が現存するか否かを知ることはできないはずであり、丸石有限会社の請求金額、被告会社の決議における右償還金額はいずれもその算出の根拠が極めてあいまいで、この点からも右決議は不当である。

(5)同(5)の決議について。丸石有限会社が火災保険料を従来支払つてきたのは被告会社の利益のためのみならず賃借人としての同会社自身の利益のためであり、従つて本件火災に罹つた年度の一箇年分の保険料については或いは不当利得の問題が起るかも知れないが、火災保険契約は保険期間毎に法律上も経済上も各独立であるのに火災に罹らなかつた年度の保険料まで被告会社に負担させることは不当に丸石有限会社の利益を図ろうとするものである。

(6)同(6)の決議について、本件火災は賃借人丸石有限会社の失火であるから、同会社は賃借人として損害賠償義務がある。被告会社としてはその損害額を調査し、保険額より損害額が大きければ当然その差額の賠償請求をすべきであるのに、単に保険金があるとの一事をもつて損害総額の調査もせずして直ちに損害賠償を請求しないとするのは不当に丸石有限会社の利益を図るものである。

(7)同(7)の決議について、機械が老朽して帳簿価格をはるかに下廻る価値しかないとすれば改修は一向になされていなかつたことになり、前記(二)の(4)の、丸石有限会社が建物機械に改修を施してきたからその有益費を償還するとの決議と矛盾する。また、右決議は最低処分価額すら明示されていないから、処分に際し土肥精之助個人または第三者の利益のため被告会社の利益が無視されるおそれがある。右の二点から不当である。

(8)同(8)の決議について、右不動産(土地及び火災を免れた建物)は被告会社唯一の財産であり、これを売却処分すれば最早被告会社存在の基盤もなくまた他に営業を開始する方途もない。従つてまず会社を解散すべきか否かを提案すべきである。またその売買契約は両代表者間でなしたというが、丸石有限会社の代表者土肥良は被告会社の代表者土肥精之助の息子であり、しかも目的物は残存建物だけでも九五六、二〇〇円の価値があるのに、その売却代金は残存建物に土地まで併せて八三八、二〇〇円にすぎず、更にこれを前述の如く不当な有益費償還義務と相殺したというのであるから、右契約が公正なものであつたとは到底認められない。

(9)同(9)の決議について、これは、昭和三二年度決算時計上の未収入金一、九一〇、〇〇〇円の中には被告会社の資産再評価に基く減価償却額の増大を処理するためにした帳簿上の操作によつて生じた架空の金額を含んでおり、また現実の賃貸料は現業の役員(土肥精之助)の報酬に充当することが従来の社員総会で承認されていたのであるから、丸石有限会社に対する賃貸料債権の額を確定しても何等被告会社の現金収支に利害はないので、現実の債権額を確定しないまゝに帳簿上存置されてきた旨の、議長土肥精之助の説明に基いてなされたものであるが、右未収賃貸料は丸石有限会社に対して明らかに実在する債権である。右は被告会社の減価償却とは何等の関係もないし、また、被告会社々員総会において右賃貸料収入をもつて土肥精之助の役員報酬に充当する旨の決議がなされたこともない。要するに右決議は口実を設けて実在する債務を不存在とし、被告会社の損失において丸石有限会社に不当な利益を与えるものである。

(10)同(10)の決議について。丸石有限会社は失火責任者であり、被告会社は被害者である。しかるに充分調査もせずに損害賠償債権を放棄する決議をした上更に総出資額一三二、〇〇〇円にすぎない被告会社が会社の目的とは何の関係もない火災見舞金なる儀礼上の出資として一、〇〇〇、〇〇〇円という大金を支出するのは定款にも違反するものである。

(11)同(11)の決議について。被告会社の業務としては単に丸石有限会社からの工場等の賃貸料を取立てる事務があるのみであるが、それすら永年放置されてきた、従つて従来社員総会が取締役土肥精之助に対する役員報酬支払の議決をしなかつたのは当然である。しかるに今日火災保険金が入るからと云つて一〇余年間の報酬を遡つて支出しようとするのは単に土肥精之助個人の利益を図るにすぎないもので不当である。

(12)同(12)の決議について、このような古い債権は充分調査しなければその存在自体不明であり、また特別の法規がない限り貨幣価値の変動に比例して増額の上支払うということは承認できないし、土肥精之助に限つて優先弁済するという理由が見出せないから、右決議は不当である。

(13)同(13)の決議について、右決議は過半数の決議で少数社員の表決の自由を事前に奪うものであるから違法である。また、被告会社の定款第一九条は「取締役並ニ監査役ニ欠員ヲ生シタル時ハ各其ノ相続人ガ継承ス」と規定するが、右決議に関する議案は取締役のみについて云々し、監査役を除外している。右は監査役たる原告を除外して取締役たる土肥精之助個人のみの利を図つた不当な議案であり、これに基く右決議もまた不当である。

(四)  以上、前記火災後の被告会社の財産の管理及び処分は著しく失当であり、被告会社はその存立を危殆ならしめているのである。

六、以上のような状態のもとにおいては、被告会社を解散することもまた已むを得ないから、前掲のとおりの判決を求める。

七、被告会社の主張については、その第五項(二)、(三)、及び第六項(二)、(三)はいずれも争う。

被告会社の主張

(求める裁判)

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

(請求の原因に対する答弁及び被告会社の主張)

一、請求の原因第一項は認める。

二、同第二項は認める。右賃貸借は、昭和一八年五月の企業整備の結果、被告会社がその法人格を保有したまゝ丸石有限会社の傘下に統合され、その一構成員となつた際、その機業設備一切を賃貸すべきことが条件になつていたためにされたものである。

三、同第三項は、そのうち土肥精之助が従前丸石有限会社の役員であつたこと、現在同人の息子である土肥良等がその取締役として同会社を経営していることは認めるが、その余は否認する。

