京都地方裁判所 昭和34年(ヨ)164号 決定 1959年5月08日
申請人 株式会社相互理化学硝子製作所
被申請人 桂硝子労働組合
主文
一、被申請人組合はその所属組合員又は第三者をして別紙第一、第二、第三目録記載の土地及び建物に立入らしめてはならない。
二、被申請人組合はその所属組合員又は第三者をして申請人会社従業員の別紙第一、第二、第三目録記載の土地及び建物への出入を妨害し、又はその就業を妨げる等一切の妨害行為をしてはならない。
三、申請人が委任する京都地方裁判所執行吏は被申請人組合が別紙第一、第二、第三目録記載の土地及び建物の内外に設置した赤旗、ビラ、表門閉鎖の荒繩、針金その他の物件を撤去しなければならない。
四、前項の実効を期するため右執行吏は現場に於て公示その他適当な措置をしなければならない。
(注、保証金五万円)
(裁判官 喜多勝)
(別紙)
第一物件目録
京都市右京区西京極西向河原町拾壱番地
一、宅地 参百拾六坪
同地上建設家屋番号仮五番
一、木造瓦葺弐階建 事務所 壱棟
右付属
一、木造瓦葺平家建 荷造場、宿直室 壱棟
一、同右 倉庫 弐棟
一、同右 便所 壱棟
床面積合計百六拾壱坪四合四勺
(但し別紙図面の通り)
(別紙図面、第二、第三目録省略) 以上
【参考資料】
仮処分命令申請書
申請の趣旨
一、被申請組合はその所属組合員又は第三者をして別紙目録記載の土地並に建物に立入らしめてはならない。
二、被申請組合はその所属組合員又は第三者をして申請会社従業員の別紙目録記載土地並に建物への出入を妨害し、又はその就業を妨げる等一切の妨害行為をしてはならない。
三、申請人が委任する京都地方裁判所々属執行吏は被申請組合が別紙目録記載土地及び建物の内外に設置した赤旗、ビラ、表門閉鎖の荒繩・針金その他の物件を撤去しなければならない。
四、前項の執行吏は第一項及び第二項、第三項の実効を期するため現場に於て公示その他適当の措置をしなければならない。
との御裁判を求める。
申請の理由
一、被申請人は申請外京都市右京区西京極徳大寺団子田町三八桂硝子有限会社の従業員約五十名を以て組織する労働組合である。
二、しかる処右申請外会社は本年三、四月に手形の不渡を出し会社の経営状態全く悪化し、遂に、破産状態に陥り、四月七日以降営業停止の有様である。右申請外会社はもと申請人の東工場(厚物工場)の一部が昭和三十年十二月二十三日独立して一会社となり、翌三十一年一月一日右工場を申請人より賃借りし、同所に於て理化学硝子器具の製造販売を始めたもので、その従業員は当時申請会社の従業員が同日附を以て円満退職し(退職金も受領し)右申請外桂硝子有限会社に雇傭せられたもので、その後、多少の退職、新規雇傭の変動があつて今日に至つたものである。
三、且つ右申請外桂硝子有限会社の経営陣も右独立当時より申請人株式会社相互理化学硝子製作所とは全然別個の人的構成を以て成立してをり、只、従前の関係より申請人は姉妹会社として右申請外桂硝子有限会社に対し原材料の提供、資金の融通、製品の買取、売却の斡旋等可能な限りの援助を吝しまなかつたところ前述の如き申請外会社の破綻の為め申請人としては現に取立不能の債権約八百万円也を抱えている仕末である。
四、処が被申請人は申請外桂硝子有限会社の所属従業員を以て組織する労働組合であるに拘らず同会社が前記の如く破綻に瀕し、その代表取締役社長長田尻春治が行方をくらますに至るや、右会社とは全然別人格であり且つ法的に何等の関係もない申請人に対し申請外桂硝子有限会社と合併せよ、とか或いは右申請外桂硝子有限会社を組合管理として経営するから資金その他の応援をせよ、とか団体交渉に応ぜよ、とか全くの無理難題を持ちかけ、申請人がこれを拒絶するや、ストと称して化学産業労働組合同盟京都府連等の応援を得て、
<1> 昭和三十四年四月二十三日より申請人会社の本社事務所(別紙目録記載第一物件に対し毎朝八時頃から(会社の休日を除き)被申請組合所属組合員十数人が押しかけ事務所内に侵入して窓一面に古新聞紙に「吸血鬼、中村一郎」とか「殺人鬼中村一郎」とか墨書したビラ(古新聞)無数を張り付け労働歌を高唱し申請人会社の女子事務員八名の背後に交々立つて嫌がらせの言葉を浴びせ電話の聴取を妨害する外右本社入口の表門を実力を以て閉鎖し以て右本社に勤務する申請人会社の事務員男七人、女八名の交通、及び就業を妨害し常に二、三人の者が張り番をし、且つ、表門を荒繩を以て縛り申請人会社事務員の立入を妨害し
<2> 昭和三十四年五月六日午前八時より申請人会社の就業時より被申請人はその所属組合員の殆んど全員が前記化学同盟京都府連の応援者二、三十名の加勢を得て申請人会社の加工場(別紙目録記載第二物件)及び厚物工場(別紙目録記載第三物件)の各表門を閉鎖し、各門並にその付近に赤旗数流を樹てビラを張り、スクラムを組み、労働歌を高唱して申請人会社従業員(加工場二十七人)(厚物工場四十人)が申請人会社の指示により入場就業せんとするのを阻止し、ために両工場は一日殆んど就業することはできなかつた。右妨害行為は同日午後三時半頃漸く休止したのであるが、同被申請組合幹部等は『来る五月十日以降には三日間もつと大規模のピケを張る』旨揚言している次第であるから何日何時再度不法行為を実行するか判らない非常に不安な状態に於かれている次第である。
五、右次第の如く被申請人の所為は労働運動を仮装する不法行為であるが、之がため申請人会社の営業は全く停止し業務命令の実効がないので申請人会社は目下御庁に対し妨害排除損害賠償の訴提起準備中の処、被申請人の急迫強暴なる前記行為の排除を求め、且つ今後の不法行為を防衛するため茲に本仮処分命令の申請に及んだ次第である。