四、同第四項は、そのうち丸石有限会社に賃貸中の工場及び機械類の一部が火災によつて焼失したことは認めるが、その余は否認する。

五、(一)同第五項については、

同(一)はそのうち昭和三三年八月一日に招集通知を出して同月四日に被告会社の臨時社員総会を開催したことは認めるが、その余は争う。

同(二)はすべて認め、同(三)、(四)はすべて争う。

(二) 原告主張の被告会社社員総会は、被告会社の定款第二七条但書「但シ緊急ヲ要スル場合ハコレヲ二日ニ短縮スルコトヲ得」に則り、さきに原告が申請した京都地方裁判所昭和三三年(ヨ)第一七八号仮処分の申立を取下げるに際し、原、被告間でされた被告会社の緊急臨時社員総会を招集する旨の約定に基いて招集されたものであり、いわば原告の要求によつて、それ故に緊急を要する場合として招集したものであるから、右社員総会招集手続に違法はない。

のみならず、右社員総会での目的議案となる事項は右仮処分申請の取下の際その大略を話合つて既に原告の予定していたものであり、また真に必要ならば社員総会に出席してその席上で調査し、総会の続行を求めることもできたのである。にもかかわらず原告は自らの要求で招集された社員総会に故意に無断欠席して自ら議決権を放棄したのであつて、今更調査に名をかりて期間の不適法を主張するが如きは信義誠実の原則に反し、到底許されない。

(三) 右被告会社の臨時社員総会でなされた各議決には、原告がその請求の原因第五項(三)で主張するような不当はない。

即ち、

(1)請求の原因第五項(二)の(1)の決議について。右は前記火災の際消火に協力してくれた被告会社所在地の町内からの要請により町内の橋梁修理用に寄附したもので、焼残木はかかる用途に使用する以外仕方のなかつたものである。

(2)同(2)の決議について。一括して売却したのは火災後混淆して罹災機械の所有者別による分部が困難だつたからで、売却代金の分別計算はその標準を保険金額にとつた。代金を一時丸石有限会社に預り勘定にしたのは、直接占有者だつた同会社が直接火災焼跡処理に当り売却した関係で便宜にでたものであつて、原告主張のような意図はない。

(3)同(3)の決議について。本件火災の原因は不明である。従つてその責を直ちに賃借人たる丸石有限会社に負わすことは勿論できない。しかして整理費は主に焼失建物に関して生じたものであるが、次の(4)で述べるような理由で定めた建物に関する保険金額の取分に応じてこれを配分負担したのである。

(4)同(4)の決議について。丸石有限会社は賃借工場建物機械類について賃借中改築修理等に多大の出資をなし、火災保険契約はその現状で締結されているから、被告会社が賃貸した当時の原状の価値以上の保険金契約が存することは明瞭であり、被告会社には現状の価値以上の保険金を受領する権利はない。従つて当然丸石有限会社に帰属すべき原状価値を超える部分の保険金額を、形式上有益費の名称をかりて処理したにすぎない。

(5)同(5)の決議について。被告会社が前記火災による損害の全額の填補を受け得たのは丸石有限会社が安田火災海上保険株式会社との間に火災保険契約を締結していたからであり、しからば被告会社が受領すべき保険金額に対応する部分については過去に支払われた保険料をも被告会社が負担すべきが当然である。

(6)同(6)の決議について。前記火災の責任が被告会社と丸石有限会社のいずれにあつたかは不明である。しかも保険金によつて被告会社が右火災で蒙つた損害の全額が填補された以上、丸石有限会社の責任を問う余地はない。

(7)同(7)の決議について。被告会社の賃貸機械が老朽であること、改修したからこそ老朽ながら使用できたのであること、その帳簿価格は経理上一応の評価を記載したもので必ずしも現実の価格と一致していないこと等は原告が長年監査役としてその間の事情を知悉、承諾していたところである。また、双務契約たる売買に於て、一方的に価額を決定することはできない。

(8)同(8)の決議について。後述のように被告会社には丸石有限会社と合併するという方途があり、解散が最善の方法ではない。該不動産は、丸石有限会社が賃借中であり、賃貸中の不動産を第三者に売却するよりは賃借人に売却するのが価格において有利であることは実験則の示すところであるのみならず同会社に使用させれば生きて使用しうるが、被告会社が保持しても他に営業を開始する方途もないので丸石有限会社に売却した。しかしてその売却価格は、公正な鑑定価格によつたものである。

(9)同(9)の決議について。被告会社は元来土肥精之助の個人の経営だつたものを便宜上有限会社にしたもので、その後も実質に変りはなく同人がその営業全部を専掌し、非現業重役である原告は無報酬であつた。また昭和一八年五月一三日にした被告会社の丸石有限会社に対する賃貸料は公租公課その他被告会社維持に必要な費用を除いて現業重役の報酬に充てる旨の社員総会の決議がその後長年の慣例となつていた。しかして昭和二一年頃から土肥精之助が丸石有限会社の代表取締役となつていたことがあり、丸石有限会社より被告に賃借料が支払われても右のように公租公課等を控除した残額は現業重役土肥精之助の重役報酬として支払われることになつていたため被告会社の実質的な収入にはならなかつたので土肥精之助は両会社の関係を慮つて公租公課等に充てる分を控除した残額の賃料を未請求とすると同時に同人の重役報酬の請求受額も留保したため、前記火災まで賃料額は未定のまゝとなつていたが、その間丸石有限会社から被告会社の負担すべき公租公課等昭和二二年度から同三二年度までの間の諸経費合計七二二、一六一円を賃貸料の一部として支払を受けていたのであるが、昭和三三年六月頃、鑑定の結果と丹後地方の諸事例を参考にしてその頃の相当賃料を一ケ月一五、〇〇〇円と定め(従前の相当賃料がこれより安価になるのは当然である)、本件決議のされた社員総会においては、これを基礎としてすでに受領済のもの(公租公課等の支払に充てるため支払を受けた賃料の一部)を除き昭和三三年五月一一日現在の総未収賃貸料を六三〇、三〇〇円としたのである。しかして帳簿上の丸石有限会社に対する未収賃貸料一、九一〇、〇〇〇円は昭和二九年に被告会社の所有で丸石有限会社に賃貸中の物件の再評価の際、法令の許す限りの過大評価をしてこれを基として減価償却額を算出しこれに対応するものを帳簿上丸石有限会社の未収賃料として形式を整えていたもので全く架空のものであり、仮りにこれが入つても役員報酬として直ちに支出されるから、被告会社には何等利害得失はないのである。しかも原告は、長年被告会社の監査役として右取扱を認めていたのである。

(10)同(10)の決議について。前記火災による被告会社の損害は述のとおり丸石有限会社の締結した保険契約により全額填補されたのに丸石有限会社はなお二〇、〇〇〇、〇〇〇円近くの損害を填補されていない。しかして被告会社は過去一〇数年の間丸石有限会社の構成分子、または子会社のような密接な関係にあつたのである。従つて丸石有限会社の窮状に被告会社がその経理状態に相応した金額一、〇〇〇、〇〇〇円を見舞金として贈与しても敢て不当とはいえない。

すなわち、この見舞金を支出しても被告会社はなお残余財産二、六九三、九六一円(資本金の二〇倍余り)を保有しこれを各出資者に分配しえたのであるが、原告が、竟に提起した合計六件の訴訟のため被告会社はこの残余財産全部を支出してもたらず、なお相当の借入までしなければならなかつたのである。

(11)同(11)の決議について。右(9)で述べたような決議慣例に従い前記(9)の決議の未収賃料を土肥精之助に対し昭和二二年から昭和三三年二月までの間の現業役員報酬として支払う旨決議したのであつて、前記のような事情で土肥精之助が請求受領を留保していた重役報酬を、残余財産の算出を要する社員総会で決議、支払いをするのは当然である。

被告会社と丸石有限会社の関係は既に述べたとおりで、共存共栄であり、土肥精之助が賃貸料を取立てなかつたのは丸石有限会社の繁栄、ひいては被告会社の利益を慮つて自己の報酬の取立を差控えていたのであつて職務怠慢ではないのである。

(12)同(12)の決議について。被告会社が土肥精之助、加藤伍商店等に対し合計一九二、六九八円の債務を負うことは昭和三二年度決算書に明らかであり、原告もこれを監査役として承認している。しかして右帳簿上の名義はともかく、加藤伍商店等に対する債務は昭和二二年一二月までに土肥精之助が代位弁済をした結果現実には右債務金額が土肥精之助に対する債務になつているのである。また右代位弁済後である昭和二三年一月一日以後六分の利息を加算したのも当然である。貨幣価値変動に関する但書決議については、同人の代位弁済なくして現在に至つておれば当該債務につき貨幣価値の変動が問題となるのであり、また社員がその出資持分について現在の貨幣価値によつて配分を求めることを考えれば、現在の貨幣価値によつて債務を返還することも不当とは云えない。

(13)同(13)の決議について。監査役たる原告は既に持分の配分を受けて退社すべき旨の申出をしたので、監査役欠員の場合に関しては議案とする必要がなかつたのである。なお同総会は原告の持分譲渡退社の件につき承認決議をした。

六、(一)請求の原因第六項は争う。

(二) 被告会社には残余財産を以て丸石有限会社と合併することによつて存続し得る道もあり、(前記被告会社の社員総会に出席した社員全員と丸石有限会社の代表者との間にこの点の話合いもついている)また、火災物件の填補を受けているから、これを資本として実際の製造を下請業者にやらせるいわゆる「出はた」によつて被告会社自身が営業を続けて行くことも可能であつて、必ずしも解散を必要とするわけではない。現に原告提訴の各仮処分申請事件本訴各事件がなければ昭和三三年八月四日の臨時社員総会終了時に於て金二百六十九万円余(資本金の二十倍余)の残余財産を保持していた。

(三) 被告会社は設立後間もなく苦境に陥り、前述企業整備により爾来丸石有限会社の構成員の一員として同社に工場機械等の賃貸をするのみの会社となつたが、それでも、とにかく今日まで維持されて来たのは、独り土肥精之助の努力によるものである。会社とはいうものの被告会社はもともと土肥精之助の単独事業であつたのを、熊本市の古荘本店の要請で有限会社にし、古荘本店の京都支店長である原告と被告会社の下請業者である長島庄三郎が出資者となつて加わつたが、いずれも名義だけで、被告会社の営業は専ら取締役土肥精之助が行つてきたのである。

しかるに、原告は、従来から被告会社に非協力的で、注文者として自己の利益の追求にのみ急で、その個人的営業の損害を被告会社に転嫁する等横暴を極め、今回の火災だけでも被告会社に火災保険金が入ると知るや、虚偽の事実を主張して保険金受領の仮処分(京都地方裁判所昭和三三年(ヨ)第一八一号)を得たし、また、本件臨時総会は前記のとおり(被告の主張五(二)参照)の申出に基くもので、その際同社員総会の決議事項についての打合わせもしたのに、原告は、議案の事項を明示した招集状を受けながら、故意に出席せず、更に仮処分二件、本訴二件と全く無用の事件を悪意をもつて提供し、その仮処分申請事件の和解手続においても、原告は、自己の主張を固執したため、和解は不調に終つたのである。かかる原告の態度のため被告会社は今日まで約三、〇〇〇、〇〇〇円余の損害を被つた。被告会社の業務執行を困難ならしめ、その存立を危殆ならしめるものがあるとすればそれは原告の恣意である。

原告はさきに持分譲渡による退社を申出たことがあり社員総会がこれを承認する旨の決議をしたことは前記のとおりである。しからば原告はその決議によつて目的を達したものであり、ことさら被告会社の解散を請求する実益を有しない。

以上のような状態における原告の本訴請求は権利の濫用であつて到底許されないものである。

七、よつて、原告の請求は失当である。

昭和三三年(ワ)第九三六号事件についての当事者双方の「求める裁判」並びに「事実上及び法律上の主張」は、次のとおりである。

原告の主張

(求める裁判)

被告会社の昭和三三年八月四日の臨時社員総会における左記第一乃至第一八の各決議を取消す。

右が理由がないときは、

被告会社の昭和三三年八月四日の臨時社員総会における左記決議中第三乃至第一五の各決議が無効であることを確認する。

第一、火災直前(昭和三三年五月一一日現在)の被告会社の仮決算書を承認する旨の決議。

第二、焼失資産及び残存資産目録を承認する旨の決議。

第三、焼残木中、大きいものは町内に寄附し、その他は近隣数戸に無償分譲したことを事後承認する旨の決議。

第四、罹災機械を罹災数日後に丹後織物丸石有限会社(以下丸石有限会社と略称する)の分と一括して他へ売却し、その代金を丸石有限会社に預け勘定にしていることを事後承認する旨の決議。

第五、火災焼跡整理費について丸石有限会社が支出したものを被告会社において分担することを承認する旨の決議。

第六、丸石有限会社が賃借中の工場、建物、機械に要した改修費を有益費として丸石有限会社へ償還することを承認し、機械については別途考慮する旨の決議。

第七、丸石有限会社が賃借中の建物、機械について従来一〇年余年間支払つてきた火災保険料を被告会社に於て火災保険金受領分に応じて負担することを承認する旨の決議。

第八、火災による損害賠償を丸石有限会社に請求しないことを承認する旨の決議。

第九、残存機械(老朽品で帳簿価格の数分の一にしか当らぬもの)を処分することとし、その方法は取締役土肥精之助に一任する旨の決議。

第一〇、昭和三三年七月二五日被告会社所有不動産全部を丸石有限会社に売却し、その代金を前記第六の有益費償還金と相殺したことを事後承認する旨の決議。

第一一、昭和三二年度決算時計上の未収入金一、九一〇、〇〇〇円は丸石有限会社に対する債権であるが、その中一、二七九、七〇〇円は単に帳簿上の形式的な存在にすぎないものとして丸石有限会社に対し、右債権の不存在を承認する旨の決議。

第一二、丸石有限会社に対し、被告会社において火災見舞金一、〇〇〇、〇〇〇円を贈与することを承認する旨の決議。

第一三、被告会社取締役土肥精之助に対し六三〇、〇〇〇円余の役員報酬を支払うことを承認する旨の決議。

第一四、被告会社の土肥精之助からの借入金元利合計(昭和三三年七月三一日現在)三五八、一七二円を直ちに返済する。

但し借入時と返還時の貨幣価値の相違を考慮して将来被告会社解散若しくは社員退社による持分分配の際、財産評価差額配分について、立替並びに貸付元金の五倍以下の範囲内で物価指数変動に比例した額につき土肥精之助に優先配分する旨の決議。

第一五、定款第一九条により取締役の相続人が所定の役職に就任するときは前任者の持分の一部または全部を後任者に譲渡することに当社全員同意すべきことを承認する旨の決議。

第一六、弁護士加藤俊徳に被告会社の常任法律顧問を委嘱する旨の決議。

第一七、京都地方裁判所昭和三三年(ヨ)第一七八号、第一八一号各仮処分事件によつて発生した費用及び損害を全て右事件申請者である古荘伊助に負担させる旨の決議。

第一八、一、一時借入金を承認する旨の決議。

二、被告会社々員古荘伊助の持分譲渡退社を承認する旨の決議。

(請求の原因)

一、被告会社は昭和一六年七月二八日設立せられた織物製造販売等を目的とする資本総額一三二、〇〇〇円(出資一口の金額は一〇〇円)の有限会社である。しかしてその社員は原告古荘伊助(監査役、出資口数六四〇口)の他、土肥精之助(取締役、出資口数六四〇口)及び長島庄三郎(出資口数四〇口)の合計三名である。

二、被告会社取締役土肥精之助は、昭和三三年八月一日付書面を以て原告に対し、同月四日午前一〇時に左記議案について臨時社員総会を開催する旨の招集通知を発し、右通知は翌二日原告に到着した。

目的議案

一、火災直前の被告会社仮決算承認の件。

二、焼失資産及び残存資産目録承認の件。

三、焼残木処理承認の件。

四、罹災機械処分承認の件。

五、火災跡整理費負担の件。

六、丸石有限会社請求の有益費償還承認の件。

七、保険料負担承認の件。

八、火災による損害賠償権処理の件。

九、残存機械処理承認の件。

一〇、被告会社所有不動産処理承認の件。

一一、未収賃貸料処理承認の件。

一二、火災見舞金承認の件。

一三、現業役員報酬支払承認の件。

一四、被告会社借入金返還承認の件。

一五、取締役欠員の場合(定款第一九条)相続人就任承認の件。

一六、被告会社顧問委嘱並びに訴訟代理人委任承認の件。

一七、仮処分事件につき責任負担の件。

一八、その他総会に於て提出された議案。

しかして右昭和三三年八月四日の臨時社員総会においては、原告が出席しないまゝに右一乃至一八各議案について前掲第一乃至第一八のような各決議がなされた。

三、しかしながら、右の各議決には次のような違法があるので、原告は有限会社法第四一条、商法第二四七条に基き右臨時社員総会の各決議の取消を求める即ち、

(一)  右臨時社員総会はその目的議案が示すとおり被告会社の浮沈に関する重要な問題であり、このような社員総会を一週間の法定期間を存置することなく招集したことは有限会社法第三六条に違反するものである。

(二)  なお、目的議案一三及び一四に対する決議(前掲第一三及び第一四の決議)については、社員土肥精之助はいずれも自己に特別の利害関係があることを理由にその議決権を行使しなかつた。しかして前述のとおり右総会には原告は出席していないのであるから、有限会社法第四一条、商法第二三九条第五項及び第二四〇条第二項によれば右両議決について出席した社員の議決権は社員長島庄三郎の四〇口のみとなり、総社員の議決権一、三二〇口の過半数とならず、定足数を欠くから本来議決は不能であつて、これを敢えて決議したのは違法である。

四、なお原告は予備的に右臨時社員総会でなされた決議のうち前掲第三乃至第一五の各決議につき、その無効を主張する。まず右臨時社員総会が開催されるまでの経緯を述べる。

被告会社は元来織物製造業を目的として来たが、戦時中企業整備の際織物製造を実際は廃止して昭和一八年五月その所有する工場(土地建物)及び機械類一切を丸石有限会社に賃貸し、同会社はこれを賃借して織物製造業を営んでいるものである。ところが昭和三三年五月一二日丸石有限会社から出火して賃貸中の工場及機械の大部分を焼失してしまつた。

ところで土肥精之助は昭和三三年五月まで丸石有限会社の監査役(従来は取締役)であつたし、現在では同人の息子である土肥良、土肥広の両名がその取締役である。つまり丸石有限会社は土肥一家が経営しているのである。また土肥精之助は被告会社の取締役であり、被告会社の出資社員は設立当初は同人と原告の二人であつたが、途中で土肥精之助がその持分の中四〇口を腹心の長島庄三郎に譲渡し、その結果右両名の出資口数計六八〇口となり、原告の出資口数六四〇口に対し、常に過半数の議決権を有することとなり、土肥精之助は名実共に被告会社の実権者である。つまり土肥精之助は被告会社及び丸石有限会社双方の実権者である。

しかして被告会社は単なる賃貸会社にすぎないが、丸石有限会社は営業を続けて来た。たゞ前記火災後は休業しているだけである。そのため従来から往々にして土肥精之助は自己及び同族会社の利益の追求に専念して被告会社の利益を無視する嫌があり、双方会社の計算関係、債権債務の関係は不明確である。

ところで前記火災による、工場機械の罹災のため、丸石有限会社としては焼跡復旧、営業再開が、被告会社としては保険会社から受取るべき火災保険金の処置及び会社の存廃如何が、問題となつた。

此の時に当り土肥精之助は被告会社の取締役であることを奇貨として被告会社の利益を無視して自己及び丸石有限会社の利益を図ろうと企て、原告に対しては事前に何の協議もせずに緊急臨時社員総会を招集して被告会社の存廃にも関する重要諸問題を法律上の形式をかりて一挙に自己に有利に解決しようとしたのである。

五、次に右臨時社員総会でなされた各決議について具体的に述べる。

(一)  前掲第三の決議(議案三に対する決議)

これは土肥一家が町内及び近隣の者に対して好い顔を売る目的で被告会社の資産をほしいまゝに無償で処分したことを承認した不当な決議である。

(二)  前掲第四の決議(議案四に対する決議)

これは丸石有限会社と被告会社の分を一括して売却することにより両会社の計算関係の分別をことさらに不明確にし、且つその売却代金を被告会社の銀行預金とせず丸石有限会社に預けていたずらに丸石有限会社の利益を図る措置を承認した不当な決議である。

(三)  前掲第五の決議(議案五に対する決議)

本件火災は賃借人でありその賃借物件によつて営業中の丸石有限会社から出火したもので、出火の原因は丸石有限会社の過失乃至は管理不充分のためである。従つて火災の焼跡整理費は全部丸石有限会社において負担するのが当然であつて、賃貸人なる被告会社がこれを分担すべき理由はない。それにも拘らずその分担を承認した右決議は不当である。

(四)  前掲第六の決議(議案六に対する決議)

元来有益費は賃貸借終了の時にその現物について支出すべきものであり、本件のように火災に罹つて焼失した物件については有益費の償還ということはありえない。また、焼残りの物件についても、賃借人たる丸石有限会社から賃借物件の返還がない以上、支払を要しないものである。にも拘らずその償還をすること等を承認した右決議は不当である。のみならず、焼失した建物については支出した有益費につき価格の増加が現存するか否かを知ることは不可能であり、丸石有限会社の請求金額、被告会社の右総会での決議における償還金額は、いずれもその算出の根拠が極めてあいまいであり、この点からも右決議は不当である。

(五)  前掲第七の決議(議案七に対する決議)

丸石有限会社が右火災保険料を負担してきたのは、賃借物件罹災の場合に自己の営業の継続を確保するためと、出火が自己の過失に基く際の賃貸人に対する損害賠償の負担を避けるためで、結局自己の利益のためである。しかして丸石有限会社と被告会社との間には従来一度も右火災保険料に関して何等の協定もなされていなかつた。

従つて、本件火災に罹つた年度の一箇年分だけの保険料についてならば或いは徳義上、または不当利得に近いものとして考慮する余地があるかも知れないが、一箇年の保険期間毎に法律上も経済上も各独立のものである火災保険契約について過去一〇数年間にわたつて丸石有限会社が自己の利益のために支払つて来た保険料をあらためて被告会社が負担するなどということは、被告会社の損失において不当に丸石有限会社の利益を図るものである。にも拘らず保険料の負担を承認した右決議は不当である。

(六)  前掲第八の決議(議案八に対する決議)

本件火災の原因が不可抗力であることの証明がない限り丸石有限会社の過失に基くものと云わざるを得ず、丸石有限会社には賃借人としての債務不履行による損害賠償義務がある従つて被告会社としては当然右火災による損害額を調査し、その上で損害額が火災保険金より大であり、また保険のかゝつていない罹災物件があれば差額を請求すべきである。にも拘らず右議決は単に火災保険金がある故をもつて何等の調査もせずに直ちに損害賠償の要なしとするもので、被告会社の利益を無視して丸石有限会社の利益を図る不当なものである。

(七)  前掲第九の決議(議案九に対する決議)

この決議は、左の二点において不当である。

(1)残存機械がいずれも老朽して帳簿価格をはるかに下廻る価値しかない、との説明が本当ならば、機械の改修が一向になされていなかつたことになり、議案六について土肥精之助がなした、賃貸機械についての改修費を有益費として償還すべきであるとの説明と矛盾する。これは残存機械を不当に安く評価して売却せんとする土肥精之助の底意の表れである。

(2)またその処分については最低売却額すら明示せず、総てを土肥精之助に一任している。

右二点から考えて右決議に基くときは土肥精之助が被告会社の利益を無視して自己または第三者の利益のためにのみ処分する虞れが多分にある。

(八)  前掲第一〇の決議(議案一〇に対する決議)

右不動産は被告会社の唯一の財産であり、これを処分して有益費償還債務と相殺するとなれば、被告会社としては最早存在の基盤もなく、また他に営業を開始する方途もない。このような結果を招来する処分をするには、まず会社の解散をなすべきであり、しからば右決議は会社解散のための特別決議を回避して単に過半数の議決権を以てその実を挙げんとする違法な決議である。仮りにしからずとするも、右不動産の売買契約は両会社代表者の間になされたとはいうものの被告会社の代表者土肥精之助は丸石有限会社の代表者土肥良の父親であり、しかも被告会社唯一の財産の処分という重大な事項であるにも拘らず、会社創立以来の社員総出資の約半数の出資口数を有する原告に対し事前に何等の協議もなかつたのである。しからば右売買については到底その価格決定につき公正が維持されたとは云い得ない。現に右売買価格は、残存建物だけでも九五六、二〇〇円の価値があるにもかゝわらず残存建物に土地まで併せて僅か八三八、二〇〇円にすぎない。のみならず、右代金債権をもつて有益費償還債務と相殺するというのであるから、これは不当に丸石有限会社の利益を図らんとする行為であり、またその締約の仕方は甚だしく信義に悖るものであつて、かかる売買契約等を承認した右決議は不当である。

(九)  前持第一一の決議(議案一一に対する決議)

右決議は、昭和三二年度決算時計上の未収入金一、九一〇、〇〇〇円の中には被告会社の資産再評価に基く減価償却額の増大を処理するためにした帳簿上の操作によつて生じた架空の金額を含んでおり、また現実の賃貸料は現業役員(土肥精之助)の報酬に充当することが従来の社員総会で承認されていたのであるから丸石有限会社に対する賃貸料債権の額を確定しても何等被告会社の現金収支に利害はないので、現実の債権額を確定しないまゝに帳簿上存置されてきた旨の、議長土肥精之助の説明に基いてなされたものであるが、右未収賃貸料は丸石有限会社に対して明らかに実在する債権である。これは被告会社の減価償却とは何等の関係もないし、また、被告会社々員総会において右賃貸料収入をもつて土肥精之助の役員報酬に充当する旨の決議がなされたこともない。

しかも丸石有限会社には充分支払能力があつたのに被告会社の取締役たる土肥精之助は故らに丸石有限会社の利益を図つて被告会社の唯一の収入である右丸石有限会社に対する賃貸料の取立をしなかつたのであつて、これは背徳行為である。要するに右決議は、口実を設けて実在する債務を不存在とし、被告会社の損失において丸石有限会社に利益を与える不当極まる決議である。

(一〇)  前掲第一二の決議(議案一二に対する決議)

丸石有限会社は本件火災の責任者であり、被告会社は罹災者である。しかるに右決議は、右火災により被告会社に火災保険金が入るのを、名を見舞金にかりて不当にその実利を失火責任者たる丸石有限会社に与えんとするものであり、且つは総出資額一三二、〇〇〇円にすぎない被告会社が、その目的に何等の関係もない火災見舞金なる儀礼上の出金として一、〇〇〇、〇〇〇円の大金を支出するという、定款にも反する不当な決議である。

(一一)  前掲第一三の決議(議案一三に対する決議)

役員報酬はその業績に応じて支払わるべきものである。しかして被告会社の業務として単に丸石有限会社からの工場の賃貸料を取立領収する事務があるのみであるが、それさえ永年放置されている。しからば従来社員総会が取締役土肥精之助に対する役員報酬支払の議決をしなかつたのは当然であり、本件火災後の後始末的な事務処理に対する若干の報酬支払はともかく、その職務を怠つていた過去に遡つてまで報酬を支払うという右決議は甚だ不当である。

(一二)  前掲第一四の決議(議案一四に対する決議)

従来土肥精之助個人と被告との計算関係は不明瞭であつて、古い過去の同人による被告会社の債務の代位弁済、また同人からの別途借入金なるものも、よく調査しなければ存在自体分明でない。しかるに右決議はこれを調査することなく直ちに存在するものと認め、剰え特段の根拠もないのに貸幣価値変動に比例して増額の上支払うというもので、これまた不当な決議である。

(一三)  前掲第一五の決議(議案一五に対する決議)

被告会社の定款第一九条には「取締役並ニ監査役ニ欠員ヲ生シタル時ハ各其ノ相続人ガ継承ス」と規定されている。しかして

(1)右決議は、定款第一九条の役員欠員の場合には辞任、解任による場合も含むものと解することを前提としてされているのであるが、「相続人ガ継承ス」との文言から右の欠員は当然死亡による場合のみを指すと解すべきであり、これを辞任、解任による場合にまで拡張して解釈するのは違法であり、右決議は違法な解釈を前提とするから違法である。

(2)また、右決議は過半数の決議で少数社員の表決の自由を事前に奪うものであるから違法である。

(3)本議案(議案一五)は取締役のみについて云々し、監査役を除外している。右は監査役たる原告を除外して取締役たる土肥精之助個人のみの利を図つた不当な議案であり、これに基く右決議もまた不当である。

以上の各決議事項はその実質において相互に有機的に関連しており、すべては前記火災によつて被告会社に入る火災保険金を何とかして自己等に多く取入れようとする底意から、社員土肥精之助が腹心である社員長島庄三郎の持分と併せて過半数の議決権を有するのを濫用して被告会社及び少数社員の犠牲において自己または第三者たる丸石有限会社を不当に利せんとする総会決議であつて、公序良俗に反するから、すべて当然無効の決議である。

六、被告の主張第二項以下はすべて争う。なお被告の主張第五項のとおり社員総会の決議が執行済であつたとしても本件判決を求める実益は存するのである。

被告の主張

(求める裁判)

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

(請求の原因に対する答弁及び被告の主張)

一、原告の請求の原因については、

(一)  同第一項、第二項の事実はすべて認める。

(二)  同第三項については、同(二)のうち目的議案第一三、第一四に対する決議について社員土肥精之助がその議決権を行使しなかつた点は認めるが、その余は争う。

(三)  同第四項については、被告会社が企業整備以来丸石有限会社の傘下に入り、その所有工場機械等を同会社に賃貸借形式で使用させていたこと、右等の物件の一部が火災によつて焼失したこと、土肥精之助が従前丸石有限会社の役員であつたこと、現在同人の息子である土肥良、土肥広がその取締役として同会社を経営していることはいずれも認めるが、その余は争う。特に土肥精之助が丸石有限会社の実権者であるとの原告主張事実を否認する。

(四)  同第五項は争う。

二、第一乃至第一八の各決議取消に関する主張について、

(一)  原告主張の被告会社社員総会は、定款第二七条但書「但シ緊急ヲ要スル場合ハコレヲ二日ニ短縮スルコトヲ得」に則り、さきに原告が申請した京都地方裁判所昭和三三年(ヨ)第一七八号仮処分の申立を取下げるに際し、原、被告代理人の間でなされた被告会社の緊急臨時総会を招集する旨の約定に基いて招集したものであり、いわば原告の要求によつて招集したものであつて、原告に対する右総会招集通知にも右定款第二七条但書による緊急臨時社員総会の招集である旨が明記してあつたのであるから、右招集手続には決議取消となる瑕疵はない。

のみならず、右社員総会での目的議案となる事項は右仮処分申請の取下の際その大略を話合つて既に原告の予定していたものであり、また真に必要ならば原告自ら社員総会に出席してその席上で調査し、総会の続行を求めることもできたのである。にもかゝわらず原告は自らの要求で招集された社員総会に故意に無断欠席して自ら議決権を放棄したのであつて、今更調査に名をかりて期間の不適法を主張するが如きは信義誠実の原則に反し、到底許されない。

(二)  第一三号議案は現業役員に対する報酬の支払、第一四号議案は被告会社借入金の返還に関するもので、右はいずれも総会の決議の有無、適否とは無関係に、被告会社が当然履行すべき義務として厳存するものであつて、右各議案に対してされた決議に反する決議をすることは民法第一条第三項に反して許されないのみならず商法第二五三条の趣旨からもこれらの決議の取消は何等の実益もないのである。しかも、前述のとおり右総会は原告の要求に基いて招集されたものであるのみならず、原告主張のごとく本総会は被告会社にとつて重大なる問題を議する総会であること及び原告が自ら出席しなければ同議案の議決権の数に不足を生ずることを熟知しながら、決議に異をとなえる余地を残すために故意に欠席したのであつて、結局原告が定足数の不足を理由にこれらの決議の取決を求めるのは、何等の実益もないのに害意をもつて徒らに被告会社の経営を混乱せしめるものであるから、権利の濫用であつて許されない。

三、第三乃至第一五の各決議無効に関する原告の主張について

右各決議には、原告が主張するような不当はない。即ち、

(一)  第三の決議について、これは前記火災の際消火に協力してくれた被告会社所在地の町内からの要請により町内の橋染修理用に寄附したもので、焼残木はかかる用途以外に使用の途のなかつたものである。

(二)  第四の決議について、一括して売却したのは火災後混淆して罹災機械を所有者別に分別することが困難だつたからであり、売却代金の分別計算はその標準を保険金額にとつた。

代金を一時丸石有限会社に預け勘定にしたのは直接占有者であつた同会社が直接火災跡整理に当り売却した関係で便宜にでたものであつて、原告主張のような意図はない。

(三)  第五の決議について、本件火災の原因は不明である。従つてその責を直ちに賃借人たる丸石有限会社に負わすことは勿論できない。しかして整理費は主に焼失建物に関して生じたものであるが、次の(四)で述べるような理由で定めた建物に関する保険金額の取分に応じてこれを配分負担したのである。

(四)  第六の決議について。丸石有限会社は賃借工場建物機械類について賃借中改築修理等に多大の出費をなし、火災保険契約はその現状で締結されているから、被告会社が賃貸した当時の原状の価値以上の保険金契約が存することは明瞭であり、被告会社には原状の価値以上の保険金を受領する権利はない。従つて当然丸石有限会社に帰属すべき原状の価値を超える部分の保険金額を、形式上有益費の名称をかりて処理したにすぎない。

(五)  第七の決議について、被告会社が前記火災による損害の全額の填補を受け得たのは丸石有限会社が安田火災海上保険株式会社との間に火災保険契約を締結していたからであり、しからば被告会社が受領すべき保険金額に対応する部分については過去に支払われた保険料をも被告会社が負担すべきが当然である。

(六)  第八の決議について。前記火災の責任が被告会社と丸石有限会社のいずれにあつたかは不明である。しかも保険金によつて被告会社が右火災で蒙つた損害の全額が填補された以上、丸石有限会社の責任を問う余地はない。

(七)  第九の決議について。被告会社の賃貸機械が老朽であること、改修したからこそ老朽ながら使用できたのであること、その帳簿価格は経理上一応の評価を記載したもので必ずしも現実の価格と一致していないこと等は原告が長年監査役としてその間の事情を知悉、承認していたところである。

また、双務契約たる売買において、一方的に価額を決定することはできない。

(八)  第一〇の決議について、被告会社には丸石有限会社と合併することによつて存続するという途があり、解散が最善の方法ではない。該不動産は、丸石有限会社が賃借中であり、同会社に使用せしめれば生きて使用しうるが、被告会社が保持しても他に営業を開始する方途もないので丸石有限会社に売却した。しかしてその売却価格は公正な鑑定価格によつたものである。なお相互に有する債権債務を対当額で相殺することは何等不当でない。原告は被告の不動産買入代金と有益費償還金を相殺したことを事後承認する旨の決議と主張するが本総会において売買代金及び有益費償還金の額を決議して後に始めて相殺したもので事後承認をしたものではない。

(九)  第一一の決議について、被告会社は元来土肥精之助の個人の経営だつたものを便宜上有限会社にしたもので、その後も実質に変りはなく同人がその営業全部を専掌し、非現業重役である原告は無報酬であつた。また昭和一八年五月一三日にした被告会社の丸石有限会社に対する賃貸料は公租公課その他被告会社維持に必要な費用を除いて現業重役の報酬に充てる旨の社員総会の決議がその後長年の慣例となつていた。しかして昭和二一年頃から土肥精之助が丸石有限会社の代表取締役になつていたことがあり、丸石有限会社より被告に賃借料が支払われても右のように公租公課等を控除した残額は現業重役土肥精之助の重役報酬として支払われることになつていたため被告会社の実質的な収入にはならなかつたので土肥精之助は両会社の関係を慮つて公租公課等に充てる分を控除した残額の賃料を未請求とすると同時に同人の重役報酬の請求受領も留保した(乙第九号証参照)ため、前記火災まで賃料額は未定のまゝとなつていたが、その間丸石有限会社から被告会社の負担すべき公租公課等昭和二二年度から同三二年度までの間の諸経費合計七二二、一六一円を賃貸料の一部として支払を受けていたものであるが、昭和三三年六月頃鑑定の結果と丹後地方の諸事例を参考にしてその頃の相当賃料を一ケ月一五、〇〇〇円と定め(従前の相当賃料がこれにより安価になるのは当然である)、本件決議のされた社員総会においては、これを基礎としてすでに受領済のもの(公租公課等の支払に充てるため支払を受けた賃料の一部)を除き昭和三三年五月一一日現在の総未収賃貸料を六三〇、三〇〇円と算出したのである。しかして帳簿上の丸石有限会社に対する未収賃貸料一、九一〇、〇〇〇円は昭和二九年に被告会社の所有で丸石有限会社に賃貸中の物件の再評価の際、法令の許す限りの過大評価をしてこれを基として減価償却額を算出しこれに対応するものを帳簿上丸石有限会社の未収賃料として形式を整えていたもので全く架空のものであり、仮りにこれが入つても役員報酬として直ちに支出されるから、被告会社には何等利害得失はないのである。しかも原告は長年被告会社の監査役として右取扱を認めていたのである。

(一〇)  第一二の決議について、前記火災による被告会社の損害は前述のとおり丸石有限会社の締結した保険契約により全額填補されたのに丸石有限会社はなお二〇、〇〇〇、〇〇〇円近くの損害を填補されていない。しかして被告会社は過去一〇数年の間丸石有限会社の構成分子、または子会社のような密接な関係にあつたのである。従つて丸石有限会社の窮状に被告会社がその経理状態に相応した金額一、〇〇〇、〇〇〇円を見舞金として贈与しても敢て不当とはいえない。すなわち、この見舞金を支出しても被告会社はなお残余財産二、六九三、九六一円(資本金の二〇倍余り)を保有しこれを各出資者に分配しえたのであるが、原告が悪意に提起した合計六件の訴訟のため被告会社はこの残余財産全部を支出してもたらずなお相当の借入までしなければならなくなつたのである。

(一一)  第一三の決議について、右(九)で述べたような決議慣例に従い、第一一の決議の未収賃料を土肥精之助に対し昭和二二年から昭和三三年二月までの間の現業役員報酬として支払う旨決議したのであつて、前記のような事情で右土肥精之助が請求受領を留保していた重役報酬を残余財産の算出を要する社員総会で決議、支払いするのは当然である。被告会社と丸石有限会社の関係は既に述べた通りで共存共栄であり、土肥精之助が賃貸料を取立てなかつたのは丸石有限会社の繁栄、ひいては被告会社の利益を慮つて自己の報酬の取立を差控えていたのであつて職務怠慢ではないのである。

(一二)  第一四条の決議について、被告会社が土肥精之助、加藤伍商店(加藤伍商店に対する金一二五、〇〇〇円の債務は原告の厳しき請求により原告に対する債務の弁済に充てるため借入れたもの)等に対し合計一九二、六九八円の債務を負うことは昭和三二年度の決算書に明らかであり、原告もこれを監査役として承認している。しかして右帳簿上の名義はともかく、加藤伍商店等に対する債務は昭和二二年一二月までに土肥精之助が代位弁済をした結果実際は右債務全額が土肥精之助に対する債務になつているのである。また右代位弁済後である昭和二三年一月一日以降年六分の利息を加算したのも当然である。貨幣価値変動に関する但書決議については、また同人の代位弁済なくして現在に至つておれば当然該債務につき貨幣価値の変動が問題となるのであり、また社員がその出資持分について現在の貨幣価値によつて配分を求めることを考えれば、現在の貨幣価値によつて債務を返還することも不当とは云えない。

(一三)  第一五の決議について、取締役の欠員は死亡の場合に限定されない。辞任、解任の場合にも生ずるのは勿論である。また、監査役たる原告が既に持分の受けて退社すべき旨の申出をしたので監査役欠員の場合に関しては議案とする必要がなかつたのである。なお同総会は原告の持分譲渡退社の件につき承認決議をした。

四、被告会社は設立後間もなく苦境に陥り、前述企業整備以来は単に工場機械等を賃貸するのみの会社となつてしまつたが、それでもとにかく今日まで維持されて来たのは独り取締役土肥精之助の努力によるものである。しかるに原告は、従来から土肥精之助に非協力的で、自己の利益の追求にのみ急でその個人的な営業の損害を被告会社に転嫁する等横暴を極めていたが、今回の火災で被告会社が保険金を受領し得る可能性ありと知るや、被告会社の現有財産の精算を目的とする社員総会の招集を主張し、更に精算をしても企図した持分の分配額を得る見込がないと知るや右要求に応じて招集された社員総会に故意に出席せず、自ら議決権を放棄しておきながら公正妥当な社員総会の決議に従わず、取締役土肥精之助を不当に自己及び丸石有限会社の利益を図るものであると誹謗し、剰え本件訴訟を含めて既に本訴二件仮処分四件と全く無用の事件を悪意で提起し、そのため被告会社に約三、〇〇〇、〇〇〇円の損害を蒙らせたのであつて、以上のような状態における原告の本訴請求は権利の濫用であつて到底許されないものである。

五、原告主張の臨時総会の決議はいずれもその当時執行済みのものである。

六、よつて、原告の請求は失当である。

なお、両事件について、原告訴訟代理人は、「原告は、昭和三六年一二月九日、死亡し、その相続人は古荘ゑつ、古荘猛、古荘久、古荘哲及び原田敏子であるところ、右相続人間において原告の被告会社出資持分を古荘猛の所有とする旨の遺産分割協議が成立した。会社解散請求権並びに社員総会決議取消及び無効請求権は、一身専属権ではなく、通常の財産権であるから、相続性を有し、本件においては古荘猛が右各請求権を承継取得し、本件各訴訟を承継したものである。したがつて、本件各訴訟は、原告の死亡により終了するものではない。」と述べ、被告会社訴訟代理人は、「原告が昭和三六年一二月九日死亡し、その相続人がその主張のとおりであることは認めるが、その主張の遺産分割協議成立の事実は知らない。本件各請求権は、一身専属権であり、譲渡、相続性を有しないから、原告の死亡により消滅し、本件各訴訟は当然終了したものである。」と述べた。

両事件についての当事者双方の証拠関係は、次のとおりである。

証拠(省略)

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